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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】溶融装置、及び溶融方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 11/02 20060101AFI20240719BHJP
   B22D 41/015 20060101ALI20240719BHJP
   F27B 14/14 20060101ALI20240719BHJP
   F27B 14/20 20060101ALI20240719BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20240719BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F27D11/02 A
B22D41/015
F27B14/14
F27B14/20
F27D19/00 A
F27D21/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023205212
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2023-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003568
【氏名又は名称】弁理士法人加藤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】開 和洋
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-195758(JP,A)
【文献】特開2009-256158(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161087(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/118249(WO,A1)
【文献】中国実用新案第215524162(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 11/02
B22D 41/015
F27B 14/14
F27B 14/20
F27D 19/00
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器の内部に設けられている電熱線と、
前記容器の内部に対して出し入れ可能になっており、固体物を収容可能なるつぼと
を備え、
前記固体物が前記るつぼに収容された状態では、前記固体物が前記るつぼの底部の上面に置かれ、
前記るつぼに収容された前記固体物は、前記るつぼの底部が前記電熱線に載せられた状態で前記電熱線が発熱することにより溶融する溶融装置。
【請求項2】
前記容器の内部に対して出し入れ可能な保護シートを備え、
前記るつぼの底部は、前記保護シートを介して前記電熱線に載せられる請求項1に記載の溶融装置。
【請求項3】
感温部を有している温度計と、
ストッパと
を備え、
前記温度計は、少なくとも前記温度計の重さによって、前記容器に対して下方へ移動可能になっており、
前記ストッパは、前記容器の内部に設定された基準位置よりも前記感温部が下方へ移動することを阻止し、
前記固体物が前記るつぼに収容され、かつ前記るつぼの底部が前記電熱線に載せられた状態では、前記るつぼの底部が前記基準位置よりも下方に位置しており、前記感温部が前記固体物に載るようになっている請求項1又は請求項2に記載の溶融装置。
【請求項4】
前記ストッパは、前記温度計に取り付けられており、
前記感温部が前記容器の内部に配置された状態では、前記温度計の重さ及び前記ストッパの重さによって、前記温度計が前記容器に対して下方へ移動可能になっている請求項3に記載の溶融装置。
【請求項5】
固体物を収容したるつぼを容器の内部に配置する準備工程と、
前記準備工程の後、前記容器の内部に設けられている電熱線を発熱させることにより、前記固体物を溶融して溶融物とする加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記るつぼを前記容器の内部から取り出して、注入対象物に前記るつぼから前記溶融物を注入する注入工程と
を備え、
前記準備工程では、前記固体物を前記るつぼの底部の上面に置き、前記るつぼの底部を前記電熱線に載せた状態で、前記るつぼを前記容器の内部に配置する溶融方法。
【請求項6】
前記準備工程では、前記容器の内部に設定された基準位置よりも下方に前記るつぼの底部が位置するように前記るつぼの底部を前記電熱線に載せるとともに、温度計の感温部を前記固体物に載せ、
前記加熱工程では、前記感温部からの信号に基づいて前記電熱線の発熱量を調整し、
前記加熱工程では、前記固体物の溶融に伴う前記固体物の変形に追従して前記温度計が前記容器に対して下方へ移動して前記感温部が前記基準位置に達すると、前記基準位置よりも下方への前記感温部の移動がストッパによって阻止される請求項5に記載の溶融方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体物を溶融する溶融装置、及び溶融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロープの端末が挿入されたソケットに、溶融した鋳込み金属を注入して、ワイヤロープの端末にソケットを固定するワイヤロープの端末ソケット加工方法が開示されている。鋳込み金属は、槽において溶融する。溶融した鋳込み金属は、槽から柄杓によって掬い上げられてソケットに注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-241652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された従来のワイヤロープの端末ソケット加工方法では、槽において溶融した鋳込み金属を柄杓によってソケットに注入する。このため、溶融した鋳込み金属をソケットに注入するときに鋳込み金属の温度が低下してしまう。これにより、ワイヤロープの端末に対するソケットの固定強度が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、溶融物の温度の低下を抑制することができる溶融装置、及び溶融方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る溶融装置は、容器と、容器の内部に設けられている電熱線と、容器の内部に対して出し入れ可能になっており、固体物を収容可能なるつぼとを備え、固体物がるつぼに収容された状態では、固体物がるつぼの底部の上面に置かれ、るつぼに収容された固体物は、るつぼの底部が電熱線に載せられた状態で電熱線が発熱することにより溶融する。
また、本開示に係る溶融方法は、固体物を収容したるつぼを容器の内部に配置する準備工程と、準備工程の後、容器の内部に設けられている電熱線を発熱させることにより、固体物を溶融して溶融物とする加熱工程と、加熱工程の後、るつぼを容器の内部から取り出して、注入対象物にるつぼから溶融物を注入する注入工程とを備え、準備工程では、固体物をるつぼの底部の上面に置き、るつぼの底部を電熱線に載せた状態で、るつぼを容器の内部に配置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る溶融装置、及び溶融方法によれば、溶融物の温度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る溶融装置を示す断面図である。
図2図1の金属積層物が溶融して溶融金属となった状態を示す断面図である。
図3図1の溶融装置1による溶融方法を示すフローチャートである。
図4】実施の形態2に係る溶融装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本開示の対象は、以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、又は実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る溶融装置を示す断面図である。図において、溶融装置1は、容器2と、電熱線3と、るつぼ4と、温度計5と、ストッパ6とを有している。
【0011】
容器2は、容器本体21と、蓋22とを有している。容器本体21には、開口部23が形成されている。容器本体21は、開口部23を上方に向けて配置される。
【0012】
蓋22は、容器本体21に着脱可能に取り付けられている。蓋22が容器本体21に取り付けられた状態では、開口部23が蓋22によって閉じている。開口部23は、蓋22が容器本体21から外れることにより開く。
【0013】
蓋22には、貫通孔24が設けられている。貫通孔24は、蓋22の厚さ方向に沿って蓋22を貫通している。これにより、蓋22を取り付けた容器本体21が開口部23を上方に向けて配置された状態では、貫通孔24に沿った方向が上下方向と一致している。
【0014】
電熱線3は、容器本体21の内部に設けられている。電熱線3は、モールド材25を介して容器本体21の下部に固定されている。モールド材25は、容器本体21の底面に沿って容器本体21の内部に断熱材として敷設されている。
【0015】
電熱線3は、モールド材25の上面に沿って設けられている。本実施の形態では、開口部23から容器本体21の内部を見たとき、電熱線3が渦巻状に配置されている。電熱線3の長手方向に直交する断面では、電熱線3の下部がモールド材25に固定されており、電熱線3の上部が容器2の内部の空間に露出している。
【0016】
電熱線3は、電熱線3への給電により発熱する。電熱線3の発熱量は、電熱線3への給電量に応じて変化する。電熱線3への給電量は、不図示の制御部によって制御される。これにより、電熱線3の発熱量は、制御部の制御によって調整される。
【0017】
るつぼ4は、容器本体21の内部に対して開口部23を通して出し入れ可能になっている。これにより、るつぼ4は、容器2の内部に対して出し入れ可能になっている。
【0018】
るつぼ4は、上部が開放された耐熱容器である。本実施の形態では、金属製の耐熱容器がるつぼ4として用いられている。るつぼ4の底部4aの形状は、平板状になっている。るつぼ4の底部4aは、容器2の内部において電熱線3に載せられる。
【0019】
るつぼ4は、固体物を収容可能になっている。固体物は、溶融装置1によって溶融される前の固体状態の原料である。固体物は、加熱によって溶融することにより液体状態の溶融物となる。固体物から得られた溶融物は、注入対象物に注入されて固まることにより、製造物の部品又は部品の一部として用いられる。固体物の素材としては、金属、ガラスなどが挙げられる。
【0020】
本実施の形態では、固体状態の金属が固体物として用いられている。具体的には、バビットメタルを素材とする複数の金属板を重ねた金属積層物10が固体物として用いられている。従って、本実施の形態では、金属積層物10が溶融した溶融金属が、固体物から得られた溶融物である。本実施の形態では、エレベータのロープの端末にソケットを固定する目的で、溶融金属がソケットに注入される。従って、本実施の形態では、ソケットが注入対象物として用いられる。本実施の形態では、エレベータのロープの端末がソケットに挿入された後、ソケットに溶融金属を注入して溶融金属が固まることにより、ソケットがロープの端末に固定される。
【0021】
るつぼ4に収容された金属積層物10は、るつぼ4の底部4aの上面に置かれる。金属積層物10がるつぼ4に収容され、かつ、るつぼ4の底部4aが電熱線3に載せられた状態では、電熱線3が発熱すると、るつぼ4の底部4aを介して電熱線3から金属積層物10に熱が伝導する。従って、るつぼ4に収容された金属積層物10は、るつぼ4の底部4aが電熱線3に載せられた状態で電熱線3が発熱することにより溶融する。るつぼ4に収容された金属積層物10が溶融すると、溶融物としての溶融金属がるつぼ4の内部に溜まる。
【0022】
温度計5は、棒状部51と、感温部52とを有している。また、温度計5は、ケーブル53を介して制御部に電気的に接続されている。
【0023】
感温部52は、棒状部51の一端部に設けられている。棒状部51の他端部には、ケーブル53が取り付けられている。ケーブル53は、感温部52に電気的に接続されている。温度計5は、棒状部5を貫通孔24に通し、感温部52を容器2の内部に配置した状態で蓋22に配置される。ケーブル53は、容器2の外部において棒状部51に取り付けられる。
【0024】
感温部52は、感温部52の位置における温度を検出する。また、感温部52は、感温部52の位置における温度に応じた信号を発生する。本実施の形態では、熱電対が感温部52となっている。感温部52からの信号は、ケーブル53を介して制御部へ送られる。制御部は、感温部52からの信号に基づいて、電熱線3への給電量を制御して、電熱線3の発熱量を調整する。
【0025】
棒状部51は、蓋22の厚さ方向に沿って貫通孔24をスライド可能になっている。これにより、感温部52は、棒状部51とともに容器2に対して上下方向へ移動可能になっている。即ち、温度計5は、容器2に対して上下方向へ移動可能になっている。
【0026】
ストッパ6は、温度計5とは別部材である。ストッパ6は、容器2の外部において温度計5に取り付けられている。本実施の形態では、容器2の上方の位置においてストッパ6が棒状部51に取り付けられている。
【0027】
ストッパ6は、留め具としてのねじ61によって棒状部51に取り付けられている。ストッパ6は、ねじ61の締め付けを緩めることにより、棒状部51をスライド可能になっている。これにより、温度計5に対するストッパ6の位置は、ねじ61の締め付けを緩めることにより、棒状部51の長手方向へ調整可能になる。従って、感温部52からストッパ6までの距離は、ねじ61の締め付けを緩めることにより調整可能になる。
【0028】
温度計5には、温度計5の重さ及びストッパ6の重さの両方が下方へ加わっている。これにより、温度計5は、温度計5の重さ及びストッパ6の重さによって、容器2に対して下方へ移動可能になっている。
【0029】
ストッパ6は、容器2の蓋22に掛かることにより、温度計5の下方への移動を阻止する。ストッパ6が蓋22に掛かった状態では、容器2の内部に設定された基準位置Aに感温部52が位置している。これにより、ストッパ6は、感温部52が基準位置Aよりも下方へ移動することを阻止する。
【0030】
金属積層物10がるつぼ4に収容され、かつ、るつぼ4の底部4aが電熱線3に載せられた状態では、るつぼ4の底部4aが基準位置Aよりも下方に位置しており、るつぼ4の底部4aの上面に置かれた金属積層物10に感温部52が載るようになっている。感温部52が金属積層物10に載っている状態では、温度計5が金属積層物10によって支持されることにより、ストッパ6が容器2の蓋22よりも上方へ離れた位置に保たれている。これにより、感温部52が金属積層物10に載っている状態では、感温部52の位置が基準位置Aよりも上方の位置となっている。
【0031】
図2は、図1の金属積層物10が溶融して溶融金属となった状態を示す断面図である。金属積層物10が溶融して液体状態の溶融金属20になると、溶融金属20がるつぼ4の内部に溜まる。これにより、金属積層物10による温度計5の支持がなくなり、ストッパ6が容器2の蓋22に掛かるまで、温度計5が容器2に対して下方へ移動する。
【0032】
ストッパ6は、容器2の蓋22に掛かることにより、感温部52を基準位置Aに保持し、基準位置Aよりも下方への感温部52の移動を阻止する。従って、溶融金属20がるつぼ4の内部に溜まっている状態では、基準位置Aよりも下方への感温部52の移動がストッパ6によって阻止されている。これにより、溶融金属20がるつぼ4の内部に溜まっている状態では、感温部52がるつぼ4の底部4aに接触することが回避されている。
【0033】
るつぼ4の内部に溜まっている溶融金属20の液面は、基準位置Aよりも上方に位置している。従って、溶融金属20がるつぼ4の内部に溜まっている状態では、感温部52が溶融金属20に埋まっている。金属積層物10の体積は、溶融金属20の液面が基準位置Aよりも上方に位置するように、金属積層物10を溶融する前に調整されている。
【0034】
次に、溶融装置1を用いて金属積層物10を溶融する溶融方法について説明する。図3は、図1の溶融装置1による溶融方法を示すフローチャートである。溶融装置1による溶融方法は、準備工程S1と、加熱工程S2と、注入工程S3とを有している。溶融装置1による溶融方法では、準備工程S1、加熱工程S2及び注入工程S3の順に各工程が実施される。
【0035】
<準備工程S1>
金属積層物10を溶融装置1によって溶融するときには、まず、準備工程S1を実施する。準備工程S1では、金属積層物10を収容したるつぼ4を容器2の内部に配置する。具体的には、準備工程S1では、るつぼ4の底部4aの上面に金属積層物10を置いた後、開口部23を通してるつぼ4を容器本体21の内部に入れる。容器本体21の内部では、基準位置Aよりも下方にるつぼ4の底部4aが位置するようにるつぼ4の底部4aを電熱線3に載せる。この後、蓋22を容器本体21に取り付けて開口部23を蓋22によって閉じる。このようにして、準備工程S1では、金属積層物10をるつぼ4の底部4aの上面に置き、るつぼ4の底部4aを電熱線3に載せた状態で、るつぼ4を容器2の内部に配置する。
【0036】
この後、準備工程S1では、温度計5を貫通孔24に挿入し、容器2の内部において感温部52を金属積層物10に載せる。このとき、ストッパ6の位置は、蓋22から上方へ離れた位置に保持される。従って、このときの感温部52の位置は、基準位置Aよりも上方の位置となる。
【0037】
<加熱工程S2>
準備工程S1の後、加熱工程S2を実施する。加熱工程S2では、電熱線3への給電によって電熱線3を発熱させる。このとき、制御部は、感温部52からの信号に基づいて、電熱線3への給電量を制御し、電熱線3の発熱量を調整する。これにより、金属積層物10が溶融して溶融金属20となり、溶融金属20がるつぼ4の内部に溜まる。制御部は、溶融金属20の温度が設定温度に維持されるように、電熱線3への給電量を制御する。
【0038】
金属積層物10が溶融するときには、温度計5の重さ及びストッパ6の重さによって、金属積層物10の溶融に伴う金属積層物10の変形に追従して温度計5が容器2に対して下方へ移動する。この後、感温部52が基準位置Aに達すると、ストッパ6が容器2の蓋22に掛かる。これにより、基準位置Aよりも下方への感温部52の移動がストッパ6によって阻止される。このとき、感温部52は、るつぼ4の底部4aから離れた状態で溶融金属20に埋まる。これにより、感温部52は、溶融金属20に接触して溶融金属20の温度を検出し、溶融金属20の温度に応じた信号を発生する。
【0039】
<注入工程S3>
加熱工程S2の後、注入工程S3を実施する。注入工程S3では、溶融金属20が溜まったるつぼ4を容器2の内部から取り出して、注入対象物であるソケットにるつぼ4から溶融金属20を注入する。注入工程S3では、温度計5を貫通孔24から抜くとともに、蓋22を容器本体21から取り外す。このとき、温度計5とともに蓋22を容器本体21から取り外してもよい。この後、るつぼばさみなどの保持具によって開口部23を通してるつぼ4を容器本体21の内部から取り出した後、ロープの端末が挿入されたソケットに溶融金属20をるつぼ4から注入する。この後、溶融金属20がソケットにおいて固まることにより、ソケットがロープの端末に固定される。
【0040】
このような溶融装置1では、金属積層物10を収容可能なるつぼ4が容器2の内部に対して出し入れ可能になっている。このため、金属積層物10を溶融して得られた溶融金属20をるつぼ4とともに容器2の内部から取り出すことができる。これにより、るつぼ4から別の入れ物に溶融金属20を移す必要がなくなり、注入対象物であるソケットに溶融金属20をるつぼ4から直接注入することができる。従って、溶融金属20の温度の低下を抑制することができる。このようなことから、溶融金属20の温度の低下による不具合、例えばロープの端末に対するソケットの固定強度の低下などの不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
また、るつぼ4の底部4aは、電熱線3に載せられる。金属積層物10は、るつぼ4の底部4aの上面に置かれる。このため、電熱線3が発生した熱が金属積層物10に伝わりやすくなり、電熱線3が発生した熱を金属積層物10に効率よく伝えることができる。これにより、金属積層物10の溶融時間の短縮化を図ることができる。
【0042】
また、金属積層物10がるつぼ4に収容され、かつるつぼ4の底部4aが電熱線3に載せられた状態では、るつぼ4の底部4aが基準位置Aよりも下方に位置しており、感温部52が金属積層物10に載るようになっている。このため、るつぼ4の内部において金属積層物10の溶融に伴う金属積層物10の変形に追従して感温部52を下方へ移動させることができる。これにより、金属積層物10が溶融金属20となったときにも、感温部52を溶融金属20に接触させることができる。また、基準位置Aよりも下方へ感温部52が移動することをストッパ6が阻止するため、金属積層物10が溶融金属20となったとき、感温部52がるつぼ4の底部4aに接触することを回避することができる。従って、感温部52が溶融金属20の温度を直接検出することができ、るつぼ4自体の温度が感温部52の温度の検出に影響することを防止することができる。これにより、溶融金属20の温度をより正確に検出することができる。
【0043】
また、温度計5は、温度計5の重さ及びストッパ6の重さによって、容器2に対して下方へ移動可能になっている。このため、温度計5を下方へ移動させるためのおもりとしてストッパ6を用いることができる。これにより、金属積層物10が溶融したときに感温部52をより確実に下方へ移動させることができる。また、容器2に対して温度計5を下方へ移動させるために、ストッパ6とは別におもりを温度計5に取り付ける必要がなくなる。これにより、部品点数の増加を防止することができる。
【0044】
また、温度計5に対するストッパ6の位置は、温度計5の棒状部51の長手方向において調整可能である。このため、温度計5に対するストッパ6の位置の調整によって、容器2の内部における基準位置Aを調整することができる。これにより、金属積層物10の大きさに応じて基準位置Aを設定することができる。従って、金属積層物10が溶融金属20になったときに、溶融金属20の液面の位置が基準位置Aよりも下方になってしまうことを防止することができる。これにより、ストッパ6によって基準位置Aに保持された感温部52をより確実に溶融金属20に接触させることができ、溶融金属20の温度をさらに正確に検出することができる。
【0045】
また、電熱線3の長手方向に直交する断面では、電熱線3の下部がモールド材25に固定されており、電熱線3の上部が容器2の内部の空間に露出している。このため、電熱線3が発生した熱を金属積層物10にさらに効率よく伝えることができる。これにより、金属積層物10の溶融時間の短縮化をさらに図ることができる。
【0046】
また、このような溶融方法では、加熱工程S2の後、注入工程S3において、溶融金属20が溜まったるつぼ4を容器2の内部から取り出して、注入対象物であるソケットにるつぼ4から溶融金属20を注入する。このため、るつぼ4から別の入れ物に溶融金属20を移す必要がなくなり、注入対象物であるソケットに溶融金属20をるつぼ4から直接注入することができる。従って、溶融金属20の温度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、準備工程S1では、金属積層物10をるつぼ4の底部4aの上面に置き、るつぼ4の底部4aを電熱線3に載せた状態で、るつぼ4を容器2の内部に配置する。このため、電熱線3が発生した熱が金属積層物10に伝わりやすくなり、電熱線3が発生した熱を金属積層物10に効率よく伝えることができる。これにより、金属積層物10の溶融時間の短縮化を図ることができる。
【0048】
また、準備工程S1では、基準位置Aよりも下方にるつぼ4の底部4aが位置するようにるつぼ4の底部4aを電熱線3に載せるとともに、容器2の内部において感温部52を金属積層物10に載せる。加熱工程S2では、金属積層物10の溶融に伴う金属積層物10の変形に追従して感温部52が基準位置Aに達したときに、基準位置Aよりも下方への感温部52の移動がストッパ6によって阻止される。このため、金属積層物10が溶融金属20となったとき、感温部52がるつぼ4の底部4aに接触することを回避することができる。従って、感温部52が溶融金属20の温度を直接検出することができ、溶融金属20の温度をより正確に検出することができる。
【0049】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る溶融装置を示す断面図である。溶融装置1は、容器2、電熱線3、るつぼ4、温度計5及びストッパ6に加えて、保護シート7を有している。
【0050】
保護シート7は、容器2の内部に対して出し入れ可能になっている。保護シート7は、容器2の内部において電熱線3を覆っている。保護シート7は、耐熱性及び熱伝導性を持つシートである。保護シート7としては、例えばセラミックシートが用いられる。るつぼ4の底部4aは、保護シート7を介して電熱線3に載せられる。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0051】
本実施の形態における溶融方法では、準備工程S1のみが実施の形態1とは異なる。準備工程S1では、るつぼ4を容器本体21の内部に入れる前に、開口部23を通して保護シート7を容器本体21の内部に入れる。このとき、容器本体21の内部では、保護シート7によって電熱線3を覆う。
【0052】
準備工程S1では、保護シート7が電熱線3を覆った状態で、金属積層物10を収容したるつぼ4を容器本体21の内部に入れる。このとき、容器本体21の内部では、電熱線3に保護シート7を介してるつぼ4の底部4aを載せる。他の手順は、実施の形態1と同様である。
【0053】
このような溶融装置1では、るつぼ4の底部4aが保護シート7を介して電熱線3に載せられる。このため、電熱線3を保護シート7によって保護することができる。例えば、るつぼ4の内部に溜まった溶融金属20がるつぼ4からこぼれた場合でも、溶融金属20が電熱線3に接触することを保護シート7によって防止することができる。これにより、電熱線3の損傷を抑制することができる。また、るつぼ4の底部4aを電熱線3に載せたときに、るつぼ4の底部4aが電熱線3に当たることを保護シート7によって防止することができる。これにより、電熱線3の損傷の抑制をさらに図ることができるとともに、るつぼ4の損傷も抑制することができる。さらに、例えば保護シート7に汚れが付着したり、保護シート7が損傷したりした場合、保護シート7を容易に交換することもできる。
【0054】
なお、各上記実施の形態では、温度計5の重さ及びストッパ6の重さによって、温度計5が容器2に対して下方へ移動可能になっている。しかし、ストッパ6の重さが温度計5に加わっていなくてもよい。即ち、温度計5は、温度計5の重さのみによって容器2に対して下方へ移動可能になっていてもよい。
【0055】
例えば、温度計5を吊り下げる吊り装置をストッパとして容器2に設けてもよい。この場合、ストッパとしての吊り装置は、容器2の蓋22に固定された固定柱と、固定柱の上部に固定された支持梁と、支持梁から温度計5を吊り下げる紐とを有する。また、この場合、金属積層物10に感温部52が載っている状態では、吊り装置の紐が弛む。さらに、この場合、金属積層物10が溶融して溶融金属20になると、温度計5が下方へ移動して紐によって吊り下げられる。このようにしても、感温部52が基準位置Aよりも下方へ移動することをストッパとしての吊り装置によって阻止することができ、感温部52がるつぼ4の底部4aに接触することを回避することができる。従って、温度計5は、少なくとも温度計5の重さによって、容器2に対して下方へ移動可能になっていればよい。
【0056】
また、各上記実施の形態では、温度計5の棒状部51に1つのストッパ6が取り付けられている。しかし、ストッパ6とは別のストッパを第2ストッパとして棒状部51に取り付けてもよい。この場合、第2ストッパは、第1ストッパであるストッパ6よりも棒状部51の長手方向において感温部52から遠い位置に配置される。即ち、第2ストッパは、棒状部51の長手方向においてストッパ6よりもケーブル53に近い位置に配置される。また、この場合、第2ストッパも、ストッパ6と同様に、留め具としてのねじによって棒状部51に取り付けられる。
【0057】
このようにすれば、例えばストッパ6のねじ61が緩んでストッパ6の位置が棒状部51に対して意図せずにずれた場合でも、金属積層物10が溶融したときに、第2ストッパがストッパ6を介して容器2の蓋22に掛かるようにすることができる。感温部52から第2ストッパまでの距離は、第2ストッパがストッパ6を介して容器2の蓋22に掛かったときに感温部52がるつぼ4の底部4aから離れた状態が保たれる距離に調整されている。従って、金属積層物10が溶融したときに感温部52がるつぼ4の底部4aに接触することをさらに確実に回避することができ、溶融金属20の温度をさらに正確に検出することができる。
【0058】
また、各上記実施の形態において、制御部は、感温部52によって検出された温度に基づいて、温度計5の状態に異常があるか否かを判定する異常判定部を有していてもよい。この場合、異常判定部には、感温部52によって検出された温度と比較するための閾値が設定される。また、この場合、異常判定部は、感温部52による検出温度と閾値とを比較することにより、温度計5の状態に異常があるか否かを判定する。
【0059】
例えば、異常判定部は、電熱線3への通電を開始してから一定時間経過後までの感温部52による検出温度の上昇値が閾値よりも低いときに温度計5の状態に異常があると判定する。このようにすれば、金属積層物10の加熱を開始した時点で感温部52が金属積層物10から上方へ離れた位置に止まっている場合に、温度計5の状態に異常があると判定することができる。これにより、金属積層物10の加熱を開始した時点で温度計5の状態に異常があったことを判定することができる。感温部52が金属積層物10から上方へ離れた位置に止まる原因としては、棒状部51の長手方向における感温部52からストッパ6までの距離が短すぎたり、容器2の蓋22と棒状部51との摩擦によって棒状部51が蓋22に対して移動できなくなったりすることなどが挙げられる。
【0060】
また、例えば、異常判定部は、電熱線3への通電の継続中に感温部52による検出温度が連続して下降し、温度の下がり幅が閾値以上であるときに温度計5の状態に異常があると判定する。このようにすれば、金属積層物10が溶融している途中に感温部52が金属積層物10から上方へ離れた位置に止まった場合に、温度計5の状態に異常があると判定することができる。これにより、金属積層物10を加熱している途中に温度計5の状態に異常が生じたことを判定することができる。
【0061】
また、各上記実施の形態では、温度計5は蓋22に配置され、ストッパ6が温度計5に取り付けられている。しかし、温度計5及びストッパ6は、なくてもよい。温度計5及びストッパ6がなくても、溶融金属20をるつぼ4とともに容器2の内部から取り出すことができるため、溶融金属20の温度の低下を抑制することができる。
【0062】
また、各上記実施の形態では、溶融物が注入される注入対象物としてエレベータのロープのソケットが用いられている。しかし、注入対象物は、これに限定されない。例えば、溶融物を注入して鋳物を成型する鋳型を注入対象物として用いてもよい。
【0063】
また、各上記実施の形態では、準備工程S1において、蓋22を容器本体21に取り付けた後に温度計5を貫通孔24に挿入している。しかし、準備工程S1では、温度計5を貫通孔24に挿入した後、温度計5が貫通孔24に通された状態で、蓋22を容器本体21に取り付けてもよい。
【0064】
以上、上記の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 溶融装置、2 容器、3 電熱線、4 るつぼ、4a 底部、5 温度計、6 ストッパ、7 保護シート、10 金属積層物(固体物)、20 溶融金属(溶融物)、52 感温部。
【要約】
【課題】溶融物の温度の低下を抑制することができる溶融装置、及び溶融方法を提供する。
【解決手段】溶融装置1において、るつぼ4は、容器2の内部に対して出し入れ可能になっている。容器2の内部には、電熱線3が設けられている。金属積層物10がるつぼ4に収容された状態では、金属積層物10がるつぼ4の底部4aの上面に置かれる。るつぼ4に収容された金属積層物10は、るつぼ4の底部4aが電熱線3に載せられた状態で電熱線3が発熱することにより溶融する。
【選択図】図1
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図2
図3
図4