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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】インバータ一体型電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240719BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240719BHJP
   H02K 11/02 20160101ALI20240719BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02K11/33
H02K11/02
F04B39/00 106Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022563801
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2021042241
(87)【国際公開番号】W WO2022107810
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020192125
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 康平
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝次
(72)【発明者】
【氏名】蓼沼 厚博
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-058910(JP,A)
【文献】特開2016-160802(JP,A)
【文献】特開2003-324903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02K 11/33
H02K 11/02
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を有して三相交流出力をモータに印加するインバータ装置を備えたインバータ一体型電動圧縮機において、
前記スイッチング素子のスイッチングを制御する制御基板と、
直流電源、前記制御基板、前記スイッチング素子、及び、前記モータの配線を行うために設けられた配線部材とを備え、
前記制御基板、前記配線部材、及び、前記スイッチング素子は積層されたかたちで設けられており、
前記配線部材に、ノイズ低減用の素子を配置したことを特徴とするインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項2】
前記ノイズ低減用の素子は、
ノイズを低減するためのスナバ回路、
流出したコモンモード電流をノイズ源に還流させるためのコンデンサ、
前記スイッチング素子と前記モータ間に接続されたノーマルモードコイル、
前記スイッチング素子と前記モータ間に接続された三相コモンモードコイル、
前記スイッチング素子と前記モータ間に接続されたフェライトコア、
のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てであることを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項3】
前記スナバ回路は、個別スナバ回路、又は、一括スナバ回路であることを特徴とする請求項2に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項4】
前記スナバ回路は、コンデンサ、或いは、コンデンサと抵抗、若しくは、コンデンサと抵抗とダイオードによる構成であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【請求項5】
前記配線部材は、バスバーを樹脂モールドして成るバスバーアセンブリであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流出力をモータに印加するインバータ装置を備えたインバータ一体型電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より車両用の空気調和装置に用いられる電動圧縮機には省スペースを満足させるための小型化が要求される。そのため、モータを収容するハウジング(筐体)に、スイッチング素子を用いてモータを駆動するためのインバータ装置を一体に設けた電動圧縮機が用いられている。
【0003】
このようなインバータ一体型電動圧縮機では、各種の寄生結合(モータとハウジング間、スイッチング素子とハウジング間、基板とハウジング間等)が存在するため、スイッチング素子のスイッチング動作に伴う電圧変動により、ハウジングに流出するコモンモード電流(ノイズ)が多くなる。そこで、従来より制御基板の電源入力部にコモンモードコイルやYコンデンサから成るEMIフィルタを搭載し、スイッチング素子から寄生結合(寄生容量)を介してハウジングに流出するコモンモード電流(ノイズ)をスイッチング素子(ノイズ源)に還流させ、ノイズ低減を図る対策が採られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5091521号公報
【文献】特許第4981483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、係る従来の構成ではノイズ源であるスイッチング素子からEMIフィルタまでの経路がネジ等を経由する配線となるため、スイッチング素子からハウジングに流出したコモンモード電流に対してEMIフィルタまでの配線長が拡大し、コモンモード電流の還流ループが大きくなって、Yコンデンサのフィルタ効果(コモンモード電流を還流させる効果)が十分に得られない。そのため、電源入力部に十分なインピーダンスを持つ大型のコモンモードコイルを挿入しなければならなくなり、省スペース化に反するものとなっていた。
【0006】
また、コモンモード電流(漏れ電流)によって発生するノイズ(主にラジオノイズ)を低減するための抵抗とコンデンサから成るスナバ回路をスイッチング素子と並列に挿入する対策も提案されているが(例えば、特許文献2参照)、制御基板上に搭載するものであったため、絶縁に必要な沿面距離を十分に確保するために制御基板が大きくなってしまい、これも省スペース化を阻害する原因となっていた。
【0007】
一方、この種の電動圧縮機では耐震性能も要求されるため、制御基板と電源間の接続、スイッチング素子間の接続、及び、スイッチング素子とモータ間の接続のために、樹脂一体成型で構成されたバスバー(配線部材)が用いられる。そして、前記特許文献1では電源電圧のリップル低減用のコンデンサやリアクタをバスバーに一体化させていた。
【0008】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、小型化を図りながら、コモンモード電流によるノイズを効果的に抑制することができるようにしたインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、スイッチング素子を有して三相交流出力をモータに印加するインバータ装置を備えたものであって、スイッチング素子のスイッチングを制御する制御基板と、直流電源、制御基板、スイッチング素子、及び、モータ間の配線を行うために設けられた配線部材とを備え、制御基板、配線部材、及び、スイッチング素子は積層されたかたちで設けられており、配線部材に、ノイズ低減用の素子を配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記発明においてノイズ低減用の素子は、ノイズを低減するためのスナバ回路、流出したコモンモード電流をノイズ源に還流させるためのコンデンサ、スイッチング素子とモータ間に接続されたノーマルモードコイル、スイッチング素子とモータ間に接続された三相コモンモードコイル、スイッチング素子とモータ間に接続されたフェライトコア、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記発明においてスナバ回路は、個別スナバ回路、又は、一括スナバ回路であることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明のインバータ一体型電動圧縮機は、請求項2又は請求項3の発明においてスナバ回路は、コンデンサ、或いは、コンデンサと抵抗、若しくは、コンデンサと抵抗とダイオードによる構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記各発明において配線部材は、バスバーを樹脂モールドして成るバスバーアセンブリであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スイッチング素子を有して三相交流出力をモータに印加するインバータ装置を備えたインバータ一体型電動圧縮機において、スイッチング素子のスイッチングを制御する制御基板と、直流電源、制御基板、スイッチング素子、及び、モータ間の配線を行うために設けられた配線部材とを備え、この配線部材に、ノイズ低減用の素子を配置したので、制御基板上に搭載されるノイズ低減用の素子を小型化し、制御基板を小型化することができるようになる。
【0015】
この場合、制御基板、配線部材、及び、スイッチング素子を積層したかたちで設けるものでは、ノイズ低減用の素子を配線部材に配置することで、立体的な配置となり、沿面距離を十分に確保しながら小型化を図ることが可能となる。
【0016】
尚、ノイズ低減用の素子としては、例えば請求項2の発明の如く、ノイズを低減するためのスナバ回路や、流出したコモンモード電流をノイズ源に還流させるためのコンデンサ、スイッチング素子とモータ間に接続されたノーマルモードコイル、スイッチング素子とモータ間に接続された三相コモンモードコイル、スイッチング素子とモータ間に接続されたフェライトコア等が考えられる。
【0017】
例えば、流出したコモンモード電流をノイズ源に還流させるためのコンデンサを配線部材に配置すれば、流出したコモンモード電流を短いルートでノイズ源に還流させることができるようになり、従来の如く電源入力部に大型のコモンモードコイルを挿入すること無く、ノイズを抑制することが可能となる。これにより電動圧縮機の小型化を図りながら、効果的にノイズを抑制することができるようになる。
【0018】
また、例えば、スイッチング素子とモータ間に接続された三相コモンモードコイルやスイッチング素子とモータ間に接続されたフェライトコアを配線部材に配置することによっても、スイッチング素子からモータを経て電動圧縮機のハウジングに至る経路のインピーダンスを増加させ、この経路から流出するコモンモード電流を低減させることができるようになる。また、スイッチング素子とモータ間に接続されたノーマルモードコイルを配線部材に配置することにより、スイッチングサージを効果的に抑制することが可能となる。これによっても、大型のEMIフィルタ(コモンモードコイル)を電源入力部に挿入する必要がなくなり、電動圧縮機の小型化を図りながら、効果的にノイズの抑制を図ることが可能となる。
【0019】
特に、ノーマルモードコイルは、コモンモードコイルと異なり、三相線の結合が不要なことから、別々に配置することが可能であり、配線部材に配置する際の制約が少なく、コモンモードコイルの場合よりも小型化し易い。更に、三相全てに入れなくとも(例えば二相のみ)、ノイズ低減効果が得られることから、使い勝手がよいという利点がある。
【0020】
更に、例えば、ノイズを低減するためのスナバ回路を配線部材に配置することにより、よりスイッチング素子に近接してスナバ回路を配置することができるようになり、ノイズ減衰効果を高めることができるようになる。
【0021】
この場合のスナバ回路としては、請求項3の発明の如き個別スナバ回路や一括スナバ回路がある。
【0022】
また、スナバ回路は実際には請求項4の発明の如くコンデンサのみや、コンデンサと抵抗、若しくは、コンデンサと抵抗とダイオードにより構成される。
【0023】
更にまた、請求項5の発明の如く配線部材を、バスバーを樹脂モールドして成るバスバーアセンブリで構成することで、絶縁を確保しながら耐震性も担保することができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した一実施例のインバータ一体型電動圧縮機の斜視図である。
図2図1のインバータ一体型電動圧縮機の蓋部材を取り外した状態の斜視図である。
図3図2に示したインバータ装置のフィルタ基板以外の部分の分解斜視図である。
図4図3のインバータ装置の電気回路図である。
図5図4のインバータ装置のインバータ回路と制御基板の電気回路図である。
図6図3のバスバーアセンブリの斜視図である。
図7図6のバスバーアセンブリを透視した平面図である。
図8】もう一つのバスバーアセンブリの斜視図である。
図9図8のバスバーアセンブリを透視した平面図である。
図10】更にもう一つのバスバーアセンブリの斜視図である。
図11図10のバスバーアセンブリを透視した平面図である。
図12】従来のインバータ装置のノイズ経路を説明する図である。
図13図4のインバータ装置のノイズ経路を説明するための電気回路図である。
図14】スナバ回路の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。実施例のインバータ一体型電動圧縮機1は、図示しない車両用空気調和装置の冷媒回路の一部を構成するものであり、モータM(図4図5に示す)と、このモータMにより駆動される圧縮機構(図示せず)を内蔵した金属製(アルミニウムや鉄製。実施例ではアルミニウム製)のハウジング2と、三相交流出力をモータMに印加して駆動するインバータ装置3(電力変換装置)を備えている。
【0026】
ハウジング2は、前記モータMを内蔵するモータハウジング4と、このモータハウジング4の軸方向の一側に接続されて前記圧縮機構を内蔵する圧縮機構ハウジング6と、この圧縮機構ハウジング6の一側の開口を閉塞する圧縮機構カバー7と、モータハウジング4の軸方向の他側に構成されたインバータ収容部8と、このインバータ収容部8の他側の開口を開閉可能に閉塞する蓋部材11を備えている。そして、このインバータ収容部8内にインバータ装置3が収容される。
【0027】
尚、図1図2ではインバータ収容部8を上に、圧縮機構カバー7を下にした状態で実施例のインバータ一体型電動圧縮機1を示しているが、実際には圧縮機構カバー7が一側、インバータ収容部8が他側となるように横方向で配置されるものである。
【0028】
実施例のモータMは、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)から構成されており、前記圧縮機構は例えばスクロール式の圧縮機構である。圧縮機構はモータMにより駆動され、冷媒を圧縮して車両用空気調和装置の冷媒回路内に吐出する。そして、モータハウジング4には、これも冷媒回路の一部を構成するエバポレータ(吸熱器とも称される)から吸入された低温のガス冷媒が流通する。そのため、モータハウジング4内は冷却されている。そして、インバータ収容部8は、モータハウジング4に形成された隔壁によりモータMが収容されるモータハウジング4内と区画されており、この隔壁も低温のガス冷媒により冷却される。
【0029】
(1)インバータ装置3
前記インバータ装置3は、三相のインバータ回路9の各相の上下アームを構成するIGBT(MOSFETでもよい)から成る6個のスイッチング素子13~18と(図3)、プリント配線に制御回路19が実装された制御基板21と、後述するバッテリ24、制御基板21、各スイッチング素子13~18、及び、モータM間の配線を行うための配線部材としてのバスバーアセンブリ22と(図3)、フィルタ基板23を備え、直流電源としての車両のバッテリ24(図4)から給電される直流電力を三相交流電力に変換して、前記モータMのステータコイル(図示せず)に給電するものである。
【0030】
(2)インバータ装置3の電気回路
先ず、図4を用いてインバータ装置3の電気回路を説明する。26はバッテリ24の正極側(+)にLISN(疑似電源回路網)を介して接続された正極側経路、27はバッテリ24の負極側(-)にLISNを介して接続された負極側経路であり、これら正極側経路26と負極側経路27にはEMIフィルタ28と平滑コンデンサ29が接続されている。
【0031】
上記EMIフィルタ28は、正極側経路26と負極側経路27間に接続されたXコンデンサ31と、このXコンデンサ31の後段の正極側経路26に接続されたディファレンシャルモードコイル32と、このディファレンシャルモードコイル32の後段に接続されたコモンモードコイル33と、このコモンモードコイル33の後段において、正極側経路26及び負極側経路27とハウジング2間にそれぞれ接続されたYコンデンサ36及びYコンデンサ34から構成されている。
【0032】
そして、これらEMIフィルタ28と平滑コンデンサ29はフィルタ基板23に配置されている。上記Xコンデンサ31はディファレンシャルモードノイズを低減するためのコンデンサであり、Yコンデンサ34、36はコモンモードノイズを低減するためのコンデンサである。
【0033】
尚、ハウジング2は車体37(GND)に接続されている。そして、ハウジング2がインバータ装置3の基準電位導体となる。
【0034】
(2-1)ノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、及び、フェライトコア42
また、平滑コンデンサ29の後段の正極側経路26及び負極側経路27にはインバータ回路9が接続されており、インバータ回路9の後述する中間経路51U~51WとモータMの間には、何れもノイズ低減用の素子としてのノーマルモードコイル40と、三相コモンモードコイル41と、フェライトコア42が順次接続されている。このノーマルモードコイル40や三相コモンモードコイル41は主に低周波のインピーダンスを増加させ、フェライトコア42は高周波のインピーダンスを増加させる。フェライトコア42は後述する出力経路56U~56Wの周囲に配置するものであるが、本発明では係る配置も接続と称する。また、ノーマルモードコイル40は実施例では出力経路56U~56Wの全てにそれぞれ接続されているものとする。
【0035】
(2-2)還流コンデンサ43、44
更に、インバータ回路9と平滑コンデンサ29の間の正極側経路26及び負極側経路27とハウジング2間には、コモンモード電流を還流させるためのコンデンサで構成されたノイズ低減用の素子としての還流コンデンサ43、44が接続されている。この場合、還流コンデンサ43が正極側経路26とハウジング2(基準電位導体)間に接続され、還流コンデンサ44が負極側経路27とハウジング2間に接続される。
【0036】
そして、これら還流コンデンサ43、44と、前述したノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42は、実施例ではバスバーアセンブリ22に配置されている。尚、図4中46で示す容量はインバータ回路9とハウジング2間の寄生容量を示し、47で示す容量はモータMとハウジング2間の寄生容量を示している。
【0037】
(2-3)インバータ回路9
次に、図5にはインバータ回路9の電気回路と制御基板21を示している。インバータ回路9は、U相インバータ48U、V相インバータ48V、W相インバータ48Wを有しており、各相インバータ48U~48Wは、それぞれ前述した上アーム側のスイッチング素子(上アームスイッチング素子と称す)13~15と、下アーム側のスイッチング素子(下アームスイッチング素子と称す)16~18を個別に有している。更に、各スイッチング素子13~18には、それぞれフライホイールダイオード49が逆並列に接続されている。
【0038】
そして、インバータ回路9の上アームスイッチング素子13~15の高電位側端子は正極側経路26に接続されており、下アームスイッチング素子16~18の低電位側端子は負極側経路27に接続されている。U相インバータ48Uの上アームスイッチング素子13の低電位側端子と下アームスイッチング素子16の高電位側端子は中間経路51Uにて接続され、この中間経路51Uが出力経路56UによってモータMのU相のステータコイルに接続される。
【0039】
また、V相インバータ48Vの上アームスイッチング素子14の低電位側端子と下アームスイッチング素子17の高電位側端子は中間経路51Vにて接続され、この中間経路51Vが出力経路56VによってモータMのV相のステータコイルに接続される。更に、W相インバータ48Wの上アームスイッチング素子15の低電位側端子と下アームスイッチング素子18の高電位側端子は中間経路51Wにて接続され、この中間経路51Wが出力経路56WによってモータMのW相のステータコイルに接続される。そして、前述したノーマルモードコイル40や三相コモンモードコイル41、フェライトコア42は中間経路51U~51WとモータMの間に位置する出力経路56U~56W中に設けられる。尚、フェライトコア42は出力経路56U~56Wについて全相一括で配置しているが、各相の出力経路56U~56Wの周囲にそれぞれ別個に配置してもよい。
【0040】
(2-4)制御基板21
一方、制御基板21の制御回路19はプロセッサを有するマイクロコンピュータから構成されており、車両のECUから回転数指令値を入力し、モータMから相電流を入力して、これらに基づき、インバータ回路9の各上下アームスイッチング素子13~18のON/OFF状態を制御する。具体的には、各上下アームスイッチング素子13~18のゲート端子に印加するゲート電圧(駆動信号)を制御し、各相の上下アームスイッチング素子13~18をそれぞれ接続する中間経路51U~51Wの電圧(相電圧)を三相交流出力とし、出力経路56U~56Wを介してモータMの各相のステータコイルに印加することで当該モータMを駆動する。
【0041】
(2-5)スナバ回路52
ここで、実施例では正極側経路26と負極側経路27間に渡ってノイズ低減用の素子としてのスナバ回路52が接続されている。具体的にはスナバ回路52の一端は、図5に示す如くU相インバータ48Uの上アームスイッチング素子13の高電位側端子と共に正極側経路26に接続され、他端は下アームスイッチング素子16の低電位側端子と共に負極側経路27に接続されている。尚、この実施例のスナバ回路52は、コンデンサCから構成された一括スナバ回路の一つであるCスナバ回路であり、このコンデンサCが正極側経路26と負極側経路27間に渡って接続されている。
【0042】
スナバ回路52は、上下アームスイッチング素子13~18のターンオフ時に発生するサージ電圧によるエネルギーを消費させる。このスナバ回路52においてサージ電圧によるエネルギーを消費させることで、各上下アームスイッチング素子13~18のドレイン-ソース間(コレクタ-エミッタ間)に発生する高周波のサージ電圧を低減することができ、モータMとハウジング2との間で生じるコモンモード電流を抑制し、ノイズ(主にラジオノイズ)を低減することができる。
【0043】
そして、このスナバ回路52のコンデンサCも実施例ではバスバーアセンブリ22に配置されている。これらスナバ回路52のコンデンサCや、ノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42、還流コンデンサ43、44をバスバーアセンブリ22に配置することで、制御基板21にそれらを実装する必要が無くなり、制御基板21の寸法を縮小することができる。また、スナバ回路52をバスバーアセンブリ22に配置することにより、よりスイッチング素子13~18に近接してスナバ回路52を配置することができるようになり、ノイズ減衰効果を高めることもできるようになる。
【0044】
図3において57~59はバスバーアセンブリ22に設けられた導電性金属から成るバスバーである。これらバスバー57~59は、モータハウジング4の隔壁から引き出された引出端子61~63に三枚の端子板64を介してそれぞれ接続される。そして、これらバスバー57~59、端子板64、及び、引出端子61~63が前述した出力経路56U~56Wの一部を構成することになる。
【0045】
また、前述した正極側経路26と負極側経路27は、モータハウジング4に取り付けられたHVコネクタ66を介して前述したバッテリ24からの電源ハーネスに接続されることになる。この場合、フィルタ基板23の端子板67がHVコネクタ66を介して電源ハーネスに導通接続され、制御基板21側の図示しない端子板がバスバーアセンブリ22のバスバー68、69に接続される。即ち、バスバー69は正極側経路26の一部を構成し、バスバー68は負極側経路27の一部を構成することになる。
【0046】
また、前述したインバータ回路9の各上下アームスイッチング素子13~18は、モータハウジング4の隔壁に密着され、それと熱伝導関係に配置される。隔壁は前述した如く低温のガス冷媒により冷却されているので、発熱を伴う各上下アームスイッチング素子13~18は隔壁から冷却されることになる。
【0047】
(3)インバータ装置3の組み付け
次に、インバータ装置3をモータハウジング4に組み付ける手順について説明する。先ず、各上下アームスイッチング素子13~18を図3に示すようなかたちで前述したモータハウジング4の隔壁に配置する。次に、バスバーアセンブリ22を図3に矢印で示すようなかたちで各上下アームスイッチング素子13~18に被せる。このとき、各上下アームスイッチング素子13~18の各端子71を、バスバーアセンブリ22の貫通孔72に進入させてその先端をバスバーアセンブリ22より突出させる。
【0048】
次に、制御基板21を図3に矢印で示すようにバスバーアセンブリ22に被せる。このとき、各上下アームスイッチング素子13~18の各端子71を、制御基板21の各接続孔73に進入させる。また、バスバーアセンブリ22の各端子74を制御基板21の接続孔76に進入させる。このようにして、上下アームスイッチング素子13~18を最もモータハウジング4の隔壁側とし、その上にバスバーアセンブリ22、更にその上に制御基板21が積層されたかたちで配置される。尚、バスバーアセンブリ22の各バスバー57~59、68,69は制御基板21の外側に位置する。
【0049】
このように制御基板21、バスバーアセンブリ22、及び、各上下アームスイッチング素子13~18をインバータ収容部8内に積層されたかたちで配置した後、ネジ77、78で制御基板21とバスバーアセンブリ22をモータハウジング4に締結する。その際、ネジ78は制御基板21のネジ孔79とバスバーアセンブリ22のネジ孔81、81A、81Bを貫通し、制御基板21とバスバーアセンブリ22をモータハウジング4に共締めするかたちとなる。また、これにより各ネジ78とネジ孔81、81A、81Bはモータハウジング4(ハウジング2)と導通し、同電位となる。
【0050】
その後、各端子71、74を制御基板21やバスバーアセンブリ22の回路に半田付けし、電気的に接続する。また、引出端子61~63とバスバー57~59を端子板64で接続し、フィルタ基板23をバスバー68、69に接続し、端子板67でフィルタ基板23をHVコネクタ66に接続する。
【0051】
(4)バスバーアセンブリ22の構成
次に、図6図11を参照しながら実施例のバスバーアセンブリ22の構造について詳述する。図3に示す如く、この実施例では前述したノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42、還流コンデンサ43、44、スナバ回路52のコンデンサC(何れもノイズ低減用の素子)がバスバーアセンブリ22に配置されている。但し、以下の説明で使用する図6図11では、各バスバー57~59、68、69と各素子との位置関係を分かりやすくするため、各素子の配置を分けて図示している。
【0052】
即ち、図6図7は還流コンデンサ43、44の配置を示し、図8図9はノーマルモードコイル40と三相コモンモードコイル41とフェライトコア42の配置を示し、図10図11はスナバ回路52のコンデンサCの配置を示しているが、この実施例では実際には図3に示す如くそれらが全てバスバーアセンブリ22に設けられているものとする。
【0053】
(4-1)還流コンデンサ43、44の配置
先ず、図6図7について説明する。図6は還流コンデンサ43、44の配置を示すバスバーアセンブリ22の斜視図、図7図6のバスバーアセンブリ22を透視した平面図をそれぞれ示している。バスバーアセンブリ22は、前述したバスバー57~59、68、69を絶縁性の硬質樹脂82によりモールドした構成とされている。このようにバスバー57~59、68、69を樹脂モールドしてバスバーアセンブリ22とすることで、絶縁を確保しながら耐震性も担保することができるようになる。
【0054】
各バスバー57~59、68、69は導電性の金属板から構成されており、大部分は硬質樹脂82内に埋設され、それらの一端部がバスバーアセンブリ22の縁部において垂直に起立した状態で硬質樹脂82から外部に突出し、他端部や途中の箇所から前述した端子74が垂直に起立した状態で硬質樹脂82から外部に突出している。そして、前述した如くバスバー57~59は出力経路56U~56Wの一部を構成する。また、バスバー69は前述した如く正極側経路26の一部を構成し、バスバー68は負極側経路27の一部を構成する。
【0055】
更に、実施例では前述した還流コンデンサ43がバスバーアセンブリ22の端部に位置するネジ孔81Aとバスバー69の間に設けられ、それらに導通されると共に、還流コンデンサ44がバスバーアセンブリ22の中央部に位置するネジ孔81Bとバスバー68の間に設けられ、それらに導通される。ネジ孔81A、81Bは前述した如くハウジング2に導通されているので、これにより、還流コンデンサ43は図4に示す如く正極側経路26とハウジング2(基準電位導体)間に接続され、還流コンデンサ44は負極側経路27とハウジング2間に接続されることになる。この場合、各還流コンデンサ43、44をバスバーアセンブリ22の硬質樹脂82内にモールドして埋設してもよく、硬質樹脂82の表面に実装するかたちとしてもよい。
【0056】
(4-2)ノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42の配置
次に、図8図9について説明する。図8はノーマルモードコイル40と三相コモンモードコイル41とフェライトコア42の配置を示すバスバーアセンブリ22の斜視図、図9図8のバスバーアセンブリ22を透視した平面図をそれぞれ示している。バスバーアセンブリ22のバスバー57~59、68、69の構成、及び、それらを硬質樹脂82でモールドした構造は前述した通りである。
【0057】
そして、実施例では前述したノーマルモードコイル40がバスバー57~59の起立した一端部側に接続されており、フェライトコア42はバスバー57~59の起立した一端部の周囲に渡って設けられ、三相コモンモードコイル41はノーマルモードコイル40とフェライトコア42の間に設けられている。前述した如くバスバー57~59は出力経路56U~56Wの一部を構成すると共に、出力経路56U~56Wは前述した如く中間経路51U~51WとモータMの間に位置するので、これにより、ノーマルモードコイル40と三相コモンモードコイル41とフェライトコア42は中間経路51U~51WとモータMの間に接続されることになる。この場合、ノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、及び、フェライトコア42をバスバーアセンブリ22の硬質樹脂82内にモールドして埋設してもよく、硬質樹脂82の表面に実装するかたちとしてもよい。
【0058】
(4-3)スナバ回路52のコンデンサCの配置
次に、図10図11について説明する。図10はスナバ回路52のコンデンサCの配置を示すバスバーアセンブリ22の斜視図、図11図10のバスバーアセンブリ22を透視した平面図をそれぞれ示している。同様にバスバーアセンブリ22のバスバー57~59、68、69の構成、及び、それらを硬質樹脂82でモールドした構造は前述した通りである。
【0059】
そして、実施例では前述したスナバ回路52のコンデンサCがバスバー68、69の起立した一端部側に渡って接続されている。前述した如くバスバー69は正極側経路26の一部を構成し、バスバー68は負極側経路27の一部を構成するので、これにより、コンデンサCは正極側経路26と負極側経路27に渡って接続されることになる。この場合、コンデンサCをバスバーアセンブリ22の硬質樹脂82内にモールドして埋設してもよく、硬質樹脂82の表面に実装するかたちとしてもよい。
【0060】
尚、実施例(図3図4)ではノイズ低減用の素子としてのノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42、還流コンデンサ43、44、スナバ回路52のコンデンサCの全てをバスバーアセンブリ22に配置するようにしたが、それに限らず、還流コンデンサ43、44のみを図6図7のようにバスバーアセンブリ22に配置してもよく、ノーマルモードコイル40と三相コモンモードコイル41とフェライトコア42のみを図8図9のようにバスバーアセンブリ22に配置してもよい。図8図9の場合においても、ノーマルモードコイル40のみをバスバーアセンブリ22に配置してもよく、三相コモンモードコイル41のみをバスバーアセンブリ22に配置してもよく、フェライトコア42のみをバスバーアセンブリ22に配置するようにしてもよい。
【0061】
また、スナバ回路52のコンデンサCのみを図10図11のようにバスバーアセンブリ22に配置してもよく、それら(還流コンデンサ43及び44、ノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42、スナバ回路52のコンデンサC)のうちの二つを組み合わせてバスバーアセンブリ22に配置するようにしてもよい。
【0062】
(5)ノイズ低減効果
次に、図12図13を参照しながら、本発明によるノイズ低減効果について説明する。図12は前述したノーマルモードコイル40、三相コモンモードコイル41、フェライトコア42、還流コンデンサ43、44、スナバ回路52を設けないインバータ装置100の電気回路図を示している。尚、この図において図4と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。
【0063】
この図中、N1で示す矢印はモータMから寄生容量47を介してハウジング2に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N2で示す矢印はインバータ回路9から寄生容量46を介してハウジング2に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N3で示す矢印はハウジング2からYコンデンサ34、36を介してインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18に還流するコモンモード電流(ノイズ)、N9で示す矢印はHVコネクタ66のシールド線を通って正極側(+)及び負極側(-)のLISN26、27に流入するコモンモード電流(ノイズ)をそれぞれ示している。また、N4で示す矢印はハウジング2から車体37に流出するコモンモード電流(ノイズ)、N5~N8で示す矢印は、車体37からLISN27、LISN26を経由してEMIフィルタ28に流入するコモンモード電流(ノイズ)を示している。尚、図中の矢印は単一方向のみで示しているが、実際のコモンモード電流の流れは単純ではなく、各場所において双方向で流出/流入している。
【0064】
図12のインバータ装置100の場合、モータMから寄生容量47を介して流出するコモンモード電流(N1)が大きくなる。また、このコモンモード電流とインバータ回路9からハウジング2に流出するコモンモード電流(N2)はYコンデンサ34、36を介してノイズ源であるインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18に還流するが(N3)、モータMやインバータ回路9からYコンデンサ34、36は離れているため、還流経路が長くなり、Yコンデンサ34、36のフィルタ効果(コモンモード電流を還流させる効果)が十分に得られなくなる。
【0065】
一方、図4のように還流コンデンサ43、44を配置することにより、モータMから寄生容量47を介して流出するコモンモード電流(N1)とインバータ回路9からハウジング2に流出するコモンモード電流(N2)のうちの多くは、図13に矢印N10で示すように、還流コンデンサ43、44を介してノイズ源であるインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18に還流するようになる。この還流コンデンサ43、44は、フィルタ基板23よりもモータMやインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18に近い位置に設けられたバスバーアセンブリ22に配置されているので、還流経路が短くなり、還流コンデンサ43、44において高いフィルタ効果を得ることができるようになる。これにより、従来の如く電源入力部に大型のコモンモードコイルを挿入すること無く、ノイズを抑制することが可能となり、インバータ一体型電動圧縮機1の小型化を図りながら、効果的にノイズを抑制することができるようになる。
【0066】
また、実施例ではインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18とモータM間のバスバーアセンブリ22に三相コモンモードコイル41とフェライトコア42を配置したので、インバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18を繋ぐ各中間経路51U~51W、各出力経路56U~56W、及び、モータMを経てハウジング2に至る経路のインピーダンスが増加し、寄生容量47を経由して流出するコモンモード電流(ノイズ。矢印N1で示す)は小さくなる。また、実施例ではインバータ回路9の上下アームスイッチング素子13~18とモータM間のバスバーアセンブリ22にノーマルモードコイル40も配置しているので、スイッチングサージを効果的に抑制することが可能となる。これらによっても、大型のEMIフィルタ(コモンモードコイル)を電源入力部に挿入する必要がなくなり、インバータ一体型電動圧縮機1の小型化を図りながら、効果的にノイズの抑制を図ることが可能となる。
【0067】
特に、ノーマルモードコイル40は、コモンモードコイルと異なり、三相線の結合が不要なことから、別々に配置することが可能であり、バスバーアセンブリ22に配置する際の制約が少なく、コモンモードコイルの場合よりも小型化し易い。尚、ノーマルモードコイル40は、実施例の如く出力経路56U~56W(三相)の全てに入れなくとも、例えば二相のみに入れてもよい。それによっても、ノイズ低減効果が得られることから、使い勝手がよいという利点がある。
【0068】
更に、実施例では、ノイズを低減するためのスナバ回路52のコンデンサCをバスバーアセンブリ22に配置しているので、ノイズ(主にラジオノイズ)を効果的に低減することができるようになる。この場合、制御基板21上にスナバ回路を搭載するものでは無く、バスバーアセンブリ22に配置することで立体的な配置となり(制御基板21とバスバーアセンブリ22、上下アームスイッチング素子13~18は積層されているため)、沿面距離を十分に確保しながら小型化を図ることが可能となる。
【0069】
(6)スナバ回路52の構成例
尚、実施例で示したスナバ回路52はコンデンサCのみを正極側経路26と負極側経路27間に接続した一括スナバ回路のCスナバ回路で説明したが、スナバ回路52としては図14に示すような種々の構成が考えられる。この図中右側は一括スナバ回路の例を示し、右から二番目が前述した実施例で示したCスナバ回路である。一括スナバ回路は正極側経路26と負極側経路27間に接続されるものであるが、その他に図中右端に示すRCDスナバ回路が考えられる。このRCDスナバ回路は、ダイオードDと抵抗Rの並列回路と、この並列回路に直列接続されたコンデンサCから構成される。ダイオードDはコンデンサC方向が順方向とされ、並列回路側が正極側経路26に、コンデンサC側が負極側経路27に接続される。
【0070】
また、図中左側は個別スナバ回路の例を示している。個別スナバ回路は各上下アームスイッチング素子13~18に対して個々に接続されるものである。この個別スナバ回路の例としてはRCスナバ回路(図14の左端)、充放電形RCDスナバ回路(図14の左から二番目)、放電阻止形RCDスナバ回路(図14の左から三番目)がある。
【0071】
RCスナバ回路は抵抗RとコンデンサCの直列回路から成り、上下アームスイッチング素子13~18のコレクタとエミッタ間に渡ってそれぞれ接続される。充放電形RCDスナバ回路は、ダイオードDと抵抗Rの並列回路と、この並列回路に直列接続されたコンデンサCから構成されたスナバ回路52が個々の上下アームスイッチング素子13~18のコレクタとエミッタ間に渡ってそれぞれ接続される。この場合、ダイオードDはコンデンサC方向が順方向とされ、並列回路側がコレクタに、コンデンサC側がエミッタに接続される。
【0072】
放電阻止形RCDスナバ回路は、個々の上下アームスイッチング素子13~18のコレクタとエミッタ間に渡ってそれぞれ接続されたコンデンサCとダイオードDの直列回路と、上アームスイッチング素子13~15のコンデンサCとダイオードDの間と負極側経路27に渡って接続された抵抗Rと、下アームスイッチング素子16~18のダイオードDとコンデンサCの間と正極側経路26に渡って接続された抵抗Rから成る。
【0073】
この場合、上アームスイッチング素子13~15ではコンデンサCがコレクタに、ダイオードDがエミッタに接続され、ダイオードDはエミッタ側が順方向とされる。また、下アームスイッチング素子16~18ではダイオードDがコレクタにコンデンサCがエミッタに接続され、ダイオードDはコンデンサC側が順方向とされる。何れのスナバ回路52も、上下アームスイッチング素子13~18のターンオフ時に発生するサージ電圧を消費させるものである。
【0074】
尚、実施例では配線部材として、バスバー57~59、68、69を硬質樹脂82でモールドしたバスバーアセンブリ22を採用したが、請求項1~請求項3の発明では樹脂でモールドしないバスバーであってもよい。また、実施例で示したインバータ装置3やハウジング2(モータハウジング4)の形状、構造は、それに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 インバータ一体型電動圧縮機
2 ハウジング
3 インバータ装置
4 モータハウジング
8 インバータ収容部
9 インバータ回路
13~18 上下アームスイッチング素子
21 制御基板
22 バスバーアセンブリ(配線部材)
24 バッテリ(直流電源)
26 正極側経路
27 負極側経路
40 ノーマルモードコイル
41 三相コモンモードコイル
42 フェライトコア
43、44 還流コンデンサ
51U~51W 中間経路
52 スナバ回路
57~59、68、69 バスバー
82 硬質樹脂
C コンデンサ
D ダイオード
M モータ
R 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14