(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】固体電解質製造用組成物、これを用いる固体電解質及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20240719BHJP
【FI】
H01M10/0565
(21)【出願番号】P 2023501856
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2022001399
(87)【国際公開番号】W WO2022169186
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0016331
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ジュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジン・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ワン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・エ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】グワン・ヘ・イ
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/151119(WO,A1)
【文献】特開2015-191866(JP,A)
【文献】特開2003-257236(JP,A)
【文献】特開2019-094452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01B1/00-1/24
1/00-
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリロタキサン(polyrotaxane)化合物、架橋剤、リチウム塩及び有機溶媒を含み、
前記架橋剤は、下記化学式1で表される化合物及び下記化学式2で表される化合物を含
み、
前記ポリロタキサン化合物は、α-シクロデキストリン分子を10個~90個含むものである、固体電解質製造用組成物:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
L1は炭素数1~10のアルキレン基であり、
[化学式2]
【化2】
前記化学式2において、
L2は炭素数1~5のアルキレン基である。
【請求項2】
前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量は10,00
0~100,00
0である、請求項
1に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項3】
前記ポリロタキサン化合物の含量は、前記固体電解質製造用組成物の全重量を基準に5重量%~20重量%である、請求項1
または2に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の重量比は1:1~10:1である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項5】
前記架橋剤の含量は、前記固体電解質製造用組成物の全重量を基準に0.5重量%~5重量%である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiNO
3及びLiClO
4のうち選択された1種以上である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項7】
前記固体電解質製造用組成物内のリチウム塩の濃度は0.05M~3.0Mである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項8】
ポリエチレンオキシド、ポリビニリデンフルオライド及びセルロースからなる群から選択されたいずれか一つ以上の高分子をさらに含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の固体電解質製造用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の固体電解質製造用組成物を熱硬化する段階を含む、リチウム二次電池用固体電解質の製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化は50℃~90℃の温度で行われるものである、請求項
9に記載のリチウム二次電池用固体電解質の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の固体電解質製造用組成物の熱硬化物を含む、リチウム二次電池用固体電解質。
【請求項12】
正極活物質を含む正極と、
負極活物質を含む負極と、
前記正極及び負極の間に介在される請求項
11に記載のリチウム二次電池用固体電解質と、を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年2月4日付けの韓国特許出願第10-2021-0016331号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、固体電解質製造用組成物、これを用いる固体電解質及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、小型化が可能であり、エネルギー密度及び使用電圧が高く、モバイル機器、電子製品、電気自動車など、多様な分野に適用されている。リチウム二次電池の適用分野が多様化するにつれて、求められる物性の条件も次第に高まっており、特に様々な環境でも安定的に駆動できるリチウム二次電池の開発が求められている。
【0004】
一般的に、二次電池は、負極、正極及びセパレータから構成された電極組立体を、円筒型、角型、又はパウチ型などの一定の空間を有するケースの内部に装着し、前記電極組立体の内部に電解質を注入させて製造する。
【0005】
従来、電気化学素子用電解質としては、非水系有機溶媒に塩を溶解させた液体状態の電解質が主に使用されてきた。しかし、このような液体電解質は、電極物質の退化を誘発し、有機溶媒の揮発の可能性が高いだけでなく、温度の上昇による燃焼などが発生し、涙液の懸念があるため、安全性が求められる様々な形態の電気化学素子の実現に困難が伴う。
【0006】
固体電解質の場合、液体電解質に比べて電気化学的安定性が高いという利点がある。しかし、常温でのイオン伝導度が液体電解質と比較したとき、著しく低く、これを改善するための研究が活発に進められているが、イオン伝導度を高めると、電気化学的範囲(electrochemical window)が縮小するなど、依然として限界がある実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、超分子物質の架橋により柔軟性を高めた固体電解質を提供しようとする。
【0008】
また、最終的には、前記固体電解質を含むことにより、安定性及びイオン伝導度が向上したリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によれば、本発明は、ポリロタキサン(polyrotaxane)化合物、架橋剤、リチウム塩及び有機溶媒を含み、前記架橋剤は、下記化学式1で表される化合物及び下記化学式2で表される化合物を含むものである、固体電解質製造用組成物を提供する。
【0010】
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
L1は炭素数1~10のアルキレン基であり、
[化学式2]
【化2】
前記化学式2において、
L2は炭素数1~5のアルキレン基である。
【0011】
他の実現例によれば、本発明は、前記固体電解質製造用組成物を熱硬化する段階を含むリチウム二次電池用固体電解質の製造方法を提供する。
【0012】
さらに他の実現例によれば、本発明は、前記固体電解質製造用組成物の熱硬化物を含むリチウム二次電池用固体電解質を提供する。
【0013】
さらに他の実現例によれば、本発明は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極及び負極の間に介在される前記リチウム二次電池用固体電解質を含むリチウム二次電池と、を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、柔軟性、引張強度及びイオン伝導度に優れた固体電解質を提供することができる。
【0015】
また、本発明では、前記固体電解質を含むことにより、安定性及びイオン伝導度が向上したリチウムイオン電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本願の比較例3で使用された線状高分子プルラン(Pullulan)の分子構造(a)及び比較例4で使用された環状高分子PCDの分子構造(b)を示す図である。
【
図3】本発明に係る固体電解質において、ポリロタキサン化合物が架橋剤を介して形成している架橋ネットワークを示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例1で製造された固体電解質の温度によるイオン伝導性の変化を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1及び比較例1~4で製造された固体電解質の引張物性を測定した結果である。
【
図6】本発明の実施例1で製造された固体電解質を適用した電池のCV曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。固体高分子電解質において最も一般的に使用されている高分子はPEO(poly(ethylene oxide))であって、PEOは固体状であるにもかかわらず、リチウムイオンを伝導させる能力があるが、高い結晶性により柔軟性が低く、低い誘電定数により多量のリチウムイオンを解離させることができず、常温でのイオン伝導度が低いため、リチウム二次電池に適用し難いという欠点がある。そこで、PEOベースの高分子をブランディングしたり、ブロック共重合体(block copolymer)で合成したりするなどの改質によってイオン伝導度を高める研究が多く行われてきた。
【0018】
しかし、このような方法でイオン伝導度を高める場合、イオン伝導度とトレードオフ(trade-off)関係にある機械的物性が低下するという問題点がある。そこで、本発明者らは、超分子物質であるポリロタキサン(polyrotaxane)を導入して、イオン伝導度及び電気化学的範囲(electrochemical window)をいずれも改善できることを見出した。特に、特定の架橋剤との組み合わせにおいて柔軟性の改善効果が顕著であることを確認した。
【0019】
前記ポリロタキサンは、線状構造の高分子鎖、例えば、PEG(polyethylene glycol)にシクロデキストリンのような環状の環分子(
図1(a))が縫い込まれている構造(
図1(b))であって、高分子鎖に沿って環分子が移動及び回転することができる超分子物質である。ポリロタキサンは、架橋剤を介して
図3のようにネットワーク構造を形成することができる。
【0020】
具体的に、本発明の固体電解質製造用組成物は、ポリロタキサン(polyrotaxane)化合物、架橋剤、リチウム塩及び有機溶媒を含み、以下で、各構成についてより詳細に説明する。
【0021】
固体電解質製造用組成物
(a)ポリロタキサン
本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物はマトリックス高分子として使用されたものである。本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物は、α-シクロデキストリン(alpha-cyclodextrin、α-CD)分子を10個~90個、好ましくは10個~50個含む。α-CD分子が90個以下、好ましくは50個以下で含まれる場合、ポリロタキサンの分子運動性がさらに活発であるという利点がある。α-CD分子は、PEGとの包接複合体(Inclusion Complex)が形成されるのに適した大きさであり、β-CD及びγ-CDを使用したポリロタキサンの製造法に比べて合成が容易であるという利点がある。また、α-CD分子が90個以下、好ましくは50個以下で含まれる場合、ポリロタキサンの分子運動性が活発であり、これにより、高いイオン伝導性を確保することができるという利点がある。
【0022】
前記α-CDは、分子内に18個のヒドロキシ基を含んでおり、ヒドロキシ基を介して官能基の導入が容易であるため、高い密度で架橋点を形成させることができるだけでなく、このように架橋されたα-CDが高分子鎖に沿って移動又は回転できるため、高い柔軟性及びイオン伝導性を有することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物の末端基は、下記化学式Eで表される構造であってもよい。
[化学式E]
【化3】
【0024】
これ以外にも、前記ポリロタキサン化合物の末端基は、N-カルボベンゾキシ-L-チロシン(N-carbobenzoxy-L-tyrosine)及びN-カルボベンゾキシ-L-フェニルアラニン(N-carbobenzoxy-L-phenylalanine)、1-アダマンタンカルボン酸(1-adamantane carboxylic acid)のうち選択された化合物が連結されて形成された官能基であってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物の重量平均分子量は、10,000g/mol~100,000g/mol、好ましくは20,000g/mol~90,000g/mol、最も好ましくは40,000g/mol~60,000g/molであってもよい。前記範囲に含まれるとき、分子運動性が極大化する効果がある。
【0026】
本発明において「重量平均分子量」とは、ゲル透過クロマトグラフィ(GEL Premeation Chromatography:GPC)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味することができ、特に別途規定しない限り、分子量は重量平均分子量を意味することができる。例えば、本発明では、GPC条件でAgilent社の1200シリーズを用いて測定し、このとき使用されたカラムはAgilent社のPL mixed Bカラムを用いることができ、溶媒はDMSOを使用する。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物の含量は、前記固体電解質製造用組成物の全重量を基準に5重量%~20重量%、好ましくは8重量%~15重量%であってもよい。
【0028】
前記ポリロタキサン化合物の含量が前記範囲にあるとき、高いイオン伝導性が確保できるという点で好ましい。具体的に、5重量%未満の場合、ポリロタキサンの含量が少ないため、全体的に表面の均一性が低下して回収可能な単一層フィルム(Single film)の形成が難しいという問題があり、20重量%を超える場合、ポリロタキサン高分子の結晶性が高くなってイオン伝導性が低下するという問題点がある。
【0029】
一方、前記固体電解質製造用組成物は、ポリエチレンオキシド(Poly(ethylene oxide)、ポリビニリデンフルオライド(Poly(vinylidene fluoride))及びセルロース(Cellulose)からなる群から選択されたいずれか一つ以上の高分子をさらに含むことができ、前記高分子の重量平均分子量は100,000g/mol~1,000,000g/molであってもよい。この場合、相対的に高価であり、多段階の合成工程を経なければならないポリロタキサン化合物の使用量を減少させてコストを削減しながらも、相対的に長い鎖(chain)を有する高分子を添加することにより、電解質ネットワークを堅固にして機械的強度を高めることができるという利点があり、このとき、前記高分子の含量は、前記固体電解質製造用組成物の全重量を基準に2重量%~30重量%であってもよい。
【0030】
(b)架橋剤
本発明の一実施形態において、前記架橋剤は、下記化学式1で表される化合物及び下記化学式2で表される化合物を含み、好ましくは、下記化学式1で表される化合物及び下記化学式2で表される化合物からなることができる。
【0031】
[化学式1]
【化4】
前記化学式1において、
L1は炭素数1~10のアルキレン基であり、
[化学式2]
【化5】
前記化学式2において、
L2は炭素数1~5のアルキレン基である。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記L1は炭素数3~8のアルキレン基であり、好ましくはヘキシレン(hexylene)基である。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(Hexametylene diisocyanate)である。
【0034】
前記化学式1で表される化合物は、架橋剤のうちソフトセグメント(Soft segment)であって、構造内のアルキレン基が回転することができることから、様々な異性体を形成することができるため、柔軟な架橋剤の役割を果たすことができる。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記L2は炭素数1~3のアルキレン基であり、好ましくはメチレン(methylene)基である。
【0036】
本発明の一実施形態において、前記化学式2で表される化合物は、4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4-methylene diphenyl diisocyanate)である。前記式2で表される化合物は、架橋剤のうちハードセグメントであって、有し得る異性体構造の数が少なく、堅固な架橋剤の役割を果たすことができる。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の重量比は、1:1~10:1、好ましくは2:1~6:1、さらに好ましくは3:1~5:1である。
【0038】
前記化学式1で表される化合物及び前記化学式2で表される化合物の重量比が前記範囲にあるとき、引張強度及び引張伸びを適切に確保可能であるという点で好ましい。具体的に、化学式1で表される化合物の含量が前記範囲に比べて多くなる場合、引張強度、すなわち、機械的強度が低くなるという点で好ましくなく、化学式2で表される化合物の含量が前記範囲に比べて多くなる場合、引張伸びが低下するという点で好ましくない。引張強度が過度に高くなる場合、むしろイオン伝導度が減少し得るため、このようにソフトセグメントとハードセグメントを適切な割合で使用することが重要である。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記架橋剤の含量は、前記固体電解質製造用組成物の全重量を基準に0.5重量%~5重量%、好ましくは0.5重量%~3重量%、さらに好ましくは1重量%~2重量%である。
【0040】
前記架橋剤の含量が前記範囲にあるとき、適切な引張物性を確保可能であるという点で好ましい。具体的に、0.5重量%未満の場合、架橋体の形成が十分に行われず、電解質フィルムが形成されない可能性があり、5重量%超過の場合、引張伸びが低下するという問題点がある。
【0041】
(c)リチウム塩
前記リチウム塩は、リチウム二次電池用電解質に通常的に使用されるものが制限なく使用されることができ、例えば、カチオンとしてLi+を含み、アニオンとしては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、B10Cl10
-、AlCl4
-、AlO4
-、PF6
-、CF3SO3
-、CH3CO2
-、CF3CO2
-、AsF6
-、SbF6
-、CH3SO3
-、(CF3CF2SO2)2N-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、BF2C2O4
-、BC4O8
-、BF2C2O4CHF-、PF4C2O4
-、PF2C4O8
-、PO2F2
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、C4F9SO3
-、CF3CF2SO3
-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、CF3(CF2)7SO3-及びSCN-からなる群から選択された少なくともいずれか一つを含むことができる。
【0042】
具体的に、前記リチウム塩は、LiNO3、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiFSI、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Lithium bis(pentafluoroethanesulfonyl)imide、LiBETI)、LiSO3CF3、LiPO2F2、リチウムビス(オキサレート)ボレート(Lithium bis(oxalate)borate、LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(Lithium difluoro(oxalate)borate、LiFOB)、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)ホスフェート(Lithium difluoro(bisoxalato)phosphate、LiDFBP)、リチウムテトラフルオロ(オキサレート)ホスフェート(Lithium tetrafluoro(oxalate) phosphate、LiTFOP)、及びリチウムフルオロマロナート(ジフルオロ)ボレート(Lithium fluoromalonato(difluoro)borate、LiFMDFB)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはLiNO3及びLiClO4のうち選択された1種以上であってもよく、最も好ましくはLiNO3であってもよい。リチウム塩がLiNO3の場合、分子量が小さくてイオンがさらに活発に移動できるという利点がある。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記固体電解質製造用組成物内のリチウム塩の濃度は0.05M~3.0M、好ましくは1.25M~2.5M、さらに好ましくは1.5M~2.0Mであってもよい。前記リチウム塩の濃度が0.05M未満であると、イオン伝導性が低いという欠点があり、3.0Mの濃度を超えると、塩が高分子フィルムの形成を妨げるため、架橋体の形成も妨げられる可能性がある。
【0044】
(d)有機溶媒
前記有機溶媒としては、リチウム電解質に通常的に使用される様々な有機溶媒が制限なく使用されることができる。例えば、アセトン、エタノール、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)、無水ジメチルスルホキシド(anhydrous dimethyl sulfoxide)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びテトラヒドロフラン(THF)のうち選択された1種以上、好ましくは、ポリロタキサン化合物を容易に溶解させることができる無水ジメチルスルホキシドを使用することができ、ポリロタキサンの改質によって溶解度を変更する際に、その他の有機溶媒も使用可能である。
【0045】
前記固体電解質製造用組成物の全重量のうち、有機溶媒を除いた他の構成成分、例えば、前記ポリロタキサン化合物、架橋剤及びリチウム塩の含量を除いた残部は、特に断りのない限り、全て有機溶媒であってもよい。
【0046】
固体電解質
本発明の固体電解質は、本発明の一実施形態に係る固体電解質製造用組成物を使用したことを除いては、当業界に周知された方法によって製造することができる。例えば、テフロン(登録商標)板に前記固体電解質製造用組成物を塗布した後、熱処理過程を経ることができる。
【0047】
具体的に、本発明の一実施形態に係る固体電解質の製造方法は、前記固体電解質製造用組成物を熱硬化する段階を含む。すなわち、本発明に係るリチウム二次電池用固体電解質は、固体電解質製造用組成物の熱硬化物を含む。
【0048】
前記熱硬化は50℃~90℃、好ましくは60℃~80℃で行われることができる。熱硬化温度が50℃未満の場合、硬化時間が24時間以上長くかかるという問題がある可能性があり、90℃超過の場合、高分子が収縮する現象が現れる可能性があるという点で好ましくない。
【0049】
前記組成物が塗布及び熱硬化したテフロン(登録商標)板を真空条件で乾燥させた後、テフロン(登録商標)板から固体フィルムを剥がすと、リチウム二次電池用固体電解質が形成される。その後、80℃~120℃のオーブンで熱処理することにより、後処理工程を行うことができる。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記ポリロタキサン化合物の含量は、前記固体電解質の全重量を基準に50重量%~90重量%、好ましくは50重量%~60重量%であってもよい。これは、溶媒が除去され、固体電解質が形成された後の固形分基準含量を意味する。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記架橋剤の含量は、前記固体電解質の全重量を基準に5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~20重量%であってもよい。これは、溶媒が除去され、固体電解質が形成された後の固形分基準含量を意味する。
【0052】
本発明の一実施形態において、前記固体電解質は、必要に応じてバインダー樹脂をさらに含むことができる。前記バインダー樹脂は、固体電解質材料間の結着、及び固体電解質層とこの両面に積層された電池要素(例えば、支持層及び/又は電極)との結着のために導入されることができる。バインダー樹脂の材料としては、特に限定されるものではなく、電気化学素子用結着剤として使用される成分の範囲内で適宜選択することができる。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記固体電解質の厚さは300μm以下、好ましくは50μm~100μmであってもよい。前記厚さは、上述の範囲内でイオン伝導度、物理的強度、適用される電池のエネルギー密度などを考慮して適切な厚さを有することができる。例えば、イオン伝導度やエネルギー密度の観点から、前記厚さは100μm以下、又は70μm以下、又は60μm以下とすることができる。一方、物理的強度の観点から、前記厚さは50μm以上、又は60μm以上、又は70μm以上とすることができる。
【0054】
リチウム二次電池
次に、本発明に係るリチウム二次電池について説明する。本発明に係るリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、前記正極及び負極の間に介在する前述のリチウム二次電池用固体電解質を含む。本発明に係る固体電解質は、自立型(free-standing)高分子電解質であって、一般的なセパレータの代わりにフィルム(film)状のセパレータの役割を果たすことができるが、必要に応じてセパレータをさらに含むこともできる。
【0055】
前記固体電解質は、フィルム状に製造した後、既に製造された負極、正極及びセパレータのうち少なくとも一面に介在(導入)するか、又は前述した固体電解質製造用組成物を既に製造された負極、正極及びセパレータのうち少なくとも一面に直接塗布した後、乾燥及び硬化して導入することもできる。リチウム二次電池の構成要素のうち固体電解質については上述したため、これに対する説明は省略し、以下では他の構成要素について説明する。
【0056】
(a)正極
本発明に係る正極は、正極活物質を含み、正極集電体上に正極活物質、バインダー、導電材及び溶媒などを含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0057】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;又はアルミニウムやステンレス鋼の表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの等が使用されてもよい。
【0058】
前記正極活物質として、リチウム遷移金属酸化物が使用されてもよく、充放電時にリチウムイオンの挿入又は脱離が容易に起こるものであれば、制限なく使用可能であるが、例えば、リチウム-ニッケルコバルト系複合酸化物、リチウム-マンガン系複合酸化物及びリチウム-リン酸鉄系複合酸化物のうち選択された1種以上であってもよい。
【0059】
前記リチウム-ニッケルコバルト系複合酸化物は、下記化学式3で表されることができる。
[化学式3]
Li(NiaCobMncMd)O2
【0060】
前記化学式3において、MはW、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B又はMoであり、a、b、c及びdはそれぞれ独立した元素の原子分率であって、0.50≦a≦0.90、0.05≦b≦0.25、0.05≦c≦0.25、0≦d≦0.05、a+b+c+d=1である。
【0061】
好ましくは、前記化学式3において、前記MはAlであり、前記a、b、c及びdはそれぞれ0.60≦a≦0.90、0.05≦b≦0.20、0.05≦c≦0.20、0≦d≦0.03であってもよい。
【0062】
ニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)を含むNCM正極活物質の場合、Niの含量を高めるほど、より高いエネルギー密度を実現することができるが、正極の表面反応性及び安定性が劣化するという欠点がある。しかし、前記Mとしてアルミニウム(Al)を導入する場合、これを補完することができる。
【0063】
前記リチウム-マンガン系複合酸化物は、LiMnO2、LiMnO3、LiMn2O3、Li2MnO3、Li1+y1Mn2-y1O4(0≦y1≦0.33)、LiMn2-y2My3O4(MはNi、Co、Fe、P、S、Zr、Ti及びAlのうち選択された1種以上であり、0≦y2≦2である。)、LiMn2-y3My3O2(MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn及びTaのうち選択された1種以上であり、0.01≦y3≦0.1である。)、又はLi2Mn3MO8(MはFe、Co、Ni、Cu及びZnのうち選択された1種以上である。)であってもよい。
【0064】
前記リチウム-リン酸鉄系複合酸化物は、下記化学式4で表されることができる。
[化学式4]
LiFe1-xMxPO4
【0065】
前記化学式4において、MはNi、Co、Mn、Al、Mg、Y、Zn、In、Ru、Sn、Sb、Ti、Te、Nb、Mo、Cr、Zr、W、Ir及びVのうち選択された1種以上であり、0≦x<1である。
【0066】
前記正極活物質は、正極スラリー中の固形分の全重量を基準に60重量%~99重量%、具体的に70重量%~90重量%で含まれてもよい。このとき、前記正極活物質の含量が60重量%以下の場合、エネルギー密度が低くなり、容量が低下する可能性がある。
【0067】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分であって、通常的に、正極スラリー中の固形分の全重量を基準に1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム又はこれらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0068】
また、前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を付与する物質であって、正極スラリー中の固形分の全重量を基準に0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。
【0069】
前記導電材の例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック又はサーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、炭素ナノチューブ又はグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維又は金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末又はニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛又はチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0070】
また、前記正極スラリーの溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含むことができ、前記正極活物質、バインダー及び導電材等を含むときに好ましい粘度となる量で使用されることができる。例えば、正極活物質、バインダー及び導電材を含む正極スラリー中の固形分濃度が5重量%~90重量%、好ましくは5重量%~80重量%となるように含まれることができる。
【0071】
(b)負極
本発明に係る負極は負極活物質を含み、負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材及び溶媒等を含む負極スラリーをコーティングした後、乾燥及び圧延して製造することができる。
【0072】
前記負極集電体は、一般的に3μm~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅又はステンレス鋼の表面をカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの;又はアルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0073】
また、前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる炭素物質;金属又はこれらの金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質;リチウム金属;及び遷移金属酸化物のうち選択された一つ以上を含むことができる。
【0074】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般的に使用される炭素系負極活物質であれば、特に制限なく使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素又はこれらを共に使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、又は繊維状の天然黒鉛、又は人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0075】
前記金属又はこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al及びSnからなる群から選択される金属又はこれらの金属とリチウムの合金が使用されることができる。
【0076】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4、Bi2O5、LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)及びSnxMe1-xMe’yOz (Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択された1種以上が使用されることができる。
【0077】
前記リチウムをドープ及び脱ドープすることができる物質としては、Si、SiOx(0<x≦2)、Si-Y合金(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-Y(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうち少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db(dubnium)、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。
【0078】
前記遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。前記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全重量を基準に80重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0079】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分であって、通常的に、負極スラリー中の固形分の全重量を基準に1重量%~30重量%の含量で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム又はこれらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0080】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極スラリー中の固形分の全重量を基準に0.5重量%~20重量%で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、炭素ナノチューブ又はグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維又は金属繊維などの導電性繊維;フッ化炭素粉末、アルミニウム粉末又はニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛又はチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0081】
前記負極スラリーの溶媒は水;又はNMP及びアルコールなどの有機溶媒を含むことができ、前記負極活物質、バインダー及び導電材などを含むときに好ましい粘度となる量で使用されることができる。例えば、負極活物質、バインダー及び導電材を含むスラリー中の固形分濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%となるように含まれてもよい。
【0082】
(c)セパレータ
本発明に係るリチウム二次電池は、前記正極及び負極の間にセパレータを含むことができる。前記セパレータは負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特別な制限なく使用可能である。
【0083】
具体的には、セパレータとして多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造された多孔性高分子フィルム;又はこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常的な多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性又は機械的強度を確保するために、セラミック成分又は高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、単層又は多層構造として使用されてもよい。
【0084】
本発明に係るリチウム二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器;及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車の分野などに有用に使用されることができる。
【0085】
これにより、本発明の他の一実現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;及び電力貯蔵用システムのうち一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0086】
本発明のリチウム二次電池の外形には特に制限がないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型、又はコイン(coin)型などであってもよい。
【0087】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用可能であるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0088】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0089】
<実施例>
実施例1.
(固体電解質製造用組成物の製造)
グローブボックス内で、無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(anhydrous dimethylsulfoxide)溶媒2gにポリロタキサン0.3g(-OH当量=4.5mmol)、架橋剤及びLiNO
3を入れて均一に混合し、固体電解質製造用組成物を製造した。このとき、ポリロタキサンとしては、
図1の(b)のような構造のMw=60,000g/mol、貫通されたα-CDの個数=50個であるものを使用し、架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethyldiisocyanate)(HDI)と4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(4,4’-methylene diphenyl diisocyanate)(MDI)が4:1の重量比で混合されたものを組成物内の含量が1.3重量%となるように使用し、LiNO
3の濃度は1.75Mに合わせた。
【0090】
(固体電解質の製造)
グローブボックス内で、よく混合された前記固体電解質製造用組成物をテフロン(登録商標)シャーレに注いでキャスティングし、密閉容器に入れて密閉させた後、60℃のオーブンで24時間、70℃のオーブンで24時間硬化させた。大気と接触しないようにアルゴン雰囲気で密閉された容器を開き、真空状態で1時間乾燥した後、グローブボックス内でフィルムを回収し、下記の各実験例の遂行に適した大きさにパンチング(punching)し、100℃のオーブンで熱処理を行った。
【0091】
実施例2.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を1.25Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0092】
実施例3.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を1.5Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0093】
実施例4.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を2Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0094】
実施例5.
組成物の製造時に、LiNO3の代わりにLiClO4(Lithium perchlorate)を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0095】
実施例6.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を0.1Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0096】
実施例7.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を0.2Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0097】
実施例8.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を0.5Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0098】
実施例9.
組成物の製造時に、LiNO3の濃度を1Mに変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0099】
比較例1.
架橋剤として4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(4,4’-methylene diphenyl diisocyanate)(MDI)は使用せず、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethyldiisocyanate)(HDI)のみを組成物内の含量が1.3重量%となるように使用し、LiNO3の濃度は1.75Mに合わせたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0100】
比較例2.
架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethyldiisocyanate)(HDI)は使用せず、4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(4,4’-methylene diphenyl diisocyanate)(MDI)のみを組成物内の含量が1.3重量%となるように使用し、LiNO3の濃度は1.75Mに合わせたことを除いては、実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0101】
比較例3.
組成物の製造時に、ポリロタキサンの代わりに線状高分子プルラン(Pullulan)(
図2の(a)構造、Mw=300,000g/mol)を使用し、架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethyldiisocyanate)(HDI)と4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(4,4’-methylene diphenyl diisocyanate)(MDI)が4:1の重量比で混合されたものを組成物内の含量が1.3重量%となるように使用し、LiNO
3の濃度は1.75Mに合わせたことを除いては、実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0102】
比較例4.
組成物の製造時に、ポリロタキサンの代わりに環状高分子ポリ(α-シクロデキストリン(Poly(α-cyclodextrin))(
図2の(b)構造、Mw=10,000g/mol)を使用し、架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethyldiisocyanate)(HDI)と4,4’-メチレンジフェニルイソシアネート(4,4’-methylene diphenyl diisocyanate)(MDI)が4:1の重量比で混合されたものを組成物内の含量が1.3重量%となるように使用し、LiNO
3の濃度は1.75Mに合わせたことを除いては、実施例1と同様の方法で固体電解質を製造した。
【0103】
<実験例>
実験例1.イオン伝導度の評価
前記実施例1~5及び比較例1~4で製造された固体電解質のイオン伝導度は、インピーダンスを測定した後、下記数学式1を用いて求めた。
【0104】
具体的に、測定のために1cm2(1cm×1cm)の広さと3mmの厚さを有する前記の各実施例及び比較例の固体電解質サンプルを用意した。板状のサンプルの両面にイオン遮断電極(ion blocking electrode)で電子伝導性に優れたサス(SUS)基板を接触させた後、サンプルの両面の電極を介して交流電圧を印加した。このとき、印加される条件として測定周波数を0.1Hz~1MHzの振幅範囲に設定し、インピーダンスを測定した。測定されたインピーダンス軌跡の半円や直線が実収縮と出会う交点(Rb)からバルク電解質の抵抗を求め、サンプルの広さと厚さから各固体電解質のイオン伝導度を計算して下記表1に示した。
【0105】
また、実施例1については、温度によるイオン伝導度の変化を測定し、アレニウスプロっと(Arrhenius plot)を通じて図式化した結果を
図4に示した。
[数学式1]
【数1】
σ:イオン伝導度
R
b:インピーダンス軌跡が実収縮との交点
A:サンプルの広さ
t:サンプルの厚さ
【0106】
【0107】
前記表1の実施例1~実施例3の結果により、リチウム塩の濃度が高くなるほど、イオン伝導度が高くなることが確認できる。ただし、実施例4の場合、イオン伝導度が実施例1に比べて低くなったが、これにより、一定濃度以上(2M以上)ではイオン伝導度の向上効果が低下することが確認できる。また、同じ濃度の互いに異なるリチウム塩を使用した実施例1及び実施例5を比較してみると、リチウム塩の分子量が小さいほど、イオン伝導度が高いことが確認できる。
【0108】
なお、リチウム塩の濃度及び種類が同じ実施例1及び比較例1~4を比較してみると、マトリックスとしてポリロタキサン化合物を使用し、架橋剤として化学式1で表される化合物(HDI)及び化学式2で表される化合物(MDI)を共に使用した実施例1が、比較例1~4に比べてイオン伝導度が高いことが確認できる。
【0109】
具体的に、高分子マトリックスとして線状高分子を使用した比較例3及び環状高分子を使用した比較例4に比べて、ネックレス構造のポリロタキサンを使用した実施例1の場合、分子の運動性によりイオン伝導度がさらに高いことが確認できる。また、高分子マトリックスとしてポリロタキサンを使用しても、比較例1及び2のように架橋剤としてHDI又はMDIのみを使用する場合、イオン伝導度の向上効果が低下することが分かる。
【0110】
さらに、
図4を通じて実施例1による電解質高分子のイオン伝導性が温度の変化に応じて線状に変化することが確認でき、これは、ポリロタキサン化合物を含む固体電解質がアレニウス輸送モデル(Arrhenius transport model)に従うことを意味する。
【0111】
実験例2.機械的物性の測定
5mm×50mmサイズの前記実施例1~3及び6~9、及び比較例1~4で作製された固体電解質のサンプルを、温度25℃、湿度60%でmicro tensile testerを用いて5mm/minの速度で引張し、引張強度(tensile strength)、引張伸び(tensile strain)及び引張靭性(tensile toughness)を測定して下記表2の結果を得た。同じ濃度のリチウム塩を使用した実施例1及び比較例1~4については、引張物性の測定結果を
図5のグラフにも示した。
【0112】
【0113】
前記表2の結果により、実施例1~3及び6~9の場合、引張強度、引張伸び及び引張靭性が同時に高く現れるのに対し、比較例1~4の場合、そうでないことが確認できる。具体的に、架橋剤としてMDIを使用していない比較例1及びHDIを使用していない比較例2の場合、引張強度、引張伸び及び引張靭性がいずれも実施例1に比べて大きく減少したことが確認できる。特に、比較例2で引張伸びが大幅に減少したのは、線状構造の柔軟なHDIに比べて硬い構造を有するMDI架橋剤のベンゼン構造による影響と見られる。
【0114】
また、本発明の一実施形態によってネックレス構造のポリロタキサン化合物を使用した実施例1の場合、線状のプルラン(Pullulan)を使用した比較例3に比べて、引張強度、引張伸び及び引張靭性がいずれも優れていることが確認できる。また、環状の高分子PCDを使用した比較例4と比較したとき、引張強度は類似のレベルであるが、引張伸び及び靭性がはるかに優れていることが確認できる。
【0115】
特に、
図5のグラフを通じて、同じリチウム塩の濃度条件で引張物性の差を一目で確認できるが、(a)のグラフを通じて、実施例1で引張伸びと引張強度を同時に高く確保できる点を、(b)のグラフを通じて、実施例1の引張靭性が最も優れていることが分かる。さらに、実施例1~3及び6~9間の比較を通じては、リチウム塩の含量が低いほど、引張強度及び引張伸びが向上することが確認できる。
【0116】
実験例3.リチウム二次電池の性能評価
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に正極活物質(LiFePO4)、導電材(カーボンブラック)及びバインダー(ポリビニリデンフルオライド)を8:1:1の重量比で添加して正極スラリー(固形分含量:37.4重量%)を製造した。前記正極スラリーを12μm厚さの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布及び乾燥した後、プレス(press)を実施してローディング量が6.0mg/cm2以上である正極を製造した。負極活物質はリチウムリボンを使用した。
【0117】
前記正極、実施例1により製造された固体電解質及び負極を順次に積層して電極組立体を製造した後、コイン型の電池ケース内に前記組み立てられた電極組立体を収納することによりリチウム二次電池を製造した。
【0118】
製造されたリチウム二次電池を60℃で0.1Cレート(rate)の電流で、電圧が4.0Vに達するまで定電流(CC)充電し、次いで0.1Cレート(rate)の定電流(CC)で放電し、2.5Vでカットオフ(cut-off)して5回行った。次いで、前記のような方法で0.2Cレート(rate)の電流で定電流(CC)充電と放電を連続的に行った後、電池容量を測定して
図6に示した。
【0119】
図6の充電及び放電曲線に示すように、実施例1の固体電解質を採用した電池は、充電と放電の電圧差が0.09Vに過ぎず、安定的に充/放電させることができることが分かる。さらに、0.1C-rateから0.2C-rateに、2倍の高い律速でも、充/放電曲線の電圧差は0.09Vのままで保持されることが示される。これは、電解質の高い安定性及びイオン伝導度に起因した結果である。