(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ウイルス又は他の抗原を検出するためのSAWベースのハイドロゲル検査
(51)【国際特許分類】
G01N 29/02 20060101AFI20240719BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240719BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N29/02 501
G01N33/569 G
G01N33/483 E
(21)【出願番号】P 2023515743
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021044334
(87)【国際公開番号】W WO2022055636
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-27
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】セリノ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,マイルズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ビロット,ジェームズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,ウィリアム ジェイ.
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-538236(JP,A)
【文献】特表2007-524853(JP,A)
【文献】Stubbs et al.,Molecular Recognition for Electronic Noses Using Surface Acoustic Wave Immunoassay Sensors,IEEE SENSORS JOURNAL ,IEEE,2002年08月,Vol.2 No.4,p.294-300,<DOI:10.1109.JSEN.2002.803745>
【文献】Lee et.al,Vapor Phase Detection of Plastic Explosives Using a SAW Resonator Immunosensor Array,SENSORS, 2005 IEEE,IEEE,2005年10月30日,p.468-471,<DOI:10.1109/ICSENS.2005.1597737>
【文献】Stubbs et al.,Vapor Phase SAW Immunoassay Sensors,SENSORS, 2002 IEEE,IEEE,2002年06月12日,p.335-338,<DOI:10.1109/ICSENS.2002.1037111>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01N 33/48-33/98
G01N 5/00-5/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタであって、前記第1交互嵌合トランジスタが、入力電気信号を音波に変換するように構成され、前記第2交互嵌合トランジスタが、前記音波を出力電気信号に変換するように構成され、前記圧電基板が前記音波を伝達するように構成される、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタと、
前記圧電基板上にあり、少なくとも部分的に前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層であって、該検出層が、(i)1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される抗体と、(ii)前記抗体上のハイドロゲル層とを含む、前記検出層と、
を備える弾性表面波(SAW)センサを備え
、
前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々は、複数の導電性フィンガーを含み、
前記検出層は、前記検出層の一部が、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々における導電性フィンガーの間に配置されるように、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間へと延びる、
装置。
【請求項2】
前記抗体は、1つ以上の抗原に結合するように構成され、
前記ハイドロゲル層は、前記1つ以上の抗原が前記ハイドロゲル層を通って拡散して前記抗体と接触することを可能にするように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記抗体は、1つ以上のウイルスに結合するように構成され、
前記ハイドロゲル層は、前記1つ以上のウイルスが前記ハイドロゲル層を通って拡散して前記抗体と接触することを可能にするように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハイドロゲル層は、三次元ネットワークで連結されるポリマー鎖を含み、前記ハイドロゲル層は、水を保持して前記抗体を水和させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記SAWセンサの発振周波数を変化させるために、前記抗体は、前記1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記SAWセンサの前記発振周波数の変化を検知するように構成されるコントローラ、
を更に備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ハイドロゲル層は、アガロースハイドロゲル、ポリアクリルアミドハイドロゲル又はグアガムハイドロゲルを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記抗体を前記圧電基板に付着させる架橋剤の層、
を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記検出層の
前記一部は、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの
各々における前記導電性フィンガーの
すべての間に配置される、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
複数の弾性表面波(SAW)センサを備えるシステムであって、
前記複数のSAWセンサ
の各々は、
圧電基板と、
前記圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタであって、前記第1交互嵌合トランジスタが、入力電気信号を音波に変換するように構成され、前記第2交互嵌合トランジスタが、前記音波を出力電気信号に変換するように構成され、前記圧電基板が前記音波を伝達するように構成される、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタと、
前記圧電基板上にあり、少なくとも部分的に前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層であって、該検出層が、(i)抗体と、(ii)前記抗体上のハイドロゲル層とを含む、前記検出層と、
を備え、前記複数のSAWセンサのうちの少なくとも1つのSAWセンサの前記抗体は、1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成され、
前記複数のSAWセンサの各々において、
前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々は、複数の導電性フィンガーを含み、
前記検出層は、前記検出層の一部が、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々における導電性フィンガーの間に配置されるように、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間へと延びる、
システム。
【請求項11】
前記複数のSAWセンサのうちの
前記少なくとも1つのSAWセンサにおいて、
前記抗体は、1つ以上の抗原に結合するように構成され、
前記ハイドロゲル層は、前記1つ以上の抗原が前記ハイドロゲル層を通って拡散して前記抗体と接触することを可能にするように構成される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記複数のSAWセンサのうちの
前記少なくとも1つのSAWセンサにおいて、
前記抗体は、1つ以上のウイルスに結合するように構成され、
前記ハイドロゲル層は、前記1つ以上のウイルスが前記ハイドロゲル層を通って拡散して前記抗体と接触することを可能にするように構成される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記複数のSAWセンサの各々において、前記ハイドロゲル層は、三次元ネットワークで連結されるポリマー鎖を含み、前記ハイドロゲル層は、水を保持して前記抗体を水和させるように構成される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数のSAWセンサのうちの
前記少なくとも1つのSAWセンサにおいて、該SAWセンサの発振周波数を変化させるために、前記抗体は、前記1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記複数のSAWセンサのうちの前記少なくとも1つのSAWセンサの前記発振周波数の変化を検知するように構成される少なくとも1つのコントローラ、
を更に備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数のSAWセンサのうちの少なくとも1つの他のSAWセンサにおいて、前記抗体は不活性化される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数のSAWセンサ
の各々において、
前記検出層の
前記一部は、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの
各々における前記導電性フィンガー
のすべての間に配置される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記複数のSAWセンサのうちの少なくとも2つのSAWセンサは異なる抗体を含み、
前記
異なる抗体は、異なるウイルスに結合するように構成されることと、
前記
異なる抗体は、ウイルスの異なる変異に結合するように構成されることと、
のうちの少なくとも一方である、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
1つ以上の弾性表面波(SAW)センサに空気の流れを提供するステップと、
前記1つ以上のSAWセンサを使用して前記空気の流れの中の1つ以上の生物学的分析物を検出するステップと、
を含む方法であって、前記1つ以上のSAWセンサのうちの少なくとも1つのSAWセンサは、
圧電基板と、
前記圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタであって、前記第1交互嵌合トランジスタが、入力電気信号を音波に変換するように構成され、前記第2交互嵌合トランジスタが、前記音波を出力電気信号に変換するように構成され、前記圧電基板が前記音波を伝達するように構成される、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタと、
前記圧電基板上にあり、少なくとも部分的に前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層であって、該検出層が、(i)1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される抗体と、(ii)前記抗体上のハイドロゲル層とを含む、前記検出層と、
を備え、
前記1つ以上のSAWセンサの各々において、
前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々は、複数の導電性フィンガーを含み、
前記検出層は、前記検出層の一部が、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの各々における導電性フィンガーの間に配置されるように、前記第1及び第2交互嵌合トランジスタの間へと延びる、
方法。
【請求項20】
異なるSAWセンサを使用して前記空気の流れの中の異なる生物学的分析物を検出するステップを更に含み、前記異なるSAWセンサは異なる抗体を含む、
請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にセンシングデバイスに関する。より具体的には、本開示は、ウイルス又は他の抗原を検出するための弾性表面波(SAW、surface acoustic wave)ベースのハイドロゲル検査に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸飛沫を介したSARS-CoV-2(COVID-19)ウイルス又は他の疾患の伝染は、社会に大きな課題をもたらす。呼吸器疾患の蔓延を抑えるには、それらの疾患の存在を迅速かつ非侵襲的な方法で迅速に検出する能力が必要である。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスの現在の検査は、患者から体液(鼻咽頭吸引物又は唾液のような)を直接サンプリングしてこれらのサンプルを研究室に送り、そこで、サンプルが処理されて最終的に検査されることが多い。残念ながら、これは非常に遅いプロセスである可能性があり、これらの検査は、症状のある個人に対して実施されることが多く、無症状又は症状が出る前の個人を介して広がる疾患の症例を見逃す。結果として、これは公衆衛生インフラに大きな負担をもたらし、呼吸器疾患の蔓延を抑えるには非常に不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、ウイルス又は他の抗原を検出するための弾性表面波(SAW)ベースのハイドロゲル検査を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の実施形態では、装置はSAWセンサを含む。SAWセンサは圧電基板を含む。SAWセンサはまた、圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタ(interdigitating transistor)も含む。第1交互嵌合トランジスタは、入力電気信号を音波に変換するように構成される。第2交互嵌合トランジスタは、音波を出力電気信号に変換するように構成される。圧電基板は、音波を伝達(transport)するように構成される。SAWセンサは、圧電基板上にあり、少なくとも部分的に第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層を更に含む。検出層は、(i)1つ以上の生物学的分析物(biological analytes)に結合するように構成される抗体と、(ii)抗体上のハイドロゲル層とを含む。
【0005】
第2の実施形態では、システムは、複数のSAWセンサを含む。各SAWセンサは圧電基板を含む。各SAWセンサはまた、圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタも含む。第1交互嵌合トランジスタは、入力電気信号を音波に変換するように構成される。第2交互嵌合トランジスタは、音波を出力電気信号に変換するように構成される。圧電基板は、音波を伝達するように構成される。各SAWセンサは、圧電基板上にあり、少なくとも部分的に第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層を更に含む。検出層は、(i)抗体と、(ii)抗体上のハイドロゲル層とを含む。複数のSAWセンサのうちの少なくとも1つのSAWセンサの抗体は、1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される。
【0006】
第3の実施形態では、方法は、1つ以上のSAWセンサに空気の流れ(flow of air)を提供するステップと、1つ以上のSAWセンサを使用して空気の流れの中の1つ以上の生物学的分析物を検出するステップとを含む。SAWセンサのうちの少なくとも1つのSAWセンサは、圧電基板と、圧電基板上の第1及び第2交互嵌合トランジスタと、圧電基板上にあり、少なくとも部分的に第1及び第2交互嵌合トランジスタの間に配置される検出層とを含む。第1交互嵌合トランジスタは、入力電気信号を音波に変換するように構成される。第2交互嵌合トランジスタは、音波を出力電気信号に変換するように構成される。圧電基板は、音波を伝達するように構成される。検出層は、(i)1つ以上の生物学的分析物に結合するように構成される抗体と、(ii)抗体上のハイドロゲル層とを含む。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図面、説明及び特許請求の範囲から当業者に容易に明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のより完全な理解のために、添付図面と併せて以下の説明を参照する。
【0009】
【
図1】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための例示的な弾性表面波(SAW)ベースのハイドロゲルセンサを示す図である。
【
図2】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための例示的な弾性表面波(SAW)ベースのハイドロゲルセンサを示す図である。
【
図3】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための例示的な弾性表面波(SAW)ベースのハイドロゲルセンサを示す図である。
【0010】
【
図4】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための複数のSAWベースのハイドロゲルセンサを有する例示的なデバイスを示す図である。
【0011】
【
図5】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための1つ以上のSAWベースのハイドロゲルセンサを有する特有の例示的なデバイスを示す図である。
【
図6】本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための1つ以上のSAWベースのハイドロゲルセンサを有する特有の例示的なデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明される、
図1から
図6及び本開示の原理を説明するために使用される様々な実施形態は、単なる例示によるものであり、いかなるようにも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者は、本開示の原理が、適切に配置された任意のタイプのデバイス又はシステムで実装され得ることを理解するであろう。
【0013】
上記のように、呼吸飛沫を介したSARS-CoV-2(COVID-19)ウイルス又は他の疾患の伝染は、社会に大きな課題をもたらす。呼吸器疾患の蔓延を抑えるには、それらの疾患の存在を迅速かつ非侵襲的な方法で迅速に検出する能力が必要である。しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスの現在の検査は、患者から体液(鼻咽頭吸引物又は唾液のような)を直接サンプリングしてこれらのサンプルを研究室に送り、そこで、サンプルが処理されて最終的に検査されることが多い。残念ながら、これは非常に遅いプロセスである可能性があり、これらの検査は、症状のある個人に対して実施されることが多く、無症状又は症状が出る前の個人を介して広がる疾患の症例を見逃す。結果として、これは公衆衛生インフラに大きな負担をもたらし、呼吸器疾患の蔓延を抑えるには非常に不十分である。
【0014】
本開示は、1つ以上のエアロゾルウイルス(aerosol viruses)又は他の抗原の存在を迅速に検出するように構成される免疫センサ設計をサポートする、プラットフォームを提供する。各プラットフォームは、SARS-CoV-2抗原(そのウイルス性スパイクタンパク質のような)のような1つ以上の抗原に対して特有の抗体で機能化(functionalize)される少なくとも1つの弾性表面波(SAW)ベースのセンサを使用する。ハイドロゲル足場(hydrogel scaffold)は、非水性環境で使用するための抗体をサポートする。エアロゾル粒子(呼吸飛沫のような)がハイドロゲルと接触すると、粒子の内容物が拡散して抗体と相互作用する。抗体の非常に特有な性質により、特有の抗原のみが対応する抗体と相互作用することになり、この相互作用は、抗原が抗体と出会うとすぐに発生する。この相互作用はまた、SAWベースのセンサの発振周波数(oscillation frequency)も変化させ、これは、発振周波数の変化の検出、したがって、特有の抗原の検出を可能にする。
【0015】
このようにして、これらのプラットフォームは、無症状又は症状が出る前の個人を含め、SARS-CoV-2のようなウイルス又は他の抗原を放出する個人の存在を、非接触方法で迅速に検出することができる。これは、遅い接触ベースの検査や医療提供者からの遅延または一貫性のない報告に頼る必要性を減らすか又はなくすことに役立つ。また、このアプローチを使用して、ユーザとの限られた直接的相互作用で又は直接的な相互作用なしに、特定の疾患を検出することが可能な高度に特有のセンサを作成することができる。さらに、このアプローチは迅速な結果(例えば数秒以内)を提供することができ、任意の適切なウイルス収集技術(例えば呼気分析計マスクから広域環境サンプリングまで)と互換性がある。加えて、このアプローチは複雑な計算又はモデリングに依存せず、このアプローチは、追加の生物学的脅威の検出をサポートするために、新しい抗体のみを必要とする拡張可能なプラットフォームの使用をサポートする。
【0016】
図1から
図3は、本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための例示のSAWベースのハイドロゲルセンサ100を示す。
図1に示されるように、センサ100は圧電基板102を含み、圧電基板102は、一般的に、センサ100の他の構成要素がその中で又はその上で担持される構造を表す。圧電基板102は、石英のような任意の適切な圧電材料から形成され得る。特定の例として、圧電基板102は、Y回転、X伝播(ST-X)石英を使用して形成され得る。圧電基板102はまた、圧電材料を切断して研磨すること等によって、任意の適切な方法で形成されてもよい。圧電基板102は、任意の適切なサイズ、形状及び寸法を有してよい。
【0017】
2つの交互嵌合トランジスタ(IDT、interdigitating transistors)104a~104bが、圧電基板102上に配置される。各交互嵌合トランジスタ104a~104bは、2つのベース106と2組の導電性フィンガー108を含む。ベース106は互いに対向して配置され、各導電性フィンガー108はベース106の一方に電気的に結合され、ベース106の他方に向かって延在する。導電性フィンガー108はまた、導電性フィンガー108が交互にベース106に電気的に結合されるように、インターリーブされるか又は交互嵌合される。各交互嵌合トランジスタ104a~104bは、アルミニウムのような1つ以上の金属等のような任意の適切な材料から形成され得る。各交互嵌合トランジスタ104a~104bはまた、金属又は他の材料を蒸着(depositing)及びエッチングすること等によって、任意の適切な方法で形成され得る。交互嵌合トランジスタ104a~104bの各ベース106と各導電性フィンガー108は、任意の適切なサイズ、形状及び寸法を有してよい。各交互嵌合トランジスタ104a~104bは、任意の適切な数の導電性フィンガー108と、その導電性フィンガー108の間の任意の適切な間隔を含んでよい。
【0018】
入力ポート110は、交互嵌合トランジスタ104aに結合され、出力ポート112は交互嵌合トランジスタ104bに結合される。動作中、無線周波数(RF)信号又は他の電気信号を入力ポート110に印加することができ、交互嵌合トランジスタ104aは電気信号を音波に変換する。音波は基板102を横切って交互嵌合トランジスタ104bまで移動し、交互嵌合トランジスタ104bが、音波を、出力ポート112を介して提供されるRF信号又は他の電気信号に変換する。
【0019】
2組のリフレクタ114a~114bは、交互嵌合トランジスタ104a~104bがリフレクタ114a~114bの間に配置されるように、圧電基板102の上に配置される。リフレクタ114a~114bは、基板102のエッジの方に向けられた音波の一部を基板102の内部に向けて反射するように作用し、それにより共鳴音響キャビティ(resonant acoustic cavity)を形成する。交互嵌合トランジスタ104a~104bとリフレクタ114a~114bは協力して、入力信号が入力ポート110に印加されるときに共鳴音響キャビティ内に音響定在波(acoustic standing wave)を生成する。各リフレクタ114a~114bは、1つ以上の金属のような、任意の適切な材料から形成され得る。各リフレクタ114a~114bはまた、金属又は他の材料を蒸着及びエッチングすること等により、任意の適切な方法で形成され得る。各リフレクタ114a~114bは、任意の適切なサイズ、形状及び寸法を有してよい。リフレクタ114a~114bの各セットは、任意の適切な数のリフレクタと、そのリフレクタの間の任意の適切な間隔を含んでよい。
【0020】
1つ以上のウイルス又は他の抗原の検知をサポートするために、センサ100は検出層116を含み、該検出層116は、圧電基板102の上に、交互嵌合トランジスタ104a~104b内及びその間に配置される。検出層116は、以下で説明されるように、1つ以上のウイルス又は他の抗原の存在を検出するように構成される。検出層116は、
図1では、交互嵌合トランジスタ104a~104bの導電性フィンガー108の集合にわたって延在するように示されていることに留意されたい。これは、センサ100のキャビティ領域内の露出した基板材料の量を減少又は最小化するのに役立つ。これはまた、SAW共鳴器の最も感度の高い領域における生体分子のより均一な分布を達成するのに役立つ。
【0021】
図2に示されるように、入力ポート110と出力ポート112は、発振回路(oscillator circuit)202に結合され、発振回路202は、ここでは一般的に、増幅器として示されている。なお、図示の容易性のために、リフレクタ114a~114bはここでは省略されており、トランジスタ104a~104bはここでは簡略化した形で示されていることに留意されたい。発振回路202は一般に、センサ100に音波を生成させる自走オシレータを表し、交互嵌合トランジスタ104bは、その出力を発振回路202にフィードバックする。その結果、音波は指定の周波数を有し、ウイルス又は他の抗原が検出層116に結合すると周波数は低くなる可能性がある。発振回路202の出力204はSAWベースのセンサ100の出力を表し、処理のためにコントローラ206に提供されることができる。発振回路202は、SAWベースのセンサ100に指定の周波数で出力を生成させるように構成される任意の適切な構造を含む。例えば発振回路202は、出力ポート112から入力ポート110まで直列に結合される第1整合回路(matching circuit)と、移相器(phase shifter)と、増幅器と、減衰器と、第2整合回路を含み得る。しかしながら、本開示は、発振回路202の任意の特定の実装に限定されないこと留意されたい。
【0022】
SAWベースのセンサ100における検出層116の使用は、生物学的検出イベントを電気信号に即座に変換することを可能にする。すなわち、検出層116は、検出されるべき少なくとも1つのウイルス又は他の抗原に対する抗体を含む。いずれの抗原も存在しない場合、SAWベースのセンサ100の出力204は、指定の周波数を有し得る。検出層116内の抗体が抗原に結合すると、SAWベースのセンサ100で生成される音波の周波数が減少し、これは発振周波数を減少させ、SAWベースのセンサ100の出力204を変化させる。少なくとも1つの特有のウイルス又は他の抗原が検出層116の抗体に適切な量で結合して、出力204の周波数を少なくともある閾値量だけ変化させるとき、これはコントローラ206によって検知され、少なくとも1つの特有のウイルス又は他の抗原が存在することのインジケータとして使用される。
【0023】
コントローラ206は、センサ100の発振周波数を変化させるために、十分な数のウイルス又は他の抗原が検出層116の抗体に結合したことを検出するために、SAWベースのセンサ100の出力を処理する。例えばコントローラ206は、SAWベースのセンサ100の出力の周波数が、少なくとも指定の閾値量だけ低下したかどうかを判断し得る。ここで使用される特有の閾値は、検出層116に結合するウイルス又は他の抗原の所望の量のような、様々な要因に基づいて異なる可能性があることに留意されたい。場合によっては、例えばセンサ100の周波数を約3ヘルツ(Hz)だけ変化させるためには、検出層116に結合する約1000個のウイルス粒子を必要とする可能性がある。人は、その呼吸中にはるかに多くの数のウイルス粒子又は他の抗原を持っている可能性があるので、より大きな周波数変化がウイルス又は他の抗原の存在のインジケータとして使用されることがある。また、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の異なるインスタンスが検出層116の抗体の異なるインスタンスに結合する可能性があるときのように、各ウイルス又は他の抗原は、実際には検出層116の複数の抗体に結合することができる可能性があることに留意されたい。これは、SAWベースのセンサ100の周波数のより大きな変化を、より少ない抗原に基づいて検出することを可能にし得る。特有の抗原の存在が検出されると、コントローラ206は、可聴又は視覚的アラートをトリガすることのような、任意の適切なアクションをとり得る。コントローラ206はまた、経時的なセンサ100の周波数の変化を識別するグラフィック又は他の出力を提供してもよい。
【0024】
コントローラ206は、SAWベースのセンサ100の出力を受け取って使用するように構成される任意の適切な構造を含む。例えばコントローラ206は、SAWベースのセンサ100によって出力された周波数が少なくとも閾値量だけ変化するとき又は閾値を下回ったときに検知するように構成された処理回路又は他の回路を含み得る。いくつかの実施形態では、SAWベースのセンサ100が第1回路基板に配置されてよく、コントローラ206が、ユニバーサルシリアルバス(USB)コネクタ又は他のコネクタを介して第1回路基板に結合することが第2回路基板に配置されてよい。コントローラ206は、1つのSAWベースのセンサ100とともに又は複数のSAWベースのセンサ100とともに使用され得ることに留意されたい。
【0025】
コカインの微量分子又はトリニトロトルエン(TNT)のような爆発物等の小分子を検出するために、いくつかのSAWベースの設計が提案されている。これらの分子は、80ダルトン(Da)から50キロダルトン(kDa)の分子量を有する可能性がある。しかしながら、ウイルス及び他の抗原は典型的に、ウイルス粒子がメガダルトン(MDa)範囲に到達する可能性があるとき等、はるかに大きな分子量を有する。特定の例として、SARS-CoV-2ウイルスは、約1,000MDaの質量と約100ナノメートル(nm)の直径を有する可能性がある。さらに、SAWベースのセンサ100は、液体の流れではなく空気の流れを受け取ることによって動作するように展開されることがある。その結果、検出層116は、抗原を検出するために使用される抗体を依然として十分にサポートし、かつ水和しながら、大きな分子量の粒子の迅速な拡散を可能にすることができる。
【0026】
図3に示されるように、検出層116は抗体302の層を含む。抗体302の各々は、特有の抗原に結合するために使用されることができる。センサ100で使用される特有の抗体302は、必要に応じて又は所望により異なる可能性がある。例えばいくつかの実施形態では、各センサ100において、単一のタイプの抗体302を使用して単一のタイプの抗原を検知することができ、複数のセンサ100を使用して同じ抗原又は異なる抗原を検知することができる。任意の適切な抗体302をセンサ100において使用して、任意の所望の抗原を識別することができる。特定の例として、抗体302は、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルスに関連する)、SARS-CoV-2(COVID-19に関連する)、MERS-CoV(中東呼吸器症候群に関連する)又はヘマグルチニン又はノイラミニダーゼ(インフルエンザに関連する)を検出するために使用され得る。
【0027】
抗体302は、架橋剤(cross-linkers)304の層を使用して圧電基板102に固定される。架橋剤304は、圧電基板102の表面に抗体302を保持することを助ける。ここでは、任意の適切な架橋剤304を使用することができ、使用される特有の架橋剤304は、基板102を形成している材料及び固定される抗体302によって異なる可能性がある。いくつかの実施形態では、例えば架橋剤304は「タンパク質A」の層を表し、これは元々、細菌黄色ブドウ球菌(一般に、上気道や皮膚で見られる)の細胞壁で発見されたタンパク質である。
【0028】
薄いハイドロゲル層306(ハイドロゲル足場とも呼ばれる)が、抗体302の上に配置される。ハイドロゲル層306は、非水性環境における抗体302の使用をサポートする。ハイドロゲル層306は、三次元ネットワークで連結されたポリマー鎖の集合を含む。ポリマーの親水性により、ハイドロゲル層306は、溶解するか又は崩壊することなく、高濃度の水を含み、長期間にわたって水を保持することが可能になる。この高濃度の水は、抗体302をサポートして水和し、これらが、関心のある抗原に対するその特異性(specificity)を維持することを可能にする。ここで、関心のある1つ以上の抗原は、抗体と相互作用して結合するために、ハイドロゲル層306を通って拡散することができる。ハイドロゲル層306は、任意の適切な長さの時間の間、抗体302の使用をサポートし得る。いくつかの実施形態では、例えばハイドロゲル層306は、40%相対湿度(RH、relative humidity)で最大1週間以上持続し得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、特有のタイプの抗体と共に使用するためのハイドロゲル層306の製剤を、以下のように決定することができる。しかしながら、以下の詳細は例示にすぎず、ハイドロゲル製剤を任意の他の適切な方法で決定することができることに留意されたい。適切なハイドロゲル製剤及び指定の粒径範囲にわたる濃度を決定するために、10nmから10マイクロメートル(μm)の直径の市販のビオチン標識微粒子を、フルオレセイン又はローダミン6G(R6G)のようなストレプトアビジン共役フルオロフォア(streptavidin conjugated fluorophore)で機能化(functionalize)することができる。SAWベースのセンサ100の表面は、タンパク質Aを使用して、フルオロフォアに特有の抗体で機能化されることができる。機能化の後、SAWベースのセンサ100の表面を、薄いハイドロゲル層306で覆うことができ、そこで、以下に説明されるように、ハイドロゲルの異なる製剤を作成することができる。既知の濃度の機能化されたミクロスフェアを使用する液体注入によって、かつ/又は穏やかな空気チャンバ(calm air chamber)内でコリソンネブライザ(Collison nebulizer)を使用すること等により、既知の濃度のミクロスフェアを噴霧することによって、検査を実施することができる。その後、ハイドロゲルのどの製剤がミクロスフェアに十分に結合するかを決定することができる。ここで、検査は、ハイドロゲル層306の生存可能な製剤(viable formulation)を識別するために使用されることができる。
【0030】
いくつかの製剤は、容量で0.2%アガロースから5%アガロース重量の範囲の濃度のアガロースハイドロゲルの使用を伴うことがある。ハイドロゲルは、適切な量の粉末状アガロースを超純水(pH7)又はリン酸緩衝食塩水(PBS(phosphate buffered saline)、pH7.4)に溶解し、その溶液を沸騰させ、SAWベースのセンサ100の表面にピペッティングする前にゲル化点よりわずかに上まで冷却することを可能にすることによって、作成されることができる。
【0031】
他の製剤は、1%~15%のポリアクリルアミドの範囲の濃度でポリアクリルアミドハイドロゲルの使用を伴うことがある。ビス-トリス及びトリス-グリシン・アクリルアミド溶液の両方を製剤化して検査することができる。ハイドロゲルは、市販の30%原液をトリス緩衝液に希釈して最終pH7を達成することによって製剤化されることができる。3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(piperazineethanesulfonic acid)(HEPES)、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)のような他の一般的な緩衝液も製剤化されてよく、中性pHで検査され得る。ポリアクリルアミドを所望の溶液に希釈して脱ガスした後、テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)と過硫酸アンモニウム(APS)を使用してゲルを架橋することができる。架橋が完了する前に、ゲルの薄い層を使用してSAWベースのセンサ100の表面をコーティングすることができる。
【0032】
更に他の製剤は、容量で0.2%のグアガム(guar gum)から10%のグアガム重量の範囲の濃度のグアガムハイドロゲルの使用を伴うことができる。所望の量のグアガムを1%グルタルアルデヒドに溶解して、完全にゲル化する前にSAWベースのセンサ100の表面をコーティングするために使用することができる。
【0033】
図1から
図3は、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するためのSAWベースのハイドロゲルセンサ100の一例を示しているが、
図1から
図3に様々な変更が加えられてもよい。例えばセンサ100及びその様々な構成要素のサイズ、形状及び寸法は、必要に応じて又は所望により異なってよい。また、構成要素のレイアウト及び配置も、必要に応じて又は所望により異なってよい。
【0034】
図4は、本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための複数のSAWベースのハイドロゲルセンサ100を有する例示的なデバイス400を示す。特に、
図4は、4つのセンサ100がプリント基板のような共通のキャリア402に取り付けられる例示的なデバイス400を示す。前述のように、これらのセンサ100は、USB又は他のコネクタ等を介してコントローラ206に結合され得る。もちろん、コントローラ206もキャリア402自体に取り付けられてよい。
【0035】
複数のセンサ100を互いに非常に近くに配置させる能力は、異なるセンサ100を異なる方法で使用することを可能にする。例えば異なるウイルス又は他の抗原を検出するために、異なるセンサ100を異なる抗体302で機能化することができる。別の例として、同じウイルスの異なる変異を検出するために、異なるセンサ100が異なる抗体302で機能化され得る。場合によっては、センサ100のうちの1つが参照として使用され、不活性化抗体302を含んでもよい。この参照センサ100は、ハイドロゲル層306からの水分損失のためにすべてのセンサ100をいつ置き換える必要があるかを決定することのようなコントロールとして使用され得る。
【0036】
図4は、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための複数のSAWベースのハイドロゲルセンサを有するデバイス400の一例を示しているが、
図4に様々な変更を加えてもよい。例えばデバイス400は、4つより少ない又は4つより多くのセンサ100を含んでもよい。また、センサ100は、任意の適切な方法でデバイス400内に配置されてよく、あるいは共通のキャリア402上に横方向に又は並べて配置されても又はそのように配置されなくてもよい。
【0037】
図5及び
図6は、本開示による、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための1つ以上のSAWベースのハイドロゲルセンサ100を有する特有の例示的なデバイスを示す。特に、
図5及び
図6は、1つ以上のSAWベースのセンサ100が使用され得る、特有の例示的なタイプのデバイスを示す。しかしながら、SAWベースのセンサ100は、任意の他の適切なタイプのデバイスで使用されてもよいことに留意されたい。
【0038】
図5では、1つ以上のSAWベースのセンサ100を、ハンドヘルド型の呼気分析計500又は同様のタイプのデバイス内に配置することができる。呼気分析計500は、人が息を吹き込むことができる入力管を含む。呼気分析計500内の1つ以上のSAWベースのセンサ100は、その後、上述のようにSAWベースのセンサ100の周波数を変更するために十分なウイルス又は他の抗原が人の呼吸に含まれるかどうかを検知することができる。このタイプのデバイスは、施設へのアクセスを厳しく制御し、潜在的に病気の人が施設に入ることを防ぐ必要があるときなど、様々なシナリオで役立つ可能性がある。
【0039】
図6では、1つ以上のSAWベースのセンサ100を、広域モニタ600又は同様のタイプのデバイス内に配置することができる。モニタ600は、多数の人々によって占有される可能性があるスペース内の空気を受け取ることができる。モニタ600内の1つ以上のSAWベースのセンサ100は、その後、上述のようにSAWベースのセンサ100の周波数を変化させるために十分なウイルス又は他の抗原が空気に含まれるかどうかを検知することができる。このタイプのデバイスは、特定の場所が、人々がウイルス又は他の抗原にさらされる可能性が高い、汚染されたホットスポットであるかどうかを判断するなど、様々なシナリオで役立つ可能性がある。この実施形態では、感染した個人を検出するための呼気分析計500ほど迅速に動作しない可能性があるが(個人からモニタ600への直接的な空気の流れがないため)、モニタ600は、はるか大きなエリアと、より多くの数の人々の集団モニタリングを可能にする。
【0040】
図5及び
図6は、ウイルス又は他の抗原を検出する際に使用するための1つ以上のSAWベースのハイドロゲルセンサ100を有するデバイスの具体例を示しているが、
図5及び
図6に様々な変更を加えてもよい。例えばここで示されるデバイスのフォームファクタは、例示のみを目的とする。
【0041】
上記では、ウイルス又は他の抗原の検出ために使用されるものとしてしばしば説明されているが、上記のアプローチは、抗体に結合することができる任意の生物学的分析物を検知するために使用され得ることに留意されたい。また、上記では、人に影響を与えるウイルス又は他の抗原を検出するために使用されるものとしてしばしば説明されているが、上記のアプローチは、任意のウイルス、他の抗原又は関心のある他の生物学的分析物を検出するために使用される可能性があることにも留意されたい。したがって、例えばセンサ100は、家畜又は他の動物に影響を与える可能性のあるウイルス又は他の抗原を検出するために使用されてよい。センサ100の1つの具体的な例示的使用は、豚インフルエンザや動物に影響を与える他の疾患を検出することであり得る。
【0042】
この特許文書全体を通して使用される特定の単語又はフレーズの定義を説明することは有利であり得る。「含む(include)」及び「備える(comprise)」という用語並びにその派生語は、限定ではなく、包含を意味する。「又は(or)」という用語は包括的であり、及び/又は、を意味する。「に関連付けられる」というフレーズ及び並びに派生語は、含む、~に含まれる、~と相互接続する、包含する、~に包含される、~と又は~に接続する、~に又は~と結合する、~と通信する、~と協力する、インターリーブする、並置する、~に近接する、~に又は~と結びつけられる、有する、~の特性を有する、~への又は~との関係を有する等を意味し得る。「~のうちの少なくとも1つ」というフレーズは、アイテムのリストとともに使用されるとき、列挙されたアイテムのうちの1つ以上の異なる組合せが使用されてよく、リスト内の1つのアイテムのみが必要とされ得ることを意味する。例えば「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」は、以下の組合せ:すなわち、Aと、Bと、Cと、A及びBと、A及びCと、B及びCと、A及びB及びC、のうちのいずれかを含む。
【0043】
本出願における説明は、いずれかの特定の要素、ステップ又は機能が、特許請求の範囲に含まれなければならない必須又は重要な要素であることを意味するものとして読まれるべきではない。特許請求に係る主題の範囲は、許可された請求項によってのみ定義される。さらに、「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」という正確な単語が特定の請求項において明示的に使用され、その後に機能を識別する分詞句が続く場合を除いて、請求項のいずれも、添付の特許請求の範囲又は請求項の要素のいずれかに関して35 U.S.C.§112(f)を援用しない。請求項内の「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「構成要素」、「要素」、「メンバ」、「装置」、「マシン」、「システム」、「プロセッサ」又は「コントローラ」のような用語(これらに限定されない)の使用は、請求項自体の特徴によって更に修正又は強化されるような、関連する技術分野の当業者に公知の構造を指すものと理解され、意図されており、35 U.S.C.§112(f)を援用するように意図されない。
【0044】
本開示は、特定の実施形態及び一般的に関連する方法を説明しているが、これらの実施形態及び方法の変更及び順列は、当業者には明らかであろう。したがって、例示的な実施形態の上記の説明は、本開示を定義又は制約しない。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、以下の特許請求の範囲によって定義されるように、他の変更、代替及び変更も可能である。