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  • 特許-溶接ロボット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】溶接ロボット
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20240719BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B23K9/12 331F
B25J9/22 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023197248
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 祥
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/162084(WO,A1)
【文献】特開2010-247224(JP,A)
【文献】特開2015-199174(JP,A)
【文献】特開昭60-233707(JP,A)
【文献】特開平08-069314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B25J 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力に応じて移動可能なアームの先端に連結される溶接トーチ部と、
前記溶接トーチ部を移動させることが可能な把持部と、
スイッチ部と、
アーク溶接の実施を可能にする溶接可モードと、アーク溶接の実施を不可能にする溶接不可モードと、を切り替える切替部と、
を備え、
前記スイッチ部は、オン状態の時にアーク溶接の実施を可能とし、オフ状態の時にアーク溶接の実施を不可能に
前記溶接可モードの時に前記スイッチ部をオン状態にするとアーク溶接を開始する一方、前記溶接可モードの時に前記スイッチ部をオフ状態にするとアーク溶接を終了する、
溶接ロボット。
【請求項2】
前記溶接不可モードの時に前記スイッチ部をオン状態にしてもアーク溶接を開始しない、
請求項記載の溶接ロボット。
【請求項3】
外力に応じて移動可能なアームの先端に連結される溶接トーチ部と、
前記溶接トーチ部を移動させることが可能な把持部と、
スイッチ部と、
を備え、
前記スイッチ部は、オン状態の時にアーク溶接の実施を可能とし、オフ状態の時にアーク溶接の実施を不可能に
前記スイッチ部がオフ状態の時に、前記溶接トーチ部は外力に応じた移動が不可になる一方、前記スイッチ部がオン状態の時には、前記把持部の移動に伴って前記溶接トーチ部が移動する、
溶接ロボット。
【請求項4】
外力に応じて移動可能なアームの先端に連結される溶接トーチ部と、
前記溶接トーチ部を移動させることが可能な把持部と、
スイッチ部と、
を備え、
前記スイッチ部は、オン状態の時にアーク溶接の実施を可能とし、オフ状態の時にアーク溶接の実施を不可能に
前記スイッチ部は、作業者が前記把持部を把持して作業する際に前記把持部の下側に位置するように設けられる、
溶接ロボット。
【請求項5】
前記把持部は、前記溶接トーチ部の近傍に取り付け可能なツールである、
請求項1、3又は4のいずれかに記載の溶接ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、いわゆる一般的な人協働ロボットにおいて、ロボットに対する教示位置を作業者が手動で教示するリードスルー動作によってティーチペンダントを使うよりも簡易にロボット教示ができる直接教示という技術と、その直接教示の際にハンドルによりロボットを動かしやすくできることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-199174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ロボットで溶接を行う場合には、最初に接合予定のワークを治具等で固定し、溶接機による手溶接でワークを仮付け溶接するか、ロボットで教示を行った上でワークを仮付け溶接する必要がある。前者での仮付け溶接では、わざわざ手溶接を行う準備が必要となり、後者での仮付け溶接では、仮付け溶接だけのためにわざわざ教示が必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、手溶接の準備や教示の手間無しに、ロボットを使用したまま簡易に溶接できる溶接ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る溶接ロボットは、外力に応じて移動可能なアームの先端に連結される溶接トーチ部と、溶接トーチ部を移動させることが可能な把持部と、スイッチ部と、を備え、スイッチ部は、オン状態の時にアーク溶接の実施を可能とし、オフ状態の時にアーク溶接の実施を不可能にする。
【0007】
この態様によれば、外力に応じて移動可能な溶接トーチ部を移動させることが可能な把持部を設けることができ、さらに作業者がスイッチ部をオン状態にするとアーク溶接を実施できる一方、スイッチ部をオフ状態にするとアーク溶接を実施できないようにすることが可能となる。
【0008】
上記態様において、アーク溶接の実施を可能にする溶接可モードと、アーク溶接の実施を不可能にする溶接不可モードと、を切り替える切替部を、さらに備え、溶接可モードの時にスイッチ部をオン状態にするとアーク溶接を開始する一方、溶接可モードの時にスイッチ部をオフ状態にするとアーク溶接を終了することにしてもよい。
【0009】
この態様によれば、溶接可不可モードを切り替える切替部をさらに設けることで、溶接可モード時にスイッチ部をオン状態にするとアーク溶接を開始させることができる一方、溶接可モード時にスイッチ部をオフ状態にするとアーク溶接を終了させることができる。
【0010】
上記態様において、溶接不可モードの時にスイッチ部をオン状態にしてもアーク溶接を開始しないことにしてもよい。
【0011】
この態様によれば、溶接可不可モードを溶接不可モードに切り替えることで、アーク溶接が実施されないようにガードすることができる。
【0012】
上記態様において、スイッチ部がオフ状態の時に、溶接トーチ部は外力に応じた移動が不可になる一方、スイッチ部がオン状態の時には、把持部の移動に伴って溶接トーチ部が移動してもよい。
【0013】
この態様によれば、作業者がスイッチ部をオフ状態にすると、溶接トーチ部に外力を加えても動かないようにすることができ、作業者がスイッチ部をオン状態にすると、把持部を通じて溶接トーチ部に加えた外力によって溶接トーチ部を移動させることが可能となる。
【0014】
上記態様において、スイッチ部は、作業者が把持部を把持して作業する際に把持部の下側に位置するように設けられてもよい。
【0015】
この態様によれば、作業者は、一般的な手溶接専用の装置を用いて手溶接するのと同じ感覚で溶接することが可能となる。
【0016】
上記態様において、把持部は、溶接トーチ部の近傍に取り付け可能なツールであってもよい。
【0017】
この態様によれば、作業者が溶接作業を行う際に、溶接トーチ部の先端付近から発生するアークと溶接箇所とを目視で確認しながら溶接し易くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、手溶接の準備や教示の手間無しに、ロボットを使用したまま簡易に溶接できる溶接ロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る溶接ロボットを含むロボットシステムの構成を例示する図である。
図2図1の溶接ロボットを構成する溶接トーチ部及び把持部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。また、図面は模式的なものであるため、各構成要素の寸法や比率は実際のものとは相違する。
【0021】
図1は、実施形態に係る溶接ロボット1を含むロボットシステムの構成を例示する図である。ロボットシステムは、例えば、溶接ロボット1及びロボット制御装置2を備える。溶接ロボット1及びロボット制御装置2は、例えば、通信ケーブルなどの有線又は無線を含むネットワークを介して接続可能である。なお、ロボットシステムに、ティーチングペンダントを含めてもよい。ティーチングペンダントは、ロボット制御装置2に接続することができ、作業者が溶接ロボット1の動作を教示する操作端末である。
【0022】
ロボット制御装置2は、溶接ロボット1の動作を制御する制御ユニットであり、例えば、制御部21、記憶部22、通信部23及び溶接電源部24を備える。
【0023】
制御部21は、プロセッサであり、記憶部22に記憶されている溶接プログラムなどの作業プログラムを実行することで、溶接ロボット1及び溶接電源部24を制御する。通信部23は、ネットワークを介して接続される各装置との通信を制御する。
【0024】
溶接電源部24は、例えば、溶接ワイヤの先端とワークWとの間にアークを発生させるために、予め定められた溶接の施工条件に従って、溶接電流及び溶接電圧等を溶接ロボット1に供給する。溶接の施工条件には、例えば、溶接条件、溶接開始位置、溶接終了位置、溶接距離、溶接トーチの姿勢及び等のデータ項目が含まれる。溶接条件には、例えば、溶接電流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ送給速度及びワークの厚さ等のデータ項目が含まれる。溶接電源部24は、ロボット制御装置2と別個に備えることとしてもよい。
【0025】
溶接ロボット1は、ロボット制御装置2において設定される溶接の施工条件に従って、溶接対象であるワークWにアーク溶接を施工するマニピュレータである。溶接ロボット1は、例えば、工場の床面等に固定されるベース部材上に設けられる多関節アームと、多関節アームの先端に連結されるツールの一つである溶接トーチ部11と、溶接トーチ部11に取り付け可能なツールの一つである把持部12と、を有する。
【0026】
溶接ロボット1は、外力を検知することが可能ないわゆる協働ロボットであり、作業者が直接アームに触れて直接操作可能なロボットであり、直接操作中にアーク溶接可能である。
【0027】
図1及び図2に示す把持部12は、溶接ロボット1を直接操作する際に溶接トーチ部11に取り付けるツールである。
【0028】
溶接ロボット1を直接操作する際に、作業者は把持部12の本体を把持しながら動かすことで、溶接トーチ部11を溶接箇所に移動させ、溶接個所を溶接することができる。溶接は、仮溶接であってもよいし、本溶接であってもよい。
【0029】
把持部12は、例えば、スイッチ部12aと、切替部12bと、取付部12cと、を有する。
【0030】
スイッチ部12aは、いわゆるイネーブルスイッチである。スイッチ部12aを押圧してオン状態にするとサーボ電源がオンになり、溶接ロボット1が動作可能な状態になる。他方、スイッチ部12aを解放してオフ状態にするとサーボ電源がオフになり、溶接ロボット1の動作が停止する。
【0031】
スイッチ部12aは、作業者が把持部12を把持して作業する際に把持部12の下側に位置するように設けることが好ましい。これにより、作業者は、一般的な手溶接専用の装置を用いて手溶接するのと同じ感覚で溶接することが可能となる。
【0032】
ここで、スイッチ部12aがオフ状態の時には、安全性をより高めるために、溶接トーチ部11を含む溶接ロボット1を、手動で(外力に応じて)動かすことができないようにしてもよい。この場合、スイッチ部12aをオン状態にした時に、溶接トーチ部11を含む溶接ロボット1を手動で動かせるようにすることが好ましい。これにより、スイッチ部12aをオン状態にしたときに、作業者が把持部12を移動させると、その移動に伴って、溶接トーチ部11を溶接箇所に向けて移動させることが可能となる。
【0033】
切替部12bは、溶接ロボット1のアーク溶接の可不可モードを切り替えるボタンスイッチである。アーク溶接の可不可モードには、アーク溶接の実施を可能にする溶接可モードと、アーク溶接の実施を不可能にする溶接不可モードと、がある。作業者は、切替部12bを操作して、アーク溶接の可不可モードを、溶接可モードか溶接不可モードのいずれかに切り替える。
【0034】
切替部12bを設けることにより、スイッチ部12aの操作と合わせてアーク溶接を以下のように制御することが可能となる。
【0035】
アーク溶接の可不可モードが溶接可モードのときに、スイッチ部12aをオン状態にすると、アーク溶接が開始する一方、スイッチ部12aをオフ状態にすると、アーク溶接が終了する。
【0036】
アーク溶接の可不可モードが溶接不可モードのときは、スイッチ部12aがオン状態及びオフ状態のどちらであってもアーク溶接は実施されない。
【0037】
切替部12bは、作業者が把持部12を把持して作業する際に把持部12の上側、かつ作業者の手に隠れない位置に設けることが好ましい。これにより、作業者は、目視での切替部12bの確認が容易になり、アーク溶接の可不可モードの切り替え操作を簡便に行うことが可能になる。
【0038】
取付部12cは、把持部12を溶接トーチ部11に取り付ける際の部材である。例えば、溶接トーチ部11に取付部12cを嵌合させて、把持部12を溶接トーチ部11に組み込めるようにしてもよい。
【0039】
ここで、把持部12を取り付ける位置は、溶接トーチ部11の近傍であることが好ましい。加えて、図2に示すように、把持部12の本体上面からの延長線12dと溶接トーチ部11の先端部11aによる線とのなす角θが、およそ40~60度くらいになるように、把持部12を取り付けることが好ましい。換言すると、作業者が溶接作業を行う際に、溶接トーチ部11の先端付近にある溶接ワイヤから発生するアークと溶接箇所とを目視で確認しながら溶接し易くできる位置及び角度に把持部12を取り付けることが好ましい。
【0040】
上述したように、実施形態に係る溶接ロボット1によれば、外力に応じて移動可能な溶接トーチ部11を移動させることが可能な把持部12にスイッチ部12aを設けることで、作業者がスイッチ部12aをオン状態にするとアーク溶接を実施できる一方、スイッチ部12aをオフ状態にするとアーク溶接を実施できなくなるようにすることが可能となる。
【0041】
また、把持部12に、溶接可不可モードを切り替える切替部12bを設けることで、作業者が溶接可モード時にスイッチ部12aをオン状態にするとアーク溶接を開始させることができる一方、溶接可モード時にスイッチ部12aをオフ状態にするとアーク溶接を終了させることができる。
【0042】
さらに、作業者が溶接可不可モードを溶接不可モードに切り替えることで、アーク溶接が実施されないようにガードすることができる。
【0043】
それゆえ、実施形態に係る溶接ロボット1によれば、手溶接の準備や教示の手間無しに、ロボットを使用したまま簡易に溶接することが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるべきではない。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、スイッチ部12a及び切替部12bを把持部12に設けているが、スイッチ部12a及び切替部12bを設けるのは把持部12に限定されない。例示的に、スイッチ部12a及び切替部12bを溶接ロボット1の本体に設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…溶接ロボット、2…ロボット制御装置、11…溶接トーチ部、11a…先端部、12…把持部、12a…スイッチ部、12b…切替部、12c…取付部、12d…延長線、21…制御部、22…記憶部、23…通信部、24…溶接電源部
【要約】
【課題】手溶接の準備や教示の手間無しに、ロボットを使用したまま簡易に溶接できる溶接ロボットを提供する。
【解決手段】溶接ロボット1は、外力に応じて移動可能なアームの先端に連結される溶接トーチ部11と、溶接トーチ部11を移動させることが可能な把持部12と、スイッチ部12aと、を備え、スイッチ部12aは、オン状態の時にアーク溶接の実施を可能とし、オフ状態の時にアーク溶接の実施を不可能にする。
【選択図】図1
図1
図2