(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物、放熱性ギャップフィラーおよび物品
(51)【国際特許分類】
C08L 15/00 20060101AFI20240719BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240719BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240719BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240719BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/01
C08K5/13
C08K5/49
C09K5/14 E
(21)【出願番号】P 2023552836
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2022036404
(87)【国際公開番号】W WO2023058547
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021163412
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022072233
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】林 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高井 淳生
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/100102(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220291(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108752628(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、
水酸基変性ポリブタジエンと、
熱伝導性フィラーと、
酸化防止剤と、
を含む放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であって、
前記酸化防止剤の含有量が前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.01質量%以上であり、
前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物
であり、
前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であり、
前記2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、
前記無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、前記熱伝導性フィラーとを含むA液と、
前記水酸基変性ポリブタジエンと、前記熱伝導性フィラーとを含むB液と、を含む、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱伝導性フィラーの含有量は、前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、70質量%以上である、請求項1に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤を含む、請求項3に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項5】
硬化促進剤をさらに含む、請求項1または2に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤を含む、請求項5に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項7】
前記アミン系硬化促進剤のpKaが8.0以上である、請求項6に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を硬化させてなる、放熱性ギャップフィラー。
【請求項9】
請求項
8に記載の放熱性ギャップフィラーを含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物、放熱性ギャップフィラーおよび物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル家電製品、リチウムイオン2次電池、車載パワーモジュール等の電子機器からの発熱は、大容量化や高機能化により増大の一途をたどっている。一方、これら電子機器の小型化、軽量化、薄型化を目的として、その構成部材の金属から樹脂への置換が進んでいる。樹脂は一般に金属より熱伝導性が小さいため、電子機器の熱上昇を抑えるにはその構成部材から効率良く放熱させることが重要である。
【0003】
そこで、効率よく放熱させる方法として、構成部材間に熱伝導性の大きな充填剤や接着剤を使う方法が知られている。この種の充填剤や接着剤はギャップフィラーとよばれ、一般的には樹脂成分に熱伝導率の大きな金属酸化物を含有させた材料であるが、液状であるため複雑な形状に塗布可能であり、ディスペンサーという塗布装置により自動実装が可能であるといった特長を有する。
【0004】
このようなギャップフィラーの樹脂成分として、従来、シリコーンまたはポリウレタンが用いられてきた。
【0005】
シリコーンはこの用途に適したエラストマー特性を有し得るが、バッテリーセル等の電気接点の近傍で使用すると、それに含まれる揮発性シリコーンや、それから発生する低分子シロキサン等により接点障害を引き起こす。また、湿気硬化型の反応であるため、水を配合する場合があるが、水によるボイドの発生は熱伝導率の低下に繋がる。また、揮発性シリコーン、低分子シロキサンおよび水の揮散による体積収縮の問題、硬化前の液の水分離による保管安定性低下の問題も指摘されている。
【0006】
ポリウレタンもまた、優れたエラストマー特性を発揮し得るが、その原料であるイソシアネートは、毒性の懸念があるだけでなく、水と反応して二酸化炭素のボイドを形成する。従って、熱伝導性を妨げるボイドを生成させないためには、水が存在しない状態で硬化反応を実施する必要がある。一方、放熱性ギャップフィラーには、高表面積(小粒径)の無機フィラーを高濃度で含有させる必要があるが、この種の無機フィラーには、通常の取り扱いでは水分吸着が避けられないため、徹底的な、従って費用のかかる乾燥工程や取り扱いが求められる。
【0007】
そこで、シリコーンまたはポリウレタン以外の樹脂を用いた放熱性ギャップフィラーについて種々検討されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、「(A)液状エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)リン酸エステル系湿潤分散剤、及び(D)ウレア系化合物を含む主剤成分と、(E)硬化剤、及び(F)硬化促進剤を含む硬化剤成分とを含み、前記(A)液状エポキシ樹脂100質量部に対して、前記(C)リン酸エステル系湿潤分散剤の含有量が0.1~5質量部、且つ前記(C)リン酸エステル系湿潤分散剤と前記(D)ウレア系化合物との比((C)/(D))が0.1/1~1.5/1である、2液型注形用エポキシ樹脂組成物。」が記載され、「充填剤が沈降し難く、硬化物の高熱伝導性及び電気的絶縁性を維持しつつ、機械的強度に優れた2液型注形用エポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を注形してなる電子部品を提供」できると記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、「硬化して熱伝導性硬化生成物を成形する2液型硬化可能な組成物で、(i)少なくとも1種の重合可能な(メタ)アクリレート系単量体成分と;(ii)過酸化物系硬化剤成分と;(iii)1級、2級または3級アミン又は-CONHNH-基を含む化合物類からなる群より選ばれる1種以上の共硬化性成分と;(iv)安定化成分と、および;(v)充填材成分とを含む第1部分と;および(i)少なくとも1種の重合可能な(メタ)アクリレート系単量体成分と;(ii)硬化反応に触媒作用を及ぼす触媒成分と;(iii)安定化成分と、および;(iv)熱伝導性充填材成分とを含む第2部分とを含み、該組成物の少なくとも一方の部分は、熱伝導性充填材を含む充填材成分を有する」組成物が記載され、特許文献2に記載の組成物は、電気部品のような熱を発生する部品を放熱体のような基体に接着するのに有益であると記載されている。
【0010】
さらに、特許文献3には、アジリジノ官能性ポリエーテルポリマーと、ギャップフィラーの総体積に基づいて少なくとも30体積%の熱伝導性フィラーと、を含む熱伝導性ギャップフィラーが記載され、特許文献3の熱伝導性ギャップフィラーは、バッテリーアセンブリなどの電子用途での使用に好適であり得ると記載されている。
【0011】
最近、公開された特許文献4には、硬化性組成物であって、1つ以上のポリオールを含むポリオール成分と、官能性ブタジエン成分と、前記硬化性組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量%の量で存在する、熱伝導性フィラーと、を含み、前記硬化性組成物が、硬化後に、少なくとも0.5W/(mK)の熱伝導率を有する、硬化性組成物が記載され、特許文献4の硬化性組成物は、例えば、熱伝導性ギャップフィラーとして使用してもよく、これは電池アセンブリなどの電子技術応用での使用に好適であり得ると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-60826号公報
【文献】特表2007-528437号公報
【文献】特表2020-511732号公報
【文献】特表2022-507500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1のエポキシ系は、少なくとも、その実施例に記載されている、硬化剤が酸無水物の場合、室温での硬化は長い時間を要するため高温での硬化が必要である。また、一般的に液状エポキシ化合物は変異原性が懸念される化合物が多い。特許文献2のアクリル系は、硬化剤である過酸化物の分解温度を上回る温度では保管できない上、その硬化物で安定した性能を得るためには硬化温度を厳密に管理しなければならない。また、(メタ)アクリレート化合物は皮膚感作性を持つ化合物が多く、作業者の安全性が懸念される。特許文献3ではアジリジノ基による毒性が懸念され、一般的に水溶性樹脂であるため、系内に水を多く含む可能性が高くボイドの発生や体積収縮に繋がる。
【0014】
特許文献4のギャップフィラーは、前述したシリコーンまたはポリウレタン、さらには特許文献1~3のエポキシ系、アクリル系またはアジリジノ官能性ポリエーテルポリマーといったギャップフィラーの欠点を改善するものといえるが、長時間、高温にさらされたり、急激な温度変化を受けた場合、割れたり、剥がれたりすることがあった。
【0015】
従って、本発明は、放熱性ギャップフィラーが、高温条件下に長時間さらされたり、急激な温度変化を受けたりしても、割れや剥がれの発生を低減することができる放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討した結果、無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、水酸基変性ポリブタジエンと、熱伝導性フィラーと、酸化防止剤と、を含む放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であって、前記酸化防止剤の含有量が前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.01質量%以上であり、前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、放熱性ギャップフィラーが、高温条件下に長時間さらされたり、急激な温度変化を受けたりしても、割れや剥がれの発生を低減することができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明によれば、以下に示す放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物、放熱性ギャップフィラーおよび物品が提供される。
【0018】
[1]
無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、
水酸基変性ポリブタジエンと、
熱伝導性フィラーと、
酸化防止剤と、
を含む放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であって、
前記酸化防止剤の含有量が前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.01質量%以上であり、
前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[2]
前記熱伝導性フィラーの含有量は、前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、70質量%以上である、前記[1]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[3]
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]または[2]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[4]
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤を含む、前記[3]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[5]
硬化促進剤をさらに含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[6]
前記硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤を含む、前記[5]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[7]
前記アミン系硬化促進剤のpKaが8.0以上である、前記[6]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[8]
2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物である、前記[1]~[7]のいずれかに記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[9]
前記無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、前記熱伝導性フィラーとを含むA液と、
前記水酸基変性ポリブタジエンと、前記熱伝導性フィラーとを含むB液と、を含む、前記[8]に記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物。
[10]
前記[1]~[9]のいずれかに記載の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を硬化させてなる、放熱性ギャップフィラー。
[11]
前記[10]に記載の放熱性ギャップフィラーを含む物品。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、放熱性ギャップフィラーが、高温条件下に長時間さらされたり、急激な温度変化を受けたりしても、割れや剥がれの発生を低減することができる放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。なお、文中の数字の間にある「~」は特に断りがなければ、以上から以下を示す。
【0021】
[放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物]
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、水酸基変性ポリブタジエンと、熱伝導性フィラーと、酸化防止剤と、を含む放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であって、前記酸化防止剤の含有量が前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.01質量%以上であり、前記放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率が1.0W/m・K以上である。
【0022】
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、1.0W/m・K以上である。本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは1.5W/m・K以上、より好ましくは2.3W/m・K以上、さらに好ましくは2.5W/m・K以上、さらに好ましくは2.7W/m・K以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、10.0W/m・K以下であってもよいし、8.0W/m・K以下であってもよいし、5.0W/m・K以下であってよい。
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、例えば、熱伝導性フィラーの種類、含有量等や、無水マレイン酸変性ポリブタジエンおよび水酸基変性ポリブタジエンの種類、含有量等を調整することにより、本実施形態の範囲とすることができる。
放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、実施例に記載の方法により測定される値を示す。
【0023】
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物のASTM D2240に準じて測定されるショアOOタイプの硬度は、放熱性ギャップフィラーの割れや剥がれの発生をより低減させる観点から、好ましくは80以下、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、40以上であってよいし、43以上であってもよい。
本明細書中における硬度は、実施例に記載の方法により作製されたサンプルを測定した硬度を示す。
【0024】
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物のASTM D2240に準じて測定されるショアOタイプの硬度は、放熱性ギャップフィラーの割れや剥がれの発生をより低減させる観点から、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、10以上であってよいし、13以上であってもよい。
【0025】
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であることが好ましい。2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物であると、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の硬化前の保管安定性がより向上する。
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物が2液型放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物である場合、無水マレイン酸変性ポリブタジエンと、熱伝導性フィラーとを含むA液と、水酸基変性ポリブタジエンと、熱伝導性フィラーとを含むB液と、を含むことが好ましい。
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物が室温で硬化する場合、その樹脂成分である無水マレイン酸変性ポリブタジエンと水酸基変性ポリブタジエンとは、保管時には混合せず、使用前に混合するのが好ましい。すなわち、無水マレイン酸変性ポリブタジエンを含有するA液と水酸基変性ポリブタジエンを含有するB液とを別々に保管し、使用前に混合してから注入・塗布といった作業を行い、硬化させることによって、放熱性ギャップフィラーとする。
【0026】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、A液の粘度は、放熱性ギャップフィラーを塗布する際に、塗布装置におけるポンプを利用した供給安定性をより向上させる観点から、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下、さらに好ましくは300Pa・s以下、さらに好ましくは280Pa・s以下であり、そして、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは20Pa・s以上であり、さらに好ましくは50Pa・s以上、さらに好ましくは100Pa・s以上、さらに好ましくは200Pa・s以上である。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、B液の粘度は、放熱性ギャップフィラーを塗布する際に、塗布装置におけるポンプを利用した供給安定性をより向上させる観点から、好ましくは500Pa・s以下、より好ましくは400Pa・s以下、さらに好ましくは300Pa・s以下、さらに好ましくは280Pa・s以下であり、そして、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは20Pa・s以上であり、さらに好ましくは50Pa・s以上、さらに好ましくは100Pa・s以上、さらに好ましくは200Pa・s以上である。
本明細書中におけるA液およびB液の粘度は、実施例に記載の方法により測定される値を示す。
【0027】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、A液の熱伝導率は、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは1.0W/m・K以上、より好ましくは1.5W/m・K以上、さらに好ましくは2.0W/m・K以上、さらに好ましくは2.5W/m・K以上、さらに好ましくは2.7W/m・K以上、さらに好ましくは3.0W/m・K以上、さらに好ましくは3.5W/m・K以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、10.0W/m・K以下であってもよいし、8.0W/m・K以下であってもよいし、5.0W/m・K以下であってよい。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、B液の熱伝導率は、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは1.0W/m・K以上、より好ましくは1.5W/m・K以上、さらに好ましくは2.0W/m・K以上、さらに好ましくは2.5W/m・K以上、さらに好ましくは2.7W/m・K以上、さらに好ましくは3.0W/m・K以上、さらに好ましくは3.5W/m・K以上である。上限値は特に限定されないが、例えば、10.0W/m・K以下であってもよいし、8.0W/m・K以下であってもよいし、5.0W/m・K以下であってよい。
本明細書中におけるA液およびB液の熱伝導率は、実施例に記載の方法により測定される値を示す。
【0028】
以下、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0029】
<無水マレイン酸変性ポリブタジエン>
本実施形態の無水マレイン酸変性ポリブタジエンは、ブタジエンホモポリマーを無水マレイン酸で変性させて製造され、具体的にはクレイバレー社のRICON 130MA8、RICON 131MA5、RICOBOND 1731、RICOBOND 1756、エボニック社 POLYVEST MA75等が例示される。
【0030】
本実施形態の無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、ハンドリング性およびシート成形性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上であり、そして、粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましく10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは5.5質量%以下である。
【0031】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、A液に含まれる無水マレイン酸変性ポリブタジエンの含有量は、A液の全量を100質量%としたとき、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは2.4質量%以上であり、そして、粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは14.0質量%以下、さらに好ましくは12.0質量%以下、さらに好ましくは11.0質量%以下である。
【0032】
<水酸基変性ポリブタジエン>
また、本実施形態の水酸基変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンを水酸化して得られ、具体的にはクレイバレー社のPoly bd R-20LM、出光興産(株)社のPoly bd R-15HT、Poly bd R-45HT、エボニック社 POLYVEST HT、日本曹達(株)社のNISSO-PB G-1000、NISSO-PB G-2000、NISSO-PB G-3000、Zibo社のHydroxyl-terminated Polymer Butadiene等が例示される。
【0033】
本実施形態の水酸基変性ポリブタジエンの含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.8質量%以下である。
【0034】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、B液に含まれる水酸基変性ポリブタジエンの含有量は、B液の全量を100質量%としたとき、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、そして、粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは14.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.6質量%以下である。
【0035】
本実施形態の無水マレイン酸変性ポリブタジエンおよび本実施形態の水酸基変性ポリブタジエンの含有量は、反応に関与する無水マレイン酸変性ポリブタジエンの無水マレイン酸残基の数と水酸基変性ポリブタジエンの水酸基の数と、反応後に得られる樹脂の物性とを考慮して決定される。本実施形態の無水マレイン酸変性ポリブタジエンおよび本実施形態の水酸基変性ポリブタジエンを合計した含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、例えば、0.01~25質量%であり、好ましくは0.5~25質量%である。
本実施形態の無水マレイン酸変性ポリブタジエンおよび本実施形態の水酸基変性ポリブタジエンを合計した含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上であり、そして、粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0036】
<熱伝導性フィラー>
本実施形態の熱伝導性フィラーとしては、既知の熱伝導性フィラーを任意に使用することができるが、ブレークスルー電圧が懸念される場合には、電気絶縁性の熱伝導性フィラーが好ましい。
【0037】
電気絶縁性の熱伝導性フィラーとしては、酸化物、水和物、窒化物、炭酸塩、および炭化物等の無機粒子が挙げられ、酸化物では、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等、水和物では、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等、窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸塩としては、例えば、炭酸マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、炭化物としては、例えば、炭化ケイ素が好ましく用いられる。また、電気絶縁性を考慮しなければ、黒鉛、カーボンナノチューブ、アルミニウム等の金属も使用できる。
【0038】
本実施形態の熱伝導性フィラーは、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、無水炭酸マグネシウム、および炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0039】
本実施形態の熱伝導性フィラーの含有量は、本発明の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、そして、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0040】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、熱伝導性フィラーは、A液およびB液のそれぞれに含有することが好ましい。熱伝導性フィラーは、A液およびB液のそれぞれに含有することにより、A液およびB液の粘度のバランスをより適切にすることができ、A液とB液を混合する際の操作性をより向上することができる。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、A液に含まれる熱伝導性フィラーの含有量は、A液の全量を100質量%としたとき、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、そして、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、B液に含まれる熱伝導性フィラーの含有量は、B液の全量を100質量%としたとき、熱伝導性をより向上させる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、そして、ハンドリング性をより向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0041】
これらの熱伝導性フィラーは、1種または2種以上を使用したり、同種類であっても粒子径の異なる無機粒子を組み合わせて用いたり、その含有量を調整したりすることによって、熱伝導性を制御したり、樹脂組成物の粘度を制御することが可能であるが、熱伝導性の最大化を目指しながら、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の粘度を、注入・塗布といった操作が容易にできる範囲内に制御するためには、粒子径の異なる無機粒子を組み合わせて使用することが好ましい。こうすることにより、適正な粘度に調整しながら熱伝導率をより向上させることができる。なお、難燃性を付与する場合等では、例えば、酸化物ではなく水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを選択するといったように、水和物を使用することも可能である。
【0042】
<酸化防止剤>
放熱性ギャップフィラーは、放熱を目的としているため、当然に高温に長時間さらされたり、高温と室温とに繰り返しさらされたりするような場所で使用される。
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、ブタジエン鎖に由来する二重結合の熱、水、酸素等による熱劣化に加え、ブタジエン鎖間で架橋反応を起こしやすく、その結果、得られた放熱性ギャップフィラーは、硬く、脆くなって割れや剥がれを引き起こす。この割れや剥がれをより低減するため、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、酸化防止剤を含有する。
酸化防止剤は、公知の酸化防止剤を用いることができるが、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、ジフェニルアミン系酸化防止剤、アスコルビン酸系酸化防止剤、およびヒンダードアミン系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、フェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、フェノール系酸化防止剤を含むことがさらに好ましい。
この酸化防止剤は、一次酸化防止剤および/または二次酸化防止剤の1種または2種以上を使用することが好ましい。
【0043】
一次酸化防止剤は、パーオキシラジカルを捕捉して樹脂の酸化劣化を防止する。この一次酸化防止剤は、公知の一次酸化防止剤が使用できるが、フェノール系酸化防止剤が好ましく、ヘキサメチレンビス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス[(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロピオン酸メチル、ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9側鎖アルキルエステル、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール等が例示される。フェノール系酸化防止剤は、放熱性ギャップフィラーの割れや剥がれをより抑止し、適度な硬度を維持する観点から、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]および4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0044】
二次酸化防止剤は、二重結合の酸化で生成したヒドロオキサイドラジカルを分解して樹脂の酸化劣化を防止する。二次酸化防止剤としては、従来公知の二次酸化防止剤を適用することができるが、リン系酸化防止剤が好ましく、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス[2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル]ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール等が例示される。
【0045】
これら酸化防止剤の含有量は、他の性能を犠牲にせずに、酸化防止効果を発現させることを考慮すると、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、例えば、0.01~20質量%であり、好ましくは0.4~20質量%である。
酸化防止剤の含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、0.01質量%以上であり、酸化防止効果をより向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、熱伝導性、ハンドリング性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
【0046】
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、酸化防止剤はA液またはB液のどちらか一方のみに含んでいてもよいし、A液およびB液の両方に含んでいてもよい。
A液に含まれる酸化防止剤の含有量は、A液の全量を100質量%としたとき、酸化防止効果をより向上させる観点から、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、そして、熱伝導性、ハンドリング性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、さらに好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
B液に含まれる酸化防止剤の含有量は、B液の全量を100質量%としたとき、酸化防止効果をより向上させる観点から、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、そして、熱伝導性、ハンドリング性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、さらに好ましくは15.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0047】
<硬化促進剤>
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、硬化反応を促進させる観点から、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。
硬化促進剤は、硬化反応を促進する作用を有するものであれば特に制限されるものではないが、アミン系硬化促進剤が好ましい。その中でも、アミン系硬化促進剤のpKaは、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上である。具体的には、2-エチル-4-エチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-エチルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5(DBN)、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-1,3,5-トリアジン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルシクロヘキサンアミン)、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン等の2級アミン類、DBUまたはDBNのオクチル酸塩、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン等が挙げられる。
これら硬化促進剤の含有量は、適度な初期硬化時間に調整することを考慮すると、本発明の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物全量に対して0.01~5質量%が好ましい。
【0048】
<可塑剤>
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、樹脂の粘度を調整する観点から、可塑剤をさらに含むことが好ましい。
可塑剤は、硬化物の内部に留まるよう引火点200℃以上となるような常温で液体であることが好ましく、硬化反応を阻害しない液体であれば、その1種または2種以上を使用できる。例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(TOTM)、リン酸トリクレジル(TCP)等のエステル類、動植物油変性の脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の可塑剤の含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、樹脂の粘度をより適切な範囲とする観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、そして、熱伝導性、ハンドリング性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0050】
<分散剤>
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、熱伝導性フィラーの分散性をより向上させる観点から、分散剤をさらに含むことが好ましい。
分散剤は、熱伝導性フィラーの表面改質を目的とし、樹脂との濡れ性改善、および分散性向上を助ける作用を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系および両性の界面活性剤が挙げられ、その1種または2種以上を使用できる。具体的には、KP(信越化学工業(株)製)、フローレン(共栄社化学(株)製)、ソルスパース(ルーブリゾール(株)製)、EFKA(BASF社製)、アジスパー(味の素ファインテクノ(株)製)およびDisperbykおよびBYK(ビックケミー(株)製)、マリアリム(日油(株)製)、およびディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。これらはA液またはB液の製造時に配合しても、予めフィラーに処理しても良い。
【0051】
本実施形態の分散剤の含有量は、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、熱伝導性フィラーの分散性をより向上させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、そして、熱伝導性、ハンドリング性等のバランスをより向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下である。
【0052】
<その他の成分>
さらに、上記で述べた、添加物の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合されるカップリング剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、難燃剤、沈降防止剤、および着色剤、等を必要に応じて配合することができる。
【0053】
[放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、例えば、ボールミル、3本ロールミル、ニーダー、プラネタリーミキサー、スクリュー押出機等の高粘度混練機を使用して、各材料を混合することにより得られる。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、A液およびB液をそれぞれ、ボールミル、3本ロールミル、ニーダー、プラネタリーミキサー、スクリュー押出機等の高粘度混練機が使用して、各材料を混合する。
【0054】
[放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の使用方法]
放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の使用方法としては、例えば、物品間の隙間に放熱性ギャップフィラー用樹脂組成を注入するか、放熱性ギャップフィラー用樹脂組成を塗布してからその塗布面で物品同士を貼り合わせることによって、物品同士を接着させる。
放熱性ギャップフィラーが2液型である場合、例えば、A液とB液とを体積比1:1で混合し、物品間の隙間に注入するか、塗布してからその塗布面で物品同士を貼り合わせることによって、物品同士を接着させる。もちろん、重量比で混合することも可能であるが、この種の作業では、体積を測定して混合する方式のものが簡便なため一般的に使用されている。
【0055】
[放熱性ギャップフィラー]
本実施形態の放熱性ギャップフィラーは、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を硬化させてなる。本実施形態の放熱性ギャップファイラーは、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物の少なくとも一部が硬化されていればよい。
【0056】
本実施形態の放熱性ギャップフィラーは、例えば、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物を室温(例えば、21℃以上25℃以下)で硬化させることにより得られる。
放熱性ギャップフィラーが2液型の場合、A液とB液とを混合してからの初期硬化時間は、硬化促進剤の種類、使用量、温度によって変化するが、本発明では、実用的に好ましいといわれている室温(例えば、21℃以上25℃以下)で5~60分にコントロール可能で、その後、完全硬化まで1~3日程度を要する。また、硬化後は粘着性に優れるうえ、適度な柔軟性を有するため、過酷な条件下でも長期間にわたって剥がれたり、割れたりすることがない。
【0057】
[物品]
本実施形態の物品は、本実施形態の放熱性ギャップフィラーを含む。
本実施形態の物品は、デジタル家電製品、リチウムイオン2次電池、車載パワーモジュール等の電子機器等である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を表す。
【0059】
製造例1
(A-1液の製造)
RICON 130MA8(クレイバレー社製 無水マレイン酸変性ポリブタジエン)2.70部、フタル酸ジイソノニル(新日本理化(株)製 可塑剤)6.00部、B-325(アルモリックス社製 水酸化アルミニウム)25部、T-60 75MY(アルマティス社製 酸化アルミニウム)31部、LS-210B(日本軽金属(株)製 酸化アルミニウム)25部およびASFP-20(デンカ(株)製 酸化アルミニウム)10.3部をTHINKY社の自転・公転方式ミキサーARE-310で混合撹拌し、A-1液100部を得た。
【0060】
製造例2
(B-1液の製造)
Poly bd R-20LM(クレイバレー社製 水酸基変性ポリブタジエン)1.05部、Lupragen N700(BASF社製 硬化促進剤)0.02部、フタル酸ジイソノニル(新日本理化(株)製 可塑剤)6.63部、B-325(アルモリックス社製 水酸化アルミニウム)25部、T-60 75MY(アルマティス社製 酸化アルミニウム)31部、LS-210B(日本軽金属(株)製 酸化アルミニウム)25部およびASFP-20(デンカ(株)製 酸化アルミニウム)10.3部およびDISPERBYK-145(ビックケミー社製 分散剤)1.00部をTHINKY社の自転・公転方式ミキサーARE-310で混合撹拌し、B-1液100部を得た。
【0061】
表1の配合に従い、製造例1と同様に操作してA-2液~A-8液を、また、表2、表3および表4の配合に従い、製造例2と同様に操作してB-2液~B-33液を得た。なお、表1~4に記載の酸化アルミニウム等の無機粒子の平均粒子径はそれぞれのメーカーのカタログ値である。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
得られたA液8種およびB液33種について、60℃で1カ月間保管後に粘度および性状の変化の有無を検査したが、いずれも±20%を超える粘度変化や性状の変化は見られなかった。
【0067】
実施例1:A-1液とB-3液との混合およびシートの作製
200mlのノードソン社製2液並列カートリッジの両側に備えられた100mlのタンクのそれぞれに、A-1液およびB-3液を充填し、24段のディスポーザブルスパイラルミキサー(スタティックミキサー)を通すことによって、A-1液とB-3液とを体積比1:1で混合した。
得られた混合液をガラス板に塗布し、両端に厚さ1mmのスペーサーを設置したアルミ板で押しつぶすことによって、ガラス板とアルミ板の間に、厚さ1mmのAB混合液が挟まれたシートを作製した。
【0068】
実施例1と同様の操作で、表5および表6の配合に従いA液とB液を混合し、実施例1~24および比較例1~4のAB混合液およびシートを得た。
【0069】
実施例1~24および比較例1~4で得られたAB混合液およびシートについて、表5および表6に記載された項目の試験(熱伝導率、硬度、初期硬化時間、完全硬化時間、熱衝撃試験、およびエージング試験)を実施し、表5および表6の結果を得た。なお、A液およびB液のそれぞれについては、粘度および熱伝導率の試験を実施し、その結果を表1~4に記載した。
【0070】
【0071】
【0072】
「粘度」
AntonPaar社のレオメーターMCR302、PP25を使用し、測定温度23℃、せん断速度1(1/s)で測定した。
【0073】
「熱伝導率」
LINSEIS社のTIMテスターを使用しASTM D5470に準じて測定した。実施例1~24および比較例1~4において、熱伝導率測定用のサンプルは、上記シートを硬化したサンプルである。シートは、硬化温度:25℃、硬化時間:表5および表6に記載の完全硬化時間、の条件で、硬化した。
【0074】
「硬度」
ショアOOタイプのデュロメーター(株式会社テクロック社製、商品名:テクロック・デュロメータGS-754G)およびショアOタイプのデュロメーター(株式会社テクロック社製、商品名:テクロック・デュロメータGS-753G)を使用し、ASTM D2240に準じて測定した。実施例1~24および比較例1~4において、硬度測定用のサンプルは、上記シートを硬化したサンプルである。シートは、硬化温度:25℃、硬化時間:表5および表6に記載の完全硬化時間、の条件で、硬化した。
【0075】
「初期硬化時間」
AB混合液の23℃における粘度が、混合後の初期粘度から2倍になるまでの時間とした。
【0076】
「完全硬化時間」
実施例および比較例で得られたAB混合液を23℃で放置したとき、硬度が一定になるまでの時間(日数)とした。
【0077】
「熱衝撃試験」
実施例および比較例で得られたシートを、-40℃で20分保持、10分で100℃まで昇温して20分保持、10分で-40℃まで冷却する合計60分のサイクルを、2000サイクル実施した後、割れ・剥がれの程度を以下の指標に従って評価した。
A(非常に良好):割れも剥がれもない
B(良好):割れか剥がれの一方のみがみられる
C(不良):割れと剥がれの両方がみられる
【0078】
「エージング試験:割れ・剥がれ」
実施例および比較例で得られたシートを100℃のオーブンで2000時間放置した後、割れ・剥がれの程度を目視で観察し、以下の指標に従って評価した。
A(非常に良好):割れも剥がれもない
B(良好):割れか剥がれの一方のみがみられる
C(不良):割れと剥がれの両方がみられる
【0079】
「エージング試験:脆さ」
<脆さ1>
エージング試験後の硬度を前記「硬度」と同様の方法で測定し、以下の指標に従って脆さ1を評価した。なお、硬度がショアOOで85以上では硬くなるため折り曲げたときに割れやすい傾向を示し、ショアOOで90を超えるか、ショアOで70を超えると、硬すぎて折り曲げたときに殆どの場合で割れることが確認されている。
A(非常に良好):ショアOOで85未満
B(良好):ショアOOで85以上
C(不良):ショアOOで90を超えるか、ショアOで70を超える
<脆さ2>
実施例および比較例のシートの作製方法において、スペーサーの厚みを3mmに変更することにより、厚さ3mmのAB混合液が挟まれたシートを作製した。厚さ3mmのAB混合液が挟まれたシートに対して、前記「硬度」と同様の方法で硬度測定を行った。硬度測定時に、硬度測定計の押針(押針形状:半球形、先端R1.19mm)が刺さった箇所を光学顕微鏡で40倍に拡大して観察した。脆さ2は、脆さ1よりも厳しい基準での脆さの評価基準となる。以下の指標に従って脆さ2を評価した。
A(非常に良好):表面に割れがなく、軟らかさがあり凹んだ状態
B(良好):表面に少し割れがみられるが、押し付ければ割れが修復可能である状態
C(不良):表面に割れがみられる状態
<脆さの総合評価>
以下の指標に従って脆さを総合評価した。
AA(最も良好):脆さ1および脆さ2の評価が両方Aである
A(非常に良好):脆さ1の評価がAであり、脆さ2の評価がBである
BB(より良好):脆さ1の評価がBであり、脆さ2の評価がBである
B(良好):脆さ1の評価がAまたはBであり、脆さ2の評価がCである
C(不良):脆さ1および脆さ2の評価がCである
【0080】
以上より、実施例の熱衝撃試験後の割れ・剥がれの評価、エージング試験後の割れ・剥がれおよび脆さの評価は、いずれも比較例よりも良好であった。すなわち、本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物によれば、放熱性ギャップフィラーが、高温条件下に長時間さらされたり、急激な温度変化を受けたりしても、割れや剥がれの発生を低減することができる。
また、実際の使用場面に対応した条件下において適度な硬度を維持することができる。
さらに、2液型放熱性ギャップフィラー樹脂組成物は、A液とB液との混合前において保管安定性が良好であり、そして、混合後において室温で初期硬化時間5~60分の適度な室温硬化性を有するため操作性が良いことが分かった。
本実施形態の放熱性ギャップフィラー用樹脂組成物は、接点障害を引き起こす揮発性シリコーンや低分子シロキサンを含まなくてもよいため、系内に存在するか、硬化反応で生じる水やガスによるボイドの発生もない。
【0081】
この出願は、2021年10月4日に出願された日本出願特願2021-163412号および2022年4月26日に出願された日本出願特願2022-072233号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。