(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】封止剤、硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20240719BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240719BHJP
C08F 4/12 20060101ALI20240719BHJP
C08F 16/00 20060101ALI20240719BHJP
C08F 291/00 20060101ALI20240719BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240719BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20240719BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240719BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240719BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240719BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240719BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240719BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240719BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240719BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20240719BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240719BHJP
【FI】
H10K50/844
C08F2/44 A
C08F2/44 C
C08F4/12
C08F16/00 510
C08F291/00
C08F292/00
C08G59/68
C08K3/013
C08K3/34
C08L63/00 C
C08L101/00
G09F9/30 309
G09F9/30 365
H10K50/84
H10K50/84 846
H10K59/10
H10K71/00
H10K85/10
(21)【出願番号】P 2022557493
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2021038300
(87)【国際公開番号】W WO2022085599
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020176012
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰則
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149384(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111796(WO,A1)
【文献】特開2013-043864(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061634(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/201013(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
C08F 2/44
C08F 4/12
C08F 16/00
C08F 291/00
C08F 292/00
C08G 59/68
C08K 3/013
C08K 3/34
C08L 63/00
C08L 101/00
G09F 9/30
H10K 50/84
H10K 59/10
H10K 71/00
H10K 85/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、ガリウムを有する
カチオン重合開始剤と、を含み、
前記重合性化合物が、
フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種のハロゲン族元素を有し、カチオン重合性官能基を有する、比重1.3~4.0の
化合物(X)を含有
し、
前記カチオン重合開始剤が、ガリウムを含むアニオンとオニウムイオンとを含有するオニウム塩である、封止剤。
【請求項2】
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の比重が1.35~19.0となる、請求項1に記載の封止剤。
【請求項3】
前記化合物(X)中のハロゲン族元素の含有量が、前記重合性化合物の総元素量に対して、10~50質量%である、請求項
1又は2に記載の封止剤。
【請求項4】
前記重合性化合物が、重合性官能基を2個以上有する架橋性化合物(Y)を含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項5】
前記重合性化合物が、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項6】
無機充填材を更に含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項7】
前記無機充填材の真比重が、1.5~5.0である、請求項
6に記載の封止剤。
【請求項8】
前記無機充填材が電気絶縁性無機充填材である、請求項
6又は7に記載の封止剤。
【請求項9】
前記無機充填材が、シリカ、マイカ、カオリン、タルク及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項
6~8のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項10】
前記無機充填材の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、5~500質量部である、請求項
6~9のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項11】
樹脂粒子を更に含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項12】
前記樹脂粒子が、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、及び、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項
11に記載の封止剤。
【請求項13】
前記樹脂粒子の平均粒子径が1μm~100μmである、請求項
11又は12に記載の封止剤。
【請求項14】
前記樹脂粒子の粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が、0.25以下である、請求項
11~13のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項15】
前記樹脂粒子の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部である、請求項
11~14のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項16】
前記
カチオン重合開始剤の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項17】
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記重合体のガラス転移温度が85℃以上となる、請求項1~
16のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項18】
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の架橋密度が1.5×10
-3mol/cm
3以上となる、請求項1~
17のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項19】
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定される透湿度が、50(g/m
2・24h/100μm)以下となる、請求項1~
18のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項20】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤である、請求項1~
19のいずれか一項に記載の封止剤。
【請求項21】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の封止剤を硬化してなる、硬化体。
【請求項22】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の封止剤を塗布及び硬化して、フィルを形成する工程を含む、
ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項23】
請求項1~
20のいずれか一項に記載の封止剤を塗布及び硬化して、ダムを形成する工程を含む、
ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
【請求項24】
ダム及びフィルを備えるダム・フィル封止構造を有し、
前記ダム及び前記フィルのうち少なくとも一方が、請求項1~
20のいずれか一項に記載の封止剤の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止剤、硬化体、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、及び、有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示素子、有機薄膜太陽電池素子等の有機薄膜素子を用いた有機光デバイスの研究が進められている。有機薄膜素子は真空蒸着、溶液塗布等により簡便に作製できるため、生産性に優れる。
【0003】
有機EL表示素子は、互いに対向する一対の電極間に有機発光材料層が挟持された薄膜構造体である。この有機発光材料層に一方の電極から電子が注入されるとともに他方の電極から正孔が注入されることにより有機発光材料層内で電子と正孔とが結合して自己発光を行う。バックライトを必要とする液晶表示素子等と比較して視認性がよく、より薄型化が可能であり、かつ、直流低電圧駆動が可能であるという利点を有する。
【0004】
ところが、このような有機EL表示素子は、有機発光材料層や電極が外気に曝されるとその発光特性が急激に劣化し寿命が短くなるという問題があった。従って、有機EL表示素子の安定性及び耐久性を高めることを目的として、有機EL表示素子においては、有機発光材料層や電極を大気中の水分や酸素から遮断する封止技術が不可欠となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、上面発光型有機EL表示素子等において、有機EL表示素子基板の間に光硬化性の封止剤を満たし、光を照射して封止する方法が開示されている。また、特許文献2~4には、有機EL表示素子を封止し、水分による劣化を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-357973号公報
【文献】特開平10-74583号公報
【文献】特開2001-307873号公報
【文献】特開2009-37812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電子デバイスの要求特性が高まり、例えば、有機EL表示素子に対するより高い信頼性及び耐久性を実現可能な封止材が求められている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、防湿性に優れた封止材を形成可能な、封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は以下のものに関する。
<1>
重合性化合物と、周期表第13族~第15族かつ第4周期~第6周期の元素を有する重合開始剤と、を含み、
前記重合性化合物が、比重1.3~4.0の化合物を含有する、封止剤。
<2>
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の比重が1.35~19.0となる、<1>に記載の封止剤。
<3>
前記重合性化合物が、原子番号9以上の元素を有する化合物(X)を含有する、<1>又は<2>に記載の封止剤。
<4>
前記化合物(X)が、ハロゲン族元素を有する、<3>に記載の封止剤。
<5>
前記化合物(X)が、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種のハロゲン族元素を有する、<4>に記載の封止剤。
<6>
前記化合物(X)中のハロゲン族元素の含有量が、前記重合性化合物の総元素量に対して、10~50質量%である、<4>又は<5>に記載の封止剤。
<7>
前記重合性化合物が、重合性官能基を2個以上有する架橋性化合物(Y)を含有する、<1>~<6>のいずれかに記載の封止剤。
<8>
前記重合性化合物が、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、<1>~<7>のいずれかに記載の封止剤。
<9>
前記重合開始剤が、カチオン重合開始剤である、<1>~<8>のいずれかに記載の封止剤。
<10>
前記重合開始剤が、オニウム塩を含有する、<1>~<9>のいずれかに記載の封止剤。
<11>
前記重合開始剤が、周期表第13族かつ第4周期~第6周期の元素を有する、<1>~<10>のいずれかに記載の封止剤。
<12>
前記重合開始剤が、ガリウムを有する、<1>~<11>のいずれかに記載の封止剤。
<13>
無機充填材を更に含む、<1>~<12>のいずれかに記載の封止剤。
<14>
前記無機充填材の真比重が、1.5~5.0である、<13>に記載の封止剤。
<15>
前記無機充填材が電気絶縁性無機充填材である、<13>又は<14>に記載の封止剤。
<16>
前記無機充填材が、シリカ、マイカ、カオリン、タルク及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、<13>~<15>のいずれかに記載の封止剤。
<17>
前記無機充填材の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、5~500質量部である、<13>~<16>のいずれかに記載の封止剤。
<18>
樹脂粒子を更に含む、<1>~<17>のいずれかに記載の封止剤。
<19>
前記樹脂粒子が、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、及び、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、<18>に記載の封止剤。
<20>
前記樹脂粒子の平均粒子径が1μm~100μmである、<18>又は<19>に記載の封止剤。
<21>
前記樹脂粒子の粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が、0.25以下である、<18>~<20>のいずれかに記載の封止剤。
<22>
前記樹脂粒子の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部である、<18>~<21>のいずれかに記載の封止剤。
<23>
前記重合開始剤の含有量が、前記重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部である、<1>~<22>のいずれかに記載の封止剤。
<24>
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記重合体のガラス転移温度が85℃以上となる、<1>~<23>のいずれかに記載の封止剤。
<25>
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の架橋密度が1.5×10-3mol/cm3以上となる、<1>~<24>のいずれかに記載の封止剤。
<26>
前記封止剤を硬化して、前記重合性化合物の重合体を含有する硬化体としたとき、
前記硬化体の、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定される透湿度が、50(g/m2・24h/100μm)以下となる、<1>~<25>のいずれかに記載の封止剤。
<27>
有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤である、<1>~<26>のいずれかに記載の封止剤。
<28>
<1>~<27>のいずれかに記載の封止剤を硬化してなる、硬化体。
<29>
<1>~<27>のいずれかに記載の封止剤を塗布及び硬化して、フィルを形成する工程を含む、
ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
<30>
<1>~<27>のいずれかに記載の封止剤を塗布及び硬化して、ダムを形成する工程を含む、
ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法。
<31>
ダム及びフィルを備えるダム・フィル封止構造を有し、
前記ダム及び前記フィルのうち少なくとも一方が、<1>~<27>のいずれかに記載の封止剤の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防湿性に優れた封止材を形成可能な、封止剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の組成物は、重合性化合物と、周期表第13族~第15族かつ第4周期~第6周期の元素を有する重合開始剤と、を含む。本実施形態において、重合性化合物は、比重が1.3~4.0の化合物(高比重化合物)を含有する。
【0013】
本実施形態の組成物によれば、防湿性に優れた封止材を形成できる。このため本実施形態の組成物は、封止剤(好ましくは有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤)として好適に用いることができる。また、本実施形態の組成物は、ダム・フィル封止構造を形成するための封止剤(ダム形成用封止剤、又は、フィル形成用封止剤)として特に好適に用いることができる。
【0014】
本実施形態において、重合性化合物は、重合性官能基を有する化合物ということができる。重合性化合物は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
重合性化合物は、カチオン重合性官能基及びラジカル重合性官能基からなる群より選択される少なくとも一種を有することが好ましい。カチオン重合性官能基を有する重合性化合物としては、エポキシ化合物(例えば、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物等)、カチオン重合性ビニル化合物(例えば、ビニルエーテル化合物等)及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。ラジカル重合性官能基を有する重合性化合物としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基からなる群より選択される少なくとも一種のラジカル重合性官能基を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0016】
高比重化合物は、重合性官能基を有し、比重が1.3~4.0の化合物ということができる。高比重化合物の比重は、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.5以上である。また、高比重化合物の比重は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下である。すなわち、高比重化合物の比重は、例えば1.3~4.0、1.3~3.0、1.3~2.5、1.3~2.0、1.4~4.0、1.4~3.0、1.4~2.5、1.4~2.0、1.5~4.0、1.5~3.0、1.5~2.5、又は、1.5~2.0であってよい。なお、高比重化合物の比重は、ハーバート形比重瓶を用い、JIS K0061に準拠して測定される値を示す。なお、比重が1.3未満であると上述の効果が十分に得られない。また、比重が4.0以上の重合性化合物は、入手が困難で経済的でない。
【0017】
本実施形態において、重合性化合物は、比重が1.3未満の低比重化合物を更に含有していてもよい。低比重化合物は、重合性官能基を有し、比重が1.3未満の化合物ということができる。低比重化合物の比重は、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上であり、0.9以上、1.0以上又は1.1以上であってもよい。すなわち、低比重化合物の比重は、例えば0.7以上1.3未満、0.8以上1.3未満、0.9以上1.3未満、1.0以上1.3未満、又は、1.1以上1.3未満であってよい。なお、低比重化合物の比重は、ハーバート形比重瓶を用い、JIS K0061に準拠して測定される値を示す。
【0018】
重合性化合物に占める高比重化合物の割合は、例えば30質量%以上であってよく、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは55質量%以上である。これにより上述の効果がより顕著に奏される。また、重合性化合物に占める高比重化合物の割合は、例えば100質量%であってよく、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、一層好ましくは75質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。すなわち、重合性化合物に占める高比重化合物の割合は、例えば30~100質量%、30~90質量%、30~85質量%、30~80質量%、30~75質量%、30~70質量%、30~65質量%、40~100質量%、40~90質量%、40~85質量%、40~80質量%、40~75質量%、40~70質量%、40~65質量%、45~100質量%、45~90質量%、45~85質量%、45~80質量%、45~75質量%、45~70質量%、45~65質量%、50~100質量%、50~90質量%、50~85質量%、50~80質量%、50~75質量%、50~70質量%、50~65質量%、55~100質量%、55~90質量%、55~85質量%、55~80質量%、55~75質量%、55~70質量%、又は、55~65質量%であってよい。
【0019】
重合性化合物に占める低比重化合物の割合は、例えば0質量%であってよく、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、一層好ましくは25質量%以上、より一層好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。また、重合性化合物に占める低比重化合物の割合は、例えば70質量%以下であってよく、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、一層好ましくは45質量%以下である。これにより、上述の効果がより顕著に奏される。
すなわち、重合性化合物に占める低比重化合物の割合は、例えば0~70質量%、0~60質量%、0~55質量%、0~50質量%、0~45質量%、10~70質量%、10~60質量%、10~55質量%、10~50質量%、10~45質量%、15~70質量%、15~60質量%、15~55質量%、15~50質量%、15~45質量%、20~70質量%、20~60質量%、20~55質量%、20~50質量%、20~45質量%、25~70質量%、25~60質量%、25~55質量%、25~50質量%、25~45質量%、30~70質量%、30~60質量%、30~55質量%、30~50質量%、30~45質量%、35~70質量%、35~60質量%、35~55質量%、35~50質量%、又は、35~45質量%であってよい。
【0020】
本実施形態において、重合性化合物は、原子番号9以上の元素を有する重合性化合物(X)を含有することが好ましい。重合性化合物(X)は、高比重化合物であっても低比重化合物であってもよく、高比重化合物であることが好ましい。
【0021】
重合性化合物(X)は、ハロゲン族元素を有することが好ましく、フッ素元素及び臭素元素からなる群より選択される少なくとも一種を有することがより好ましい。
【0022】
重合性化合物(X)が1分子中に有するハロゲン族元素の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。重合性化合物(X)が1分子中に有するハロゲン族元素の数は、上限に特に限定はなく、例えば40以下であってよく、好ましくは30以下である。すなわち、重合性化合物(X)が1分子中に有するハロゲン族元素の数は、例えば1~40、1~30、2~40、2~30、3~40、又は、3~30であってよい。
【0023】
重合性化合物(X)は、カチオン重合性官能基及びラジカル重合性官能基からなる群より選択される少なくとも一種を有することが好ましい。カチオン重合性官能基を有する重合性化合物(X)としては、エポキシ化合物(例えば、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物等)、カチオン重合性ビニル化合物(例えば、ビニルエーテル化合物等)及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。ラジカル重合性官能基を有する重合性化合物(X)としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基からなる群より選択される少なくとも一種のラジカル重合性官能基を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0024】
重合性化合物(X)の具体例の一つである、カチオン重合性官能基を有する重合性化合物(X)としては、ブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル等のハロフェニルグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
重合性化合物(X)の具体例の一つである、ラジカル重合性化合物を有する重合性化合物(X)としては、フルオロフェニル(メタ)アクリレート、トリフルオロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロフェニル(メタ)アクリレート、クロロフェニル(メタ)アクリレート、トリクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモロフェニル(メタ)アクリレート等のハロフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
重合性化合物(X)中のハロゲン族元素の含有量は、重合性化合物の総元素量に対して、10~50質量%が好ましい。10質量%以上であると、硬化体の防湿性がより向上する傾向があり、50質量%以下であると、組成物の硬化性がより向上する傾向がある。
【0027】
重合性化合物に占める重合性化合物(X)の割合は、例えば30質量%以上であってよく、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは55質量%以上である。これにより、硬化体の防湿性がより向上する傾向がある。また、重合性化合物に占める重合性化合物(X)の割合は、例えば100質量%であってよく、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、一層好ましくは75質量%以下、より一層好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。これにより、ガラス基板等に対する接着性がより向上、封止材の信頼性がより向上する傾向がある。すなわち、重合性化合物に占める重合性化合物(X)の割合は、例えば30~100質量%、30~90質量%、30~85質量%、30~80質量%、30~75質量%、30~70質量%、30~65質量%、40~100質量%、40~90質量%、40~85質量%、40~80質量%、40~75質量%、40~70質量%、40~65質量%、45~100質量%、45~90質量%、45~85質量%、45~80質量%、45~75質量%、45~70質量%、45~65質量%、50~100質量%、50~90質量%、50~85質量%、50~80質量%、50~75質量%、50~70質量%、50~65質量%、55~100質量%、55~90質量%、55~85質量%、55~80質量%、55~75質量%、55~70質量%、又は、55~65質量%であってよい。
【0028】
本実施形態において、重合性化合物は、重合性化合物(X)以外の重合性化合物(すなわち、原子番号9以上の元素を有しない重合性化合物)(以下、重合性化合物(X’)ともいう。)を更に含有していてもよい。
【0029】
重合性化合物(X’)は、例えば、重合性化合物(X)が有する重合性官能基と共重合可能な重合性官能基を有する化合物であってよい。重合性化合物(X’)は、高比重化合物であっても低比重化合物であってもよい。
【0030】
重合性化合物(X’)は、カチオン重合性官能基及びラジカル重合性官能基からなる群より選択される少なくとも一種を有することが好ましい。カチオン重合性官能基を有する重合性化合物(X’)としては、エポキシ化合物(例えば、グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物等)、カチオン重合性ビニル化合物(例えば、ビニルエーテル化合物等)及びオキセタン化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。ラジカル重合性官能基を有する重合性化合物(X’)としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基からなる群より選択される少なくとも一種のラジカル重合性官能基を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0031】
重合性化合物(X)がカチオン重合性官能基を有するとき、重合性化合物(X’)はカチオン重合性官能基を有することが好ましい。カチオン重合性官能基を有する重合性化合物(X’)としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及び、カチオン重合性ビニル化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0032】
エポキシ化合物としては、エポキシ基を有する脂環式化合物(脂環式エポキシ化合物)、エポキシ基を有する芳香族化合物(芳香族エポキシ化合物)、グリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0033】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも1個のシクロアルケン環(例えば、シクロへキセン環、シクロペンテン環、ピネン環等)を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物又はその誘導体が挙げられる。また、脂環式エポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ化合物(例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物等)を水素化して得られる水素化エポキシ化合物も挙げられる。
【0034】
脂環式エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等)、(3、3’、4、4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
脂環式エポキシ化合物の中では、1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物が好ましい。1,2-エポキシシクロヘキサン構造を有する脂環式エポキシ化合物の中では、下記式(A1-1)で表される化合物が好ましい。
【0036】
【0037】
式(A1-1)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。
【0038】
連結基は、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、又は、これらが複数個連結した基であることが好ましい。
【0039】
Xは、連結基が好ましい。連結基としては、エステル結合を有する基が好ましい。連結基としてエステル結合を有する基を有する化合物としては、例えば、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(分子量252)が挙げられる。
【0040】
脂環式エポキシ化合物の分子量は、硬化体の防湿性がより向上する点及び組成物の保存安定性がより向上する点で、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が更に好ましく、100~280が一層好ましい。すなわち、脂環式エポキシ化合物の分子量は、例えば100~450、100~400、100~300又は100~280であってよい。
【0041】
脂環式エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、脂環式エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
・溶媒(移動相):THF
・脱気装置:ERMA社製ERC-3310
・ポンプ:日本分光社製PU-980
・流速:1.0ml/min
・オートサンプラ:東ソー社製AS-8020
・カラムオーブン:日立製作所製L-5030
・設定温度:40℃
・カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumnMP(×L)6.0mmID×4.0cm 2本、及び東ソー社製TSK-GELMULTIPORE HXL-M 7.8mmID×30.0cm 2本、計4本
・検出器:RI 日立製作所製L-3350
・データ処理:SIC480データステーション
【0042】
芳香族エポキシ化合物としては、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用可能であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0043】
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物が好ましい。ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物の中では、下記式(A2-1)で表される化合物が好ましい。
【0044】
【0045】
式(A2-1)中、nは0~30を示し、R21、R22、R23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は置換もしくは非置換の炭素原子数1~5のアルキル基を表す。nは0.1以上でもよい。
【0046】
R21、R22、R23及びR24は、好ましくは水素原子又はメチル基である。R21、R22、R23及びR24は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0047】
ビスフェノール構造を有する芳香族エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0048】
芳香族エポキシ化合物の分子量は、硬化体の防湿性がより向上する点で、100~5000が好ましく、150~1000がより好ましく、200~450が更に好ましい。すなわち、芳香族エポキシ化合物の分子量は、例えば100~5000、100~1000、100~450、150~5000、150~1000、150~450、200~5000、200~1000、又は、200~450であってよい。
【0049】
芳香族エポキシ化合物が分子量分布を有する場合は、芳香族エポキシ化合物の数平均分子量が上記範囲であることが好ましい。なお、本明細書中、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により上述した測定条件で測定される、ポリスチレン換算の値を示す。
【0050】
グリシジルエーテル化合物としては、ポリグリシジルエーテル化合物が好ましい。ポリグリシジルエーテル化合物としては、特に限定されないが、アルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等)、多価アルコールのポリグリシジルエーテル(例えば、グリセリン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等)、ポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル(例えば、ポリエチレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール又はそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等)が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0051】
カチオン重合性ビニル化合物は、モノマー、オリゴマー又はポリマーのいずれも使用できる。カチオン重合性ビニル化合物としては、ビニルエーテル化合物、ビニルアミン化合物、スチレン等が挙げられる。
【0052】
ビニルエーテル化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテルo-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0053】
オキセタン化合物としては、特に限定されないが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成(株)製商品名アロンオキセタンOXT-101等)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT-121等)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT-211等)、ジ(1-エチル-(3-オキセタニル))メチルエーテル(同OXT-221等)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT-212等)等が挙げられる。オキセタン化合物とは、分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物をいう。
【0054】
重合性化合物(X)がラジカル重合性官能基を有するとき、重合性化合物(X’)はラジカル重合性官能基を有することが好ましい。ラジカル重合性官能基を有する重合性化合物(X’)としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基からなる群より選択される少なくとも一種のラジカル重合性官能基を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0055】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
重合性化合物は、重合性官能基を2個以上有する架橋性化合物(Y)を含有することが好ましい。架橋性化合物(Y)は、高比重化合物であっても低比重化合物であってもよい。また、架橋性化合物(Y)は、重合性化合物(X)であっても重合性化合物(X’)であってもよい。
【0057】
架橋性化合物(Y)としては、上述した重合性化合物の中で、重合性官能基を2個以上有するものが挙げられる。
【0058】
重合性化合物に占める架橋性化合物(Y)の割合は、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。これにより、組成物の硬化性がより向上し、より強度の高い硬化体が得られやすくなる傾向がある。また、重合性化合物に占める架橋性化合物(Y)の割合は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。これにより、ガラス基板等への接着性がより向上し、より信頼性に優れた封止材を形成できる。すなわち、重合性化合物に占める架橋性化合物(Y)の割合は、例えば、30~90質量%、30~85質量%、30~80質量%、35~90質量%、35~85質量%、35~80質量%、40~90質量%、40~85質量%、又は、40~80質量%であってよい。
【0059】
本実施形態の組成物の塗工性が向上し、硬化体の成形性に優れる観点から、重合性化合物の全量混合物の80℃における粘度は、500mPa・s以上が好ましく、700mPa・s以上がより好ましく、1000mPa・s以上が更に好ましい。また、本実施形態の組成物の塗工時の吐出性が向上し、成形方法の選択の幅が広がる観点から、重合性化合物の全量混合物の80℃における粘度が、30000mPa・s以下が好ましく、25000mPa・s以下がより好ましく、20000mPa・s以下が更に好ましい。すなわち、重合性化合物の全量混合物の80℃における粘度は、500~30000mPa・s、500~25000mPa・s、500~20000mPa・s、700~30000mPa・s、700~25000mPa・s、700~20000mPa・s、1000~30000mPa・s、1000~25000mPa・s、又は、1000~20000mPa・sであってよい。
【0060】
本実施形態では、重合性化合物の全量混合物の粘度が上記範囲となるように、上述の重合性化合物の複数を組み合わせてよい。
【0061】
なお、本明細書中、重合性化合物の全量混合物の80℃における粘度は、コーンローター式粘度計により測定される値を示す。
【0062】
本実施形態において、重合開始剤は、周期表第13族~第15族かつ第4周期~第6周期の元素(M)を有する。元素(M)としては、例えば、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(スズ)、Pb(鉛)、As(砒素)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)が挙げられる。
【0063】
本実施形態では、重合開始剤として周期表第13族~第15族かつ第4周期~第6周期の元素(M)を有する重合開始剤を用いることで、高比重化合物を含む重合性化合物から架橋密度が高く、防湿性、及び、ガラス基板等との接着性に優れた硬化体が形成される。
【0064】
本実施形態では、重合開始剤が元素(M)を有することで、重合開始剤由来の活性種の分子半径が大きくなって(すなわち、電荷密度が小さくなって)、求核性が低下し、重合性が増大すると考えられる。このため、重合性化合物の硬化体の架橋密度が高くなり、優れた防湿性とガラス基板等との接着性とを両立できると考えられる。
【0065】
元素(M)は、上記効果がより顕著に得られる観点からは、周期表第13族及び周期表第15族のうちの1種以上の元素であることが好ましく、周期表第13族の元素であることがより好ましい。周期表第13族の元素は、Ga(ガリウム)が好ましい。周期表第15族の元素は、Sb(アンチモン)が好ましい。
【0066】
重合開始剤は、例えば光重合開始剤であってよい。光重合開始剤を用いることで、本実施形態の組成物が、紫外線等のエネルギー線の照射により硬化可能となる。
【0067】
重合開始剤は、カチオン重合開始剤であることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いることでカチオン重合性官能基を有する重合性化合物の重合が可能となる。
【0068】
重合開始剤は、元素(M)を含むアニオンとオニウムイオンとを含有するオニウム塩であることが好ましい。
【0069】
元素(M)を含むアニオンは、例えば、下記式(M-1)で表されるアニオンであってよい。
【化3】
[式中、n
1は整数を示し、Mは(n
1-1)価の元素(M)を示し、R
1はアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0070】
例えば、元素(M)がガリウムである場合、元素(M)を含むアニオンは下記式(M-2)で表されるアニオンであってよい。
【化4】
[式中、R
1はアルキル基又はアリール基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数のR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0071】
R1のアルキル基は、例えば、炭素数1~18のアルキル基であってよい。R1のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0072】
R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、t-ペンチル基、sec-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、n-ヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、sec-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0073】
R1のアルキル基は置換基を有していてもよい。R1のアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられる。
【0074】
R1のアリール基は、例えば、炭素数6~14のアリール基であってよい。アリール基は、芳香族化合物の芳香環に結合する水素原子を一つ除いた残基であればよい。
【0075】
R1のアリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、トリル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナントリル基、メシチル基等が挙げられる。
【0076】
R1のアリール基は置換基を有していてもよい。R1のアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基等)、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられる。
【0077】
R1は、ハロゲン原子を置換基として有するアルキル基又はハロゲン原子を置換基として有するアリール基であることが好ましく、フッ素原子を置換基として有するアルキル基又はフッ素原子を置換基として有するアリール基であることがより好ましい。
【0078】
オニウムイオンとしては、例えば、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン等が挙げられる。上記効果がより顕著に得られる観点から、オニウムイオンは、好ましくはアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン及びヨードニウムイオンからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはスルホニウムイオン及びヨードニウムイオンからなる群から選択される1種以上である。
【0079】
オキソニウムイオンとしては、例えば、
トリメチルオキソニウム、ジエチルメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、テトラメチレンメチルオキソニウム等のオキソニウム;
4-メチルピリリニウム、2,4,6-トリメチルピリリニウム、2,6-ジ-t-ブチルピリリニウム、2,6-ジフェニルピリリニウム等のピリリニウム;
2,4-ジメチルクロメニウム、1,3-ジメチルイソクロメニウム等のクロメニウム又はイソクロメニウム;
等が挙げられる。
【0080】
アンモニウムイオンとしては、例えば、
N,N-ジメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メチルピロリジニウム、N,N-ジエチルピロリジニウム等のピロリジニウム;
N,N’-ジメチルイミダゾリニウム、N,N’-ジエチルイミダゾリニウム、N-エチル-N’-メチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム;
N,N’-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウム、N,N’-ジメチルモルホリニウム等のモルホリニウム;
N,N’-ジエチルピペリジニウム等のピペリジニウム;
N-メチルピリジニウム、N-ベンジルピリジニウム、N-フェナシルピリジウム等のピリジニウム;
N,N’-ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム;
N-メチルキノリウム、N-ベンジルキノリウム、N-フェナシルキノリウム等のキノリウム;
N-メチルイソキノリウム等のイソキノリウム;
ベンジルベンゾチアゾニウム、フェナシルベンゾチアゾニウム等のチアゾニウム;
ベンジルアクリジウム、フェナシルアクリジウム等のアクリジウム;
等が挙げられる。
【0081】
ホスホニウムイオンとしては、例えば、
テトラフェニルホスホニウム、テトラ-p-トリルホスホニウム、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム等のテトラアリールホスホニウム;
トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルブチルホスホニウム等のトリアリールホスホニウム;
トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム、トリブチルフェナシルホスホニウム等のテトラアルキルホスホニウム;
等が挙げられる。
【0082】
スルホニウムイオンとしては、例えば、
トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウム、4-[4-(4-t-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-t-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;
ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;
フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;
ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム;
等が挙げられる。
【0083】
ヨードニウムイオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム等のヨードニウムイオン等が挙げられる。
【0084】
重合開始剤として、市販品を用いてもよい。市販品の重合開始剤としては、例えば、商品名「CPI-310FG」(トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルガレート)等があげられる。
【0085】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。これにより硬化性がより向上する。また、重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。これにより、ガラス基板等への接着性がより向上し、より信頼性に優れた封止材を形成できる。すなわち、重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.01~5質量部、0.01~3質量部、0.1~5質量部、又は、0.1~3質量部であってよい。
【0086】
本実施形態の組成物は、無機充填材を更に含有していてよい。無機充填材は、電気絶縁性無機充填材であることが好ましい。
【0087】
無機充填材としては、シリカ粒子、ガラスフィラー、球状アルミナ、破砕アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、ジルコニア、酸化亜鉛等の酸化物類、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類、炭化ケイ素等の炭化物類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物類、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属類及び合金類、ダイヤモンド、カーボン等の炭素系充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0088】
無機充填材は、脂肪酸、シリコーンカップリング剤、チタネート系カップリング剤等で表面処理が施されたものであってもよい。無機充填材は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0089】
無機充填材の真比重は、例えば1.3以上であってよく、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.5以上である。また、無機充填材の真比重は、例えば20.0以下であってよく、好ましくは8.0以下、より好ましくは5.0以下である。すなわち、無機充填材の真比重は、例えば1.3~20.0、1.3~8.0、1.3~5.0、1.4~20.0、1.4~8.0、1.4~5.0、1.5~20.0、1.5~8.0、又は、1.5~5.0であってよい。なお、無機充填材の真比重は、ASTM D2840により測定される値を示す。
【0090】
無機充填材は、好ましくは、シリカ、マイカ、カオリン、タルク及び酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含み、より好ましくはタルクを含む。
【0091】
無機充填材は、平均粒子径(以下、単に粒子径や粒径ともいうことがある。)を有する無機粒子であってよい。無機粒子の平均粒子径は、0.005μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましい。また、無機粒子の平均粒子径は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。すなわち、無機粒子の平均粒子径は、0.005~50μm、0.005~30μm、0.01~50μm、又は、0.01~30μmであってよい。なお、無機粒子の平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布装置を用い、レーザー回折・散乱法により測定される値を示す。平均粒子径は、粒子径分布における累積50%粒子径(d50)を示す。
【0092】
無機充填材の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば5質量部以上であってよく、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。また、無機充填材の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば500質量部以下であってよく、350質量部以下であってもよく、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、一層好ましくは50質量部以下である。すなわち、無機充填材の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば5~500質量部、5~350質量部、5~300質量部、5~200質量部、5~100質量部、5~50質量部、10~500質量部、10~350質量部、10~300質量部、10~200質量部、10~100質量部、10~50質量部、15~500質量部、15~350質量部、15~300質量部、15~200質量部、15~100質量部、又は、15~50質量部であってよい。
【0093】
本実施形態の組成物は、光増感剤を更に含んでいてもよい。光増感剤とは、エネルギー線を吸収して、重合開始剤から反応種(例えば、光カチオン重合開始剤から発生するカチオン、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル)を効率よく発生させることができる化合物を示す。
【0094】
光増感剤は特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン誘導体、フェノチアジン誘導体、フェニルケトン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、ペンタセン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサンテン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、トリアリルメタン誘導体、フタロシアニン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、有機ルテニウム錯体等が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のフェニルケトン誘導体、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。アントラセン誘導体の中では、9,10-ジブトキシアントラセンが好ましい。光増感剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
本実施形態の組成物が光増感剤を含む場合、光増感剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.01質量部以上であってよく、0.02質量部以上であってもよい。また、光増感剤の含有量は、貯蔵安定性の観点からは、重合性化合物100質量部に対して、例えば5質量部以下であってよく、3質量部以下が好ましい。すなわち、本実施形態の組成物が光増感剤を含む場合、光増感剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.01~5質量部、0.01~3質量部、0.02~5質量部、又は、0.02~3質量部であってよい。
【0096】
本実施形態の組成物は、シランカップリング剤を更に含んでいてもよい。シランカップリング剤の配合により、本実施形態の組成物の接着性及び接着耐久性がより向上する傾向がある。
【0097】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。シランカップリング剤は、1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
本実施形態の組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1質量部以上であってよく、0.2質量部以上が好ましい。また、シランカップリング剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、5質量部以下が好ましい。すなわち、本実施形態の組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、0.1~5質量部、0.2~10質量部、又は、0.2~5質量部であってよい。
【0099】
本実施形態の組成物は、酸化防止剤を更に含んでいてもよい。
【0100】
本実施形態の組成物は、樹脂粒子を更に含んでいてもよい。樹脂粒子の配合により、厚みのある硬化体の形成がより容易となる。このため、樹脂粒子を配合した組成物は、ダム形成用封止剤としてより好適である。
【0101】
樹脂粒子としては、組成物中で溶解せずに形状を保持できるものを特に制限無く使用でき、例えば、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子等が挙げられる。樹脂粒子は、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子及び架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチルポリスチレン共重合体粒子からなる群より選択される少なくとも1種以上が好ましく、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子及び架橋ポリスチレン粒子からなる群より選択される少なくとも1種以上がより好ましい。
【0102】
樹脂粒子の平均粒子径は、例えば0.1μm以上であってよく、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上である。また、樹脂粒子の平均粒子径は、例えば200μm以下であってよく、好ましくは100μm以下である。すなわち、樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、0.1~200μm、0.1~100μm、1~200μm、1~100μm、5~200μm、又は、5~100μmであってよい。なお、本明細書中、樹脂粒子の平均粒子径は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2200」により測定される体積基準の平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒子径分布における累積50%粒子径(d50)を示す。
【0103】
樹脂粒子は、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が、0.25以下であることが好ましい。これにより、樹脂粒子の粒径のばらつきに起因する硬化体の厚みのばらつきが抑制され、硬化体の寸法をより高精度に制御できる。当該標準偏差は、0.2以下がより好ましく、0.1以下が更に好ましい。また、当該標準偏差は、例えば0.001以上であってよく、0.005以上であってもよい。すなわち、上記標準偏差は、例えば0~0.25、0~0.2、0~0.1、0.001~0.25、0.001~0.2、0.001~0.1、0.005~0.25、0.005~0.2、又は、0.005~0.1であってよい。
【0104】
本実施形態の組成物が樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.01質量部以上であってよく、好ましくは0.02質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。また、樹脂粒子の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば10質量部以下であってよく、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。すなわち、本実施形態の組成物が樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、0.01~5質量部、0.01~4質量部、0.01~3質量部、0.02~10質量部、0.02~5質量部、0.02~4質量部、0.02~3質量部、0.1~10質量部、0.1~5質量部、0.1~4質量部、又は、0.1~3質量部であってよい。
【0105】
本実施形態の組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、封止剤分野で用いられる公知の添加剤を特に制限なく使用できる。他の成分としては、例えば、金属不活性化剤、填料、安定剤、中和剤、滑剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0106】
本実施形態の組成物をダム形成用封止剤として用いる場合、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、組成物の塗工性が向上し、硬化体の成形性に優れる観点から、例えば50000mPa・s以上であってよく、好ましくは70000mPa・s以上、より好ましくは80000mPa・s以上、更に好ましくは100000mPa・s以上である。また、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、組成物の塗工時の吐出性が向上し、成形方法の選択に幅が広がる観点から、例えば1000000mPa・s以下であってよく、好ましくは950000mPa・s以下、より好ましくは900000mPa・s以下、更に好ましくは850000mPa・s以下である。すなわち、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、例えば50000~1000000mPa・s、50000~950000mPa・s、50000~900000mPa・s、50000~850000mPa・s、70000~1000000mPa・s、70000~950000mPa・s、70000~900000mPa・s、70000~850000mPa・s、80000~1000000mPa・s、80000~950000mPa・s、80000~900000mPa・s、80000~850000mPa・s、100000~1000000mPa・s、100000~950000mPa・s、100000~900000mPa・s、又は、100000~850000mPa・sであってよい。
【0107】
本実施形態の組成物をフィル形成用封止剤として用いる場合、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、組成物の塗工性がより向上する観点から、例えば5mPa・s以上であってよく、好ましくは6mPa・s以上、より好ましくは7mPa・s以上、更に好ましくは8mPa・s以上である。また、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、組成物の塗工時の吐出性がより向上する観点から、例えば5000mPa・s以下であってよく、好ましくは4000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、更に好ましくは2000mPa・s以下である。すなわち、本実施形態の組成物の25℃における粘度は、例えば5~5000mPa・s、5~4000mPa・s、5~3000mPa・s、5~2000mPa・s、6~5000mPa・s、6~4000mPa・s、6~3000mPa・s、6~2000mPa・s、7~5000mPa・s、7~4000mPa・s、7~3000mPa・s、7~2000mPa・s、8~5000mPa・s、8~4000mPa・s、8~3000mPa・s、又は、8~2000mPa・sであってよい。
【0108】
組成物の25℃における粘度は、コーンローター式粘度計により測定される値を示す。本実施形態の組成物は、25℃における粘度が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0109】
本実施形態の組成物をダム形成用封止剤として用いる場合、本実施形態の組成物は、25℃、1rpmにおける粘度η1に対する、25℃、0.1rpmにおける粘度η2の比(η2/η1)が1.1~10.0であることが好ましい。比(η2/η1)が1.1以上であると、組成物の塗工性がより向上し、硬化体の成形性により優れる傾向がある。この傾向がより顕著となる観点から、比(η2/η1)は1.15以上が好ましく、1.2以上がより好ましい。また、比(η2/η1)が10.0以下であると、組成物の塗工時の吐出性がより向上する傾向があり、この傾向がより顕著となる観点から、比(η2/η1)は9.5以下が好ましく、9.0以下がより好ましい。すなわち、比(η2/η1)は、例えば1.1~10.0、1.1~9.5、1.1~9.0、1.15~10.0、1.15~9.5、1.15~9.0、1.2~10.0、1.2~9.5、又は、1.2~9.0であってよい。
【0110】
本実施形態の組成物をフィル形成用封止剤として用いる場合、本実施形態の組成物は、比(η2/η1)が0.9~1.5であることが好ましい。比(η2/η1)が0.9以上であると組成物の塗工性がより向上する傾向がある。また、比(η2/η1)が1.5以下であると、組成物の塗工時の吐出性がより向上する傾向がある。
【0111】
組成物の25℃、1rpmにおける粘度η1及び25℃、0.1rpmにおける粘度η2は、コーンローター式粘度計により測定される値を示す。本実施形態の組成物は、比(η2/η1)が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0112】
本実施形態の組成物の液比重は、1.3~4.0が好ましい。組成物の液比重は、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.5以上である。また、組成物の液比重は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下である。すなわち、本実施形態の組成物の液比重は、例えば1.3~4.0、1.3~3.0、1.3~2.5、1.3~2.0、1.4~4.0、1.4~3.0、1.4~2.5、1.4~2.0、1.5~4.0、1.5~3.0、1.5~2.5、又は、1.5~2.0であってよい。なお、組成物の液比重は、5mLゲーリュサック型比重瓶を用い、JIS-K-0061の8.2.2に準拠して測定される値を示す。
【0113】
本実施形態の組成物は、液比重が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0114】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されず、上述の各成分が十分に混合される方法であればよい。混合方法としては、例えば、プロペラの回転に伴う撹拌力を利用する撹拌方法、自転公転による遊星式撹拌機等の通常の分散機を利用する方法等が挙げられる。これらの混合方法は、低コストで、安定した混合を行える点で、好ましい。
【0115】
本実施形態の組成物を硬化することで、重合性化合物の重合体を含む硬化体を得ることができる。当該硬化体は、透湿性が低く、封止材(特に、有機EL表示素子用封止材)として好適に用いることができる。
【0116】
本実施形態の組成物は、例えばエネルギー線の照射により硬化できる。本実施形態の組成物の硬化に用いられる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ(インジウム等を含有する)、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノンエキシマランプ、キセノンフラッシュランプ、ライトエミッティングダイオード(以下、LEDという)等が挙げられる。これらの光源は、それぞれの光重合開始剤の反応波長に対応するエネルギー線の照射を効率よく行える点で、好ましい。
【0117】
上記光源は、各々放射波長やエネルギー分布が異なる。そのため、上記光源は重合開始剤の反応波長等により適宜選択される。また、自然光(太陽光)も反応開始光源になり得る。
【0118】
上記光源による照射は、直接照射であってもよく、反射鏡、ファイバー等による集光照射であってもよい。また、低波長カットフィルター、熱線カットフィルター、コールドミラー等を用いた照射であってもよい。
【0119】
本実施形態の組成物の硬化に際しては、光照射後、硬化促進のために後加熱処理をしてもよい。後加熱の温度は、有機EL表示素子への影響を避ける観点から150℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。後加熱の温度は、40℃以上が好ましい。
【0120】
本実施形態の組成物は、接着剤として用いることもできる。本実施形態の組成物は、例えば、有機EL表示素子等のパッケージ等の接着に好適に用いることができる。
【0121】
本実施形態の組成物を用いて2つの部材を接着する方法としては、例えば、組成物を第一の部材の全面又は一部に塗布する工程と、第一の部材上に塗布された組成物に光を照射する工程と、光を照射された組成物が硬化するまでの間に、組成物を介して第一の部材と第二の部材とを接着させる工程と、を含む方法が挙げられる。このような方法によれば、第二の部材を光及び熱に晒すことなく、第一の部材上に接着することができる。このため、上記方法は、背面板と有機EL表示素子との接着に好適に用いることができる。
【0122】
本実施形態の組成物を用いて有機EL表示装置を製造する方法としては、例えば、背面板上に組成物を塗布する工程と、背面板上に塗布された組成物に光を照射する工程と、光を遮断して、組成物を介して、背面板と有機EL表示素子を形成した基板とを接着させる工程と、を含む製造方法が挙げられる。このような方法によれば、有機EL表示素子を光及び熱に晒すことなく封止できる。
【0123】
また、本実施形態の組成物を用いて有機EL表示装置を製造する方法としては、例えば、一方の基板に組成物を塗布する工程と、組成物を介して一方の基板と他方の基板とを接着させる工程と、基板間の組成物に光を照射して組成物を硬化させる工程と、を含む製造方法も挙げられる。
【0124】
本実施形態の組成物の硬化体(以下、単に本実施形態の硬化体ともいう。)の比重は、例えば1.35以上である。また、本実施形態の硬化体の比重は、例えば19.0以下である。なお、硬化体の比重は、JIS K7112 B法に準拠し、浸せき液として23℃の水を使用して測定される値を示す。
【0125】
本実施形態の組成物は、硬化体の比重が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0126】
本実施形態の硬化体において、重合性化合物の重合体のガラス転移温度は、例えば60℃以上であってよく、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上である。
【0127】
なお、本明細書中、重合体のガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示す。動的粘弾性スペクトルでは、重合体に昇温速度一定で応力及び歪みを加え、損失正接(以下、tanδと略す)のピークトップを示す温度をガラス転移温度とすることができる。なお、-150℃程度の十分に低い温度からある温度(Ta℃)まで昇温してもtanδのピークが現れない場合、ガラス転移温度としては、-150℃以下又はある温度(Ta℃)以上と考えられるが、ガラス転移温度が-150℃以下である硬化体は考えられないため、ある温度(Ta℃)以上と判断することができる。
【0128】
本実施形態の組成物は、重合体のガラス転移温度が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0129】
本実施形態の硬化体は、その架橋密度が、1.0×10-3mol/cm3以上であることが好ましく、2.0×10-3mol/cm3以上であることがより好ましい。これにより、硬化体中に結合点が多いことでミクロブラウン運動が抑制され、透湿度がより低下すると考えられる。また、硬化体の架橋密度は、例えば1.0mol/cm3以下であってよい。これにより、硬化体の脆さに起因する信頼性低下がより抑制される。
【0130】
なお、本明細書中、硬化体の架橋密度は、動的粘弾性スペクトルから求められる値を示す。具体的には、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とする。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行い、温度と貯蔵弾性率(G’)との関係を求める。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)をG’T+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式で算出される。
架橋密度(ρ)=G’T+40/φRT
【0131】
本実施形態の組成物は、硬化体の架橋密度が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0132】
本実施形態の硬化体は、硬化体の平均自由体積が1nm3以下であることが好ましく、1nm3未満であることが好ましく、0.5nm3以下であることがより好ましく、0.3nm3以下であることが更に好ましく、0.1nm3以下であることが一層好ましく、0.1nm3未満であることがより一層好ましい。
【0133】
高分子の自由体積を求める手法として、陽電子消滅法が知られている(高分子 42巻12月号(1993)参照)。一般に、高分子に陽電子(e
+)を入射させると、陽電子は電子(e
-)と結合してポジトロニウム(Ps)を生成する。陽電子消滅法とは、このポジトロニウム(Ps)の3/4を占めるオルトポジトロニウム(o-Ps、半径0.1nm、以下、「o-Ps」ともいう)が、高分子の空孔に入り込んだ際のo-Psの寿命(τ
3)を測定することで、高分子の自由体積を求める手法である。o-Psの寿命(τ
3)は、高分子中に存在する空孔の壁と衝突したときに、o-Psの陽電子(e
+)と空孔の壁の中の電子(e
-)が重なる確率で決まり、高分子の空孔が大きいほど、o-Psの寿命(τ
3)が長くなる。空孔を無限高さの球状井戸型ポテンシャルと考え、空孔の壁面に厚さΔRの電子層があると仮定して、この電子層とo-Psの波動関数との重なりを計算することによって得られる陽電子(e
+)消滅の速度を求めるモデルが、実際に実験を行った場合のデータと良く合う。そのため、高分子の空孔径Rが0.16~0.8nm程度までであれば、o-Psの寿命τ
3と空孔径Rとの間で下記式(1)の関係が成り立つ。
【数1】
(上記式(1)において、τ
3は測定したオルトポジトロニウム(o-Ps)の寿命、Rは高分子の空孔径、ΔRは空孔の壁面の厚さを示す。)
【0134】
すなわち、陽電子消滅法により、オルトポジトロニウム(o-Ps)の寿命(τ3)を求めることにより、上記式(1)より高分子の空孔径Rが求められる。さらに、空孔体積(平均自由体積)=4/3πR3であるため、求めた高分子の空孔径Rの値から、高分子の平均自由体積を算出することができる。
【0135】
本実施形態の組成物は、硬化体の平均自由体積が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0136】
本実施形態の硬化体は、硬化体の空孔径が20%未満であることが好ましい。
【0137】
陽電子消滅法により解析される自由体積は、多孔性基材や電解質を形成する分子鎖に占有されない領域を示しており、基材及び電解質を形成する分子鎖が変化した際に、その分子鎖近傍に生ずる体積を反映する。具体的には、陽電子を試料に入射してから消滅するまでの時間を測定し、その消滅寿命から原子空孔や自由体積の大きさ、数密度等に関する情報を非破壊的に観察する手法により、自由体積を求めることが可能である。
【0138】
陽電子は電子の反粒子であり、電子と同じ質量を有するが、反対符号の電荷をもつ素粒子である。高分子のようなアモルファス固体中では、陽電子が電子と対を形成することがあり、ポジトロニウムと呼ばれる。ポジトロニウムが消滅する際に、消滅γ線が二方向に放出される。この消滅γ線強度の時間変化を測定することにより陽電子の寿命が測定される。
【0139】
ポジトロニウムにはパラポジトロニウムとオルトポジトロニウムがあり、オルトポジトロニウムの平均寿命は140ns程度であるが、物質中の他の電子を奪い取るピックオフ過程を経る場合には1ns~5nsにまで短縮化する。固体内の自由体積空間内にオルトポジトロニウムが存在する際には、その空間の大きさとオルトポジトロニウムの寿命は正の相関関係にあり、オルトポジトロニウムのピックオフ消滅による寿命を測定することにより、空孔サイズの情報を得ることができる。
【0140】
具体的には、陽電子の寿命を非線形最小二乗法により3成分解析して、消滅寿命の小さいものから、τ1、τ2、τ3とし、それに応じた強度をI1、I2,I3(I1+I2+I3=100%)とする。重合体の空孔率は、上記I1、I2、I3を用いて次の式により定義される。
空孔率(%)=I3/(I1+I2+I3)
【0141】
本実施形態の組成物は、重合体の空孔率が上記範囲となるように各成分の種類及び含有量が適宜調整されていてよい。
【0142】
本実施形態の硬化体は、JIS Z0208に準拠して、温度85℃、相対湿度85%の条件下で測定される透湿度が、100(g/m2・24h/100μm)以下であってよく、60(g/m2・24h/100μm)以下であることが好ましく、55(g/m2・24h/100μm)以下であることがより好ましく、50(g/m2・24h/100μm)以下であることが更に好ましい。透湿度が低いことで、有機EL表示素子用封止材として用いた場合に、有機発光材料層への水分の到達によるダークスポットの発生を顕著に抑制できる。なお、上記透湿度は、JIS Z 0208:1976に準拠して、85℃、85%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度(g/m2)ということもできる。上記透湿度は、例えば0.001(g/m2・24h/100μm)以上であってよく、0.01(g/m2・24h/100μm)以上であってもよく、0.03(g/m2・24h/100μm)以上であってもよく、0.1(g/m2・24h/100μm)以上であってもよい。すなわち、上記透湿度は、例えば、0~100(g/m2・24h/100μm)、0~60(g/m2・24h/100μm)、0~55(g/m2・24h/100μm)、0~50(g/m2・24h/100μm)、0.001~100(g/m2・24h/100μm)、0.001~60(g/m2・24h/100μm)、0.001~55(g/m2・24h/100μm)、0.001~50(g/m2・24h/100μm)、0.01~100(g/m2・24h/100μm)、0.01~60(g/m2・24h/100μm)、0.01~55(g/m2・24h/100μm)、0.01~50(g/m2・24h/100μm)、0.03~100(g/m2・24h/100μm)、0.03~60(g/m2・24h/100μm)、0.03~55(g/m2・24h/100μm)、又は、0.03~50(g/m2・24h/100μm)であってよい。
【0143】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0144】
例えば、本発明は、上述の組成物を塗布及び硬化して、ダムを形成する工程を含む、ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関するものであってよい。
【0145】
また、本発明は、ダム及びフィルを備えるダム・フィル封止構造を有する有機EL表示装置に関するものであってよく、このとき、ダムは上述の組成物の硬化体を含んでいてよい。
【0146】
なお、ダム・フィル封止構造は公知のダム・フィル封止構造であってよく、フィルは公知のフィルであってよい。また、有機EL表示装置のダム・フィル封止構造以外の構成は、公知の有機EL表示装置と同様の構成であってよい。
【0147】
本発明は、上述の組成物を塗布及び硬化して、フィルを形成する工程を含む、ダム・フィル封止構造を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法に関するものであってよい。
【0148】
また、本発明は、ダム及びフィルを備えるダム・フィル封止構造を有する有機EL表示装置に関するものであってよく、このとき、フィルは上述の組成物の硬化体を含んでいてよい。
【0149】
なお、ダム・フィル封止構造は公知のダム・フィル封止構造であってよく、ダムを形成するためのダム剤は公知のダム剤であってよく、本実施形態の組成物であってもよい。また、有機EL表示装置のダム・フィル封止構造以外の構成は、公知の有機EL表示装置と同様の構成であってよい。
【0150】
本発明により、防湿性、及び、ガラス基板等との接着性に優れた封止材を形成可能な、封止剤が提供される。また、本発明によれば、当該封止剤の硬化体、当該封止剤を用いた有機エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法、及び、当該封止剤から形成された封止材を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置が提供される。
【0151】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0152】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例は、特記しない限り、23℃、相対湿度50質量%で試験した。
【0153】
実施例及び比較例では、以下の化合物を使用した。
【0154】
(A)重合性化合物-高比重化合物(比重1.3~4.0の重合性化合物)
(A-1)ジブロモフェニルグリシジルエーテル(日本化薬社製「BR-250」)(最大原子番号:35、比重:1.8、1分子中の重合性官能基数:1)
(A-2)TBBPA(テトラブロモビスフェノールA)エポキシ樹脂(DIC社「エピクロン152」)(最大原子番号:35、比重:1.7、1分子中の重合性官能基数:2)
(A-3)臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(阪本薬品社「SR-T1000」)(最大原子番号:35、比重:1.7、1分子中の重合性官能基数:2)
(A-4)2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロヘプチルオキシラン(ダイキン工業社「C6エポキシ」)(最大原子番号:9、比重:1.5、1分子中の重合性官能基数:1)
【0155】
(B)重合性化合物-低比重化合物(比重1.3未満の重合性化合物)
(B-1)3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製「セロキサイド2021P」)(最大原子番号:8、比重:1.2、1分子中の重合性官能基数:2)
(B-2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、分子量360~390)(最大原子番号:8、比重:1.2、1分子中の重合性官能基数:2)
(B-3)フェノ-ルノボラック型エポキシ樹脂(DIC製「EPICLON N-775」)(最大原子番号:8、比重:1.2、1分子中の重合性官能基数:2以上)
(B-4)シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド社製「CHDVE」)(最大原子番号:8、比重:0.9、1分子中の重合性官能基数:1)
【0156】
(C)重合開始剤として下記を用いた。
(C-1)トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルガレート(サンアプロ社製「CPI-310FG」、表中は「CPI-310FG」と記載した。)
(C-2)トリアリールスルホニウム塩ヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「アデカオプトマーSP-170」、アニオン種はヘキサフルオロアンチモネート)
(C-3)アリールヨードニウム-ヘキサフルオロフォスフェート(BASF社製「Irgacure 250」、表中は「Irgacure 250」と記載した。)
(C-4)アリールスルホニウム-ヘキサフルオロフォスフェート(BASF社製「Irgacure 270」、表中は「Irgacure 270」と記載した。)
(C-5)トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート(東京化成社製「トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート」、表中は「BF4」と記載した。)
(C-6)トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成社製「トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート」、表中は「CF3SO3」と記載した。)
【0157】
(D)光増感剤として下記を用いた。
(D-1)9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製「ANTHRACURE UVS-1331」)
【0158】
(E)シランカップリング剤として下記を用いた。
(E-1)γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-403」)
【0159】
(F)無機充填材として下記を用いた。
(F-1)微粒子タルク、粒子径(d50):4.5μm、真比重:2.7(松村産業社製「#5000PJ」)
(F-2)微粒子シリカ、粒子径(d50):4.2μm、真比重:1.9(デンカ社製「FB-5SDX)
【0160】
(G)樹脂粒子として下記を用いた。
(G-1)GS-210:球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS-210」)(平均粒子径:20.0μm、標準偏差:0.06μm)
【0161】
表1又は表2に示す種類の原材料を、表1又は表2に示す組成割合で混合し、実施例及び比較例の封止剤を調製した。組成割合の単位は質量部である。
【0162】
【0163】
【0164】
実施例及び比較例の封止剤(又は封止剤中の成分)について、下記の各測定を行った。その結果を表1又は表2に示した。
【0165】
〔重合性化合物の比重〕
ハーバート形比重瓶を用い、JIS K0061に準拠して、測定を行った。
【0166】
〔液比重〕
5mLゲーリュサック型比重瓶を用い、JIS-K-0061の8.2.2に準拠して測定した。
【0167】
〔光硬化条件〕
封止剤の硬化性及び接着性の評価に際し、下記光照射条件により、封止剤を硬化させた。無電極放電メタルハライドランプ搭載UV硬化装置(フュージョン社製)により、365nmの波長の積算光量4,000mJ/cm2の条件にて、封止剤を光硬化させた後、100℃のオーブン中で、60分間の後加熱処理を実施し、硬化体を得た。
【0168】
〔硬化体の比重〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS K7112 B法に準拠して測定した。浸せき液として、温度は23℃の水を使用した。
【0169】
〔Tg、Tg+40℃の弾性率(貯蔵弾性率)〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とした。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率を測定した。上記動的粘弾性測定で測定されたtanδ(損失正接)のピークトップの温度を硬化物のガラス転移温度(Tg)とした。
【0170】
〔架橋密度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、厚み100μmの硬化体を幅5mm×長さ25mmに切り出し、試験片とした。この試験片について、温度範囲-50℃~200℃、昇温速度2℃/min、引っ張りモードの条件で、動的粘弾性測定を行った。架橋密度は、Tg+40℃の温度をT(K)、T(K)における貯蔵弾性率(G’)(表の「弾性率」)をG’T+40、気体定数をR、フロント係数をφ(=1)として、以下の式で算出した。
架橋密度(ρ)=G’T+40/φRT
【0171】
〔平均粒径、標準偏差〕
無機充填材、樹脂粒子の平均粒子径(平均粒径又は粒径という場合もある)、及び、粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差(上述の「標準偏差」)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製「SALD-2200」)により測定した。
【0172】
〔引張せん断接着強さ〕
ホウ珪酸ガラス試験片(縦25mm×横25mm×厚2.0mm、テンパックス(登録商標)ガラス)を2枚用い、接着面積0.5cm2、接着厚み10μmとなるように、封止剤を介してホウ珪酸ガラス試験片を接着し、前記光硬化条件にて封止剤を硬化させた。硬化後、封止剤で接合した試験片を用い、引張剪断接着強さ(単位:MPa)を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度10mm/分で測定した。
【0173】
〔透湿度〕
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を前記光硬化条件にて作製し、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、雰囲気温度85℃、相対湿度85%の条件で測定した。透湿度は50g/(m2・24hr)以下が好ましい。
【0174】
〔有機EL素子基板の作製〕
ITO電極付きガラス基板(縦25mm×横25mm)をアセトン及びイソプロパノールを用いて洗浄した。その後、真空蒸着法にて以下の化合物を薄膜となるように順次蒸着し、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子基板を得た。各層の構成は以下の通りである。
・陽極:ITO、陽極の膜厚250nm
・正孔注入層:銅フタロシアニン 厚さ30nm
・正孔輸送層:N,N’-ジフェニル-N,N’-ジナフチルベンジジン(α-NPD) 厚さ20nm
・発光層:トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(金属錯体系材料)、発光層の膜厚1000Å
・電子注入層:フッ化リチウム 厚さ1nm
・陰極:アルミニウム、陰極の膜厚250nm
【0175】
〔有機EL素子の作製〕
窒素雰囲気下、塗工装置にてガラス基板に、封止剤を四角状(辺長20mm、塗布幅0.6mm、塗布高さ0.1mm)に塗布し、接着厚み10μmとなるように、封止剤を介してガラス基板と有機EL素子基板とを貼り合わせ、前記光硬化条件にて封止剤を硬化させ、有機EL素子を作製した。
【0176】
〔有機EL評価〕
〔初期〕
作製した直後の有機EL素子に6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0177】
〔高温高湿試験後〕
作製した直後の有機EL素子を、85℃、相対湿度85質量%の条件下に300時間暴露した後、6Vの電圧を印加し、有機EL素子の発光状態を目視と顕微鏡で観察し、ダークスポットの直径を測定した。
【0178】
なお、ダークスポットの直径は、60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、ダークスポットはないことが最も好ましい。