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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/24 20060101AFI20240722BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240722BHJP
   H02J 9/08 20060101ALI20240722BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02J3/24
H02J3/38 110
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/38 170
H02J9/08
H02J7/34 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020101640
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021197785
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】宇田 怜史
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-18028(JP,A)
【文献】特開2008-301545(JP,A)
【文献】特開2014-168328(JP,A)
【文献】特開2019-47656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、
前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、
前記電力線において前記開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、
前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記重要負荷側に設けられた非常用電源と、
前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側に設けられた解列スイッチと
前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧から少なくとも瞬時電圧低下、周波数変動及び停電を検出する系統異常検出部と、
前記分散型電源及び前記非常用電源による給電を制御する制御部とを備え、
前記系統異常検出部により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、前記制御部は、前記開閉スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、前記分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するものであり、
前記系統異常検出部により停電が検出された場合には、前記制御部は、前記解列スイッチを開放し、前記分散型電源を自立運転させた後に前記非常用電源を起動する、電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記非常用電源を起動した後に、前記非常用電源をベース電源として、前記分散型電源が同期した状態で連系し、前記重要負荷への負荷分担を徐々に前記分散型電源から前記非常用電源に移行する、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記非常用電源の自立運転完了後に、前記非常用電源単体で前記重要負荷に給電する、又は、前記非常用電源及び前記分散型電源の組み合わせにより前記重要負荷に給電する、請求項2に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムとして、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
特許文献1の電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に、開閉スイッチと、当該開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子とを設け、開閉スイッチよりも重要負荷側に分散型電源を設けて構成されている。また、開閉スイッチよりも商用電力系統側に解列スイッチが設けられている。
【0004】
そして、商用電力系統に瞬時電圧低下又は周波数変動が発生した場合には、図6(a)に示すように、電圧低下や周波数変動を検出して開閉スイッチを開放することにより、インピーダンス素子を介して商用電力系統と分散型電源を接続するとともに、分散型電源は逆潮流を含む運転を継続する(FRT運転)。
【0005】
一方、商用電力系統に停電が発生した場合には、図6(a)に示すように、一定時間(例えば2秒間)瞬時電圧低下と認識してFRT運転をした後に、停電と認識して更に解列スイッチを開放して、分散型電源を自立運転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6338131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の電源システムでは、長時間の停電時には、分散型電源のみで自立運転することになるため、重要負荷への給電が不安定になってしまう。また、分散型電源が系統連系タイプのコジェネレーションの場合には、都市ガスでの供給が前提となるため、災害によってガス供給が停止するリスクもあり、災害に対するBCP(事業継続計画)や電力レジリエンス向上に寄与するとは言い難い。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムにおいて、停電時に重要負荷に対する給電の安定性を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、前記電力線において前記開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記重要負荷側に設けられた非常用電源と、前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側に設けられた解列スイッチと、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられた解列用スイッチをさらに備え、前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、前記系統側電圧検出部の検出電圧から少なくとも瞬時電圧低下、周波数変動及び停電を検出する系統異常検出部と、前記分散型電源及び前記非常用電源による給電を制御する制御部とを備え、前記系統異常検出部により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、前記制御部は、前記開閉スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、前記分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するものであり、前記系統異常検出部により停電が検出された場合には、前記制御部は、前記解列スイッチを開放し、前記分散型電源を自立運転させた後に前記非常用電源を起動することを特徴とする。
【0010】
このような電源システムであれば、系統異常検出部により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチを開放し、分散型電源と商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するので、分散型電源のFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立することができる。ここで、電力線にインピーダンス素子と開閉スイッチの並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチに電流が流れるのでリアクトル等のインピーダンス素子に生じる損失を無くすことができる。
また、系統異常検出部により停電が検出された場合には、解列スイッチを開放し、分散型電源を自立運転させた後に非常用電源を起動するので、非常用電源を用いて重要負荷に給電することができ、停電時に重要負荷に対する給電の安定性を向上することができる。さらに、停電時に非常用電源を用いて重要負荷に給電することで、災害に対するBCP(事業継続計画)や電力レジリエンス向上に寄与することもできる。
【0011】
分散型電源を自立運転させた後(自立運転モード)において、分散型電源から非常用電源に移行する制御態様としては、前記制御部は、前記非常用電源を起動した後に、前記非常用電源をベース電源として、前記分散型電源が同期した状態で連系し、前記重要負荷への負荷分担を徐々に前記分散型電源から前記非常用電源に移行することが考えられる。
【0012】
また、非常用電源による自立運転への移行が完了した後における運用方法としては、前記制御部は、前記非常用電源の自立運転完了後に、前記非常用電源単体で前記重要負荷に給電する、又は、前記非常用電源及び前記分散型電源の組み合わせにより前記重要負荷に給電することが望ましい。
【0013】
また、本発明に係る電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する開閉スイッチと、前記電力線において前記開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側に設けられた非常用電源と、前記電力線において前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側に設けられ、前記重要負荷に接続される電源を前記商用電力系統から前記非常用電源に切り替える切替スイッチと、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられた解列用スイッチをさらに備え、前記開閉スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、前記系統側電圧検出部の検出電圧から少なくとも瞬時電圧低下、周波数変動及び停電を検出する系統異常検出部と、前記分散型電源及び前記非常用電源による給電を制御する制御部とを備え、前記系統異常検出部により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、前記制御部は、前記開閉スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、前記分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するものであり、前記系統異常検出部により停電が検出された場合には、前記制御部は、前記切替スイッチにより前記重要負荷に給電する電源を非常用電源に切り替えるとともに、前記分散型電源を自立運転させた後に前記非常用電源を起動することを特徴とする。
【0014】
このような電源システムであれば、系統異常検出部により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチを開放し、分散型電源と商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するので、分散型電源のFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立することができる。ここで、電力線にインピーダンス素子と開閉スイッチの並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチに電流が流れるのでリアクトル等のインピーダンス素子に生じる損失を無くすことができる。
また、系統異常検出部により停電が検出された場合には、切替スイッチにより重要負荷に接続される電源を非常用電源に切り替えるとともに、分散型電源を自立運転させた後に前記非常用電源を起動するので、非常用電源を用いて重要負荷に給電することができ、停電時に重要負荷に対する給電の安定性を向上することができる。さらに、停電時に非常用電源を用いて重要負荷に給電することで、災害に対するBCP(事業継続計画)や電力レジリエンス向上に寄与することもできる。
【0015】
分散型電源を自立運転させた後(自立運転モード)において、分散型電源から非常用電源に移行する制御態様としては、前記制御部は、前記非常用電源を起動した後に、前記非常用電源をベース電源として、前記分散型電源が同期した状態で連系し、前記重要負荷への負荷分担を徐々に前記分散型電源から前記非常用電源に移行することが考えられる。
【0016】
この電源システムにおいては、前記制御部は、前記非常用電源の自立運転完了後に、前記重要負荷側で短絡を検出した場合には、前記開閉スイッチを開放し、前記非常用電源と前記重要負荷とを前記インピーダンス素子を介して接続することにより、前記非常用電源から短絡点に流れる過電流を抑制することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
このように構成した本発明によれば、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムにおいて、停電時に重要負荷に対する給電の安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
図2】第1実施形態の電源システムの動作状態を示す図である。
図3】第2実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
図4】第2実施形態の電源システムの動作状態を示す図である。
図5】第2実施形態における短絡発生時の状態を示す模式図である。
図6】従来の電源システムの(a)瞬低・周波数変動時及び(b)停電時の動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下に、本発明に係る電源システムの第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の電源システム100は、図1に示すように、商用電力系統10と重要負荷30との間に設けられ、商用電力系統10の異常時に重要負荷30に電力を供給する無停電電源システムとしての機能(無停電電源機能)と、商用電力系統10に対して順潮流及び逆潮流することで負荷平準化する分散型電源システムとしての機能(負荷平準化機能)を発揮するものである。
【0020】
ここで、商用電力系統10は、電力会社(電気事業者)の電力供給網であり、発電所、送電系統及び配電系統を有するものである。また、重要負荷20は、停電や瞬低などの系統異常時においても電力を安定して供給すべき負荷であり、図1では1つであるが、複数あっても良い。
【0021】
具体的に電源システム100は、分散型電源2と、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とを接続する開閉スイッチ3と、開閉スイッチ3に並列接続されたインピーダンス素子4と、開閉スイッチよりも重要負荷30側に設けられた非常用電源5と、開閉スイッチよりも商用電力系統10側に設けられた解列スイッチ6と、開閉スイッチ3よりも商用電力系統10側の電圧を検出する系統側電圧検出部7と、系統側電圧検出部7の検出電圧から少なくとも瞬時電圧低下、周波数変動及び停電を検出する系統異常検出部8と、分散型電源2及び非常用電源5による給電を制御する制御部9とを備えている。
【0022】
分散型電源2は、商用電力系統10から重要負荷30に給電するための電力線L1に接続されている。この分散型電源2は、商用電力系統10に連系されるものであり、例えば太陽光発電や燃料電池などの直流発電設備21aと電力変換装置22とを有するもの、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)21bと電力変換装置22とを有するもの、風力発電やマイクロガスタービンなどの交流で出力された電気エネルギを直流に整流したうえで、電力変換装置を用いて系統連系をされる発電設備(不図示)、又は、同期発電機や誘導発電機などの交流発電設備21cである。なお、電源システム100は、少なくとも電力貯蔵装置21bを備えており、その他上記何れか分散型電源2を有するものであっても良い。
【0023】
開閉スイッチ3は、電力線L1において分散型電源2の接続点よりも商用電力系統10側に設けられて電力線L1を開閉するものであり、例えば半導体スイッチ、又は、半導体スイッチと機械式スイッチとを組み合わせたハイブリッドスイッチなどの高速切り替えが可能な開閉スイッチを用いることができる。例えば半導体スイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断することができる。また、ハイブリッドスイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断できるだけでなく、通電損失をゼロにすることができる。この開閉スイッチ3は、制御部9により開閉制御される。
【0024】
インピーダンス素子4は、電力線L1において開閉スイッチ3に並列接続されたものであり、本実施形態では、限流リアクトルである。
【0025】
非常用電源5は、電力線L1において開閉スイッチ3よりも重要負荷30側に設けられており、例えば、ディーゼルエンジン非常用発電機又はガスタービン非常用発電機などの非常用発電機である。
【0026】
解列スイッチ6は、電力線L1において分散型電源2よりも商用電力系統10側に設けられており、例えば機械式スイッチである。この解列スイッチ6は、制御部9により開閉制御される。なお、本実施形態では、電力線L1において解列スイッチ6よりも分散型電源2側には、電源側電圧検出部11が設けられている。
【0027】
系統側電圧検出部7は、電力線L1において開閉スイッチ3よりも商用電力系統10側の電圧を、計器用変圧器を介して検出するものである。具体的に系統側電圧検出部7は、開閉スイッチ3及びインピーダンス素子4からなる並列回路よりも商用電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されている。
【0028】
系統異常検出部8は、系統側電圧検出部7により検出された検出電圧と、予め定められた整定値とを比較して、前記検出電圧が整定値以下である場合に、瞬時電圧低下を検出する。また、系統異常検出部8は、系統側電圧検出部7により検出された検出電圧から周波数変動(周波数上昇(OF)、周波数低下(UF))を検出する。なお、この周波数変動は、例えばステップ上昇や、ランプ上昇・下降である。さらに、系統異常検出部8は、系統側電圧検出部7により検出された検出電圧から停電を検出する。その他、系統異常検出部8は、瞬時電圧低下、周波数変動及び停電に加えて、電圧上昇、位相変動、電圧不平衡、高調波異常又はフリッカの少なくとも1つを検出してもよい。
【0029】
制御部9は、系統異常検出部8により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチ3を開放する。そして、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とをインピーダンス素子4を介して接続された状態として、分散型電源2による逆潮流を含む運転を継続させる。なお、系統異常検出部8により系統異常が復帰したことが検出されると、制御部9は、開閉スイッチ3を閉じる。
【0030】
また、制御部9は、図2に示すように、系統異常検出部8により停電が検出された場合には、解列スイッチ6を開放するとともに分散型電源2を自立運転させる。
【0031】
具体的に制御部9は、系統側電圧検出部7の検出電圧が所定の解列条件を満たす場合に解列スイッチ6を開放する。ここで、所定の解列条件は、系統電圧の電圧低下(検出電圧が前記整定値以下となっている状態)の継続時間が所定値以上(瞬低継続時間よりも長い時間)となることである。つまり、所定の解列条件を満たすまでは、瞬時電圧低下と認識して、制御部9は開閉スイッチ3を開放し、分散型電源2は、FRT運転をする。そして、所定の解列条件を満たすと、制御部9は解列スイッチを開放し、
解列スイッチ6が開放された状態で、分散型電源2は自立運転モードとなり重要負荷30に給電する。このように分散型電源2は、通常時の連系運転からFRT運転をした後に自立運転になる。なお、解列スイッチ6を開放する時には、開閉スイッチ3は既に解放されているので、解列スイッチ6の開放による過電流はインピーダンス素子4によって抑制される。
【0032】
そして、制御部9は、分散型電源2を自立運転した後に非常用電源5を起動する。そして、非常用電源5を起動した後に、非常用電源5をベース電源として、分散型電源2が同期した状態で連系し、重要負荷30への負荷分担を徐々に分散型電源2から非常用電源5に移行する。ここで、制御部9は、非常用電源5の自立運転完了後に、非常用電源5単体で重要負荷30に給電する、又は、非常用電源5の出力が急変しないように非常用電源5及び分散型電源2の組み合わせにより重要負荷30に給電するなどの運用が考えられる。
【0033】
なお、制御部9は、系統側電圧検出部7の検出電圧が所定の解列条件を解消し、且つ系統側電圧検出部7の検出電圧及び電源側電圧検出部11の検出電圧が同期検定条件を満たす場合に解列スイッチ6を投入する。
【0034】
<第1実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の電源システム100によれば、系統異常検出部8により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチ3を開放し、分散型電源2と商用電力系統10とがインピーダンス素子4を介して接続された状態で、分散型電源2が逆潮流を含む運転を継続するので、分散型電源2のFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源2を用いて両立することができる。ここで、電力線L1にインピーダンス素子4と開閉スイッチ3の並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチ3に電流が流れるのでリアクトル等のインピーダンス素子4に生じる損失を無くすことができる。
また、系統異常検出部8により停電が検出された場合には、解列スイッチ6を開放し、分散型電源2を自立運転させた後に非常用電源5を起動するので、非常用電源5を用いて重要負荷30に給電することができ、停電時に重要負荷30に対する給電の安定性を向上することができる。さらに、停電時に非常用電源5を用いて重要負荷30に給電することで、災害に対するBCP(事業継続計画)や電力レジリエンス向上に寄与することもできる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る電源システムの第2実施形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
本実施形態の電源システム100は、図3に示すように、前記第1実施形態とは、非常用電源5の接続位置が異なる。つまり、非常用電源5は、電力線L1において開閉スイッチ3よりも商用電力系統10側に設けられている。
【0037】
また、電源システム100は、電力線L1において開閉スイッチ3よりも商用電力系統側に設けられ、重要負荷30に接続される電源を商用電力系統10から非常用電源5に切り替える切替スイッチ12を有している。この切替スイッチ12は、制御部9により切り替え制御される。
【0038】
そして、制御部9は、系統異常検出部8により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチ3を開放する。そして、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とをインピーダンス素子4を介して接続された状態として、分散型電源2による逆潮流を含む運転を継続させる。なお、系統異常検出部8により系統異常が復帰したことが検出されると、制御部9は、開閉スイッチ3を閉じる。
【0039】
また、制御部9は、図4に示すように、系統異常検出部8により停電が検出された場合には、切替スイッチ12により重要負荷30に接続される電源を非常用電源5に切り替えるとともに分散型電源2を自立運転させる。
【0040】
具体的に制御部9は、系統側電圧検出部7の検出電圧が所定の解列条件を満たす場合に切替スイッチ12を非常用電源5に切り替える。ここで、所定の解列条件は、系統電圧の電圧低下(検出電圧が前記整定値以下となっている状態)の継続時間が所定値以上(瞬低継続時間よりも長い時間)となることである。つまり、所定の解列条件を満たすまでは、瞬時電圧低下と認識して、制御部9は開閉スイッチ3を開放し、分散型電源2は、FRT運転をする。そして、所定の解列条件を満たすと、制御部9は切替スイッチ12を非常用電源5に切り替え、切替スイッチ12が非常用電源5に切り替えられた状態で、分散型電源2は自立運転モードとなり重要負荷30に給電する。このように分散型電源2は、通常時の連系運転からFRT運転をした後に自立運転になる。なお、解列スイッチ6を開放する時には、開閉スイッチ3は既に解放されているので、解列スイッチ6の開放による過電流はインピーダンス素子4によって抑制される。
【0041】
そして、制御部9は、分散型電源2を自立運転した後に非常用電源5を起動する。また、制御部9は、非常用電源5を起動するタイミングで開閉スイッチ3を閉じる。そして、非常用電源5を起動した後に、非常用電源5をベース電源として、分散型電源2が同期した状態で連系し、重要負荷30への負荷分担を徐々に分散型電源2から非常用電源5に移行する。ここで、制御部9は、非常用電源5の自立運転完了後に、非常用電源5単体で重要負荷30に給電する、又は、非常用電源5の出力が急変しないように非常用電源5及び分散型電源2の組み合わせにより重要負荷30に給電するなどの運用が考えられる。
【0042】
さらに、制御部9は、図5に示すように、非常用電源5の自立運転完了後(非常用電源5の自立運転中)に、重要負荷30側で短絡を検出した場合には、開閉スイッチ3を開放し、非常用電源5と重要負荷30とをインピーダンス素子4を介して接続することにより、非常用電源5から短絡点に流れる過電流を抑制する。
【0043】
なお、制御部9は、系統側電圧検出部7の検出電圧が所定の解列条件を解消し、且つ系統側電圧検出部7の検出電圧及び電源側電圧検出部11の検出電圧が同期検定条件を満たす場合に解列スイッチ6を投入する。
【0044】
<第2実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の電源システム100によれば、系統異常検出部8により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された場合には、開閉スイッチ3を開放し、分散型電源2と商用電力系統10とがインピーダンス素子4を介して接続された状態で、分散型電源2が逆潮流を含む運転を継続するので、分散型電源2のFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源2を用いて両立することができる。ここで、電力線L1にインピーダンス素子4と開閉スイッチ3の並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチ3に電流が流れるのでリアクトル等のインピーダンス素子4に生じる損失を無くすことができる。
また、系統異常検出部8により停電が検出された場合には、切替スイッチ12により重要負荷30に接続される電源を非常用電源5に切り替えるとともに、分散型電源2を自立運転させた後に非常用電源5を起動するので、非常用電源5を用いて重要負荷30に給電することができ、停電時に重要負荷30に対する給電の安定性を向上することができる。さらに、停電時に非常用電源5を用いて重要負荷30に給電することで、災害に対するBCP(事業継続計画)や電力レジリエンス向上に寄与することもできる。
【0045】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、インピーダンス素子4としてコンデンサを用いても良いし、リアクトル、抵抗又はコンデンサの何れかを組み合わせたものであっても良い。
【0047】
さらに、前記実施形態の系統側電圧検出部は、系統連系用保護装置が備えるものであってもよい。系統連系規程に定められた系統連系用保護装置としては、例えば過電圧継電器(OVR)、不足電圧継電器(UVR)、短絡方向継電器(DSR)、地絡過電圧継電器(OVGR)、過周波数継電器(OFR)、不足周波数継電器(UFR)、転送遮断装置等を挙げることができる。この場合、制御部は、何れか1つの連係保護機器が動作した場合に、解列スイッチを開放することが考えられる。また、制御部は、全ての系統連系用保護装置が不動作状態となり、且つ系統側電圧検出部の検出電圧及び電源側電圧検出部の検出電圧が同期検定条件を満たす場合に解列スイッチを投入することもできる。この構成であれば、連係保護機器が備える電圧検出部を用いているので、別途系統側電圧検出部を設ける必要がなく、装置構成を簡単にすることができる。
【0048】
その上、前記実施形態の電源側電圧検出部は、解列スイッチ及び開閉スイッチの間に設けられたものであってが、分散型電源の系統接続点電圧の計測機能で代用してもよい。
【0049】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100・・・電源システム
10 ・・・商用電力系統
30 ・・・重要負荷
L1 ・・・電力線
2 ・・・分散型電源
3 ・・・開閉スイッチ
4 ・・・インピーダンス素子
5 ・・・非常用電源
6 ・・・解列スイッチ
7 ・・・系統側電圧検出部
8 ・・・系統異常検出部
9 ・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6