IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クアンタム−エスアイ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7523730サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造
<>
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図1
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図2
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図3A
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図3B
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図4
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図5
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図6
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図7
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図8
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図9
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図10
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図11
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図12
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図13
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図14
  • 特許-サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】サンプルウェル作製技法および集積センサデバイス用の構造
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20240722BHJP
   G02B 6/136 20060101ALI20240722BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20240722BHJP
   G01N 21/64 20060101ALN20240722BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240722BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240722BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G02B6/136
G02B6/122
G01N21/64 B
G01N21/64 F
C12Q1/6869 Z
C12M1/00 A
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021531633
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 US2019052994
(87)【国際公開番号】W WO2020117356
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/774,673
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チェン、グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】クローチェ、キャスレン
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-525958(JP,A)
【文献】特開2006-344884(JP,A)
【文献】特表2012-509577(JP,A)
【文献】国際公開第2018/204810(WO,A1)
【文献】特開平07-326618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257040(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G02B 6/12 - G02B 6/14
C12M 1/00 - C12M 3/10
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積デバイスであって、
クラッド層と、
前記クラッド層上に形成された金属スタックと、前記金属スタックは、第1の金属層および第2の金属層を有しており、
前記金属スタックを貫通して前記クラッド層の少なくとも一部に形成されたサンプルウェルと、前記サンプルウェルは、同じ材料からなる側壁および底面を有しており、
前記第1および第2の金属層のうちの少なくとも1つのアンダーカット領域を充填する封入スペーサ材料と、
前記サンプルウェルの前記底面上にのみ選択的に形成されたビオチン機能性部分構造と、を備え、前記ビオチン機能性部分構造は、生体分子を付着させるように構成される、デバイス。
【請求項2】
前記金属スタックが、少なくとも1つのアルミニウム含有層と、少なくとも1つのチタン含有層とからなる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記封入スペーサ材料が、アモルファスシリコン(α-Si),SiO,SiON,およびSiNの群から選択されるか、またはTiO,Al,SiO,およびHfOの群から選択される、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ビオチン機能性部分構造が、ストレプトアビジン標識生体分子の付着のために構成され、かつ/またはビオチン機能性サイトを後に付着させるための中間カップリング剤を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記中間カップリング剤が、ビオチン-アジドを付着させるためのアルキンカップリング剤を含むか、またはビオチン-チオールを付着させるためのイソシアネートカップリング剤を含むか、またはビオチン-チオールを付着させるためのエポキシカップリング剤を含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ビオチン機能性部分構造は、前記クラッド層の材料に直接結合している、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記ビオチン機能性部分構造を形成するために使用される機能性層が、前記サンプルウェルの前記底面に防汚特性を提供するように選択された少なくとも1つの構成要素を有する2つ以上の構成要素を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
基板の上方および前記サンプルウェル内に形成された防汚フィルムをさらに含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
集積デバイスを形成する方法であって、
基板のクラッド層内にサンプルウェルを形成するステップと、
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に犠牲スペーサ層を形成するステップと、
前記サンプルウェルの側壁上に犠牲側壁スペーサを形成するように前記犠牲スペーサ層の方向性エッチングを実行するステップと、
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に、少なくとも1つの機能性部分構造を含むとともに、生体分子の付着のための場所を提供する機能性層を形成するステップと、
犠牲スペーサ材料を除去するステップと、を含み、前記犠牲スペーサ材料を除去することにより、前記機能性層が前記サンプルウェルの底面上にのみ配置される、方法。
【請求項10】
前記犠牲スペーサ層がAlからなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルウェルを形成することが
前記基板の前記クラッド層上に金属スタックを形成すること、
前記金属スタックに開口を形成すること、
前記金属スタックの上方および前記開口内に共形スペーサ層を形成すること、
前記金属スタックの少なくとも1つの金属層の露出した側壁に保護側壁スペーサを形成するように前記共形スペーサ層の方向性エッチングを実行すること、
前記クラッド層へのエッチングを行うこと、を含む、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記金属スタックが、少なくとも1つのアルミニウム含有層と、少なくとも1つのチタン含有層とからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記共形スペーサ層が、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)によって形成され、かつ/または前記共形スペーサ層が、アモルファスシリコン(α-Si),SiO,SiON,およびSiNの群から選択される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記共形スペーサ層が、原子層堆積(ALD)によって形成され、かつ/または前記共形スペーサ層が、TiO,Al,SiO,およびHfOの群から選択される、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記機能性層が、ストレプトアビジン標識生体分子の付着のためのビオチン機能性サイトを含み、かつ/またはビオチン機能性サイトを後に付着させるための中間カップリング剤を含む、請求項9乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記中間カップリング剤が、ビオチン-アジドを付着させるためのアルキンカップリング剤を含むか、またはビオチン-チオールを付着させるためのイソシアネートカップリング剤を含むか、またはビオチン-チオールを付着させるためのエポキシカップリング剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記機能性層は、前記クラッド層の材料に直接ビオチン-シラン結合を可能にするように選択され、かつ/または2つ以上の構成要素を含み、少なくとも1つの構成要素が前記サンプルウェルの底面に防汚特性を提供するように選択される、請求項9乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
シラン化学反応を使用して、前記サンプルウェルの露出した底面に前記機能性層を付着させるステップをさらに含む、請求項9乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
シラン化学反応が、金属酸化物表面と比較してSiO表面への選択的付着を得るように構成されたアルコキシシラン化学反応を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
液相処理または気相処理を使用して前記機能性層を塗布するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に防汚フィルムを形成するステップをさらに含む、請求項9乃至20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、生物学的シークエンシングに関し、より詳細には、サンプルウェル作製技法、およびシークエンシング機械とともに用いられ得る集積センサデバイス用の関連する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA))のシークエンシングは、標的核酸における個々のヌクレオチドを識別することを含む。ヌクレオチドが標的核酸に対し相補的に核酸鎖へと組み込まれているため、いくつかの核酸シークエンシング方法は、個々のヌクレオチドを識別することを含む。シークエンシング処理中に識別された相補鎖についての一連のヌクレオチドは、次いで、標的の核酸鎖についてのヌクレオチドシークエンシングの識別を可能とする。
【0003】
生物学的サンプルの検出および解析が、生物学的アッセイ(「バイオアッセイ」)を用いて行われ得る。バイオアッセイは従来、大型で高価な実験機器を伴い、機器を操作しバイオアッセイを行うために訓練された研究科学者を要する。さらに、バイオアッセイは従来、まとめて行われ、大量の特定の種類のサンプルが検出および定量化のために必要となっている。
【0004】
いくつかのバイオアッセイは、特定の波長の光を放出する発光性マーカを用いてサンプルにタグ付けすることによって行われる。サンプルは光源によって照射されて発光を生じ、発光性の光が光検出器によって検出され、マーカにより放出される発光性の光の量が定量化される。発光性マーカを用いるバイオアッセイは従来、サンプルを照射するための高価なレーザ光源、ならびに照射されたサンプルから光を収集するための複雑な発光性検出光学部品および電子部品を伴う。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、集積デバイスを形成する方法は、基板のクラッド層内にサンプルウェルを形成するステップと、基板の上方およびサンプルウェル内に犠牲スペーサ層を形成するステップと、サンプルウェルの側壁に犠牲側壁スペーサを形成するように犠牲スペーサ層の方向性エッチングを実行するステップと、基板の上方およびサンプルウェル内に、生体分子の付着のための場所を提供する機能性層を形成するステップと、犠牲スペーサ材料を除去するステップとを含む。
【0006】
別の態様では、集積デバイスは、クラッド層と、クラッド層上に形成された金属スタックと、金属スタックは、第1の金属層および第2の金属層を有しており、金属スタックを貫通してクラッド層の少なくとも一部に形成されたサンプルウェルと、サンプルウェルは、同じ材料からなる側壁および底面を有しており、第1および第2の金属層のうちの少なくとも1つのアンダーカット領域を充填する封入スペーサ材料と、サンプルウェルの底面上にのみ選択的に形成されたビオチン機能性部分構造(biotin functional moiety)と、を備え、ビオチン機能性部分構造は、生体分子が付着するように構成される。
【0007】
本発明の様々な態様および実施形態が、以下の図面を参照して記載される。図面は、縮尺通りに示される必要がないことが認識される。複数の図面において見られるアイテムは、そのアイテムが見られるすべての図面において同一の参照符号により示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書に記載される実施形態に関連して用いられ得る例示的なシークエンシングシステムの概略図。
図2図1に示される例示的なシークエンシングシステムのさらなる詳細な概略図。
図3A】例示的なシークエンシング機械の集積デバイスをさらに詳細に示す断面図。
図3B】例示的なシークエンシング機械の集積デバイスをさらに詳細に示す断面図。
図4図1図2図3A図3Bの集積デバイスの一例のサンプルウェルを示す断面図。
図5図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図6図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図7図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図8図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図9図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図10図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図11図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図12図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図13図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図14図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
図15図5の例示的な製造処理フローを示す連続した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載される技法は、DNAおよびRNAなどの核酸のシークエンシング、特に、センサから取得されたデータに基づいてヌクレオチドを自動的に識別するための技法に関するとともに、タンパク質およびペプチドのシークエンシングに関する。拡散シークエンシングは、標的核酸におけるヌクレオチドの順序および位置の決定を可能にする。いくつかの核酸シークエンシング方法は、合成によるシークエンシングに基づいており、このシークエンシングでは、標的核酸分子に相補的な新しく合成された核酸鎖へとヌクレオチドが組み込まれるときに、ヌクレオチドのアイデンティティが決定される。シークエンシング中、重合化酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)は、標的核酸分子のプライミング場所に対し結合(例えば、付着)してよく、または重合化酵素の作用によりヌクレオチドをプライマーに追加するか組み込んでよく、これは一般にプライマー伸長反応と呼ばれ得る。
【0010】
各ヌクレオチドは、励起に応答して光を放出するとともに、様々な種類のヌクレオチド同士を弁別するように各種類のヌクレオチドを標識するように用いられる、発光分子(例えば、フルオロフォア)に関連し得る。例えば、1組の4つの標識は、その組の各マーカが異なる核酸塩基に関連するように、例えば、第1の標識はアデニン(A)に関連し、第2の標識はシトシン(C)に関連し、第3の標識はグアニン(G)に関連し、第4の標識はチミン(T)に関連するように、DNAに存在する核酸塩基を標識するべく用いられてよい。標識は、リンカー分子を介して直接的または間接的に標識のヌクレオチドに対し結合することにより、ヌクレオチドに対し結合されてよい。
【0011】
プライマー伸長反応が生じると、ヌクレオチドとそのヌクレオチドのそれぞれの発光性標識とは、ヌクレオチドの合成された相補的核酸への組込み中、重合化酵素によって保持される。発光性標識は、ヌクレオチドが合成された核酸へと組み込まれる期間中に光のパルスによって励起すること、また標識の光特性を放出することが可能である。いくつかの実施形態では、標識は、標識がヌクレオチドの組込み(例えば、リン酸塩結合の裂け目)中に重合化酵素の作用によりヌクレオチドから引き離されるか解放されるように、リンカー分子により直接的または間接的に、ヌクレオチドの末端リン酸塩に対し付着する。励起に応答して発光性標識が放出した光のセンシングおよび解析は、組み込まれたヌクレオチドを識別することを可能とする。プライマー伸長反応が生じると、励起、センシングおよび解析が、合成された核酸に追加された各後続のヌクレオチドについて行われる。標的核酸の配列は、合成された核酸の相補的な配列から決定されることが可能である。
【0012】
発光性標識によって放出された光は、標識を他の標識から区別するように用いられ、したがってヌクレオチドを識別することが可能である、複数の特性を有する。これらの特性は、強度(例えば、光を放出する確率)、時間的特性(例えば、励起後の光子放出の確率の遅延の速度、組込み用のパルス持続時間、および/または組込み前後のパルス間持続時間)、スペクトル特性(例えば、放出された光の波長)、またはそれらの任意の組合せを含む。発光性標識によって放出された光は、それらの特性のより多くのもののうちの1つを検出することが可能である光検出器によって検出されてよい。適切な光検出器の一例は、「受け取られた光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」と題された米国特許出願第14/821,656号明細書に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。米国特許出願第14/821,656号明細書に記載される通り、光検出器は、光子の到着時刻を検出する性能を有してよく、それによって、標識によって放出された光の時間的特性を決定することが可能である。放出された光の時間的特性を検出することによって、その結果、異なる時間的特性を有する光を放出する標識同士の間の弁別をすることが可能である。時間的特性の1つの例は、輝度寿命である。フルオロフォアなどの発光分子は、励起に応答して光子を放出してよい。発光分子が光子を放出する確率は、励起が生じた後の時間とともに減少する。確率における減衰の速度は、指数関数的であってよい。「寿命」は、確率が経時的にどれほど早く減衰するかの特性である。早い減衰は短い寿命を有するとされ、一方、遅い減衰は長い寿命を有するとされる。発光分子によって放出された光の時間的特性を検出することによって、異なる寿命を有する発光分子同士の区別をすることが可能である。異なる寿命を有する発光分子により異なるヌクレオチドを標識することによって、検出された光の時間的特性に基づいて、ヌクレオチド同士の間の区別をすることが可能である。
【0013】
上述の米国特許出願第14/821,656号明細書に記載される光検出器は、ナノ秒またはピコ秒の分解能により光子の到着の時刻を検出することが可能であり、入射光子の到着を時間ビニングすることが可能である。光子の放出は確率的であるため、標識は複数回励起してよく、任意の生じる光子放出が時間ビニングされてよい。そうした測定を複数回行うことによって、励起イベント後に光子が到着した時刻のヒストグラムをポピュレートすることが可能である。この情報は、放出された光の時間的特性を計算するように解析されることが可能であり、これによって、その時間的特性に基づいて、標識を別の標識から区別することが可能である。
【0014】
単一分子または粒子の検出および定量化を行うための小型の高速装置は、生物学的および/または化学的サンプルの複雑な定量的測定を行うコストを削減し、生物学的技術発見の速度を急速に高め得る。さらに、容易に持ち運び可能な費用対効果のあるデバイスは、先進世界においてバイオアッセイが行われる手法を変容させるだけでなく、発展途上地域における人々に、その人々の健康および福利を大幅に向上させることが可能な本質的な診断的試験に対するアクセスを初めて提供することが可能である。例えば、本明細書に記載される実施形態は、個人によって自身の家庭において、または医師によって発展途上国の遠隔の診療所において用いられ得る血液、尿および/または唾液の診断的試験用に用いられてよい。
【0015】
多数のピクセル(例えば、数百、数千、数百万またはそれよりも多い)を有するピクセル化されたセンサデバイスは、並行して複数の個々の分子または粒子の検出を可能とする。分子は、限定ではなく例として、タンパク質および/またはDNAであり得る。さらに、毎秒100万を超えるフレームにてデータを取得することが可能である高速デバイスは、解析されているサンプル内において経時的に生じる動的な処理または変化の検出および解析を可能とする。
【0016】
バイオアッセイ機器がより小型に作られることを防止する1つの障壁は、センサにおいて所望されない検出イベントを生じることから励起光をフィルタリングする必要性である。所望の信号光(発光)を送信するとともに励起光を十分に遮断するように用いられる光学フィルタは、厚く、かさばり、高価であり、また光の入射角の変化に対する許容がないことがあり、小型化を防止する。しかしながら、パルス化された励起源を用いることによって、そうしたフィルタリングの必要性を低減することが可能であり、いくつかの場合では、そうしたフィルタの必要性を完全に取り除くことが可能であることが、本明細書において認識され理解されている。励起光パルスに対する光子が検出された時刻を検出することができるセンサを用いることによって、信号光は、受け取られた光のスペクトルよりもむしろ光子が受け取られた時刻に基づいて、励起光から分離されることが可能である。したがって、かさばる光学フィルタの必要性は、いくつかの実施形態では、低減されるおよび/または取り除かれる。
【0017】
発光寿命測定は、サンプルに存在する分子を識別するようにも用いられてよい。いつ光子が検出されたかを検出することができる光学センサは、多くのイベントから収集された統計を用いて、励起光によって励起している分子の発光寿命を測定することができる。いくつかの実施形態では、発光寿命測定は、発光のスペクトル測定に加えて行われてよい。これに代えて、発光のスペクトル測定は、サンプル分子の識別において完全に省略されてよい。発光寿命測定は、パルス化された励起源により行われてよい。これに加えて、発光寿命測定は、センサを備える集積デバイス、または集積デバイスから分離したシステムに光源が位置するデバイスを用いて行われてよい。
【0018】
生物学的サンプルから放出された発光を測定することができる単一の集積デバイスにサンプルウェル(ナノ開口を含み得る)およびセンサを集積することは、使い捨て生体分析集積デバイスが形成され得るように、そうしたデバイスを製造するコストを減少させることが認識され理解されている。ベース器具とインタフェースする使い捨ての単回使用集積デバイスは、サンプル解析のための高コストの生物学研究所を必要とする制約を伴わずに、世界中の何処でも用いられてよい。したがって、生物学的サンプルの定量的解析を行うことが以前はできなかった世界の領域に、自動化された生体解析がもたらされてよい。例えば、血液サンプルを使い捨て集積デバイス上に置くことと、使い捨て集積デバイスを解析用の小型の搬送可能ベース器具へと置くことと、ユーザによる即時のレビュー用にコンピュータによって結果を処理することとによって、幼児用の血液検査が行われてよい。データは、さらに、後続の臨床解析用に解析されるおよび/またはアーカイブされるように、データネットワークを通じて遠隔地に対し送信されてよい。
【0019】
使い捨ての単回使用デバイスは、より単純に、また集積デバイス上にまた光源を備えないことによって低コストに作られてよいことも、認識され理解されている。これに代えて、光源は、サンプルを解析するように使い捨て集積デバイスとインタフェースするシステムに組み込まれる再利用可能なコンポーネントを備えてよい。
【0020】
ここで、図1を参照すると、以下に記載されるサンプルウェル作製技法および関連する構造の実施形態とともに用いられ得る、例示的なシークエンシングシステム100の概略図が示されている。しかしながら、本明細書に記載される技法は、他の種類の集積デバイス、シークエンシングシステム、またはサンプルウェルもしくは他の同様の構造が所望される他の一般的な応用において実施されてよいことが理解される。
【0021】
概して、シークエンシングシステム100は、複数のサンプルウェルを有する集積デバイスとインタフェースするように構成された器具102を備え、ここで、個々のサンプルウェル106は、集積デバイス104の表面に配置された標本(図示せず)からサンプルを受け取るように構成される。標本は複数のサンプルを、またいくつかの実施形態では、様々な種類のサンプルを含んでよい。サンプルウェルの一部分以上が標本から1つのサンプルを受け取るように、サンプルウェルは適切な大きさおよび形状を有してよい。いくつかの実施形態では、いくつかのサンプルウェルが1つのサンプルを含み、他のものは0、2つまたは複数のサンプルを含むように、サンプルウェル内のサンプルの数はサンプルウェル間に分配されてよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、標本は、複数の一本鎖DNA鋳型を含んでよく、集積デバイスの表面上の個々のサンプルウェルは、一本鎖DNA鋳型を受け取るように寸法決定および形状決定されてよい。一本鎖DNA鋳型は、集積デバイスのサンプルウェルの一部分以上が一本鎖DNA鋳型を含むように、集積デバイスのサンプルウェル間に分配されてよい。標本は、次いでサンプルウェルに入り、サンプルウェルにおける一本鎖DNA鋳型に対し相補的なDNA鎖へと組み込まれる際にヌクレオチドの識別を可能とし得る、タグ付けされたdNTPも含んでよい。そうした例では、「サンプル」は、一本鎖DNAとポリメラーゼによって現在組み込まれているタグ付けされたdNTPとの両方を呼び得る。いくつかの実施形態では、標本は一本鎖DNA鋳型を含んでよく、タグ付けされたdNTPは、ヌクレオチドがサンプルウェル内のDNA相補鎖へと組み込まれる際に、続けてサンプルウェルに導入される。このように、ヌクレオチドの組込みのタイミングは、タグ付けされたdNTPが集積デバイスのサンプルウェルにいつ導入されるかによって制御されてよい。
【0023】
励起エネルギーは、集積デバイスのサンプルアレイとは別の器具102の励起源108から供給される。励起エネルギーは、少なくとも部分的には集積デバイスの素子によって、サンプルウェル106の照射領域を照射するように、1つまたは複数のピクセル(図1に示されない)に向けて方向付けられる。標識は、次いで、照射領域内に位置したときにおよび励起エネルギーによって照射されていることに応答して、放出エネルギーを放出してよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の励起源108は、器具102および集積デバイス104のコンポーネントが励起エネルギーを1つまたは複数のピクセルに向けて方向付けるように構成されたシステムの器具の一部である。
【0024】
サンプルによって放出された放出エネルギーは、次いで、集積デバイス104のピクセル内の1つまたは複数のセンサ110によって検出されてよい。検出された放出エネルギーの特性は、放出エネルギーに関連するマーカを識別するための指標を提供してよい。そうした特性は、センサによって検出された光子の到着時刻、センサによって経時的に蓄積された光子の量、および/または2つ以上のセンサにわたる光子の分散を含む、任意の適切な種類の特性を含んでよい。いくつかの実施形態では、センサ110は、サンプルの放出エネルギーに関連した1つまたは複数のタイミング特性(例えば、蛍光寿命)の検出を可能とする構成を有してよい。センサ110は、励起エネルギーのパルスが集積デバイスを通じて伝搬した後の光子到着時刻の分散を検出してよく、到着時刻の分散は、サンプルの放出エネルギーのタイミング特性(例えば、蛍光寿命の代理)の指標を提供してよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のセンサは、標識によって放出された放出エネルギー(例えば、蛍光強度)の確率の指標を提供する。いくつかの実施形態では、複数のセンサは、放出エネルギーの空間分布をキャプチャするように寸法決定され配置されてよい。1つまたは複数のセンサからの出力信号は、次いで、複数の標識間から1つの標識を区別するように用いられ、ここで、複数の標識は、標本内のサンプルを識別するように用いられてよい。
【0025】
さらなる説明として、図2は、図1の例示的なシークエンシングシステム100のさらなる詳細な概略図である。再度、システム100は、器具102とインタフェースする集積デバイス104を備える。いくつかの実施形態では、器具102は、器具102の一部として一体化された1つまたは複数の励起源108を備えてよい。いくつかの実施形態では、器具102が励起源108から励起エネルギーを受け取りその励起エネルギーを集積デバイス104に対し方向付けるように構成され得るよう、励起源108は器具102と集積デバイス104との両方の外部であってよい。集積デバイス104は、その集積デバイス104を収容し励起源108との正確な光学的位置整合に保持するための任意の適切なソケットを用いて器具102とインタフェースしてよい。励起源108は、器具内に位置し、励起エネルギーを集積デバイス104に対し提供するように構成されてもよい。図2に概略的にさらに示されるように、集積デバイス104は、複数の個々のピクセルを有し、ここで、ピクセル112の一部分以上は、サンプルの個々の解析を行ってよい。ピクセルが、ピクセルから分離した源108から励起エネルギーを受け取るため、そうしたピクセル112は「受動源ピクセル」と呼ばれてよく、ここで、源は複数のピクセルを励起させる。ピクセル112は、サンプルを受け取るように構成されたサンプルウェル106と、励起源108によって提供された励起エネルギーによりサンプルを照射することに応答してサンプルによって放出される励起エネルギーを検出するためのセンサ110との両方を有する。サンプルウェル106は、サンプルに対する励起エネルギーの送達とサンプルからの放出エネルギーの検出との容易性を提供するように、集積デバイス104の表面の近傍にサンプルを保持してよい。
【0026】
励起源108からの励起エネルギーを集積デバイス104のサンプルウェル106に対し案内し結合するための光学素子は、集積デバイス104と器具102との両方に組み込まれてよい。そうした源からウェルまでの素子は、例えば、励起エネルギーを集積デバイス104に対し結合するための、集積デバイス104上に位置する1つまたは複数のグレーティング結合器と、励起エネルギーを器具102からピクセル112におけるサンプルウェル106に送達するための導波路と、を含んでよい。いくつかの実施形態では、集積デバイス104上に位置する素子は、放出エネルギーをサンプルウェル106からセンサ110に向けて方向付けるように作用してよい。サンプルウェル106、励起源からウェルまでの光学部品のうちの一部、およびサンプルウェルからセンサまでの光学部品は、集積デバイス104上に位置する。励起源108およびソースからウェルまでのコンポーネントのうちの一部は、器具102に位置する。いくつかの実施形態では、単一のコンポーネントが、励起エネルギーをサンプルウェル106に対し結合することと、サンプルウェル106からの放出エネルギーをセンサ110に対し送達することとの両方における役割を果たしてよい。励起エネルギーをサンプルウェルに対し結合するおよび/または放出エネルギーをセンサに対し方向付けるための適切なコンポーネントの例は、「分子をプローブ、検出および解析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」と題された米国特許出願第14/821,688号明細書および「分子をプローブ、検出および解析するための外部光源を有する集積デバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING, DETECTING, AND ANALYZING MOLECULES)」と題された米国特許出願第14/543,865号明細書に記載されており、その両方は参照によりその全体が組み込まれる。
【0027】
図2の実施形態における複数のピクセル112に関して、個々のピクセル112は、それ自身の個々のサンプルウェル106と1つ以上のセンサ110に関連してよい。複数のピクセル112は、アレイに配置されてよく、任意の適切な数のピクセルがアレイに存在してよい。集積デバイス104におけるピクセルの数は、約10,000ピクセル~100,000,000ピクセルの範囲、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲にあってよい。いくつかの実施形態では、ピクセルは、512ピクセル×512ピクセルのアレイに配置されてよい。集積デバイス104および器具102は、大型ピクセルアレイ(例えば、10,000ピクセルを超える)に関連付けられたデータを扱うための複数チャネルの高速通信リンク(図示せず)を備えてよい。
【0028】
図2にさらに示されるように、器具102は集積デバイスインタフェース114を通じて集積デバイス104とインタフェースする。集積デバイスインタフェース114は、例えば、励起源108からの集積デバイス104に対する励起エネルギーの結合を容易にするまたは向上させるように、集積デバイス104を器具102に対し位置させるおよび/または位置整合するためのコンポーネントを含んでよい。励起源108は、励起エネルギーを1つ以上のサンプルウェルに対し送達するように配置された、任意の適切な光源であってよい。任意の励起源の例は、上記した14/821,688号の出願明細書に記載されており、参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、励起源108は、励起エネルギーを集積デバイス104に対し送達するように組み合わされた、複数の励起源を含む。そうした複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成されてよい。集積デバイスインタフェース114は、集積デバイス104のピクセル112におけるセンサ110から読出信号を受信してよい。集積デバイスインタフェース114は、集積デバイス104を集積デバイスインタフェース114に対し固定することによって集積デバイス104が器具102に付属するように設計されてよい。
【0029】
引き続き図2を参照すると、器具102は、器具102の動作を制御するためのユーザインタフェース116をさらに備える。ユーザインタフェース116は、ユーザが情報(例えば、器具の機能を制御するように用いられるコマンドおよび/または設定など)を器具へと入力することを可能とするように構成される。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース116は、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および音声コマンド用のマイクロフォンを含んでよい。これに加えて、ユーザインタフェース116は、ユーザが、適切な位置調整および/または集積デバイス上のセンサから信号を読み出すことによって取得された情報などの、器具および/または集積デバイスの性能に対するフィードバックを受信することを可能としてよい。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース116は、可聴フィードバックを提供するためのスピーカと、視覚的フィードバックを提供するためのインジケータ光および/またはディスプレイスクリーンとを用いてフィードバックを提供してよい。いくつかの実施形態では、器具102は、外部コンピュータデバイス120と接続するように用いられるコンピュータインタフェース118を備えてよい。任意の適切なコンピュータインタフェース118およびコンピュータデバイス120が用いられてよい。例えば、コンピュータインタフェース118は、USBインタフェースまたはFireWire(登録商標)インタフェースであってよい。コンピュータデバイス120は、ラップトップまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであってよい。コンピュータインタフェース118は、器具102とコンピュータデバイス120との間の情報の通信を行う。器具102を制御するおよび/または構成するための入力情報は、器具102のコンピュータインタフェース118と通信して、コンピュータデバイス120を通じて提供されてよい。さらに、出力情報は、コンピュータインタフェース118を通じてコンピュータデバイスによって受信されてよい。そうした出力情報は、例えば、器具102および/または集積デバイス112の性能に関するフィードバック、またセンサ110の読出信号からの情報を含んでよい。器具102は、センサ110から受け取られたデータを解析する、および/または制御信号を励起源108に対し送るための処理デバイス122を備えてもよい。いくつかの実施形態では、処理デバイス122は、汎用プロセッサ、特別適合プロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラコアなどの中央処理ユニット(CPU)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組合せ)を含んでよい。いくつかの実施形態では、センサ110からのデータの処理は、処理デバイス122と外部コンピュータデバイス120との両方によって行われてよい。他の実施形態では、コンピュータデバイス120は省略されてよく、センサ110からのデータの処理は、処理デバイス122によって全体が行われてよい。
【0030】
ここで図3Aを参照すると、ピクセル112の行を示す、集積デバイス104の断面の概略図が示されている。各ピクセル112は、サンプルウェル106と対応するセンサ110とを備える。センサ110は、センサ110がサンプルウェル112内のサンプル(図示せず)によって放出された放出エネルギーを受け取るように、サンプルウェル106に対し位置調整され位置決めされてよい。適切なセンサの例は、上記した14/821,656号の出願明細書に記載されている。
【0031】
前に説明されたように、集積デバイス104に対し結合された励起源108は、励起エネルギーを集積デバイス104の1つまたは複数のピクセルに対し提供してよい。さらなる例示として、図3Bは、励起エネルギー124(励起エネルギー124の経路が破線により示される)を集積デバイス104のサンプルウェル106に対し提供するための、集積デバイス104に対する励起源108の結合を示す、断面の概略図である。集積デバイス104から離れて位置するコンポーネント(図示せず)は、励起源108を集積デバイスに対し位置決めし位置整合させるように用いられてよい。そうしたコンポーネントは、例えば、レンズ、ミラー、プリズム、絞り、減衰器、および/または光ファイバなどの光学コンポーネントを含んでよい。追加の機械コンポーネントが、1つまたは複数の位置調整コンポーネントの制御を可能とするように、器具102に備えられてもよい。そうした機械コンポーネントは、例えば、アクチュエータ、ステッピングモータ、および/またはノブを含んでよい。
【0032】
集積デバイス104は、励起エネルギー124を集積デバイス104内のピクセル112に向けて方向付けるコンポーネントを備えてよい。より詳細には、各ピクセル112内において、励起エネルギーをピクセルに関連付けられたサンプルウェル106に対し結合する。図3Bは、ピクセル112の行における各サンプルウェル106に対し結合する励起エネルギーを示し、いくつかの実施形態では、励起エネルギーが、与えられた行におけるピクセル112のすべてに対し結合しなくてよいことが可能である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーが、ピクセル112の一部に対し、または集積デバイス104のピクセル112の行におけるサンプルウェル106に対し結合してよい。励起エネルギー124は、サンプルウェル106内に位置するサンプルを照射してよい。サンプルは、励起エネルギーによって照射されていることに応答して、励起状態に到達してよい。サンプルが励起状態にあるとき、サンプルは、図3Bに示されるように放出エネルギー126を放出してよく、その放出エネルギー126は、その結果、センサ110によって検出されてよい。いくつかの実施形態では、センサ110は複数の副次センサを含んでよい。
【0033】
解析されるサンプルは、ピクセル112のサンプルウェル106へと導入されてよい。サンプルは、生物学的サンプル、または化学的サンプルなどの任意の他の適切なサンプルであってよい。さらに、サンプルは複数の分子を含んでよく、サンプルウェル106は単一分子を孤立させるように構成されてよい。いくつかの例では、サンプルウェル106の寸法は、単一分子をサンプルウェル内に閉じ込めることによって、測定が単一分子に対し行われることを可能とするように作用してよい。励起源108は、サンプルを、またはサンプルに付着したもしくはサンプルに関連付けられた1つ以上の発光性マーカを、そのサンプルまたはその発光性マーカがサンプルウェル106内の照射エリア内にある間に励起するように、励起エネルギーをサンプルウェル106へと送達するように構成されてよい。
【0034】
励起源が励起エネルギーをサンプルウェルに対し送達するとき、ウェル内の1つ以上のサンプルは冷光を発してよく、生じる放出はセンサ110によって検出されてよい。本明細書において用いられる際、成句「サンプルは発光してよい」または「サンプルは放射を放出してよい」もしくは「サンプルからの放出」は、発光性タグ、マーカ、もしくはレポータ、サンプル、またはサンプルに関連付けられた反応生成物が、放出された放射を生成してよいことを意味する。
【0035】
集積デバイス104の1つまたは複数のコンポーネントは、放出エネルギーをセンサ110に向けて方向付けてよい。1つまたは複数の放出エネルギーは、センサ110によって検出され、1つ以上の電気信号に変換されてよい。電気信号は、図2に関連してすでに記載されたものなどの集積デバイスインタフェース114を通じて器具102に対し接続された集積デバイス104の回路構成における導電線に沿って送信されてよい。電気信号は、図2に示されるコンピュータデバイス120および/または処理デバイス122などの、器具102上にまたは器具102から離れて位置する適切なコンピュータデバイスによって、続けて処理されおよび/または解析されてよい。
【0036】
動作時、励起源を用いてウェル内のサンプルを励起させセンサを用いてサンプル放出からの信号を検出することによって、サンプルウェル内のサンプルの並列解析が行われる。サンプルからの放出エネルギーは、対応するセンサによって検出され、1つ以上の電気信号に変換されてよい。得られた1つまたは複数の信号は、いくつかの実施形態では集積デバイス上にて処理されてよく、または処理デバイスおよび/またはコンピュータデバイスによって処理するために器具に対し送信されてよい。サンプルウェルからの信号は、他のピクセルに関連付けられた信号とは独立して受け取られて処理されてよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、サンプルは、1つまたは複数のマーカにより標識されてよく、マーカに関連付けられた放出は、器具によって判別可能である。例えば、センサは、特定のマーカからの放出エネルギーに依存する寿命を判別するのに用いられ得る電気信号を形成するように、放出エネルギーからの光子を電子へと変換するように構成されてよい。サンプルを標識するように様々な寿命を有するマーカを用いることによって、特定のサンプルが、センサによって検出された得られた電気信号に基づいて識別されてよい。
【0038】
サンプルは複数の種類の分子を含んでよく、様々な発光性マーカが分子の種類に一意に関連付けられてよい。励起中または励起後、発光性マーカは放出エネルギーを放出してよい。放出エネルギーの1つまたは複数の性質が、サンプルにおける1つまたは複数の種類の分子を識別するように用いられてよい。分子の種類同士を区別するのに用いられる放出エネルギーの性質は、蛍光寿命値、強度、および/または波長を含んでよい。センサは、放出エネルギーの光子を含む光子を検出してよく、これらの性質のうちの1つまたは複数を示す電気信号を提供してよい。いくつかの実施形態では、センサからの電気信号は、1つまたは複数の時間間隔にわたる光子到着時刻の分配に関する情報を提供してよい。光子到着時刻の分配は、励起エネルギーのパルスが励起源によって放出された後、光子がいつ検出されたかに対応してよい。時間間隔についての値は、その時間間隔の間に検出された光子の個数に対応してよい。複数の時間間隔にわたる相対値は、放出エネルギーの時間的特性(例えば、寿命)の指標を提供してよい。サンプルを解析することは、ある分配内の2つ以上の異なる時間間隔についての値を比較することによってマーカ同士を区別することを含んでよい。いくつかの実施形態では、強度の指標は、すべての時間ビンにわたる光子の個数を決定することによって提供されてよい。
【0039】
用語「核酸」は、本明細書において用いられる際、一般には、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を呼ぶ。核酸は、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)、またはその変異体から選択された、1つまたは複数のサブユニットを含んでよい。いくつかの例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)もしくはリボ核酸(RNA)、またはその誘導体である。核酸は、一本鎖または二本鎖であってよい。核酸は、環状であってよい。
【0040】
用語「ヌクレオチド」は、本明細書において用いられる際、一般には、A,C,G,TもしくはU、またはその変異体もしくはアナログを含み得る、核酸サブユニットを呼ぶ。ヌクレオチドは、成長する核酸鎖へと組み込まれ得る任意のサブユニットを含むことが可能である。そうしたサブユニットは、A,C,G,TもしくはU、または、1つまたは複数の相補的なA,C,G,TもしくはUに特有であるか、プリン(すなわち、AもしくはG、またはその変異体もしくはアナログ)またはピリミジン(すなわち、C,TもしくはU、またはその変異体もしくはアナログ)に対し相補的である、任意の他のサブユニットであることが可能である。
【0041】
ヌクレオチドは、一般には、ヌクレオシドと1,2,3,4,5,6,7,8,9,10以上またはより多くのリン酸(PO)基とを含む。ヌクレオチドは、核酸塩基と、五炭糖(リボースまたはデオキシリボース)と、1つまたは複数のリン酸基とを含むことが可能である。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸塩またはヌクレオシドポリリン酸塩であることが可能である。ヌクレオチドは、例えば、検出可能な標識(例えば、フルオロフォア)を含む、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)から選択され得るデオキシリボヌクレオシド三リン酸dNTPなどの、デオキシリボヌクレオシドポリリン酸塩であることが可能である。
【0042】
センサ110に関して、光検出器は、標識を励起源108に露光させる(例えば、レーザパルスによって)ことに応答して、標識からの入射光子の到着を時間ビニングしてよい。標識は繰り返して励起してよく、標識からの入射光子の到着が時間ビニングされてよい。一例として、10msの測定期間中に、レーザ励起パルスが、標識を励起させるように100MHzの周波数にて放出されてよい。標識は、低い確率(例えば、10,000回の励起に1回の光子放出)により光子を放出してよい。標識が、10msの期間内に複数回(例えば、100万回)励起する場合、約100個の光子が受け取られてよい。いくつかの例では、標識は、励起源に対する露光後に励起することがなく、励起イベント後に光子を放出することがない。これは、放出の低い確率に寄与し得る。上述したように、励起に対する入射光子の到着時刻が時間ビニングされてよい。このように、光検出器は、各時間ビンにおける光子の個数を表す信号を提供してよい。
【0043】
ここで、図4を参照すると、図1図2図3Aおよび図3Bの集積デバイスの例示的なサンプルウェル106を示す断面図が示されている。図4に示されるように、サンプルウェル106は、クラッド層404(例えば、SiO)上に配置された金属スタック402により形成された開口によって形成される。金属スタック402は、例えば、クラッド層404の頂部に近接して位置するアルミニウム層406と、アルミニウム層406の上方の窒化チタン層408などの金属材料の少なくとも1つの層を備える。
【0044】
アルミニウム層406は、銅および/またはシリコンを含んでよい。いくつかの実施形態では、アルミニウム層は、約2%未満の銅および/またはシリコンを含んでよく、約30nm~150nmの範囲またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有してよい。いくつかの実施形態では、アルミニウム層は約65nmである。窒化チタン層408は、アルミニウム層406と接触しているチタンの層をも含んでよく、約1nm~150nmの範囲またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有してよい。いくつかの実施形態では、窒化チタン層の厚さは約80nmである。例示を目的として、図4は、サンプルウェル106に対する励起光エネルギーの送達を行う例示的な導波路構造410(例えば、窒化シリコン)も示す。
【0045】
SiOクラッド層404に形成された凹部の深さdは、アルミニウム層406(例えば、Al-Cu)の色素放出(dye emission)の距離を定め、アルミニウム層406は、金属反射器として機能し得る。この距離は、収集効率に影響する、色素放出の光センサ(図示せず)に向かう指向性を決定する。一実施形態では、酸化物凹部についての所望の深さは、約300nmである。これに加えて、(反応チャンバとも呼ばれ得る)サンプルウェルの側方方向の寸法(直径)は、反応チャンバの底部にて不動化した酵素に対し拡散によりアクセスするように、DNA鋳型および染色標識されたヌクレオチドの性能に影響し得る。一般的に言えば、より大きい寸法によってそうしたアクセスが向上する。さらに、反応チャンバ106の側方方向の寸法は、導波路410によって照射される色素溶液の体積にも影響を与え得る。特に、反応チャンバの底部の寸法wは、励起される色素溶液の体積に大きな影響を与え、より小さい寸法は、励起される色素溶液のより小さい体積を生じ、結果として、より小さい色素バックグラウンド信号を提供する。例示的な実施形態では、サンプルウェル106は、酸化物クラッド層404の頂部において約150nm~250nmの直径wを有するとともに、酸化物凹部の底部において約75nm~200nmの直径wを有する。図4からさらに観察されるように、サンプルウェル106の例示的な実施形態は、テーパー状のエッチプロファイルを特徴とする。
【0046】
選択的に形成された部分構造412が、サンプルウェル106の底面414に位置していることが示されている。サンプルウェル106の底部において酵素を不動化させるための選択的な機能化に対するいくつかの手法において、サンプルウェル106の底面414は、他の面(例えば、サンプルウェル106の側壁416および集積デバイスの頂面418)とは異なる組成を有し得る。そのような手法において、サンプルウェルの底面412は、クラッド層の材料(例えば、露出したSiO)であり、サンプルウェル106の側壁は、金属酸化物スペーサ材料(例えば、図4において示されていないTiO、Al、HfO、ZrO、およびTa他)から形成されている。集積デバイスの頂面418は、層408の頂面の酸化によって形成された金属酸化物材料(例えば、TiNの酸化によって形成されたTiO)を含んでよい。しかしながら、本実施形態では、図4に示すような完成した構造体は、側壁スペーサを犠牲的に使用することができ、これは完成した構造体には存在しない。即ち、結果的に形成された図4の実施形態の側壁416は、底面414と同じ材料(例えば、SiO)となり得る。有利には、サンプルウェル106の側壁416および頂面418は、機能化材料を実質的に含まない。以下でさらに詳細に説明するように、アルミニウム層406の側壁は、例えば、アモルファスシリコン(α-Si)などの封入側壁スペーサ420によって保護されて、犠牲スペーサ除去中にアルミニウム層406を保護することができる。また、例えば、ポリマーなどの防汚パッシベーションコーティング(antifouling passivation coating)422を、図4の構造体の表面上に塗布してもよい。
【0047】
ここで、図5のフロー図および図6図15の断面図を全体的に参照すると、図4と同様のサンプルウェル構造の例示的な処理500が図示されている。説明を容易にするために、同様の構成要素およびコンポーネントには、異なる図面において同様の参照符号が示される。図5のブロック502および図6の断面図において示されるように、金属開口フィルムスタック406、408(例えば、Al-Cu、TiN/Ti)がSiOクラッド層404の上方に形成される。任意選択的に、金属開口フィルムスタック406、408を形成する前に、クラッド層404の頂面が、適切な処理(例えば、CMP処理)を用いて平坦化されてよい。例示的な実施形態では、アルミニウム層406が約65nmの厚さに堆積されてよく、層408が約10nmのTiおよび約70nmのTiNの厚さに堆積されてよい。
【0048】
金属開口フィルムスタック406、408の形成後、図5におけるブロック505に示されるように、フォトレジスト層にホールがパターニングされて、金属フィルムスタック内に開口をSiOクラッド層内に反応チャンバ(サンプルウェル)を形成するためのエッチング処理を可能にするようにする。パターニングおよびエッチングが、図7図9に連続して示される。図7に特に示されるように、フォトレジスト層704が形成される前に、底部反射防止コーティング(BARC)層702が、まずTi/TiN層408の上方に形成されてよい。フォトレジスト層704のフォトリソグラフィ露光および現像などにより、サンプルウェルの位置に対応するホール706が、フォトレジスト層704内にパターニングされる。ホール706は、例えば、円形形状を有し、直径が150nm~250nmの範囲にあってよい。開口エッチング用のさらなる準備では、BARC層702は、プラズマエッチング処理または任意の適切な技法を用いて選択的に除去されてよい。
【0049】
図8を参照すると、金属開口フィルムスタック406,408のエッチングが行われて、開口802が形成される。図8に示される開口802を形成するために用いられるエッチング処理は、例えば、Clおよび/またはBClを含むプラズマエッチング処理によってなど、図7におけるBARC層702を除去するために用いられる同一の処理によって行われてよい。プラズマ金属エッチング処理の後に、Oアッシング工程、水洗浄および/またはエッチング後クリーニング工程が続いてよい。アルミニウムのClベースのエッチングは、事実上いくらか等方的であってよく、それによって、アルミニウム層406におけるアンダーカット領域804をもたらす可能性がある。加えて、ウェットクリーニング工程は、アンダーカット領域804に寄与することが可能である。
【0050】
図5のブロック506に示され、図9に図示されているように、処理500は、開口802内に封入スペーサ材料902を形成することに続く。封入スペーサ材料902は、金属フィルムスタック406、408の側壁を保護するとともに、その後のSiOクラッド材料404のエッチングおよびその後の犠牲スペーサ除去からの金属フッ化物残留物の形成を低減または最小化するのに適した材料から選択される。いくつかの実施態様において、封入スペーサ材料902は、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)によって堆積された非晶質シリコン(α-Si)であってもよい。他の実施形態では、封入スペーサ材料902は、PECVD堆積されたSiO、SiON、またはSiNであってもよい。さらに他の実施形態では、封入スペーサ材料902は、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)によって形成された酸化物材料(例えば、TiO、Al、SiO、HfOなど)であってもよい。一般に、封入スペーサ材料902は、金属層408の頂面及び開口802の底部に関して共形に(in a conformal manner)堆積され得る。いくつかの実施形態では、封入スペーサ材料902は、金属層408の頂面上の位置においてより厚く、開口802の底部に沿ってより薄くなり得る。
【0051】
反応チャンバ1002を形成するための封入スペーサ材料およびSiOクラッド材料404のエッチングは、図5のブロック508に示されるとともに、図10に図示されている。封入スペーサ/チャンバのエッチングは、上述のようなフルオロカーボンベースのエッチングであってもよく、その後にOアッシング工程およびエッチング後クリーニング工程が続く。封入材料902(およびSiOクラッド材料404)のエッチングは、実質的に異方性の方向性エッチングであるので、封入スペーサ1004は、アルミニウム含有金属層406および/またはチタン含有層408の側壁上に残留し得る。封入スペーサ1004は、有利には、金属フィルム406の露出した側壁を保護するとともに、腐食/湿度の影響を受けたり、その後のエッチング中にF、Clと反応したりする可能性がある、反応チャンバのエッチング中の金属フッ化物残留物の形成を最小にする。クラッド層404の酸化物材料は、ドライフルオロカーボンエッチング(例えば、CF,CHF,C,C)の使用により除去されてよく、Oアッシング工程およびエッチング後クリーニング工程が続く。いくつかの実施形態では、ドライエッチング処理は、所望のエッチング深さを達成するための期間に、またはこれに代えて、所望のエッチング深さを達成するためのクラッド層404内の位置に配置されたエッチング停止層(図示せず)の使用により行われてよい。いくつかの実施形態では、エッチング処理によって形成された得られたキャビティの1つまたは複数の側壁418は、集積デバイスの頂面に垂直な角度にあってよいが、(図10に図示されるものなどの)他の実施形態において、反応チャンバ1002の複数の側壁418は、集積デバイスの頂面に対する垂直線に対し1°~15°の範囲の角度にてテーパーを有してよい。換言すると、反応チャンバ1002は、反応チャンバ1002の直径が深さの増加とともに減少するようにテーパーを有してよい。
【0052】
反応チャンバ1002が形成されると、図5の処理は、次に、ブロック510に進み、そこで、犠牲側壁スペーサ材料1102が、図11に図示されるように堆積される。一実施形態では、犠牲側壁スペーサ材料1102は、ALDによって約3nmから約50nm、より具体的には約12nmの厚さに形成されたAlの層であり得る。しかしながら、例えば、TiO,TiN,Ta,TaN,ZrOおよびHfOを含む他の犠牲スペーサ材料も使用され得る。さらに、酸化アルミニウム層などの意図された犠牲スペーサを、TiOなどの異なる材料の意図された永久スペーサ(permanent spacer)の上に堆積することもできる。このようなマルチスタック側壁416は、永久スペーサ層によって提供される追加の保護を備えた犠牲スペーサの利点を提供するであろう。
【0053】
次に、図5のブロック512に示されるとともに、図12に図示されるように、異方性エッチングを使用して、犠牲側壁スペーサ材料1102の水平に配置された表面を除去して、犠牲側壁スペーサ1202を形成するとともに、サンプルウェル106のSiO底面414を露出させる。次に、図5のブロック512に示されるとともに、図12に図示されるように、異方性エッチングを使用して、犠牲側壁スペーサ材料1102の水平に配置された表面を除去して、犠牲側壁スペーサ1202を形成するとともに、サンプルウェル106のSiO底面414を露出させる。例えば、AlおよびTiOなど、多くの前述したスペーサ材料に関して、フルオロカーボンまたはBClエッチング化学反応(Clおよび/またはArを含む)を使用し得る。
【0054】
永久側壁スペーサが使用される他の実施形態では、次の処理ステップは、底部部分構造(bottom moiety)を選択的に形成するために、ビオチンの塩類化(salinization)の前に比較的長い不動態化処理を含み得る。しかしながら、本実施形態では、この不動態化処理は省略され、処理は、ビオチンのシラン化(silinization)のために図5のブロック514に進む。図13に特に示されるように、機能性ビオチンシラン層(機能性部分構造412)が、サンプルウェル106のSiO底面414に生体分子を付着させるためのサイトを提供するために図12の構造に適用される。いくつかの実施形態では、層は、ストレプトアビジン標識生体分子の付着(即ち、SiO底面414への直接結合)のためのビオチン機能性サイト(biotin functional sites)を含む。他の実施形態では、層は、ビオチン機能性サイトを後に付着させるための中間カップリング剤を含み得る。例えば、ビオチン-アジドの付着には、アルキンカップリング剤を使用することができる。別の例として、ビオチン-チオールの付着には、イソシアネートカップリング剤を使用することができる。さらに別の例として、ビオチン-チオールの付着には、エポキシカップリング剤を使用することができる。このような中間カップリング手法では、カップリング剤を最初のステップ/初期のステップとして適用することができ、ビオチンカップリング反応を後期ステップ/最後のステップとして行うことができる。中間カップリング手法の考えられる利点の1つは、カップリング剤を化学気相コーティングとの互換性、および後続の処理ステップでの堅牢性を考慮して選択することができるため、表面コーティング処理のスケーラビリティに関することが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、コーティングは、サンプルウェル106の底部における表面414の防汚特性を改善するために追加される追加の構成要素を有する2つ以上の構成要素を含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、シラン化学反応(silane chemistry)を使用して、露出したSiO表面にコーティング(単数または複数)を付着させることができる。1つの特定の例では、アルコキシシラン化学反応を使用して、金属酸化物表面(例えば、Al,TiO)と比較してSiO表面への選択的付着を得ることができる。そのようなコーティング(単数または複数)は、液相法または気相法を使用して塗布することができる。
【0056】
シラン材料は、一般に、サンプルウェル106のSiO底面414上に選択的に形成されるが、機能性材料の一部が側壁スペーサ材料(例えば、Al)1202および/または窒化チタン層408の上部に弱く結合し得るという点で、この選択性は、理想的ではない可能性がある。従って、処理500は、次に、図5のブロック516に進み、図14に示されるように、犠牲側壁スペーサを除去する。図示されるように、ビオチンシラン化機能性部分構造412は、サンプルウェル106の底面414上にのみ残留する。犠牲スペーサ除去処理は、層408の頂面上の弱く結合したビオチンシラン、ならびに側壁スペーサ材料1202およびそれに付着したビオチンシランの両方を有利には選択的に除去する。
【0057】
側壁スペーサ材料1202がAlである実施形態では、Al除去処理は、チップ腐食の発生を回避するのに十分な程度に穏やかでありながら、開口内の犠牲Alスペーサ1202および表面上の全てのビオチンシランを除去するのに十分な強度を有するように選択される。以前に説明したように、封入スペーサ1004は、Al除去中にアルミニウム層406の側壁を保護し得る。犠牲側壁スペーサの除去に続いて、処理500は、構造の防汚処理のために図5のブロック518に進む。図15に示される実施形態では、例えば、CVDによって堆積された防汚シランフィルム1502が形成される。フィルム1502は、防汚目的のために、例えば、約1nm~20nmまで、所望の厚さに塗布することができる。SiOへのシラン結合は、Alへのシラン結合(安定性がはるかに低い)に対して比較的非常に安定しているため(例えば、シークエンシング条件下で)、この手法の利点は、露出したSiO側壁表面のシラン膜が、Al側壁上よりもはるかに高い安定性を有することである。そのような安定したコーティングにより、比較的長い時間のDNA読み取り(例えば、数時間)が可能となり得る。しかしながら、代替的に、CVD以外の他の方法で防汚コーティングが塗布され得ることは理解されるべきである。
【0058】
上記の実施形態のさらなる潜在的な利点(処理時間の短縮に加えて)は、ループ状のDNA鎖上の2つのポリメラーゼからの読み取り長およびサンプルローディングに影響を与える要因であると考えられる「二重付着(double attachment)」の可能性を低減し得るということである。上記の処理では、サンプルウェルの底部にあるビオチン部分構造(biotin moiety)のみが鎖に結合するために利用可能である。Alサンプルウェルの側壁スペーサの除去に関するさらなる別の潜在的な利点は、信号対雑音比の向上であり得る。
【0059】
上記の実施形態は、多数の手法のいずれかにより実装されることが可能である。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せを用いて実装されてよい。ソフトウェアに実装されるとき、ソフトウェア・コードは、単一のコンピュータデバイスに提供されるか、または複数のコンピュータデバイス間に分配されるかにかかわらず、任意の適切なプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)またはプロセッサの集合において実行されることが可能である。上記の機能を行う任意のコンポーネントまたはコンポーネントの集合は、上述された機能を制御する1つまたは複数のコントローラとして総称的に考慮され得ることが理解される。1つまたは複数のコントローラは、専用ハードウェアを用いる、または上に列挙された機能を行うようにマイクロコードまたはソフトウェアを用いてプログラムされた汎用ハードウェア(例えば、1つまたは複数のプロセッサ)を用いるなど、多くの手法により実装されることが可能である。
【0060】
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に説明されていない様々な配置で使用することができ、従って、その適用において、前述の説明に記載された、または図面に示された構成要素の詳細および配置に限定されるものではない。例えば、一実施形態に記載されている態様は、他の実施形態に記載されている態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0061】
また、本発明は、一例が提供されている方法として具体化することができる。方法の一部として実行される動作は、任意の適切な方法で順序付けすることができる。従って、例示的な実施形態において順次動作として示されている場合であっても、いくつかの動作を同時に実施することを含み得る、図示された順序とは異なる順序で動作が実施される実施形態を構築することができる。
【0062】
特許請求の範囲において請求項の要素を修飾するための「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体では、別の請求項の要素に対する1つの請求項要素のいかなる優先度、順位、もしくは順序も含意しておらず、または方法の作用が行われる時間的な順序も含意しておらず、それらは、単に、特定の名前を有する1つの請求項要素を(序数用語の使用がなければ)同じ名前を有する別の要素から区別するための標識として使用されて、請求項の要素を区別する。
【0063】
また、本明細書で使用される表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではない。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「伴う」、およびそれらの変形の使用は、その後に記載された項目およびその均等物、ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0064】
特許請求の範囲では、上の明細書においてと同様に、「備える」、「含む」、「指示する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」、「から構成される」などのすべての移行句が、無制限であるように(すなわち、含むが限定されないことを意味するように)理解される。移行句「からなる」および「本質的に~からなる」のみが、それぞれ閉じたまたは半分閉じた移行句である。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
集積デバイスを形成する方法であって、
基板のクラッド層内にサンプルウェルを形成するステップと、
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に犠牲スペーサ層を形成するステップと、
前記サンプルウェルの側壁上に犠牲側壁スペーサを形成するように前記犠牲スペーサ層の方向性エッチングを実行するステップと、
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に、生体分子の付着のための場所を提供する機能性層を形成するステップと、
犠牲スペーサ材料を除去するステップと、を含む方法。
[付記2]
前記犠牲スペーサ材料を除去することにより、前記機能性層が前記サンプルウェルの底面上にのみ配置される、付記1に記載の方法。
[付記3]
前記犠牲スペーサ層がAl からなる、付記1または付記2に記載の方法。
[付記4]
前記サンプルウェルを形成することが
前記基板の前記クラッド層上に金属スタックを形成すること、
前記金属スタックに開口を形成すること、
前記金属スタックの上方および前記開口内に共形スペーサ層を形成すること、
前記金属スタックの少なくとも1つの金属層の露出した側壁に保護側壁スペーサを形成するように前記共形スペーサ層の方向性エッチングを実行すること、
前記クラッド層へのエッチングを行うこと、を含む、付記1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
[付記5]
前記金属スタックが、少なくとも1つのアルミニウム含有層と、少なくとも1つのチタン含有層とからなる、付記4に記載の方法。
[付記6]
前記共形スペーサ層が、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)によって形成される、付記4または付記5に記載の方法。
[付記7]
前記共形スペーサ層が、アモルファスシリコン(α-Si),SiO ,SiON,およびSiNの群から選択される、付記6に記載の方法。
[付記8]
前記共形スペーサ層が、原子層堆積(ALD)によって形成される、付記4または付記5に記載の方法。
[付記9]
前記共形スペーサ層が、TiO ,Al ,SiO ,およびHfO の群から選択される、付記8に記載の方法。
[付記10]
前記機能性層が、ストレプトアビジン標識生体分子の付着のためのビオチン機能性サイトを含む、付記1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
[付記11]
前記機能性層が、ビオチン機能性サイトを後に付着させるための中間カップリング剤を含む、付記1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
[付記12]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-アジドを付着させるためのアルキンカップリング剤を含む、付記11に記載の方法。
[付記13]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-チオールを付着させるためのイソシアネートカップリング剤を含む、付記11に記載の方法。
[付記14]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-チオールを付着させるためのエポキシカップリング剤を含む、付記11に記載の方法。
[付記15]
前記機能性層は、前記クラッド層の材料に直接ビオチン-シラン結合を可能にするように選択される、付記1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
[付記16]
前記機能性層が2つ以上の構成要素を含み、少なくとも1つの構成要素が前記サンプルウェルの底面に防汚特性を提供するように選択される、付記1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
[付記17]
シラン化学反応を使用して、前記サンプルウェルの露出した底面に前記機能性層を付着させるステップをさらに含む、付記1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
[付記18]
シラン化学反応が、金属酸化物表面と比較してSiO 表面への選択的付着を得るように構成されたアルコキシシラン化学反応を含む、付記17に記載の方法。
[付記19]
液相処理を使用して前記機能性層を塗布するステップをさらに含む、付記18に記載の方法。
[付記20]
気相処理を使用して前記機能性層を塗布するステップをさらに含む、付記18に記載の方法。
[付記21]
前記基板の上方および前記サンプルウェル内に防汚フィルムを形成するステップをさらに含む、付記1乃至20のいずれか一項に記載の方法。
[付記22]
集積デバイスであって、
クラッド層と、
前記クラッド層上に形成された金属スタックと、前記金属スタックは、第1の金属層および第2の金属層を有しており、
前記金属スタックを貫通して前記クラッド層の少なくとも一部に形成されたサンプルウェルと、前記サンプルウェルは、同じ材料からなる側壁および底面を有しており、
前記第1および第2の金属層のうちの少なくとも1つのアンダーカット領域を充填する封入スペーサ材料と、
前記サンプルウェルの前記底面上にのみ選択的に形成されたビオチン機能性部分構造と、を備え、前記ビオチン機能性部分構造は、生体分子を付着させるように構成される、デバイス。
[付記23]
前記金属スタックが、少なくとも1つのアルミニウム含有層と、少なくとも1つのチタン含有層とからなる、付記22に記載のデバイス。
[付記24]
前記封入スペーサ材料が、アモルファスシリコン(α-Si),SiO ,SiON,およびSiNの群から選択される、付記22または付記23に記載のデバイス。
[付記25]
前記封入スペーサ材料が、TiO ,Al ,SiO ,およびHfO の群から選択される、付記22乃至24のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記26]
前記ビオチン機能性部分構造が、ストレプトアビジン標識生体分子の付着のために構成される、付記22乃至25のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記27]
前記ビオチン機能性部分構造が、ビオチン機能性サイトを後に付着させるための中間カップリング剤を含む、付記22乃至26のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記28]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-アジドを付着させるためのアルキンカップリング剤を含む、付記27に記載のデバイス。
[付記29]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-チオールを付着させるためのイソシアネートカップリング剤を含む、付記27に記載のデバイス。
[付記30]
前記中間カップリング剤が、ビオチン-チオールを付着させるためのエポキシカップリング剤を含む、付記27に記載のデバイス。
[付記31]
前記ビオチン機能性部分構造は、前記クラッド層の材料に直接結合している、付記22乃至30のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記32]
前記ビオチン機能性部分構造を形成するために使用される機能性層が、前記サンプルウェルの前記底面に防汚特性を提供するように選択された少なくとも1つの構成要素を有する2つ以上の構成要素を含む、付記22乃至31のいずれか一項に記載のデバイス。
[付記33]
基板の上方および前記サンプルウェル内に形成された防汚フィルムをさらに含む、付記22乃至32のいずれか一項に記載のデバイス。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15