(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】織物媒体のコーティング方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/00 20060101AFI20240719BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240719BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240719BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240719BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240719BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240719BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240719BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20240719BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B05D7/00 G
A41D31/00 502B
A41D31/00 504F
B05D3/06 102Z
B05D7/24 302Y
C08L83/05
C08L83/07
C09D7/61
C09D183/05
C09D183/07
(21)【出願番号】P 2023506132
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 FR2021000081
(87)【国際公開番号】W WO2022023622
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-09
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペリーヌ・テイル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・プジェ
(72)【発明者】
【氏名】マガリ・プイエ
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0031734(US,A1)
【文献】特表2015-511969(JP,A)
【文献】特開2016-194028(JP,A)
【文献】国際公開第2018/234643(WO,A1)
【文献】特開2018-003194(JP,A)
【文献】特表2012-528947(JP,A)
【文献】特開昭60-158255(JP,A)
【文献】特表2005-517099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B32B 1/00-43/00
C08L 1/00-101/00
C09D 1/00-201/10
D03D 1/00-27/18
D01F 11/00-13/04
D06M 10/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重付加反応によって架橋可能であり、透かし細工及び/又は伸縮性織物媒体S上にシリコーンエラストマーを形成するためのシリコーン組成物Xのコーティング方法であって、以下のステップa)、b)及びc)を含む方法:
a)以下を含む、重付加反応により架橋可能なシリコーン組成物Xを提供すること:
・1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC
2~C
6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
・1分子あたり、少なくとも2つのSiH単位を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンB、及び
・UV照射により活性化可能であり、触媒的に有効な量の少なくとも1つのヒドロシリル化触媒C;
b)前記シリコーン組成物Xを、前記織物媒体Sの少なくとも1つの面上に連続的又は非連続的に堆積すること;及び
c)前記シリコーン組成物Xを、UV-LEDランプを光源とするUV放射を照射することによって架橋させること。
【請求項2】
前記織物媒体Sがレース又は伸縮性ストリップであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコーン組成物Xは、1分子あたり、ケイ素に結合した単一のC
2~C
6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A’をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリコーン組成物Xは、フィラー
Dをさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーン組成物Xは、
-架橋阻害剤を含まな
い;及び/又は
-接着促進化合物を一切含まない
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
本発明によるシリコーン組成物Xは、前記シリコーン組成物Xの総重量に基づいて、
・1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC
2~C
6アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンAを50%~90
%;
・1分子あたり、少なくとも2つのSiH単位を有するオルガノポリシロキサンBを0.1%~10
%;
・ヒドロシリル化触媒Cを2ppm~400pp
m(金属の重量で計算);
・フィラー
Dを5%~20
%
含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
照射ステップ(c)中に使用されるUV-LEDランプは、365nm、385nm、395nm又は405n
mの波長を有する放射線を放射することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
架橋ステップ(c)は、15℃~60
℃で実施されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法によって得られるシリコーンエラストマーで、少なくとも1つの面がコーティングされた織物媒体S。
【請求項10】
衣
類、衛生用品、及び圧迫包帯若しくは包帯などの医療デバイスの分野における、請求項9に記載のコーティングされた織物媒体Sの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV-LEDランプを光源とする紫外線の照射による、重付加反応により架橋可能なシリコーン組成物で透かし模様又は伸縮性織物媒体をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に衣料品、衛生用品、及び医療デバイスの特定のアイテムについて、皮膚への接着特性及び滑り止め特性を得るために、シリコーン組成物を使用して布地材料をコーティングすることが知られている。このようにして得られた織物は、そのままで、又は織物製品に変換され、多くの用途、例えば衣料品(特にトップス、ボトムス、ブラジャーのレースなどのランジェリー)、衛生用品、圧迫包帯や包帯などの医療デバイスの分野で使用することができる。
【0003】
特許出願国際公開第2007/112982号及び国際公開第2010/139868号は、重付加によって架橋可能なエラストマーシリコーン組成物で織物表面をコーティングする方法を記載している。前記シリコーン組成物の目的は、織物に滑り止め特性を与えることである。シリコーン組成物は、繊維状媒体をコーティングし、次いでポリオルガノシロキサンの不飽和基、典型的にはアルケニル基の同一又は別のポリオルガノシロキサンの水素への重付加から生じる硬化によって得られる。コーティングされた組成物の硬化を行うために、特に薄い層が必要な場合は、動作温度が210℃に達するオーブン、又は電磁放射又は赤外線放射を放出する高圧ランプによって、熱エネルギーを提供する必要がある。これらの技術により、短い架橋時間(用途によっては1分未満)を達成できるため、用途によっては毎分数十メートルの水準の高速コーティング速度を使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらのコーティング技術は大量のエネルギーを消費する。さらに、このタイプの液体組成物を架橋して薄層を形成するのに必要な温度範囲は、すべてのタイプの柔軟な媒体、特に周囲環境の温度の上昇に敏感なものへの適用を可能にするわけではない。温度上昇に直面したときに壊れやすい柔軟な媒体の例は、100℃未満のガラス転移温度を有する熱可塑性材料で作られた柔軟な媒体、又は織物レースである。
【0005】
したがって、壊れやすい基材をコーティングするには、架橋処理温度を制限する必要がある。したがって、重付加による架橋は遅くなり、生産性と生産コストに影響を与える。
【0006】
これらの理由により、縮合反応によって架橋する液体シリコーン組成物は、このタイプの用途にとって依然として非常に魅力的である。空気中の湿気にさらされると、周囲温度で架橋する可能性がある。例えば、特許出願国際公開第2010/146249号、国際公開第2010/146250号及び国際公開第2015/158967号を挙げることができる。これらは、重縮合によって架橋可能なエラストマーシリコーン組成物で柔軟な媒体、特に織物の柔軟な媒体をコーティングする方法を記載している。低温架橋には、アルコキシシラン又はアセトキシシランをベースとするRTV-1技術(「室温加硫」、単一パックにパッケージ化)を使用することもできる。それにもかかわらず、架橋中に、これらの組成物は酢酸又はアルコールなどの揮発性有機化合物を生成し、これは許容できない欠点である可能性がある。
【0007】
さらに、UV下で重付加により架橋されたシリコーン配合物が文献に記載されている。例えば、特許第6531724号を挙げることができ、これは、UV架橋可能なシリコーンエラストマーでコーティングされたエアバッグ織物を製造する方法を記載している。この方法は、布地材料上にシリコーン組成物を付着させ、次にコーティングされた表面をUVで照射することからなる。しかしながら、そのような方法及び使用されるシリコーン組成物は、エアバッグ織物上のシリコンコーティングの接着の問題及びコーティングの表面のしわ形成の問題に対応するために開発されたものである。エアバッグ用の生地は、レースや伸縮性のあるストリップなどの伸縮性のある生地や透かし模様の生地と同じ技術的特性を持っているわけではない。さらに、エアバッグ生地のコーティングに求められる最終特性は、衣服又は衛生用生地に求められる滑り止め特性及び皮膚への接着特性とはまったく異なる。
【0008】
本発明の1つの目的は、温度上昇に直面すると壊れやすい織物媒体に適したシリコーン生地をコーティングする方法を提案することである。また、生産性の向上を可能とするコーティング率の高いコーティング方法の提案も目的としている。さらに、生産コストを改善し、環境への影響を低減するために、この方法がエネルギーをほとんど消費しないことが望ましい。
【0009】
さらに、このようにシリコーンエラストマーでコーティングされた織物媒体は、最終用途に関して良好な特性、特に皮膚への接着特性及び滑り止め特性を有することが望ましい。シリコーン組成物を織物にコーティング及び架橋した後、織物及び/又はその包装を汚す可能性のある油性物質を放出する現象がないことを確実にすることも必要である。このシリコーン組成物は、無毒で無臭でなければならない。コーティングが洗濯及び摩擦に耐えることができること、及び織物材料を取り扱うときの伸びに対して良好な抵抗性を有することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の1つの主題は、重付加反応によって架橋可能であり、透かし細工及び/又は伸縮性織物媒体S上にシリコーンエラストマーを形成するためのシリコーン組成物Xのコーティング方法であって、以下のステップa)、b)及びc)を含む方法:
a)以下を含む、重付加反応により架橋可能なシリコーン組成物Xを提供すること:
・1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
・1分子あたり、少なくとも2つのSiH単位を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンB、及び
・UV照射により活性化可能であり、触媒的に有効な量の少なくとも1つのヒドロシリル化触媒C;
b)前記シリコーン組成物Xを、前記織物媒体Sの少なくとも1つの面上に連続的又は非連続的に堆積すること;及び
c)前記シリコーン組成物Xを、UV-LEDランプを光源とするUV放射を照射することによって架橋させること。
【0011】
上記の方法によって得られるシリコーンエラストマーで少なくとも1つの面をコーティングされた織物媒体Sも、本発明の主題である。さらに、本発明の別の主題は、衣類(特に、トップス、ボトムス、ブラジャーのレースなどのランジェリー)、スポーツ衣料、衛生用品、及び圧迫包帯若しくは包帯などの医療デバイスの分野における、前記コーティングされた織物媒体Sの使用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「UV」は紫外線を意味する。紫外線は、約100nm~約400nm、すなわち可視光スペクトルよりも短い波長を有する電磁放射として定義される。
【0013】
また、本明細書において、「LED」は、当業者に周知の「発光ダイオード」の頭字語である。
【0014】
別段の指示がない限り、本開示で議論されるシリコーンオイルのすべての粘度は、「ニュートン」粘度と呼ばれる、25℃での動的粘度、すなわち、測定される粘度が速度勾配に依存しないように、十分に低いせん断勾配でブルックフィールド粘度計を使用して、それ自体既知の方法で測定される動的粘度の大きさに対応する。
【0015】
したがって、本発明の1つの主題は、重付加反応によって架橋可能であり、透かし細工及び/又は伸縮性織物媒体S上にシリコーンエラストマーを形成するための、シリコーン組成物Xをコーティングする方法である。
【0016】
本明細書において、「織物」という用語は、すべての織物構造を包含する総称である。織物は、糸、繊維、フィラメント、及び/又はその他の素材で構成され得る。それらは、織られ、接着され、編まれ、編組され、フェルトで作られ、針で作られ、又は縫い付けられ、又は別の製造方法によって製造されるかどうかにかかわらず、特に柔軟な布地を含む。「糸」は、例えば、連続マルチフィラメント物体、複数の糸を組み合わせて得られる連続糸、又は単一繊維タイプ若しくは繊維の混合物から得られる連続繊維の紡績糸を意味する。「繊維」は、例えば、短繊維又は長繊維、紡績又は不織製品の製造のために加工されることを意図した繊維、又は短繊維を形成するために切断されることを意図したロープを意味する。織物は、織物表面を製造する前に1つ又は複数の処理ステップ(例えば、テクスチャリング、ドローイング、ドローテクスチャリング、サイジング、リラックス、ヒートセット、ツイスト、固定、カール、洗浄及び/又は染色のステップ)を経た糸、繊維、及び/又はフィラメントから完全に構成され得る。
【0017】
本発明によれば、任意のタイプの織物を使用することができる。目安として、以下のものが挙げられる:
・次のような天然繊維:綿、麻、麻、ジュート、コイア、セルロース紙繊維などの植物由来の織物;及び羊毛、毛皮、革、絹などの動物由来の織物;
・次のような人工繊維:セルロース又はその誘導体などのセルロース繊維;及び動物又は植物由来のタンパク質ベースの織物;及び
・ポリエステル、ポリアミド、ポリマリックアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、アクリロニトリル、ブタジエン-スチレン-(メタ)アクリレートコポリマー、及びポリウレタンなどの合成繊維。
【0018】
重合又は重縮合によって得られる合成繊維は、特にそのマトリックスに、異なる種類の添加剤(顔料、つや消し剤、マット剤、触媒、熱及び/又は光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、抗真菌剤及び/又は防ダニ剤など)を含むことができる。
【0019】
織物表面のタイプとして、特に、糸又は生地の直線的な絡み合いによって得られる表面、糸又はニットの曲線的な絡み合いによって得られる表面、混合表面又はチュール、不織布表面、及び複合表面を挙げることができる。
【0020】
本発明の方法で使用される織物媒体は、さまざまな方法で組み立てられた1つ又は複数の同一又は異なる織物からなることができる。織物は単層でも多層でもよい。織物媒体は、例えば、縫製、溶接、又はスポット接着若しくは連続接着などの機械的手段など、さまざまな組立手段によって製造できる多層構造からなることができる。
【0021】
織物媒体は、本発明によるコーティング方法に加えて、仕上げ又はリファイニング処理とも呼ばれる1つ以上の他の後続処理を受けることができる。これらの他の処理は、本発明の前記コーティング方法の前、後、及び/又はその間に行うことができる。他の後続処理としては、染色、印刷、ラミネート加工、コーティング、他の織物表面又は材料との組み立て、洗浄、脱脂、予備成形又は固定が特に挙げられる。
【0022】
本発明による織物媒体Sは、透かし細工及び/又は伸縮性織物媒体である。本発明による織物の支持体は、好ましくは、透かし細工でかつ伸縮性がある。
【0023】
織物は、織物で構成されていない開放空間を含む場合、「透かし細工」と呼ばれる。前記開放空間(細孔、空隙、肺胞、穴、間隙、又はオリフィスと呼ぶことができる)は、織物全体に規則的又は不規則に分布することができる。これらの開放空間は、特に織物の製造中に作成され得る。本発明のシリコーン組成物のコーティングが効果的であるためには、これらの開放空間の最小寸法が5mm未満、特に1mm未満であることが好ましい。
【0024】
織物は、5%を超える、好ましくは15%を超える伸度を有する場合、「伸縮性」であると言われる。織物の伸度は通常、最大500%である。伸度は、織物を最大限に伸ばしたときの伸び率を表す。伸びは、縦のみ、横のみ、又は縦と横のいずれでもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、織物媒体はレース又は伸縮性ストリップである。
【0026】
本発明の1つの主題である方法の第1ステップ(a)では、以下を含む、重付加反応により架橋可能なシリコーン組成物Xが提供される。
-1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、
-1分子あたり、少なくとも2つのSiH単位を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンB、及び
-UV照射により活性化可能であり、触媒的に有効な量の少なくとも1つのヒドロシリル化触媒C。
【0027】
1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンAは、特に以下のものから形成され得る:
・次の式の少なくとも2つのシロキシル単位:YaR1
bSiO(4-a-b)/2。式中、
YはC2~C6アルケニル、好ましくはビニルであり、
R1は、1~12個の炭素原子を有する一価の炭化水素系基であり、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子1~8個を有するアルキル基、炭素原子3~8個を有するシクロアルキル基、及び炭素原子6~12個を有するアリール基から選択され、
a=1又は2であり、b=0、1又は2であり、合計でa+b=1、2又は3であり;及び
・任意選択で、次の式の単位:R1
cSiO(4-c)/2。式中、
R1は上記と同様の意味を持ち、c=0、1、2又は3である。
【0028】
上記の式において、いくつかのR1基が存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。
【0029】
これらのオルガノポリシロキサンAは、本質的に、シロキシル単位Y2SiO2/2、YR1SiO2/2及びR1
2SiO2/2からなる群から選択されるシロキシル単位「D」、及びシロキシル単位YR1
2SiO1/2、Y2R1SiO1/2及びR1
3SiO1/2からなる群から選択される末端シロキシル単位「M」からなる直鎖構造を有していてもよい。記号Y及びR1は、上記の通りである。
【0030】
末端「M」単位の例としてトリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ又はジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0031】
「D」単位の例として、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ又はメチルデカジエニルシロキシを挙げることができる。
【0032】
本発明におけるオルガノポリシロキサンAであり得る直鎖オルガノポリシロキサンの例は以下の通りである:
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルフェニルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン);と
・環状ポリ(メチルビニルシロキサン)。
【0033】
最も推奨される形態では、オルガノポリシロキサンAは末端ジメチルビニルシリル単位を含み、オルガノポリシロキサンAは好適にはジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン)である。
【0034】
シリコーンオイルの粘度は、一般に1mPa・s~2,000,000mPa・sである。好ましくは、前記オルガノポリシロキサンAは、20mPa・s~300,000mPa・s、好ましくは25℃で100mPa・s~200,000mPa・sの間、より好ましくは600mPa・s~150,000mPa・sの動的粘度を有するオイルである。
【0035】
任意選択で、オルガノポリシロキサンAは、シロキシル単位「T」(R1SiO3/2)及び/又はシロキシル単位「Q」(SiO4/2)をさらに含むことができる。記号R1は上記の通りである。したがって、オルガノポリシロキサンAは分岐構造を有する。本発明におけるオルガノポリシロキサンAであり得る分岐オルガノポリシロキサンの例は以下の通りである:
・トリメチルシロキシ単位「M」、ジメチルビニルシロキシ単位「M」、ジメチルシロキシ単位「D」及びメチルシロキシ単位「T」からなる、トリメチルシリル及びジメチルビニルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン)(メチルシロキサン);
・トリメチルシロキシ単位「M」、ジメチルビニルシロキシ単位「M」及び「Q」からなる樹脂、及び
・トリメチルシロキシ単位「M」、メチルビニルシロキシ単位「D」及び「Q」からなる樹脂。
【0036】
それにもかかわらず、一実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、C2~C6アルケニル単位を含む分岐オルガノポリシロキサン又は樹脂を含まない。
【0037】
好ましくは、オルガノポリシロキサン化合物Aは、0.001重量%~30重量%、好ましくは0.01重量%~10重量%、好ましくは0.02重量%~5重量%のアルケニル単位含有量を有する。
【0038】
シリコーン組成物Xは、好ましくは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、50%~90%のオルガノポリシロキサンA、より好適には60重量%~87重量%のオルガノポリシロキサンA、さらにより好適には70重量%~85重量%のオルガノポリシロキサンAを含む。
【0039】
シリコーン組成物Xは、単一のオルガノポリシロキサンA、又は例えば異なる粘度及び/又は異なる構造を有する、いくつかのオルガノポリシロキサンAの混合物を含んでもよい。
【0040】
好ましい実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、以下の混合物を含み得る:
・上記のような、1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A;及び
・1分子あたり、ケイ素に結合した単一のC2~C6アルケニル基を有する、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A’。
【0041】
シリコーン組成物X中のモノアルケニル化ポリオルガノシロキサンの存在は、本発明によるコーティングされた布地の皮膚への接着レベルを有利に改善することができる。本発明におけるオルガノポリシロキサンA’であり得るモノアルケニル化オルガノポリシロキサンの例は以下の通りである:
・ジメチルビニルシリル末端及びトリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルビニルシロキサン)。
【0042】
この実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、好ましくは4重量%~20重量%のモノアルケニル化オルガノポリシロキサンA’、より好適には8重量%~18重量%のモノアルケニル化オルガノポリシロキサンA’、さらにより好適には10重量%~15重量%のモノアルケニル化オルガノポリシロキサンA’を含む。
【0043】
オルガノポリシロキサンBは、1分子あたり、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つのヒドロシリル官能基(又はSi-H単位)を含むオルガノヒドロポリシロキサンである。
【0044】
オルガノヒドロポリシロキサンBは、有利には、以下の式のシロキシル単位を少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ含むオルガノポリシロキサンであり得る:
HdR2
eSiO(4-d-e)/2
式中、
・同一又は異なる基R2は、1~12個の炭素原子を有する一価の基を表し、
・d=1又は2であり、e=0、1又は2であり、d+e=1、2又は3である;
そして、任意選択で、次の式の他の単位:R2
fSiO(4-f)/2
式中、R2は上記と同じ意味を持ち、f=0、1、2又は3である。
【0045】
上記の式において、いくつかのR2基が存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。好適には、R2は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基(塩素又はフッ素などの少なくとも1個のハロゲン原子で任意に置換される)、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、及び6~12個の炭素原子を有するアリール基からなる群から選択される一価のラジカルを表す。R2は、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなる群から選択され得る。
【0046】
上記の式では、記号dは好適には1に等しい。
【0047】
オルガノヒドロポリシロキサンBは、直鎖、分岐又は環状構造を有していてもよい。重合度は、好ましくは2以上である。一般には、それは5000未満である。
【0048】
ポリマーが直鎖状である場合、それらは本質的に、式D:R2
2SiO2/2又はD’:R2HSiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位、及び式M:R2
3SiO1/2又はM’:R2
2HSiO1/2の単位から選択される末端シロキシル単位からなる。R2は上記と同じ意味である。
【0049】
ケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を含む、本発明におけるオルガノポリシロキサンBであり得るオルガノヒドロポリシロキサンの例は以下の通りである:
・ヒドロジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロシロキサン);
・ヒドロジメチルシリル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン-co-メチルヒドロシロキサン);
・トリメチルシリル末端を有するポリ(メチルヒドロシロキサン);及び
・環状ポリ(メチルヒドロシロキサン)。
【0050】
オルガノヒドロポリシロキサンBが分岐構造を有する場合、好ましくは、以下の式のシリコーン樹脂からなる群から選択される:
-ケイ素原子に結合した水素原子が基Mによって担持されるM’Q、
-ケイ素原子に結合した水素原子が単位Mの一部によって担持されるMM’Q、
-ケイ素原子に結合した水素原子が基Dによって担持されるMD’Q、
-ケイ素原子に結合した水素原子が基Dの一部によって担持されるMDD’Q、
-ケイ素原子に結合した水素原子が単位Mの一部によって担持されるMM’TQ、
-ケイ素原子に結合した水素原子が単位M及びDの一部によって担持されるMM’DD’Q、
-及びそれらの混合物。
ここで、M、M’、D及びD’は先に定義したとおりであり、T:式R2
3SiO1/2のシロキシル単位であり、Q:式SiO4/2のシロキシル単位であり、R2は上記と同じ意味を有する。
【0051】
好ましくは、オルガノヒドロポリシロキサン化合物Bは、重量で0.2%~91%、より好適には3%~80%のヒドロシリル官能基Si-Hの含有量を有する。シリコーン組成物X全体を考慮すると、アルケン官能基に対するヒドロシリル官能基Si-Hのモル比は、有利には0.2~20、好ましくは0.5~15、より好適には0.5~10、さらにより好適には0.5~5であり得る。
【0052】
好ましくは、オルガノヒドロポリシロキサンBの粘度は、1mPa・s~5,000mPa・s、より好適には1mPa・s~2,000mPa・s、さらにより好適には5mPa・s~1,000mPa・sである。
【0053】
シリコーン組成物Xは、好ましくは、シリコーン組成物Xの総重量に対して、0.1重量%~10重量%、より好適には0.5重量%~5重量%のオルガノヒドロポリシロキサンBを含む。
【0054】
シリコーン組成物Xは、単一のオルガノヒドロポリシロキサンB、又は例えば異なる粘度及び/又は異なる構造を有するいくつかのオルガノヒドロポリシロキサンBの混合物を含んでもよい。
【0055】
好ましい実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、以下の混合物を含み得る:
・1分子あたり、2つのSiH官能基を含む、上記の少なくとも1つのオルガノヒドロポリシロキサンB、及び
・1分子あたり、少なくとも3つのSiH官能基を含む、上述の少なくとも1つのオルガノヒドロポリシロキサンB。
【0056】
シリコーン組成物X中のモノアルケニル化ポリオルガノシロキサンの存在は、本発明によるコーティングされた織物の皮膚への接着レベルを有利に改善することができる。1分子あたり2つのSiH官能基を含むオルガノヒドロポリシロキサンBは鎖延長剤として働く。1分子あたり少なくとも3つのSiH官能基を含むオルガノヒドロポリシロキサンBは、架橋剤として働く。
【0057】
本発明によるヒドロシリル化触媒Cは、UV照射により活性化されるという特定の特徴を有する。照射がなければ、それは本質的に不活性な化合物である。UV照射を受けると(好ましくは200nm~400nmの波長で)、それは活性化されヒドロシリル化触媒となり、オルガノポリシロキサンAのアルケニル基とオルガノポリシロキサンBのヒドロシリル官能基との反応を可能にする。
【0058】
本発明のヒドロシリル化触媒Cは、白金化合物であることが好ましい。それは特に、β-ジケトナート白金錯体、η-5-シクロペンタジエニルトリアルキル白金錯体、又はそれらの誘導体から選択され得る。例えば、以下が挙げられる:トリメチル白金(IV)アセチルアセトネート、トリメチル白金(IV)(3,5-ヘプタンジオネート)、トリメチル白金(IV)(メチルアセトアセテート)、トリメチル白金(IV)(2,4-ペンタンジオネート)、白金(II)ビス(アセチルアセトネート)、白金(II)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、白金(II)ビス(2,4-ヘキサンジオネート)、白金(II)ビス(2,4-ヘプタンジオネート)、白金(II)ビス(3,5-ヘプタンジオネート)、白金(II)ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオネート)、白金(II)ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオネート)、白金(II)ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)、トリメチル白金(IV)(メチルシクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(シクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)、ジメチルエチル白金(IV)(シクロペンタジエニル)、ジメチルアセチル白金(IV)(シクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)、トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)、及びそれらの混合物。より好ましくは、ヒドロシリル化触媒Cは、白金(II)ビス(アセチルアセトネート)、トリメチル白金(IV)(メチルシクロペンタジエニル)、トリメチル白金(IV)(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0059】
ヒドロシリル化触媒Cは、好ましくは、適切な溶媒に予め溶解して使用される。それにもかかわらず、それを固体の形で使用することは排除されない。
【0060】
触媒Cの触媒的に有効な量は、シリコーン組成物Xの総重量に基づいて、金属の重量で計算して、一般に2重量ppm~400重量ppm、好ましくは5重量ppm~200重量ppmである。
【0061】
排除されないが、従来の熱的方法で活性化できる追加のヒドロシリル化触媒の存在は、シリコーン組成物Xにおいて不可欠ではない。好ましくは、本発明によるシリコーン組成物Xは、従来の熱的方法で活性化することができるヒドロシリル化触媒を含まない。特に、Karstedtの白金触媒を含まない。
【0062】
一実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、任意選択で光増感剤を含んでもよい。光増感剤は、触媒Cによって吸収される波長とは異なる波長を吸収する分子から選択され得、それによってそのスペクトル感度を拡張する。当業者に周知の多数の光増感剤が存在する。アントラセン、ピレン、フェノチアジン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、カルバゾール誘導体、フルオレノン、アントラキノン、カンファーキノン又はアシルホスフィンオキシドを挙げることができる。これらの光増感剤及び他のものは、例えば米国特許出願第2015/0232700号に記載されている。
【0063】
組成物中に存在する場合、光増感剤は、シリコーン組成物Xの総重量に対して、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%の量で添加することができる。ただし、シリコーン組成物Xにおいて光増感剤の存在は必須ではない。好ましくは、本発明によるシリコーン組成物Xは光増感剤を含まない。
【0064】
上述の成分A、B及びCに加えて、本発明によるシリコーン組成物Xは、任意選択で他の成分を含んでもよい。
【0065】
一実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、任意選択でフィラーD、好適には強化フィラー又は増量フィラーを含んでもよい。
【0066】
強化フィラーは、好適にヒュームドシリカ又は沈降シリカである。シリカタイプの鉱物フィラーは、好適には、BET法に従って測定された、少なくとも50m2/g、特に50m2/g~400m2/g、好ましくは70m2/gより大きい比表面積、0.1μm(マイクロメートル)未満の一次粒子の平均寸法、及び200g/リットル未満のかさ密度を有する。
【0067】
好ましくは親水性のシリカタイプの無機フィラーは、そのままシリコーン組成物に組み込むことができ、又は任意選択で相溶化剤で処理することができる。1つの変形によれば、これらのシリカは、任意選択で、この目的のために慣例的に使用される1つ又は複数の有機ケイ素化合物、例えばオルガノシラン又はオルガノシラザンで処理することができる。これらの化合物には、メチルポリシロキサン(ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど)、メチルポリシラザン(ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、テトラメチルジビニルジシラザンなど)、クロロシラン(ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシランなど)、アルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなど)が含まれる。これらの化合物は、単独で又は混合物として使用することができる。
【0068】
シリカは、任意選択で、懸濁液を得るために、シリコーンオイルに予め分散されていてもよい。ポリオルガノシロキサンオイル、特にビニル化ポリオルガノシロキサンオイル中で、特にヘキサメチルジシラザンで処理されたヒュームドシリカの懸濁液を使用することが特に好ましい。
【0069】
シリコーン組成物Xは、シリコーン組成物Xの全重量に対して、好ましくは5重量%~20重量%のフィラーDを含み、より好適には8重量%~18重量%のフィラーDを含む。
【0070】
フィラーDとして好ましいシリカに加えて、シリコーン組成物Xに他のタイプのフィラー、特に増量フィラー、例えば粉砕石英、ケイソウ土、炭酸カルシウム及び/又はカオリンを添加することも可能である。
【0071】
一実施形態によれば、一般に、組成物の粘度を調整するため、又は希釈剤として機能するため、本発明によるシリコーン組成物Xは、任意選択で、少なくとも1つの非反応性ポリオルガノシロキサン化合物E(特に油や樹脂の形で)を含んでもよい。このポリオルガノシロキサン化合物Eは、アルケニルシリル及び/又はヒドロシリルタイプの反応性基を含まない。
【0072】
ポリオルガノシロキサン化合物Eは、有利には、以下を含むオルガノポリシロキサンである:
・タイプM=R3
3SiO1/2のシロキシル末端単位、及び
・タイプD=R3
2SiO2/2の同一又は異なるシロキシル単位、
・及び任意選択で、次の式の他の単位:R3
fSiO(4-f)/2;
式中、基R3は同一又は異なっており、1~12個の炭素原子を有する一価の基を表し、f=0又は1である。
【0073】
上記の式において、いくつかのR3基が存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいことが理解される。
【0074】
有利には、非反応性ポリオルガノシロキサン化合物Eは、トリメチルシリル末端を有するジメチルポリシロキサンのオイルである。
【0075】
一実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、任意選択で、当業者によってこの技術分野で従来から使用されている他の添加剤、例えば、染料、顔料、難燃剤、殺菌剤、鉱物又は有機顔料などを含んでいてもよい。
【0076】
架橋阻害剤は、一般に、重付加によって架橋するシリコーン組成物中に存在する。架橋阻害剤の機能は、ヒドロシリル化反応を遅くすることである。例として、以下の市販製品を挙げることができる:1-エチニル-1-シクロヘキサノール、メチル-3-ドデシン-1-オール-3、トリメチル-3,7,11-ドデシン-1-オール-3、ジフェニル-1,1-プロピン-2-オール-1、エチル-3-エチル-6-ノニン-1-オール-3及びメチル-3-ペンタデシン-1-オール-3。
【0077】
しかしながら、ヒドロシリル化触媒CがUV照射により活性化される限り、本発明のシリコーン組成物Xにおいて架橋防止剤の存在は必須ではない。好ましくは、本発明によるシリコーン組成物Xは、架橋阻害剤を含まない。特に、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH)を含まない。
【0078】
典型的には、接着促進化合物は、シリコーン組成物が滑らかで緻密な表面上のコーティングとして機能することを意図する場合、シリコーン組成物中に存在し得る。接着促進剤は、接着促進官能基を含む有機ケイ素化合物であってもよい。特に、それは、以下を含む有機ケイ素化合物であり得る:
・ケイ素原子に結合した1つ又は複数の加水分解性基、一般にはケイ素原子に結合したアルコキシ基、及び
・メルカプタン基、ウレア基、イソシアヌレート基、(メタ)アクリレート、エポキシ及びアルケニル基から選択される1つ以上の有機基。
【0079】
例えば、単独又は混合物として、以下の化合物を挙げることができる:ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、[H2N(CH2)3]Si(OCH2CH2CH3)3、[H2N(CH2)3]Si(OCH3)3、[H2N(CH2)3]Si(OC2H5)3、[H2N(CH2)4]Si(OCH3)3、[H2NCH2CH(CH3)CH2CH2]SiCH3(OCH3)2、[H2NCH2]Si(OCH3)3、[n-C4H9-HN-CH2]Si(OCH3)3、[H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH2CH2OCH3)3、[CH3NH(CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3、[H(NHCH2CH2)2NH(CH2)3]Si(OCH3)3、HS(CH2)3Si(OCH3)3、NH2CONH2(CH2)3Si(OCH3)、又は、例えば2~100個のケイ素原子を含み、20%を超える含有量でそのような有機基を含むポリオルガノシロキサンオリゴマー。ケイ素原子に結合した少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアルコキシ基、及び少なくとも1つのエポキシ基を含む有機ケイ素化合物も特に挙げることができる。
【0080】
好ましい実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、接着促進化合物を含まない。特に、本発明によるシリコーン組成物Xは、好ましくは、上述した個々の接着促進化合物のいずれも含まない。
【0081】
好ましい実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、シリコーン組成物Xの総重量に基づいて、
・1分子あたり、ケイ素に結合した少なくとも2つのC2~C6アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンAを50%~90%、好ましくは60%~87%;
・1分子あたり、少なくとも2つのSiH単位を有するオルガノポリシロキサンBを0.1%~10%、好ましくは0.5%~5%;
・ヒドロシリル化触媒Cを2ppm~400ppm、好ましくは5ppm~200ppm(金属の重量で計算);
・フィラーD、好ましくはシリカを5%~20%、好ましくは8%~18%(任意選択で相溶化剤で処理される)。
【0082】
特定の実施形態によれば、シリコーン組成物Xはさらに:
・モノアルケニル化オルガノポリシロキサンA’を4%~20%、好ましくは8%~18%含む。
【0083】
パーセンテージとppmは、重量によるパーセンテージとppmである。触媒Cの重量による量は、白金金属の重量によって計算される。
【0084】
好ましくは、シリコーン組成物Xは、50,000mPa・s~300,000mPa・s、より好ましくは80,000mPa・s~200,000mPa・sの動的粘度を有する。
【0085】
シリコーン組成物Xは、上記のようにすべての異なる成分を混合することによって調製することができる。
【0086】
一実施形態によれば、本発明によるシリコーン組成物Xは、2成分系から調製することができ、その特徴として、前記シリコーン組成物Xを形成するために混合されることを意図した2つの別個の部分であり、一方の部分は触媒Cを含み、オルガノポリシロキサンBを含まず、他方の部分はオルガノポリシロキサンBを含み、触媒Cを含まない。
【0087】
あるいは、本発明によるシリコーン組成物Xは、単一成分系であり得る。
【0088】
本発明の1つの主題である方法の第2のステップ(b)において、前記シリコーン組成物Xは、前記織物媒体Sの少なくとも1つの面上に連続的又は非連続的に堆積される。
【0089】
堆積は、典型的には、転写、ディップロール、又はノズル、ドクターブレード、回転フレーム若しくはリバースロールを使用した噴霧によって行うことができる。織物上に堆積されたシリコーン組成物Xの層の厚さは、0.1mm~0.8mm、好ましくは0.3mm~0.6mm、さらに好ましくは0.4mm~0.5mmであり得る。
【0090】
従来のコーティング方法とは別に、前記織物媒体Sの少なくとも1つの面上へのシリコーン組成物Xの堆積は、典型的にはプリンターを使用する印刷によって実行されてもよい。当業者は、シリコーン組成物の堆積に適した任意のタイプの印刷技術を使用することができる。例えば、国際公開第2020/249694号に記載されているインクジェット印刷技術を挙げることができる。あるいは、押出しによる印刷技術を使用することができる。例えば、国際公開第2018/206689号に記載されているシリコーン組成物の3D印刷用の技術及び装置は、単一の層又は少数の層のみが堆積される限り、本発明によるシリコーン組成物の堆積に適用可能である。堆積物の所望の形態及び厚さを得るために、必要に応じて、本発明による方法の堆積(b)及び架橋(c)のステップを何度も繰り返すことが可能である。
【0091】
最後に、本発明の1つの主題である方法の第3のステップ(c)において、前記シリコーン組成物Xは、UV-LEDランプを光源とするUV放射を照射することによって架橋される。前記UV-LEDランプは、365nm、385nm、395nm又は405nmの波長の放射を放出することができる。好ましくは、UV-LEDランプは、365nmで発光するランプである。
【0092】
UV-LEDランプの出力は、好ましくは2W/cm2~20W/cm2、より好ましくは5W/cm2~15W/cm2である。
【0093】
好ましい実施形態によれば、シリコーン組成物Xは、織物媒体SをUV-LEDランプの下に通過させることによって、連続的に照射される。通過速度及び通過回数は、1秒~60秒、より好ましくは2秒~40秒、さらにより好ましくは3秒~15秒で、シリコーン組成物の全照射が起こるように定義することができる。したがって、照射によってシリコーン組成物Xが受け取るエネルギーは、好ましくは100mJ/cm2~5000mJ/cm2、より好ましくは500mJ/cm2~3500mJ/cm2、さらにより好ましくは1200mJ/cm2~2500mJ/cm2である。
【0094】
好ましい実施形態によれば、架橋ステップ(c)は、不活性化なしで実施される。しかしながら、これは、不活性雰囲気下、例えば窒素下、アルゴン下、又は低酸素空気下で方法を実施することを除外するものではない。
【0095】
架橋ステップ(c)は、15℃~60℃、より好ましくは20℃~40℃、さらにより好ましくは周囲温度、すなわち約25℃の温度で実施される。
【0096】
このようにして得られたコーティングされた織物媒体は、そのままで、又は織物アイテムに変換され、多くの用途、例えば、衣料品(特にトップス、ボトムス、ブラジャーのレースなどのランジェリー)、スポーツ衣料、及び圧迫包帯や包帯などの衛生用品で使用できる。
【0097】
本発明の他の詳細又は利点は、以下に示される、単に指標となる実施例に照らして、より明らかになる。
【実施例】
【0098】
以下の実施例に記載されるシリコーン組成物は、以下の出発物質から得られた:
A1:鎖末端ビニル化(α/ω)ポリジメチルシロキサンオイル、ビニル基含有量0.07重量%、25℃粘度=約100,000mPa・s;
A2:鎖末端ビニル化(α/ω)ポリジメチルシロキサンオイル、ビニル基含有量0.08重量%、25℃粘度=約60,000mPa・s;
A3:鎖末端ビニル化(α/ω)ポリジメチルシロキサンオイル、ビニル基含有量0.11重量%、25℃粘度=約20,000mPa・s;
A’:片末端モノビニル化ポリジメチルシロキサンオイル、ビニル基含有量0.25重量%、25℃粘度=約1,000mPa・s;
B1:鎖中及び鎖末端(α/ω)にSiH基を有するポリ(メチルヒドロ)(ジメチル)シロキサンオイル、SiHビニル基含有量7.3重量%、25℃粘度=約30mPa・s;
B2:鎖末端SiH基(α/ω)を有するヒドロジメチルポリシロキサンオイル、SiHビニル基含有量5.3重量%、25℃粘度=約8.5mPa・s;
C1:Pt(acac)2のプレミックス(白金含有量=49.0~49.8重量%)、Pt-70の名前でJohnson Mattheyから販売、鎖末端でビニル化(α/ω)(50/50)のジオキソラン/ポリジメチルシロキサンオイルの混合物中で2%;
C2:PtCp*(すなわち、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV))のプレミックス、HS161の名前でUmicoreから販売(白金含有量=61重量%)、鎖末端でビニル化(α/ω)のポリジメチルシロキサンオイル中で5%;
C3:10重量%の白金金属を含むKarstedt白金触媒;
D1:ヘキサメチルジシラザン及びジビニルテトラメチル-1-ジシラザンの混合物で処理されたヒュームドシリカ;
D2:ヘキサメチルジシラザンで処理したフュームドシリカ;架橋阻害剤:1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH)。
【0099】
実施例1~4及び比較例1及び2:
以下の表1に従って、シリコーン組成物を調製した。
【0100】
【0101】
組成物は次のように形作られた:
1/一部をテフロン(登録商標)金型(寸法:13.6×13.6×0.2cm)又はテフロン(登録商標)カウンター(d=60mm、t=6mm)に流し込み、プレートとカウンターを得、機械的硬度試験に使用した。
2/別の部分をレース(0.4mm層)上にコーティングして、ブロッキング及び接着を評価した。
【0102】
実施例1~4では、このように成形された組成物を、周囲温度(約25℃)で、ISTのUV試験ベンチでUV照射に供した(動作条件:速度:4m/分、ランプ:365nmLED、メーカー出力:12W/cm2、製品の不活性化なし、ランプの下を約5~10回通過)。UV-LEDランプ下で5~10秒間架橋を行った。
【0103】
比較例1及び2については、組成物を130℃で1分間加熱することにより架橋した。
【0104】
特性評価試験:
硬度:硬度特性は、Bareiss BS61デュロメーターで標準ISO868に従って測定した。
ブロッキング:ブロッキングは、折り重ねられたコーティングされたレースを取り外すのに必要な力を決定することを可能にする適用試験である。この試験は、最終的な架橋を示す。ブロッキングは、Zwickダイナモメーターを使用したレースの引張試験によって評価した。
接着性:接着性試験は、レースの伸びの試験によって行われる。Zwickダイナモメーターを使用して70Nの力で100mmの長さを伸ばし、初期状態に戻す。このサイクルを25回繰り返し、シリコーンのレースへの付着を評価するために肉眼観察を行う。
【0105】
結果を以下の表2に示す。
【0106】
【0107】
硬度及び接着に関して、架橋が熱的(比較例1及び2)であろうと、UV-LED下(実施例1~4)であろうと、結果は同等であることが確認された。
【0108】
ブロッキングに関して、触媒C2で得られた結果(実施例2及び4)は、従来の触媒C3で得られた結果(比較例1及び2)と同一である。しかしながら、比較例1及び2における130℃での1分間とは対照的に、架橋は、実施例2及び4におけるUV-LEDランプ下で5~10秒間行われた。これは、生産性、使用されるエネルギー、及びレース媒体との互換性の点で大きな利点をもたらす。実施例1及び3は、わずかに高いブロッキング値を示しているが、それでも所望の用途に許容でき、より長い照射によって改善することができる。