(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】超音波検査のための位相ベースのアプローチ
(51)【国際特許分類】
G01N 29/07 20060101AFI20240719BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N29/07
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2022552313
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 CA2021050222
(87)【国際公開番号】W WO2021168565
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-30
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522343027
【氏名又は名称】エヴィデント・カナダ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・パンショー-エイプリル
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ル・デュフ
(72)【発明者】
【氏名】チ-ハン・クワン
(72)【発明者】
【氏名】シャルル・ブリヨン
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0284972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184716(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0021697(US,A1)
【文献】国際公開第2013/168414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-G01N 29/52
G01S 15/00-G01S 15/96
A61B 8/00-A61B 8/15
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの音響評価のためのマシン実装方法であって、
複数の電気音響トランスデューサのうちの選択された送信トランスデューサを介してそれぞれの音響伝送イベントを生成することと、
前記それぞれの音響伝送イベントに応答して、前記複数の電気音響トランスデューサのうちの他の受信トランスデューサからそれぞれの音響エコー信号を受信することと、
前記それぞれの受信音響エコー信号を量子化することと、
少なくとも1つのそれぞれの量子化された音響エコー信号の表現から瞬時位相信号のタイムドメイン表現を構築することと、を含
み、
前記量子化された受信音響エコー信号の前記表現が、前記受信音響エコー信号の二値化された表現におけるエッジ遷移の時間指標を示すデータを含む、マシン実装方法。
【請求項2】
前記それぞれの受信音響エコー信号の前記量子化が、第1のデバイスを使用して実施され、
前記マシン実装方法が、前記量子化された受信音響エコー信号のそれぞれの表現を第2のデバイスに送信することを含み、
前記瞬時位相信号の前記タイムドメイン表現の前記構築が、Aスキャン表現または画像のうちの少なくとも1つの構築に使用するために前記第2のデバイス上で実施される、請求項
1に記載のマシン実装方法。
【請求項3】
多数の量子化されたエコー信号からの位相データを集約して、Aスキャン時系列、前記ターゲットの指定された空間位置に対応するピクセル値、または前記ターゲットの前記指定された空間位置に対応するボクセル値のうちの少なくとも1つを生成することを含む、請求項1
または2に記載のマシン実装方法。
【請求項4】
ノイズに対応する前記ピクセルまたはボクセル値への寄与を抑制または防止することを含む、請求項
3に記載のマシン実装方法。
【請求項5】
前記瞬時位相信号の前記タイムドメイン表現が、区分構造を含み、
前記区分構造が、2πラジアンの位相差が割り当てられたセグメントを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のマシン実装方法。
【請求項6】
前記区分構造におけるセグメントの傾きが、前記音響エコー信号の量子化された表現の隣接する立上りエッジ遷移間の持続時間を決定することによって少なくとも部分的に確立される、請求項
5に記載のマシン実装方法。
【請求項7】
前記区分構造が、前記量子化された表現の第1の立上りエッジに対応する時間指標と、次の立上りエッジに対応する前記量子化された表現の後の時間指標との間に2πラジアンの位相差を割り当てて、前記セグメントの前記傾きを画定することを含む、請求項
5または
6に記載のマシン実装方法。
【請求項8】
前記区分構造が、前記量子化された表現の第1の立上りエッジに対応する時間指標と、第1の立下りエッジに対応する前記量子化された表現の後の時間指標との間にπラジアンの位相差を割り当てて、前記セグメントの前記傾きを画定することを含む、請求項
5または
6に記載のマシン実装方法。
【請求項9】
前記区分構造が、前記量子化された表現の前記第1の立下りエッジに対応する前記時間指標と、第2の立上りエッジに対応する前記量子化された表現の後の時間指標との間にπラジアンの別の位相差を割り当てて、別のセグメントの傾きを画定することを含む、請求項
8に記載のマシン実装方法。
【請求項10】
ターゲットの音響評価のための装置であって、
複数の電気音響トランスデューサのうちの選択された送信トランスデューサを介してそれぞれの音響伝送イベントを生成する駆動電気回路構成と、
前記複数の電気音響トランスデューサのうちの他の受信トランスデューサからのそれぞれの音響エコー信号の同相および直交表現を提供するためのコヒーレント受信器トポロジを含む受信器電気回路構成と、
前記それぞれの音響エコー信号をデジタル化するためのアナログ対デジタル変換電気回路構成と、
前記デジタル化されたエコー信号に対応する位相データを集約するためのプロセッサ電気回路構成と、を備え
、
前記装置は、請求項1から9のいずれか一項に記載のマシン実装方法を実施するように構成された、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本特許出願は、(1)Painchaud-April他、2020年2月28日に出願された、「PHASE-BASED APPROACH FOR ULTRASONIC INSPECTION」と題された、米国仮特許出願第62/983,172号(代理人整理番号6409.011PRV)、および(2)Painchaud-April他、2020年10月5日に出願された「PHASE-BASED APPROACH FOR ULTRASONIC INSPECTION」と題された米国仮特許出願第63/087,521号(代理人整理番号6409.011PV2)それぞれの優先権の恩恵を主張し、それら各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本文書は、限定するものではないが、一般的に、非破壊的評価に関わり、より具体的には、取得した位相データを使用して超音波検査するための装置および技術に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な検査技術は、そのような構造を損傷することなく、構造を撮像またはさもなければ分析するために使用され得る。例えば、X線検査、渦電流検査、または音響(例えば、超音波)検査のうちの1つ以上を使用して、試験試料上または試験試料内の特徴の撮像のためのデータを取得することができる。例えば、音響撮像は、試験試料内の関心領域を撮像するためなど、超音波トランスデューサ要素のアレイを使用して実施され得る。
【発明の概要】
【0004】
超音波ベースの検査などの音響試験は、試験試料内の関心領域を表すデータプロットまたは画像の構築を助けるために合焦またはビーム形成技術を含むことができる。超音波トランスデューサ要素のアレイの使用は、位相アレイビーム形成アプローチの使用を含むことができ、位相アレイ超音波試験(PAUT)と呼ばれ得る。例えば、それぞれのトランスデューサ要素またはアパーチャからの受信音響信号のタイムドメイン表現をコヒーレントに合計することを含むような、遅延和ビーム形成技術を使用することができる。別のアプローチでは、アレイ内の1つ以上の要素(またはそのような要素によって画定されるアパーチャ)が音響パルスを送信するために使用され、他の要素が散乱または反射された音響エネルギーを受信するために使用され、送信がアレイ内の異なる要素(または対応するアパーチャ)から発生している送受信サイクルのシーケンスに対応する時系列(例えば、Aスキャン)表現のマトリクスが構築される、トータルフォーカシング法(TFM)技術を使用することができる。Aスキャンデータがアレイ内の各要素(または各画定されたアパーチャ)について取得されるこのようなTFMアプローチは、「フルマトリクスキャプチャ」(FMC)技術と呼ばれ得る。
【0005】
本発明者らは、とりわけPAUTまたはTFM用途のいずれかのために時系列Aスキャンデータを捕捉することは、かなりのボリュームのデータを生成することを含み得ることを認識している。例えば、Aスキャン時系列データは、対応する振幅分解能(例えば、8ビットまたは12ビットの分解能)および時間分解能(例えば、毎秒数十または数百のメガ試料を超える試料レートに対応する)を有するような、アナログ対デジタル変換を通じて得られ得る。そのような「フル」振幅および時間分解能は、そのような信号の全帯域幅および全分解能分析表現として後の処理のために、受信Aスキャンレコードごとの時系列データのギガビットを結果として生じ得る。そのようなボリュームのデータは、デバイス間での転送、または記憶するのに煩雑であり得る。そのようなボリュームのデータは、さもなければ、音響試験を実施するために使用されるトランスデューサ要素またはアパーチャ要素のカウントを実質的に制限し得る。そのような技術的課題に対処するために、本発明者は、とりわけ、位相ベースのアプローチが、音響検査をサポートするために取得、記憶、または後続の分析(例えば、Aスキャン再構築またはTFM撮像)のうちの1つ以上に使用され得ることを認識している。例えば、本発明の主題は、時系列信号(例えば、Aスキャン)取得に関連付けられたデータボリュームを圧縮するために二値化または他の量子化技術の使用を含むことができる。時系列信号からの位相情報の表現は、二値化された、またはさもなければ量子化された時系列信号を処理することなどによって生成され得る。
【0006】
例えば、二値化されたデータ内のエッジ遷移を示す時間的データは、元の時系列Aスキャン信号の瞬時位相に対応する瞬時位相信号のタイムドメイン表現の構築において後で使用するために記憶または送信されるうちの1つ以上であり得る。エッジ遷移を示すそのような時間的データは、フル分析表現と比較して、取得された時系列データの圧縮された(例えば、より小さなデータボリューム)表現を表すことができる。そのようなデータ転送負荷の低減は、例えば、他のアプローチと比較して、単純化された音響トランシーバのフロントエンド構成(例えば、アナログ対デジタル変換、特に振幅分解能に関連する緩和仕様)、より高いチャネルカウント、より速い取得、または新規の検査システムトポロジのうちの1つ以上を容易にするなど、音響試験プロトコルおよび装置の様々な強化を容易にし得る。例示として、指定されたデータ転送レート(例えば、「帯域幅」)が利用可能である場合、位相ベースの技術の使用は、振幅および位相情報を含むフル分析信号を伴う一般的に利用可能なPAUTまたはTFMアプローチと比較して、同じ帯域幅についてより高いチャネルカウントまたは取得レート(例えば、「フレームレート」)を可能にすることができる。
【0007】
二値化されたアプローチが位相情報を表すために使用されるかどうかに関わらず、本明細書に記載される位相ベースのアプローチは、元の時系列取得からの振幅情報が必要とされない位相加算技術の使用を含むことができる。そのような位相加算技術を使用して、例示的な例として、(例えば、パルスエコーAスキャン検査のための)Aスキャン再構築、またはTFM撮像のうちの1つ以上を実施することができる。そのような位相加算アプローチでは、位相データの時系列表現は、各時系列が適切な遅延値だけ遅延され(または位相回転され)、次いで集約され得る(例えば、試料ごとに分析的に加算される)場合などに、加算され得る。時系列位相データは、取得された時系列位相情報の圧縮された表現から回復された、またはそうでなければ構築されたような、上述のような瞬時位相信号の再構築を含むことができる。
【0008】
本発明者らは、とりわけ、例えば、指定された焦点位置または複数の焦点位置において、試験試料上または試験試料内の特徴は、非電離化されたときに、到着時間の差を考慮して、パルスエコー信号がコヒーレント位相を有するように、音響プローブアレイにおけるトランスデューサにおいて対応するパルスエコー信号を生成するために、音響エネルギーを散乱または反射することができることを認識している。そのような位相コヒーレンスは、元々取得されたAスキャンパルスエコー信号からの振幅情報の使用を必要とすることなく、タイムドメイン位相信号表現の集約(例えば、合計)を可能にする。上述したように、受信したタイムドメインエコー信号の「振幅なし」表現と呼べるものを生成するような1ビットサンプリングアプローチを、後でそのような位相加算アプローチで使用するために使用することができる。位相データを使用してAスキャン合計または撮像を実施するために二値化は必要ではないが、位相加算と同時に二値化を使用することは、とりわけ、トランスデューサアレイカウントを増強するか、受信チャネルアーキテクチャを簡略化するか、またはその両方を実現することができる。例えば、データ転送帯域幅を維持または減少しながら、より多くのカウントのトランスデューサまたはアパーチャを取得に使用することができる。別の例では、受信チャネルアーキテクチャは、サンプリング中に振幅ビット分解能を低減する、またはマルチビットのアナログ対デジタル変換を排除するなど、簡略化することができる。
【0009】
一例では、システムまたは装置は、ターゲットの音響評価のためのマシン実装方法などの技術を実装することができ、この方法は、複数の電気音響トランスデューサのうちの選択された送信トランスデューサを介してそれぞれの音響伝送イベントを生成することと、それぞれの音響伝送イベントに応答して、複数の電気音響トランスデューサのうちの他の受信トランスデューサからそれぞれの音響エコー信号を受信することと、を含む。方法は、それぞれの受信音響エコー信号を量子化し、少なくとも1つのそれぞれの量子化された音響エコー信号の表現から瞬時位相信号のタイムドメイン表現を構築することを含み得る。
【0010】
一例では、方法は、第1のデバイスを使用して受信音響エコー信号を量子化することを含み得、マシン実装方法は、量子化された受信音響エコー信号のそれぞれの表現を第2のデバイスに送信することを含み、瞬時位相信号のタイムドメイン表現の構築は、Aスキャン表現または画像のうちの少なくとも1つを構築する際に使用するために第2のデバイス上で実施される。
【0011】
一例では、方法は、量子化された受信音響エコー信号の表現が、受信音響エコー信号の二値化された表現におけるエッジ遷移の時間指標を示すデータを備えることを含むことができる。一例では、方法は、多数の量子化されたエコー信号からの位相データを集約して、Aスキャン時系列、ターゲットの指定された空間位置に対応するピクセル値、またはターゲットの指定された空間位置に対応するボクセル値のうちの少なくとも1つを生成することを含み得る。一例では、ピクセルまたはボクセル値の生成は、位相データの同相および直交タイムドメイン表現に適用されるトータルフォーカシング法(TFM)技術を使用して、それぞれの受信音響エコー信号を合計することを含む。
【0012】
本概要は、本特許出願の主題の概要を提供することを意図する。本発明の排他的または網羅的な説明を提供することを意図しない。詳細な説明は、本特許出願に関するさらなる情報を提供するために含まれる。
【0013】
特許または出願ファイルには、少なくとも1つのカラーで実行された図面が含まれる。カラー図面を含む本特許または特許出願公開書類の写しは、必要な料金を請求および支払うことにより、オフィスによって提供される。
【0014】
必ずしも正確な縮尺率で描かれていない図面において、同様の数字は、異なる図面において同様の構成要素を説明してもよい。異なる文字接尾辞を有する同様の数字は、類似の構成要素の異なるインスタンスを表すことができる。図面は、限定するものではないが、概して、本文書で論じられる様々な実施形態を例として例示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書に示され、説明されるように、少なくとも一部分の1つ以上の技術を実施するために使用され得るような、音響検査システムを含む例を概して示す。
【
図2A】本明細書に示され、説明されるような1つ以上の技術のうちの少なくとも一部分を実施するために使用され得るような、音響検査システムの一部分として含まれ得るような受信器信号チェーンを含む例を概して示す。
【
図2B】本明細書に示され、説明されるような1つ以上の技術のうちの少なくとも一部分を実施するために使用され得るような、音響検査システムの一部分として含まれ得るような受信器信号チェーンを含む別の例を概して示す。
【
図3A】取得されたAスキャン信号に対応するような「生の」時系列の例示的な例を概して示す。
【
図3B】
図3Aに示される時系列の一部分に対応する、正規化された時系列および正規化された時系列の対応する二値化された表現、例えば、取得されたAスキャン信号およびその対応する二値化された表現の例示的な例を概して示す。
【
図3C】
図3Bの正規化された時系列の一部分、
図3Bの正規化された時系列の対応する二値化された表現、および対応する瞬時位相信号の例示的な例を概して示す。
【
図4A】一般に、二値化された時系列(
図4Bに示される)における遷移(例えば、立上りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図4Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図4Cに示される)の表現を構築するために使用され得る第1の技術を集合的に概して示す。
【
図4B】一般に、二値化された時系列(
図4Bに示される)における遷移(例えば、立上りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図4Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図4Cに示される)の表現を構築するために使用され得る第1の技術を集合的に概して示す。
【
図4C】一般に、二値化された時系列(
図4Bに示される)における遷移(例えば、立上りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図4Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図4Cに示される)の表現を構築するために使用され得る第1の技術を集合的に概して示す。
【
図4D】
図3Cに示される二値化の前の実際の取得された瞬時位相と比較したときの、
図4Cで構築された瞬時位相の表現の間の比較を概して示す。
【
図5A】二値化された時系列(
図5Bに示される)における遷移(例えば、立上りおよび立下りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図5Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図5Cに示される)の表現を構築するために使用することができる第2の技術を集合的に概して示す。
【
図5B】二値化された時系列(
図5Bに示される)における遷移(例えば、立上りおよび立下りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図5Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図5Cに示される)の表現を構築するために使用することができる第2の技術を集合的に概して示す。
【
図5C】二値化された時系列(
図5Bに示される)における遷移(例えば、立上りおよび立下りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図5Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図5Cに示される)の表現を構築するために使用することができる第2の技術を集合的に概して示す。
【
図5D】第1の方法を使用して
図4Cで構築された瞬時位相の表現、第2の方法を使用して
図5Cで構築された瞬時位相の表現、および
図3Cに示される二値化の前の実際の取得された瞬時位相の比較を概して示す。
【
図6A】位相加算TFM撮像技術に使用され得るような、位相信号からの同相および直交信号を提供するために使用され得る受信信号チェーンの一部分を含む例を概して示す。
【
図6B】位相加算TFM撮像技術に使用され得るような、同相および直交表現の二値化を含む、位相信号からの同相および直交信号を提供するために使用され得る受信信号チェーンの一部分を含む別の例を概して示す。
【
図7】取得されたAスキャン信号に対応する取得された時系列の対応する二値化された表現と共に、
図6Aに示される信号チェーンを使用して提供され得るような同相および直交信号の例示的な例を概して示す。
【
図8A】
図8Bに例示的に示されるように、位相ベースの加算アプローチを使用してAスキャンの再構築に使用される焦点領域の表現と共に、音響プローブアセンブリおよびターゲットを含む音響検査構成を概して示す。
【
図8B】
図8Aに示される領域において焦点を提供するためにそれぞれ遅延された複数の取得された位相信号の例示的な例、および位相ベースの加算アプローチによるそのような信号の対応する合計を概して示す。
【
図9A】
図9Bに例示的に示されるように、位相ベースの加算アプローチを使用してAスキャンの再構築に使用される焦点領域の表現と共に、音響プローブアセンブリおよびターゲットを含む音響検査構成を概して示す。
【
図9B】
図9Aに示される領域において焦点を提供するためにそれぞれ遅延された複数の取得された位相信号の例示的な例と、位相ベースの加算アプローチによるそのような信号の対応する合計とを概して示す。
【
図10A】音響プローブアセンブリおよびターゲットを含む音響検査構成を概して示す。
【
図10B】位相加算アプローチを使用して構築されたオーバーレイTFM画像を含む音響検査構成を概して示す。
【
図10C】位相加算アプローチを用いて構築されたTFM画像からのインレイ詳細領域を含む音響検査構成を概して示す。
【
図11】位相加算アプローチの異なるバリエーションを使用して構築された、
図10Cからのインレイ詳細領域のTFM画像の例示的な例を概して示す。
【
図12】フィルタリング技術と共に位相加算アプローチの異なるバリエーションを使用して構築された、
図10Cからのインレイ詳細領域のTFM画像の例示的な例を概して示す。
【
図13】音響エコー信号をデジタル化し、瞬時位相信号のタイムドメイン表現を構築することを含む、方法などの技術を概して示す。
【
図14】音響エコー信号をシングルビット量子化(例えば、二値化)することと、二値化された音響エコー信号におけるエッジ遷移の時間指標を示すデータを含む受信音響エコー信号の表現を生成することとを含む、別の方法などの別の技術を概して例示する。
【
図15】本明細書で説明される技術(例えば、方法論)のうちのいずれか1つ以上が実施され得るマシンを含む例のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、音響検査(例えば、超音波検査)において、本発明者は、とりわけPAUTまたはTFM用途のために時系列Aスキャンデータを捕捉することは、かなりのボリュームのデータを生成することを含み得ることを認識している。様々な技術的課題に対処するために、本発明者らは、とりわけ、位相ベースのアプローチが、音響検査をサポートするために、取得、記憶、または後続の分析(例えば、Aスキャン再構築または撮像)のうちの1つ以上に使用され得ることを認識している。位相ベースのアプローチを使用すると、他の技術的課題にも対処することができる。例えば、超音波トランスデューサアレイから取得されたパルスエコー振幅データが、例示的な例として、(送信器要素、受信器要素、または散乱体からの)回折効果、異なる構造的特性を有するインターフェースでの送信/反射、信号の幾何学的減衰、および吸収または摩擦損失のうちの1つ以上などの様々な要因によって影響を受ける可能性があるため、チャレンジが存在し得る。本発明者らは、とりわけ、上述の要因が振幅に影響を及ぼすことを認識しており、一般に経験的測定によって補償される(例えば、時間補正ゲイン(TCG)および角度補正ゲイン(ACG)を使用するなど)。したがって、分析表記法が受信信号の合計を参照するために使用される場合、上記の補償(TCGおよびACG)は、Q×P要素アレイに関して、個々の要素振幅項(「a
qp(r)」)に影響を及ぼし、qおよびpは、要素指標を表す。
【数1】
(EQN.1)
【0017】
EQN1において、A(r)は、ベクトル「r」によって記述される空間位置のピクセルまたはボクセル値を表し、a
qpは、要素インデックスqおよびpにおける対応する送信-受信ペアの振幅成分を表す。結果として、そのようなチャレンジを是正するために、本発明者は、とりわけ、そのような振幅項が加算プロセスから除外されることができることを認識し、位相関連コヒーレンス項が加算されることになる
【数2】
。
【数3】
(EQN.2)
【0018】
そのような因数分解の使用によって、振幅に影響を及ぼす要因は抑制される(そのような要因は、今や合計の「外側」に移動された項に影響を及ぼす可能性があるため)が、位相関連項(例えば、散乱体または関心のある他の特徴に関連付けられている)は残る。本明細書の他の場所で言及されるように、瞬時位相信号の個々のタイムドメイン表現は、取得、圧縮、および再構築され得る。収集は、振幅および位相情報を使用する既存のアプローチと比較して、減少したダイナミックレンジを有するフロントエンド構成を使用して行うことができる。瞬時の受信位相信号の圧縮された表現は、さらなる分析、処理、または記憶のために他のデバイスにそのようなデータを有線または無線送信することを含む、試験または撮像システム内のデバイス間または機能ブロック間の取得されたタイムドメインデータの効率的な転送を可能にする。取得されたエコー信号に対応する瞬時位相信号の表現の再構築は、Aスキャン再構築または撮像(例えば、TFM撮像)を容易にする。
【0019】
図1は、本明細書に示され、説明されるように、少なくとも一部分の1つ以上の技術を実施するために使用され得るような、音響検査システム100を含む例を概して示す。検査システム100は、手持ち型または携帯型アセンブリなどの試験器具140を含むことができる。試験器具140は、マルチコンダクタインターコネクト130を使用するなど、プローブアセンブリに電気的に結合されてもよい。プローブアセンブリ150は、それぞれのトランスデューサ154A~154Nを含むトランスデューサアレイ152などの1つ以上の電気音響トランスデューサを含むことができる。トランスデューサアレイは、線形または湾曲した輪郭に従うことができ、またはトランスデューサ要素のマトリクスを提供するなど、2つの軸に延在する要素のアレイを含むことができる。要素は、フットプリントが正方形である必要はなく、直線軸に沿って配置される必要もない。要素の大きさおよびピッチは、検査用途に応じて変化され得る。
【0020】
試験器具140を様々な異なるプローブアセンブリ150と共に使用することを可能にするようなモジュール式プローブアセンブリ150構成を使用することができる。一般に、トランスデューサアレイ152は、例えば、結合媒体156を介してターゲット158(例えば、試験試料または「試験下オブジェクト」)に音響的に結合され得るような圧電トランスデューサを含む。結合媒体は、流体もしくはゲル、または固体膜(例えば、エラストマーもしくは他のポリマー材料)、または流体、ゲル、もしくは固体構造の組み合わせを含むことができる。例えば、音響トランスデューサアセンブリは、既知の音響伝播特性(例えば、C-Lec Plastics Inc.から入手可能なRexolite(登録商標))を有する剛性熱硬化性ポリマーを含むくさび構造に結合されたトランスデューサアレイを含むことができ、水は、試験中に結合媒体156として、くさびと試験下の構造との間に注入され得る。
【0021】
試験器具140は、1つ以上の送信信号チェーン、受信信号チェーン、またはスイッチング電気回路構成(例えば、送信/受信スイッチング電気回路構成)を含むフロントエンド回路122などのデジタルおよびアナログ電気回路構成を含むことができる。送信信号チェーンは、ターゲット158の非電離化のためにインターコネクト130を介してプローブアセンブリ150に送達するための送信パルスを提供する、非電離化に応答して引き出される散乱または反射された音響エネルギーを受信することによって、ターゲット158構造上またはその内部の欠陥160を撮像する、またはそうでなければ検出するような、増幅器およびフィルタ電気回路構成を含むことができる。
【0022】
図1は、単一のプローブアセンブリ150および単一のトランスデューサアレイ152を示すが、単一の試験器具140に接続された多数のプローブアセンブリ、またはタンデム検査のために単一または多数のプローブアセンブリ150と共に使用される多数のトランスデューサアレイ152などの他の構成を使用することができる。同様に、試験プロトコルは、多数の試験器具140間の調整を使用して、例えば、マスター試験器具140から確立された、または計算設備108などの別の遠隔システムまたはラップトップ132、タブレット、スマートフォン、デスクトップコンピュータなどの汎用コンピューティングデバイスによって確立された全体的な試験スキームに応答して、実施され得る。試験スキームは、公開された標準または規制要件に従って確立され得、例示的な例として、最初の製造時に、または継続的な監視のために繰り返し実施され得る。
【0023】
フロントエンド回路122の受信信号チェーンは、プローブアセンブリ150を使用して受信されたエコー信号をデジタル化するようなアナログ対デジタル変換設備と共に、1つ以上のフィルタまたは増幅器回路を含むことができる。デジタル化は、時間または位相において互いに整列または参照されるデジタル化されたデータの多数のチャネルを提供するように、コヒーレントに実施され得る。フロントエンド回路は、試験器具140の一部分として含まれるプロセッサ回路102などの1つ以上のプロセッサ回路に結合され、制御されてもよい。プロセッサ回路は、例えば、試験器具140に音響伝送、音響取得、処理、または音響検査に関連するデータの記憶のうちの1つ以上を実施させる命令を実行する、またはさもなければ、本明細書に示され、説明されるような技術を実施するように、メモリ回路に結合されてもよい。試験器具140は、有線または無線通信インターフェース120を使用するなどして、システム100の他の部分に通信可能に結合され得る。
【0024】
例えば、本明細書に示され、説明されるような1つ以上の技術の性能は、試験器具140上で、または計算設備108またはラップトップ132、タブレット、スマートフォン、デスクトップコンピュータなどの汎用コンピューティングデバイスを使用するなどの他の処理または記憶設備を使用して達成され得る。例えば、試験器具140上で実施される場合、または試験器具140の能力を超えて実行される場合、望ましくない遅さとなる処理タスクは、例えば、試験器具140からの要求に応答して、遠隔で(例えば、別個のシステム上で)実施され得る。同様に、例えば、時系列データまたは圧縮された位相データのAスキャンマトリクスなどの撮像データまたは中間データの記憶は、試験器具140に通信可能に結合された遠隔設備を使用して達成され得る。試験器具は、構成情報または結果の提示などのためにディスプレイ110と、オペレータコマンド、構成情報、またはクエリへの応答を受信するためのキーボード、トラックボール、ファンクションキーまたはソフトキー、マウスインターフェース、タッチスクリーン、スタイラスなどのうちの1つ以上を含む入力デバイス112とを含むことができる。
【0025】
図2Aは、本明細書に示され、説明されるような1つ以上の技術のうちの少なくとも一部分を実施するために使用され得る、音響検査システム100の一部分として含まれ得るような受信器信号チェーン200を含む例を概して示す。
図2の信号チェーン200は、本文書の様々な例に従って示され、説明されるような位相加算撮像技術を実施するために使用され得る。一般的に、
図2に示すような信号チェーン200はPAUTまたはTFM撮像に使用される音響トランスデューサアレイ内のトランスデューサによって受信されるようなタイムドメインパルスエコーy(t)を受信することができる。増幅器202は、アナログフロントエンド回路210の一部分として含まれ得る。増幅器は、アナログ対デジタル変換器に結合され得る。例えば、シングルビット(すなわち、「1ビット」)量子化または受信パルスエコー信号「y(t)」の「二値化」について、比較回路204を使用することができる。パルスエコー信号のデジタル表現は、206においてエッジ識別を実施する(例えば、パルスエコー信号のデジタル表現におけるエッジ遷移の時間的位置を識別する)ように、受信器信号チェーン200のデジタルブロック220に提供することができる。208において、例えば、
図4A、
図4B、および
図4C、または
図5A、
図5B、または
図5Cで本明細書に記載される第1または第2の技術に対応するような、位相推定アプローチを実装することができる。瞬時位相信号
【数4】
の結果として生じる推定値(例えば、「再構築」)はヒルベルト変換または他の技術などによって処理されて、同相、「I」、および直交、「Q」タイムドメイン信号を提供することができる。推定された瞬時位相信号から生成されたタイムドメイン信号は、一般的に利用可能なTFM撮像と同様の方法で、212においてTFMを介して撮像を実施するために使用することができるが、y(t)に類似する信号のグループ(例えば、基本的なAスキャンパルスエコー信号)によって表されるような、元の取得されたパルスエコー信号からのフルAスキャン振幅データを必要としない。214において、TFM画像のさらなる処理、例えば、ガンマ補正または空間フィルタリングのうちの1つ以上を実施する、または別の畳み込みマスクの適用を実施して、位相加算技術に基づいて216においてTFM画像を生成するために、実装され得る。
【0026】
図2Aのアナログフロントエンド回路210は、トランスデューサアレイ内の要素のカウントに対応する多数のチャネルを提供するように複製され得、またはフロントエンド回路210は、多数のトランスデューサ要素からのパルスエコー信号を取得するために、時間的にインターリーブされた様式で共有または多重化され得る。例示的な例として、アナログフロントエンド回路210は、325MHzのゲイン帯域幅積、140V/マイクロ秒のスルーレートおよび85ミリアンペアの出力電流を提供することができる、アナログデバイス(Woburn,MA)から利用可能なLT1806集積回路を使用するなど、37デシベル(dB)(+74×)のゲインを有する低ノイズ増幅器を含むことができる。二値化は、アナログデバイス(Woburn,MA)からも入手可能なLT1719集積比較回路を使用するなどして行うことができる。比較回路204は、ノイズによる不要な出力遷移を抑制するためなどのヒステリシスを提供することができる。アナログフロントエンド回路210またはフロントエンド回路210の一部分は、取得のために使用されないときにほぼゼロまたはゼロの電流消費モードに入るようなスタンバイまたはシャットダウン機能を含み得る。このようにして、フロントエンド回路210を収容する携帯型または手持ち式の検査器具は、例示的な例として、バッテリによって電力を供給され得、充電間の動作寿命を延ばすために動作エネルギーを保存することができ、または同じバッテリ寿命について、他のアプローチと比較してより高いチャネルカウントをサポートすることができる。
【0027】
デジタルブロック220において実施される処理の一部分または全体は、取得のために使用されるのと同じ物理的デバイスまたは器具上で実施される必要はない。例えば、比較回路204による二値化の後、二値化されたパルスエコー信号の表現は、下流処理のために別のデバイスまたはアセンブリに送信され得る。同様に、206におけるエッジ識別からの出力は、二値化されたパルスエコー信号に対応する位相データの「圧縮された」表現と呼ぶことができる。圧縮された表現は、下流処理のために別のデバイスまたはアセンブリに送信され得る。
【0028】
図2Bは、音響検査システムの一部分として含まれ得、本明細書に示され説明されるような1つ以上の技術のうちの少なくとも一部分を実施するために使用され得るような受信器信号チェーン240を含む別の例を概して示す。
図2Aの例とは対照的に、
図2Bでは、コヒーレント受信器トポロジが使用される。パルスエコー信号y(t)は、ローカル発振器218を使用してパルスエコー信号y(t)をベースバンド周波数範囲またはその付近の所望の周波数範囲にダウンコンバートするなど、それぞれのミキサー回路222Aおよび222Bに提供され得る。図示されているように、低域フィルタ回路を使用するなどして、不要な高調波または変調生成物を抑制することができる。結果として生じる同相信号および直交信号は、アナログドメインにおいて、またはデジタル化、次にデジタル処理(例えば、CORDIC、ルックアップテーブル、または他の技術を使用して)を介して224で処理され得、元のAスキャン信号の位相の推定値y(t)に対応する大きさの表現E(t)および瞬時位相表現
【数5】
を提供することができる。瞬時位相表現は、本文書の他の例のように、合計されたAスキャン構築またはTFM撮像に使用され得、または圧縮、送信、または記憶され得る。
【0029】
図2Aおよび2Bの例は、位相加算アプローチで使用され得る受信電気回路構成および処理技術に関する。本発明者はまた、とりわけ、上記の受信器トポロジが修正された送信スキームの使用を容易にすることもできることを認識している。例えば、送信パルス振幅は、シングルビット量子化受信アプローチの使用に関連するダイナミックレンジが、マルチビットのアナログ対デジタル変換を使用する対応する高分解能振幅サンプリングと比較して減少され得るため、他のアプローチと比較して減少され得る。より低い送信振幅の使用は、位相加算が使用されない合計されたAスキャンまたはTFM撮像を伴う一般的に利用可能なアプローチと比較して、例示的な向上として、より高いチャネルカウントおよびよりコンパクトな送信電気回路構成またはトランスデューサの幾何学的形状を容易にすることができる。
【0030】
図3Aは、二値化なしで取得されたパルスエコー(例えば、「Aスキャン」)信号に対応するような、「生」の実験的に取得された時系列の例示的な実施例を概して示す。振幅は任意の単位であり、時系列は振幅で正規化されない。
図3Bは、
図3Aの時系列に対応するような正規化された時系列392の一部分、および正規化された時系列y(t)の対応する二値化された表現394y
B(t)の例示的な例を概して示す。本明細書の他の場所で論じられるように、時系列392のようなパルスエコータイムドメイン信号は、シングルビット量子化アプローチを使用してサンプリングされるように、量子化され得る。二値化された表現394は、以下の分析式を使用して生成されたシミュレーションであり、
【数6】
【数7】
(EQN.3)
【0031】
正確にゼロのy(t)値について、結果は、例として、ゼロとして、または別の例として、1つとして割り当てることができる。二値化された表現の振幅は、ゼロまたは1の値に正規化されるが、適切にスケーリングされ得る、ゲート化され得る、またはさもなければ、調整されて、下流処理のための所望の論理高および論理低レベルを有する電圧モードまたは電流モードのデジタル信号が提供される。
【0032】
図3Cは、
図3Bの正規化された時系列392の一部分、
図3Bの正規化された時系列の対応する二値化された表現394、および対応する瞬時位相信号396の例示的な例を概して示す。本発明者らは、とりわけ、瞬時位相信号396が、それぞれの「擬似」期間において、大まかな区分線形挙動を示すことを認識しており、期間は、-πラジアンと+πラジアンの値との間の大まかな線形位相遷移によって定義される。このような挙動は、パルスエコー信号が、中心周波数の周りでのエクスカーションを伴う比較的狭帯域信号であるために部分的に存在する。この区分挙動は、以下で説明するように、第1または第2の位相構築技術の使用を容易にする。「構築」という単語の使用は、タイムドメイン瞬時位相信号の圧縮表現からの位相データの「再構築」または「回復」を指すことができる。次いで、タイムドメイン瞬時位相信号の構築された表現は、タイムドメイン位相信号の合計を使用して、合計されたAスキャン構築またはTFM撮像に使用することができる。例えば、再構築された瞬時位相信号のタイムドメイン表現は、多数の量子化されたエコー信号からの位相データを集約して、Aスキャン時系列、ターゲットの指定された空間位置に対応するピクセル値、または試験試料などのターゲットの指定された空間位置に対応するボクセル値のうちの少なくとも1つを生成することを含み集約され(例えば、コヒーレントに合計され)得る。
【0033】
図4A、
図4B、および
図4Cは、二値化された時系列(
図4Bに示される)における遷移(例えば、立上りエッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図4Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図4Cに示される)の表現を構築するために使用され得る第1の技術を集合的に概して示す。第1の技術では、
図4Aの二値化された表現y
B(t)は、
図4BのシミュレーションにおけるDirac分布d
1(t)に示されるように、立上りエッジ遷移の時間的位置を検出するように処理され得る。一般に、瞬時位相は、y
B(t)における隣接する立上りエッジを定義する時間指標間で擬似期間ごとに2πのラジアン変化する位相を有する区分線形近似としてモデル化され得る。実際の用途において、y
B(t)におけるエッジは、閾値比較器またはy
B(t)の導関数を推定するための有限差分技術を使用するなど二値化信号y
B(t)のデジタル表現のデジタル信号処理を使用して検出され得る。
図4Cの位相は、
図4Bからのエッジデータを使用して生成することができ、取得されたパルス信号の分析表現の瞬時位相の「同相」成分の推定値をモデル化する、またはさもなければ表現することができる。例えば、位相推定
【数8】
は、
図4Aの第1の立上りエッジ遷移に対応する時間t
n-1における-π/2ラジアンの値から、
図4Aの第2の隣接する立上りエッジ遷移に対応する時間t
nにおける+3π/2ラジアンの値まで、線形に変化する(例えば、傾きを定義する)ように確立され得、区分的近似でセグメントが定められる。位相推定
【数9】
は、隣接する立上りエッジt
nおよびt
n-1のすべての対について、以下のように分析的に表すことができる。
【数10】
(EQN.4)
【0034】
図4Dは、
図3Cで先に示された二値化450の前の実際の取得された瞬時位相と比較したときの、
図4Cで構築された瞬時位相452の表現
【数11】
の間の比較を概して示す。回復された位相452は、瞬時位相450の値を合理的に追跡し、したがって、位相加算を介した合計されたAスキャン構築またはTFM撮像などの位相加算技術での使用に適している。本明細書の他の場所で言及されるように、
図4Bに示されるようなエッジ遷移の時間的位置は、
図3Aのパルスエコータイムドメイン信号または
図4Dに示される瞬時位相450に対応するフル時系列記録を転送、記憶、または操作するのと比較して、送信、記憶、または下流処理のための高度に圧縮された形態で位相情報を符号化するために使用され得る。他の箇所で言及されるように、合計されたAスキャンまたはTFM撮像技術は、一般に、多くのそのようなパルスエコー時系列記録の使用を伴うため、帯域幅またはデータボリュームの節約は、トランスデューサカウントまたはアパーチャカウントが増加するにつれて乗算効果を有する。
【0035】
図5A、
図5B、および
図5Cは、二値化された時系列(
図5Bに示される)における遷移(例えば、エッジ)を示すデータを使用して、取得された時系列(
図5Aに示される)の二値化された表現から瞬時位相信号(
図5Cに示される)の表現を構築するために使用することができる第2の技術を集合的に概して示す。第1の技術と同様の方法で、瞬時位相信号の再構築された表現は、取得されたパルスエコー信号の二値化された表現y
B(t)における隣接する立上りエッジ遷移の間の持続時間として定義された期間にわたって、-π/2ラジアンから+3π/2ラジアンの間の2πラジアンの範囲にわたって変化する。上述の第1の技術とは対照的に、第2の技術では、
図5Cに示されるような位相の区分線形近似は、隣接する立上りエッジ遷移の間のそれぞれの期間を、異なるセグメント(例えば、異なる傾きを有することができるセグメント)を画定する2つのサブ期間に分割することによって構築される。
【0036】
例えば、
図5Aに例示的に示されるように、二値化された信号における立上りエッジ遷移は、時間t
2n-1で
図5Bに示されるように検出され、-π/2ラジアンの値への
図5Cの再構築された瞬時位相
【数12】
のリセットをトリガする。
図5Aの二値化された表現における次の隣接する立下りエッジ遷移は、時間t
2nで
図5Bに示すように検出され、
図5Cの瞬時位相
【数13】
は、位相をt
2n-1における-π/2ラジアンの値からt
2nにおける+π/2の値に線形に変化させる(例えば、傾きを定める)ことによって確立され、第1のサブ期間を定義する。時刻t
2n+1における立下りエッジ遷移と次の隣接する立上りエッジ遷移との間の持続時間は、t
2nにおけるπ/2の位相値とt
2n+1における+3π/2の位相値との間の線形遷移を定義し、第2のサブ期間を定義し、第1および第2のサブ期間が完全な擬似期間を形成する。
図4Bの例のように、
図5Bの表現は、
図5Aの二値化された表現y
B(t)において立上りまたは立下りエッジ遷移が生じるインスタントを表すDirac分布d
2(t)であり得る。
図5Bおよび
図5Cに示される波形をシミュレートし、再構築された瞬時位相
【数14】
を以下のように分析的に表すことができる(例えば、立上りから立下がりから次の立上りエッジの各グループについて)。
【数15】
(EQN.5)
このとき
【数16】
(EQN.6)
かつ
【数17】
(EQN.7)
【0037】
図5Dは、第2の技術を使用して
図5Cで構築された瞬時位相454の別の表現
【数18】
と共に、
図3Cに先に示されるように二値化450の前に実際に取得された瞬時位相と比較して、第1の技術を使用して
図4Cで構築された瞬時位相452の表現
【数19】
の間の比較を概して示す。回復された位相452および454の両方は、少し高い再構築の複雑さを犠牲にして、二値化前の瞬時位相450のより良い近似をもたらす位相454を提供するために使用される第2の技術を用いて、瞬時位相450の値を合理的に追跡する。
【0038】
図6Aは、位相加算TFM撮像技術に使用され得るような、位相信号からの同相および直交信号を提供するために使用され得る受信信号チェーン600Aの一部分を含む例を概して示す。上述のように、特定の撮像または処理技術は、取得されたタイムドメインパルスエコー撮像データの同相および直交表現の使用を含むことができる。本明細書に記載の位相ベースのアプローチでは、同相、「I」(y
I(t))および直交、「Q」(y
Q(t))信号は、
図2Bに示すような受信アーキテクチャによって提供される位相信号
【数20】
(以下でさらに説明するように、取得したAスキャン時系列データに対応する瞬時位相
【数21】
を得るために取得したAスキャン時系列データy(t)に適用されるヒルベルト変換)または上記の第1または第2の技術に対応する再構築された位相信号などの瞬時位相の表現から生成され得る
【数22】
または
【数23】
。結果として生じる同相および直交信号(例えば、デジタルドメインにおける時系列表現)は、212におけるTFM撮像および214におけるガンマ補正またはフィルタリングなどのさらなる処理のために提供され得る。本発明者らは、信号取得のための二値化アプローチが、受信信号チェーン600Bの少なくとも一部分の別の例を概して示す、
図6Bに示されるような位相ベースの撮像に適用され得ることを認識した。
図6Bでは、比較器226Aおよび226Bを使用して
【数24】
または
【数25】
のような再構築された位相信号の同相および直交表現が量子化(例えば、二値化)され得、および結果として生じる「正方形」表現は、
図6Aと同様の様式で、TFMアプローチを使用した位相加算撮像のために提供され得る。さらに別の例では、ヒルベルト変換を使用して提供される位相推定値は、
図6Bに示されるI/Q形成ブロックへの入力として提供されてもよい。二値化されたまたは「正方形」の同相および直交信号の分析的表現は、
【数26】
(EQN.8)
かつ
【数27】
(EQN.9)
である。
【0039】
さらに別のアプローチでは、ルックアップテーブルまたは同様の技術を使用して割り当てられるような、単位円表現からの位相値を使用して、同相および直交信号の量子化された(例えば、二値化された表現)を確立することができる。そのような技術は、例示的な例として、
図6Aまたは
図6Bのいずれかにおける正弦関数および余弦関数の代わりにすることができる。例えば、y
I(t)およびy
Q(t)の値は、入力瞬時位相信号内の位相値の範囲に基づいて以下のように割り当てられ得る
【数28】
。
【表1】
表1
【数29】
におけるそれぞれの位相範囲に対する二値化された同相および直交の信号値。
【0040】
図7は、取得された時系列の対応する二値化された表現770と共に
図6Aに示される信号チェーンを使用して提供することができるような、タイムドメイン同相772および直交774信号の例示的な例を概して示し、それぞれの同相772および直交774信号の期間を画定する二値化された表現770内の相対的な位相対エッジ遷移と共に、同相および直交信号間のパイラジアン位相関係を概して示す。
【0041】
本明細書でここまで説明した位相加算アプローチは、様々な分析または撮像技術をサポートするために使用され得る。例えば、PAUTアプローチを使用して取得されたような、多数のトランスデューサまたは多数のトランスデューサアパーチャから取得されたタイムドメイン位相表現を合計することによって、合計されたAスキャン生成を実施することができる。
【0042】
図8Aは、
図8Bに例示的に示されるように、位相ベースの加算アプローチを使用して合計されたAスキャン1184Aの再構築に使用される焦点領域1182Aの表現と共に、音響プローブアセンブリ150およびターゲット158(例えば、側面にドリル加工された穴を有するブロックまたは「SDH」ブロック)を含む音響検査構成1100を概して示す。
図8Aを参照すると、反射超音波の伝播方向を表すそれぞれの光線1180Aは、プローブアセンブリ150の一部分として含まれる超音波トランスデューサアレイによって取得され得る。
図8Aの例では、光線1180Aは、各取得されたAスキャン時系列に対する遅延値を決定して、たまたま欠陥160の位置とよく整列している焦点領域1182Aを作成するために使用される。そのような例は単なる例示であり、受信側ビーム形成に加えて、またはその代わりに、送信合焦アプローチを使用することもできる。
【0043】
図8Bを参照すると、異なる受信トランスデューサまたは受信アパーチャに対応するような複数の瞬時位相信号1196Aが取得され、各位相信号が上述のように遅延されて焦点領域1182Aが確立される。次いで、結果として得られた複数の位相信号1196Aが、試料ごとになどコヒーレントに合計されて、タイムドメイン合計されたAスキャン1184Aが提供される。振幅情報が保持されていないため、Aスキャン表現は、焦点領域1182A内の欠陥160に関連付けられる位相コヒーレンスの領域1198Aの外側の振幅エクスカーションをほとんど示さない。他の箇所で言及されるように、生のAスキャン時系列データの代わりに位相データを使用することは、例示的な例として、データボリュームまたは測定スループットの点で様々な強化を提供することができる、または受信器の構成を簡素化することができる。
【0044】
図9Aは、
図9Bに例示的に示されるように、位相ベースの加算アプローチを使用して合計されたAスキャンの再構築に使用される焦点領域1182Bの表現と共に、音響プローブアセンブリ150およびターゲット158を含む音響検査構成1100を概して示す。
図9Aでは、焦点領域1182Bは、
図8Aの例1182Aとは対照的に、SDHブロック内の欠陥160とよく整列していない。
図9Bは、
図9Aに示される領域1182Bにおいて焦点を提供するためにそれぞれ遅延された複数の取得された位相信号1196Bの例示的な例、および位相ベースの加算アプローチによるそのような信号の対応する合計1184Bを概して示す。位相コヒーレンスは、領域1198B内では依然として可視であるが、焦点領域1182Bが欠陥160とよく整列していないため(かつ、湾曲した破線によって示されるように、信号1196Bの各々の対応する欠陥エコー部分は、遅延が適用された後に時間的に整列していない)、それほど可視ではない。本発明者らは、そのような挙動が、ターゲット内の異なる焦点位置における
図8Bの合計1184Aおよび
図9Bの合計1184Bと同様にして一連のAスキャン合計を計算することによって対処され得ることを認識した。
【0045】
他の技術は、領域1198Bにおける弱位相コヒーレンスの領域を、合計されたAスキャン1184Bの他の部分から分離するために使用され得る。例えば、ターゲット150内の空間ノイズ分布は、経験的にまたは分析モデルを通じて確立され得る。合計されたAスキャン1184B内の値は、合計内の振幅値がノイズ対欠陥または他の関心のある特徴に対応する確率に基づいて調整されてもよく、またはそのような調整は、分布によって示されるように寄与がノイズである可能性が高い領域または振幅範囲内の寄与を抑制するなど、複数の位相信号1196B内のそれぞれの受信信号で実施されてもよい。
【0046】
他のアプローチは、例えば、それぞれの空間位置(または合計されたAスキャンの場合の時間指標)に対応する統計的分布の分散、歪み、またはカートーシスなどのモーメント値を決定し、そのような決定を使用して、構成位相信号1196Bに適用される閾値を設定することによって、使用され得、その閾値以下では合計への任意の寄与が無視または重みづけ解除される。ノイズ分布に基づくそのような統計的アプローチはまた、位相加算を伴うTFM撮像アプローチにも適用可能であり、ピクセルまたはボクセル値(例えば、輝度値)は、それに応じて調整され得ると考えられる。
【0047】
図10Aは、以下の様々な例で論じられるように、実験データを取得するために使用するための音響プローブアセンブリ150およびターゲット158(側面にドリル加工された穴を有するまたは「SDH」ブロック)を含む音響検査構成を概して示す。プローブアセンブリは、最初の32個の要素が使用されるオリンパス5L64-A32プローブであり、プローブは5MHzの送信中心周波数を使用して励起され、トランスデューサピッチは0.5ミリメートル、仰角は10ミリメートル、および外形寸法はトランスデューサアレイの平面内で40ミリメートル×28ミリメートル、および高さは26ミリメートルである。
図10Bは、TFM画像1000Aに示される特徴対ターゲット158内の欠陥位置との関係を例示する目的で、位相加算アプローチを使用して構築されたオーバーレイTFM画像1000Aを含む音響検査構成を概して示している。
図10Cは、位相加算アプローチを用いて構築された、
図10BのTFM画像1000Aからのインレイ詳細領域1000Bを含む音響検査構成を概して示している。インレイ詳細領域1000Bは、以下のさらなる実施例において、位相加算アプローチの異なる用途にわたって定性バリエーションを示すために使用される。
【0048】
図11は、位相加算アプローチの異なるバリエーションを使用して構築された、
図10Cからのインレイ詳細領域のTFM画像の例示的な例を概して示す。位相加算アプローチの参照実装は、取得されたAスキャンの完全な分析表現の処理と同様の方法であるが、瞬時位相のタイムドメイン表現のみを使用して、タイムドメイン位相信号をコヒーレントに合計することを含み得る。参照実装では、Aスキャンは、32個のアパーチャを使用して上記のように実験的に取得され、ヒルベルト変換が、取得されたAスキャン時系列データy(t)に適用され、以下の式を使用して、各取得されたAスキャン時系列に
【数30】
対応する瞬時位相を取得する。
【数31】
(EQN.10)
【0049】
他の例と同様に、ヒルベルト変換瞬時位相の同相y
IH(t)および直交y
QH(t)表現を構築し、次いで、取得された位相信号がAスキャン時系列データであるかのように、TFM撮像のために提供することができる。
【数32】
(EQN.11)
【数33】
(EQN.12)
【0050】
インレイ領域(SDH欠陥を含む)の結果として生じる位相加算TFM画像が
図11(a)に示され、それぞれ、
【数34】
および
【数35】
として瞬時位相信号を回復するように、それぞれ、第1または第2の技術を使用して構築されたTFM画像が(b)および(c)に示される。比較として、
図11(c)に示す第2の技術は、(b)および(c)の両方の画像が概して同じ欠陥位置および他の画像特徴(各画像の中心)を示すものの、
図11(a)の参照画像に酷似する画像を結果として生ずる。さらなる例として、
図6Bの受信スキームに関して上述したような二値化または「正方形」I/Q表現の使用は、
図11(a)の参照画像と比較してかなりの粗さを示す
図11の(d)および(e)におけるTFM画像をもたらし得る。「正方形」の同相および直交表現を使用して得られた画像の粗さを修正するために、さらなる処理が実施され得る。例えば、ガンマ補正は、ピクセル単位またはボクセル単位などで実施され得る。ガンマ補正後などに低域フィルタまたは他の画像マスクを使用して、平滑化を提供することができる。例えば、
図12は、フィルタリング技術と共に位相加算アプローチの異なるバリエーションを使用して構築された、
図10Cからのインレイ詳細領域のTFM画像の例示的な例を概して示す。
図12(a)、(b)、(c)、(d)、および(e)の画像は、
図11の対応する例と同様の方法で構築される。しかしながら、
図12では、各画像はガンマ補正され、低域フィルタリング処理される。低域フィルタリング処理は、カーネルを用いて二次元畳み込みを使用して実施される。
【数36】
(EQN.13)
【0051】
一般的に、次いで実験的に取得されたAスキャンデータおよび結果として生じる
図11および
図12の例の位相加算撮像は、位相加算アプローチを使用して、試験ブロックターゲット内の側面にドリル加工された穴などの欠陥が容易に明らかであるサンプリングされたまたは再構築された瞬時位相信号のいずれかを使用してTFM撮像を提供することができることを示す。
【0052】
図13は、音響エコー信号を取得し、デジタル化することと、瞬時位相信号のタイムドメイン表現を構築することとを含む、方法などの技術1300を概して示す。1320において、超音波トランスデューサアレイ内の1つ以上のトランスデューサの発火に対応するような音響伝送イベントが生成され得る。1325において、それぞれの伝送イベントに応答して、それぞれの音響エコー信号が受信され得る。そのような音響エコー信号は、Aスキャン信号に対応することができる。1330において、それぞれの受信音響エコー信号は、例えば、受信音響エコー信号の離散時間またはデジタル化表現を提供するように、量子化され得る。離散時間またはデジタル化表現は、さらなる処理のために他の場所に送信され得るか、またはエッジ遷移の時間的位置など、離散時間またはデジタル化表現を示す他のデータが、他の場所に送信されてもよい。1335において、瞬時位相信号のタイムドメイン表現は、少なくとも1つのそれぞれの量子化された音響信号の表現から構築され得る。そのようなタイムドメイン表現は、例えば、
図4A、
図4B、
図4C、
図5A、
図5B、または
図5Cに関して詳細に上述した第1または第2の位相信号構築技術を使用して構築することができる。任意選択的に、1340において、位相データ(瞬時位相信号の再構築されたタイムドメイン表現など)を、多数の取得および量子化されたエコー信号から集約して、Aスキャン時系列(例えば、合計されたAスキャン)、またはターゲットの指定された空間位置に対応するピクセルまたはボクセル値のうちの少なくとも1つを生成することができる(例えば、位相加算を使用するTFM撮像アプローチのように)。
【0053】
図14は、音響エコー信号を取得し、シングルビット量子化(例えば、二値化)することと、二値化された音響エコー信号におけるエッジ遷移の時間指標を示すデータを含む受信音響エコー信号の表現を生成することとを含む、別の方法などの別の技術1400を概して示す。1420において、超音波トランスデューサアレイ内の1つ以上のトランスデューサの発火に対応するような音響伝送イベントが生成され得る。1425において、それぞれの伝送イベントに応答して、それぞれの音響エコー信号が受信され得る。そのような音響エコー信号は、Aスキャン信号に対応することができる。1430において、それぞれの受信音響エコー信号は、取得され、シングルビット量子化されて、受信音響エコー信号の二値化された表現が提供される。二値化された表現は、さらなる処理のために他の場所に送信され得るか、またはエッジ遷移の時間的位置など、離散時間またはデジタル化表現を示す他のデータが、他の場所に送信されてもよい。例えば、1435において、受信音響エコー信号の二値化された表現におけるエッジ遷移を示すデータが生成され得る(例えば、エッジ遷移が検出され、そのような遷移の時間指標が符号化され得る)。任意選択的に、1440において、位相データ(1435において生成された符号化されたデータからの瞬時位相信号の再構築されたタイムドメイン表現など)を、多数の取得および量子化されたエコー信号から集約して、Aスキャン時系列(例えば、合計されたAスキャン)、またはターゲットの指定された空間位置に対応するピクセルまたはボクセル値のうちの少なくとも1つを生成することができる(例えば、位相加算を使用するTFMイメージングアプローチのように)。
【0054】
図15は、本明細書で論じられる技術(例えば、方法論)のうちのいずれか1つ以上が実行され得るマシン1500を含む例のブロック図を示す。様々な例では、マシン1500は、スタンドアロンデバイスとして動作し得る、または他のマシンに接続(例えば、ネットワーク化)され得る。ネットワーク化された展開では、マシン1500は、サーバ-クライアントネットワーク環境において、サーバマシン、クライアントマシン、またはその両方として動作し得る。一例では、マシン1500は、ピアツーピア(P2P)(または他の分散型)ネットワーク環境でピアマシンとして機能し得る。マシン1500は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットデバイス、セットトップボックス(STB)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、ウェブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチあるいはブリッジ、またはそのマシンによって取られるべきアクションを指定する命令を(逐次的または他の方法で)実行することができる任意のマシンであり得る。さらに、単一のマシンのみが例示されるが、「マシン」という用語は、クラウドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、他のコンピュータクラスタ構成など、本明細書で論じられる方法論のうちのいずれか1つ以上を実行するために、命令のセット(または多数のセット)を個別にまたは共同で実行するマシンの任意の集まりを含むものとする。
【0055】
本明細書に記載されるように、例は、論理またはいくつかの構成要素、または機構を含んでもよく、またはそれらによって動作してもよい。電気回路構成は、ハードウェア(例えば、単純回路、ゲート、ロジックなど)を含む有形のエンティティに実装される回路の集まりである。電気回路構成メンバーシップは、時間の経過および根本的なハードウェアのバラツキに応じて柔軟になり得る。回路には、単独または組み合わせて、動作時に指定された動作を実行することができる部材が含まれる。一例では、電気回路構成のハードウェアは、特定の動作(例えば、ハードワイヤー)を実行するように不変に設計されてもよい。一例では、電気回路構成を含むハードウェアは、特定の動作の命令を符号化するために、物理的に変更された(例えば、磁気的に、電気的に、例えば、物理的状態の変化または別の物理的特性の変換などを介して)コンピュータ可読媒体を含む、可変接続された物理的構成要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純回路など)を含み得る。物理的構成要素を接続する際に、ハードウェア構成要素の根本的な電気的特性は、例えば、絶縁特性から導電特性に、またはその逆に変更されてもよい。命令は、組み込みハードウェア(例えば、実行ユニットまたはロード機構)が、動作中に特定の動作の一部分を実行するために可変接続を介してハードウェアの電気回路構成の部材を作成することを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作しているとき、電気回路構成の他の構成要素に通信可能に結合される。一例では、物理的構成要素のうちのいずれかは、2つ以上の電気回路構成の2つ以上の部材で使用されてもよい。例えば、動作下では、実行ユニットは、ある時点で第1の電気回路構成の第1の回路で使用され得、第1の電気回路構成における第2の回路によって、または異なる時間に第2の電気回路構成の第3の回路によって再使用され得る。
【0056】
マシン(例えば、コンピュータシステム)1500は、ハードウェアプロセッサ1502(例えば、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組み合わせ)、メインメモリ1504、および静的メモリ1506を含んでもよく、それらの一部またはすべては、インターリンク(例えば、バス)1530を介して互いに通信してもよい。マシン1500は、ディスプレイユニット1510、英数字入力デバイス1512(例えば、キーボード)、およびユーザインターフェース(UI)ナビゲーションデバイス1514(例えば、マウス)をさらに含んでもよい。一例では、ディスプレイユニット1510、入力デバイス1512、およびUIナビゲーションデバイス1514は、タッチスクリーンディスプレイであってもよい。マシン1500は、さらに、記憶デバイス(例えば、駆動ユニット)1516、信号生成デバイス1518(例えば、スピーカ)、ネットワークインターフェースデバイス1520、およびグローバルポジショニングシステム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、または他のセンサ等の1つ以上のセンサ1521を含み得る。マシン1500は、1つ以上の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カードリーダなど)を通信または制御するための、シリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、並列、または他の有線もしくは無線(例えば、赤外線(IR)、近距離通信(NFC)など)接続などの出力コントローラ1528を含んでもよい。
【0057】
記憶装置1516は、本明細書に記載される技術または機能のいずれか1つ以上を具現化するか、またはそれによって利用されるデータ構造または命令1524(例えば、ソフトウェア)の1つ以上のセットが記憶されたマシン可読媒体1522を含んでもよい。命令1524はまた、マシン1500によるその実行中に、メインメモリ1504内、静的メモリ1506内、またはハードウェアプロセッサ1502内に完全にまたは少なくとも部分的に存在してもよい。一例では、ハードウェアプロセッサ1502、メインメモリ1504、静的メモリ1506、または記憶装置1516の1つまたは任意の組み合わせが、マシン可読媒体を構成してもよい。
【0058】
マシン可読媒体1522は単一の媒体として図示されるが、「マシン可読媒体」という用語は、1つ以上の命令1524を記憶するように構成された単一の媒体または複数の媒体(例えば、集中型または分散型データベース、および/または関連付けられたキャッシュおよびサーバ)を含んでもよい。
【0059】
「マシン可読媒体」という用語は、マシン1500による実行のための命令を記憶、符号化、または保持することができ、マシン1500に本開示の技術のいずれか1つ以上を実行させることができる、またはそのような命令によって使用されるか、またはそのような命令に関連付けられたデータ構造を記憶、符号化、または保持することができる任意の媒体を含み得る。非限定的なマシン可読媒体の例は、ソリッドステートメモリ、ならびに光学媒体および磁気媒体を含んでもよい。したがって、マシン可読媒体は、一時的な伝播信号ではない。密集マシン可読媒体の具体例は、半導体メモリデバイス(例えば、電気的プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM))およびフラッシュメモリデバイスなどの不揮発性メモリ、磁気または他の位相変化または状態変化メモリ回路、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、磁気光ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含み得る。
【0060】
命令1524はさらに、いくつかの転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)など)のいずれか1つを利用して、ネットワークインターフェースデバイス1520を介して伝送媒体を使用して通信ネットワーク1526を介して送信または受信されてもよい。例示的な通信ネットワークは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、パケットデータネットワーク(例えば、インターネット)、携帯電話ネットワーク(例えば、4G規格またはロングタームエボリューション(LTE)などの1つ以上の規格に準拠するようなセルラネットワーク)、従来型電話サービス(POTS)ネットワーク、および無線データネットワーク(例えば、とりわけ、Wi-Fi(登録商標)、IEEE802.15.4規格ファミリー、ピアツーピア(P2P)ネットワークなどとして知られる規格の米国電気電子学会(IEEE)802.11ファミリー)を含んでよい。一例では、ネットワークインターフェースデバイス1520は、通信ネットワーク1526に接続するための1つ以上の物理的ジャック(例えば、イーサネット、同軸、または電話ジャック)または1つ以上のアンテナを含んでもよい。一例では、ネットワークインターフェースデバイス1520は、単一入力多重出力(SIMO)、多重入力多重出力(MIMO)、または多重入力単一出力(MISO)技術のうちの少なくとも1つを使用して無線通信する複数のアンテナを含んでもよい。「伝送媒体」という用語は、マシン1500による実行のための命令を記憶、符号化または保持することが可能な任意の無形の媒体を含み、そのようなソフトウェアの通信を容易にするためのデジタルまたはアナログ通信信号または他の無形の媒体を含むものと理解されなければならない。
【0061】
様々なメモ
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施することができる特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、一般に「実施例」とも呼ばれる。そのような例は、示されるまたは記載されるものに加えて要素を含み得る。しかしながら、本発明者らは、示されるまたは説明される要素のみが提供される実施例も企図する。さらに、本発明者は、特定の例(またはその1つ以上の態様)に関して、または本明細書に示されるもしくは記載される他の例(またはその1つ以上の態様)に関して、示されるまたは記載される(またはその1つ以上の態様)それらの要素の任意の組み合わせまたは順列を使用する例も企図する。
【0062】
本文書と、このように参照により組み込まれた任意の文書との間で使用法が矛盾する場合、本文書の使用法が支配する。
【0063】
本文書において、「a」または「an」という用語は、特許文献において一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の任意の他の事例または使用法とは無関係に、1つ以上を含むために使用される。本文書において、「または」という用語は、別段の指示がない限り、「AまたはB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むように、非排他的論理和を指すために使用される。本文書において、「含む」および「それに」という用語は、それぞれの「有する」および「そこで」という用語の平易な英語の等価物として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、「含む」および「有する」という用語は、限定されておらず、すなわち、特許請求の範囲のそのような用語の後に列挙される要素に加えて要素を含むシステム、デバイス、アーティクル、組成物、製剤、またはプロセスは、依然として、その特許請求の範囲の範囲内にあると見なされる。さらに、以下の特許請求の範囲では、「第1」、「第2」、および「第3」という用語等は、単にラベルとして使用され、それらの目的語に数値的要件を課すことを意図するものではない。
【0064】
本明細書に記載される方法の例は、少なくとも一部がマシンまたはコンピュータによって実装され得る。いくつかの例は、電子デバイスを構成して上記の例で説明される方法を実行するよう動作可能な命令で符号化されたコンピュータ可読媒体またはマシン可読媒体を含むことができる。そのような方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、より高レベルの言語コードなどのコードを含むことができる。そのようなコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成し得る。さらに、一例では、コードは、実行中または他の時間などに、1つ以上の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形コンピュータ可読媒体に有形に記憶され得る。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
上記の説明は、例示的であり、限定的ではないことが意図される。例えば、上述の例(またはその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態を使用することができ、例えば、上記の説明を見直す際に当業者によって使用することができる。要約書は、読者が技術開示の性質を迅速に確認できるように提供される。特許請求の範囲の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないことを理解して提出される。また、上記の詳細な説明では、様々な特徴を一緒にグループ化して、開示を合理化することができる。これは、請求されていない開示された特徴が任意の特許請求の範囲に不可欠であることを意図するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明の主題は、特定の開示された実施形態のすべての特徴未満に位置し得る。したがって、以下の特許請求の範囲は、実施例または実施形態として詳細な説明に組み込まれ、各請求項は、別個の実施形態として単独で存在し、そのような実施形態は、様々な組み合わせまたは順列で互いと組み合わせられ得ることが企図される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に決定されるべきである。