(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20240719BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240719BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20240719BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J13/08 A
B23P19/04 G
B23P21/00 307P
(21)【出願番号】P 2023501962
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007389
(87)【国際公開番号】W WO2022180797
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 隼人
(72)【発明者】
【氏名】西山 識
(72)【発明者】
【氏名】福本 陵平
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013215(JP,A)
【文献】特開2020-196069(JP,A)
【文献】特開2003-062727(JP,A)
【文献】特開2008-307645(JP,A)
【文献】特開2017-215773(JP,A)
【文献】特開2019-188516(JP,A)
【文献】特開2018-130789(JP,A)
【文献】特開2001-024387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23P 19/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを供給する供給部、および作業対象物を配置する配置部をそれぞれ有する複数のステージと、
前記複数のステージの間を移動可能であり、前記作業対象物に対して前記ワークを使用する作業を行うロボットと、
前記ロボットが第一の
前記ステージに移動して
第一の前記ステージが有する第一の前記供給部と第一の前記配置部とで前記作業を行っている時に、
第一の前記供給部の前記ワークを補給する必要
、および第一の前記配置部に配置された前記作業対象物を入れ替える必要
のどちらか一方のみが生じた場合に、前記ロボットを第二の
前記ステージに移動させて
第二の前記ステージが有する第二の前記供給部と第二の前記配置部とで前記作業を継続させる作業制御部と、
を備えるロボットシステム。
【請求項2】
前記作業制御部は、第一の
前記ステージにおいて前記ロボットが
第一の前記供給部の前記ワークを使い尽くした場合、または前記ロボットが
第一の前記配置部に配置された前記作業対象物に対する前記作業を終了した場合に、前記ロボットを第二の
前記ステージに移動させる、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
複数の
前記ステージの各々の前記供給部および前記配置部を一括してまたは個別に、複数の
前記ステージを包含する生産エリアの内部と外部の間で出し入れする複数のスライド機構を備える、請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記作業制御部は、前記ワークを補給する必要が生じた前記供給部を前記生産エリアの前記内部から前記外部に押し出すように前記スライド機構を制御する、請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記スライド機構は、前記生産エリアの前記外部において前記ワークが補給された前記供給部を前記生産エリアの前記内部に引き込む、請求項3または4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記作業制御部は、前記作業対象物を入れ替える必要が生じた前記配置部を前記生産エリアの前記内部から前記外部に押し出すように前記スライド機構を制御する、請求項3~5のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記スライド機構は、前記生産エリアの前記外部において前記作業対象物の入れ替えが済んだ前記配置部を前記生産エリアの前記内部に引き込む、請求項3~6のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記生産エリアの前記内部において、オペレータによる前記ワークの補給操作、および前記オペレータによる前記作業対象物の入れ替え操作が禁止され、
前記生産エリアの前記外部において、前記オペレータによる前記ワークの前記補給操作、および前記オペレータによる前記作業対象物の前記入れ替え操作が許容される、
請求項3~7のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ワークを補給する必要が生じる時期、および前記作業対象物を入れ替える必要が生じる時期の少なくとも一方を検出して、または予測してオペレータに通知する通知部を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記供給部が供給する前記ワークの正誤、および前記配置部に配置された前記作業対象物の正誤の少なくとも一方を確認する確認部を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記ロボットまたは前記ステージは、前記ワークおよび前記作業対象物の少なくとも一方を撮像して画像データを取得するカメラを有し、
前記ロボットシステムは、前記画像データに画像処理を施すことにより、前記供給部の前記ワークの使用状況に関する情報、前記供給部の前記ワークの正誤に関する情報、前記配置部に配置された前記作業対象物への前記作業の進捗状況に関する情報、および前記配置部に配置された前記作業対象物の正誤に関する情報、のうち少なくとも一情報を求める画像処理部を備える、
請求項1~10のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記供給部は、前記ワークを覆うとともに、前記ロボットおよびオペレータによって開閉操作される保護カバーを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記配置部は、前記作業対象物を覆うとともに、前記ロボットおよびオペレータによって開閉操作される保護カバーを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記作業対象物は、複数の収容部をもつトレイであり、
前記ロボットが行う前記作業は、前記ワークを前記供給部から採取して前記トレイの前記収容部の各々に載置する移載作業である、
請求項1~13のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、作業対象物に対してワークを使用する作業を行うロボットを備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や事業所などの自動化、省力化を推進するために、所定の作業を繰り返して行うロボットが広く用いられている。例えば、特許文献1に開示された作業ロボットシステムは、物品(作業対象物)を搬送する搬送装置と、物品の取り付け部に部品(ワーク)を取り付ける作業ロボットと、作業ロボットを制御する作業ロボット制御部と、を備える。これによれば、物品の搬入および搬出が搬送装置によって自動的に行われ、オペレータが不在であっても、作業ロボットによる取り付け作業が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の作業ロボットシステムにおいて、一つの物品(作業対象物)に対する部品(ワーク)の取り付け作業が終了すると、搬送装置によって当該物品が搬出され、次の物品が搬入される。作業ロボットは、物品が搬出および搬入される間、一時的な停止状態となり、次の物品が搬入された後に取り付け作業を再開する。また、取り付け作業が進むと、予め用意されていた部品が無くなる。この場合、作業ロボットは、一時的な停止状態となり、オペレータによって部品が補給された後に取り付け作業を再開する。上記した一時的な停止状態により、作業ロボットの作業効率が低下する。
【0005】
それゆえ、本明細書では、ロボットの作業効率の低下を抑制することができるロボットシステムを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、ワークを供給する供給部、および作業対象物を配置する配置部をそれぞれ有する複数のステージと、前記複数のステージの間を移動可能であり、前記作業対象物に対して前記ワークを使用する作業を行うロボットと、前記ロボットが第一のステージに移動して前記作業を行っている時に、前記供給部の前記ワークを補給する必要が生じた場合、または前記配置部に配置された前記作業対象物を入れ替える必要が生じた場合に、前記ロボットを第二のステージに移動させて前記作業を継続させる作業制御部と、を備えるロボットシステムを開示する。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示するロボットシステムでは、ロボットが第一のステージに移動して作業を行っている時に、供給部のワークを補給する必要が生じた場合、または配置部に配置された作業対象物を入れ替える必要が生じた場合に、ロボットを第二のステージに移動させて作業を継続させる。これによれば、ロボットが第二のステージに移動して作業を継続している間に、第一のステージでワークの補給、または作業対象物の入れ替えを行い、ロボットが再来して作業を行うための状況を整備することができる。さらに、この状況整備は、第一および第二のステージで交互に繰り返して行うことができる。したがって、ロボットの一時的な停止状態を削減して、作業効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のロボットシステムの全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】ロボットおよびボックスの構成例を模式的に示す側面図である。
【
図3】ロボットシステムの前部のエリア区画部、スライド機構、およびボックスの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ロボットシステムの制御の構成を示すブロック図である。
【
図5】ロボットシステムの動作を説明する動作フローの図であり、オペレータによる操作を含んでいる。
【
図6】ロボットシステムの動作を模式的に説明する平面図であって、ロボットが第一ステージに移動して作業を行っている状況を示す平面図である。
【
図7】
図6の状況に続き、ロボットが第一供給部のワークを使い尽くして、第一ボックスが押し出された状況を示す平面図である。
【
図8】
図7の状況に続き、ロボットが第二ステージに移動して作業を継続するとともに、第一ボックスの第一供給部にワークが補給操作された状況を示す平面図である。
【
図9】
図8の状況に続き、ロボットが第二供給部のワークを使い尽くして、第二ボックスが押し出された状況を示す平面図である。
【
図10】
図9の状況に続き、ロボットが第一ステージに移動して作業を継続するとともに、第二ボックスの第二供給部にワークが補給操作された状況を示す平面図である。
【
図11】
図10の状況に続き、ロボットが第一配置部の作業対象物に対する作業を終了して、第一ボックスが押し出された状況を示す平面図である。
【
図12】
図11の状況に続き、ロボットが第二ステージに移動して作業を継続するとともに、第一ボックスの第一配置部で作業対象物が入れ替えられた状況を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態のロボットシステム1の構成
実施形態のロボットシステム1の構成について、
図1~
図3を参考にして説明する。
図1の右上の矢印に示されるように、便宜的に前後左右を定める。ロボットシステム1は、第一ステージ31および第二ステージ35において、ロボット4により作業対象物Tに対してワークWを使用する作業を行うものである。
【0010】
具体的な作業内容として、作業対象物Tがもつ複数の収容部の各々にワークWを載置する移載作業(
図6~
図12参照)や、作業対象物TにワークWを取り付ける取り付け作業などを例示することができるが、これらに限定されない。なお、作業対象物TやワークWは、複数の種類があってもよい。また、第一ステージ31における作業内容と第二ステージ35における作業内容とが同一でもよいし、相違してもよい。ロボットシステム1は、エリア区画部2、ロボット4、第一ボックス51、第二ボックス55、第一スライド機構61、第二スライド機構65、および制御装置9などで構成されている。
【0011】
エリア区画部2は、大きな直方体形状の生産エリア3を区画する。エリア区画部2は、底板21、天板22、後板23、右側板24、左側板25、および前板26などが結合されて構成される。底板21、天板22、後板23、右側板24、および左側板25は、生産エリア3の直方体形状の五面に対応する。なお、
図1において、天板22は取り外されている。
【0012】
図3に示されるように、底板21は、生産エリア3の直方体形状よりも前方まで延在する。底板21の前部の上面の左側に第一スライド機構61が設けられ、上面の右側に第二スライド機構65が設けられる。底板21の下面に、移動用の複数のキャスタ211、および位置決め用の複数のストッパ212が設けられる。したがって、ロボットシステム1は、稼働位置の変更が可能である。
【0013】
前板26は、生産エリア3の直方体形状の前面の上部に設けられる。前板26の前面の右上部に、入力表示部99(詳細後述)が設けられる。前板26の下側に、左右方向に長く、上下方向に短い開口部27が形成される。開口部27と右側板24との間、および開口部27と左側板25との間は、補助板28が設けられて閉じられる。生産エリア3内の前部の概ね左側半分に第一ステージ31が設定され、前部の概ね右側半分に第二ステージ35が設定される(
図7、
図9参照)。生産エリア3は、第一ステージ31の領域および第二ステージ35の領域を包含している。
【0014】
ロボット4は、
図2に示される多関節アーム型の構成を有する。ロボット4は、基体部41、多関節アーム42、ハンド43、フィンガ44、およびカメラ45などで構成される。基体部41は、生産エリア3内の後部の左右方向の中央位置に固定して設けられる。多関節アーム42は、基体部41の上側に支持される。多関節アーム42は、あらゆる方向に向かって延在可能であるとともに、途中で自在に折れ曲がることができるように構成される。ハンド43は、多関節アーム42の先端に設けられる。
【0015】
フィンガ44は、ハンド43の下側に設けられる。フィンガ44は、ワークWを把持および解放可能であり、ワークWを使用する作業を行う。カメラ45は、ハンド43の下側に、フィンガ44と並んで設けられる。カメラ45は、ワークWおよび作業対象物Tの少なくとも一方を撮像して画像データを取得する。カメラ45は、静止画用でも動画用でもよく、また、カラー撮像でも白黒撮像でもよい。なお、カメラ45は、ハンド43に設けず、第一ステージ31の上方および第二ステージ35の上方に1台ずつ設けてもよい。また、ロボット4は、多関節アーム型に限定されず、例えばX-Y駆動型の構成を有してもよい。
【0016】
第一スライド機構61は、底板21の前部の上面の左側位置であって、第一ステージ31の前方の生産エリア3外の位置に設けられる。第一ボックス51は、第一スライド機構61の上側に、開口部27を通って前後方向にスライド移動可能に設けられる。第一スライド機構61は、生産エリア3内の第一ステージ31と、生産エリア3の外部(第一スライド機構61の真上の位置)の間で、第一ボックス51を出し入れする。
【0017】
第一スライド機構61の前面の左寄りに、操作部62が設けられる。操作部62は、第一ボックス51を生産エリア3の外部に押し出すための押し出しボタン(図略)、および第一ボックス51を第一ステージ31に引き込むための引き込みボタン(図略)を有する。したがって、オペレータは、操作部62を操作することにより、第一ボックス51の出し入れを指令することができる。第一ボックス51は、
図1では第一ステージ31に引き込まれており、
図3では生産エリア3の外部に押し出されている。
【0018】
第二スライド機構65は、底板21の前部の上面の右側位置であって、第二ステージ35の前方の生産エリア3外の位置に設けられる。第二ボックス55は、第二スライド機構65の上側に、開口部27を通って前後方向にスライド移動可能に設けられる。第二スライド機構65は、生産エリア3内の第二ステージ35と、生産エリア3の外部(第二スライド機構65の真上の位置)の間で、第二ボックス55を出し入れする。第二スライド機構65の前面の左寄りに、操作部62と同じ機能を有する操作部66が設けられる。
【0019】
第一ボックス51および第二ボックス55は、互いに同一形状であるので、ここでは第二ボックス55について詳述する。
図3に示されるように、第二ボックス55は、直方体状の箱型に形成されている。第二ボックス55は、ボックス本体56、保護カバー57、開閉支持部58などで構成される。ボックス本体56は、前側の高さが低く、後側の高さが高く、上方に開口する形状を有する。
【0020】
一方、保護カバー57は、前側の高さが大きく、後側の高さが小さく、下方に開口する形状を有する。保護カバー57の上面に形成された額縁形状の枠体には、透明樹脂製の窓571が嵌め込まれている。窓571を透かして、内部の目視が可能となっている。保護カバー57の前面の下部に操作ハンドル572が設けられる。操作ハンドル572は、ロボット4やオペレータによって操作される。
【0021】
ボックス本体56の後側上部に、左右方向に延びた開閉支持部58が設けられる。開閉支持部58は、保護カバー57の後部を回動可能に支持する。したがって、保護カバー57は、開閉支持部58を中心にして前後方向に回動する。開閉支持部58は、保護カバー57を任意の回動位置に停止させて保持するトルクヒンジ(図略)を有する。
【0022】
操作ハンドル572の操作により、保護カバー57が前側に回動されると、ボックス本体56と保護カバー57の組み合わせによって閉じた箱型が形成される(
図3参照)。このとき、保護カバー57は、内部のワークWおよび作業対象物Tを覆って保護する。また、保護カバー57が後側に回動されて開放されると、ボックス本体56の内部でロボット4による作業、およびオペレータによる操作が可能な状態となる(
図2参照)。
【0023】
図1に示されるように、第二ボックス55の内部の左側に長方形領域の第二供給部75が設定され、内部の右側に長方形領域の第二配置部76が設定される。第二ボックス55と同様に、第一ボックス51の内部の左側に長方形領域の第一供給部71が設定され、内部の右側に長方形領域の第一配置部72が設定される。第一供給部71および第二供給部75は、ワークWを供給する部位である。第一配置部72および第二配置部76は、作業対象物Tを配置する部位である。
【0024】
第一供給部71および第二供給部75へのワークWの補給は、生産エリア3の外部において、オペレータによる補給操作によって行われる。また、第一配置部72および第二配置部76における作業対象物Tの入れ替えは、生産エリア3の外部において、オペレータによる入れ替え操作によって行われる。オペレータによるワークWの補給操作や、オペレータによる作業対象物Tの入れ替え操作は、生産エリア3の内部では禁止されている。仮に、オペレータがエリア区画部2を構成する一部の部材を取り外した場合、図略の安全装置が動作して、ロボット4を強制的に停止させる。
【0025】
第一ボックス51および第二ボックス55は、保護カバー57が閉じた箱型状態で開口部27を通ることができ、保護カバー57が開いた状態では開口部27を通ることができない。したがって、第一ボックス51および第二ボックス55が開口部27を通過している途中で、オペレータが保護カバー57を開放操作することは無い。
【0026】
エリア区画部2、第一スライド機構61、および第二スライド機構65の組み合わせにより、オペレータは、生産エリア3の外部でワークWの補給操作および作業対象物Tの入れ替え操作を行うことができる。したがって、オペレータによる操作は、生産エリア3内で行われるロボット4の作業に干渉するおそれが無く、安全性が保たれる。加えて、第一ボックス51および第二ボックス55が保護カバー57を有することにより、安全性がさらに一層高められる。
【0027】
2.ロボットシステム1の制御の構成
次に、ロボットシステム1の制御の構成について、主に
図4を参考にして説明する。制御装置9は、
図1において後板23の後面の右端に配置されており、他の位置に配置されてもよい。制御装置9は、入出力機能を有するコンピュータを用いて構成される。制御装置9は、
図4に示されるように、カメラ45および入力表示部99に接続される。
【0028】
入力表示部99は、スイッチや押しボタン、ダイヤルなどの入力器を有し(
図3参照)、オペレータの指令入力を受け付ける。具体的に、入力表示部99は、操作部62および操作部66と同じ機能を有して、第一スライド機構61および第二スライド機構65に対する動作指令を受け付ける。さらに、入力表示部99は、ロボット4の作業内容の選択指令や、作業の開始、一時停止、および終了の指令などを受け付ける。また、入力表示部99は、画像や文字列情報などを表示する表示器を有する。具体的に、入力表示部99は、ロボット4による作業の進捗状況や、カメラ45によって取得された画像データ、オペレータに向けたメッセージなどを表示する。
【0029】
制御装置9は、ロボット4の多関節アーム42およびフィンガ44の動作を制御する。さらに、制御装置9は、第一スライド機構61および第二スライド機構65の動作を制御する。制御装置9は、ソフトウェアで構成される四つの機能部、すなわち作業制御部91、通知部92、確認部93、および画像処理部94を有する。
【0030】
作業制御部91は、ロボット4による作業の実行を制御する。作業制御部91は、ロボット4が第一ステージ31に移動して作業を行っている時に、第一供給部71のワークWを補給する必要が生じた場合、または第一配置部72に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合に、ロボット4を第二ステージ35に移動させて作業を継続させる。また、作業制御部91は、上記とは逆に、ロボット4が第二ステージ35に移動して作業を行っている時に、第二供給部75のワークWを補給する必要が生じた場合、または第二配置部76に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合に、ロボット4を第一ステージ31に移動させて作業を継続させる。
【0031】
ワークWを補給する必要が生じた場合とは、ロボット4が第一供給部71や第二供給部75のワークWを使い尽くした場合や、ワークWの残数が1回の作業の使用数よりも少なくなった場合を意味する。また、作業対象物Tが変更されて、別種のワークを使用する場合も、別種のワークを補給する必要が生じる。一方、作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合とは、ロボット4が作業対象物Tに対する作業を終了した場合を意味する。また、作業対象物Tが誤った種類であったり不良品であったりした場合には、作業を行うことなく当該の作業対象物Tを入れ替える必要が生じる。
【0032】
作業制御部91は、第一スライド機構61および第二スライド機構65の押し出し動作を制御する。すなわち、作業制御部91は、第一供給部71にワークWを補給する必要が生じた場合、または、第一配置部72に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合に、第一ボックス51を生産エリア3の内部から外部に押し出すように第一スライド機構61を制御する。第一スライド機構61は、制御にしたがい、第一ステージ31に位置する第一ボックス51を、第一供給部71および第一配置部72を一括した形態で、生産エリア3の外部に押し出す。
【0033】
また、作業制御部91は、第二供給部75にワークWを補給する必要が生じた場合、または、第二配置部76に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合に、第二ボックス55を生産エリア3の内部から外部に押し出すように第二スライド機構65を制御する。第二スライド機構65は、制御にしたがい、第二ステージ35に位置する第二ボックス55を、第二供給部75および第二配置部76を一括した形態で、生産エリア3の外部に押し出す。
【0034】
通知部92は、ワークWを補給する必要が生じる時期、および作業対象物Tを入れ替える必要が生じる時期の少なくとも一方を検出して、または予測してオペレータに通知する。通知部92は、入力表示部99の表示による通知を行い、別の通知手段を用いてもよく、または複数の通知手段を併用してもよい。別の通知手段として、表示灯や、音声通知、オペレータが所持する携帯端末への通信連絡などがある。
【0035】
オペレータは、通知部92からの検出結果の通知に基づいて、長時間を開けることなくワークWの補給操作や作業対象物Tの入れ替え操作を行うことができる。また、オペレータは、通知部92からの予測結果の通知に基づいて、ワークWの補給操作や作業対象物Tの入れ替え操作を計画的に行うことができる。これにより、ロボット4の一時的な停止状態を確実に削減することができる。
【0036】
確認部93は、第一供給部71および第二供給部75が供給するワークWの正誤、および第一配置部72および第二配置部76に配置された作業対象物Tの正誤の少なくとも一方を確認する。確認部93は、ワークWや作業対象物Tの誤りを検出した場合に、ロボット4による作業を停止させるとともに、入力表示部99に誤りの内容を表示して、オペレータに訂正操作を要請する。
【0037】
オペレータは、確認部93からの要請に基づいて、ワークWや作業対象物Tの誤りを訂正する操作を行うことができる。したがって、ロボット4による誤った作業は、確実に防止される。また、確認部93からの訂正操作の要請により、オペレータの迅速な訂正操作が可能となるので、ロボット4の停止時間が短縮される。
【0038】
画像処理部94は、カメラ45から取得した画像データに画像処理を施すことにより、以降の制御に用いる情報を求める。画像処理の手法として、公知の各種手法、例えば、領域検出法や境界検出法、テンプレートを用いた探索法などを適用することができる。画像処理部94が求めた情報は、作業制御部91、通知部92、および確認部93に受け渡される。
【0039】
画像処理部94が求める情報として、第一供給部71および第二供給部75のワークWの使用状況に関する情報がある。例えば、画像処理部94は、画像処理を施すことにより、ワークWの使用状況を表す残数を求めて、作業制御部91および通知部92に受け渡す。これにより、作業制御部91は、ワークWを補給する必要性の有無を判定することができる。また、通知部92は、ワークWを補給する必要が生じる時期を検出し、または予測することができる。
【0040】
また、画像処理部94が求める情報として、第一供給部71および第二供給部75のワークWの正誤に関する情報がある。例えば、画像処理部94は、画像処理を施すことにより、ワークWの形状情報、あるいは、複数のワークWを収容する収容体またはワークW自体に付された識別情報を求めて、確認部93に受け渡す。確認部93は、予め取得済みのワークWの形状情報や識別情報と、画像処理部94から受け取った情報とを比較して、ワークWの正誤を確認することができる。
【0041】
さらに、画像処理部94が求める情報として、第一配置部72および第二配置部76に配置された作業対象物Tへの作業の進捗状況に関する情報がある。例えば、画像処理部94は、画像処理を施すことにより、作業対象物Tに載置されまたは取り付けられたワークWの個数を求めて、作業制御部91および通知部92に受け渡す。これにより、作業制御部91は、作業対象物Tに対する作業が終了したか否かを判定することができる。また、通知部92は、作業対象物Tを入れ替える必要が生じる時期を検出し、または予測することができる。
【0042】
また、画像処理部94が求める情報として、第一配置部72および第二配置部76に配置された作業対象物Tの正誤に関する情報がある。例えば、画像処理部94は、画像処理を施すことにより、作業対象物Tの形状情報、または作業対象物Tに付された識別情報を求めて、確認部93に受け渡す。確認部93は、予め取得済みの作業対象物Tの形状情報や識別情報と、画像処理部94から受け取った情報とを比較して、作業対象物Tの正誤を確認することができる。
【0043】
3.ロボットシステム1の動作
次に、ロボットシステム1の動作について、
図5の動作フローを参考にしつつ、
図6~
図12に示された実施例を用いて説明する。なお、
図6~
図12において、第一スライド機構61、第二スライド機構65、および制御装置9は、図示省略されており、ロボット4の多関節アーム42等の実動作状況も、図示省略されている。ロボットシステム1の動作は、補助的にオペレータによる操作を必要とする。
図5において、上下方向に延びる破線の右側にロボットシステム1の動作が示され、破線の左側にオペレータによる操作が示されている。
【0044】
図6~
図12において、ワークWは、便宜的に黒丸で描かれている。ワークWは、円柱状であるが、回転対称形状ではなく、周方向の向きがあるものとする。ワークWは、供給トレイSTの四つの収容部にそれぞれ収容された形態で補給される。一方、作業対象物Tは、六つの収容部をもつトレイであり、ワークWが向きを揃えられて載置された後、次工程の装置で使用される。
【0045】
ロボット4が行う作業は、第一ステージ31および第二ステージ35で同じである。すなわち、ロボット4は、ワークWを第一供給部71の供給トレイSTから採取して、第一配置部72に配置された作業対象物Tの六つの収容部の各々に向きを揃えて載置する移載作業を行う。かつ、ロボット4は、ワークWを第二供給部75の供給トレイSTから採取して、第二配置部76に配置された作業対象物Tの六つの収容部の各々に向きを揃えて載置する移載作業を行う。また、第一ステージ31および第二ステージ35で作業を行う作業対象物Tの予定数が、予め設定されている。
【0046】
ここで、カメラ45による撮像および画像処理部94による画像処理は、ワークWおよび作業対象物Tの形状や個数、位置、状態等を確認するために適宜行われる。したがって、以降では、カメラ45および画像処理部94の動作に関する逐次の説明を省略する。また、ロボットシステム1の初期状態において、第一ボックス51および第二ボックス55は、生産エリア3の外部に押し出されているものとする(
図3に示された状態)。
【0047】
図5のステップS1で、オペレータは、第一ボックス51の段取り操作を行う。すなわち、オペレータは、第一ボックス51の保護カバーを開放して、四つのワークWが収容された供給トレイSTを第一供給部71に載置する。次に、オペレータは、作業対象物Tを第一配置部72に配置して、保護カバーを閉じる。その次に、オペレータは、操作部62または入力表示部99を用いて、第一スライド機構61の引き込み動作を指令する。ステップS1の後、動作フローの実行は、ステップS2およびステップS11に分かれる。
【0048】
ステップS2で、第一スライド機構61は、指令にしたがって第一ボックス51を第一ステージ31に引き込む。これで、第一ステージ31における作業開始の準備が整う。次のステップS3で、作業制御部91は、ロボット4のハンド43を第一ステージ31に移動させ、第一ボックス51の保護カバーを開放させる。次に、確認部93が動作して、第一ボックス51内のワークWおよび作業対象物Tが正しいことを確認する。続いて、作業制御部91は、ロボット4に移載作業を開始させる。移載作業は、作業中断の必要が生じるまで継続される。換言すると、移載作業は、第一供給部71のワークWを補給する必要が生じる時、または第一配置部72に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じる時まで継続される。
【0049】
一方、ステップS11で、オペレータは、第二ボックス55の段取り操作を行う。すなわち、オペレータは、第二ボックス55の保護カバー57を開放して、供給トレイSTを第二供給部75に載置する。次に、オペレータは、作業対象物Tを第二配置部76に配置して、保護カバー57を閉じる。その次に、オペレータは、操作部66または入力表示部99を用いて第二スライド機構65の引き込み動作を指令する。次のステップS12で、第二スライド機構65は、指令にしたがって第二ボックス55を第二ステージ35に引き込む。これで、第二ステージ35における作業開始の準備が整う。なお、ステップS11の操作およびステップS12の動作は、ステップS2およびステップS3の動作と並行して実行することが可能である。
【0050】
この時点で、ロボットシステム1は、
図6に例示された状況となる。ロボット4は、第一ステージ31に移動して、ワークWの移載作業を2回終了している(
図6の矢印M1参照)。第一供給部71の供給トレイSTは、未だ二つのワークWが収容されており、したがって、さらに2回の移載作業が行われる。一方、第二ステージ35では、第二ボックス55が既に引き込まれており、ロボット4が移載作業を行うための状況が整備されている。第一ステージ31で4回の移載作業が終了すると、作業中断の必要が生じる。したがって、動作フローの実行は、ステップS4に進められる。
【0051】
ステップS4で、作業制御部91は、作業中断の原因がワークWを使い尽くしたことによる(前者)か、それとも、作業対象物Tに対する六つのワークWの移載作業が終了したことによる(後者)かを判別して、動作フローを分岐させる。動作フローの実行は、原因が前者である場合にステップS6に進められ、原因が後者である場合および原因が両者である場合にステップS5に進められる。
【0052】
図6の状況からさらに2回の移載作業が行われて合計で4回になると、第一供給部71の供給トレイSTは空となる。一方、第一配置部72に配置された作業対象物Tは、未だ二つの収容部にワークWが移載されていない。したがって、作業中断の原因は、ワークWを使い尽くしたことによる(前者)と判別される。次のステップS6で、作業制御部91は、第一スライド機構61を制御して、第一ボックス51を生産エリア3の外部に押し出させる(
図7の矢印M2参照)。この時点で、ロボットシステム1は、
図7に例示された状況となる。ステップS6の後、動作フローの実行は、ステップS7およびステップS13に分かれる。
【0053】
次のステップS13で、作業制御部91は、ロボット4を第二ステージ35に移動させて生産を継続させる。詳述すると、作業制御部91は、ロボット4のハンド43を第二ステージ35に移動させ、第二ボックス55の保護カバー57を開放させる。次に、確認部93が動作して、第二ボックス55内のワークWおよび作業対象物Tが正しいことを確認する。なお、確認部93は、新しい供給トレイSTおよび新しい作業対象物Tを対象として逐次動作する(以降では、逐次の説明を省略する)。確認部93による確認に続いて、作業制御部91は、ロボット4に移載作業を開始させる。移載作業は、作業中断の必要が生じるまで継続される。
【0054】
一方、ステップS7で、オペレータは、押し出された第一ボックス51の段取り操作を行う。すなわち、オペレータは、第一ボックス51の第一供給部71から空の供給トレイSTを取り出し、新しい供給トレイSTを載置する。なお、オペレータは、第一配置部72の移載作業が途中の作業対象物Tには触れない。この時点で、ロボットシステム1は、
図8に例示された状況となる。ロボット4は、第二ステージ35に移動して、ワークWの移載作業を2回終了している(
図8の矢印M3参照)。第二供給部75の供給トレイSTは、未だ二つのワークWが収容されており、したがって、さらに2回の移載作業が行われる。
【0055】
ステップS7の続きで、オペレータは、第一ボックス51の保護カバーを閉じ、操作部62または入力表示部99を用いて第一スライド機構61の引き込み動作を指令する。次のステップS8で、第一スライド機構61は、指令にしたがって第一ボックス51を第一ステージ31に引き込む(
図8の矢印M4参照)。これにより、第一ステージ31において、ロボット4が再来して移載作業を行うための状況が整備される。なお、ステップS7の操作およびステップS8の動作は、ステップS13の動作と並行して実施することが可能である。
【0056】
第二ステージ35で4回の移載作業が終了すると、作業中断の必要が生じる。したがって、動作フローの実行は、ステップS14に進められる。ステップS14で、作業制御部91は、作業中断の原因がワークWを使い尽くしたことによる(前者)か、それとも、作業対象物Tに対する六つのワークWの移載作業が終了したことによる(後者)かを判別して、動作フローを分岐させる。動作フローの実行は、原因が前者である場合にステップS16に進められ、原因が後者である場合と原因が両者である場合にステップS15に進められる。
【0057】
図8の状況からさらに2回の移載作業が行われて合計で4回になると、第二供給部75の供給トレイSTが空となり、作業中断の原因が前者と判別される。したがって、ステップS16で、作業制御部91は、第二スライド機構65を制御して、第二ボックス55を生産エリア3の外部に押し出させる(
図9の矢印M5参照)。この時点で、ロボットシステム1は、
図9に例示された状況となる。ステップS6の後、動作フローの実行は、ステップS3およびステップS11に分かれつつ戻される。
【0058】
2回目のステップS3で、作業制御部91は、ロボット4を再び第一ステージ31に移動させて生産を継続させる。一方、2回目のステップS11で、オペレータは、押し出された第二ボックス55の段取り操作を行う。すなわち、オペレータは、第二供給部75から空の供給トレイSTを取り出し、新しい供給トレイSTを載置する。なお、オペレータは、第二配置部76の移載作業が途中の作業対象物Tには触れない。
【0059】
この時点で、ロボットシステム1は、
図10に例示された状況となる。ロボット4は、第一ステージ31に移動して、ワークWの移載作業を2回行う(
図10の矢印M6参照)。これにより、作業対象物Tの六つの収容部に対する移載作業が終了する。一方、第一供給部71の供給トレイSTは、未だ二つのワークWが収容されている。ステップS11の続きで、オペレータは、第二スライド機構65の引き込み動作を指令する。2回目のステップS12で、第二スライド機構65は、指令にしたがって第二ボックス55を第二ステージ35に引き込む(
図10の矢印M7参照)。これにより、第二ステージ35において、ロボット4が再来して移載作業を行うための状況が整備される。
【0060】
2回目のステップS3で、作業対象物Tの六つの収容部に対する移載作業が終了して作業中断となる。したがって、2回目のステップS4で、作業制御部91は、作業中断の原因が移載作業の終了であると判別して、動作フローをステップS5に進める。ステップS5で、作業制御部91は、移載作業が終了した作業対象物Tの個数が予定数に到達して、移載作業を終了することができるか否かを判定する。否の場合、動作フローの実行は、ステップS6における第一ボックス51の押し出し(
図11の矢印M8参照)から、ステップS7およびステップS13に進められる。
【0061】
この時点で、ロボットシステム1は、
図11に例示された状況となる。2回目のステップS13で、作業制御部91は、ロボット4を再び第二ステージ35に移動させ、移載作業を開始させる(
図12の矢印M9参照)。一方、2回目のステップS7で、オペレータは、押し出された第一ボックス51の段取り操作を行う。すなわち、オペレータは、第一ボックス51の第一配置部72から移載作業が終了した作業対象物Tを取り出し、新しい作業対象物Tを配置する。なお、オペレータは、第一供給部71の使いかけの供給トレイSTには触れない。
【0062】
この時点で、ロボットシステム1は、
図12に例示された状況となる。ステップS7の続きで、オペレータは、第一スライド機構61の引き込み動作を指令する。次のステップS8で、第一スライド機構61は、指令にしたがって第一ボックス51を第一ステージ31に引き込む(
図12の矢印M10参照)。以降、第一ステージ31および第二ステージ35において交互に、ロボット4による移載作業とオペレータによる段取り操作とが繰り返される。したがって、ロボット4の一時的な停止状態は、ほとんど発生しない。
【0063】
なお、ステップS5で、移載作業が終了した作業対象物Tの個数が予定数に到達している場合、第一ステージ31での移載作業は終了となる。この場合、動作フローの実行は、ステップS13に進められ、以降では第二ステージ35に関する動作のみが実行される。具体的には、ステップS11からステップS16までが実行される。また、第二ステージ35において移載作業を終了することができるか否かは、ステップS15で判定される。仮に、第二ステージ35での移載作業が先に終了した場合、以降では第一ステージ31に関する動作のみが実行される。具体的には、ステップS3からステップS8までが実行される。
【0064】
さらに、
図5には示されていないが、作業制御部91は、第一ステージ31および第二ステージ35の両方で移載作業を終了することができるか否かを判定することができる。この判定は、ステップS5およびステップS15の少なくとも一方の後で行われる。両方で移載作業を終了することができる場合に、
図5の動作フローは終了となる。
【0065】
実施形態のロボットシステム1では、ロボット4が第一ステージ31に移動して作業を行っている時に、第一供給部71のワークWを補給する必要が生じた場合、または第一配置部72に配置された作業対象物Tを入れ替える必要が生じた場合に、ロボット4を第二ステージ35に移動させて作業を継続させる。これによれば、ロボット4が第二ステージ35に移動して作業を継続している間に、第一ステージ31でワークWの補給、または作業対象物Tの入れ替えを行い、ロボット4が再来して作業を行うための状況を整備することができる。さらに、この状況整備は、第一ステージ31および第二ステージ35で交互に繰り返して行うことができる。したがって、ロボット4の一時的な停止状態を削減して、作業効率の低下を抑制することができる。
【0066】
4.実施形態の応用および変形
なお、第一供給部71および第一配置部72は、別々のボックス内に設定され、二つのボックスは、別々のスライド機構によって生産エリア3の内部と外部の間を独立して移動してもよい。また、第一ボックス51が省略され、第一供給部71および第一配置部72が剥き出しの状態で移動してもよい。さらに、生産エリア3の外部におけるワークWの補給操作や作業対象物Tの入れ替え操作は、オペレータによる操作でなく、入れ替え装置やコンベア装置などにより自動で行うことが可能である。また、実施形態のロボットシステム1は、2台のロボット4と、三つ以上のステージ(ロボット4の台数よりも多数のステージ)と、を備える構成に拡張することが可能である。
【0067】
また、供給トレイSTが第一供給部71に固定されており、オペレータは、四つのワークWを供給トレイSTの各収容部にセットする補給操作を行ってもよい。さらに、四つの収容部をもつ供給トレイSTに代えて、多数のワークWを収容する大型の供給箱を用いることができる。この場合、ワークWを補給する回数が相対的に減少して、作業対象物Tを入れ替える回数が相対的に多くなる。
【0068】
また、通知部92および確認部93は、省略することが可能である。加えて、画像処理部94は、実施形態で説明した4種類の情報の全てを求める必要はなく、また、4種類以外の情報を求めてもよい。4種類以外の情報として、例えば、ロボット4による作業の良否を判定する検査情報を例示することができる。
【0069】
さらに、移載作業が先に終了した第一ステージ31において、第二作業対象物に対して第二ワークを使用する別の作業を開始するようにしてもよい。つまり、ロボット4は、第二ステージ35における作業対象物TへのワークWの移載作業と、第一ステージ31における第二作業対象物に対して第二ワークを使用する別の作業とを、交互に行うことができる。この場合、
図5のステップS5で、作業制御部91は、第一ステージ31で作業対象物Tの個数が予定数に到達していると、動作フローの実行をステップS6経由でステップS13およびステップS7に進める。そして、ステップS7で、オペレータは、第一供給部71から供給トレイSTを取り出して第二ワークを補給するとともに、第一配置部72から作業対象物Tを取り出して第二作業対象物を配置する。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:ロボットシステム 2:エリア区画部 3:生産エリア 31:第一ステージ 35:第二ステージ 4:ロボット 45:カメラ 51:第一ボックス 55:第二ボックス 56:ボックス本体 57:保護カバー 61:第一スライド機構 65:第二スライド機構 71:第一供給部 72:第一配置部 75:第二供給部 76:第二配置部 9:制御装置 91:作業制御部 92:通知部 93:確認部 94:画像処理部 W:ワーク T:作業対象物 ST:供給トレイ