(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】自動車の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法ならびに自動車
(51)【国際特許分類】
B60R 21/015 20060101AFI20240719BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20240719BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20240719BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B60R21/015 310
B60R21/00 340
G01V3/12 A
G08G1/16 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131883
(22)【出願日】2023-08-14
【審査請求日】2023-09-05
(31)【優先権主張番号】10 2022 208 460.8
(32)【優先日】2022-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベルント エッテ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ザッハー
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-8261(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063490(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0348406(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0359774(US,A1)
【文献】国際公開第2021/220190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00
G01V 3/12
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(10)の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法であって、
前記自動車(10)は、送受信器と、第1のUWBアンテナ(14)と、第2のUWBアンテナ(16)とを備えた無線システムおよび前記無線システムに接続されている制御ユニット(12)を有しており、
前記自動車(10)の動作中に、前記第1のUWBアンテナ(14)および前記第2のUWBアンテナ(16)を使用して、チャネルインパルス応答(CIR)測定に基づく方法を実施するように前記無線システムを駆動制御するステップと、
前記CIR測定の結果に基づいて前記乗員の前記位置および生体パラメータを求めるステップと、
を含んでいる方法において、
前記自動車(10)の事故を検出するステップと、
前記事故の後、前記第1のUWBアンテナ(14)および前記第2のUWBアンテナ(16)を使用して、CIR測定に基づく前記方法を新たに実施するように前記無線システムを駆動制御するステップと、
前記乗員の前記位置および前記生体パラメータを、新たな前記CIR測定の結果に基づいて求めるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自動車(10)の前記乗員の、座席が識別される細かさの認識を、前記乗員の、前記事故の前の求められた前記位置および前記事故の後の求められた前記位置に基づいて行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記事故の前の、前記乗員の求められた前記位置および/または前記生体パラメータを、前記事故の後の、前記乗員の求められた前記位置および/または前記生体パラメータと比較するステップをさらに有している、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記無線システムを、前記比較の結果に基づいて、緊急信号を車両周辺環境に送出するように駆動制御し、
前記緊急信号は、前記事故の前の、前記乗員の求められた前記位置および/または求められた前記生体パラメータと、前記事故の後の、前記乗員の求められた前記位置および/または求められた前記生体パラメータとを含んでいる、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第1のUWBアンテナ(14)および前記第2のUWBアンテナ(16)は、さらに、Bluetooth無線信号を送信および受信するように構成されており、
前記緊急信号を、UWB無線信号および/またはBluetooth無線信号として、前記第1のUWBアンテナ(14)および/または前記第2のアンテナ(16)を使用して送出するように前記無線システムを駆動制御する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記緊急信号は、前記自動車(10)に関する一般的な情報を含んでいる、請求項
4記載の方法。
【請求項7】
前記無線システムはさらに、前記緊急信号を伝送するNFCアンテナ(24,26)を含んでおり、
事故後に、前記緊急信号に必要な情報をメモリ内に格納する、
請求項
4記載の方法。
【請求項8】
2つの前記UWBアンテナ(14,16)のうちの少なくとも1つを使用して、UWBパルスを送信し、インパルス応答を受信するように前記無線システムを駆動制御するステップと、
前記乗員の前記位置および/または前記生体パラメータを、受信された前記インパルス応答の結果に基づいて求めるステップと、
をさらに有している、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
自動車(10)であって、
送受信器と、第1のUWBアンテナ(14)と、第2のUWBアンテナ(16)とを備えた無線システムと、
前記無線システムに接続されている制御ユニット(12)であって、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実施するように構成されている制御ユニット(12)と、
を有している、自動車(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法ならびに自動車に関し、この自動車は、無線システムと、この無線システムに接続されており、この無線システムを用いてこの方法を実施するように構成されている制御ユニットとを備えている。
【0002】
以前から、車両における乗員の安全性は、現代の開発の対象となっている。したがって、現代の車両は、事故の発生またはその事故結果を軽減する多数の安全システムを含んでいる。典型的な例はエアバッグである。エアバッグは、車両の席内の圧力センサの、座席が識別される細かさの情報を用いて、かつ車両内に組み込まれている慣性センサの検出されたセンサ値を介して、事故の際に身体的な重大な損傷から乗員をできるだけ守るために作動される。
【0003】
しかし、エアバッグが不意にトリガされることもある。たとえば、圧力センサ値に基づくだけでは、座席上の対象物と、座っている乗員とを区別することは困難である。したがって、乗員と対象物とを区別することができ、乗員の位置を車両においてできる限り正確に求めることができる内室センサシステムが必要であることが明らかであり、これによって、車両の安全システムは、自身の意図された目的を果たすためのできる限り正確な基礎を実現することができる。
【0004】
文献である国際公開第2021/220190号では、車両キャビンを監視するための方法およびシステムが提案され、これは、車両の天井内張り内のレーダーセンサアレイシステムを提案し、このレーダーセンサアレイシステムは、車両内の乗員からの反射された信号を検出する。データ分析を用いて、乗員の大きさ、乗員の位置、乗員の動きおよび乗員のバイタルサインが求められる。したがって、唯一のセンサ装置のみを用いて、車両キャビンの多機能的な監視を実行し、そうでない場合にはこのために必要になる多数のセンサを置き換えることが可能である。
【0005】
文献である独国特許出願公開第102020124444号明細書は、自動車の内室および/または外部領域を監視するための方法および監視装置に関する。このために、まず内室および/または外部領域に電磁ビームが放射され、物体で反射された電磁ビームが受け取られ、そこから、この物体の状態に関する情報が導出される。
【0006】
電磁ビームを用いた位置決定の別の例は、文献である独国特許出願公開第102021206343号明細書および独国特許出願公開第102020215852号明細書に記載されている。
【0007】
ここで、本発明の課題は、車両乗員の位置および生体パラメータを求めるための代替的な方法を開発することにある。
【0008】
本発明の課題は、独立請求項に記載された、自動車の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法ならびに自動車によって解決される。好ましい発展形態は、各関連する従属請求項の対象である。
【0009】
第1の態様は、自動車の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法に関する。この自動車は、送受信器と、第1のUltra-Wide-Band(UWB)アンテナと、第2のUWBアンテナとを備えた無線システムおよびこの無線システムに接続されている制御ユニットを含んでいる。第1のUWBアンテナおよび第2のUWBアンテナは、UWBパルスの送信および受信用に構成されている。制御ユニットは、自動車の動作中に、第1のUWBアンテナおよび第2のUWBアンテナを使用して、チャネルインパルス応答(CIR)測定に基づく方法を実施するように無線システムを駆動制御し、かつこのCIR測定の結果に基づいて乗員の位置および生体パラメータを求めるように構成されている。生体パラメータとは、人体の基本機能を反映し、生体機能の検査のために測定可能な尺度数である。これらの値はたとえば、心拍数、血圧、体温および/または呼吸頻度である。自動車の動作とは、自動車での走行中かつ/または自動車の点火装置がスイッチオンされている場合を意味する。
【0010】
送受信器は、特に、極めて大きな周波数範囲において、特に3.1GHz~10.6GHzの周波数範囲において、好ましくは3.5GHz~9GHzの周波数範囲において、特に好ましくは6GHz~8.5GHzの周波数範囲において、信号を送信および受信するように構成されている。ここで、UWBパルスの送信出力は低い。UWB信号の帯域幅は少なくとも500MHzであり、UWB送受信器は、好ましくは、0.5mW/-41.3dBm/MHzの間の送信出力を有する信号を送信するように構成されている。さらに好ましくは、送受信器は、規格IEEE802.15.4(特にUWB PHY層に関する章)に従って、かつ好ましくは規格IEEE802.15.4zに従って構成されている。このように大きな周波数範囲にわたって信号が散乱していることによって、UWB信号は他の無線信号を最小限にしか妨害しない。
【0011】
UWBパルスは時間的に強く局在化されているので、送信されたUWBパルスに対する、周辺環境の影響から生じたインパルス応答を備える受信されたUWBパルスから、UWBパルスの伝搬経路に関する情報を抽出することができる。周辺環境の影響は、UWBパルスを、自身の幾何学的に予め定められた経路から逸らす物理的な現象、たとえば屈折、回折、反射または減衰に基づいている。信号または信号パケットの伝搬時間が異なる伝搬経路に沿って異なっており、伝搬経路内または伝搬経路の近傍における物体の存在または不在に関連して変化することが明らかである。信号または信号パケットのインパルス形状も、伝搬経路内または伝搬経路の近傍における物体の存在または不在に関連して影響を受ける。したがって、この伝搬経路に沿って伝送された信号または信号パケットの測定に基づいて、有利には、伝搬経路内または伝搬経路の近傍における物体の存在または不在を推定することができる。
【0012】
有利には、(少なくとも)2つのUWBアンテナだけを使用して、CIR測定を用いて、周辺環境を空間分解式に走査することが可能である。UWBパルスを、これらのアンテナのうちの一方のアンテナを介して複数回送信することによって、かつ他方のアンテナによって受信されたインパルス応答に基づいて、周辺環境における変化、たとえば走査されるべき範囲内に新たに存在する物体を、時間的にずらされたインパルス応答を比較することによって、空間分解式にかつ時間分解式に視認できるようにすることができる。このようにして、走査されるべき範囲内に入って来た物体の検出を確実に行うことができる。特に、CIR測定を用いた、周辺環境の特に好ましい一定かつ/または反復的な走査は、この場合、走査されるべき範囲の相応の監視を可能にする。
【0013】
CIR測定は、たとえば、(少なくとも)2つのUWBアンテナ間で予め定義された信号または信号パケット(いわゆるテレグラム)を送信することを含んでいる。これらのUWBアンテナ間の信号または信号パケットの直接的な伝搬経路の他に、たとえば車両の内室または外室からの物体の反射を含む、多数の他の伝搬経路が存在している。UWBアンテナの十分な数および/または有利な配置に基づいて、これらの伝搬経路は、空間、たとえば車両内室または車両外室の大部分をカバーすることを可能にする。当然、多数のUWBアンテナ間でCIR測定を実行することができ、これによって、UWBアンテナの配置に関連して、相応の範囲、特に自動車の内室を走査することが可能になる。
【0014】
有利には、車両内の1人または複数人の乗員が、座席に正確にまたは座席が識別される細かさで認識され得るようにUWBアンテナが配置される。特に、車両の動作中に、車両の座席占有状態が認識される。さらに、CIR測定から、1人/複数人の乗員の動き、特に1人/複数人の乗員の呼吸による胸部の動きが解明され得る。好ましくは、2つのUWBアンテナは、車両のドア、好適には対向するドアに配置されている。たとえば、第1のUWBアンテナを車両の運転手席側ドアに配置することができ、第2のUWBアンテナを車両の助手席側ドアに配置することができる。これによって、車両における2つの前方の場所をCIR測定によって監視することができる。当然、これらのUWBアンテナが同様に車両の対向する後方の2つのドアに配置されていてよい、または付加的なUWBアンテナが車両の対向する後方の2つのドアに配置されていてよく、これによって後方の座席を監視することができる。しかし、UWBアンテナの任意の別の配置も可能である。好ましくは、多数のUWBアンテナが設けられている。これは、多数の乗員、多数の乗員の位置および生体パラメータが、CIR測定に基づいて認識および監視可能であるという利点を有している。さらに有利には、既に車両内に組み込まれているUWBアンテナを、本発明の方法のために使用することができる。現代の車両は、部分的にUWBアンテナを有しており、これらのUWBアンテナは車両内に、キーレスアクセスのために組み込まれている。したがって、既に組み込まれているUWBアンテナが多機能に使用され、コストが削減される。さらに、既に組み込まれているUWBアンテナの付加的な利用は、(部分的に)冗長的なアンテナが設けられているという利点を有している。特に事故シナリオでは、個々のUWBアンテナが故障している可能性があるが、冗長的なアンテナによって補償され得る。その限りでは、部分的にUWBアンテナが故障していても、CIR測定を実行し続けることができる。
【0015】
乗員の求められた位置データおよび運動データならびに求められた生体パラメータは、好ましくは、自動車の記憶ユニットに格納される。乗員の位置データおよび運動データならびに求められた生体パラメータを格納することによって、乗員個別のプロファイルが作成可能であり、これは、個々のケースにおいて、個別の、ひいては改良された判断を行うことを可能にするために、今後の状況において利用され得る。
【0016】
さらに、自動車の事故が検出されることが想定されている。(検出された)事故の後、第1のUWBアンテナおよび第2のUWBアンテナを使用して、CIR測定に基づく方法を新たに実施するように、無線システムの新たな駆動制御が行われる。乗員の位置および生体パラメータは、新たなCIR測定の結果に基づいて新たに求められる。事故の前の乗員の位置および生体パラメータと、事故の後の乗員の位置および生体パラメータとの間の変化に基づいて、乗員に対する事故の影響に関する情報が導出され得る。1人または複数人の乗員の数、位置、健康状態(生体パラメータ)、体の大きさ(成人、子供、乳児)に関する知識によって、駆け付けた救助隊による、1人または複数人の乗員の救助および救出を格段に容易にすることができ、したがって事故結果を軽減することができる。当然、事故後でも、多数のCIR測定、特にできるだけ多くのまたは必要な数のCIR測定を、たとえば車両内で乗員が確認されなくなるまで実行することができる。
【0017】
好適には、1人または複数人の乗員の求められた位置データおよび運動データならびに求められた生体パラメータは事故後に、自動車の記憶ユニットに格納される。同様に好ましくは、事故後に車両の非常モードが作動される。この非常モードでは、所定の車両機能を実行するために、自動車は、外部からの所定の車両機能へのアクセスを許可し、相応の信号を車両コンポーネントに出力するように構成されている。たとえば、センタロックのロック解除またはドアもしくは窓の開放を制御するアクチュエータが駆動制御されてよい。これらのアクチュエータは、多くの場合、車両の内室からのみ到達可能であり、したがって、乗員を車両から救出するために救助隊が操作することは困難である。好ましくは、非常モードにおけるアクチュエータの操作可能性は、車両の点火状態に関連していない。
【0018】
好ましくは、自動車の1人または複数人の乗員の、座席が識別される細かさの認識は、1人または複数人の乗員の、事故の前の求められた位置および事故の後の求められた位置に基づいて行われる。このために、たとえば、運転手席、助手席および/または後部席の座席占有状態を使用することができる。個々の座席への乗員の対応付けに関する情報は、乗員を救出するために、救助隊が適切な救助措置を実行することを容易にする。したがって、乗員救助時のけがの危険性の低減のために、乗員が確認されていない箇所における窓ガラスまたは車両ドアを介した車両への強行アクセスが行われ得る。
【0019】
同様に好ましくは、事故の前の、乗員の求められた位置および/または求められた生体パラメータが、事故の後の、乗員の求められた位置および/または求められた生体パラメータと比較される。これによって、有利には、乗員の位置が事故によって変更されたか否か、どのように乗員の位置が事故によって変更されたか、特に乗員が事故によって車両から投げ出されたか否かを確認することができ、したがって救助隊が、車両の外側で、さらに、この乗員または他の乗員を捜索する必要があるか否かを確認することができる。さらに好ましくは、生物の認識および健康状態の認識が、事故の前の、求められた生体パラメータと、事故の後の、求められた生体パラメータとに基づいて行われる。したがって、各乗員に対し、どの基準範囲に自身の生体パラメータが位置しているか、また事故後に確認された生体パラメータがこの基準範囲から偏差しているか否かを個別に検査することができ、したがって健康状態の悪化を推定することができる。1人/複数人の乗員の求められた生体パラメータと求められた位置とを組み合わせて、重傷の乗員をより軽傷な乗員の前に救出するために、乗員の救助の順序を定めることができる。さらに好ましくは、救助隊にこれらの情報を提供することができるようにするために、車両の装備の認識が行われる。
【0020】
同様に好ましくは、無線システムは、この比較の結果に基づいて、緊急信号を車両周辺環境に送出するように駆動制御される。ここで、緊急信号は、事故の前の、乗員の求められた位置および/または求められた生体パラメータと、事故の後の、乗員の求められた位置および/または求められた生体パラメータとを含んでいる。緊急信号は、特に好ましくは、車両の装備に関する情報をさらに含んでいる。無線システムを介した緊急信号の送出によって、車両周辺環境における他の車両または救助機構に、緊急事態と、乗員および車両に関する詳細な情報とを伝えることができ、これによって救助出動が開始される。
【0021】
同様に好ましくは、第1のUWBアンテナおよび第2のUWBアンテナは、さらに、Bluetooth無線信号を送信および受信するように構成されており、無線システムは、緊急信号を、UWB無線信号および/またはBluetooth無線信号として、第1のUWBアンテナおよび/または第2のアンテナを使用して送出するように駆動制御される。Bluetooth通信は、好ましくは、2.402GHz~2.480GHzの既知の周波数帯域において行われる。好ましくは、Bluetooth-Low-Energy無線技術が設定されている。既知の解決策に比べて、ここでは、能動的なWLAN機能、GPS機能またはLTE機能を用いずに、直接的に、現場で、車両によって提供可能な通信技術が使用される。既知の解決策では、事故後に、緊急信号が適時にコントロールセンタに伝送可能であることが保証されていない。車両の通信システムの技術的な問題を、事故後に排除することはできない。ネットワーク接続の質および可用性も確実に推定可能ではない。したがって、このようなケースにおいても、緊急信号は、少なくとも、車両周辺環境にいる人または救助隊のモバイル端末機器によって受信可能である。好ましくは、アンテナは、エネルギを節約し、送信持続時間を長くするために、時間をずらして緊急信号を送出するように駆動制御される。たとえば、緊急信号の送出は、10秒毎に行われる。
【0022】
同様に好ましくは、緊急信号は、自動車に関する一般的な情報を含んでいる。たとえばこれらの情報は、高い火災の危険性が生じ得る電気自動車またはガス駆動式自動車であるのか、そうでないのかという事情に関連し得る。さらに、一般的な情報は、車両のエアバッグの配置およびトリガ状態または車両を開けるためにスプレッダ(Schere)を使用することができる、車両車体の箇所を含んでいてよい。
【0023】
同様に好ましくは、無線システムはさらに、緊急信号を伝送するNFCアンテナを含んでおり、事故後に、緊急信号に必要な情報がNFCメモリ内に格納される。好ましくは、無線システムはNFCメモリを含んでいる。好ましくは、NFCアンテナは、NFCリーダまたはNFCタグとして構成されている。NFCリーダは、NFC伝達の際の能動的なコンポーネントである。NFCリーダはNFCタグを読み取って記述することができ、他の機器と直接的に通信することができる。これに対してNFCタグは、別のNFC機器のエネルギ供給に関連しており、別のNFC機器のエネルギ供給に基づいて、NFCを用いてNFCメモリから情報を伝送することができる。有利には、救助隊はNFC機能を有する端末機器を用いて、NFCアンテナを介して、緊急信号ならびに1人または複数人の乗員の求められた位置および生体パラメータを受け取ることができる。NFCタグの場合、これは、車両の電力供給が遮断された後でも機能する。
【0024】
本発明のさらなる好ましい構成では、2つのUWBアンテナのうちの少なくとも1つを使用して、UWBパルスを送信し、インパルス応答を受信するように無線システムが駆動制御され、さらに、1人または複数人の乗員の位置および/または生体パラメータが、受信されたインパルス応答の結果に基づいて求められることが想定されている。CIR測定とは異なり、受信されたインパルス応答を用いるこの方法では、UWB信号を送出するUWBアンテナと同じUWBアンテナがインパルス応答の受信も行う。その限りでは、ここでは、走査された周辺環境のエコーが受信される。このエコーは、通常、時間的に分解された多数のエコー信号をシミュレートし、これらは、この物体および/または人と送受信器との距離に関連して、インパルス応答に表れる。時間的にずらされたUWBパルスにわたったエコー信号とその受信されたインパルス応答との比較によって、送受信器に関する、物体および/または人の位置の変化を推定することができる。生体パラメータを、この位置変化から求めることができる。これらのエコー信号を好ましくは、振幅情報および/または位相情報に基づいて求め、相互に比較することができる。これによって有利には、少なくとも1つのアンテナを使用して、空間分解式にかつ時間分解式に車両の内室を走査することが可能になる。当然、これらのUWBアンテナまたは車両内に組み込まれている他のUWBアンテナが、様々な角度から、空間分解式にかつ時間分解式に車両の周辺環境および/または内室を走査するために、受信されたインパルス応答の方法を実施することもできる。
【0025】
物体が送受信器から離れる方向に移動すればするほど、この物体に対応付けられているエコー信号は、送受信器によって遅く受信される。したがって、送受信器の到達距離は制限される。これは、所望の到達距離に相応する時間の後にインパルス応答の受信が中断されることおよび/または新たなUWBパルスが送出されることによって行われる。UWBパルスが送受信器を介して送出される時間の間、送信に使用される送受信器によってインパルス応答を受信することは不可能である。
【0026】
有利には、受信されたインパルス応答に基づく方法によって、通常、車両周辺環境の認識に利用される、車両の既存のUWBアンテナが利用されてよい。これらのUWBアンテナは、通常は、UWB信号を車両の内室に送出するためには使用されないので、使用可能である。その限りでは、既存のUWBアンテナを多機能に利用することができ、コストを節約することができる。さらに、UWBアンテナが事故後に故障している可能性があるので、この方法が、1つのUWBアンテナだけによっても実施可能であることは有利である。したがって特に事故後に、2つのアンテナのうちの少なくとも1つを使用して、事故後の乗員の位置および生体パラメータを求めるために、送出されたUWBパルスのインパルス応答の受信に基づく方法を実施するように無線システムが駆動制御されることが想定されていてよい。
【0027】
さらなる態様は、無線システムと、この無線システムに接続されている制御ユニットとを備えた自動車を含んでいる。無線システムは、第1のUWBアンテナと第2のUWBアンテナとを備えた送受信器を含んでいる。制御ユニットは、上述のことを実行するように構成されている。方法によって説明された特徴およびそれらの利点は、同様に、自動車によって実現され、したがって互いに任意に組み合わせ可能である。
【0028】
本発明の好ましい構成では、自動車が、制御ユニットと共に、自動車の事故を求めるように構成されているセンサユニットをさらに有していることが想定されている。センサユニットは、好ましくは、慣性センサ、エアバッグトリガ信号の受信器および/またはカメラを含んでいる。慣性センサは、好ましくは加速度センサ、衝撃センサおよび/またはロールオーバセンサを含んでいる。制御ユニットは、好ましくは、慣性センサの検出された値から、エアバッグトリガ信号受信器から、かつ/または作成されたカメラ画像から、車両の事故を認識するように構成されている。
【0029】
自動車の上述の制御ユニットは、好ましくは、電気部品または電子部品またはコンポーネント(ハードウェア)によってまたはファームウェア(ASIC)によって実装されている。付加的または代替的に、制御ユニットの機能は、適切なプログラム(ソフトウェア)の実行の際に実現される。同様に好ましくは、制御ユニットは、ハードウェア、ファームウェアおよび/またはソフトウェアの組み合わせによって実現されている。たとえば、制御ユニットの個々のコンポーネントは、個々の機能を提供するために、別個に集積された回路として構成されている、または1つの共通の集積された回路上に配置されている。
【0030】
制御ユニットの個々のコンポーネントは、さらに、好ましくは、1つまたは複数のプロセッサ上で1つまたは複数の電子的な計算機器において実行され、1つまたは複数のコンピュータプログラムの実行の際に生成される1つまたは複数のプロセスとして構成されている。ここでこれらの計算機器は、好ましくは、本明細書に記載された機能を実現するために、たとえばセンタロック、エンジンコントローラなどの他のコンポーネントと協働するように構成されている。コンピュータプログラムの指示は、ここで、好ましくは、たとえばRAM要素のようなメモリに格納されている。しかしコンピュータプログラムが、たとえばCD-ROM、フラッシュメモリまたはこれに類したもののような不揮発性記憶媒体に格納されていてもよい。
【0031】
当業者には、さらに、制御ユニットの機能を実現するために、複数の計算ユニット(データ処理機器)の機能を組み合わせることもしくは唯一の機器に組み合わせることが可能であること、または特定のデータ処理機器から多数の機器に分散して機能を設けることが可能であることが明らかである。
【0032】
本発明のさらなる態様はコンピュータプログラムに関し、このコンピュータプログラムは、たとえば、第1のUWBアンテナおよび第2のUWBアンテナを有する送信受信器を備えた無線システムを有している自動車の制御機構であるコンピュータによるこのプログラムの実行時に、コンピュータに本発明の方法、特に自動車の乗員の位置および生体パラメータを求めるための方法を実施させる命令を含んでいる。
【0033】
本発明の他の好ましい構成は、従属請求項において挙げられたその他の特徴から明らかになる。
【0034】
本願において挙げられた、本発明の様々な実施形態は、個々のケースにおいて別段の記載がない限り、有利に相互に組み合わせ可能である。
【0035】
以降で、本発明を、実施例において、添付の図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】1つの実施形態による方法を概略的に示す図である。
【
図2】5つのUWBアンテナを備えた、1つの実施形態による自動車を概略的に示す図である。
【
図3】別の実施形態による、5つのUWBアンテナを備えた自動車を概略的に示す図である。
【0037】
図1には、例示的な実施形態による方法の概略図が示されている。この方法は、自動車10の乗員の位置および生体パラメータを求めるために適している。
図2および
図3を見ながら、自動車10を2つの実施形態に基づいてより詳細に説明する。
【0038】
自動車10は、少なくとも1つの第1のUWBアンテナ14と第2のUWBアンテナ16とを有する送受信器を備える無線システムおよびこの無線システムに接続されている制御ユニット12を含んでいる。制御ユニット12は、特に、
図1に基づいて説明される方法を実施するように構成されている。
図2および
図3には、無線システム、送受信器および第1~第5のUWBアンテナ14,16,18,20,22を備えた例示的な自動車10が示されている。ここで、5つのUWBアンテナ14,16,18,20,22は、自動車10の5つのドアに分散している。これによれば、助手席側ドアに第1のUWBアンテナ14が配置されており、運転手席側ドアに第2のUWBアンテナ16が配置されており、テールゲートに第3のUWBアンテナ18が配置されており、助手席側ドアの背後のドアに第4のUWBアンテナ20が配置されており、運転手席側ドアの背後のドアに第5のUWBアンテナ22が配置されている。UWBアンテナ14,16,18,20,22の数および配置は、単に、例示的な性質のものであり、良好な理解のためのものである。本開示は、UWBアンテナ14,16,18,20,22の図示されたこの配置および数に限定されるものではない。
【0039】
第1のステップ50では、自動車10の動作中に、第1のUWBアンテナ14および第2のUWBアンテナ16を使用して、CIR測定に基づく方法を実施するように無線システムが駆動制御される。
図2に関連して、自動車10の動作中に、第1のUWBアンテナ14、第2のUWBアンテナ16および第3のUWBアンテナ18を使用して、CIR測定に基づく方法を実施するように無線システムが駆動制御されることが示されている。
図3に関連して、自動車10の動作中に、第4のUWBアンテナ20、第5のUWBアンテナ22および第3のUWBアンテナ18を使用して、CIR測定に基づく方法を実施するように無線システムが駆動制御されることが示されている。他の、特に全てのUWBアンテナ14,16,18,20,22間でCIR測定を行うこともできることが明らかであり、これによって、各UWBアンテナ14,16,18,20,22の間の伝搬経路に沿った乗員および物体に関する情報を得ることができる。
【0040】
第2のステップ52では、自動車10の乗員の位置および生体パラメータが、CIR測定の結果に基づいて求められる。このステップでは、CIR測定の結果に基づいて、自動車10の多数の、特に全ての乗員の位置および生体パラメータを求めることもできる。求められた位置および求められた生体パラメータは、自動車10の記憶ユニットに格納される。
【0041】
第3のステップ54では、自動車10の事故が検出される。自動車10のセンサユニットおよび制御ユニット12を使用してこれを行うことができる。このためにセンサユニットは、衝撃センサを含んでおり、この衝撃センサの検出された値は制御ユニット12に引き渡され、ここで制御ユニット12は、衝撃センサの検出されたパラメータ値に基づいて、自動車10の事故状況が存在しているか否かを区別するように構成されている。しかし、センサユニットは、自動車10の事故を検出するための他のセンサも含んでいてよく、制御ユニット12は、これらの他のセンサによって検出された値に基づいて、事故が存在しているか否かを決定するように相応に構成されていてよい。
【0042】
第4のステップ56では、事故後に、第1のUWBアンテナ14および第2のUWBアンテナ16を使用して、CIR測定に基づく方法を新たに実施するように無線システムが駆動制御される。このステップにおいても、UWBアンテナ14,16,18,20,22間の任意の組み合わせでCIR測定を行うことができる。
【0043】
第5のステップ58では、乗員の位置および生体パラメータが、新たなCIR測定の結果に基づいて求められる。新たに求められた位置および新たに求められた生体パラメータは同様に、自動車10の記憶ユニットに格納される。第4のステップ56および第5のステップ58は、車両内室を監視するために、任意の頻度で、特に周期的に繰り返されてよい。
【0044】
第6のステップ60では、乗員の求められた位置および求められた生体パラメータが、緊急信号の形で、無線システムを使用して車両周辺環境へ送出される。緊急信号が、事故の前の位置および生体パラメータならびに事故の後の位置および生体パラメータに関する所期の情報を含んでいることによって、救助作業員は、緊急信号内のこれらの付加的な情報に基づいて、自動車10の1人または複数人の乗員の所期の、ひいては改良された救助措置を実行することができる。これによってより良好に人命を救うことができ、事故結果を軽減することができる。
【0045】
図2に例示的に示されているように、第1のUWBアンテナ14と第2のUWBアンテナ16との間のCIR測定によって、自動車10の前方の座席上の1人または複数人の乗員を、座席が識別される細かさで認識することができる(UWBアンテナ14とUWBアンテナ16との間の矢印を参照)。しかし自動車10の内室における他の座席上の乗員も確認するために、さらなるUWBアンテナ18,20,22が設けられている。UWBアンテナ14とUWBアンテナ18との間の矢印ならびにUWBアンテナ16とUWBアンテナ18との間の矢印に基づいて、これらのUWBアンテナ14,16,18間の相応のCIR測定によって、自動車10の後方の座席上の乗員も、座席が識別される細かさで認識可能であることが見て取れる。UWBアンテナ14とUWBアンテナ22とUWBアンテナ16とUWBアンテナ24との間でも、または
図3に明示的に示されているように、後方の車両部分におけるUWBアンテナ18,20,22間で相応に、上述の利点が後方の座席に対して得られることが明らかである。
【0046】
図2および
図3には、別の態様が示されており、これによれば、UWBアンテナ14,16,18,20,22は、相互のCIR測定のためだけに使用可能なのではない。むしろ、各UWBアンテナ14,16,18,20,22それ自体でUWBパルスを送出し、車両内室のエコー信号を、受信されたインパルス応答に基づいて受信することができる。これらの受信されたインパルス応答から、同様に1人または複数人の乗員の位置および生体パラメータを求めることができる。例示的に、各UWBアンテナ14,16,18,20,22の受信されたインパルス応答の方法の到達距離が、破線の円の形で示されている。しかし、約1メートルの半径を有するこれらの円は、このような寸法に制限されない。むしろ、この方法によって、各UWBアンテナ14,16,18,20,22からの10メートルまでの到達距離を達成することもできる。その限りでは、本明細書で提示された方法は、輸送機、バス、トレーラーハウスなどのより大きな車両内室を備えた自動車10にも適用可能である。
図2および
図3において、例示的に5つの選択されたUWBアンテナ14,16,18,20,22によって、自動車10の内室全体が走査され、ひいては監視され得ることが見て取れる。したがって、自動車10の各乗員の位置および生体パラメータを求めることができる。
【0047】
図2および
図3において同様に、無線システムの送受信器がさらに、第1のNFCアンテナ24および第2のNFCアンテナ26を有していることが示されている。第1のNFCアンテナ24が助手席側ドアの背後のドアに組み込まれているのに対し、第2のNFCアンテナ26は運転手席側ドアに配置されている。NFCアンテナ24,26は、NFCを用いて、自動車10の1人または複数人の乗員の求められた位置および求められた生体パラメータを、事故の前と事故の後とに救助作業員に伝達するために使用可能である。この例示的な位置決めは、自動車10が、2つの対向する側から、NFCを用いた通信を可能にするので、多くの事故状況において、2つのNFCアンテナ24,26のうちの少なくとも1つと通信を構築することができるという利点を有している。各NFCアンテナ24,26のメモリには、自動車10の1人または複数人の乗員の、事故の前の求められた位置および生体パラメータならびに事故の後の求められた位置および生体パラメータが保存されている。有利には、救助作業員はNFC通信を用いて、これらの情報に到達可能であり、個別に適切な救助措置を実行することができる。単なる例として、第1のNFCアンテナ24はNFCリーダとして構成されており、第2のNFCアンテナ26はNFCタグとして構成されている。このことは、自動車10の電力供給が遮断された場合でさえ、情報を、第2のNFCアンテナ26を介して、救助作業員が受け取ることができるという利点を有している。
【符号の説明】
【0048】
10 自動車
12 制御ユニット
14 第1のUWBアンテナ
16 第2のUWBアンテナ
18 第3のUWBアンテナ
20 第4のUWBアンテナ
22 第5のUWBアンテナ
24 第1のNFCアンテナ
26 第2のNFCアンテナ
50 第1のステップ
52 第2のステップ
54 第3のステップ
56 第4のステップ
58 第5のステップ
60 第6のステップ