(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20240722BHJP
G21C 17/003 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
G01N29/265
G21C17/003 100
(21)【出願番号】P 2020120066
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌憲
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-012267(JP,A)
【文献】特開平09-243613(JP,A)
【文献】特開2005-337884(JP,A)
【文献】特開2012-122985(JP,A)
【文献】特開平09-015377(JP,A)
【文献】特開平04-069568(JP,A)
【文献】特開昭61-130867(JP,A)
【文献】特開昭62-245153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N29/00-G01N29/52
G21C17/00-G21C17/14
G01B17/00-G01B17/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象面と所定の隙間を隔てて配置される壁体とにより構成される狭隘部に配置され前記検査対象面を超音波探傷検査する非破壊検査装置であって、
前記壁体に配置された固定軌道に沿って移動可能に配置される本体部と、
前記固定軌道に対して垂直方向に延び前記本体部に配置された垂直軸と、
前記垂直軸に直交し前記垂直軸に沿って移動可能に配置された水平軸と、
前記水平軸に沿って移動可能に配置された超音波探触子と、を備え、
前記垂直軸は伸縮可能に構成されて
おり、
前記垂直軸は、前記本体部に固定されたガイド軸と、該ガイド軸に沿って移動可能に配置されたスライド軸と、前記ガイド軸及び前記スライド軸に配置され前記検査対象面に吸着可能な固定部材と、を備えている、
ことを特徴とする非破壊検査装置。
【請求項2】
前記固定部材は電磁石を備えている、
請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記電磁石を前記検査対象面に接近及び離反させる駆動手段を備えている、
請求項2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記スライド軸及び前記水平軸によりXYテーブルを構成し、前記XYテーブルの面内で前記超音波探触子を走査するように構成されている、
請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記水平軸の両端に配置され前記検査対象面に転動可能に構成された転動体を備える、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記水平軸は、前記転動体を前記検査対象面に接近及び離反させるアクチュエータと、前記アクチュエータと前記水平軸との間に配置された垂直方向の回転軸と、を備えている、
請求項5に記載の非破壊検査装置。
【請求項7】
前記検査対象面は原子炉圧力容器の胴部である、請求項1に記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査装置に関し、特に、検査対象面と所定の隙間を隔てて配置される壁体を備えた狭隘部に配置され前記検査対象面を超音波探傷検査するための非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子炉圧力容器は、特許文献1に記載されたように、複数の胴板を溶接することによって形成されており、縦方向及び周方向の溶接線が存在している。また、原子炉圧力容器の外周に保温壁が配置されており、保温壁の内面には溶接線に沿って縦方向及び周方向の固定軌道が配置されている。かかる原子炉圧力容器では、溶接線の超音波探傷検査が義務付けられており、固定軌道に沿って移動台車を移動させながら溶接線を超音波探傷検査していた。
【0003】
近年、供用年数が長くなり、高経年化した原子炉が増えている。かかる原子炉では、原子炉圧力容器の溶接線だけでなく、母材(胴板)についても超音波探傷検査することが望まれている。従前の検査装置は、溶接線を検査することを目的としているため、原子炉圧力容器の外壁面の全域を検査することができない。
【0004】
例えば、原子炉圧力容器の外壁面の全域を超音波探傷検査する方法として、特許文献2に記載されたような無軌道で移動可能な検査装置を使用することも考えられる。特許文献2に記載された検査装置は、本体と、回転可能な吸着パッドと、一対の反対側にある水平吸着パッドと、一対の反対側にある鉛直吸着パッドと、検査ツールと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58-108452号公報
【文献】特開2017-120256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された無軌道の検査装置を使用する場合には、遠隔操作される検査装置の絶対位置をどのように把握するかが重要であるところ、特許文献2には検査装置の絶対位置を取得する具体的な方法が開示されていない。
【0007】
検査装置の位置精度があいまいな場合、走査漏れがないように検査範囲をオーバーラップさせる必要があり、検査時間が増大することとなる。また、壁面を検査する際には、壁面への超音波の入射方向を変えるために、プローブを垂直方向及び水平方向に動かす必要があるところ、特許文献2に記載された検査装置では、その都度、吸着パッドを連携させて動かさなければならず非効率的である。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、固定軌道を利用しつつ検査対象面の全域を超音波探傷検査することができる非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、検査対象面と所定の隙間を隔てて配置される壁体とにより構成される狭隘部に配置され前記検査対象面を超音波探傷検査する非破壊検査装置であって、前記壁体に配置された固定軌道に沿って移動可能に配置される本体部と、前記固定軌道に対して垂直方向に延び前記本体部に配置された垂直軸と、前記垂直軸に直交し前記垂直軸に沿って移動可能に配置された水平軸と、前記水平軸に沿って移動可能に配置された超音波探触子と、を備え、前記垂直軸は伸縮可能に構成されており、前記垂直軸は、前記本体部に固定されたガイド軸と、該ガイド軸に沿って移動可能に配置されたスライド軸と、前記ガイド軸及び前記スライド軸に配置され前記検査対象面に吸着可能な固定部材と、を備えている、ことを特徴とする非破壊検査装置が提供される。
【0012】
また、前記固定部材は、例えば、電磁石であってもよい。
【0013】
さらに、前記固定部材は、前記電磁石を前記検査対象面に接近及び離反させる駆動手段を備えていてもよい。
【0014】
前記非破壊検査装置は、前記スライド軸及び前記水平軸によりXYテーブルを構成し、前記XYテーブルの面内で前記超音波探触子を走査するように構成されていてもよい。
【0015】
前記非破壊検査装置は、前記水平軸の両端に配置され前記検査対象面に転動可能に構成された転動体を備えていてもよい。
【0016】
また、前記水平軸は、前記転動体を前記検査対象面に接近及び離反させるアクチュエータと、前記アクチュエータと前記水平軸との間に配置された垂直方向の回転軸と、を備えていてもよい。
【0017】
前記検査対象面は、例えば、原子炉圧力容器の胴部であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係る非破壊検査装置によれば、固定軌道を利用していることから検査装置の絶対位置を容易に把握することができる。また、非破壊検査装置の垂直軸を伸縮可能に構成したことにより、容易に検査対象面の全域を超音波探傷検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る非破壊検査装置の概念図を示している。
【
図2】垂直軸を短縮した状態の非破壊検査装置を示す斜視図である。
【
図3】垂直軸を延伸した状態の非破壊検査装置を示す斜視図である。
【
図4】水平軸及び垂直軸の一部を示す背面斜視図である。
【
図5】非破壊検査装置を狭隘部に配置した状態を示す上面図である。
【
図6】垂直軸を短縮した状態の非破壊検査装置を示す正面図である。
【
図7】垂直軸を延伸した状態の非破壊検査装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について
図1~
図7を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る非破壊検査装置の概念図を示している。
図2は、垂直軸を短縮した状態の非破壊検査装置を示す斜視図である。
図3は、垂直軸を延伸した状態の非破壊検査装置を示す斜視図である。
図4は、水平軸及び垂直軸の一部を示す背面斜視図である。
図5は、非破壊検査装置を狭隘部に配置した状態を示す上面図である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る非破壊検査装置1は、
図1~
図5に示したように、検査対象面Tと所定の隙間を隔てて配置される壁体Wとにより構成される狭隘部Nに配置され検査対象面Tを超音波探傷検査する非破壊検査装置であって、壁体Wに配置された固定軌道Rに沿って移動可能に配置される本体部2と、固定軌道Rに対して垂直方向に延び本体部2に配置された垂直軸3と、垂直軸3に直交し垂直軸3に沿って移動可能に配置された水平軸4と、水平軸4に沿って移動可能に配置された超音波探触子5と、を備え、垂直軸3は伸縮可能に構成されている。
【0022】
検査対象面Tは、例えば、原子炉圧力容器の胴部である。原子炉圧力容器の胴部は、複数の胴板Bを溶接で繋ぎ合わせた円筒形状を有している。したがって、原子炉圧力容器の胴部には、縦方向及び周方向の溶接線Lが形成される。
【0023】
壁体Wは、例えば、原子炉圧力容器の周面から100~300mm程度の隙間を空けて配置された保温壁である。壁体Wの内面には、周方向の溶接線Lに沿って固定軌道Rが配置されている。固定軌道Rは、例えば、壁体Wの内面に固定された軌道本体と、軌道本体の表面に配置されたラックと、を備えている。
【0024】
本実施形態に係る非破壊検査装置1は、例えば、
図1に一点鎖線で示した位置に配置した状態で、検査対象面Tのうち灰色に塗り潰した部分の領域の全面を超音波探傷検査するように構成されている。なお、説明の便宜上、灰色に塗り潰した領域のうち、点線より下の領域を第一検査領域A1と定義し、点線より上の領域を第二検査領域A2と定義する。
【0025】
なお、検査対象面Tは、原子炉圧力容器の胴部に限定されるものではない。また、検査対象面Tは、円筒面形状に限定されるものではなく、平面形状であってもよい。また、狭隘部Nの隙間は、上述した数値に限定されるものではない。
【0026】
本体部2は、固定軌道Rに係止されて駆動する移動機構(図示せず)と、垂直軸3、水平軸4、超音波探触子5、移動機構等を制御する制御機器(図示せず)と、を備えている。本体部2は、例えば、
図2及び
図3に示したように、薄い箱型形状の筐体を有し、筐体内に制御機器、移動機構の駆動手段、バッテリー等が内蔵されている。筐体には、作業員が把持するためのハンドルが配置されていてもよい。
【0027】
移動機構は、例えば、固定軌道Rの軌道本体に沿って転動可能な車輪(図示せず)と、ラックと噛み合って回転するピニオンと、ピニオンを回転させる駆動モータと、を備えている。ピニオンの回転軸系統にはエンコーダが配置されている。また、移動機構は、ラックに空いた穴の有無を検出可能な近接センサ等を備えており、穴の位置とエンコーダの値から本体部の位置を正確に算出することができる。かかる移動機構は、筐体の背面に配置されているが、従来の検査装置と同様の構造を適宜選択して採用することができる。
【0028】
垂直軸3は、例えば、
図2及び
図3に示したように、本体部2に固定されたガイド軸31と、ガイド軸31に沿って移動可能に配置されたスライド軸32と、を備えている。図示しないが、非破壊検査装置1は、壁体Wに形成されたプラグと呼ばれる開口部から狭隘部Nに搬出入される。したがって、ガイド軸31及びスライド軸32の長さは、この開口部を通過可能な範囲に設定される。
【0029】
ガイド軸31は、スライド軸32の移動を案内可能かつスライド軸32を支持可能に構成されていればよい。また、ガイド軸31と本体部2との接続部には、構造物の歪みを吸収する歪み吸収機構が配置されていてもよい。
【0030】
スライド軸32は、例えば、ガイド軸31に配置された直動式アクチュエータによって長手方向に移動可能に構成されている。スライド軸32は、短縮時に第一検査領域A1の縦方向長さ(高さ)をカバーし、延伸時に第二検査領域A2の縦方向長さ(高さ)をカバーするように伸縮される。
【0031】
なお、スライド軸32の駆動機構は、直動式アクチュエータに限定されるものではなく、ボールねじ機構等の他の機構であってもよい。また、ガイド軸31には、スライド軸32の移動距離を算出するエンコーダが配置されていてもよい。
【0032】
また、ガイド軸31及びスライド軸32には、検査対象面Tに吸着可能な固定部材33が配置されている。固定部材33は、例えば、ガイド軸31の先端部及びスライド軸32の先端部に配置される。かかる固定部材33を配置することにより、垂直軸3の振動や検査対象面Tからの離隔を抑制することができる。また、検査対象面Tが湾曲している場合には、固定部材33は湾曲面に沿って吸着することができるように構成される。
【0033】
固定部材33は、例えば、電磁石33aと、検査対象面Tに向かって電磁石33aを接近又は離反させる駆動手段33bと、を備えている。固定部材33に電磁石33aを採用することにより、吸着力の有無を制御することができ、必要なタイミングで固定部材33を検査対象面Tに吸着させることができる。駆動手段33bは、例えば、エアシリンダ等の直動式アクチュエータである。なお、固定部材33は、電磁石33aに限定されるものではなく、例えば、バキューム式の吸盤等であってもよい。
【0034】
水平軸4は、例えば、スライド軸32に配置された直動式アクチュエータによってスライド軸32の長手方向に移動可能に構成されている。なお、水平軸4の駆動機構は、直動式アクチュエータに限定されるものではなく、リニアガイド機構やボールねじ機構等の他の機構であってもよい。また、スライド軸32と水平軸4との接続部には、構造物の歪み吸収する歪み吸収機構が配置されていてもよい。また、スライド軸32には、水平軸4の移動距離を算出するエンコーダが配置されている。
【0035】
また、水平軸4は、両端に配置され検査対象面Tに転動可能に構成された転動体41を備えていてもよい。また、水平軸4は、
図4に示したように、固定部材33によりガイド軸31が固定された際、水平軸4をスライド軸32に対して原子力圧力容器の半径方向に移動させて検査対象面Tに接近又は離反させるアクチュエータ42を備えていてもよい。かかるアクチュエータ42により、転動体41は検査対象面Tに押し付けられる。転動体41は、この押し付け時に生じる反力を支持するとともに、超音波探傷子5と検査対象面Tの距離を一定に保持する。また、転動体41は、反力を支持した状態でスライド軸を可動させた際における抵抗が少なくなるように、例えば、ボールプランジャ等により構成される。
【0036】
また、
図4に示したように、原子力圧力容器の歪みによりアクチュエータ42が可動した際、二つの転動体41の両方が検査対象面Tに接するように水平軸4とアクチュエータ42との間には自由回転可能に構成された回転軸43が配置されていてもよい。かかる回転軸43の軸心は、スライド軸32と平行、すなわち、垂直方向に配置される。
【0037】
超音波探触子5は、例えば、水平軸4に配置された直動式アクチュエータによって水平軸4の長手方向に移動可能に構成されたスライダ51に配置されている。なお、スライダ51の駆動機構は、直動式アクチュエータに限定されるものではなく、リニアガイド機構やボールねじ機構等の他の機構であってもよい。また、水平軸4には、スライダ51の移動距離を算出するエンコーダが配置されている。
【0038】
超音波探触子5は、スライダ51に内蔵されたエアシリンダにより検査対象面Tに押し付けることができるように構成されている。超音波探触子5とエアシリンダとの接続部にはジンバル等の構造物の歪み吸収する歪み吸収機構が配置されていてもよい。
【0039】
上述した非破壊検査装置1は、スライド軸32及び水平軸4によりXYテーブルを構成し、XYテーブルの面内で超音波探触子5を走査するように構成されている。ここで、
図6は、垂直軸を短縮した状態の非破壊検査装置を示す正面図である。
図7は、垂直軸を延伸した状態の非破壊検査装置を示す正面図である。
【0040】
第一検査領域A1を超音波探傷検査する場合には、
図6に示したように、スライド軸32を短縮した状態に設定する。例えば、
図6に一点鎖線の細線で示したように、水平軸4を下端側にセットした状態で超音波探触子5を水平軸4の右端から左端まで移動させる。次に、水平軸4をスライド軸32に沿って探触子一つ分だけ移動させた状態で、超音波探触子5を水平軸4の左端から右端まで移動させる。この処理を繰り返すことにより、XYテーブル面の全域に渡って超音波探触子5を走査させることができる。
【0041】
また、
図6に二点鎖線の細線で示したように、超音波探触子5を水平軸4の右端にセットした状態(初期状態)で水平軸4をスライド軸32に沿って上方に移動させる。次に、超音波探触子5を初期状態から図の左方向に探触子一つ分の幅だけ移動した状態で水平軸4をスライド軸32に沿って下方に移動させる。この処理を繰り返すことにより、XYテーブル面の全域に渡って超音波探触子5を走査させることができる。
【0042】
XYテーブル面内の超音波探傷検査が終了した後、本体部2を固定軌道Rに沿って水平軸4の長さ分だけ移動させ、隣接する領域を同様の処理により超音波探傷検査する。上述したように、本体部2のピニオンにはエンコーダが配置されていることから、本体部2の位置を正確に把握することができる。したがって、超音波探傷検査時にオーバーラップさせる領域を最小限に設定することができ、検査時間を削減することができる。
【0043】
第二検査領域A2を超音波探傷検査する場合には、
図7に示したように、スライド軸32を延伸した状態に設定する。スライド軸32を延伸する際には、最初に、スライド軸32の固定部材33(電磁石33a)の吸着状態を解除し、駆動手段33bを短縮することにより電磁石33aを検査対象面Tから引き離す。次に、ガイド軸31の固定部材33(電磁石33a)を検査対象面Tに吸着させたまま、ガイド軸31の固定部材33のアクチュエータ33bを延伸させることによりスライド軸32を検査対象面Tから離し、スライド軸32を延伸させる。スライド軸32の延伸後、ガイド軸31及びスライド軸32の固定部材33のアクチュエータ33bをそれぞれ延伸し、両方の固定部材33(電磁石33a)を検査対象面Tに吸着させる。
【0044】
そして、上述した第一検査領域A1と同様に、水平軸4及び超音波探触子5を移動させながら、一点鎖線及び二点鎖線の細線で示したように超音波探触子5を走査させる。かかる処理により、XYテーブル面の全域に渡って超音波探触子5を走査させることができる。
【0045】
XYテーブル面内の超音波探傷検査が終了した後、第一検査領域A1の場合と同様に、本体部2を固定軌道Rに沿って水平軸4の長さ分だけ移動させた後、隣接する領域を超音波探傷検査する。
【0046】
検査対象面Tの全域を超音波探傷検査する場合には、例えば、第一検査領域A1の全周を超音波探傷検査した後、スライド軸32を延伸し、第二検査領域A2の全周を超音波探傷検査するようにすればよい。また、第一検査領域A1の水平軸4の幅分だけ超音波探傷検査した後、スライド軸32を延伸し、第二検査領域A2の水平軸4の幅分だけ超音波探傷検査した後、本体部2を周方向に移動させるようにしてもよい。
【0047】
また、
図6及び
図7では本体部2より上方の範囲を検査対象としているが、本体部2に対するガイド軸31の取り付けを上下反転させて取り付ける等することにより、本体部2よりも下方の範囲を同様に検査範囲とすることもできる。
【0048】
上述した本実施形態に係る非破壊検査装置1によれば、固定軌道Rを利用していることから検査装置の絶対位置を容易に把握することができる。また、非破壊検査装置1の垂直軸3を伸縮可能に構成したことにより、容易に検査対象面Tの全域を超音波探傷検査することができる。
【0049】
上述した実施形態では、スライド軸32を短縮状態と延伸状態の二段階に伸縮させる場合について説明しているが、検査対象面Tの構造によっては、スライド軸32を任意の位置で停止させるようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態ではスライド軸32は一つであるが、搬出入用の開口部が小さい場合には、複数のスライド軸32を段階的に配置して、スライド軸32を複数回に渡って延伸可能に構成してもよい。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 非破壊検査装置
2 本体部
3 垂直軸
4 水平軸
5 超音波探触子
31 ガイド軸
32 スライド軸
33 固定部材
33a 電磁石
33b 駆動手段
41 転動体
42 アクチュエータ
43 回転軸
51 スライダ
T 検査対象面
N 狭隘部
W 壁体
R 固定軌道
B 胴板
L 溶接線
A1 第一検査領域
A2 第二検査領域