(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-18
(45)【発行日】2024-07-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240719BHJP
E02F 9/18 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/18
(21)【出願番号】P 2023569353
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2022046097
(87)【国際公開番号】W WO2023120336
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021209465
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 善大
(72)【発明者】
【氏名】森田 義帝
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114408(WO,A1)
【文献】特開2003-336293(JP,A)
【文献】特開2012-184600(JP,A)
【文献】登録実用新案第3086360(JP,U)
【文献】特開2021-139204(JP,A)
【文献】特開2000-226866(JP,A)
【文献】特開平11-107319(JP,A)
【文献】特開平10-183687(JP,A)
【文献】特開2011-246214(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0251660(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/18
E02F 9/20-9/22
E02F 3/42-3/43
E02F 3/84-3/85
E02F 9/26
B66C 19/00-23/94
B62D 41/00-67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の後端を画定するカウンタウェイトと、
上方に抜去可能な状態で前記カウンタウェイトに設けられた牽引ピン保持孔に保持されて、他の車両を牽引するための牽引具を係止する牽引ピンと、
を備える作業車両において、
前記車体の後方に存在する物体を検知する後方検知装置を備え、
前記後方検知装置は、
前記牽引ピン保持孔に保持された前記牽引ピンより上方で前記カウンタウェイトに支持されたブラケットと、
前記ブラケットに支持された支持プレートと、
前記支持プレートに支持された物体検知装置と、
を有し、
前記支持プレートは、前記牽引ピンを操作するときには、前記牽引ピンの操作方向から退避可能に構成され
、
前記牽引ピンの操作を阻止すると共に、前記物体検知装置を前記車体の後方に存在する物体を検知可能にする検知可能状態と、
前記牽引ピンの操作を許容する退避状態とに変更可能に構成され、
前記後方検知装置は、前記支持プレートが前記検知可能状態で固定されるロック機構を有し、
前記ブラケットには、前記牽引ピンを操作するための開口が形成され、
前記支持プレートは、
前記検知可能状態の場合に前記開口を閉塞し、
前記退避状態の場合に前記開口を開放することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項
1に記載の作業車両において、
前記カウンタウェイトの後端より前方で前記車体に支持された建屋を備え、
前記支持プレートが前記検知可能状態である場合に、前記物体検知装置の後端は、前記カウンタウェイトの後端より前方で、前記建屋より後方に配置されていることを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項
2に記載の作業車両において、
前記建屋の後部において、互いに間隔を空けて配置された複数のビームの隙間を通じて空気を流通させるリアグリルを備え、
前記ブラケットの外形輪郭線は、前後方向から見て、前記リアグリルの複数の前記ビームの一部と重なっている、ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項
3に記載の作業車両において、
前記ブラケットの上部の車幅方向の寸法は、前記カウンタウェイトに支持される前記ブラケットの下部の車幅方向の寸法よりも短いことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記物体検知装置が出力する信号を受信するコントローラと、
前記物体検知装置と前記コントローラとを接続するハーネスと、を備え、
前記ブラケットは、前記ハーネスを保持するハーネス保持部を有することを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引ピン及び後方検知装置を備える作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
不整地で使用される作業車両には、他の車両を牽引する必要が生じる場合がある。そこで、車体の後部、かつ車幅方向中央に挿抜可能に支持されて、他の車両を牽引するためのワイヤーを係止する牽引ピンを備える作業車両が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、運転室内の作業者が車体後方の状況を確認するために、車体後方を撮影するカメラを搭載した作業車両も存在する。特許文献1には、広角のカメラを車体後方の上部に、斜め下側へ傾けて設置することで、車体後端(近距離)から車体後方(遠距離)までの広範囲を撮影する構成が開示されている。車体後方の状況を検出するための検知装置として、特許文献1に記載されているカメラの他、車体後方の物体(例えば、障害物、作業員、他の車両)の有無を検知するミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging)等が採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検知装置の入手容易性やコストを考慮して、大きな角度の検知範囲(撮影範囲)に対応していない検知装置を搭載する場合、一つの検知装置で車体後端(近距離)から車体後方(遠距離)を検知するためには、検知装置を車体の後端であるカウンタウェイト上に設置し、かつ、検知方向を略水平方向に設定することが好ましい。しかしながら、カウンタウェイトには牽引ピンが備えられるため、限られた車体寸法内で、後方検知装置を搭載しようとすると、後方検知装置が牽引ピンの挿抜を阻害するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、牽引ピンの作業性を損なうことなく、車体後端に後方検知装置を設置できる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体の後端を画定するカウンタウェイトと、上方に抜去可能な状態で前記カウンタウェイトに設けられた牽引ピン保持孔に保持されて、他の車両を牽引するための牽引具を係止する牽引ピンと、を備える作業車両において、前記車体の後方に存在する物体を検知する後方検知装置を備え、前記後方検知装置は、前記牽引ピン保持孔に保持された前記牽引ピンより上方で前記カウンタウェイトに支持されたブラケットと、前記ブラケットに支持された支持プレートと、前記支持プレートに支持された物体検知装置と、を有し、前記支持プレートは、前記牽引ピンを操作するときには、前記牽引ピンの操作方向から退避可能に構成され、前記牽引ピンの操作を阻止すると共に、前記物体検知装置を前記車体の後方に存在する物体を検知可能にする検知可能状態と、前記牽引ピンの操作を許容する退避状態とに変更可能に構成され、前記後方検知装置は、前記支持プレートが前記検知可能状態で固定されるロック機構を有し、前記ブラケットには、前記牽引ピンを操作するための開口が形成され、前記支持プレートは、前記検知可能状態の場合に前記開口を閉塞し、前記退避状態の場合に前記開口を開放することを特徴とする作業車両。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、牽引ピンの作業性を損なうことなく、車体後端に後方検知装置を設置できる作業車両を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るホイールローダの側面図である。
【
図2】ホイールローダを後方から見た要部斜視図である。
【
図3】カウンタウェイトを前方側から見た斜視図である。
【
図5】後方検知装置を後方側から見た斜視図である。
【
図6】後方検知装置を前方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る作業車両の一例であるホイールローダ10について説明する。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、ホイールローダ10に搭乗して操作する作業者の視点を基準としている。また、作業車両の具体例はホイールローダ10に限定されず、ダンプトラック、油圧ショベル、クレーン車などでもよい。
【0011】
図1は、本実施形態に係るホイールローダ10の側面図である。
図1に示すように、ホイールローダ10は、前フレーム11と後フレーム12とで構成される車体を有する。前フレーム11と後フレーム12とは、センタピン13によって、左右方向に回転可能に連結されている。また、前フレーム11と後フレーム12とは、左右一対のステアリングシリンダ14L、14Rによって接続されている。一対のステアリングシリンダ14L、14Rは、油圧ポンプ(図示省略)から作動油の供給を受けて伸縮する。
【0012】
一対のステアリングシリンダ14L、14Rのうち一方を伸長、他方を縮退させることにより、センタピン13を中心として前フレーム11が後フレーム12に対して左右方向に屈曲する。これにより、前フレーム11と後フレーム12との相対的な取付角度が変化し、車体が屈曲して換向する。すなわち、このホイールローダ10は、センタピン13を中心に前フレーム11と後フレーム12とが屈曲されるアーティキュレート式である。
【0013】
前フレーム11は、左右一対の前タイヤ15L、15Rと、フロント作業機16とを支持している。フロント作業機16は、リフトアーム17と、バケット18と、一対のリフトアームシリンダ19と、バケットシリンダ20と、ベルクランク21とを有する。
【0014】
リフトアーム17は、前後方向に延設されている。より詳細には、リフトアーム17は、前端がバケット18に回動可能に連結され、後端が前フレーム11に回動可能に連結されている。そして、リフトアーム17は、一対のリフトアームシリンダ19の伸縮によって上下方向に回動(俯仰動)する。
【0015】
バケット18は、荷物(土砂など)を収容可能な凹形状の空間を有する。また、バケット18は、リフトアーム17の前端において、回動(チルトまたはダンプ)可能に支持されている。より詳細には、バケット18は、バケットシリンダ20の伸縮に伴ってベルクランク21が回動することによって、上下方向に回動する。
【0016】
後フレーム12は、左右一対の後タイヤ22L、22Rと、キャブ23(運転室)と、エンジン建屋24(建屋)と、カウンタウェイト30とを支持している。
【0017】
キャブ23には、ホイールローダ10を操作する作業者が搭乗する内部空間が形成されている。キャブ23の内部には、作業者が着席するシート(図示省略)と、シートに着席した作業者が操作する操作装置(図示省略)とが配置されている。キャブ23に搭乗した作業者が操作装置を操作することによって、ホイールローダ10が走行し、フロント作業機16が動作する。
【0018】
エンジン建屋24は、キャブ23の後方で、カウンタウェイト30の最後端より前方において、後フレーム12に支持されている。エンジン建屋24は、ホイールローダ10を駆動させるための構成部品(例えば、エンジン25、ラジエータ26、及び冷却ファン27)を収容する内部空間を有する。
【0019】
エンジン25は、ホイールローダ10を動作させるための駆動力を発生させる。エンジン25の駆動力が伝達されることによって、前タイヤ15L、15R及び後タイヤ22L、22Rが回転する。これにより、ホイールローダ10が走行する。ラジエータ26は、エンジン25に冷却水を供給し、エンジン25から排出された冷却水を冷却風と熱交換させ、熱交換した冷却水を再びエンジン25に還流させる。冷却ファン27は、ラジエータ26に冷却風を供給する。
【0020】
図2は、ホイールローダ10を後方から見た要部斜視図である。
図2に示すように、エンジン建屋24の背面には、リアグリル28が設けられている。リアグリル28は、ホイールローダ10の外部とエンジン建屋24の内部空間との間で空気を流通させる。より詳細には、リアグリル28は、センタピラー29a、複数の左側ビーム29b、複数の右側ビーム29c、及び複数の傾斜ビーム29dを有する。そして、リアグリル28は、センタピラー29a、複数の左側ビーム29b、複数の右側ビーム29c、及び複数の傾斜ビーム29dの間の隙間を通じて、空気を流通させる。
【0021】
センタピラー29aは、車体の車幅方向(左右方向)の中央において、上下方向に延設されている。複数の左側ビーム29bは、上下方向に間隔を隔てた位置において、各々がセンタピラー29aの左面から左方に延設されている。複数の右側ビーム29cは、上下方向に間隔を隔てた位置において、各々がセンタピラー29aの右面から右方に延設されている。傾斜ビーム29dは、一番下の左側ビーム29bから左斜め下に延設されている。さらに図示は省略するが、リアグリル28は、一番下の右側ビーム29cから右斜め下に延設された傾斜ビーム29dを備えてもよい。
【0022】
カウンタウェイト30は、ホイールローダ10(後フレーム12)の後端を画定する画定部材の一例である。本実施形態に係る画定部材は、フロント作業機16との重量バランスを取るためのカウンタウェイト30(重量物)である。
【0023】
図3は、カウンタウェイト30を前方側から見た斜視図である。
図4は、ホイールローダ10の背面図である。
図1及び
図2に示すように、カウンタウェイト30の後端は、ホイールローダ10の構成部品のうちで最も後方に位置している。また、
図2及び
図4に示すように、カウンタウェイト30は、後フレーム12の車幅方向の全域に亘って設けられている。また、カウンタウェイト30は、後フレーム12の車幅方向のうち、少なくともリアグリル28が設けられた領域において、リアグリル28の下方に位置している。さらに、
図2~
図4に示すように、カウンタウェイト30は、支持台31と、バンパー32とを主に備える。
【0024】
支持台31は、カウンタウェイト30の車幅方向の中央に配置されている。また、支持台31は、バンパー32より下方で、バンパー32の後端より前方に配置されている。そして、支持台31の上面には、上方に開口した牽引ピン保持孔33が設けられている。牽引ピン保持孔33は、上下方向に挿抜可能な状態で、後述する牽引ピン35を保持する。
【0025】
バンパー32は、カウンタウェイト30の車幅方向の全域に亘って、左右方向に延設されている。また、バンパー32は、支持台31より上方で、支持台31より後方に配置されている。さらに、バンパー32の後端は、カウンタウェイト30(すなわち、ホイールローダ10の構成要素のうち)の最も後方に配置されて、後方からの物体が最初に衝突する。
【0026】
支持台31とバンパー32との間には、上下方向の隙間が形成されている。また、支持台31とバンパー32との間の隙間は、ホイールローダ10の後方に露出されている。そして、牽引ピン保持孔33に保持された牽引ピン35に係止されたワイヤー(牽引具)は、この隙間を通じてホイールローダ10の後方に延出される。
【0027】
そして、
図3に示すように、バンパー32には、上下方向に貫通する牽引ピン挿通孔34が設けられている。牽引ピン保持孔33及び牽引ピン挿通孔34は、上下方向から見て重なる位置に形成されている。すなわち、牽引ピン35は、牽引ピン挿通孔34を通じ、牽引ピン保持孔33に対して、上下方向に挿抜可能になっている。
【0028】
牽引ピン35は、ホイールローダ10が他の車両を牽引する際に、他の車両に取り付けられたワイヤーを係止するのに用いられる。
図5(B)及び
図6(B)に示すように、牽引ピン35は、円柱形状のピン本体36と、ピン本体36の上端に取り付けられた把持部37とで構成される。そして、牽引ピン35は、把持部37の側を上にした状態で、牽引ピン挿通孔34を通じて牽引ピン保持孔33に挿抜される。
【0029】
まず、把持部37を把持した作業者が牽引ピン挿通孔34内で牽引ピン35を押し下げると、牽引ピン35の下端部が牽引ピン保持孔33に挿入される。これにより、牽引ピン35が支持台31に支持される。このとき、ピン本体36の一部は、支持台31とバンパー32との間に設けられた上下方向の隙間を通じて、ホイールローダ10の後方側に露出する。また、把持部37は、バンパー32の上端より下方において、牽引ピン挿通孔34内に収容される。
【0030】
一方、把持部37を把持した作業者が牽引ピン挿通孔34内で牽引ピン35を引き上げると、牽引ピン35の下端部が牽引ピン保持孔33から抜去される。これにより、支持台31と牽引ピン35の下端との間に上下方向の隙間が形成される。作業者は、この隙間を通じてワイヤーをピン本体36に係止(掛着)することができる。そして、作業者は、牽引ピン35を再び押し下げることによって、ワイヤーを係止した牽引ピン35を支持台31に支持させる。ワイヤーを牽引ピン35に係止する作業において、牽引ピン35を牽引ピン挿通孔34から完全に抜去するまで引き上げる必要はなく、支持台31と牽引ピン35の下端との間にワイヤーを通すことが可能な隙間が形成されるだけ上方向に引き上げれば良い。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係るホイールローダ10は、後方検知装置40をさらに備える。後方検知装置40は、ホイールローダ10の後方に位置する物体(例えば、障害物、作業員、他の車両)を検知し、検知結果を示す検知信号をハーネス43(
図3参照)を通じてコントローラ(図示省略)に出力する。コントローラは、例えば、後方検知装置40から出力された検知信号に基づいて、キャブ23内の作業者に物体の存在を報知する。
【0032】
図1に示すように、後方検知装置40は、カウンタウェイト30の後端より前方で、カウンタウェイト30以外のホイールローダ10の構成部品(エンジン建屋24を含む)より後方に配置されている。より詳細には、
図5(A)及び
図6(A)に示すように、後述する支持プレート42が検知可能状態である場合に、後述するミリ波レーダ41の後端は、カウンタウェイト30の後端より前方で、エンジン建屋24より後方に配置されている。また、
図2~
図4に示すように、カウンタウェイト30の車幅方向の中央で、牽引ピン挿通孔34より後方において、バンパー32の上面に支持されている。
【0033】
また、
図4に示すように、ホイールローダ10を後方から見たときに、後方検知装置40は、リアグリル28の一部と重なるように配置されている。より詳細には、後方検知装置40(後述するブラケット44)の外形輪郭線は、リアグリル28の複数のビーム29b~29dの一部(より詳細には、左右の傾斜ビーム29d)と重なっている。
【0034】
さらに、
図4に示すように、後方検知装置40は、ホイールローダ10の車幅方向において、牽引ピン保持孔33に保持された牽引ピン35と同じ位置(すなわち、ホイールローダ10の車幅方向の中央)に配置されている。一方、後方検知装置40は、ホイールローダ10の高さ方向(上下方向)において、牽引ピン保持孔33に保持された牽引ピン35(より詳細には、牽引ピン35を露出させる支持台31とバンパー32との間の隙間)より上方に配置されている。
【0035】
すなわち、後方検知装置40を設置した状態でも、牽引ピン35にワイヤーを係止することができる。一方、
図4の位置にある後方検知装置40は、牽引ピン保持孔33に対する牽引ピン35の挿抜作業の邪魔になる。この課題は、リアグリル28及び後方検知装置40の間隔を短くせざるを得ない小型のホイールローダにおいて、特に顕著となる。
【0036】
図5は、後方検知装置40を後方側から見た斜視図である。
図6は、後方検知装置40を前方側から見た斜視図である。
図7は、ロック機構46の断面図である。
図5~
図7に示すように、後方検知装置40は、ミリ波レーダ41と、支持プレート42と、ハーネス43と、ブラケット44と、ハーネス保持部45と、ロック機構46とを主に備える。
【0037】
ミリ波レーダ41は、ホイールローダ10の後方に存在する物体を検知する物体検知装置(センサ)である。ミリ波レーダ41は、ミリ波を後方に出力し、物体で反射されたミリ波を受信する。但し、物体検知装置の具体例はミリ波レーダ41に限定されず、カメラ、ステレオカメラ、LiDAR等でもよい。
【0038】
支持プレート42は、ミリ波レーダ41を支持する板状の部材である。また、支持プレート42は、後述するブラケット44の開口50の形状に対応する台形形状である。そして、支持プレート42は、ブラケット44に回動(移動、変更)可能に支持されている。さらに、支持プレート42には、ミリ波レーダ41の支持位置と異なる位置において、厚み方向に貫通する支持プレート操作孔47が形成されている。支持プレート操作孔47は、支持プレート42を回動させる際に、作業者の指が挿入される部分である。
【0039】
ミリ波レーダ41は、支持プレート42の中央において、支持プレート42の背面(検知可能状態のときに、ホイールローダ10の後方を向く面)に取り付けられている。そして、支持プレート42が検知可能状態(
図5(A))のときに、ミリ波を出力及び受信するミリ波レーダ41の表面は、ホイールローダ10の後方側に露出されている。ハーネス43は、支持プレート42を厚み方向に貫通する貫通孔48を通じて、ホイールローダ10の前方側に引き出されている。
【0040】
ブラケット44は、牽引ピン保持孔33に保持された牽引ピン35より上方且つ後方において、カウンタウェイト30に支持されている。本実施形態に係るブラケット44は、ホイールローダ10の車幅方向における牽引ピン挿通孔34の両側において、ボルト49a、49bによってバンパー32の上面に固定(締結)されている。また、ブラケット44は、ミリ波レーダ41を支持する支持プレート42を、
図5(A)及び
図6(A)に示す検知可能状態と、
図5(B)及び
図6(B)に示す退避状態との間で、回動(移動、変更)可能に支持する。
【0041】
ブラケット44は、互いに平行な上辺44a及び下辺44bと、上辺44a及び下辺44bの左端同士を接続する左辺44cと、上辺44a及び下辺44bの右端同士を接続する右辺44dとで構成される台形形状の枠型である。また、ホイールローダ10の車幅方向において、上辺44aの寸法は下辺44bの寸法より短く設定されている。また、ホイールローダ10を後方からみたときに、ブラケット44は、左辺44c及び右辺44dが左右の傾斜ビーム29dと重なるように、バンパー32に支持される。さらに、
図3に示すように、ブラケット44のうち、ボルト49a、49bによってバンパー32の上面に固定(締結)されている面は、牽引ピン保持孔33及び牽引ピン挿通孔34の上方を開放するように、切り欠かれている。
【0042】
また、ブラケット44には、厚み方向(ホイールローダ10の前後方向)に貫通する開口50が形成されている。開口50は、上辺44a、下辺44b、左辺44c、及び右辺44d囲まれた台形形状の空間である。そして、ブラケット44は、上辺44aの下端に固定されたヒンジ51を介して、ミリ波レーダ41を支持した支持プレート42を支持している。すなわち、ミリ波レーダ41を支持した支持プレート42は、ヒンジ51によって、ホイールローダ10の車幅方向に延びる回動軸線回りに回動可能に構成されている。
【0043】
ハーネス保持部45は、ブラケット44に設けられている。本実施形態に係るハーネス保持部45は、右辺44d(すなわち、開口50の中央を避けた位置)の前面側に設けられている。また、ハーネス保持部45は、右辺44dの上下方向の略中央に設けられている。さらに、ハーネス保持部45は、ハーネス保持部材(例えば、結束バンド)を固定するために、右辺44dを貫通する貫通孔である。そして、ハーネス43は、ハーネス保持部45に固定されたハーネス保持部材に緊締されることによって、開口50の中央を避けた位置においてブラケット44に支持される。さらに、ハーネス保持部45に固定されたハーネス保持部材は、ミリ波レーダ41を支持した支持プレート42の回動に追従して、ハーネス43を前後方向に移動可能な程度の緊締力で保持する。
【0044】
図5(A)及び
図6(A)に示すように、支持プレート42が検知可能状態のとき、ブラケット44の開口50は、支持プレート42によって閉塞される。すなわち、支持プレート42の検知可能状態とは、開口50を閉塞する状態(換言すれば、作業者が開口50を通じて牽引ピン35を操作するのを阻止する状態)である。また、検知可能状態の支持プレート42に支持されたミリ波レーダ41は、ホイールローダ10の後方、かつ、水平方向を中心にミリ波を出力し、物体から反射したミリ波を受信できるように、表面(アンテナ面)が後方、かつ、水平方向を向くように配置される。すなわち、支持プレート42の検知可能状態とは、ミリ波レーダ41をホイールローダ10の後方に存在する物体を検知可能にする状態である。支持プレート42の検知可能状態は、牽引ピン35の操作を阻止すると共に、ミリ波レーダ41が物体を検知可能な支持プレート42の位置(検知可能位置)と言い換えることもできる。
【0045】
次に、牽引ピン35を操作しようとする作業者は、
図5(A)及び
図6(A)の支持プレート操作孔47に指を入れて、支持プレート42を後上方に引き上げる。その結果、支持プレート42は、
図5(A)及び
図6(A)に示す検知可能状態から、
図5(B)及び
図6(B)に示す退避状態に向けて、後上方に跳ね上げられるように回動する。このとき、ハーネス43は、支持プレート42に追従して、後方に引き出される。
【0046】
これにより、
図5(B)及び
図6(B)に示すように、支持プレート42が退避状態のとき、開口50が開放される。すなわち、支持プレート42の退避状態とは、開口50を開放する状態(換言すれば、牽引ピン保持孔33に保持された牽引ピンの操作を許容する状態)である。また、退避状態の支持プレート42は、表面(アンテナ面)が上方を向くようにミリ波レーダ41を支持する。すなわち、支持プレート42の退避状態とは、ミリ波レーダ41をホイールローダ10の後方に存在する物体を検知不能にする状態である。但し、支持プレート42の退避状態は、開口50を開放して牽引ピン35の操作を許容することができれば、ミリ波レーダ41による後方の物体の検知が可能な状態でもよい。支持プレート42の退避状態は、作業者がホイールローダ10の後方からブラケット44の開口50を通じて牽引ピン35を操作することを許容する支持プレート42の位置(退避位置)と言い換えることもできる。
【0047】
次に、作業者は、支持プレート42を退避状態に保持した状態で、開口50を通じて把持部37を掴んで上方に引き上げる。次に、作業者は、支持台31と牽引ピン35の下端との隙間を通じてワイヤーを牽引ピン35に巻回する。次に、作業者は、開口50を通じて把持部37を掴んで下方に押し下げる。これにより、ワイヤーを係止した状態の牽引ピン35が牽引ピン保持孔33に保持される。さらに、作業者が支持プレート42から手を離すと、支持プレート42は、重力によって自動的に検知可能状態に戻る。なお、この一連の作業は、1人の作業者によって実施されてもよいし、複数の作業者によって実施されてもよい。
【0048】
ロック機構46は、ミリ波レーダ41を支持した支持プレート42を検知可能状態にロックする機構である。ロック機構46は、支持プレート42の前面(検知可能状態のときに、ホイールローダ10の前方を向く面)であって、かつ、ヒンジ51が固定された上辺44aと対向する下辺44bに対応する位置に取り付けられている。
図7に示すように、ロック機構46は、固定ブロック52と、支軸53と、ロックアーム54と、バネ固定軸55、56と、コイルバネ57(付勢部材)とで構成される。
【0049】
固定ブロック52は、ミリ波レーダ41より下方において、支持プレート42の前面(ミリ波レーダ41の支持面と反対側の面)に固定されている。支軸53は、ホイールローダ10の車幅方向に延設された状態で、固定ブロック52の側面に固定されている。ロックアーム54は、支軸53に回動可能に支持されている。バネ固定軸55は、支軸53が固定された固定ブロック52の側面に固定されている。バネ固定軸56は、ロックアーム54に固定されている。本実施形態では、支軸53の延設方向からみたときに、バネ固定軸56がバネ固定軸55より支軸53に近い位置に配置されている。コイルバネ57は、一端がバネ固定軸55に固定され、他端がバネ固定軸56に固定されている。
【0050】
また、ロックアーム54は、ロック片58と、係合爪59とを有する。そして、ロックアーム54は、
図7(A)に示す非ロック姿勢と、
図7(B)に示すロック姿勢との間を、支軸53周りに回動する。非ロック姿勢は、ロック片58の回動軌跡が下辺44bに設けられたロック板60より上方(内側)で、係合爪59の回動軌跡がロック板60より下方(外側)になるロックアーム54の姿勢である。ロック姿勢は、ロック片58の回動軌跡がロック板60より下方(外側)で、係合爪59の回動軌跡がロック板60より上方(内側)になるロックアーム54の姿勢である。
【0051】
さらに、コイルバネ57は、支軸53との位置関係に応じて、ロックアーム54を非ロック姿勢またはロック姿勢のいずれかに向けて付勢する。換言すれば、コイルバネ57によるロックアーム54の付勢力の向きは、以下に説明するように、ロックアーム54の回動によって切り替えられる。また、支軸53の延設方向からみたときに、コイルバネ57が支軸53に近づくほど、コイルバネ57の付勢力が大きくなる(すなわち、コイルバネ57が伸長される)。
【0052】
図7(A)に示すように、支持プレート42が検知可能状態と退避状態との間に配置されているとき、コイルバネ57は、ロックアーム54を非ロック姿勢に向けて付勢する。すなわち、支軸53の延設方向から見たときに、コイルバネ57が支軸53を第1方向(
図7の例では、時計回り)に通過すると、コイルバネ57は、ロックアーム54を非ロック姿勢に向けて付勢する。
【0053】
図7(A)の状態から支持プレート42を検知可能状態に近づけると、ロックアーム54は、係合爪59がロック板60の背面に係合することによって、コイルバネ57の付勢力に抗して第2方向(
図7の例では、反時計回り)に回動する。そして、支軸53の延設方向から見たときに、コイルバネ57が支軸53を反時計回りに通過すると、コイルバネ57は、ロックアーム54をロック姿勢に向けて付勢する(すなわち、コイルバネ57の付勢力の向きが切り替えられる)。これにより、
図7(B)に示すように、支持プレート42が検知可能状態になったタイミングで、ロックアーム54がロック姿勢になる。その結果、支持プレート42がロック板60の背面に当接するとともに、ロック片58がロック板60の前面に当接して、支持プレート42を検知可能状態にロックする。
【0054】
さらに、
図7(B)の状態から支持プレート42を退避状態に近づけるように支持プレート42に外力を加える、より具体的には、作業者が支持プレート操作孔47の指をかけて、支持プレート42を背面方向に引っ張ると、ロックアーム54は、ロック片58がロック板60から受ける反力によって、コイルバネ57の付勢力に抗して時計回りに回動する。そして、コイルバネ57が支軸53を時計回りに通過すると、コイルバネ57は、ロックアーム54を非ロック姿勢に向けて付勢する(すなわち、コイルバネ57の付勢力の向きが切り替えられる)。これにより、ロック片58の回動軌跡がロック板60より上方に移動して、ロック機構46によるロックが解除される。その結果、作業者は、支持プレート42を退避状態に回動させることができる。
【0055】
上記の実施形態によれば、ミリ波レーダ41を支持する支持プレート42を検知可能状態及び退避状態に変更可能に構成することによって、ホイールローダ10の動作時(走行時、フロント作業機16による作業時)に後方を監視することができると共に、牽引ピン35を挿抜する作業者の作業を後方検知装置40が邪魔するのを防止できる。その結果、牽引ピン35の作業性を損なうことなく、車体後端に後方検知装置40を設置できるホイールローダ10を得ることができる。
【0056】
また、上記の実施形態によれば、ロック機構46によって支持プレート42を検知可能状態にロックすることによって、ホイールローダ10の動作時発生する振動などで、支持プレート42が意図せずに退避状態に回動するのを防止できる。また、
図7の構成のロック機構46を採用することによって、ミリ波レーダ41のロック及びロック解除の作業を簡素化することができる。但し、支持プレート42を検知可能状態にロックできれば、ロック機構46の具体的な構成は、
図7の例に限定されない。
【0057】
また、上記の実施形態によれば、ホイールローダ10の構成部品のうち、カウンタウェイト30以外の全ての構成部品より後方に後方検知装置40を配置することによって、後方検知装置40の後方が開放され、後方検知装置40による後方の監視領域を広く保つことができる。(すなわち、車体搭載部品によりミリ波が遮断されない。)また、車体後部と車体の後方に存在する物体とが接触する場合に、ミリ波レーダ41よりも車体後方に突出するバンパー32に接触するため、ミリ波レーダ41に加わる負荷を軽減でき、後方検知装置40の故障を防止することができる。さらに、車体の前後長さを変更することなく、ミリ波レーダ41を後方監視に適した位置に配設することができる。
【0058】
また、上記の実施形態によれば、冷却ファン27の送風方向(車体前後方向)から見て重なるブラケット44の上辺44aが、冷却ファン27の送風方向(車体前後方向)から見て重ならないブラケット44の下辺44bより短く形成されると共に、ブラケット44の左辺44c及び右辺44dが傾斜ビーム29dと重なるように形成されることによって、後方検知装置40が冷却ファン27の後方に配置されることによる冷却ファン27の送風抵抗を低減することができる。また、ブラケット44の下辺44bが長く形成されることによって、ボルト49a、49bの間隔を拡げることができるので、バンパー32に対して後方検知装置40を安定して支持することができる。さらに、地上に近い位置にミリ波レーダ41が設置されていることによって、エンジン建屋24の上部にミリ波レーダ41が取り付ける場合に比べて、ミリ波レーダ41に付着した粉塵の拭き取り作業が行いやすい。
【0059】
さらに、上記の実施形態によれば、開口50の中央を避けた位置でハーネス43を保持することによって、ハーネス43をミリ波レーダ41から着脱することなく、牽引ピン35を牽引ピン保持孔33に対して挿抜する作業のためのブラケット44に設けられる開口50の面積を広く確保することができる。
【0060】
なお、上記の実施形態では、ブラケット44の上辺44aを回動基端として、ミリ波レーダ41を回動させる例を説明したが、検知可能状態及び退避状態の間における支持プレート42の移動方法は、前述の例に限定されない。他の例として、ミリ波レーダ41は、下辺44b、左辺44c、または右辺44dに取り付けられたヒンジを介して、回動可能に構成されていてもよい。さらに他の例として、ミリ波レーダ41は、ブラケット44に対して、上下方向または左右方向にスライド可能に構成されていてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態では、支持プレート42を検知可能状態及び退避状態に変更可能にする例を説明したが、後方検知装置40による後方の監視の可否と、牽引ピン35の操作の可否とを切り替える構成は、前述の例に限定されない。他の例として、後方検知装置40は、車体(より詳細には、カウンタウェイト30)に対して着脱可能に構成されていてもよい。すなわち、支持プレート42は、牽引ピン35を操作するときには、牽引ピン35の操作方向(本実施形態では、後上方)から退避可能に構成されていればよい。
【0062】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 ホイールローダ(作業車両)
11 前フレーム(車体)
12 後フレーム(車体)
13 センタピン
14L,14R ステアリングシリンダ
15L,15R 前タイヤ
16 フロント作業機
22L,22R 後タイヤ
23 キャブ
24 エンジン建屋
25 エンジン
26 ラジエータ
27 冷却ファン
28 リアグリル
30 カウンタウェイト
31 支持台
32 バンパー
33 牽引ピン保持孔
34 牽引ピン挿通孔
35 牽引ピン
36 ピン本体
37 把持部
40 後方検知装置
41 ミリ波レーダ(物体検知装置)
42 支持プレート
43 ハーネス
44 ブラケット
45 ハーネス保持部
46 ロック機構
47 支持プレート操作孔
48 貫通孔
49a,49b ボルト
50 開口
51 ヒンジ
52 固定ブロック
53 支軸
54 ロックアーム
55,56 バネ固定軸
57 コイルバネ
58 ロック片
59 係合爪
60 ロック板