(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/414 20210101AFI20240719BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240719BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M50/414
H01M50/403 D
H01M50/443 M
H01M50/451
H01M50/42
H01M50/446
H01M50/489
H01M50/434
(21)【出願番号】P 2022566713
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2021007703
(87)【国際公開番号】W WO2021256905
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0074358
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダ-キュン・ハン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非対称線形ケトン溶媒に無機物粒子が分散されており、第1バインダー高分子と第2バ
インダー高分子とを含むバインダー高分子が溶解している多孔性コーティング層形成用ス
ラリーを準備する段階;及び
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを多数の気孔を有する多孔性高分子基材上に
塗布及び乾燥させる段階;を含み、
このとき、前記第1バインダー高分子は、ポリオール由来の繰り返し単位を備えるソフ
ト部とウレタン結合構造を備えるハード部とを含む熱可塑性ポリウレタンであり、
前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度25℃~125℃を有するアクリレート
系重合体であり、
前記第1バインダー高分子は、前記バインダー高分子の総含有量100重量部を基準に
して、10重量部を超えて投入されることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造
方法。
【請求項2】
前記第1バインダー高分子は、融点30~150℃を有することを特徴とする、請求項
1に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記第1バインダー高分子は、ハード部とソフト部のモル比が10:90~90:10
であることを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方
法。
【請求項4】
前記第1バインダー高分子の重量平均分子量は、1万~100万であることを特徴とす
る、請求項1から3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記第2バインダー高分子の重量平均分子量は、1万~100万であることを特徴とす
る、請求項1から4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記第2バインダー高分子は、メチルアクリレート単量体、エチルアクリレート単量体
、ブチルアクリレート単量体、2-エチルヘキシルアクリレート単量体、アクリル酸単量
体及びメチルメタクリレート単量体のうち、少なくともいずれか1つの単量体に由来する
繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載のリチウム二
次電池用分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒は、炭素数が4~10である非対称線形ケトンであることを特徴とする、請求
項1から6の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、
エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン又はこれらのうち2つ以上を含むことを
特徴とする、請求項1から7の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法
。
【請求項9】
前記乾燥段階は、相対湿度30~80%で行われることを特徴とする、請求項1から8
の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項10】
前記無機物粒子と前記バインダー高分子の合計の重量比は、95:5~5:95である
ことを特徴とする、請求項1から9の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製
造方法。
【請求項11】
前記溶媒はメチルエチルケトンであり、前記第1バインダー高分子はハード部とソフト
部のモル比が10:90~90:10の熱可塑性ポリウレタンであり、前記第2バインダ
ー高分子はポリメチルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1から10の何れ
か一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【請求項12】
分離膜は、電極との接着力が60~300gf/25mmであり、前記分離膜は、ラミ
ネート後の多孔性高分子基材の圧縮率が0~7%であることを特徴とする、請求項1から
11の何れか一項に記載のリチウム二次電池用分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの電気化学素子に用いることができる分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜に関する。
【0002】
本出願は、2020年6月18日付けで出願された韓国特許出願番号第10-2020-0074358号に対する優先権を主張するものであり、当該出願の明細書及び図面に開示された全ての内容は、引用により本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術への関心がますます高まっている。携帯電話、カムコーダー、及びノート型パソコン、さらには電気自動車のエネルギーに至るまで、適用分野が拡大するにつれ、電気化学素子の研究と開発に向けた取り組みが次第に具体化してきている。そうした観点で電気化学素子は最も注目を浴びる分野であり、その中でも充放電の可能な二次電池の開発が関心の焦点となり、近年ではこのような電池を開発する上で容量密度及び比エネルギーを向上させるために新たな電極と電池の設計に関する研究開発が行われている。
【0004】
現在適用されている二次電池のうち、1990年代初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するNi-MH、Ni-Cd、硫酸-鉛電池などの従来の電池に比べて、作動電圧が高く、エネルギー密度が格段に大きいという利点で脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池などの電気化学素子は多くの企業で生産されているが、それらの安全性特性はそれぞれ異なる様相を呈する。こうした電気化学素子の安全性評価及び安全性確保は非常に重要である。その例として、分離膜は正極と負極との間の短絡を防止し、それと同時にリチウムイオンの移動通路を提供する。これにより、分離膜は、電池の安全性及び出力の特性に影響を及ぼす重要な因子である。
【0006】
一方、正極、負極を含む電極組立体を製造するためには、分離膜は電極の間に介在した上で圧力を加えてラミネートを行う。このとき、分離膜に加わる圧力によって分離膜内の気孔構造が変形してしまう可能性がある。また、高エネルギー密度を達成するためにシリコン系負極を使用する場合、負極活物質が体積膨張して分離膜内の気孔構造が変形してしまう可能性がある。
【0007】
そのため、分離膜の耐圧縮性が向上し、同時に分離膜と電極との接着力が向上した分離膜を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、電極との接着力が改善され、耐圧縮性が向上した分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記分離膜を備えた電気化学素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、以下の具現例に係る分離膜の製造方法を提供する。
【0011】
第1具現例は、
非対称線形ケトン溶媒に無機物粒子が分散されており、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子とを含むバインダー高分子が溶解している多孔性コーティング層形成用スラリーを準備する段階;及び
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを多数の気孔を有する多孔性高分子基材上に塗布及び乾燥させる段階;を含み、
このとき、前記第1バインダー高分子は、ポリオール由来の繰り返し単位を備えるソフト部(soft segment)とウレタン結合構造を備えるハード部(hard segment)とを含む熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)であり、
前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度(Tg)25℃~125℃を有するアクリレート系重合体であり、
前記第1バインダー高分子は、前記バインダー高分子の総含有量100重量部を基準にして、10重量部を超えて投入されることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0012】
第2具現例は、第1具現例において、
前記第1バインダー高分子は、融点30~150℃を有することを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0013】
第3具現例は、第1又は第2具現例において、
前記第1バインダー高分子は、ハード部とソフト部のモル比が10:90~90:10であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0014】
第4具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記第1バインダー高分子の重量平均分子量は、1万~100万であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0015】
第5具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記第2バインダー高分子の重量平均分子量は、1万~100万であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0016】
第6具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記第2バインダー高分子は、メチルアクリレート単量体、エチルアクリレート単量体、ブチルアクリレート単量体、2-エチルヘキシルアクリレート単量体、アクリル酸単量体及びメチルメタクリレート単量体のうち、少なくともいずれか1つの単量体に由来する繰り返し単位を含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0017】
第7具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記溶媒は、炭素数が4~10である非対称線形ケトンであることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0018】
第8具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記溶媒は、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン又はこれらのうち2つ以上を含むことを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0019】
第9具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記乾燥段階は、相対湿度30~80%で行われることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0020】
第10具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記無機物粒子と前記バインダー高分子の合計の重量比は、95:5~5:95であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0021】
第11具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
前記溶媒は、メチルエチルケトンであり、前記第1バインダー高分子はハード部とソフト部のモル比が10:90~90:10の熱可塑性ポリウレタンであり、前記第2バインダー高分子はポリメチルメタクリレートであることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0022】
第12具現例は、前述した具現例のいずれか1つの具現例において、
分離膜は、電極との接着力(Lami Strength)が60~300gf/25mmであり、前記分離膜は、ラミネート後の多孔性高分子基材の圧縮率が0~7%であることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜の製造方法に関するものである。
【0023】
本発明の他の一側面は、以下の具現例に係る分離膜を提供する。
【0024】
第13具現例は、
前述した具現例のいずれか1つの具現例に係る製造方法によって製造されたリチウム二次電池用分離膜であって、
前記分離膜は、多孔性高分子基材;
前記多孔性高分子基材の少なくとも一側表面に形成され、無機物粒子、第1バインダー高分子、第2バインダー高分子を含む多孔性コーティング層を備えることを特徴とするリチウム二次電池用分離膜に関するものである。
【0025】
第14具現例は、
正極、負極及び前記正極と負極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜は、第13具現例に係る分離膜であることを特徴とするリチウム二次電池に関するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例によれば、所定の特性を有する第1バインダー高分子と第2バインダー高分子を非対称線形ケトン溶媒に溶解させて多孔性コーティング層形成用スラリーを製造し、これを用いて分離膜を製造することができる。これにより、電極との接着力(Lami Strength)が向上し、分離膜の耐圧縮性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】熱可塑性ポリウレタンの構造を概略的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈されなければならない。
【0029】
リチウム二次電池などの電気化学素子において、分離膜は多孔性の高分子基材を通常使用するため、熱収縮挙動を示す問題がある。これにより、分離膜の熱収縮率を下げるために多孔性コーティング層が導入された。
【0030】
一方、正極、負極を含む電極組立体を製造するためには、分離膜は電極の間に介在させた上で圧力を加えてラミネートを行う。このとき、分離膜に加わる圧力によって分離膜内の気孔構造が変形してしまう可能性がある。また、高エネルギー密度を達成するためにシリコン系負極を使用する場合、負極活物質が体積膨張して分離膜内の気孔構造が変形してしまう可能性がある。
【0031】
そのため、分離膜の耐圧縮性が向上し、同時に分離膜と電極との接着力が向上した分離膜を提供する必要がある。
【0032】
本発明者らは、このような課題を解決するために、耐圧縮性が向上し、電極との接着力が向上した分離膜の製造方法及びそれによって製造された分離膜の提供を図る。
【0033】
本発明の一側面に係るリチウム二次電池用分離膜の製造方法は、
非対称線形ケトン溶媒に無機物粒子が分散されており、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子とを含むバインダー高分子が溶解している多孔性コーティング層形成用スラリーを準備する段階;及び
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを多数の気孔を有する多孔性高分子基材上に塗布及び乾燥させる段階;を含み、
このとき、前記第1バインダー高分子は、ポリオール由来の繰り返し単位を備えるソフト部(soft segment)とウレタン結合構造を備えるハード部(hard segment)とを含む熱可塑性ポリウレタンであり、
前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度(Tg)25℃~125℃を有するアクリレート系重合体であり、
前記第1バインダー高分子は、前記バインダー高分子の総含有量100重量部を基準にして、10重量部を超えて投入されることを特徴とする。
【0034】
まず、非対称線形ケトン溶媒に無機物粒子が分散されており、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子とを含むバインダー高分子が溶解している多孔性コーティング層形成用スラリーを準備する。
【0035】
このとき、第1バインダー高分子は、ポリオール由来の繰り返し単位を備えるソフト部(soft segment)とウレタン結合構造を備えるハード部(hard segment)とを含む重合体である。前記第1バインダー高分子は、熱によって溶融して再び固化する性質を有するため、多孔性高分子基材と多孔性コーティング層との間の接着力(Peel Strength)はもちろん、分離膜と電極との接着力(Lami Strength)を向上させることができる。
【0036】
前記第1バインダー高分子は、ブロック共重合体であって、前記ハード部とソフト部のモル比が10:90以上、20:80以上、又は25:75以上であり、90:10以下、85:15以下又は80:20以下であってもよい。このような数値範囲を有することにより、線形のハード部と屈曲を有するソフト部が相分離を介して会合領域を形成して、物理的な架橋点としての役割を果たすことができる。特に、前記ハード部とソフト部の全体のモル数の合計に対してハード部のモル数の比が0.25以上である場合(即ち、ハード部とソフト部のモル比が25:75以上である場合)、熱可塑性弾性体の特性が高くなる可能性がある。一方、一定温度以上では、このような会合領域が解れて弾性体としての役割を果たすことができる。
【0037】
前記第1バインダー高分子は、重量平均分子量が1万以上、2万以上、又は5万以上であってもよく、100万以下、30万以下、又は20万以下の熱可塑性ポリウレタンであってもよい。このように、第1バインダー高分子は、前記範囲の重量平均分子量を有することにより、第2バインダー高分子と混和し表面接着層を形成することができる。特に、10万~20万の重量平均分子量を有する場合、本発明において目的とする課題を有効に達成することができる。
【0038】
例えば、前記第1バインダー高分子は、融点30℃以上、40℃以上、50℃以上、又は60℃以上であり、150℃以下、145℃以下、140℃以下、又は135℃以下を有する熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)であってもよい。
【0039】
前記熱可塑性ポリウレタンは、例えば、式1のような構造を有するものである。式1のようにハード部(hard segment)とソフト部(soft segment)を有することにより、相分離効果が変わってくる。
【0040】
【0041】
より具体的には、
図1のように線形のポリウレタンのハード部とソフト部が会合領域を形成して物理的架橋点としての役割を果たしている。このような架橋点は一定温度以上では解れて、熱可塑性ポリウレタンが弾性体としての役割を果たせるようにする。
【0042】
前記第1バインダー高分子として熱可塑性ポリウレタンではなく熱硬化性ポリウレタンを用いた場合には、架橋点が解れないため、電極との接着力を発現することができず、弾性体としての役割を果たすことができない。何より、既に熱硬化されたポリウレタンは、前述した溶媒に対する溶解性がなくて、コーティング層の具現化が難しく、溶液型ポリウレタンは常温で形状を維持しないため、分離膜の表面接着層を形成できるバインダーとしては適していない。
【0043】
このとき、前記第1バインダー高分子は、前記バインダー高分子の総含有量100重量部を基準にして、10重量部を超えて投入されるものである。もし、前記第1バインダー高分子が10重量部以下である場合は、耐圧縮性改善効果と電極との接着力の改善効果が低下する。これは、第1バインダーがコーティング層の弾性力を改善し、コーティング層の結着を強化する役割を果たすには足りないためであると見られる。
【0044】
本発明の一具現例によれば、前記第1バインダー高分子は、前記バインダー高分子の総含有量100重量部を基準にして、15~95重量部、又は20~90重量部、又は30~90重量部であってもよい。
【0045】
一方、第1バインダー高分子を単独で適用した場合は、加湿相分離工程によっては多孔性コーティング層内の気孔及び接着層を形成することができない。また、前記第1バインダー高分子と従来のフッ素系バインダー高分子を同時に混合使用する場合は、第1バインダー高分子とフッ素系バインダー高分子とに混和性がないため、相分離が起こらず、表面接着力を具現化することが困難である。さらに、非対称線形ケトン溶媒下では層分離が発生してしまうため、多孔性コーティング層自体を形成することができない。
【0046】
即ち、本発明では、所定の特性を有する、後述する第2バインダー高分子を必須の構成要素として含む。
【0047】
前記第2バインダー高分子は、ガラス転移温度(Tg)25℃~125℃を有するアクリレート系重合体である。特に、前記第2バインダー高分子としてアクリレート系重合体を使用することにより、第1バインダー高分子と混和し表面接着層を形成することができて、電極との接着力が向上し、これで圧縮率が低い効果を達成することができる。具体的には、前記アクリレート系重合体のガラス転移温度は、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上、又は50℃以上であってもよく、125℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、又は100℃以下であってもよい。
【0048】
前記第2バインダー高分子は、重量平均分子量が1万以上、5万以上、又は10万以上であってもよく、100万以下、60万以下、又は30万以下のアクリレート系重合体であってもよい。このように、第2バインダー高分子は、所定の重量平均分子量を有することにより、電極との接着特性を示すことができ、第1バインダー高分子と混和性を有するため、多孔性コーティング層を形成することができる。
【0049】
例えば、前記第2バインダー高分子は、メチルアクリレート単量体、エチルアクリレート単量体、ブチルアクリレート単量体、2-エチルヘキシルアクリレート単量体、アクリル酸単量体及びメチルメタクリレート単量体のうち、少なくともいずれか1つの単量体に由来する繰り返し単位を含み得る。
【0050】
従来、フッ素系共重合体のみをバインダー高分子として含む分離膜の場合、いわゆる加湿相分離によって多孔性コーティング層表面に接着層を形成したり、別途でバインダー層をコーティングして分離膜と電極との間に接着力を付与した。この場合、前述した通り、負極としてシリコン系負極を使用する場合、負極活物質が体積膨張して分離膜内の気孔構造が変形する問題があり、分離膜を電極の間にラミネートさせる場合、分離膜に加わる圧力によって分離膜内の気孔構造が変形する問題があった。
【0051】
一方、本発明の一側面のように、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子を同時に適用する場合、電極との接着力が向上して、多孔性高分子基材の圧縮率が低い分離膜を提供することができる。これは、第1バインダー高分子によって多孔性コーティング層に弾性体の特性が付与され、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子が混和して表面接着層を形成したためであると見られる。
【0052】
一方、本発明で使用する溶媒は非対称線形ケトンである。具体的には、前記溶媒は、炭素数が4~10の非対称線形ケトンである。例えば、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソブチルケトン、又はこれらのうちの2つ以上を含み得る。前記溶媒は、第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の両方を溶解させることができるものである。これにより、多孔性コーティング層形成用スラリーが安定して、多孔性コーティング層を均一に形成することができる。ただし、第1バインダー高分子又は第2バインダー高分子をより良好に溶解させるために、非対称線形ケトン溶媒にアセトンをさらに含み得る。
【0053】
本発明において、前記無機物粒子は電気化学的に安定してさえいれば特に制限されない。即ち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/又は還元反応が起こらないものであれば特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度の増加に寄与して、電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0054】
前述した理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、及びこれらの混合物であってもよい。
【0055】
前記誘電率定数が5以上の無機物粒子は、Al2O3、SiO2、ZrO2、AlO(OH)、TiO2、BaTiO3、Pb(ZrxTi1-x)O3(PZT、ここで0<x<1)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで0<x<1、0<y<1である。)、(1-x)Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-xPbTiO3(PMN-PT、ここで0<x<1)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZO3及びSiCからなる群から選択された1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0056】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3)、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)及びP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群から選択された1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0057】
前記無機物粒子の平均粒径は特に制限がないが、均一な厚さの多孔性コーティング層の形成及び適切な空隙率のために、0.001~10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは、100nm~2μm、さらに好ましくは、150nm~1μmであってもよい。
【0058】
本発明の具体的な一実施様態において、前記無機物粒子対バインダー高分子の合計の重量比は、95:5~5:95であってもよい。バインダー高分子に対する無機物粒子の含有量比が前記範囲を満たす場合、バインダー高分子の含有量が多いがために形成される多孔性コーティング層の気孔サイズ及び気孔度が減少する問題を防ぐことができ、バインダー高分子の含有量が少ないがために形成される多孔性コーティング層の耐ピーリング性が低下する問題も解消することができる。
【0059】
本発明の一側面に係る分離膜は、多孔性コーティング層の成分として、前述した無機物粒子及びバインダー高分子の他に、分散剤、その他の添加剤をさらに含み得る。
【0060】
このとき、前記多孔性コーティング層形成用スラリーは、当該分野における通常の方法で混合することができる。本発明の具体的な一実施様態において、第1及び第2バインダー高分子が溶媒に分散された高分子分散液に無機物粒子を分散させた多孔性コーティング層形成用スラリーを準備することができる。
【0061】
その後、準備した前記多孔性コーティング層形成用スラリーを多孔性基材に乾燥及び塗布して、多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造する。
【0062】
本発明の一側面に係る分離膜において、前記多孔性高分子基材は、具体的には、多孔性高分子フィルム基材又は多孔性高分子不織布基材であってもよい。
【0063】
前記多孔性高分子フィルム基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィンからなる多孔性高分子フィルムであってもよく、このようなポリオレフィン多孔性高分子フィルム基材は、例えば、80~150℃の温度でシャットダウン機能を発現する。
【0064】
このとき、ポリオレフィン多孔性高分子フィルムは、高密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンといったポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテンなどのポリオレフィン系高分子をそれぞれ単独又はこれらの2種以上を混合して高分子で形成することができる。
【0065】
また、前記多孔性高分子フィルム基材は、ポリオレフィンの他に、ポリエステルなどの様々な高分子を用いてフィルム状に成形して製造することもできる。また、前記多孔性高分子フィルム基材は、2層以上のフィルム層が積層された構造で形成することができ、それぞれのフィルム層は、前述したポリオレフィン、ポリエステルなどの高分子単独で又はこれらを2種以上混合した高分子で形成することもできる。
【0066】
また、前記多孔性高分子フィルム基材及び多孔性不織布基材は、前記のようなポリオレフィン系の他に、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)などを、それぞれ単独で又はこれらを混合した高分子で形成することができる。
【0067】
前記多孔性高分子基材の厚さは特に制限されないが、詳しくは1~100μm、より詳しくは5~50μmであり、多孔性高分子基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に制限されないが、それぞれ0.01~50μm及び20~75%であることが好ましい。
【0068】
前記多孔性コーティング層の厚さは特に制限されないが、詳しくは断面コーティング基準で1~15μm、より詳しくは1.5~10μmであり、前記多孔性コーティング層の気孔度も特に制限されないが、35~85%であることが好ましい。
【0069】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーを前記多孔性高分子基材にコーティングする方法は、特に限定されないが、スロットコーティングやディップコーティング方法を使用することが好ましい。スロットコーティングとは、スロットダイを通じて供給されたスラリーが基材の前面に塗布される方式であって、定量ポンプから供給される流量に応じてコーティング層の厚さを調整することが可能である。また、ディップコーティングとは、スラリーで満たされているタンクに基材を浸漬してコーティングする方法であって、スラリーの濃度及びスラリータンクから基材を取り出す速度に応じてコーティング層の厚さを調整することが可能であり、より正確にコーティングの厚さを制御するために浸漬後、マイヤーバーなどを通じて後計量することができる。
【0070】
このように、多孔性コーティング層形成用スラリーがコーティングされた多孔性高分子基材をオーブンのような乾燥機を用いて乾燥することにより、多孔性高分子基材の少なくとも一面上に形成された多孔性コーティング層を形成することができる。
【0071】
前記多孔性コーティング層では、無機物粒子は充填されて互いに接触した状態で前記バインダー高分子によって互いに結着し、これにより無機物粒子同士の間にインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)を形成することができ、前記無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)は空き空間になって気孔を形成することができる。
【0072】
即ち、バインダー高分子は、無機物粒子同士が互いに結着した状態を維持できるように、これらを互いに付着させ、例えば、バインダー高分子が無機物粒子同士の間を連結及び固定させることができる。また、前記多孔性コーティング層の気孔は、無機物粒子同士の間のインタースティシャル・ボリューム(interstitial volume)が空き空間になって形成された気孔であり、これは無機物粒子による充填構造(closed packed or densely packed)で実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間であり得る。
【0073】
前記乾燥は、乾燥チャンバー(drying chamber)で行うことができ、このとき非溶媒塗布によって乾燥チャンバーの条件は特に制限されない。
【0074】
本発明の一側面に係る多孔性コーティング層は、加湿条件下で乾燥されるものである。例えば、相対湿度は30%以上、35%以上、又は40%以上であってもよく、80%以下、75%以下、又は70%以下で行うことができる。
【0075】
一方、本発明の一側面に係る分離膜は、電極との接着力(Lami Strength)が60~300gf/25mmであり、前記分離膜は、ラミネート後の多孔性高分子基材の圧縮率が0~7%であり得る。
【0076】
本発明の一側面に係る電気化学素子は、正極、負極、及び前記正極と負極との間に介在した分離膜を含み、前記分離膜が前述した本発明の一実施例に係る分離膜である。
【0077】
このような電気化学素子は、電気化学反応を行うあらゆる素子を含み、具体的な例として、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はスーパーキャパシタ素子といったキャパシタ(capacitor)などが挙げられる。特に、前記二次電池のうち、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0078】
本発明の分離膜と共に適用される正極と負極の両電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法に従って電極活物質を電極集電体に結着した形態で製造することができる。前記電極活物質のうち、正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に使用できる通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物又はこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが好ましい。負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭(activated carbon)、グラファイト(graphite)又はその他の炭素類などといったリチウム吸着物質などが好ましい。正極集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル又はこれらの組み合わせによって製造される箔などがあり、負極集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル又は銅合金又はこれらの組み合わせによって製造される箔などがある。
【0079】
本発明の電気化学素子で使用できる電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-はPF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン(g-ブチロラクトン)又はこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解又は解離したものがあるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階で行うことができる。即ち、電池の組み立て前又は電池の組み立ての最終段階などで適用することができる。
【0081】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明に係る実施例は、種々の異なる形態に変形することができ、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
〔比較例1〕
【0082】
アセトン溶媒にバインダー高分子としてポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を投入して、50℃で約4時間溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。前記バインダー高分子溶液に無機物粒子として水酸化アルミニウムAl(OH)3(粒子サイズ:800nm)を投入した。その後、分散剤としてイソプロピルトリオレイルチタネート(Isopropyl trioleyl titanate)を投入した。このとき、無機物粒子:分散剤:バインダー高分子の重量比は73:2:25に制御して多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。
【0083】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーをディップコーティング方式で23℃、相対湿度40%条件で両面のローディング量の合計が9g/m2になるように、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥して、多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例2〕
【0084】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)の代わりに熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)のみを投入したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例3〕
【0085】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)の代わりに熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)を、アセトン溶媒の代わりにメチルエチルケトン溶媒に投入したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例4〕
【0086】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)の代わりに熱可塑性ポリウレタン(AM100、Sun Yang Global社)を、アセトン溶媒の代わりにメチルエチルケトン溶媒に投入したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例5〕
【0087】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を単独で使用せず、表1のように、熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)とポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を70:30の重量比で使用したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例6〕
【0088】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を単独で使用せず、表1のように、熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)とポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を70:30の重量比でメチルエチルケトン溶媒に投入したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔比較例7〕
【0089】
バインダー高分子として、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)を単独で使用せず、表1のように、熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)とポリメチルメタクリレート(重量平均分子量15万、Tg80℃)を70:30の重量比でアセトンに投入したことを除いては、比較例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表1に示す。
〔実施例1〕
【0090】
メチルエチルケトン溶媒に第1バインダー高分子として熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)と、第2バインダー高分子としてポリメチルメタクリレート(重量平均分子量15万、ガラス転移温度:80℃)を90:10の重量比で投入して、50℃で約4時間溶解させてバインダー高分子溶液を製造した。前記バインダー高分子溶液に無機物粒子として水酸化アルミニウムAl(OH)3(粒子サイズ:800nm)を投入した。その後、分散剤としてイソプロピルトリオレイルチタネート(Isopropyl trioleyl titanate)を投入した。このとき、無機物粒子:分散剤:バインダー高分子の重量比は73:2:25に制御して多孔性コーティング層形成用スラリーを製造した。(前記重量比でバインダー高分子は、第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の合計を意味する。)
【0091】
前記多孔性コーティング層形成用スラリーをディップコーティング方式で23℃、相対湿度40%条件で両面のローディング量の合計が9g/m2になるように、厚さ9μmのポリエチレン多孔性フィルム(気孔度:45%)の両面に塗布及び乾燥して、多孔性コーティング層が形成された分離膜を製造した。これに対する結果を表1及び表2に示す。
【0092】
本実施例においてバインダー高分子の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、PL GPC220、Agilent Technologies)を用いて測定することができる。
【0093】
具体的には、以下の分析条件下で測定することができる。
-カラム:PL MiniMixed Bx2
-溶媒:THF
-流速:0.3ml/min
-試料濃度:2.0mg/ml
-注入量:10μl
-カラム温度:40℃
-ディテクター(Detector):Agilent RI detector
-スタンダード(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(3次関数で補正)
-データ・プロセシング(Data processing):ChemStation
〔実施例2〕
【0094】
第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比を70:30に制御したことを除いては、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表2に示す。
〔実施例3〕
【0095】
第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比を50:50に制御したことを除いては、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表2に示す。
〔実施例4〕
【0096】
第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比を30:70に制御したことを除いては、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表2に示す。
〔比較例8〕
【0097】
第1バインダー高分子と第2バインダー高分子の重量比を10:90に制御したことを除いては、実施例1と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表2に示す。
〔実施例5〕
【0098】
第1バインダー高分子として熱可塑性ポリウレタン(AM160、Sun Yang Global社)の代わりに熱可塑性ポリウレタン(AM100、Sun Yang Global社)を使用したことを除いては、実施例2と同一の方法で分離膜を製造した。これに対する結果を表2に示す。
〔実験例〕
【0099】
1)負極の製造
天然黒鉛、カーボンブラック、カルボキシメチルセルロース(CMC、Carboxy Methyl Cellulose)、スチレンブタジエンゴム(SBR、Styrene-Butadiene Rubber)を96:1:2:2の重量比で水と混合して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを3.55mAh/gの容量で銅箔(Cu-foil)の上にコーティングして薄い極板の形態にし、次いで、135℃で3時間以上乾燥させた後、圧延(pressing)して負極を製造した。
【0100】
2)正極の製造
LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2正極活物質、カーボンブラック、ポリビニリデンフルオリド(PVDF、Polyvinylidene Fluoride)を96:2:2の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に投入し混合して、正極スラリーを製造した。前記製造された正極スラリーを正極集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔に3.28mAh/gの容量でコーティングして正極を製造した。
【0101】
3)分離膜と電極の接着
次に、前記製造された分離膜の多孔性コーティング層と1)の電極の負極活物質層が向かい合うように分離膜と電極を積層した後、70℃、600kgfで1秒(sec)間圧延して負極と分離膜が積層された電極組立体を製造した。
【0102】
【0103】
【0104】
評価方法
1)多孔性高分子基材の圧縮率
まず、ホットプレス(Hot-press)で製造された分離膜を、70℃の温度で10秒間2000kgfの圧力で加圧した。その後、分離膜を多孔性コーティング層スラリーの製造時に投入した溶媒で2分間超音波分解(sonication)して多孔性高分子基材上に形成された多孔性コーティング層を除去した。その後、多孔性コーティング層が除去された多孔性高分子基材の厚さを測定した。
【0105】
圧縮率=(最初の多孔性高分子基材の厚さ-多孔性コーティング層が除去された多孔性高分子基材の厚さ)/(最初の多孔性高分子基材の厚さ)×100%で算定した。
【0106】
2)電極と分離膜間の接着力(Lami Strength)の測定方法
実験例1)のように負極を製造し、25mm×100mmの大きさに裁断して準備した。実施例及び比較例で製造された分離膜を25mm×100mmの大きさに裁断して準備した。準備した分離膜と負極を重ね合わせた後、100μmのPETフィルムの間に挟んだうえで、平板プレスを使用して接着させた。このとき、平板プレス機の条件は、70℃で600kgfの圧力で1秒間加熱及び加圧した。接着された分離膜と負極は、両面テープを用いてスライドガラスに貼り付けた。分離膜の接着面の末端部(接着面の端から10mm以下)を剥がして、25mm×100mmのPETフィルムと片面接着テープを用いて長手方向で連結されるように貼り付けた。その後、UTM装置(LLOYD Instrument LF Plus)の下部ホルダーにスライドガラスを取り付けた後、UTM装置の上部ホルダーには、分離膜に連結されているPETフィルムを取り付け、測定速度300mm/minで180°で力を加えて、負極と負極に対向する多孔性コーティング層が剥離されるのに必要な力を測定した。
【0107】
3)厚さの測定方法
分離膜の厚さは厚さ測定器(ミツトヨ(Mitutoyo)社、VL-50S-B)を用いて測定した。
【0108】
4)通気度の測定方法
JIS P-8117に基づき、ガーレー(Gurley)式空気透過度計を用いて測定した。このとき、直径28.6mm、面積645mm2を空気100mlが通過する時間を測定した。
【0109】
表1及び表2から分かるように、従来のフッ素系バインダー高分子のみを使用した場合は、圧縮率が劣っているという問題があった。また、熱可塑性ポリウレタンのみを単独で適用した比較例2~4の場合、加湿相分離工程下では気孔及び表面接着層を形成することができなかった。比較例5~6のように、熱可塑性ポリウレタンとフッ素系バインダー高分子を混合する場合、これら2つの混和性がないため、相分離特性及び多孔性コーティング層の表面に接着層を形成するのが難しく、電極との接着力の改善が困難であることがわかった。特に、比較例6のように、メチルエチルケトン溶媒を使用する場合は、層分離が発生して、多孔性コーティング層を形成すること自体が難しかった。
【0110】
一方、本発明の一側面によれば、実施例1~5で確認できるように、熱可塑性ポリウレタンとアクリレート系バインダー高分子との混和性に優れている。また、メチルエチルケトン溶媒を使用した場合、圧縮率及び電極との接着力、通気度の面でいずれも改善される効果を得ることができた。