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特許7523547ステント送達システム及びステントを取り付けるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ステント送達システム及びステントを取り付けるための方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/95 20130101AFI20240719BHJP
【FI】
A61F2/95
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022538900
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020113612
(87)【国際公開番号】W WO2021128937
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】201911359117.8
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518224842
【氏名又は名称】シャンハイ マイクロポート エンドヴァスキュラー メドテック (グループ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】ペン ダードン
(72)【発明者】
【氏名】トゥー チュンリン
(72)【発明者】
【氏名】デン シャオジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン チェンユー
(72)【発明者】
【氏名】チュー チン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504722(JP,A)
【文献】特表2018-501902(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02298248(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルと、外側チューブと、拘束部材と、遅延解放部材とを含むステント送達システムであって、
前記外側チューブは、捲縮状態でステントを受け入れるために軸方向に延びる内腔を規定し、前記ステントが露出するように前記ハンドルの制御下で前記ステントの遠位端に向かって引っ込められるように構成され、
前記拘束部材は、前記ステントの周囲に配置された少なくとも1つの拘束糸と、前記ステントを圧縮又は解放するために前記拘束糸を開ループ又は閉ループ構造の間で切り替えるように構成された制御ガイドワイヤとを含み、
前記遅延解放部材は、前記外側チューブ内に配置され、前記ステントの近位端に取り外し可能に接続されて前記ステントの近位端を拘束又は解放するように構成され、
前記ステント送達システムは、前記外側チューブ内に配置された内側チューブを更に含み、前記ステントを受け入れるための隙間は、前記外側チューブと前記内側チューブとの間に存在し、
前記ステントには2つ以上の固定コイルが設けられ、前記固定コイルのうちの少なくとも2つは前記ステントの前記遠位端の周囲に互いに離間しており、前記制御ガイドワイヤは前記固定コイルのうちのいくつかの近位端を通って挿入され、前記拘束糸はそれぞれ対応する残りの前記固定コイルのうちの1つの近位端を通って挿入されるように構成され、前記固定コイルの遠位端は前記内側チューブの遠位端に固定される、ステント送達システム。
【請求項2】
前記拘束部材は、前記軸方向に沿って前記ステントの主要部分にわたって互いに離間する少なくとも2つの拘束糸を含む、請求項1に記載のステント送達システム。
【請求項3】
前記拘束糸のそれぞれは、両端が閉鎖された二本鎖拘束糸であり、
前記二本鎖拘束糸は、前記ステントに少なくとも1回転巻き付けられた後、その先端がその後端を通って挿入されるように構成され、前記制御ガイドワイヤは、前記二本鎖拘束糸の先端を通って挿入されるため、前記二本鎖拘束糸は閉ループ構造として構成される、請求項1に記載のステント送達システム。
【請求項4】
前記拘束糸のそれぞれは、両端が閉鎖された二本鎖拘束糸であり、
前記二本鎖拘束糸は、前記ステントに少なくとも1回転巻き付けられるように構成され、前記制御ガイドワイヤは、前記二本鎖拘束糸の先端と後端の両方を通って挿入されるため、前記二本鎖拘束糸は閉ループ構造として構成される、請求項1に記載のステント送達システム。
【請求項5】
記遅延解放部材は、前記内側チューブを挿入するためのチャネルを規定する、請求項1に記載のステント送達システム。
【請求項6】
前記遅延解放部材は、円錐状先端、遅延解放固定具、遅延解放リアベース、複数の遅延解放スクリューロッド及び遅延解放ガイドワイヤを含み、前記円錐状先端には、その遠位端に、それぞれの遅延解放スクリューロッドと相互作用するための同じ数の固定孔が設けられ、前記遅延解放固定具には、それぞれの遅延解放スクリューロッドと相互作用するための同じ数のガイド孔が設けられ、前記遅延解放スクリューロッドのそれぞれは、前記遅延解放リアベースに固定接続された遠位端と、前記遅延解放固定具のガイド孔のそれぞれの1つを通って、前記円錐状先端の前記固定孔のそれぞれの1つに挿入された近位端とを有し、前記遅延解放ガイドワイヤは、前記遅延解放リアベースに固定接続された近位端を有し、前記遅延解放スクリューロッドは、前記円錐状先端と前記遅延解放固定具との間に位置し、前記ステントの近位端を通って挿入されて前記ステントの近位端を拘束する部分を有する、請求項5に記載のステント送達システム。
【請求項7】
前記円錐状先端、前記遅延解放固定具及び前記遅延解放リアベースのそれぞれは、前記内側チューブを挿入するためのチャネルを規定し、前記内側チューブは、一端が前記円錐状先端に接続され、前記チャネルを順次通過する、請求項6に記載のステント送達システム。
【請求項8】
前記遅延解放リアベースに対して遠位に位置する前記内側チューブの部分には、前記遅延解放リアベースの前記チャネルの直径よりも大きい外径を有する制限ブロックが設けられる、請求項7に記載のステント送達システム。
【請求項9】
ステントの近位端を送達システムの遅延解放部材に固定するステップと、
前記ステントの周囲に巻き付けられた少なくとも1つの拘束糸で前記ステントを捲縮するステップであって、前記少なくとも1つの拘束糸が、制御ガイドワイヤの制御下で閉ループ構造として構成される、ステップと、
捲縮された前記ステントを、前記送達システムの内側チューブ及び遅延解放部材とともに前記送達システムの外側チューブの内腔に圧縮及び装填するステップであって、前記外側チューブの遠位端は、ハンドルに固定接続され、前記ステントを受け入れるための隙間が、前記送達システムの前記外側チューブと前記内側チューブとの間に存在する、ステップと、
を含み、
前記ステントには2つ以上の固定コイルが設けられ、前記固定コイルのうちの少なくとも2つは前記ステントの遠位端の周囲に互いに離間しており、前記制御ガイドワイヤは前記固定コイルのうちのいくつかの近位端を通って挿入され、前記拘束糸はそれぞれ対応する残りの前記固定コイルのうちの1つの近位端を通って挿入されるように構成され、前記固定コイルの遠位端は前記内側チューブの遠位端に固定される、ステントを取り付けるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野に関し、特に、ステント送達システム及びステントを取り付けるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胸部大動脈瘤又は胸部大動脈解離は、かなりよく見られる致命的な血管外科疾患である。1990年代以前、胸部大動脈瘤又は胸部大動脈解離は、従来の外科手術技術を使用して治療されていたが、これらの技術は、外科手術の高難度、重大な外傷、多数の合併症などの様々な欠点がある。1994年、Dakeらは、移植された血管内カバードステントで大動脈解離を治療することを初めて報告して以来、介入手術が大きく発展した。このような外科介入処置は、典型的に、大腿動脈に作られた穿刺切開を介して挿入された外側シースを通って患者の体内にカバードステントを導入し、大動脈を通って大動脈の標的病変部位に進めることを含む。その後、カバードステントがこの部位に解放されて、病変した血管部分を覆い、修復する。カバードステントは、ステント本体の内面又は外面が部分的又は全体的に膜で覆われている人工インプラントである。
【0003】
カバードステントで大動脈解離を治療することは、特別な送達システムを使用してカバードステントを標的病変部位に送達し、続いてカバードステントを解放及び拡張することからなる。結果として、カバードステントの膜は、大動脈のエントリーを閉鎖し、血液が解離の偽腔に更に入ることを防ぎ、エントリーのさらなる拡張又は大動脈の破裂さえも防ぐ。同時に、カバードステント内のステント本体が血管壁を支持することにより、血液が偽腔に流れ込み、真腔を圧縮し、正常な血流に影響を及ぼし、影響を受けた組織及び臓器への血液供給を減少させる可能性を防ぐ。エントリーを閉鎖するには、典型的に、カバードステントの近位端の周りに、ステントアンカーとして機能することができる一定の長さの健康な血管が存在する必要がある。しかし、エントリーは重要な分枝血管の開口部に近いことが多いため、このようなアンカーは非常に短く、長さが制限され、貴重なものになる傾向がある。更に、血流からの力又はシステム設計の問題により、通常、カバードステントを正確に標的部位に解放することは困難であり、展開されたカバードステントは標的位置から前後に多少変位することが多いため、臓器虚血、脳虚血、又は患者の健康に有害な他の望ましくない結果の原因となり得るステントアンカー及び周囲の分枝血管の完全な閉鎖、或いは、エンドリーク又は患者の健康に有害な他の望ましくない結果の原因となり得るエントリーの不完全な閉鎖を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、血流からの力の作用下で解放されたステントが後方に移動することを防止することにより、解放されたステントの位置精度を高めることを可能にするステント送達システム及びステント装填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、提供されたステント送達システムは、ハンドルと、外側チューブと、拘束部材と、遅延解放部材とを含む。
【0006】
前記外側チューブは、捲縮状態でステントを受け入れるために軸方向に延びる内腔を規定し、前記ステントが露出するように前記ハンドルの制御下で前記ステントの遠位端に向かって引っ込められるように構成される。
【0007】
前記拘束部材は、前記ステントの周囲に配置された少なくとも1つの拘束糸と、前記ステントを圧縮又は解放するために前記拘束糸を開ループ又は閉ループ構造の間で切り替えるように構成された制御ガイドワイヤとを含む。
【0008】
前記遅延解放部材は、前記外側チューブ内に配置され、前記ステントの近位端に取り外し可能に接続されて前記ステントの近位端を拘束又は解放するように構成される。
【0009】
任意選択で、前記拘束部材は、前記軸方向に沿って前記ステントの主要部分にわたって互いに離間する少なくとも2つの拘束糸を含んでもよい。
【0010】
任意選択で、前記拘束糸のそれぞれは、両端が閉鎖された二本鎖拘束糸であってもよく、前記二本鎖拘束糸は、前記ステントに少なくとも1回転巻き付けられた後、その先端がその後端を通って挿入されるように構成され、前記制御ガイドワイヤは、前記二本鎖拘束糸の先端を通って挿入されるため、前記二本鎖拘束糸は閉ループ構造として構成され、或いは、前記二本鎖拘束糸は、前記ステントに少なくとも1回転巻き付けられるように構成され、前記制御ガイドワイヤは、前記二本鎖拘束糸の先端と後端の両方を通って挿入されるため、前記二本鎖拘束糸は閉ループ構造として構成される。
【0011】
任意選択で、前記ステントには固定コイルが設けられてもよく、前記拘束糸は前記固定コイルを通って挿入されるように構成される。
【0012】
任意選択で、前記ステントには複数の固定コイルが設けられてもよく、前記複数の固定コイルのうちの少なくとも2つは、前記ステントの周囲に互いに離間し、前記拘束糸は、前記複数の固定コイルのうちの少なくとも2つを通って挿入されるように構成される。
【0013】
任意選択で、前記送達システムは、前記外側チューブ内に配置された内側チューブを更に含んでもよく、前記ステントを受け入れるための隙間は、前記外側チューブと前記内側チューブとの間に存在し、前記遅延解放部材は、前記内側チューブを挿入するためのチャネルを規定する。
【0014】
任意選択で、前記遅延解放部材は、円錐状先端、遅延解放固定具、遅延解放リアベース、複数の遅延解放スクリューロッド及び遅延解放ガイドワイヤを含んでもよく、前記円錐状先端には、その遠位端に、それぞれの遅延解放スクリューロッドと相互作用するための同じ数の固定孔が設けられ、前記遅延解放固定具には、それぞれの遅延解放スクリューロッドと相互作用するための同じ数のガイド孔が設けられ、前記遅延解放スクリューロッドのそれぞれは、前記遅延解放リアベースに固定接続された遠位端と、前記遅延解放固定具のガイド孔のそれぞれの1つを通って、前記円錐状先端の前記固定孔のそれぞれの1つに挿入された近位端とを有し、前記遅延解放ガイドワイヤは、前記遅延解放リアベースに固定接続された近位端を有し、前記遅延解放スクリューロッドは、前記円錐状先端と前記遅延解放固定具との間に位置し、前記ステントの近位端を通って挿入されて前記ステントの近位端を拘束する部分を有する。
【0015】
任意選択で、前記円錐状先端、前記遅延解放固定具及び前記遅延解放リアベースのそれぞれは、内側チューブを挿入するためのチャネルを規定してもよい。前記内側チューブは、一端が前記円錐状先端に接続され、前記チャネルを順次通過してもよい。
【0016】
任意選択で、前記遅延解放リアベースに対して遠位に位置する前記内側チューブの部分には、前記遅延解放リアベースのチャネルの直径よりも大きい外径を有する制限ブロックが設けられてもよい。
【0017】
同じ発明の概念に基づいて、本発明はまた、
ステントの近位端を送達システムの遅延解放部材に固定するステップと、前記ステントの周囲に巻き付けられた少なくとも1つの拘束糸で前記ステントを捲縮するステップであって、前記少なくとも1つの拘束糸が、制御ガイドワイヤの制御下で閉ループ構造として構成される、ステップと、捲縮された前記ステントを、前記送達システムの内側チューブ及び遅延解放部材とともに前記送達システムの外側チューブの内腔に圧縮及び装填するステップであって、前記外側チューブの遠位端がハンドルに固定接続される、ステップと、を含む、ステント装填方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比較して、本発明は、以下の利点を有する。
【0019】
ハンドルと、外側チューブと、拘束部材と、遅延解放部材とを含む本発明のステント送達システムは、構造が簡単であり、使用しやすい。遅延解放部材は、ステントの近位端部(すなわち、標的病変部位に近い端部)と組み立てることができ、拘束部材は、ステントを捲縮状態に拘束する。この組み立て部材を外側チューブに圧縮及び装填し、標的病変部位に送達して、解放することができる。ステントが拘束部材から解放される間、ステントの近位端部は、遅延解放部材に固定されるように維持される。そのため、ステントが血液によって後方に押されることを回避し、ステントの解放の位置精度を向上させる。また、拘束部材内の拘束糸は、制御ガイドワイヤの制御下で開閉されるため、制御ガイドワイヤがゆっくりと引き込められる場合、ステントの様々な部分が連続的に解放され、その近位端から遠位端への方向に沿って同じペースで拡張される。このように、ステントは、安定した方法で解放できるため、ステントの位置精度を更に向上させることを保証する。更に、ステントの近位端が遅延解放部材に固定されることに加えて、ステントの遠位端は、ステントの固定コイルにより内側チューブに固定することができる。これにより、ステントがその中央部分の解放中に前方又は後方に移動することを回避し、真の正確な位置制御の下でステントを解放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の特定の実施形態による、拘束部材によって結合されたステントを概略的に示す。
図2】本発明の特定の実施形態による、拘束部材によって結合されたステントを概略的に示す。
図3】本発明の特定の実施形態による、遅延解放部材がどのようにステントの近位端部と相互作用するかを概略的に示す。
図4】本発明の特定の実施形態による遅延解放リアベースの概略構造図である。
図5】本発明の特定の実施形態によるステント送達システムを使用したステントの送達の概略図である。
図6】本発明の特定の実施形態によるステント送達システムを使用したステントの送達の概略図である。
図7】本発明の特定の実施形態によるステント送達システムを使用したステントの送達の概略図である。
図8】本発明の特定の実施形態によるステント送達システムを使用したステントの送達の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の目的及び特徴は、添付図面を参照しながらいくつかの実施形態の以下の詳細な説明を読むことで、より容易に明らかになる。しかし、本発明は、様々な他の形態で具体化することができ、開示された実施形態に限定されない。本明細書に使用されるように、用語「近位端」とは、その通常の操作中に、それが展開される場所(例えば、心臓、血管の患部など)のより近くに位置する医療器具の端である、その前進方向におけるステント送達システムの先端と、医療器具を操作する人から遠くに位置する端とを指す。これに対して、「遠位端」とは、通常、それが展開される場所からより遠くに位置する医療器具の端である、操作者に近い端と、医療器具のハンドルに近い端とを指す。
【0022】
図1図8を参照すると、本発明の一実施形態では、ハンドルと、外側チューブ52と、拘束部材と、遅延解放部材4とを含むステント送達システムが提供される。
【0023】
図5図7を参照すると、外側チューブ52は、捲縮されたステント1を収容するための軸方向の内腔を規定し、ハンドルが操作される場合にステント1の遠位端に向かって引っ込められて、ステント1を露出させるように構成される。この実施形態によるステント送達システムは、また内側チューブ51も含み、内側チューブ51は、内側チューブ51と外側チューブ52との間に隙間が残され、ステント1が該隙間に受け入れられ得るように外側チューブ52内に配置される。遅延解放部材4は、内側チューブ51を通過させるチャネルを規定し、内側チューブ51の近位端は、遅延解放部材4の近位端に固定接続される。ステント1は、内側チューブ51上に配置することができ、その近位端部が遅延解放部材4と組み立てられ、残りの部分が捲縮状態で拘束部材によって結合される。ステント1のそのようなアセンブリの遠位端部及び中央部分、拘束部材及び遅延解放部材4は、外側チューブ52と内側チューブ51との間の隙間に一緒に移動可能に受け入れられ得る。
【0024】
この実施形態では、ステント送達システムによって送達することができるステント1は、カバードステント、又はアンカバードステント若しくはベアステントであってもよい。ベアステントは、一般的に、ステンレス鋼及び/又は金属形状記憶材料で製造された中空管状構造であり、内側チューブ51上に配置することができ、高分子膜で覆われていない。ベアステントを血管に送達するために、ベアステントの送達を容易にする非拡張構成に捲縮することができる。血管内の標的病変部位に送達されると、ベアステントは、弾力性により血管壁に局所的な力を加えることなく、血管の湾曲した解剖学的構造に一致する構成に拡張することができ、このため、合併症の発生を引き起こす可能性がある。ベアステントは、例えば、金属メッシュリングに交互に相互接続されたジグザグリングからなる中空管状構造又は金属メッシュで製造された中空管状構造であってもよい。カバードステントは、膜で覆われている金属ステント本体を有するという点で、ベアステントとは異なる。膜は、金属ステント本体の外面又は内面を完全に覆うことができる。或いは、膜は、金属ステント本体の中央部分のみを覆うことができる。また或いは、膜は、金属ステント本体の中央部分と遠位端部の両方を覆うことができる。更に或いは、膜は、不連続の方式で、金属ステント本体の中央部分の複数の部分を覆うことさえあり得る。膜はまた、一般的に中空管状構造であってもよく、内側チューブ51上に配置することができる。カバードステントは、湾曲した拡張構成と捲縮された非拡張構成をより容易に切り替えることができる。非拡張構成は、カバードステントの血管への送達を容易にすることができる。血管内の標的病変部位に送達されると、カバードステントは、合併症の発生を引き起こす可能性がある、弾力性により血管壁に局所的な力を加えることなく、解放されて、血管の湾曲した解剖学的構造に一致する拡張構成に切り替えることができる。カバードステントは、通常、金属ステント本体と、金属ステント本体の内面又は外面を覆う膜とを含む。金属ステント本体は、ステンレス鋼などの金属材料又は金属形状記憶材料で製造され、壁に開口部を有する弾性構造であってもよい。金属ステント本体は、圧縮及び捲縮、解放時に拡張、軸方向に伸縮することができ、放射状に波形にすることができる。したがって、金属ステント本体は、直径及び/又は長さが受動的に調整されることにより、カバードステントを、それが展開される血管の形状によりよく適合させて、エンドリークのリスクを低減することができる。金属ステント本体は、金属ワイヤから編まれた金属メッシュ、又は複数のストラットによって互いに固定接続された複数のジグザグリングからなる構造、又は複数のストラットによって互いに接続されたジグザグリング及び金属メッシュリングからなる構造であってもよい。
【0025】
図1図8に示す実施形態では、ステント1は、本質的に金属ステント本体と、金属ステント本体の表面を覆う膜とからなるカバードステントである。ステント1は、標的病変部位の近位にある近位端部10と、標的病変部位から遠く位置する遠位端部12と、近位端部10と遠位端部12との間の中央部分11とを有する。ステント1の近位端部は、膜によって覆われていないベアステント部分である一方、ステント1の金属ステント本体の外面は、中央部分11及び遠位端部12の両方で膜によって覆われている。好ましくは、ステント1の金属ステント本体は、ニッケルチタン(NiTi)合金などの金属形状記憶材料から製造され、この形状記憶材料は、形状記憶特性を有するので、他の材料の使用により生じる不十分な変形性の問題を回避することができる。ステント1の膜は、ポリエステル(PTET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、テリレン、ポリプロピレンなどの高分子材料で製造される。膜は、ポリエステル縫合糸で縫合されてもよく、金属ステント本体にプレス成形されてもよい。好ましくは、膜には、例えば白金イリジウム合金で製造された放射線不透過性マーカーが設けられていることにより、ユーザーは、放射線不透過性装置によりステント1の導入又は解放中にステント1の位置を動的に監視することができる。これにより、ステント1を最適な位置に調整することができ、ステントを高精度で解放することができる。
【0026】
図1図8に示す実施形態では、ベアステント部分10、すなわち、ステントの近位端部は、血管壁へのステント1の固着を補強するように構成される。それは、膜によって覆われていない少なくとも1つの波状リングを含んでもよい。波状リングは、金属ワイヤから編んでもよく、金属チューブを切断することにより製造されてもよい。或いは、それは、個別に配向されることで一般に爪に似ている複数の金属ワイヤを含んでもよく、金属メッシュで製造されてもよい。好ましくは、本発明によれば、ベアステント部分10には、好ましくはPTFEで製造された生体適合性バリア層が設けられている。PTFE層は、ベアステント部分10の金属ワイヤ又はチューブの表面にPTFEフィルムのストリップを巻き付けることにより形成されてもよい。或いは、それは、ベアステント部分10の表面に液体PTFEを吹き付けることにより形成されてもよい。このバリア層は、ベアステント部分の表面での血栓形成を防止し、二価のニッケルイオンなどの放出を抑制し、ベアステント部分10を体液中の塩化物及び他の腐食性イオンから保護することができる。それは、優れた血栓形成耐性、耐食性、及び有毒な金属イオンの溶解及び放出を防止する能力を備えている。ベアステント部分10は、直筒形、又は遠位端から近位端に向かって細くなっているフレア形、又は遠位端から近位端に向かって細くなっている円錐形を有してもよい。更に、ベアステント部分10は、複数の点でステント1の膜に固定されてもよく、膜により覆われる金属ステント本体の一部に一体化、溶接又は他の方法で連結されてもよい。
【0027】
図1図8を参照すると、拘束部材は、ステント1の中央部分11及び遠位端部12に設けられ、ステント1の中央部分11及び遠位端部12に対して開放又は閉鎖構成をとることができる。それは、閉鎖構成において、捲縮状態でステント1の中央部分11及び遠位端部12を結合し、開放構成において、ステント1の中央部分11及び遠位端部12を解放及び拡張させるように構成される。拘束部材は、少なくとも1つの拘束糸21及び制御ガイドワイヤ22を含む。拘束糸21は、ステント1の周囲に配置され、制御ガイドワイヤ22は、拘束糸21を、ステント1を圧縮又は解放するための開ループ又は閉ループ構造として構成するように構成される。
【0028】
図1及び図2に示す実施形態では、拘束部材は、少なくとも2つの拘束糸21を含み、全ての拘束糸21は、ステント1の金属ステント本体(すなわち、ステント1の主要部分)の軸方向に沿って互いに離間し、制御ガイドワイヤ22の制御下で、ステント1の直径を所望の値に制限するように構成される。隣接する拘束糸21間の間隔(すなわち、拘束糸によって巻き付けられていないステント1の部分)は、拘束糸21間又は制御ガイドワイヤ22と拘束糸21との間のもつれを回避するように提供される。好ましくは、拘束糸21は、人体に代謝されて吸収され得る材料で形成される。この実施形態では、各拘束糸21は、二本鎖であり、両端が閉鎖され、ステント1に少なくとも1回転巻き付けられ、その先端211がその後端212を通って挿入され、制御ガイドワイヤ22が順に先端211を通って挿入されるように構成されてもよい。このように、それは、閉ループ構造となる。或いは、各二本鎖拘束糸は、ステントに少なくとも1回転巻き付けられ、制御ガイドワイヤ22が先端211及び後端212の両方を通って挿入されることにより、閉ループ構造となるように構成されてもよい。更に、個別の拘束糸21は、ステント1に巻き付けられる場合、等しい直径、又は等しくない直径を規定してもよい。この実施形態では、制御ガイドワイヤ22がステント1の遠位端に向かって引き込められる場合、拘束糸21は、ステントの近位端から遠位端への方向に連続的に開ループ構造になる。その結果、ステント1は、拡張されて、解放される。
【0029】
本発明の代替的な実施形態では、各拘束糸21は、一本鎖であり、ステント1を捲縮状態で結合するようにステント1の所望の部分に少なくとも1回転巻き付けられるように構成されてもよい。更に、各拘束糸21の後端及び先端は、制御ガイドワイヤ22に結ばれて、制御ガイドワイヤ22の制御下で、ステント1を圧縮又は解放するための開ループ又は閉ループ構造になることができる。
【0030】
好ましくは、ステント1には、ステント1の金属ステント本体から突出する固着フック又は固定アイレットなどのファスナー31が設けられてもよい。拘束糸21の後端は、ステント1のファスナー31を通って挿入され、拘束糸21により形成された開ループ又は閉ループ構造は、外れることはない。これにより、拘束糸21の先端及び後端に対する制御ガイドワイヤ22の制御を容易にすることができる一方で、拘束糸21間及び制御ガイドワイヤ22と拘束糸21との間のもつれを回避することができる。
【0031】
図2を参照すると、この実施形態では、少なくとも1つの固定コイル32は、ステント1の遠位端部12に設けられてもよい。各拘束糸21は、対応する固定コイル32を通って挿入されるように構成される。各固定コイルは、内側チューブ51の遠位端に固定される遠位端を有してもよい。2つ以上のそのような固定コイルが設けられている場合、固定コイル32は、好ましくは、ステント1の遠位端部12の周囲に均等に分布する。このように、ステント1の遠位端部12は、均一に応力が印加され、不均衡な応力によりステント1が回転したり移動したりすることを回避する。更に、制御ガイドワイヤ22は、固定コイル32のうちのいくつかの近位端を通って挿入されてもよく、拘束糸21は、それぞれ、対応する残りの固定コイル32の1つの近位端を通って挿入される。この場合、制御ガイドワイヤ22が引き抜かれる場合、制御ガイドワイヤ22が近位端を通って挿入される固定コイル32は、解放され、それぞれの拘束糸21が近位端を通って挿入される固定コイル32は、ステント1の弾性拡張のために押しのけられる。その結果、ステント1は、遠位端部12で、拘束糸21から解放される。同時に、それぞれの拘束糸21が近位端を通って挿入される固定コイル32の遠位端が、依然として内側チューブ51内に固定されるため、ステント1の遠位端部12は、ステント1の解放及び弾性拡張中に引き込められるか又は他の方法で移動することなく、解放される前と同じ位置に留まることが保証される。
【0032】
図3及び図4に示す実施形態では、遅延解放部材4は、ステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)を拘束及び解放するように構成され、遅延解放部材4は、それぞれ内側チューブ51上に移動可能に配置され、内側チューブ51に固定される構成要素を有する。特に、遅延解放部材4は、円錐状先端41と、遅延解放固定具42と、遅延解放リアベース44と、複数の遅延解放スクリューロッド43と、遅延解放ガイドワイヤ46とを含んでもよい。円錐状先端41は、内側チューブ51の近位端に固定配置され、近位端(すなわち、直径方向に小さい端)を有し、該近位端は、その前進をガイドするための送達システムの先端として機能する。この端は、システムが前進している血管の抵抗を低減することにより、送達システムに装填されたステント1の送達を容易にすることができる。遅延解放スクリューロッド43と同じ数の固定孔410は、円錐状先端41の遠位端(すなわち、操作者に近い直径方向に大きい端)に設けられ、遅延解放スクリューロッド43と同じ数のガイド孔421は、遅延解放固定具42に設けられる。遅延解放スクリューロッド43の各々は、遅延解放リアベース44に固定された遠位端と、遅延解放固定具42のガイド孔421のそれぞれの1つを通って挿入され、円錐状先端41の固定孔410のそれぞれの1つに受け入れられる近位端とを有する。各遅延解放ガイドワイヤ46の近位端は、遅延解放リアベース44に固定される。カバードステント1の近位端にあるベアステント部分10は、円錐状先端41と遅延解放固定具42との間の遅延解放スクリューロッド43の部分に配置され、捲縮されるように構成される。代替的な実施形態では、遅延解放固定具42のガイド孔421は、リッジ又はスライドチャネルなどの他の構造に置き換えられることができる。
【0033】
カバードステント1を装填するために、ベアステント部分10の近位端を遅延解放スクリューロッド43上に配置し、次に遅延解放リアベース44を、限界に達するまで円錐状先端41に向かって押す。続いて、遅延解放スクリューロッド43は、遅延解放固定具42のそれぞれのガイド孔421のガイドの下で、円錐状先端41のそれぞれの固定孔410に挿入される。このように、ベアステント部分10は、円錐状先端41と遅延解放固定具42との間に遅延解放スクリューロッド43に固定される。カバードステント1を解放するために、ハンドルは、遅延解放ガイドワイヤ46を引き込めるように操作されることにより、遅延解放スクリューロッド43は、円錐状先端41の固定孔410から取り外されて、カバードステント1の近位端でのベアステント部分10を解放させる。その結果、ベアステント部分は、それ自体の弾力性によって拡張され、血管壁にしっかりと付着されるため、カバードステント1を所定の位置に固定する。各遅延解放ガイドワイヤ46は、遅延解放リアベース44の遠位端に固定される。
【0034】
したがって、この実施形態では、遅延解放部材4は、遅延解放スクリューロッド43によりステント1の近位端部を拘束及び解放することができ、遅延解放固定具42によりステント1の近位端部を効果的に拘束して、遅延解放スクリューロッド43の軸方向移動の信頼性を向上させることができる。また、遅延解放スクリューロッド43と固定孔410との間の接触面積が小さいため、ステント1の解放中に抵抗が減少し、その結果、解放プロセスの精度が向上する。
【0035】
この実施形態では、円錐状先端41、遅延解放固定具42及び遅延解放リアベース44は、内側チューブ51を移動可能に挿入するチャネルを規定する。内側チューブ51は、連続的にチャネルを通って挿入され、内側チューブ51の近位端が円錐状先端41の遠位端に連結される。内側チューブ51には、遅延解放リアベース44に対して遠位に位置する部分に制限ブロック45が設けられる。制限ブロック45は、遅延解放リアベース44のチャネル441の直径よりも大きい外径を有する。このように、周囲の血管に損傷をもたらさない範囲内で、ベアステント部分10の解放中に遅延解放リアベース44の変位を制限することができる(すなわち、遅延解放リアベース44の遠位端の移動に対する上記限界を定義する)。更に、遅延解放リアベース44がステント1の近位端に向かって移動する(すなわち、円錐状先端41から離れる)場合、制限ブロック45はまた、遅延解放リアベース44が停止しなければならない制限を提供する。これにより、遅延解放スクリューロッド43が遅延解放固定具42から外れることを防止する。この実施形態では、遅延解放スクリューロッド43は、ステンレス鋼又はニッケルチタン合金などの金属材料で製造されてもよい。ステントの装填及び解放の要件を満たすことに加えて、遅延解放固定具42と円錐状先端41との間の遅延解放スクリューロッド43の軸方向長さは、遅延解放スクリューロッド43のこれらの部分の剛性を高めるために十分に短い必要があり、このことで、カバードステント1の拡張に起因する遅延解放スクリューロッド43の変形量の減少につながることができる。
【0036】
更に、図4に示すように、チャネル441は、遅延解放リアベース44の中心に形成され、遅延解放スクリューロッド43を固定するための複数の第1のボア442は、チャネル441の周りに均一に分布する。例えば、第1のボア442の数は、6つであってもよい。第1のボア442は、チャネル441の周囲に等角度で分布し、第1のボア442の数は、遅延解放スクリューロッド43の数と同じである。遅延解放スクリューロッド43は、それぞれの第1のボア442に固定される。遅延解放ガイドワイヤ46を固定するための少なくとも1つの第2のボア443も、遅延解放リアベース44のチャネル441の周囲に形成される。第2のボア443の数は、遅延解放ガイドワイヤ46の数と同じであり、各遅延解放ガイドワイヤ46は、遅延解放リアベース44の遠位端から近位端まで、1つの第2のボア443に挿入され、次に、別の第2のボア443に折り曲げられる。遅延解放ガイドワイヤ46は、溶接、接着剤による接着、機械的係合を含むがこれらに限定されない任意の方法によって、第2のボア443に固定されてもよい。
【0037】
図1図8を参照すると、本発明の一実施形態では、ステントを装填、送達及び解放するための方法も提供される。例として、ステント1がカバードステント(以下、「カバードステント1」と呼ばれる)として実現される場合、本方法は、以下に詳述されるようなステップを含んでもよい。
【0038】
カバードステント1の装填は、以下の3つのステップで達成されてもよい。ステップ1)では、カバードステント1の近位端部を遅延解放部材に保持する。具体的には、遅延解放部材4は、事前に内側チューブ51と組み立てられ、遅延解放スクリューロッド43は、遅延解放固定具42のそれぞれのガイド孔421を通って挿入され、次に、カバードステント1は、内側チューブ51上に配置され、カバードステント1の近位端が遅延解放部材4の近位端の近くの位置に到達するまで、内側チューブ51上を移動する。カバードステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)10は、遅延解放スクリューロッド43に嵌設され、次に、遅延解放部材4の遅延解放ガイドワイヤ46が作動されて、遅延解放部材4の遅延解放リアベース44が、内側チューブ51上を円錐状先端41に向かって移動する。遅延解放リアベース44により駆動され、遅延解放固定具42のガイド孔421によりガイドされ、遅延解放スクリューロッド43は、円錐状先端41のそれぞれの固定孔410に挿入されるため、カバードステント1のベアステント部分10を固定する。ステップ2)では、カバードステント1を拘束糸21に結合する。具体的には、拘束糸21は、縫合及び巻き付けによりステントの周囲に配置され、制御ガイドワイヤ22の制御下で複数の閉ループ構造(すなわち、糸リング)として構成される。これらの閉ループ構造は、捲縮状態で、ステント1の中央部分11及び遠位端部12を内側チューブ51上に制限することができる。例えば、各拘束糸21は、二本鎖であり、両端が閉鎖され、ステントに拘束糸21を少なくとも1回転巻き付けることにより閉ループ構造として構成され、その先端211がその後端212を通って挿入され、制御ガイドワイヤ22が順に先端211を通って挿入されるように構成されてもよい。これにより、カバードステント1の近位端部は、遅延解放部材4に固定され、カバードステント1の中央部分11及び遠位端部12は、拘束糸及び制御ガイドワイヤ22により固定される。ステップ3)では、カバードステント1を外側チューブ52に圧縮及び装填する。具体的には、遅延解放部材4と、拘束部材と、カバードステント1と内側チューブ51との組み立て部材は、外側チューブ52の内腔に装填されることを可能にする最小の可能な直径に圧縮される。装填後に、外側チューブ52は、外側チューブ52の近位端が円錐状先端41の近位端と接触するまで内側チューブ51上を移動することにより、カバードステント1は、外側チューブ52に完全に収容される。その後、外側チューブ52の遠位端は、ハンドルに固定される。
【0039】
カバードステント1の送達及び解放は、上述したそれぞれのステップに対する3つのステップで達成されてもよい。ステップ1)では、外側チューブ52内で、カバードステント1を血管7の標的病変部位の近くの位置(又は指定された位置)に送達する。このように、初期ポジショニングを達成して、外側チューブ52を引き抜く。具体的には、送達前に、ポジショニングガイドワイヤ6の先端は、穿刺切開を通って導入され、血管7の標的病変部位の近くの位置(又は指定された位置、例えば、大動脈解離)に進められる。送達中に、互いに嵌設され両者の間の隙間にステント1が装填された内側チューブ51及び外側チューブ52は、外側チューブ52の近位端が血管7の標的病変部位の近くの位置に到達するまで、ポジショニングガイドワイヤ6に沿って血管7内に送達される。このプロセスにおいて、カバードステント1の近位端部10(すなわち、ベアステント部分)及び遠位端部12の両方が固定されるため、カバードステント1は、外側チューブ52又は内側チューブ51に対して移動しない。図5に示すように、初期ポジショニングは、カバードステント1が外側チューブ52によって血管7の標的病変部位の近くの位置に送達されるときに達成される。その後、外側チューブ52が引き抜かれ、内側チューブ51が保持されたままであることにより、カバードステント1の少なくとも全ての構成要素は、近位端部(すなわち、ベアステント部分)10から遠位端部12まで完全に露出される。任意選択で、図6に示すように、カバードステント1の遠位端部12の近位にある内側チューブ51の一部が露出されてもよい。このとき、カバードステント1は、遅延解放部材4、拘束部材及び制御ガイドワイヤ22によって、依然として内側チューブ51上の所定の位置に保持されている。ステップ2)では、カバードステント1が正確に配置されると、拘束糸21をステント1の近位端から遠位端までの方向に沿って連続的に緩めることにより、カバードステント1をこの方向に徐々に拡張させる。具体的には、カバードステント1の正確なポジショニングは、内側チューブ51の位置を調整することにより達成される。その後、内側チューブ51が保持されると同時に制御ガイドワイヤ22が引き込められることにより、カバードステント1上の個々の拘束糸21は、カバードステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)10からカバードステント1の遠位端部12までの方向に連続的に緩められる。その結果、カバードステント1の中央部分11及び遠位端部12は、連続的に解放され、血管の解剖学的構造に応じて適切なサイズに拡張する。つまり、拡張構成でのステントは、血管7のサイズに適合したサイズを有する。カバードステント1の解放の速度は、制御ガイドワイヤ22がどれだけ速く引き抜かれるかに依存する。制御ガイドワイヤ22がより速く引き抜かれるほど、カバードステント1の解放はより速くなる。ステップ3)では、カバードステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)10の遅延解放は、遅延解放部材4により達成される。具体的には、遅延解放部材4の遅延解放ガイドワイヤ46は、遅延解放リアベース44を円錐状先端41から離れるように駆動するように作動されるため、遅延解放スクリューロッド43を円錐状先端41の固定孔410から取り外し、遅延解放固定具42のガイド孔421内にドッキングして戻す。その結果、カバードステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)10は、遅延解放スクリューロッド43から完全に解放される。このように、カバードステント1の近位端部(すなわち、ベアステント部分)10は、遅延解放部材4から完全に取り外される。カバードステント1の解放された近位端部(すなわち、ベアステント部分)10は、拡張し、血管7の標的病変部位で組織に固着されることにより、カバードステント1を血管7に固定する。続いて、内側チューブ51は、内側チューブ51と遅延解放部材4の両方が患者の体から引き抜かれるまで引き込まれ、拘束糸21は、患者の体に残り、続いてポジショニングガイドワイヤ6が引き抜かれる。このように、カバードステント1は、患者の体内に埋め込まれる。
【0040】
要約すれば、ハンドルと、外側チューブと、拘束部材と、遅延解放部材とを含む本発明のステント送達システムは、構造が簡単であり、使用しやすい。遅延解放部材は、ステントの近位端部(すなわち、標的病変部位に近い端部)と組み立てることができ、拘束部材は、ステントを捲縮状態に結合する。この組み立て部材を外側チューブに圧縮及び装填し、標的病変部位に送達して、解放することができる。ステントの中央部分が拘束部材から解放される間、ステントの近位端部は、遅延解放部材に固定されるように維持される。そのため、ステントが血液によって後方に押されることを回避し、ステントの解放の位置精度を向上させる。また、拘束部材内の拘束糸は、制御ガイドワイヤの制御下で開閉されるため、制御ガイドワイヤがゆっくりと引き込められる場合、ステントの様々な部分が連続的に解放され、その近位端から遠位端への方向に沿って同じペースで拡張される。このように、ステントは、安定した方法で解放できるため、ステントの位置精度を更に向上させることを保証する。更に、ステントの近位端が遅延解放部材に固定されることに加えて、ステントの遠位端は、ステントの固定コイルにより内側チューブに固定することができる。これにより、ステントがその中央部分の解放中に前方又は後方に移動することを回避し、真の正確な位置制御の下でステントを解放することができる。
【0041】
明らかに、当業者であれば、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な修正及び変更を行うことができる。したがって、本発明は、そのような全ての修正及び変更が本発明の添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内にある場合、そのような全ての修正及び変更を包含することを意図する。
【符号の説明】
【0042】
1 ステント又はカバードステント
10 ステントのベア部分又は近位端部
11 ステントの中央部分
12 ステントの遠位端部
21 拘束糸
211 拘束糸の先端
212 拘束糸の後端
22 制御ガイドワイヤ
31 ステント上のファスナー
32 固定コイル
4 遅延解放部材
41 円錐状先端
410 円錐状先端上の固定孔
42 遅延解放固定具
421 遅延解放固定具上のガイド孔
43 遅延解放スクリューロッド
44 遅延解放リアベース
441 遅延解放リアベース上のチャネル
442 第1のボア
443 第2のボア
45 制限ブロック
46 遅延解放ガイドワイヤ
51 内側チューブ
52 外側チューブ
6 ポジショニングガイドワイヤ
7 血管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8