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特許7523595組換え抗PD-1モノクローナル抗体のための安定な製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】組換え抗PD-1モノクローナル抗体のための安定な製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A61K39/00 E
A61P35/00
A61K9/19
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/18
A61K39/395 U
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022577186
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 CN2021100658
(87)【国際公開番号】W WO2021254447
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】202010566153.8
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521271439
【氏名又は名称】神州細胞工程有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】胡 萍
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 春▲ユン▼
(72)【発明者】
【氏名】淮 ▲慶▼茹
(72)【発明者】
【氏名】田 ▲紹▼美
(72)【発明者】
【氏名】陶 明珍
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513159(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106390115(CN,A)
【文献】特表2020-516608(JP,A)
【文献】特表2019-527712(JP,A)
【文献】国際公開第2018/204368(WO,A1)
【文献】特表2022-514962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10~50mg/mLの組換え抗PD-1モノクローナル抗体、
10~50mMのバッファー、
20~200mMのオスモル濃度調節剤、
10~250mMの安定剤、
0.005~0.05質量%の界面活性
含み、
溶液のpHが5.5~6.5である、
安定な製剤であって、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、
軽鎖可変領域が、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含み、
重鎖可変領域が、配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む、製剤。
【請求項2】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体の濃度が10~25mg/mLである、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項3】
前記バッファーの濃度が20~40mMである、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項4】
前記オスモル濃度調節剤の濃度が80~160mMである、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項5】
前記安定剤の濃度が20~205mMである、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項6】
前記界面活性剤の濃度が0.02~0.04質量%である、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項7】
前記製剤のpHが5.8~6.2である、請求項1に記載の安定な製剤。
【請求項8】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が、配列番号8のPD-1抗体軽鎖可変領域配列に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び/又は、配列番号7のPD-1抗体重鎖可変領域配列に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記抗体が、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域を更に含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記軽鎖定常領域のアミノ酸配列が、配列番号10のカッパ軽鎖定常領域に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有し、及び/又は、前記重鎖定常領域のアミノ酸配列が、配列番号9のIgG4重鎖定常領域に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体がIgG抗体である、請求項9又は10に記載の製剤。
【請求項12】
前記IgG抗体がIgG4抗体である、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が1種類のモノクローナル抗体である、請求項9から11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記バッファーが、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、又はヒスチジンバッファーの1つ又は複数から選択され、
前記オスモル濃度調節剤が塩化ナトリウムから選択され、
前記安定剤が、スクロース、トレハロース、又はアルギニン塩酸塩の1つ又は複数であり、
前記界面活性剤がポリソルベート80から選択される、
請求項1から13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
前記安定剤が、205mMのスクロース、又は20mM~80mMのアルギニン塩酸塩、又は200mMのトレハロースの1つ又は複数である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
製剤溶液が6.0のpHを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
25mg/mLの組換え抗PD-1モノクローナル抗体、20mMのヒスチジンバッファー、120mMの塩化ナトリウム、40mMのアルギニン塩酸塩、及び0.02質量%のポリソルベート80を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が、組換えヒトPD-1タンパク質に、20~200pMの平均KDの親和性で結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が、組換えヒトPD-1タンパク質に、60~70pMの平均KDの親和性で結合する、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体が、組換えヒトPD-1タンパク質に、64.8pMの平均KDの親和性で結合する、請求項18に記載の製剤。
【請求項21】
水性製剤の形態又は凍結乾燥形態である、請求項1から20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
腫瘍又はがんを治療するための医薬の調製において使用するための、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項23】
前記がんが結腸がんである、請求項22に記載の製剤の使用。
【請求項24】
腫瘍又はがんの治療において使用するための、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
前記がんが結腸がんである、請求項24の製剤。
【請求項26】
2~8℃で少なくとも42カ月間及び25℃で少なくとも12カ月間、安定的に保存され得る、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月19日に出願された中国特許出願第202010566153.8号の利益を主張し、この出願の内容は参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、バイオ医薬品調製の分野に、特に、組換え抗PD-1モノクローナル抗体のための安定な製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
プログラム細胞死受容体1としても知られているPD-1は、CD279としても知られているCD28ファミリーメンバーである。これは、プログラム細胞死の調節因子として機能し、成熟CD4+T細胞及びCD8+T細胞、並びにまたナチュラルキラーT細胞、B細胞、単球、及び一部の樹状細胞の表面で主に発現する。PD-1はT細胞の免疫調節に関与する。
【0004】
PD-1はPD-L1及びPD-L2という2つのリガンドを有し、これらのリガンドは抗原提示細胞で通常は発現され、PD-1に結合すると、T細胞の活性化及び増殖を阻害する。正常な状況下では、免疫系はリンパ節又は脾臓に蓄積する外来抗原に応答し、T細胞の抗原特異的な活性化及び増殖を促進する。逆に、PD-L1へのPD-1の結合は負の調節シグナルを導き、T細胞の活性化及び増殖を阻害する。
【0005】
腫瘍細胞がT細胞による殺傷を回避する方法の1つは、それらの細胞表面にPD-L1を発現することである。PD-L1が腫瘍抗原特異的T細胞の表面上のPD-1に結合すると、これは負の調節シグナルを導き、腫瘍抗原特異的T細胞が腫瘍細胞を監視すること及び腫瘍細胞に対する攻撃シグナルを送ることを不可能にし、この結果、腫瘍細胞は免疫監視機構及び身体による殺傷を回避する。
【0006】
PD-1に対する抗体はPD-1を特異的に結合し、PD-L1とのその相互作用をブロックし、そしてPD-1/PD-L1介在性のT細胞免疫抑制を解除し、これによって、T細胞の活性化並びに腫瘍細胞を監視し及び攻撃する身体の能力の再確立を誘導する。
【0007】
しかし、投与前には、抗体製剤は保存プロセス及び輸送プロセスを受け、この間に、抗体の物理的及び化学的劣化が生じ、これらの不安定性は抗体の効力を低減させ得及び/又は免疫原性を増大させ得るため、抗体が投与まで治療的に活性且つ安全なままとなることを確実にするような安定な製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】PCT/CN2019/126594
【非特許文献】
【0009】
【文献】Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Health Service, National Institutes of Health、Bethesda, MD. 1991
【文献】Chothia及びLesk、J Mol Biol 196:901~917(1987)
【文献】Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、PHS, NIH、NIH公開番号91-3242、1991
【文献】Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215:403~410
【文献】Lan Wang、Chuanfei Yu、Yalan Yangら、Development of a robust reporter gene assay to measure the bioactivity of anti-PD-l / anti-PD-L1 therapeutic antibodies、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis、2017、145:447~453
【文献】Chinese Pharmacopoeia、2015年版、第IV巻、General 3523 Interferon Biological Activity Assay Method II reporter gene method
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明によって解決される技術的課題は、組換え抗PD-1モノクローナル抗体のための安定な製剤を提供することである。組換え抗PD-1モノクローナル抗体は、この製剤において良好な安定性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、組換え抗PD-1モノクローナル抗体、バッファー、オスモル濃度調節剤、安定剤、及び界面活性剤を含む、安定化した製剤に関する。
【0012】
この実施形態の1つにおいて、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体の濃度は10~50mg/mLであり、好ましくは、10~25mg/mLの組換え抗PD-1モノクローナル抗体であり、且つ
前記バッファーの濃度は10~50mMであり、好ましくは、20~40mMのバッファーであり、
前記オスモル濃度調節剤の濃度は20~200mMであり、好ましくは80~160mMであり、
前記安定剤の濃度は10~250mMであり、好ましくは20~205mMであり、
前記界面活性剤の濃度は0.005~0.05質量%であり、好ましくは0.02~0.04質量%であり、
溶液のpHは5.5~6.5であり、好ましくは5.8~6.2である。
【0013】
この実施形態の1つにおいて、
前記バッファーは、クエン酸バッファー、酢酸バッファー、又はヒスチジンバッファーの1つ又は複数から選択され、
前記オスモル濃度調節剤は塩化ナトリウムから選択され、
前記安定剤は、スクロース、トレハロース、又はアルギニン塩酸塩の1つ又は複数、好ましくは205mMのスクロース、又は20mM~80mMのアルギニン塩酸塩、又は200mMのトレハロースであり、
前記界面活性剤はポリソルベート80から選択される。
【0014】
この実施形態の1つにおいて、
製剤溶液のpHは6.0である。
【0015】
この実施形態の1つにおいて、
製剤は、25mg/mLの組換え抗PD-1モノクローナル抗体、20mMのヒスチジンバッファー、120mMの塩化ナトリウム、40mMのアルギニン塩酸塩、及び0.02質量%のポリソルベート80を含有する。
【0016】
この実施形態の1つにおいて、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体は、軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域を含み、
ここで、軽鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含み、且つ
重鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、及び配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む。
【0017】
この実施形態の1つにおいて、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体は、配列番号8のPD-1抗体軽鎖可変領域配列に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び/又は、配列番号7のPD-1抗体重鎖可変領域配列に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0018】
この実施形態の1つにおいて、
前記抗体は、軽鎖定常領域及び重鎖定常領域、好ましくは配列番号10のカッパ軽鎖定常領域に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する前記軽鎖定常領域のアミノ酸配列、及び/又は、配列番号9のIgG4重鎖定常領域に対して少なくとも90%、92%、95%、98%、若しくは100%の配列同一性を有する前記重鎖定常領域のアミノ酸配列を更に含む。
【0019】
この実施形態の1つにおいて、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG4抗体である。
【0020】
この実施形態の1つにおいて、
前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体である。
【0021】
この実施形態の1つにおいて、
組換えヒトPD-1タンパク質に対する前記組換え抗PD-1モノクローナル抗体の平均KD、すなわち結合親和性は、20~200pM、好ましくは60~70pM、更に好ましくは64.8pMである。
【0022】
この実施形態の1つにおいて、
製剤は、水性形態又は凍結乾燥形態である。
【0023】
この実施形態の1つにおいて、
製剤は、2~8℃で少なくとも42カ月間、及び25℃で少なくとも12カ月間、安定的に保存され得る。
【0024】
本発明の第2の態様は、腫瘍又はがん、好ましくは結腸がんを治療するための医薬の調製における、本発明の製剤の使用に関する。
【0025】
本発明の第3の態様は、腫瘍又はがん、好ましくは結腸がんの治療のための、本発明の製剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例1の各製剤試料の純度の傾向を示す図である。
図2】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例1の各製剤試料についての酸性ピークの傾向を示す図である。
図3】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例2の各製剤試料の純度の傾向を示す図である。
図4】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例2の各製剤試料についての酸性ピークの傾向を示す図である。
図5】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例3の各製剤試料の純度の傾向を示す図である。
図6】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例3の各製剤試料についての酸性ピークの傾向を示す図である。
図7】0週目、3週目、及び5週目での、4℃及び37℃での実施例4の各製剤試料の純度の傾向を示す図である。
図8】0週目、1週目、2週目、及び4週目での、-80℃及び45℃での実施例5の各製剤試料についての純度の傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、保存及び輸送の際の抗体の安定性の課題を解決する、組換え抗PD-1モノクローナル抗体のための安定な製剤を提供する。この抗体は、患者への投与の前に、治療目的で活性且つ安全なままであることを保証する。
【0028】
用語「製剤」は、活性成分の生物学的活性を効果的な様式で維持する組成物を指し、対象に対して容認できないほどに毒性である他の成分は含有しない。このような調製物は無菌である。用語「無菌」は、生存細菌が存在しないこと、又は全ての生存微生物及びこれらの胞子が存在しないこと若しくは実質に存在しないことを指す。
【0029】
本明細書において使用される場合、「安定な」製剤は、その中の活性成分が保存後にその物理学的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を実質的に保持する、製剤を指す。好ましくは、製剤は、保存後にその物理学的及び化学的安定性並びにその生物学的活性を実質的に保持する。
【0030】
用語「患者」又は「対象」は区別せずに使用され、本発明に従った状態又は疾患に罹患しているあらゆる哺乳動物を指す。好ましくはヒトである。
【0031】
本発明の安定化した製剤は、組換え抗PD-1モノクローナル抗体、バッファー、オスモル濃度調節剤、安定剤、及び界面活性剤を含む。
【0032】
用語「含む(comprise)」及び「含有する(contain)」は、記載されたものに加えて、追加の成分が含まれ得ることを意味している。
【0033】
本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの」、「a」、「別の」、及び「前記」は、文脈が別段のことを明らかに示していない限り、対象の複数の指定を含む。
【0034】
本明細書において使用される場合、「バッファー」は、そのコンジュゲート酸-塩基対の作用を介するpHの変化に耐えるバッファー溶液を指す。本発明の実施形態において、好ましくはpHが約5.5から約6.5の間、好ましくは約6の、ヒスチジンバッファー溶液が選択される。
【0035】
本明細書において使用される場合、「界面活性剤」は表面活性剤を指し、一実施形態において、本明細書における界面活性剤はポリソルベート20である。
【0036】
用語「オスモル濃度調節剤」は、薬学的に許容可能なオスモル濃度調節剤を指す。適切なオスモル濃度調節剤としては、限定はしないが塩が含まれ、本発明の一実施形態において、約80mMから約160mMの濃度の塩化ナトリウム(NaCl)が含まれる。
【0037】
用語「安定剤」は、限定はしないが、本発明の実施形態におけるアミノ酸及び糖、例えば、アルギニン塩酸塩、スクロース、及びトレハロースを含む、薬学的に許容可能な安定剤を指し、これは、単独で、又は約20~80mMのアルギニン塩酸塩、約205mMのスクロース、及び約200mMのトレハロースの濃度の組み合わせで使用され得る。
【0038】
タンパク質の「安定性」は、選択された温度で選択された期間にわたり保存した後に、凝集体の形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用する、濁度を測定する、及び/又は目視検査による);陽イオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、又はキャピラリーゾーン電気泳動を使用する電荷の不均質性の評価;アミノ末端配列又はカルボキシ末端配列の分析;質量分析;還元された抗体と無傷の抗体とを比較するためのSDS-PAGE分析;ペプチドマッピング(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能の評価;等を含む、いくつかの異なる方法で、定性的に及び/又は定量的に評価することができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、選択された期間の保存の後の試料の純度は、分子排除高速液体クロマトグラフィー、すなわち、異なる分子サイズに従った分離及び定量によって検出され、こうして、試料のモノマー、凝集体、及び断片の量についての情報が得られる。電荷異性体は、陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)、すなわち、異なるタンパク質電荷に従った分離及び定量によって検出され、こうして、試料の電荷の不均質性についての情報が得られる。又は、電荷異性体は、イメージングキャピラリー等電点電気泳動(IEF)、すなわち、タンパク質の異なる等電点に基づく分離及び定量によって検出され、こうして、試料中の酸性タンパク質及び塩基性タンパク質の量についての情報が得られる。試料の「生物学的活性」はレポーター遺伝子アッセイによって決定され、これは、PD-1及びルシフェラーゼを発現するエフェクター細胞へのPD-L1を発現する標的細胞の結合がルシフェラーゼの発現を阻害し、PD-1抗体の添加がPD-L1へのPD-1の結合をブロックし、したがって、ルシフェラーゼ発現の強度を分析することによってPD-1抗体の生物学的活性が決定され得る、という原理に基づく。
【0040】
用語「抗体」は免疫グロブリン分子を指し、また、所望の生物学的活性を示すあらゆる形態の抗体を指す。これらとしては、限定はしないが、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体及び多特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、並びに更には抗体断片が含まれる。典型的には、完全長抗体の構造は、好ましくは、ジスルフィド結合によって典型的には相互連結された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖を有する。各重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を有する。この典型的な完全長抗体の構造に加えて、構造はまた、他の誘導体形態も含む。
【0041】
用語「可変領域」は、抗原への抗体の結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖内のドメインを指す。天然抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域(それぞれVH及びVL)は通常、類似の構造を有しており、また、超可変領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)に更に分けることができ、超可変領域の間には、更に保存された領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)がある。
【0042】
用語「相補性決定領域」(CDR、例えばCDR1、CDR2、及びCDR3)は、その存在が抗原の結合に必須である、抗体の可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、CDR1、CDR2、及びCDR3と同定される3つのCDR領域を典型的に有する。各相補性決定領域は、Kabat(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Health Service, National Institutes of Health、Bethesda, MD. 1991)によって定義されている「相補性決定領域」のアミノ酸残基、及び/又は「超可変ループ」(Chothia及びLesk、J Mol Biol 196:901~917(1987))のアミノ酸残基を有し得る。
【0043】
各重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、3つのCDR及び最大4つのFRを典型的に有し、前記CDR及びFRは、アミノ末端からカルボキシル末端まで、例えば、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4という順序で配列している。
【0044】
所与の抗体の相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)は、Kabatシステム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、PHS, NIH、NIH公開番号91-3242、1991)を使用して同定することができる。
【0045】
用語「定常領域」は、抗体-抗原結合に直接的には関与しないが抗体依存性細胞傷害性等の様々なエフェクター機能を示す、抗体の軽鎖及び重鎖内のアミノ酸配列を指す。
【0046】
「抗体の抗原結合断片」は、親抗体の結合特異性の少なくとも一部を保持する無傷抗体分子の一部分を含み、典型的には、親抗体の抗原結合領域又は可変領域の少なくとも一部分(例えば、1つ又は複数のCDR)を含む。抗原結合断片の例としては、限定はしないが、Fv断片、Fab断片、Fab'断片、Fab'-SH断片、F(ab')2断片、Fd断片、Fd'断片、一本鎖抗体分子(例えば、scFv、di-scFv、又はtri-scFv、二連抗体、又はscFab)、及び単一ドメイン抗体が含まれる。
【0047】
「抗体断片」は、親抗体の生物学的特性の少なくとも一部を保持する、無傷ではない抗体分子であり、これとしては、限定はしないが、「抗原結合断片」について上記で記載したものに加えて、Fc断片が含まれる。
【0048】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の由来源又は種に由来し、残り部分が異なる由来源又は種に由来する、抗体を指す。「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットである。
【0049】
用語「ヒト化抗体」又は「ヒト化抗原結合断片」は、本明細書において、以下の抗体又は抗体断片であると定義される:(i)非ヒト由来源(例えば、異種免疫系を有するトランスジェニックマウス)に由来し、ヒト生殖細胞系の配列に基づく、抗体;又は(ii)可変領域が非ヒト由来であり、定常領域がヒト由来である、キメラ抗体;又は(iii)可変領域内のCDRが非ヒト由来であり、可変領域内のフレームワーク領域の1つ若しくは複数がヒト由来であり、そして定常領域がもし存在すればヒト由来である、CDRグラフト。「ヒト化」の目的は、考えられるもののうち最も高い親和性を保持しながら、ヒトにおける非ヒト由来抗体の免疫原性を排除することである。非ヒト由来源抗体のフレームワーク領域配列に最も類似したヒトフレームワーク領域配列をヒト化のための鋳型として選択することが有利である。一部のケースにおいて、ヒトフレームワーク領域配列における1つ又は複数のアミノ酸を、非ヒトフレームワーク領域における対応する残基で置換して、親和性の喪失を避けることが必要であり得る。
【0050】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団に由来する抗体を指し、すなわち、集団に含まれる全ての単一の抗体は、非常にわずかな量で存在し得る考えられる突然変異(例えば、天然の突然変異)を除いて同一である。したがって、用語「モノクローナル」は、前記抗体の性質、すなわち、関連していない抗体の混合物ではないことを示している。異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常は含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、別個の抗原決定基に向けられている。モノクローナル抗体調製物は、これらの特異性に加えて、他の抗体で通常は汚染されていないという利点を有する。用語「モノクローナル」は、前記抗体を生産するいずれかの特定の方法を必要とすると解釈されるべきではない。モノクローナル抗体という用語は、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を具体的に含む。
【0051】
抗体は、腫瘍関連ペプチド抗原標的(本明細書において、PD-1)等の標的抗原を「特異的に結合」し、すなわち、前記抗体を治療剤として使用することを可能にするために十分な親和性で前記抗原を結合し、前記抗原を発現する細胞又は組織を標的化し、そして、他のタンパク質とは、又は上記の抗原性標的のホモログ及びバリアント(例えば、突然変異形態、スプライスバリアント、若しくはタンパク質分解によってトランケートされた形態)以外のタンパク質とは顕著には交差反応しない。
【0052】
用語「結合親和性」は、分子の個々の結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合による相互作用を合わせた強度を指す。別段の特定がない限り、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合対の構成員(例えば、抗体及び抗原)の間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。「KD」、「結合速度定数kon」、及び「解離速度定数koff」は、分子(例えば抗体)とその結合パートナー(例えば抗原)との間の親和性、すなわち、リガンドがいかに堅く特定のタンパク質を結合するかを示すために一般に使用される。結合親和性は、2つの分子の間の水素結合、静電気的相互作用、並びに疎水性力及びファンデルワールス力等の、非共有結合による分子間相互作用の影響を受ける。更に、リガンドとその標的分子との間の結合親和性は、他の分子の存在の影響を受け得る。親和性は、本明細書において記載されるELISAを含む、当技術分野において公知の従来の方法によって分析することができる。
【0053】
「単離」抗体は、抗体を天然に発現する細胞から同定及び単離されている抗体である。単離抗体としては、組換え細胞におけるin situ抗体、及び少なくとも1つの精製ステップによって典型的に調製される抗体が含まれる。
【0054】
2つのペプチド配列又は核酸配列の間の「配列同一性」は、前記配列間で同一の残基の数を、残基の総数に対するパーセンテージとして示す。同一性パーセントの計算において、比較対象の配列は、配列間で最大のマッチをもたらす様式でマッチされ、マッチにおける空の位置(存在する場合)は、特定のアルゴリズムによって対処される。2つの配列の間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法としては、限定はしないが、GAP、BLASTP、BLASTN、及びFASTAを含むGCGプログラムパッケージが含まれる(Altschulら、1990、J. Mol. Biol. 215:403~410)。上記の手順は、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)及び他の情報源から公に入手可能である。周知のスミス・ウォーターマンアルゴリズムもまた、同一性を決定するために使用することができる。
【0055】
本発明の一実施形態は、2019年12月19日に出願された特許出願PCT/CN2019/126594において記載されている組換え抗PD-1モノクローナル抗体を利用しており、特に好ましい実施形態においてはPD1-H944抗体である。PCT/CN2019/126594は、本明細書及び特許請求の範囲に参照によって組み入れられる。
【0056】
本発明の特に好ましい実施形態において、製剤は、25mg/mLのPD1-H944抗体、20mMのヒスチジンバッファー、120mMの塩化ナトリウム、40mMのアルギニン塩酸塩、及び0.02質量%のポリソルベート80を含有している。製剤は良好な安定性を有しており、2~8℃で少なくとも42カ月間、及び25℃で少なくとも12カ月間、安定である。
【0057】
本発明の製剤は、液体形態で提供され得るか、又は凍結乾燥形態で提供され得る。これは、投与の前に凍結乾燥製剤を再構成することによって行うことができる。
【0058】
本発明の製剤は、腫瘍又はがん、好ましくは結腸がんを治療することができる。
【実施例
【0059】
本発明は、以下の実施形態を参照することによって、より完全に理解される。実施例はしかし、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。全ての文献、特許、及び特許出願は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0060】
以下の実施形態において、使用される組換え抗PD-1モノクローナル抗体はPD1-H944であり、この調製、特徴付け、及び性能の同定は、2019年12月19日に出願されたPCT/CN2019/126594に記載されている。
【0061】
以下の実施形態において、使用される検出方法は、以下に記載する通りである。
【0062】
(1)分子排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)
カラム:TSKgel G3000SWXゲル濾過カラム(7.8×300mm、5μm)(カタログ番号0008541)を使用し、移動相はSEC移動相(200mMのリン酸水素二ナトリウム、100mMのアルギニン、pH6.50、1%イソプロパノール)であり、UV検出波長は280nmであり、カラム温度は25℃であり、80μgの試験試料を液体クロマトグラフに注入し、そして、試料の純度を相対面積比較法(中国薬局方の総則0514(2015年版、第III巻))に従って計算した。
【0063】
2)陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)
弱陽イオン交換カラムWCX-10(4×250mm)(製品番号054993)を、移動相としてのA相(10mMのPB、pH=7.0)及びB相(10mMのPB、200mMのNaCl、pH=7.0)と共に使用し、UV検出波長は280nmであり、そして、カラム温度は35℃であった。SCT-I10Aの勾配溶出を、以下の表に従って行った。
【0064】
【表1】
【0065】
80μgの試験試料を液体クロマトグラフに注入し、試料の純度を、相対面積比較法(中華人民共和国の薬局方の総則0512及び総則0513(2015年版、第III巻)を参照)に従って計算した。
【0066】
3)イメージングキャピラリー等電点電気泳動(IEF)
イメージングキャピラリー等電点電気泳動機器を使用してiCE3アッセイを行った。iCIEFの関連するパラメータは以下の通りであった:試験試料を、IEFのためのファルマライト3~10、1%メチルセルロース(1%MC)、pIが5.12及び9.33のpIマーカー、並びに水と混合することによって、分析のための試料溶液を調製した。最終溶液中で、タンパク質の最終濃度は0.25mg/mLであり、両性電解質の最終濃度は4%であり、そして、MCの最終濃度は0.35%であった。iCE3分析は以下のフォーカス条件下で行った:1500Vを1分間、3000Vを6分間。キャピラリーに電圧を印加した後、試料はそのpI点でフォーカスされる。検出波長は280nmであり、UV吸収のピークを写真撮影するとフォーカスされたスペクトルを得ることができ、そして試料の酸性タンパク質及び塩基性タンパク質の量についての情報を計算によって得ることができる(中国薬局方、2015年版、第IV巻、総則0542のキャピラリー電気泳動法)。
【0067】
4)試料の「生物学的活性」を決定するためのレポート遺伝子方法
CHO-K1-PD-L1-CD3E細胞を20K/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートし、次いで、上清を廃棄した。細胞を40μL/ウェルでワーキング対照試料及び試験試料の連続希釈物に添加して、最終濃度を40.000、13.333、4.444、1.481、0.494、0.165、0.055、0.018、及び0.006μg/mLとし、Jurkat-NFAT-Luc2p-PD-1細胞を75K/ウェル(40μL/ウェル)で添加し、37℃で5%CO2環境下で6時間インキュベートし、そして、細胞を溶解し、20μL/ウェルの細胞溶解物を、底が白い96ウェルプレートに取り、マイクロプレート発光検出器に置き、そして、生物発光の検出のために60μL/ウェルのルシフェラーゼアッセイシステムを添加した。試料濃度の対数を水平座標として、及び生物発光値(RLU)を垂直座標としてプロットすることによって、試料の相対的活性を計算し、4パラメータ方程式を適合させて、試料及びワーキング対照試料のEC50値を得た。相対的活性(%)=ワーキング対照試料のEC50/試料のEC50×100%である(Lan Wang、Chuanfei Yu、Yalan Yangら、Development of a robust reporter gene assay to measure the bioactivity of anti-PD-l / anti-PD-L1 therapeutic antibodies、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis、2017、145:447~453;Chinese Pharmacopoeia、2015年版、第IV巻、General 3523 Interferon Biological Activity Assay Method II reporter gene method)。
【0068】
(実施例1)製剤溶液のpHのスクリーニング
この実施形態のためのPD1-H944製剤を以下の表に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
抗体製剤の調製方法:抗体を限外濾過によって標的バッファー(ポリソルベート80及び抗体を除く全ての成分)内に交換し、所要の量のポリソルベート80を添加し、そして、抗体濃度を25mg/mLに調整し、無菌で分配し、そして4℃の冷蔵庫及び37℃のサーモスタットにそれぞれ置き、そして0週目、3週目、及び5週目に分析及び検出のために取り出し、そしてアッセイはSEC-HPLC及びIEFを含んでいた。
【0071】
分析方法及び検出方法:
純度の検出:分子排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)。この検出原理は、分子をそれらの異なるサイズに従って分離及び定量し、こうして、試料のモノマー、凝集体、及び断片の量についての情報を得ることである。
【0072】
電荷異性体:イメージングキャピラリー等電点電気泳動(IEF)。この検出原理は、タンパク質をそれらの異なる等電点に従って分離及び定量し、こうして、試料中の酸性タンパク質及び塩基性タンパク質の量についての情報を得ることである。抗体生成物では、あまり高くない酸性ピークが適切である。
【0073】
試験結果を添付の図1図2に示す。
【0074】
試験結果は、F3におけるPD1-H944の純度が他の製剤におけるよりも高く、そして酸性ピークが他の製剤よりも低かったことを示しており、このことは、F3の安定性が他の製剤よりも良好であったことを示している。
【0075】
(実施例2)抗体濃度のスクリーニング
この実施形態のためのPD1-H944製剤を以下の表に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
抗体製剤の調製方法:抗体を限外濾過によって標的バッファー(ポリソルベート80及び抗体を除く全ての成分)内に交換し、所要の量のポリソルベート80を添加し、そして、抗体濃度を10mg/mL及び25mg/mLにそれぞれ調整し、無菌で分配し、そして4℃の冷蔵庫及び37℃のサーモスタットに置き、そして0週目、3週目、及び5週目に分析のためにそれぞれ取り出した。アッセイはSEC-HPLC及びIEFを含んでいた。
【0078】
分析方法及び検出方法:
純度の試験:分子排除高速液体クロマトグラフィー。
電荷異性体:イメージングキャピラリー等電点電気泳動。
【0079】
試験結果を添付の図3図4に示す。
【0080】
アッセイの結果は、F1及びF2におけるPD1-H944の純度が、37℃で0週間、3週間、及び5週間置いた場合に99%よりも高かったことを示しており、また、酸性ピークの変化の傾向は基本的に同じであり、このことは、F1及びF2におけるPD1-H944の安定性が同程度であったことを示している。
【0081】
(実施例3)界面活性剤の濃度のスクリーニング
この実施形態のためのPD1-H944製剤を以下の表に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
抗体製剤の調製方法:抗体を限外濾過によって標的バッファー(ポリソルベート80及び抗体を除く全ての成分)内に交換し、所要の量のポリソルベート80を添加し、そして、抗体濃度を25mg/mLに調整し、無菌で分配し、そして4℃の冷蔵庫及び37℃のサーモスタットにそれぞれ置き、そして0週目、3週目、及び5週目に分析及び検出のために取り出し、そしてアッセイはSEC-HPLC及びIEFを含んでいた。
【0084】
分析方法及び検出方法:
純度の検出:分子排除高速液体クロマトグラフィー。
電荷異性体:イメージングキャピラリー等電点電気泳動。
【0085】
試験結果を添付の図5図6に示す。
【0086】
試験結果は、F1におけるPD1-H944の純度がF2のそれよりも高く、そして酸性ピークの変化の傾向が基本的に同じであったことを示しており、このことは、F1の安定性がF2の安定性よりも良好であったことを示している。
【0087】
(実施例4)オスモル濃度調節剤の濃度のスクリーニング
この実施形態のためのPD1-H944製剤を以下の表に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
抗体製剤の調製方法:抗体を限外濾過によって標的バッファー(ポリソルベート80及び抗体を除く全ての成分)内に交換し、所要の量のポリソルベート80を添加し、そして、抗体濃度を25mg/mLに調整し、無菌で分配し、そして4℃の冷蔵庫及び37℃のサーモスタットにそれぞれ置き、そして0週目、3週目、及び5週目に分析及び検出のためにそれぞれ取り出した。
【0090】
分析方法及び検出方法:
純度の試験:分子排除高速液体クロマトグラフィー。
【0091】
試験結果を添付の図7に示す。
【0092】
アッセイの結果は、F1におけるPD1-H944の純度がF2及びF3のそれよりも高かったことを示しており、このことは、F1の安定性がF2及びF3の安定性よりも良好であったことを示している。
【0093】
(実施例5)安定剤及び安定剤濃度のスクリーニング
この実施形態のためのPD1-H944製剤を以下の表に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
抗体製剤の調製方法:抗体を限外濾過によって標的バッファー(ポリソルベート80及び抗体を除く全ての成分)内に交換し、所要の量のポリソルベート80を添加し、そして、抗体濃度を25mg/mLに調整し、無菌で分配し、そして-80℃の冷蔵庫及び45℃のサーモスタットに置き、そして0週目、1週目、2週目、及び4週目に分析及び検出のためにそれぞれ取り出した。
【0096】
分析方法及び検出方法:
純度の試験:分子排除高速液体クロマトグラフィー。
【0097】
試験結果を添付の図8に示す。
【0098】
試験結果は、F1におけるPD1-H944の純度が45℃で4週間、他の製剤におけるよりも高かったことを示しており、このことは、F1の安定性が他の製剤よりも良好であったことを示している。
【0099】
(実施例6)製剤検証アッセイ
組換えPD-1モノクローナル抗体製剤(25mg/mLのPD1-H944+20mMのヒスチジンバッファー+120mMの塩化ナトリウム+40mMのアルギニン塩酸塩+0.02質量%のポリソルベート80の製剤、pH6.0)の3つのバッチを、2~8℃及び25±2℃での安定性について、SEC-HPLC、CEX-HPLC、及び生物学的活性についてアッセイした。
【0100】
分析方法及び検出方法:
純度の試験:分子排除高速液体クロマトグラフィー。
【0101】
電荷異性体:陽イオン交換高速液体クロマトグラフィー(CEX-HPLC)。この検出原理は、タンパク質をそれらの異なる電荷に従って分離及び定量し、こうして、試料の電荷の不均質性についての情報を得ることである。
【0102】
生物学的活性:レポーター遺伝子方法。このアッセイの原理は、PD-1及びルシフェラーゼを発現するエフェクター細胞へのPD-L1を発現する標的細胞の結合がルシフェラーゼの発現を阻害し、PD-1抗体の添加がPD-L1へのPD-1の結合をブロックし、したがって、ルシフェラーゼ発現の強度を分析することによってPD-1抗体の生物学的活性が決定され得るというものである(PCT/CN2019/126594を参照)。
【0103】
実験結果をTable 6(表7)~Table 11(表12)に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】
【表10】
【0108】
【表11】
【0109】
【表12】
【0110】
実験結果は、本発明において開示されたPD1-H944製剤が良好な安定性を有し、2~8℃で少なくとも42カ月間及び25℃で少なくとも12カ月間、安定的に保存され得ることを示している。
【0111】
【表13A】
【0112】
【表13B】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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