(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】水中油型乳化グミ組成物
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20240719BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20240719BHJP
A23G 3/40 20060101ALI20240719BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20240719BHJP
A23G 3/48 20060101ALI20240719BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240719BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20240719BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240719BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20240719BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240719BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20240719BHJP
A23D 7/01 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A23G3/34 101
A23G3/36
A23G3/40
A23G3/42
A23G3/48
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/281
A23L33/105
A23L33/115
A23L33/16
A23D7/00 504
A23D7/01
(21)【出願番号】P 2022578680
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2021047732
(87)【国際公開番号】W WO2022051165
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398065014
【氏名又は名称】ファーマバイト エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイヤン ゲー
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル パチェコ
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-220281(JP,A)
【文献】特開2018-046788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 3/00-3/56
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相中油相の固化乳化物を含むグミ組成物であって、
前記水相は
、構造剤を含有し、
前記グミ組成物は、砂糖および少なくとも1種類の糖アルコールを含み、
前記グミ組成物は、
TA-8Aプローブを用いて該グミ組成物に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの最大力としての硬度が150gForce
~600gForceの範囲で、且つ0.73未満の水分活性を有
し、
前記油相は、前記グミ組成物の20重量%~40重量%の量の少なくとも1種類のミネラルと15重量%以上の量の少なくとも1種類のハーブと、の少なくとも一方を含む、グミ組成物。
【請求項2】
前記油相は魚油を含む、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項3】
前記魚油はトリグリセリド型の魚油を含む、請求項2に記載のグミ組成物。
【請求項4】
前記魚油はエステル型の魚油を含む、請求項2に記載のグミ組成物。
【請求項5】
所定量のビタミンEをさらに含む、請求項2に記載のグミ組成物。
【請求項6】
前記構造剤はゼラチンを含む、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項7】
前記構造剤は、ローカストビーンガムおよび寒天の少なくとも一方を含む、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項8】
前記油相は
少なくとも1種類のミネラル
塩を含む、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項9】
前記油相はレシチンを含む、請求項
1に記載のグミ組成物。
【請求項10】
前記ミネラル塩は、所定量のカルシウム塩およびマグネシウム塩をそれぞれ含む、請求項
8に記載のグミ組成物。
【請求項11】
所定量のグリセリンをさらに含む、請求項
1に記載のグミ組成物。
【請求項12】
水相中油相の固化乳化物を含むグミ組成物を調整することを含む方法であって、
前記グミ組成物は、砂糖および少なくとも1種類の糖アルコールを含み、
前記グミ組成物は、
TA-8Aプローブを用いて該グミ組成物に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの最大力としての硬度が150gForce
~600gForceの範囲で、且つ0.73未満の水分活性を有
し、
前記油相は、前記グミ組成物の20重量%~40重量%の量の少なくとも1種類のミネラルと15重量%以上の量の少なくとも1種類のハーブと、の少なくとも一方を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記油相は魚油を含
む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記グミ組成物はビタミンEを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
構造剤はゼラチンを含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項16】
構造剤は、ローカストビーンガムおよび寒天の少なくとも一方を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項17】
前記グミ組成物
の前記油相はミネラル
塩を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項18】
前記グミ組成物はレシチンを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記グミ組成物はグリセリンを含む、請求項
17に記載の方法。
【請求項20】
前記油相は少なくとも1種類のハーブを含む、請求項1に記載のグミ組成物。
【請求項21】
前記グミ組成物の前記油相は少なくとも1種類のハーブを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養組成物、特にグミ組成物、およびそれに係る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゼラチンまたはペクチンマトリックスに、砂糖、グルコース、コーンシロップ、香料、着色料、およびクエン酸を加えた、咀嚼可能なグミ(ガム)製品または組成物は、スナック食品として人気がある製品である。製品(組成物)は、通常、2センチメートル(cm)オーダーの長さを持つゲルまたはゲル状の構造および食感を有し、摂取時に咀嚼可能で、様々な形状、色、およびフレーバーを持つものとして製造される。最近では、ビタミン、ミネラル、エッセンシャルオイル等の栄養補助食品が補われたグミ製品であって、錠剤やカプセルを飲み込むことが苦手なまたは困難な子供や大人にアピールする栄養補助食品として提供されている。
【0003】
グミ組成物は、ゼラチンと砂糖の混合物の水性グミスラリーとして形成されることが多い。グミスラリーは、高温(例えば70℃~100℃)で混合され、流動性のある液体が生成される。得られた流動性のある液体を型に流し込み、固める。従来の型はコーンスターチの型である。コーンスターチ粉末を充填したトレイに、所望のグミ形状を刻印することで、コーンスターチの型が形成される。型に入れた後、グミ組成物を冷却し、固化させる。グミ組成物が固まった後、すなわち完全に固化した後、トレイをひっくり返して型を壊し、ゲル化したグミ組成物をコーンスターチから分離させる。コーンスターチによる型は、一般に、グミ組成物の温度を下げる機能、およびグミから水分を吸収する機能を持つ。これら両方がグミの固化に役立つ。通常、グミ組成物が完全に固化するまでに約24時間かかるが、グミ組成物のそれぞれの側面または表面を測定したときに、外面から中点までの全体にしっかりとしたゲル構造を形成するのに要する時間として、「固化時間」が定義される。グミ組成物が固化したら、グミ組成物からコーンスターチを除去し、コーティング(例えば、カルナバワックスで)してもよい。
【0004】
コーンスターチを使用しないグミ組成物の製造は、従来の製造に比べて、衛生的で、一般に固化(ゲル化)が早い等の利点がある。コーンスターチを使用しない型の例として、シリコーンの型がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】構造剤(ゼラチン)の重量%が5.87%の場合の魚油水中油型グミ組成物配合における固化率の3次元モデルを示す。
【
図2】構造剤(ゼラチン)の重量%が7.52%の場合の魚油水中油型グミ組成物配合における固化率の3次元モデルを示す。
【
図3】TA-25円筒型プローブを用いて、魚油およびビタミンEを含む乳化グミ組成物を2回圧縮したときの、圧縮力-対-時間のグラフを示す。
【
図4】油分(中鎖トリグリセリド)の重量%が21.56%の場合のマグネシウムおよびカルシウム水中油型乳化グミ組成物配合における固化率の3次元モデルを示す。
【
図5】油分(中鎖トリグリセリド)の重量%が26%の場合のマグネシウムおよびカルシウムの水中油型乳化グミ組成物配合における固化率の3次元モデルを示す。
【
図6-1】ミネラル(カルシウムおよびマグネシウム)と、ゼラチン、ローカストビーンガム、および寒天の構造剤と、を含む水中油型乳化グミ組成物について、(1)および(2)は、ローカストビーンガムの量を一定にして、ゼラチン、水、および寒天の量を変化させた場合の固化率の3次元プロット図を示す。
【
図6-2】ミネラル(カルシウムおよびマグネシウム)と、ゼラチン、ローカストビーンガム、および寒天の構造剤と、を含む水中油型乳化グミ組成物について、(3)および(4)は、ゼラチンの量を一定にして、ローカストビーンガム、水、および寒天の量を変化させた場合の固化率の3次元プロット図を示す。
【
図7】ミネラル(カルシウムおよびマグネシウム)と、ゼラチン、ローカストビーンガム、および寒天の構造剤と、を含む水中油型乳化グミ組成物について、ローカストビーンガムの量を0.294重量%に一定にして、水、寒天、およびゼラチンの量を変化させた場合の硬度の3次元プロット図を示す。
【
図8】TA-25円筒型プローブを用いて、マグネシウムおよびカルシウムを含む水中油型乳化グミ組成物を2回圧縮したときの、圧縮力-対-時間のグラフを示す。
【
図9】ミネラル(カルシウムおよびマグネシウム)と、ゼラチン、ローカストビーンガム、および寒天の構造剤と、を含む水中油型乳化グミ組成物について、(1)および(2)は、組成物中の水の量を一定にして、各構造剤の量を変化させた場合の咀嚼性の3次元プロット図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
水相中油相の固化乳化された経口摂取用の咀嚼可能なグミまたはガム組成物が開示されている。水相は、構造剤、マルチトールシロップ等の糖アルコール、砂糖、および水を含むことができる。構造剤は、例えば、ゼラチン、ペクチン、寒天(もしくはアガアガ)、ローカストビーンガム、または、1もしくは複数の構造剤の組み合わせでもよい。組成物の構成要素、主として水相構成要素の量(例えば、重量%)の選択により、比較的迅速な除去時間とそれに応じた迅速な固化時間、良好な食感、良好な熱安定性、および心地よい味を有するグミ組成物を提供することができる。測定可能な物理的特性の観点から、TA-8Aプローブを用いて、2.0センチメートル(cm)×2.0センチメートルの正方形形状で厚さ0.9cmを有し、水分活性が0.73未満、Brixが77~83、除去時間が30分以下で、消費者が受容可能な食感および外観を有するグミ組成物サンプルに、上面から5ミリメートル(mm)まで、毎秒0.5ミリメートル(mm/秒)の速度で押し込んだときの最大力として測定される、水中油型固化乳化グミ組成物の好適な硬度は、150gForce以上である。本明細書で使用する「除去時間」、「除去可能時間」、または「解除時間」は、グミ組成物の少なくとも外側部分がゲル化して、グミ組成物を単一ユニットとしてコーンスターチを使用しない型から除去するのに要する時間である。本明細書で使用する「固化時間」は、グミ組成物のそれぞれの側面または表面を測定したときに、外面から中点までの全体にしっかりとしたゲル構造を形成するのに要する時間として定義される。グミ組成物の固化時間は、一般に、除去時間より長い。グミ組成物の場合、除去時間は固化時間と直接的に関係する。したがって、除去時間の短縮は、固化時間の短縮につながり、グミ組成物の製造工程の効率を高めることになる。グミまたはガム組成物の油相は、レシチン、一例としてω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、ω-9脂肪酸のような多価不飽和脂肪酸、または、一例として脂肪酸エステル(例えばリン脂質、モノ-、ジ-もしくはトリ-グリセリド、および低級アルキルエステル)の1種もしくは混合物のような植物油、を含むことができる。このような材料は、天然、合成、または半合成であってもよい。植物由来の油および海洋由来の油(一例として、植物種子(例えばヒマワリ油もしくは大豆油)、藻類、魚(特に油性魚)、微生物、および海洋無脊椎動物(例えばオキアミ)、から得られる油)としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはエイコサペンタエン酸(EPA)、トリグリセリド、あるいはエチルエステルが特に好適に使用される。また、グミまたはガム組成物の油相は、一例としてココナッツ油もしくはパーム核油のような中鎖トリグリセリド(MCT)油、一例としてビタミンA、D、E、K12のような水溶性ビタミン油、オリーブ油、および/またはアボカド油、も含むことができる。
【0007】
グミ組成物を形成するために、水相と油相を別々に調製する。水相については、構造剤(複数可)を水和させた後、他の構成要素(例えば、糖アルコール、砂糖)を添加してもよい。その後、水相に油相を混合し、マイクロメートル以下の大きさの油相の液滴が水相全体に均一に分散した乳化物を形成するのに十分な混合速度で混合する。乳化後、混合物を食用グミ組成物にとって所望の形状および大きさの型に流し込み、少なくとも固まり始めるまで放置する。グミ組成物中の構成要素量を適切に選択することにより、TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル(cm)×2.0センチメートル(cm)の正方形形状で厚さ0.9cm)に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの最大力として測定した硬度が、150gForce以上で、良好な食感と熱安定性が得られる30分以内の除去時間を達成することが可能である。
【0008】
I. 魚油乳化グミ組成物
魚油乳化グミ組成物は、ミクロサイズの魚油の液滴を水相に均一に分散させることにより、比較的多量の魚油をグミに取り込ませることができる。比較的多量とは、一例として、重量%でグミ組成物の少なくとも10%、または10~45%、または10~40%、または10~35%、または10~30%、または10~25%、または10~20%である。
【0009】
魚油乳化グミ組成物は、水中油型エマルジョンである。水相は、1または複数の構造剤(例えば、ゼラチン、ペクチン、寒天、ローカストビーンガム)、水、砂糖または/およびキシリトール(固体)、マルチトール(液体)、ならびに酸味のためのクエン酸を含む連続相として説明し得る。ゼラチンの好適な構造剤は、150ブルーム以上、例えば、150ブルーム~300ブルーム、175ブルーム~270ブルーム、または175ブルーム~250ブルームを有するゼラチンであってもよい。油相は、魚油のみ、または、一例として中鎖トリグリセリド(MCT)油、ヒマワリ油、大豆油等のようなキャリアオイルを有する魚油を含む。これまでのラボ配合バッチ試験から、トリグリセリド(TG)型魚油、またはエチルエステル(EE)型魚油が、乳化グミ組成物を形成できることが分かっている。しかしながら、水相成分の重量パーセントが変わると、好ましい固さのグミ組成物が形成されないことがあった。そこで、水相成分の相互作用が、グミの固化、グミの硬度、水分活性、Brix、pH、および熱安定性に及ぼす影響を把握するために、混合に係る実験計画(DOE1)を考案した。
【0010】
A. 実験計画1
DOE1では、グミ組成物の油相は、魚油(トリグリセリド)、マスキングフレーバー、レモンフレーバー、および任意でシリカから構成された。シリカ以外の油相の各成分または各構成要素は、表2の成分#7~#9として記載されている、魚油10.03%、マスキングフレーバー0.5%、レモンフレーバー1.22%の配合で、重量パーセントを同じに保っている。水相では、最大6種類の成分または構成要素を変数として扱った。シリカ(油相)と水相成分の重量%の変数範囲を表1に記載する。
【表1】
【0011】
33のDOEバッチを設計、実施し、グミの固化時間、硬度、水分活性、Brix、pHおよび熱安定性を試験した。表2に、乳化グミ組成物を形成し得るDOE1バッチの代表的な2つの配合と、2つの配合に従って製造したサンプルの物性を示す(「Maltidex」は登録商標)。
【0012】
DOE1バッチ#A1では、最初にCaframo製オーバーヘッドミキサーを用いて約90℃の水で15分間ゼラチンを水和し、その後マルチトール、砂糖、キシリトールを混合しながら添加して溶解させた。油相成分は、表2の成分#7~#9である。油相成分を先ず混合してから、Silverson製L5M-A高せん断ミキサーを用いて、70℃、混合速度3000回転/分(rpm)~6000rpmの条件で、水相に添加した。その後、最終的なサンプルをシリコーン型に堆積させた。
【0013】
DOE1バッチ#A2では、水相バッチの手順はバッチ#A1と同じである。ただし、油相は、疎水性フュームドシリカ(成分#6、Aerosil R972 Pharma)(「Aerosil」は登録商標)0.5重量%を含み、この疎水性フュームドシリカは、Silverson製L5M-A高せん断ミキサーを用いて、先ず油相に添加し、その後、この油相を、70℃、混合速度約6000rpmの条件で、水相に添加した。
【0014】
油相と水相を混合した後、グミ組成物サンプルをシリコーン型に堆積させて固化させた。シリコーン型の裏面からグミ組成物サンプルを押し出し、サンプルの全ての面が型から分離したことを確認することで除去時間とした。グミ組成物サンプルを型から取り出した後、Brix(ブリックス屈折計)、水分活性(Aqualab製4TE水分活性計)、および硬度(Stable Micro Systems製テクスチャーアナライザー)の物性試験を行うまで、24時間室温で放置した。硬度測定は、TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル×2.0センチメートルの正方形形状で厚さ0.9センチメートル)に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込むことによって行った。その最大力を硬度として測定した。5個のサンプルをテストし、その平均硬度を使用した。熱安定性試験では、サンプルをボトルに詰め、40℃/相対湿度75%(RH%)の安定室に入れた。7日後のサンプル外観を、安定室からサンプルを取り出し、室温に戻した後に評価した。
【表2】
【0015】
グミまたはガム組成物が十分に固化するかどうかは、変数として特定された成分または構成要素に依存する。DOEモデリングにより、水、構造剤、および、マルチトールシロップと砂糖との相互作用が、固化に最も良い影響を与え、シリカ(油相中の)およびマルチトールシロップが、固化に最も悪い影響を与えることが分かった。例えば、
図1および
図2は、水相中の構造剤(ゼラチン)の重量%を、5.87重量%(wt%)から7.52重量%に増やすと、固化または所望の時間内に固化するグミ製剤の率が大幅に増加することを示す。グミ組成物が固化するかどうかについては、グミ組成物を半分に切って、中央に固い構造物が形成されているかどうかで評価した。
【0016】
グミまたはガム組成物が十分な硬度を持つかどうかも、変数として特定された成分または構成要素に依存する。DOEモデリングにより、構造剤およびシリカが最も硬度を上げる傾向にあり、次いでマルチトールシロップ、水等が続く。マルチトールシロップとキシリトールとの相互作用は、硬度を低下させる傾向にある。
【0017】
DOE1の解析で構築したモデルを用いて、様々な成分に関連する各物性の、目標とする物性範囲のための配合を考案した。表3は、DOE1の解析に基づく目標配合範囲を示したものである。目標配合は、Brixの範囲が77~83、例えば78~81、水分活性が0.73未満、例えば0.70未満、除去時間が10分~30分、および、TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル×2.0センチメートルの正方形形状で厚さ0.9センチメートル)に、上面から5ミリメートル(mm)まで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの硬度が150gForceより大きく、例えば150gForce~600gForceの特性を備えるものである。目標配合範囲に従って形成されたグミ組成物は、40℃/75%RHで少なくとも7日間の熱安定性が良好であると共に、良好な固さおよび咀嚼性を有する。
【表3】
【0018】
表4は、表3の目標配合に従って製造したグミ組成物の配合例を2つ示したものである。2つの配合を用いて製造したグミ組成物サンプルの物性を表の下部に示す。
【表4】
【0019】
グミ組成物サンプルを堆積させた直後に、サンプルを堆積させたシリコーン型の裏面からサンプルを押し出し、サンプルの全ての面が型から分離したことを確認することで、表4に示す除去時間とした。グミ組成物サンプルを型から取り出した後、Brix(ブリックス屈折計)、水分活性(Aqualab製4TE水分活性計)、および硬度(Stable Micro Systems製テクスチャーアナライザー)の物性試験を行うまで、24時間室温で放置した。硬度測定は、TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル×2.0センチメートルの正方形形状で厚さ0.9センチメートル)に、正方形の上面から5ミリメートル(mm)まで、0.5mm/秒の速度で押し込むことによって行った。その最大力を硬度として測定した。5個のサンプルをテストし、その平均硬度を使用した。熱安定性試験では、サンプルをボトルに詰め、40℃/相対湿度75%(RH%)の安定室に入れた。7日後のサンプル外観を、安定室からサンプルを取り出し、室温に戻した後に評価した。評価結果を表4に示す。
【0020】
DOE1の成果は、また、増加した(以前の配合で使用した10重量%に対して増加した)レベルの魚油を有する魚油水中油型乳化グミ組成物を製造することにも使用された。20重量%および34重量%の魚油を含む配合と、それぞれの配合に従って製造したサンプルの物性を表5に示す。表5に示すように、油相の重量%が増加すると、最終的なグミ組成物の硬度が低下する傾向にある。
【表5】
【0021】
トリグリセリド(TG)型の魚油およびエチルエステル(EE)型の魚油の両方共に魚油乳化グミ組成物とすることができる。表6は、約25重量%の魚油(トリグリセリドまたはエチルエステル)を含む水中油型乳化グミ組成物の代表的な配合を示している。また、表6には、代表的な配合に従って製造したサンプル組成物の物性を、それぞれの型から取り出して2日後に測定した結果を示す。
【表6】
【0022】
DOE1の成果により、例えばペクチン、寒天および/またはローカストビーンガムのような、ゼラチン以外の構造剤を用いた魚油乳化グミ製剤に関する知見を得ることができた。寒天、ローカストビーンガムを含み、ゼラチンを含むおよび含まない、魚油水中油型乳化グミ組成物の代表的な配合と、その配合に従って製造したサンプルの物性を表7に示す。
【表7】
【0023】
表7に示した配合によるグミ組成物は、以下のように調製した。構造剤である寒天およびローカストビーンガムは、砂糖の一部と均一になるまで混合した。マルチトールシロップを別途水に加え、Caframo製オーバーヘッドミキサーで混合した。その後、水とマルチトールシロップの混合物に、構造剤と砂糖のブレンドを、混合しながら加えた。その後、95℃まで10分間昇温した。バッチ#E1については、残りの砂糖を混合しながら添加し、95℃で15分間混合を継続した。その後、80℃まで温度を下げた。バッチ#E2については、ゼラチンを添加し、95℃で10分間混合して水和させた。それ以外の手順はバッチ#E1と同じである。油相は、Silverson製L5M-Aミキサーを用いて、魚油とAerosil R972を混合し、混合油が均一に分散されるまで混合しながらマスキングフレーバーとレモンフレーバーを添加した。油相と水相を混合するために、80℃の水相に油相を加え、Silverson製L5M-Aで約6000rpmの混合速度で5分間均質化した。その後、最終的なサンプルをシリコーン型に堆積した。物性は、グミ組成物を型から取り出して24時間後に測定した。
【0024】
研究によれば、魚油、特に多価不飽和脂肪酸を多く含む魚油は、酸化しやすい傾向にあり得る。魚油を含む水中油型乳化グミ組成物にビタミンE(d-αトコフェロール)等の酸化防止剤を添加すると、存在する魚油の酸化を抑制できることが知られている。表8は、魚油およびビタミンEを含む代表的な乳化グミ組成物の配合を示し、また、その配合に従って製造したサンプルの物性を示す。
【表8】
【0025】
表8より、グミ組成物サンプルは、Brixが77%~83%の範囲、水分活性が0.73未満、除去時間が30分以下、TA-8Aプローブをサンプル(2.0センチメートル×2.0センチメートルの正方形形状で厚さ0.9センチメートル)に、正方形の上面から5ミリメートル(mm)まで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの最大力として測定した硬度が150gForceより大きいという特性を示す。バッチ#F2は、45.05重量パーセントの魚油で製造され、高レベルの魚油が水中油型乳化グミ組成物中に存在することができ、このグミ組成物は、比較的速い除去時間、良好な食感、良好な熱安定性および心地よい味を有する製品を製造するための目標物性パラメータを満たし得ることが実証された。また、表8は、また、TA-25円筒型プローブ(直径2インチ、高さ20mm)を用いた硬度測定結果も示す。サンプルの表面からプローブで毎秒0.5mmの速度でサンプルの元の高さの70%の距離まで圧縮し、同じ速度で元の位置に戻し、その後1秒間休止後、同じ条件で圧縮と復帰を繰り返すことで試験を行った。
図3は、バッチ#F1の2回の圧縮における、圧縮力-対-時間のグラフである。最初のピークの最大力を硬度として測定した。また、TA-25プローブの2回の圧縮を基にして、グミ組成物の凝集性、ばね性、および咀嚼性を算出することもできる。凝集性は、2番目のピークの面積を最初のピークで除したもの(
図3)、ばね性は、2番目ピークの圧縮距離を最初のピークの圧縮距離で除したもの(
図3)、咀嚼性は、硬度、凝集性、およびばね性の積(硬度×凝集性×ばね性)として算出される。魚油水中油型乳化グミ組成物の場合、上記の試験によるTA-25を用いた目標硬度は、300gForce~1500gForce、例えば300gForce~1300gForce、例えば300gForce~1000gForce、および例えば400gForce~900gForceである。目標とする咀嚼性は、300~1500、例えば300~1200、例えば300~900、および例えば400~800である。魚油水中油型エマルジョンの場合、TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル(cm)×2.0センチメートル(cm)の正方形形状で厚さ0.9cm)に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの目標硬度は、150gForce~600gForceである。除去時間の目標は、10分~30分である。本発明の魚油水中油型乳化グミ組成物は、40℃で少なくとも7日間安定であり、良好な食感、良好な固さ、および良好な熱安定性を有することができる。
【0026】
II. ミネラル乳化グミ組成物
マグネシウム、カルシウムおよび他のミネラルといった特定のミネラルは、人間の体を支える重要な補助栄養素である。ミネラルは、例えば、骨、神経、筋肉、および心臓の機能を支える。特定のミネラル(複数可)の1日の推奨摂取量を、1または複数の錠剤、カプセル、グミ組成物で投与することが困難な場合がある。例えば、ミネラルのマグネシウムは、1日の推奨摂取量が420ミリグラム(mg)で、現在のグミ組成物製品は、一般的に、3グラム(g)から5gの重量の組成物で、80mgから90mgのオーダーで含むことができる。そのため、マグネシウムの1日の推奨摂取量を満たすには、1日あたり5~6粒のグミ組成物を摂取する必要がある。
【0027】
水中油型乳化グミ組成物は、先ず、1または複数のミネラルを油相に懸濁させ、次いで、それを水相に均一に分散させることによって、グミまたはガム組成物に多量のミネラル(複数可)を取り込めることが見出された。良好な食感、心地よい味、および良好な熱安定性を達成するため、実験計画(DOE2およびDOE3)によって、高ミネラル水中油型乳化グミ組成物(例えば、20重量%以上のミネラル(複数可)含有量)が開発された。
【0028】
水中油型乳化グミまたはガム組成物に好適なミネラルの例としては、塩の形態のミネラルが挙げられる。例えば、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、または鉄のクエン酸塩、炭酸塩、または硫酸塩が挙げられる。塩の形態としては、代表的な粒径として、例えば80ミクロン以下のような120ミクロン未満のオーダーのサイズの固体(例えば、粉末)の形態であってよい。ゼラチン、ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、およびそれらの組み合わせのような異なる構造剤に対する、マグネシウム、カルシウムおよびそれらの組み合わせの配合および手順が開発された。良好な食感、心地よい味、および良好な熱安定性を示す水中油型乳化グミ組成物に組み込むことができるミネラルの量は、一例として20重量%~40重量%の量であり、例えば、25重量%、27重量%、30重量%、および35重量%である。
【0029】
多量のミネラル含有量を組み込んだ水中油型乳化グミ組成物は、ゼラチン、ペクチン、ローカストビーンガム、寒天の構造剤、またはこれらの構造剤の組み合わせを用いて形成することができる。グミまたはガム組成物の油相は、レシチン、一例としてω-3脂肪酸、ω-6脂肪酸、ω-9脂肪酸のような多価不飽和脂肪酸、または、一例として脂肪酸エステル(例えばリン脂質、モノ-、ジ-もしくはトリ-グリセリド、および低級アルキルエステル)の1種もしくは混合物のような植物油、を含むことができる。このような材料は、天然、合成または半合成であってもよい。植物由来の油および海洋由来の油(一例として、植物種子(例えば、ヒマワリ油)、藻類、魚(特に油性魚)、微生物、および海洋無脊椎動物(例えば、オキアミ)、から得られる油)としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはエイコサペンタエン酸(EPA)、トリグリセリド、あるいはエチルエステルが特に好適に使用される。また、グミまたはガム組成物の油相は、一例としてココナッツ油もしくはパーム核油のような中鎖トリグリセリド(MCT)油も含むことができる。
【0030】
A. マグネシウム乳化グミ配合
表9は、マグネシウム水中油型乳化グミの2つの配合例を示す。バッチ#G1は、構造剤としてゼラチンを使用し、バッチ#G2は、構造剤としてペクチンを使用した。いずれの例においても、水相成分は、水、構造剤(ゼラチンまたはペクチン)、砂糖、および糖アルコール(マルチトール)である。水相と油相を別々に調製した。バッチ#G1については、先ずCaframo製オーバーヘッドミキサーを用いてゼラチンを約90℃で15分間水和させ、次いでマルチトールと砂糖を約90~95℃で混合しながら添加して溶解させた。バッチ#G2については、先ずペクチンを約90℃で15分間水和させ、次いでマルチトールシロップと砂糖を添加した。その後、水相混合物を約100℃~105℃に加熱し、砂糖を完全に溶解して透明な溶液とした。油相の調製には、先ずCaframo製のオーバーヘッドミキサーを用いて、クエン酸マグネシウム粒子を、中鎖トリグリセリド(MCT)油とレシチンに、懸濁させた。バッチ#G1の油相と水相の混合には、先ずゼラチンベースの水相に50%のクエン酸溶液を約70℃で添加し、Silverson製L5M-Aミキサーを用いて、約5000rpm~6000rpmの混合速度で混合しながら油相を添加した。バッチ#G2については、先ず水相に50%のクエン酸溶液を約90℃で添加し、Silverson製L5M-Aミキサーを用いて、約6000rpmの混合速度で油相を添加した。その後、最終的なサンプルをシリコーン型に堆積し、固化させた。
【表9】
【0031】
表10に、上記マグネシウム水中油型乳化グミ組成物バッチ#G2と、現在市販されているグミ組成物製品との比較を示す。比較の結果、水中油型乳化グミ組成物は、特定の場合に、グミ組成物中のクエン酸マグネシウムの粉末重量濃度を少なくとも50%増加させ得ることが分かった。
【表10】
【0032】
B. カルシウム乳化グミ配合
表11に、構造剤を変えたカルシウム水中油型乳化グミ組成物の配合例を挙げ、その配合例に従って製造したサンプルの物性を示す。サンプルを調製するラボでのバッチ配合の手順は、上記のマグネシウム乳化グミと同様に行った。表12に、カルシウム水中油型乳化グミ組成物と、現在市販されているグミ組成物製品との比較を示す。表12より、乳化グミの本形態は、現在市販されているグミ製品よりも約2倍の量のカルシウムを製品に配合できることが分かる。
【表11】
【表12】
【0033】
C. カルシウムおよびマグネシウムのグミ組成物配合
1) 構造剤を変えた場合の配合
表13に、構造剤を変えたカルシウムおよびマグネシウムの水中油型乳化グミ組成物の配合例と、その配合例に従って製造したサンプルの特性を示す。ラボでのバッチ配合の手順は、上記のカルシウムまたはマグネシウム乳化グミ組成物と同様に行った。これらの実施例において、寒天とローカストビーンガムを併用した乳化グミ組成物が最もしっかりとした心地よい食感を与えることが見出された。
【表13】
【0034】
2) 寒天、ローカストビーンガムベース配合
第2のDOE(DOE2)は、マグネシウムおよびカルシウムの水中油型乳化グミ組成物に向けられたものである。水相は連続相で、構造剤として寒天およびローカストビーンガム、水、砂糖(固体)、マルチトールシロップ、およびチョコレートフレーバーを含む。油相は、キャリアとしてMCTオイル、クエン酸マグネシウム粉末、リン酸三カルシウム粉末、レシチン、およびココアパウダーを含む。
【0035】
DOE2は、水相成分や、油相と水相の比率が、グミ組成物の固化の有無や、その他の物性にどのように影響するかを理解するために設計された。DOE2において、構造剤(寒天1.0重量%、ローカストビーンガム0.5重量%)、フレーバー(ココアパウダー1.25重量%(oil please)、チョコレートフレーバー0.4重量%(水相))、ミネラル(クエン酸マグネシウム粉末18.97重量%、およびリン酸三カルシウム粉末6.77重量%)を一定とした。DOE2配合の他の5成分(水、砂糖、糖アルコール(マルチトール)、MCT、およびレシチン)は、表14に示す重量%範囲で変数として扱った。
【表14】
【0036】
25種類のDOE2バッチを設計、実施し、グミ除去時間、硬度、水分活性、Brix、pHおよび熱安定性を試験した。表15に、乳化グミを形成し得るDOEバッチの2つの配合例と、その配合に従って製造したサンプルの物性を示す。
【0037】
DOE2バッチ#J1および#J2では、少量の砂糖に寒天、ローカストビーンガムを、また、水とマルチトールシロップを、別々に混合した。その後Caframo製オーバーヘッドミキサーを用いて、砂糖と構造剤のブレンドを、水とマルチトールシロップに徐々に加えた。混合しながらバッチ温度を約90℃までゆっくりと上昇させ、その後構造剤を15分間水和させた。残りの砂糖を、完全に溶けるまで徐々に加えた。クエン酸マグネシウムとリン酸三カルシウム粉末を室温で油相に懸濁させるために、先ずMCTオイルとレシチンを、Caframo製オーバーヘッドミキサーを用いて約200rpmの速度で混合した。クエン酸マグネシウム粉末とリン酸三カルシウム粉末を、600rpmまで攪拌速度を上げながら添加した。最後に、ココアパウダーを加えた。油相と水相を混合するために、先ず70℃の水相にチョコレートフレーバーを、Silverson製L5M-A高せん断ミキサーを用いて6000rpmで添加し、次に油相を添加して約7000rpmで約3分間~約5分間混合した。その後、サンプルを固化させるためにシリコーン型に堆積した。
【0038】
シリコーン型にグミ組成物を堆積させた直後に、シリコーン型の裏面からグミ組成物サンプルを押し出し、サンプルの全ての面が型から分離したことを確認することで、除去時間とした。グミ組成物サンプルを型から取り出した後、24時間室内の空気中に放置した。静置期間終了後、Brix(ブリックス屈折計)、水分活性(Aqualab製4TE水分活性計)、硬度(Stable Micro Systems製テクスチャーアナライザー)について、物性試験を行った。硬度測定は、TA-8Aプローブを用いて、サンプルに、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込むことにより行った。その最大力を硬度として測定した。5個のサンプルをテストし、その平均硬度を使用した。熱安定性試験では、サンプルをボトルに詰め、40℃/相対湿度75%(RH%)の安定室に入れた。7日後のサンプルの外観を、安定室からサンプルを取り出し、室温に戻した後に評価した。
【表15】
【0039】
マグネシウムおよびカルシウムの水中油型乳化グミ組成物が固化するか否かは、各可変成分によって異なる。水、砂糖、およびマルチトールシロップは固化に良い影響を与え、MCTオイルおよびレシチンは固化に悪い影響を与え、レシチンが最も悪い影響を与えると判定された。
図4および
図5は、組成物中の水、砂糖、およびマルチトールシロップの量を変え、MCTオイルおよびレシチンを一定とした場合のグミ組成物の固化率を示したものである。
図4では、MCTオイルの量が21.56重量%、
図5では、MCTオイルが26重量%である。レシチンは、
図4、
図5共に0.997重量%である。確率が1は、グミ組成物が固化することを示す。
図4および
図5は、MCTの重量%を21.56重量%から26重量%に増加させると、グミ組成物の固化率が大幅に低下する代表例である。
【0040】
DOE2の配合における可変成分は、グミの硬度に直線的に影響すると判断された。配合中の水の量が最も硬度を上げると判定され、次いでMCT、マルチトールシロップ、砂糖の順となった。レシチンの量を増やすと、硬度が下がると判定された。
【0041】
マグネシウムおよびカルシウムの水中油型乳化グミ組成物の目標配合を形成するため、DOE2のモデリングを目標基準に基づいて実施した。目標基準は、除去時間が10~30分、硬度が150gForce以上(TA-8Aプローブを用いて、サンプルに、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだ場合)、水分活性が0.7300未満、40℃/75%RHのチャンバで7日後でもグミ組成物の形状が変わらないこととした。DOE2のモデリングをテストするために、2つの確認バッチを実施した。その配合およびその配合に従って製造したサンプルの物性を表16に示す。
【表16】
【0042】
バッチ#K1およびK2で示される乳化グミ組成物は、比較的多量のカルシウムおよびマグネシウムを含有するにもかかわらず、最初に噛んだ時、しっかりとしたさっぱりとした食感を有し、少量の粒状または粉っぽい口当たりを残すのみであった。
【0043】
カルシウム/マグネシウム乳化グミ組成物の咀嚼性を改良するために、第3の実験計画(DOE3)を設計した。DOE2の成果から、油相としては、MCTオイル量(20.55重量%)とレシチン量(0.45重量%)を固定した。水相としては、砂糖量(20.5重量%)とマルチトール量(17.8重量%)を固定した。DOE3では、寒天とローカストビーンガムに加え、ゼラチンを構造剤として添加した。変数は、水、ゼラチン、寒天、およびローカストビーンガムにおいて、表17に示す重量%範囲とした。
【表17】
【0044】
DOE3では、グミ組成物が固化するかどうかは、水の量と3種類の構造剤(ゼラチン、寒天、およびローカストビーンガム)のそれぞれの量に依存することが分かった。
図6は、グミ組成物の固化率を0から1まで3次元的にプロットしたものであり、1が最も固化率が高いことを示している。
図6の(1)では、ローカストビーンガムの量を0.361重量%に一定にして、水、ゼラチン、および寒天の量を変化させたものである。
図6の(2)では、ローカストビーンガムの量を0.127重量%に固定し、水、ゼラチン、および寒天の量を変化させたものである。
図6の(3)では、ゼラチンの量を2.00重量%に固定し、水、ローカストビーンガム、および寒天の量を変化させたものである。
図6の(4)では、ゼラチンの量を2.661重量%に固定し、水、ローカストビーンガム、および寒天の量を変化させたものである。
図6より、ゼラチンおよび水の量は固化にプラスに働き、ローカストビーンガムおよび寒天の量はマイナスに働く傾向があることが分かる。
【0045】
また、DOE3は、グミ組成物の硬度が、水の量と3種類の構造剤(ゼラチン、寒天、およびローカストビーンガム)のそれぞれの量に依存していることを示している。
図7は、ローカストビーンガム量を0.294重量%に維持し、水、寒天、およびゼラチンの量を変化させた場合の硬度の3次元プロット図である。硬度分析には、TA-25円筒型プローブ(直径2インチ、高さ20mm)を用いて、2回、圧縮試験を行った。サンプルの表面からプローブで毎秒0.5mmの速度でサンプルの元の高さの70%の距離まで圧縮し、同じ速度で元の位置に戻し、その後1秒間休止後、同じ条件で圧縮と復帰を繰り返すことで試験を行った。
図8は、2回の圧縮を行った場合の硬度-対-時間のプロットである。最初のピークの最大力を硬度として測定した。寒天の量が最も硬度に影響することが分かった。
【0046】
DOE3では、グミ組成物の咀嚼性についても検討した。咀嚼性解析では、TA-25プローブの圧縮量を用いて、凝集性(2番目の圧縮ピークの面積を最初のピークで除したもの)とばね性(2番目のピークの圧縮距離を最初のピークで除したもの)を測定した。そして、咀嚼性は、硬度、凝集性、およびばね性の積(硬度×凝集性×ばね性)として算出した。咀嚼性も、水の量と3種類の構造剤(ゼラチン、寒天、およびローカストビーンガム)のそれぞれの量に依存することが示された。
図9は、組成物中の水の量を一定にして、各構造剤の量を変化させた場合の咀嚼性の2つの3次元プロット図である。
図9の(1)において、水の量は10.0重量%であり、
図9の(2)において、水の量は9.0重量%であった。
図9のプロット図は、水が10重量%の場合、グミ組成物の咀嚼性が800gForceを超えない一方、水の量を9.0重量%に減少させた場合、3種類の構造剤の量に応じて咀嚼性が600gForceから1500gForceの間で変化し得ることを示す。
【0047】
表18は、寒天、ローカストビーンガムおよびゼラチンの複合構造剤を有するカルシウムおよびマグネシウムを含む乳化グミ配合の代表例を示す。また、その乳化グミの配合に従って製造したサンプルの物性も示す。
【表18】
【0048】
ミネラル(カルシウム、マグネシウム等)の粉末状の成分を含む乳化グミ組成物サンプルの食感を改良するために、組成物にグリセリンを添加した。所定量のグリセリンを加えることで、グミ組成物の水分活性も低下することが示された。表19は、寒天、ローカストビーンガムおよびゼラチンの複合構造剤を有するカルシウムおよびマグネシウムを含む乳化グミ製剤の代表例である。また、乳化グミの配合に従って作られたサンプルの物性も示す。
【表19】
【0049】
ハーブや植物性の栄養補助食品は、長年にわたり健康増進のために使用されてきた。水中油型乳化グミ組成物は、先ずハーブ(複数可)を油相に懸濁させ、次に水相に均一に分散させることにより、グミまたはガム組成物に多量のハーブを取り込むことができることが見出された。DOE2とDOE3のモデリングの結果は、ハーブのまたは植物性のグミ組成物の配合に有効であることを証明した。表20は、ウコン抽出物を活性剤として含むグミ組成物の配合を示し、その配合に従って製造されたグミ組成物サンプルの得られた特性を示す。使用したウコンエキスが粉末であるため、グリセリンも配合した。
【表20】
【0050】
表21は、クルクミン(ウコン抽出物)水中油型乳化グミ組成物と、現在市販されているグミ組成物製品との比較である。表21より、乳化グミの本形態は、現在市販されているグミ製品よりも2倍を超える量のクルクミンを製品に配合できることが分かる。
【表21】
【0051】
15重量%以上のミネラルおよび/またはハーブの量を含む水中油型乳化グミ組成物の目標物性は、例えば78~81のような77~83のBrix、および、例えば0.70未満のような0.73未満の水分活性を含む。TA-8Aプローブを用いて、サンプル(2.0センチメートル(cm)×2.0センチメートル(cm)の正方形形状で厚さ0.9cm)に、上面から5mmまで、0.5mm/秒の速度で押し込んだときの目標硬度は、150gForce~600gForceである。グミ組成物サンプルの表面からTA-25円筒型プローブで毎秒0.5mmでサンプルの元の高さの70%の距離まで、別途2回圧縮したときの最大力として測定した目標硬度は、800gForce~3000gForce、例えば1000gForce~2500gForceである。上記のような硬度、凝集性、およびばね性の積(硬度×凝集性×ばね性)として算出される目標咀嚼性は、600gForce~900gForce、例えば650gForce~900gForceである。目標除去時間は、10分~30分である。所定量のミネラルおよび/またはハーブを含む水中油型乳化グミ組成物は、40℃で少なくとも7日間安定であり、良好な食感、良好な固さおよび良好な熱安定性を有することができる。
【0052】
III. 魚油含有ミネラル乳化グミ
セクションIでは、有効成分(食用または栄養用活性剤)および油源として魚油を用いて、水中油型乳化グミ組成物を形成した。セクションIIでは、有効成分としてミネラルまたはハーブを用いて、水中油型乳化グミ組成物を形成した。このセクションでは、魚油と、ミネラルおよび/またはハーブとの両方の活性剤を水中油型乳化グミ組成物に配合する。表22は、魚油とカルシウムとマグネシウムを含む乳化グミ組成物の配合を示し、その配合に従って製造したサンプル組成物の物性を示すものである。
【表22】
【0053】
発明の実施の態様
態様1
水相中油相の固化乳化物を含むグミ組成物であって、前記水相は構造剤を含み、前記グミ組成物は、150gForce以上(例えば、150gForce~600gForce)の硬度および0.73未満の水分活性、例えば、150gForce~600gForceの硬度で0.70未満のような0.73未満の水分活性、ならびに77~83のBrixまたは78~81のBrixを有するグミ組成物。
【0054】
態様2
前記油相は魚油を含む、態様1に記載のグミ組成物。
【0055】
態様3
前記魚油は、前記組成物の少なくとも10重量%の量で存在する、態様2に記載のグミ組成物。
【0056】
態様4
前記魚油は、前記組成物の10重量%~50重量%、例えば20重量%、34重量%、45重量%の量で存在する、態様2または態様3に記載のグミ組成物。
【0057】
態様5
前記魚油はトリグリセリド型の魚油を含む、態様2~4のいずれかに記載のグミ組成物。
【0058】
態様6
前記魚油はエステル型の魚油を含む、態様2~5のいずれかに記載のグミ組成物。
【0059】
態様7
所定量の例えばビタミンEのような抗酸化剤をさらに含む、態様2~6のいずれかに記載のグミ組成物。
【0060】
態様8
前記構造剤はゼラチンを含む、態様1~7のいずれかに記載のグミ組成物。
【0061】
態様9
前記構造剤は、ローカストビーンガムおよび寒天の少なくとも一方、または、ゼラチン、ローカストビーンガムおよび寒天の組み合わせを含む、態様1~8のいずれかに記載のグミ組成物。
【0062】
態様10
前記油相は、一例として前記組成物の少なくとも15重量%の量のミネラル塩またはハーブ、例えば少なくとも18重量%または20重量%以上の量のような、ミネラル塩またはハーブを含む、態様1~9のいずれかに記載のグミ組成物。
【0063】
態様11
前記油相はレシチンを含む、態様10に記載のグミ組成物。
【0064】
態様12
前記ミネラル塩は、所定量のカルシウム塩およびマグネシウム塩をそれぞれ含む、態様10または態様11に記載のグミ組成物。
【0065】
態様13
所定量のグリセリンをさらに含む、態様10~12のいずれかに記載のグミ組成物。
【0066】
態様14
水相中油相の固化乳化物を含むグミ組成物を調整することを含む方法であって、前記グミ組成物は、150gForce以上の硬度および0.73未満の水分活性、例えば、150gForce~600gForceの硬度で0.70未満のような0.73未満の水分活性、ならびに77~83のBrixを有する、方法。
【0067】
態様15
前記油相は魚油を含み、前記魚油は前記組成物の少なくとも10重量%の量で存在する、態様14に記載の方法。
【0068】
態様16
前記油相は魚油を含み、前記魚油は前記組成物の10重量%~50重量%、例えば20重量%、34重量%、42.5重量%、45重量%の量で存在する、態様14または態様15に記載の方法。
【0069】
態様17
前記グミ組成物はビタミンEを含む、態様14~16のいずれかに記載の方法。
【0070】
態様18
構造剤はゼラチンを含む、態様14~17のいずれかに記載の方法。
【0071】
態様19
構造剤は、ローカストビーンガムおよび寒天の少なくとも一方、または、ゼラチン、ローカストビーンガムおよび寒天の組み合わせを含む、態様14~18のいずれかに記載の方法。
【0072】
態様20
前記グミ組成物は、一例として前記組成物の少なくとも15重量%の量のミネラル塩またはハーブ、例えば少なくとも18重量%または20重量%以上の量のような、ミネラル塩またはハーブを含む、態様14~19のいずれかに記載の方法。
【0073】
態様21
前記グミ組成物はレシチンを含む、態様14~20のいずれかに記載の方法。
【0074】
態様22
前記グミ組成物はグリセリンを含む、態様14~21のいずれかに記載の方法。
【0075】
態様23
硬度が150gForce以上、例えば150gForce~600gForce、および、水分活性が0.73未満、例えば0.70未満、であるグミ組成物の製造方法であって、水相中に油相を乳化することを含み、前記水相は構造剤を含み、型に乳化物を30分以下の固化時間で堆積させることを含む、方法。
【0076】
態様24
前記油相は魚油を含み、前記魚油は前記組成物の少なくとも10重量%の量で存在する、態様23に記載の方法。
【0077】
態様25
前記油相は魚油を含み、前記魚油は前記組成物の10重量%~50重量%、例えば20重量%、34重量%、42.5重量%、45重量%の量で存在する、態様23または態様24に記載の方法。
【0078】
態様26
構造剤はゼラチンを含む、態様23~25のいずれかに記載の方法。
【0079】
態様27
前記構造剤は、ローカストビーンガムおよび寒天の少なくとも一方、または、ゼラチン、ローカストビーンガムおよび寒天の組み合わせを含む、態様23~26のいずれかに記載の方法。
【0080】
態様28
前記水相中で前記油相を乳化する前に、前記油相中に、一例として前記組成物の少なくとも15重量%の量のミネラル塩またはハーブ、例えば少なくとも18重量%または20重量%以上の量のような、ミネラル塩またはハーブを懸濁させることを含む、態様23~27のいずれかに記載の方法。
【0081】
態様29
前記ミネラル塩は、カルシウム塩およびマグネシウム塩の少なくとも1つを含む、態様28に記載の方法。
【0082】
態様30
前記油相はレシチンを含む、態様23~28のいずれかに記載の方法。
【0083】
本発明の特定の態様を詳細に説明したが、それらの詳細に対する様々な修正および代替が、本開示の全体的な教示に照らして開発され得ることは、当業者には理解されよう。したがって、開示された特定の構成は、例示のみであって、添付の特許請求の範囲および態様の全ての広がり、ならびにその全ての均等物を与えられるべき本発明の範囲に関して、限定するものではないことを意図している。