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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】制御された神経刺激の方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61N1/36
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021521958
(86)(22)【出願日】2019-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 AU2019051151
(87)【国際公開番号】W WO2020082118
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】2018904011
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ルイス・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ブルース・ゴーマン
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529378(JP,A)
【文献】国際公開第2017/219096(WO,A1)
【文献】特表2016-512758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0225765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経刺激デバイスであって、
神経組織に電気刺激を送達するように構成された少なくとも3つの刺激電極と、
前記刺激電極のうちの第1刺激電極が、前記刺激電極のうちの少なくとも2つの戻り電極によって戻される閾上刺激成分を送達する、第1刺激位相を送達するように構成された制御ユニットであって、前記刺激電極のうちの少なくとも2つが、前記第1刺激電極によって戻される閾下刺激成分を送達する、少なくとも第2刺激位相を送達するようにさらに構成されている制御ユニットと、
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記電気刺激が、少なくとも3つの電極によって送達される少なくとも3つの位相を含み、前記位相が、前記位相のうちの1つにおいて1つの電極からの1つの刺激成分のみが閾上陰極刺激成分であるように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
閾上陰極刺激成分が、刺激の最終位相において送達される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
4つの刺激電極を利用して四極刺激を送達するように構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
オフセットした四極刺激を送達することにより、前記閾上刺激成分が1つの電極によって送達され且つ3つの電極によって戻されるように構成されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
多極刺激モード間で切り替えることにより、第2陰極刺激を最適に最小限にするために刺激電極の数を適応的に選択するようにさらに構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1刺激電極によって運ばれる電流が、前記少なくとも2つの戻り電極の間で均一に戻される、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1刺激電極によって運ばれる電流が、前記少なくとも2つの戻り電極の間で不均一に戻される、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも2つの戻り電極によって搬送される不均一な電流が、記録電極における刺激アーチファクトを最小限にする不均一性を呈するように構成されている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
各電極に対して、刺激の各位相においてそのそれぞれの電極を通して所望の電流を駆動するように構成されたそれぞれの電流源を備える請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
各電極を通して所望の電流の差動駆動をもたらすように刺激電極の隣接する対の間にそれぞれの電流源を備える請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
受動戻り電極としての役割を果たすように、前記刺激電極のうちの1つ又は複数を直接電源レールに選択的に接続するように構成されている請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1刺激電極が、前記少なくとも2つの戻り電極の間に挿入されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1刺激電極が、前記少なくとも2つの戻り電極のうちのすべての戻り電極の一方の側に位置決めされている、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
刺激により誘発された神経反応の1つ又は複数の記録を得るように構成された記録電極及び測定回路をさらに備える請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記神経反応の前記1つ又は複数の記録を評価するとともに、第2陰極刺激が発生しているか否かを特定するようにさらに構成されている請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
振幅が一定であるが別個の1つ以上の位相間ギャップを有する刺激を印加し、刺激各々によって誘発されるECAPを観察し、観察されたECAP各々の形態を比較して第2陰極刺激のしるしを検出するように構成されている請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
振幅が一定であるが別個の刺激位相順序を有する刺激を印加することにより第2陰極刺激を検出し、刺激各々によって誘発されるECAPを観察し、観察されたECAP各々の形態を比較して第2陰極刺激のしるしを検出するように構成されている請求項16又は17に記載のデバイス。
【請求項19】
第2陰極刺激の結果を使用して、前記第2陰極刺激が検出されたときに前記第2陰極刺激を阻止するか又は低減させようとして刺激パラダイムを調整するようにさらに構成されている請求項16から18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
閾下振幅及び閾上振幅で刺激を印加して、それぞれの誘発されたECAP反応を観察し、ECAP反応が最初に誘発される刺激振幅閾値を決定し、前記刺激振幅閾値の倍数として継続する治療刺激振幅を設定することにより、自動化された刺激振幅決定を実行するようにさらに構成されている請求項15から19のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記継続する治療刺激振幅が、前記刺激振幅閾値の1.05~1.8の範囲内で倍数として設定される、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記刺激振幅閾値の1.2倍の倍数として前記継続する治療刺激振幅を設定するように構成されている請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
神経刺激器に神経刺激の処置を実行させるコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムであって、少なくとも3つの刺激電極を使用して神経組織に電気刺激を送達するためのコンピュータプログラムコード手段を備え、前記電気刺激が、前記刺激電極のうちの第1刺激電極が前記刺激電極のうちの少なくとも2つの戻り電極によって戻される閾上刺激成分を送達するための第1刺激位相を含み、前記電気刺激が、前記刺激電極のうちの少なくとも2つが前記第1刺激電極によって戻される閾下刺激成分を送達するための第2刺激位相をさらに含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される、2018年10月23日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2018904011号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、神経において複合活動電位を生じさせるために電気神経刺激を印加することに関し、特に、本発明は、予測された形態を有する複合活動電位を制御可能に誘発するために刺激を構成することに関する。
【背景技術】
【0003】
複合活動電位(CAP)を生じさせるために神経刺激を印加することが望ましいさまざまな状況がある。たとえば、慢性疼痛、パーキンソン病及び片頭痛を含む種々の疾患を治療するために、神経調節(ニューロモジュレーション)が使用される。神経調節システムは、治療効果を発生させるために組織に電気パルスを印加する。慢性疼痛を緩和するために使用される場合、電気パルスは、脊髄の後索(DC)に印加される(脊髄刺激療法(SCS)と称される)。神経調節システムは、通常、植え込まれる電気パルス発生器と、経皮誘導伝導により再充電可能であり得るバッテリ等の電源とを備える。電極アレイがパルス発生器に接続され、後索の上方の背側硬膜外腔内で位置決めされる。電極によって後索に印加される電気パルスにより、ニューロンの脱分極がもたらされ、伝播する活動電位が発生する。このように刺激されている線維は、脊髄内のそのセグメントから脳に痛みが伝達するのを阻止する。痛み緩和効果を持続させるために、刺激は、たとえば50~100Hzの範囲の周波数で実質的に連続して印加される。
【0004】
神経調節は、たとえば運動機能を誘発するために、遠心性線維を刺激するためにも使用することができる。一般に、神経調節システムにおいて発生する電気刺激は、神経活動電位をトリガし、それにより、神経活動電位は抑制効果又は興奮効果のいずれかを有する。抑制効果を使用して、痛みの伝達等の望ましくないプロセスを調節するか、又は、筋肉の収縮等、所望の効果を引き起こすことができる。
【0005】
神経経路に印加される電気刺激によって神経経路において誘発される複合活動電位(CAP)の電気測定値を得ることが望ましいさまざまな状況がある。しかしながら、観察されるCAP信号は、通常、数10マイクロボルト以下の最大振幅を有するが、CAPを誘発するために印加される刺激は通常数ボルトであるため、これは困難な課題であり得る。通常、刺激から電極アーチファクトがもたらされ、電極アーチファクトは、CAPが発生する時間を通して数ミリボルト又は数百マイクロボルトの減衰する出力として現れ、対象のはるかに小さいCAPを隔離することに対して著しい障害物となる。神経反応は刺激及び/又は刺激アーチファクトと同時発生する可能性があるため、CAP測定はインプラント設計の困難な難題となる。実際に、回路の多くの非理想的態様によりアーチファクトがもたらされ、これらは、大部分、正又は負いずれかの極性であり得る減衰する指数関数的特徴を有するため、アーチファクトの原因の特定及び除去は面倒であり得る。King(特許文献1)、Nygard(特許文献2)、Daly(特許文献3)及び本出願人(特許文献4)のものを含む、CAPを記録する多くの手法が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5913882号明細書
【文献】米国特許第5758651号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0225767号明細書
【文献】米国特許第9386934号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
誘発される反応は、アーチファクトよりも時間的に後に現れる場合、又は信号対雑音比が十分に高い場合、検出することはそれほど困難ではない。アーチファクトは、刺激の1~2ms後の時間に制限されることが多く、そのため、この時間窓の後に神経反応が検出されるのであれば、データを得ることができる。これは、刺激電極と記録電極との間に大きい距離があり、それにより、刺激部位から記録電極までの神経反応伝播時間が2msを超える、外科的モニタリングの場合である。しかしながら、たとえば、SCSに対する後索からの反応等、単一インプラントによって誘発される反応を特徴付けるために、高い刺激電流と電極の間の近接性とが必要であり、したがって、測定プロセスは、同時発生するアーチファクトを直接克服しなければならず、神経測定がさらに困難にある。
【0008】
神経構造を刺激し、神経反応が脳内の別の場所で伝播する前にその構造内で生成される誘発された複合活動電位を即座に測定することが望ましい可能性がある脳深部刺激において、同様の考慮事項が持ち上がる可能性がある。アーチファクトは、刺激場所に対して近位側の神経反応の測定に対する著しい障害物であり続け、その結果、必然的に小型デバイスである従来の神経刺激インプラントのすべてではなくても大部分が、インプラントの刺激によって誘発される神経反応のいずれも測定しなくなる。
【0009】
本明細書に含まれている文献、行為、材料、装置、物品等のいかなる考察も、単に本発明に対する背景を提供することを目的とするものである。これらの事項のうちの任意のもの又はすべてが従来技術の基礎の一部を形成するか、又は本出願の各請求項の優先日前に存在していたものとして本発明に関連する分野における共通の一般知識であったと認めるものとして解釈されるべきではない。
【0010】
本明細書を通して、「備える」、「含む」、「有する」という用語やその変形は、述べられている要素、完全体若しくはステップ、又は要素、完全体若しくはステップの群を包含することを意味し、他のいかなる要素、完全体若しくはステップ、又は要素、完全体若しくはステップの群も排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【0011】
本明細書において、要素が選択肢のリストの「少なくとも1つ」であり得ると述べる場合、それは、その要素が列挙された選択肢のうちの任意の1つであり得るか、又は列挙された選択肢のうちの2つ以上の任意の組合せであり得ると理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、
神経組織に電気刺激を送達するように構成された少なくとも3つの刺激電極と、
第1刺激電極が、刺激電極のうちの少なくとも2つの他の刺激電極によって戻される閾上刺激成分を送達する、第1刺激位相を送達するように構成された制御ユニットであって、刺激電極のうちの少なくとも2つが、第1刺激電極によって戻される閾下刺激成分を送達する、少なくとも第2刺激位相を送達するようにさらに構成されている制御ユニットと、
を備える、神経刺激デバイスを提供する。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、
少なくとも3つの刺激電極を使用して神経組織に電気刺激を送達するステップを含み、電気刺激が、第1刺激電極が、刺激電極のうちの少なくとも2つの他の刺激電極によって戻される閾上刺激成分を送達する、第1刺激位相を含み、電気刺激が、刺激電極のうちの少なくとも2つが、第1刺激電極によって戻される閾下刺激成分を送達する、第2刺激位相をさらに含む、
神経刺激方法を提供する。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、神経刺激器に神経刺激の処置を実行させるコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムプロダクトであって、第2態様の方法を実施するコンピュータプログラムコード手段を備えるコンピュータプログラムプロダクトを提供する。
【0015】
典型的には、閾上刺激成分は、神経刺激の分野においてこの術語に与えられる従来の意味の範囲内の陰極刺激位相である。多くの神経刺激応用において、陰極刺激閾値は、陽極刺激閾値よりも低く、それにより、所与の振幅における陰極刺激は、振幅及び持続時間の等しい陽極刺激が誘発しない反応を、誘発することができる。しかしながら、本発明は、この理論によって限定されるものとして理解されるべきではなく、いくつかの実施形態では、たとえば、ある神経刺激応用が、陰極刺激閾値よりも低い陽極刺激閾値を有する環境で動作する場合であれば、又はさらには、特定の刺激モード又は分野において陽極及び陰極という用語に対して代替的な術語が適用される場合であれば、閾上刺激成分は陽極刺激位相であり得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書における閾上陰極刺激成分に対する言及は、適用可能である場合はこうした代替実施形態において陽極閾上刺激成分に適用可能であるものとして理解されるべきである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも3つの電極によって送達される少なくとも3つの位相を含み、そうした位相は、位相のうちの1つにおいて1つの電極からの1つの刺激成分のみが閾上陰極刺激成分であるように構成されている。こうした実施形態は、3つ以上の刺激位相が利用される場合、閾上陰極刺激成分以外の刺激成分のすべてを刺激閾値未満で維持するためにより大きい機会があることを認める。たとえば、戻り電流刺激成分及び電荷平衡刺激成分は、こうした実施形態では、より多くの位相にわたって拡散させることができ、したがって、こうした位相各々において低減した振幅をとることができる。
【0017】
閾上陰極刺激成分は、好ましくは、二相刺激の第2位相中等、刺激の最終位相において送達される。こうした実施形態は、ECAPの開始から刺激の最大の時空的分離を可能にし、したがって、ECAP測定が、刺激又は刺激アーチファクトによる飽和なしにより速やかに発生することができる。こうした実施形態では、第1位相の部分的な脱分極は、膜電位を変更し、第2位相における陰極刺激成分による動員に影響を与える可能性があるが、これは、好適な刺激振幅制御によって解決することができることに留意するべきである。しかしながら、本発明の範囲内にある代替実施形態は、刺激の第1位相、最後から2番目の位相、又は他の非最終位相において、閾上陰極刺激を送達することができる。たとえば、三相刺激の場合、閾上陰極刺激成分は、典型的には、3つの位相のうちの第2位相において送達される。
【0018】
いくつかの実施形態は、3つの刺激電極を利用して三極刺激を送達することができる。他の実施形態は、4つの刺激電極を利用して四極刺激を送達することができる。たとえば、オフセットした四極刺激を送達することができ、それにより、閾上刺激成分が、1つの電極によって送達され、3つの電極によって戻される。他の実施形態は、5つ以上の刺激電極を利用して、五極刺激を送達するか又はより多くの電極の極から刺激を送達することができる。いくつかの実施形態は、三極、四極、五極等の構成のうちのいずれが第2陰極刺激を最適に最小限にするかを求めるために、こうした刺激モードの間で切り替えることにより、刺激電極の数を適応的に選択することができる。
【0019】
第1刺激電極によって運ばれる電流は、いくつかの実施形態では、2つ以上の他の刺激電極の間で均一に分割することができる。たとえば、2つの戻り電極を有する三極刺激の場合、各戻り電極は、第1刺激電極によって送達される電流の50%を搬送することができる。別法として、第1刺激電極によって運ばれる電流は、各々を閾下レベルで維持しながら2つ以上の他の刺激電極の間で不均一に分割することができ、たとえば、こうした不均一な電流は、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人の国際公開第2017/219096号パンフレットの教示に従って刺激アーチファクトを最小限にする不均一性を呈するように構成することができる。
【0020】
各それぞれの刺激電極によって搬送される電流は、各電極に対して、刺激の各位相においてそのそれぞれの電極を通して所望の電流を駆動するように構成されたそれぞれの電流源を設けることによって、制御することができる。別法として、各電極を通して所望の電流の差動駆動をもたらすように刺激電極の隣接する対の間にそれぞれの電流源を設けることができる。こうした実施形態は、刺激電極の間の不均一な電流共有が必要である場合に特に適用可能であり得る。別法として、たとえば受動戻り電極としての役割を果たすように、刺激電極のうちの1つ又は複数を接地することができる。
【0021】
第1刺激電極は、いくつかの実施形態では、たとえば硬膜外リードアレイ上において、2つ以上の他の電極の間に挿入されている。
【0022】
代替実施形態では、第1刺激電極は、戻り電極のうちの両方又はすべての一方の側に位置決めすることができる。こうした実施形態は、複合反応のECAP伝播効果によって初期神経反応の分散及び振幅低減がもたらされる前に、刺激の部位に可能な限り近接して、ECAPを記録することが望ましい、ということを認める。こうした実施形態では、戻り電極刺激成分は、均一なレベルで、又は、各戻り電極をそれぞれの電流源によって駆動することにより少なくともそれぞれの閾下レベルで、維持することができる。
【0023】
本発明の実施形態は、刺激により誘発された神経反応の1つ又は複数の記録を得るように構成された記録電極及び測定回路をさらに備えることができる。いくつかのこうした実施形態では、第2陰極刺激が発生しているか否かを特定するために、神経反応の1つ又は複数の記録が評価される。たとえば、振幅が一定であるが別個の位相間ギャップを有する刺激を印加し、こうした刺激各々によって誘発されるECAPを観察し、第2陰極刺激のしるしがあるか、こうした観察されたECAP各々の形態を比較することにより、第2陰極刺激検出を行うことができる。さらに又は別法として、振幅が一定であるが、陰極が最初か又は陽極が最初かという位相送達の交互の選択を有する等、別個の刺激位相順序を有する刺激を印加することにより、第2陰極刺激検出を行うことができる。この場合もまたこうした実施形態では、こうした刺激各々によって誘発されるECAPを観察することができ、それらの形態を比較して第2陰極刺激の任意のしるしを検出することができる。
【0024】
第2陰極刺激検出が提供される実施形態では、好ましくは、こうした検出の結果を使用して、第2陰極刺激が検出されたときに第2陰極刺激を阻止するか又は低減させようとして刺激パラダイムが調整される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、閾上刺激成分のフィードバック制御をさらに提供し、このフィードバック制御は、先行する刺激からもたらされる複合活動電位の1つ又は複数の記録を繰り返し又は連続的に評価するように、且つ、閾上刺激成分のみからの神経動員を維持しようとするように閾上刺激成分を含む刺激を精緻化するように構成されている。
【0025】
本発明の実施形態は、ECAPベクトル検出器等、動員を評価するために神経記録を評価する任意の好適なECAP検出器を利用することができる。ベクトル検出器は、たとえば、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人の国際公開第2015/074121号パンフレットの教示に従って、4ローブ(lobed)又は5ローブの一致したフィルタテンプレートを利用することができる。特に好ましい実施形態は、本発明により刺激を印加し、ECAPベクトル検出器を使用することにより、誘発された反応を検出し、検出器の出力を使用して刺激フィードバックループを制御することができる。
【0026】
安全性要件が刺激構成に制約を課すが、本発明のいくつかの実施形態では、刺激自体は厳密に電荷が平衡でない場合があり、1つ又は複数の電極を適切な時点で短絡させて接地することにより受動的に電荷を回収する等、代替手段によって、正味の電荷差を回収することができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、閾下振幅及び閾上振幅で刺激を幾分か低頻度で印加して、誘発されたECAP反応を観察し、そこから、ECAP反応が最初に誘発される刺激振幅閾値を決定し、刺激振幅閾値の倍数として継続する治療刺激振幅を設定することにより、自動化された刺激振幅決定を提供することができる。乗数は、患者ごとにデバイス取付の時点で決定することができる。別法として、乗数は、1.05~1.8の範囲、より好ましくは1.1~1.4の範囲、より好ましくは1.15~1.25の範囲、より好ましくは1.2又は約1.2の値をとるように選択することができる。こうした実施形態は、本出願人による臨床的観察により、患者によって好まれる三極刺激振幅が、その患者に対する刺激閾値の約1.2倍であることが多いことが明らかとなったことを認める。
【0028】
ここで、添付図面を参照して本発明の一例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】植込み型脊髄刺激器を概略的に示す。
図2】植込み型神経刺激器のブロック図である。
図3】植込み型刺激器の神経との相互作用を示す概略図である。
図4図4Aは、従来技術の二相二極刺激電流の経時的なプロファイルを示す。図4B図4Cは、神経に対する各刺激位相の送達を示す。
図4D】それぞれの電極波形を示す。
図5図5A図5Bは、二相三極刺激を利用する本発明の一実施形態を示す。
図6図5A図5Bの実施形態によって改善されたいくつかのECAP形態パラメータを示す。
図7】本発明の1つの実施形態による三極刺激電極構成を駆動する電流源の第1構成を利用する本発明の一実施形態を示す。
図8】本発明の別の実施形態による三極刺激電極構成を駆動する電流源の第2構成を利用する本発明の別の実施形態を示す。
図9】本発明のさらに別の実施形態による三極刺激電極構成を駆動する電流源のさらに別の構成を利用する本発明の別の実施形態を示す。
図10A】活動電位の伝播軸との電極の位置ずれを示す。
図10B】活動電位の伝播軸との電極の位置ずれを示す。
図11A】刺激の第1位相によって引き起こされる神経の脱分極の領域及び部分的な脱分極の領域を示す。
図11B】第2刺激位相においてもたらされる分極のさらなる領域を示す。
図12】従来の二相二極刺激における複数の刺激部位及び時点によって引き起こされる非線形ECAP成長の問題をさらに示す。
図13】第2陰極刺激の存在を検出する方法を示す。
図14】第2陰極効果を除去する刺激シーケンスの自動化された最適化をさらに提供する、本発明のさらなる実施形態を示す。
図15】本発明の一実施形態によるフィードバック制御された神経刺激のシステムを概略的に示す。
図16】本発明の別の実施形態による三相三極刺激構成を示す。
図17図17図17Bは、本発明のさらなる実施形態による、それぞれ四極刺激構成及び五極刺激構成の単一位相における電極の極性を示す。
図18】本発明のさらに別の実施形態による三相四極刺激構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、植込み型脊髄刺激器100を概略的に示す。刺激器100は、患者の下腹部又は上後臀部領域の好適な場所に植え込まれる電子機器モジュール110と、硬膜外腔内に植え込まれるとともに好適なリードによってモジュール110に接続された電極アセンブリ150とを備える。植込み型神経デバイス100の動作の多くの態様は、外部制御デバイス192によって再構成可能である。さらに、植込み型神経デバイス100は、データ収集の役割を果たし、収集されたデータは任意の好適な経皮通信チャネル190を介して外部デバイス192に通信される。
【0031】
図2は、植込み型神経刺激器100のブロック図である。モジュール110は、バッテリ112及びテレメトリモジュール114を含む。本発明の実施形態では、テレメトリモジュール114により、赤外線(IR)、電磁、容量性及び誘導性の伝送等、任意の好適なタイプの経皮通信190を使用して、外部デバイス192と電子機器モジュール110との間で電力及び/又はデータを伝送することができる。モジュールコントローラ116が、患者設定120、制御プログラム122等を格納する関連付けられたメモリ118を有する。コントローラ116は、患者設定及び制御プログラム122に従って、電流パルスの形態で刺激を発生させるようにパルス発生器124を制御する。電極選択モジュール126が、発生したパルスを電極アレイ150の適切な電極に切り替えて、選択された電極を包囲する組織に電流パルスが送達されるようにする。測定回路128が、電極選択モジュール126によって選択される電極アレイの検知電極において検知される神経反応の測定値を捕捉するように構成されている。
【0032】
図3は、植込み型刺激器100の神経180との相互作用を示す概略図であり、この場合、神経は脊髄であるが、代替実施形態は、末梢神経、内臓神経、副交感神経又は脳構造を含む任意の所望の神経組織に隣接して位置決めすることができる。電極選択モジュール126は、神経180を含む周囲の組織に電流パルスを送達するために電極アレイ150の刺激電極2を選択するとともに、ゼロの正味電荷移動を維持するように刺激電流回収のためのアレイ150の2つの戻り電極1及び3も選択する。
【0033】
神経180に適切な刺激を送達することにより、治療目的で、図示するように神経180に沿って伝播する複合活動電位を含む神経反応を誘発し、この治療目的は、慢性疼痛のための脊髄刺激器の場合、所望の場所で知覚異常を生じさせることであり得る。このために、刺激電極は、任意の治療上好適な周波数、たとえば30Hzで刺激を送達するように使用されるが、kHz範囲程度に高い周波数を含む他の周波数を使用することができ、且つ/又は、患者に対する必要に応じて、バーストで又は散発的に等、非周期的に刺激を送達することができる。デバイスを取り付けるために、臨床医は、ユーザが知覚異常として体感する感覚をもたらそうとするさまざまな構成の刺激を印加する。痛みの影響を受けるユーザの身体の領域と一致する場所又はサイズである、知覚異常を誘発する刺激構成が見つかると、臨床医は、引き続き使用するためにその構成を指定する。
【0034】
デバイス100は、神経180に沿って伝播する複合活動電位(CAP)の存在及び強度を、こうしたCPAが電極1~3からの刺激によって誘発されるか又は他の方法で誘発されるかに関わらず、検知するようにさらに構成されている。このために、電極選択モジュール126により、測定電極6及び測定参照電極8としての役割を果たす、アレイ150の任意の電極を選択することができる。測定電極6及び8によって検知される信号は測定回路128に渡され、測定回路128は、たとえば、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人による国際公開第2012155183号パンフレットの教示に従って動作することができる。回路128の出力は、コントローラ116により、フィードバック構成において後続する刺激の印加を制御するために使用され、コントローラ116はまた、神経反応、又はECAP振幅等、神経反応の1つ若しくは複数のパラメータの記録を、臨床データ記憶装置120に格納する。
【0035】
患者の安全性を確保するために、刺激は電荷平衡式に送達されることと、さらに、電極-組織接触面において不可避的に発生する電気化学効果を打ち消すために、各刺激電極に双方向電流が通されることとを確実にする必要がある。これにより、任意の実際的な神経刺激デバイスにおいて使用することができる刺激の許容可能な構成に何らかの制限が課される。こうしたデバイスで使用される従来の刺激は、図4A図4Dに示すように二相二極刺激である。図4Aは、刺激電流の経時的なプロファイルを示す。図4B及び図4Cは、各それぞれの刺激位相の神経への送達を示す。図4Dは、二相二極刺激が少なくとも2つの閾上刺激成分を不可避的に送達することを示す。
【0036】
この従来の二相二極刺激構成では、第1刺激位相は電極402から電流を送達し、この電流は電極401によって戻される。第2位相では、等しく且つ反対の電流が送達され、すなわち、電流は、電極401から送達され、電極402によって戻される。したがって、刺激は、2つの位相を送達するため二相であり、2つの電極を利用するため二極である。図4Dに示すように、有効な治療のために、刺激振幅は、陰極快適レベルに設定されなければならない。陰極快適レベルは、通常、陽極閾値レベルよりも大きさが小さく、これは、各位相の陰極刺激成分のみが神経動員を生じさせることを意味する。
【0037】
しかしながら、上述した安全性制約により、第1の位相(図4B)における電極402の陰極励起は、第2位相(図4C)における電極401の陰極励起と等しいが、時間t1離れている。第1時点で、位相1(図4B)では、電極402の陰極励起により、例示の目的で励起範囲412によって示す、電極402によってトリガされるランヴィエ絞輪422においてのみ神経反応が誘発される。第1時点のt1後の第2時点では、第2位相(図4C)において、電極401の陰極励起により、例示の目的で励起範囲411によって示す、電極401によってトリガされるランヴィエ絞輪421においてのみ神経反応が誘発される。励起範囲412は電極402に隣接し、電極401に隣接する励起範囲411とは境界を共有しないことに留意するべきである。したがって、第1位相における刺激部位は、刺激の第2位相における刺激部位とは少なくとも部分的に異なり、又はさらには完全に異なる。
【0038】
t1の典型的な値に対して、第1位相によって動員される所与の軸索は、典型的には、第2位相中は不応となり、再度動員することはできないが、第1位相によって動員されない他の軸索(図4A図4Dには示さず)は、上述したように第2位相によって励起することが可能なままである。第2位相における動員に利用可能である線維のそれぞれの部分母集団は、知られていないか又は少なくとも非常に不十分にしか知られておらず、第2位相において発生する可能性がある複合反応のそれぞれの振幅に関する相当な不確実性が導入される。
【0039】
したがって、二相二極刺激は、典型的には、異なる時点で発生し、異なる場所で発生し、振幅が不均一である(振幅不均一の程度は未知である)、神経反応成分から構成された複合反応を誘発する。これらの神経反応成分は、全体として神経反応の電気的観察に重なり、且つそれに一体化して寄与し、刺激の各成分の実際の動員効果を正確に理解しようとする試みを著しく妨げる。
【0040】
図4A図4Dに示す従来の二極二相刺激とは対照的に、本発明は、刺激の1つの成分のみが任意の神経反応を動員するパラダイムを求めるように特定の方法で構成された、三相(又はそれより大きい)刺激を提案する。達成されると、この結果は、たとえば、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人の国際公開第2016/161484号パンフレットに示されている目的で、結果として得られる複合活動電位を、特定の単一刺激部位に、且つ特定の単一刺激時点に関連付けることができることを意味する。伝導速度の決定も改善することができ、それは、刺激部位及び時点が改善された精度で既知であるためであるとともに、観察される反応がそれほど時間拡散せず、より鋭いピークをもたらし、したがって、伝導速度決定のために到達時点を評価するときにこうしたピークの発生時点の分解能を改善することができるためである。
【0041】
図5A及び図5Bは、二相三極刺激によって実施される本発明の一実施形態を示す。図5Aに示す第1位相では、刺激電極501及び503は陰極であり、組織に電流を送達し、すべての電流は中心の陽極刺激電極502によって戻される。例示の目的で、電極501及び503は名目0.5単位の電流を送達し、一方で、電極502は1単位の電流を戻す。図5Bに示す第2位相では、電極502は1単位の電流を送達し、電極501及び503は各々、0.5単位の電流を戻す。本発明によれば、送達される電流振幅は、陰極刺激閾値が0.5~1単位の電流の範囲であることを確実にするように、且つ、陽極刺激閾値が1単位を超える電流であることを確実にするように、注意深く選択される。したがって、この構成により、両側で陽極が側面に位置する単一の陰極によって動員がもたらされる。したがって、この刺激パラダイムの1つの位相(第2位相)のみ及び1つの電極(電極502)のみが、常に、いかなる神経動員も生じさせ、したがって、刺激の時点及び場所をあり得る最大の精度で知ることができることが確実になる。たとえば、これにより、第2刺激部位及び時点がECAPに寄与していないことを確信して、ECAP形態を評価することができる。
【0042】
特に、位相1における電極502、並びに位相2における電極501及び503の陽極電流は、典型的な神経刺激法の実施の刺激レベルで無視することができる。これは、有効な治療に必要な典型的な刺激レベルが、電気生理学的閾値(ECAPを検出するために最初に可能である電流)と、閾値の約2倍である電流との間であるためである。陽極動員が可能であるが、陽極による活動電位発生のための閾値電流は著しく高く、陽極励起のための閾値電流は、典型的には、陰極励起の場合の約5~8倍高い。本発明は、これにより、単一の閾上刺激成分を維持することができる有用な動作範囲が提示されることを認める。この目的で三極刺激を使用する実施形態では、これにより、刺激電流が閾値の2倍未満で維持されるとき、さらなる位相において側面に位置する電極(501、503)において発生するさらなる陰極が、刺激のための閾値未満であることが確実になる。したがって、刺激のこの特定の構成により、二相三極刺激全体において単一の陰極から、すなわち、その単一の閾上刺激成分により、活動電位が発生することが確実になる。本発明者らは、ECAPを、可能な限り刺激に近接して且つ可能な限り刺激後すぐに測定することを目指し、そのため、刺激は、第1位相において陽極が三極の中心電極にある状態で提示され、それにより、陰極刺激成分は、刺激の第2の且つ最後の位相において提示することができ、測定をその直後に開始することができる。
【0043】
たとえば評価することができるECAP形態パラメータは、図6に示すものを含む。単一の活動電位は、初期脱分極(細胞静電容量)を示すP1ピークと、それに続く、脱分極(ナトリウムチャネル活性化)を示すN1バレー又は負ピークと、最後の過分極(カリウムチャネル活性化)を示すP2ピークとを含む。たとえば評価することができるECAP形態パラメータは、P1-N1ピークピーク振幅、N1-P2ピークピーク振幅、P1ピーク時点、P1ピーク振幅、P1半値ピーク幅、P1-N1ゼロ交差時点、P1-N1ゼロ交差勾配、N1ピーク時点、N1ピーク振幅、N1半値ピーク幅、N1-P2ゼロ交差時点、N1-P2ゼロ交差勾配、P2ピーク時点、P2ピーク振幅、P2半値ピーク幅等の特徴を含む。これらのパラメータのすべてが、刺激が複数の異なる部位で且つ複数の異なる時点でニューロンを動員する場合、刺激振幅に非線形に応答する可能性があるため、本発明の実施形態は、フィードバック変数として又は診断指標等として使用される場合の任意の又はすべてのこうしたECAP形態パラメータの信頼性を大幅に向上させることができる。
【0044】
図7は、本発明の1つの実施形態による三極刺激電極構成を駆動するために電流源の第1構成を利用する、本発明の一実施形態を示す。この実施形態では、2つの電流源710及び720を使用して、電極1と電極3との間で不均一な電流共有が実施される。電極2は、電流源によって送達される電流全体のための戻り経路を提供するように、単純に接地される。
【0045】
図8は、本発明の別の実施形態による三極刺激電極構成を駆動するために電流源の第2構成を利用する、本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、電極1、電極2及び電極3の各々に、それぞれシングルエンド電流源810、820、830が設けられている。電流源は、e1、e2及びe3と示すそれぞれ個々のシングルエンド駆動電流プロファイルを送達するように構成されている。
【0046】
図9は、本発明のさらに別の実施形態による三極刺激電極構成を駆動するために電流源のさらに別の構成を利用する、本発明の別の実施形態を示す。これは、図8のシングルエンド駆動構成と等価な差動駆動構成である。
【0047】
したがって、本実施形態においてこのように三極刺激を実施するために3つの電極を使用することは、二相刺激の第1位相において、刺激電流が、この第1位相では陰極である電極1及び3(図3図7図8図9)の両方から送達され、戻り電流全体が、陽極である電極2によって搬送されることを意味する。また、二相刺激の第2位相では、刺激電流全体が、この位相では陰極である電極2から送達され、戻り電流は、この位相では陽極である戻り電極1と電極3との間で共有される。したがって、刺激の第1位相及び第2位相の両方で、電極1を通る電流(I1)と電極3を通る電流(I3)との和は、電極2を通る電流(I2)と等しく且つ反対である。すなわち、I1+I3=-I2である。
【0048】
本発明は、電極2における陰極電流である、これらの刺激成分のうちの1つのみが、神経反応を誘発することを確実にすることができる、ということを認める。これは、位相1における電極1及び3の陰極電流が、位相2において電極2によって送達される陰極電流の約半分を決して超えないように、三極刺激を配置することができるためである。したがって、第1位相において電極1及び3の陰極電流を刺激閾値未満で維持する一方で、第2位相において電極2の陰極電流を、刺激閾値を上回るように維持することができる。また、第1位相における電極2の陽極電流は、安全性の理由で、典型的には、第2位相における電極2の陰極電流に実質的に等しく(ただし反対で)なければならないが、陽極刺激閾値は、典型的には、陽極刺激閾値よりも大きく、そのため、第2位相における電極2の(等しいが反対である)陰極電流を、陰極刺激閾値を上回るように維持しながら、第1位相における電極2の陽極電流を陽極刺激閾値未満で維持することができる。
【0049】
したがって、二相三極刺激は、電荷平衡に対する要件を満足させるとともに、さらに、各電極において交流電流を使用することにより反転される電極-組織接触面におけるすべての電気化学効果に対する要件を満足させ、それにも関わらず、1つの成分のみが神経反応を誘発する刺激を送達するように、構成することができる。
【0050】
本発明のさらなる利益及び実施形態も構想する。これに関して、本発明のいくつかの実施形態に対する1つの応用分野は、脊髄刺激療法であることに留意され、脊髄刺激療法は、硬膜外腔内に配置される電極による脊髄の後索の刺激を介して、その治療利益を達成する。後索は、中線から広がる後索内の層が、身体の特定の領域(すなわち皮膚分節(デルマトーム))を刺激する神経線維を支持するように配置されている。電気脊髄刺激療法の目的は、痛みが存在する皮膚分節に対応する線維を動員することである。痛みが存在しない隣接領域における刺激は、デバイスの受容者には非常に不快である可能性があるため、望ましくない領域における刺激により受容者が自身の治療を中止することになる可能性がある。
【0051】
後索線維の一貫した動員を達成するために必要な電流に著しい変動があり、一定の所望のレベルで動員を維持するために、フィードバックループが確立されている。1つの技法は、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人の国際公開第2012/155188号パンフレットに記載されているように、脊髄励起の基準として電気的に誘発された複合活動電位を使用することに依存する。所望の皮膚分節領域の一貫した動員を可能な程度維持するために使用することができるプログラミングパラメータの確立を補助するものとしてECAPを使用することを考慮する場合、本発明は、従来の二相二極刺激によって複数の部位で且つ/又は複数の異なる時点で誘発されたECAPが、観察されたECAを解釈する課題を複雑にし、したがって有効な治療を妨げる可能性があることを認める。
【0052】
陰極電流は陽極電流よりも高い動員効率を有し、そのため、陰極電流を採用することが望ましいが、単相パルスは安全でなく、そのため、電位を反転させるために陽極電位の直後に陰極電流を発生させなければならない。これは、電極表面で発生したいかなる電気化学作用も反転させるという作用を有する。この平衡パルスの持続時間及び振幅は、2つの位相中に送達される電荷(持続時間×振幅)が同じであるとすれば、陰極パルス(ただし反対の符号)の持続時間及び振幅とは異なる可能性がある。
【0053】
電荷反転の最も単純な形態は、二相刺激パルスの使用である。刺激からの電界の広がりは、SCSデバイスの場合は通常同じリードの電極である電極の間の離隔距離によって決まる。刺激は、図4に示すように最初に陰極で又は陽極で発生する。この図では、陰極位相及び陽極位相は同じパルス幅を有するが反対の符号であり、これにより、電流は、第1位相では(慣例と一致して正から)負に、第2位相では陽極及び陰極の位置が入れ替わって反対に流れる結果となる。
【0054】
この正味の結果は、すべての単一の二相刺激に対して、第1位相から1つ及び第2位相から1つの2つの陰極が発生する、ということである。理想的な状況では、陰極が最初で、刺激が線維を動員し、その後、線維は、それらの不応期に入り、第2の位相の提示中、そのままであり続ける。この理想的な状況では、いかなる追加の線維の動員も発生せず、刺激場所は単一の電極にマッピングされる。
【0055】
しかしながら、本発明は、実際には、この状況は達成が困難であることを認める。上述で考察した理由に加えて、図10A及び図10Bに示すように、活動電位の伝播軸との電極の位置ずれの可能性に留意することが重要である。こうした位置ずれは、神経に隣接する電極リードの外科的位置ずれから、及び/又は、個々の神経線維が、発生することが既知であるように神経内部で幾分かの曲がりくねった経路をとることにより、もたらされる可能性がある。活動電位の伝播軸との電極のこうした位置ずれの場合、第1陰極は、部分的に脱分極した膜を生成することはできるが活動電位を開始することはできず、活動電位はその後、第2陰極が十分に短い窓内で提示される場合、第2陰極が開始することができる。この幾何学的限界を図10A及び図10Bに示す。刺激の第1位相は、線維群を動員し、第2位相は、刺激の第1位相によって動員されなかったいくつかの追加の線維を動員する。2つの位相において動員された線維が異なる皮膚分節領域に対応する場合、これにより、異なる場所で刺激が知覚される結果となり、望ましくない場所での刺激に至る可能性がある。実際に、図10Bの場合、こうした位置ずれにより、さらには身体の間違った側の皮膚分節が動員させることになる可能性もあり、たとえば、右側の刺激が望まれる場合、こうした幾何学的位置ずれにより、刺激が身体の左側で不正確に発生する可能性が不適切に増大する可能性がある。
【0056】
単一場所への動員の維持に対する幾何学的制約のみでなく、タイミング制約もある。刺激電流は、活動電位を生成するために神経の領域を脱分極するだけでなく、電界の性質により、活動電位を発生させた領域の周囲のより広い領域を部分的に脱分極する。これを図11Aに示す。SCS中、二極刺激が一般に使用され、第1位相陽極1120は、陰極刺激電極1110に対する隣接電極であることが多い。図11Aに示すように、電極1110によって送達される第1位相陰極刺激は、神経上に、軸索が脱分極して活動電位を開始する領域をもたらす。この領域の周囲の環状領域に、励起が、活動電位をもたらさないが第2位相が印加される後の時点で膜状態を変化させる程度の、膜の部分的脱分極をもたらすのに十分である、第2領域がある。
【0057】
図11Bは、第2位相によって励起された神経の領域を示す。これらの状況では、電極アレイ及び神経の幾何学的位置合せが正確であり、第2陰極からの電界は、第1位相によって動員された線維にのみ印加される場合であっても、第2位相もまた部分的な脱分極の第2ゾーンを生成し、この領域の、第1位相によって生成された部分的な脱分極の領域との重なりにより、さらなる活動電位が発生し、したがって、印加された刺激の構成に起因して動員の時点及び場所が混乱する別の望ましくない機構が生じる。
【0058】
他の込み入った要因を考慮すると状況は、さらに複雑になる。たとえば、第1陰極1110及び第2陰極1120に対する2つの異なる場所に対する刺激閾値は、互いに異なる可能性がある。活性化の閾値が第2陰極1120下の方が高い状況では、望ましくない対応する皮膚分節場所における刺激の強度が強くなる。第1陰極1110に対する閾値が利用可能なすべての電極で最高であるが、第1陰極1110が、痛みのある皮膚分節に対応して使用されるように最適に配置された電極である、最も極端な場合では、二相刺激により、電極1120による望ましくない領域における刺激なしに、痛みのある領域の刺激を決して達成することができず、これにより、治療が受け入れられないか又は性能が低下することになる。
【0059】
体位変換で発生する動員の変動は、刺激を目標に向けるという目的をさらに混乱させる。受容者にさらなる利益、とりわけ、体位の影響の結果としての治療の変化をなくすという利益を提供するために、ECAP振幅の閉ループ制御を達成するデバイスを生成することが望ましい。理想的には、ECAP振幅は、同じ形状を維持するが、刺激電流の増大により、Tが閾値であり、kが利得項である場合、k(I-T)×(t)の形式で振幅が増大する。すなわち、この理想的な場合では、ECAPの形状は、電流により線形に拡大縮小する。これは、単純な検出器設計を可能にするという重要な利益を提供し、その設計のうちの1つは、本出願人の国際公開第2015/074121号パンフレットに記載されているように、適切に設計されたフィルタ関数により信号のドット積を単純に計算することからなり得る。任意の刺激設計により、2つの場所で又は2つの異なる時点で動員が引き起こされる場合、2つの場所の間の閾値のいかなるわずかな変化も、電流の増大によって変化するECAP形状をもたらし、線形ECAP振幅反応の想定が無効になり、検出されたECAPから動員を評価する課題が著しく複雑になる。
【0060】
図12は、従来の二相二極刺激における複数の刺激部位及び時点によってもたらされる非線形ECAP成長の問題をさらに示す。第1陰極に対する閾値と第2陰極に対する閾値との間に、第1ECAP形状Aが存在する。第2陰極に対する閾値を超えて、別のECAP形状Bが現れる。電極間の距離と線維母集団伝導速度とのいくつかの組合せに対して、ECAPの負のピーク及び正のピークは互いに整列して互いを打ち消す可能性がある。これにより、刺激電流の増大により直観に反してECAP振幅の低減がもたらされる状況が引き起こされ、これにより、閉ループ制御中にフィードバックループが不安定になる。したがって、特に、閉ループ制御神経調節の場合(それは、簡略化した検出器を可能にするとともにループ安定性を向上させるため)、いかなる第2陰極効果も検出して除去することが非常に望ましい。
【0061】
刺激の2つのモード(第1陰極、第2陰極)は異なる閾値を有する可能性があり、ECAPは後索に沿って異なる場所で開始するため、ECAP形態は電流によって変化する可能性がある。刺激電流が、閾下レベルから第1閾値に達する場所まで増大すると、ECAP形状Aが現れる。刺激電流のさらなる増大により、第2閾値に達すると、第2ECAP Bが現れる。ECAP Bは、ECAP Aと同じ形状を有するが、第1ECAP Aから時間的にオフセットしている。A及びBの和は、異なる形状を有し、この複合反応は、記録電極及び付随する測定回路とECAP検出器モジュールとによって観察することができるものである。第2ECAPにより、検出器出力は上昇するのではなく低下し、それにより、ループ不安定性又は性能の低下に至る可能性がある。
【0062】
これらの非線形効果は、本発明の実施形態によって発生するように、動員が、単一の時点で単一の刺激部位においてのみ発生する場合は、発生しない。こうした条件下で、一定の形状のECAPが現れ、ECAP検出の困難な課題を容易にするために望まれるように、刺激振幅により線形に成長する。
【0063】
所望の皮膚分節をより適切に標的とする刺激パラダイムを最適化するために、本発明のいくつかの実施形態では、さらに、第2陰極刺激が発生しているか否かを能動的に特定するように手段を講じるとともに、第2陰極刺激が検出されたときにそれを阻止するように手段を講じる。患者フィードバックに基づいて、第2陰極刺激の発生を検出することは可能ではなく、それは、電流が所望の領域及び望ましくない領域の両方で且つ均一に増大する際に、知覚の強度が成長し、そのため、患者が、報告するためにいかなる有用な特異性も識別することができないためである。しかしながら、本発明のこれらの実施形態は、第2陰極効果の特定を、電気的に誘発された複合活動電位の測定から達成することができることを認める。
【0064】
記録された電位は、図12に示すように、第1陰極及び第2陰極の両方によって引き起こされた電位の和である。したがって、記録電極により刺激電極から幾分か離れた距離で実際に測定されるECAPは、刺激サイクルにおける異なる時点に開始される両方の陰極からの反応1210及び1220の和である。記録電極から得られる記録は、成分1210及び1220から合わせて構成された複合反応1230しか常に反映することができないが、本発明は、第2陰極刺激が発生しているか否かを検出する複数の方法があることを認める。
【0065】
第2陰極刺激を検出する第1方法は、記録された反応1230を検査して、2つの陰極が好適な距離分離されているときに発生する可能性がある、2つの観察可能なN1ピークが存在するか否かを特定することである。しかしながら、この手法は、第2陰極刺激は発生するが、2つの観察可能なN1ピークとして現れない、広範囲のシナリオを特定することができない。
【0066】
したがって、第2陰極刺激の存在を検出する代替方法は、動員に影響を与えないが、何らかの第2陰極刺激が発生しているとすれば観察された複合活動電位の変化を引き起こす、パルスパラメータを変化させることを含む。図13に示す1つの例は、位相間ギャップを変化させることを含む。第1刺激1310が印加され、第1刺激1310は、刺激の2つの位相の間に第1位相間キャップを有する。結果として得られるECAPの第1記録1340が得られる。別の時点で第2刺激1360が印加され、第2刺激1360は、第1位相間ギャップとは異なる第2位相間ギャップを有する。第1位相間ギャップ及び第2位相間ギャップの両方が、絶対不応期内で維持されるべきであり、絶対不応期は、たとえば、内容が参照により本明細書に援用される、本出願人の国際公開第2012/155189号パンフレットの教示に従って測定することができる。図13A及び図13Bに示すように、刺激1310及び1360の各位相は同じであるため、それぞれの反応成分1320及び1370は同じであり、それぞれの反応成分1330及び1380は同じである。しかしながら、それぞれの反応成分の間の時間間隔は異なり、それにより、複合反応1340及び1390は異なり、したがって、第2陰極刺激のしるしがあるか検査することができる。たとえば、1つ若しくは複数のピーク振幅、1つ若しくは複数のピークピーク振幅、及び/又は1つ若しくは複数のピーク幅等のECAPパラメータを比較することにより、反応1340及び1390の異なる形態を検出することができる。こうした測定基準(又はそれらの組合せ)が異なる程度は、第2陰極刺激が発生している程度を示すものとして解釈することができ、さらにそれを使用して、たとえば、フィードバックループ利得を制御し、又はシステムがたとえば検出された第2陰極刺激にどれくらい迅速に反応するかを制御するようにオーバシュートを回避するようにPIDループ制御を支援することができる。
【0067】
本発明の実施形態による第2陰極刺激の存在を検出する多くの代替方式がある。たとえば、1つのこうした実施形態は、一組の刺激電極を利用し、電極のうちの1つのサブセットから第1刺激を送達し、第1刺激によって誘発される第1神経反応を測定することができる。そして、電極のうちの異なるサブセットから第2刺激を送達することができ、第2刺激によって誘発された第2神経反応を測定することができる。刺激電極の互いに対する位置が同じままであるとすれば、且つ陰極刺激に対する閾値が同じであると想定すると、第1神経反応及び第2神経反応の比較により、第2陰極刺激が存在するか否かの指示がもたらされる。
【0068】
図14は、第2陰極効果を除去するために刺激シーケンスの自動化された最適化をさらに提供する本発明のさらなる実施形態を示す。この検出方法は、第2陰極刺激の上述した望ましくない影響を回避するために刺激パラメータを最適化する手段を提供する。たとえば図5において教示したように三極刺激を利用する場合であっても、電極501及び/又は503に対する陰極刺激に対する閾値は、実行可能であるように、電極502の陰極刺激閾値よりも著しく低い可能性があることと、位相1において電極501及び503から送達される0.5単位の陰極励起が、こうした例では、第2又はさらには第3陰極刺激を生じさせる可能性があることが依然としてあり得る。したがって、こうした三極刺激構成を利用する場合であっても、第2陰極刺激の何らかの事例があるか監視することが依然として望ましい。したがって、図14の実施形態では、何らかの第2陰極効果の検出に基づき三極刺激を自動的に調整し、それにより、1つ又は複数の刺激パラメータを反復的に調整するプロセスが実施される。たとえば、三極刺激パターンでは、それぞれの陽極位相のパルス幅を拡張し、電流振幅を低減させることにより、刺激に対する閾値を増大させることができ(すなわち、電極501及び503による動員を低減させ好ましくは除去することができ)、これは、(1)両位相に対する合計時間が不応期よりも短く、(2)両位相において同じ電荷が送達されるとすれば、治療的に許容可能である。これらの制約内で、いかなる形態の第2陰極刺激も阻止するように刺激を調整することができる。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、たとえば、第2陰極効果を除去しようとして、陽極の数を増加させること、三極刺激から五極刺激にシフトするように刺激電極の数を3から5に増加させること、又はオフセット四極構成で3つの戻り電極とともに4つの刺激電極を使用すること、第2陰極刺激の除去が改善される場合、電極の間の電流の共有を不均一であるように調整すること、閾下成分をそれぞれの刺激閾値よりもさらに低く維持するより優れた能力を提供するように刺激位相の数を増加させること等、さらなるパラメータを変更することができる。
【0070】
図15は、上述した原理を利用する本発明の一実施形態によるフィードバック制御された神経刺激のシステムを概略的に示す。特に、制御ブロック1510は、パラメータAによって規定される電流共有比を制御するように構成されるとともに、前述において示した原理に従って多極モード選択及び多相モード選択を制御するようにも構成されている。
【0071】
図16は、本発明の別の実施形態による三相三極刺激構成を示す。この実施形態では、1624で示す、電極E2で送達される第2位相は、神経反応を引き出す唯一の陰極刺激成分であるように構成されている。これは、刺激成分1624が、刺激閾値、すなわち陰極刺激閾値1650を超える唯一の成分であるためである。刺激成分1624は、陰極快適レベル1662と称する、所望の治療効果を引き出す振幅に設定される。
【0072】
次いで、刺激の他の成分すべてを、刺激成分1624の振幅から導出することができる。具体的には、刺激成分1624の振幅をXとして定義した場合、電極E1及びE3によって送達される陽極刺激成分1614及び1634は、それぞれ、第2位相において100%電流戻りをもたらすために0.5Xの振幅をとるべきである。陽極刺激成分1614及び1634は、正味の陽極振幅が第2位相において100%電流戻りをもたらすためXに加わるとすれば、代替的な振幅(それぞれ、0.7及び0.3等)をとることができる。
【0073】
同様に、それぞれ第1位相及び第3位相において電極E2によって送達される陽極刺激成分1622及び1626は、3つの位相にわたって電極E2の電流平衡をもたらすために、各々、0.5Xの振幅をとるべきである。陽極刺激成分1622及び1626は、これらの成分の正味の陽極振幅が、3つの位相にわたって電極E2の電流平衡をもたらすためにXに加わるとすれば、代替的な振幅(それぞれ、0.7及び0.3等)をとることができる。
【0074】
最後に、第1位相において電極E1及びE3によってそれぞれ送達される陰極刺激成分1612及び1632は、第1位相において100%電流戻りをもたらすために、各々0.25Xの値をとるべきであり、又は少なくとも合計して0.5Xになるべきである。同様に、第3位相において電極E1及びE3によってそれぞれ送達される陰極刺激成分1616及び1636は、第3位相において100%電流戻りをもたらすために、各々0.25Xの値をとるべきであり、又はこれらの成分は、少なくとも合計して0.5Xになるべきである。さらなる制約は、単純に達成することができるように、電極E1の電流平衡をもたらすべきであり、電極E3の電流平衡をもたらすべきである、ということである。
【0075】
したがって、図16の実施形態は、他の任意の陰極刺激成分(1612、1616、1632、1636)よりも4倍大きい陰極刺激成分1624を提供し、したがって、他のすべての陰極刺激成分を閾値未満で維持しながら、治療目的で成分1624の振幅の著しい変動を可能にする。いずれの電極によって送達されるいかなる陽極刺激成分もそれぞれの陽極刺激閾値(1641、1642、1643)を超えないことがさらに留意される。したがって、図16の刺激構成は、要求に応じて単一の陰極神経励起を提供する。
【0076】
図16の例では、陽極閾値は、陰極閾値の大きさの2倍であるように示されているが、この関係は、本発明の範囲内で他の実施形態では異なり得ることが理解されるべきである。
【0077】
図17Aは、本発明の別の実施形態による四極刺激構成の単一位相における電極の極性を示し、図17Bは、本発明のさらなる実施形態による五極刺激構成の単一位相における電極の極性を示す。図16に関して詳細に記載した原理に従って、これらの多極構成は、より多くの戻り電極の間で共有される電流戻りを提供し、したがって、1つの刺激成分のみが神経動員を生じさせるのを確実にする方法で、二相又は多相刺激を構成するようにより大きい範囲を導入する。
【0078】
たとえば、図18は、本発明のさらに別の実施形態による三相四極刺激構成を示す。この構成により、第1位相及び第3位相において電極E1、E3及びE4によって送達される陰極刺激成分は、第2位相において電極E2によって送達される閾上刺激成分の振幅のわずかに1/6である振幅を有することができる。これにより、他のすべての刺激成分を閾値未満に維持しながら、単一の閾上刺激成分の振幅を選択するさらなる動作自由度が提供される。図17Bの五極構成を利用して、三相で1/8の振幅を提供することができ、一方で、さらに又は別法として、位相の数の増加を利用して、単一の閾上刺激成分の振幅を選択するさらなる動作自由度を提供することができる。
【0079】
当業者であれば、広義に記載したような本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、具体的な実施形態に示したような本発明に対して、多くの変形形態及び/又は変更形態を作成することができることが理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で、限定的又は制限的ではなく例示的であるものとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18