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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】針先プロテクタとそれを用いた針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
A61M5/158 500H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021539289
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030480
(87)【国際公開番号】W WO2021029393
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019147724
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019160609
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019195623
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020007050
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020041999
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石倉 弘三
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209304(WO,A1)
【文献】特開2000-335177(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040718(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0028154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、
前記周壁は先端側に筒状部を有し、
該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、
該厚肉部の外面に凹所が設けられており、
前記注入ゲート跡が該凹所の内面に設けられている針先プロテクタ。
【請求項2】
前記凹所の深さ寸法が前記周壁の先端側に向かって次第に小さくなっている請求項に記載の針先プロテクタ。
【請求項3】
前記凹所の開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされている請求項1又は2に記載の針先プロテクタ。
【請求項4】
前記凹所の底壁は、筒状部より厚肉とされている請求項1~3の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項5】
穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、
前記周壁は先端側に筒状部を有し、
該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、
周壁が光の透過を許容する透明乃至は半透明とされていると共に、前記注入ゲート跡における該周壁の透光性が該周壁の他の部分よりも低くなっている針先プロテクタ。
【請求項6】
前記周壁には前記筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚が大きな部分を含み且つ外寸が大きくされた拡開部があり、前記注入ゲート跡が該拡開部の外面に設けられている請求項1~5の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項7】
前記注入ゲート跡が、前記穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係合される係合部を外れた位置に設けられている請求項1~の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項8】
前記周壁が前記穿刺針の前記針先を覆った状態において該穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係止されて該針先の再露出を阻止する係止片が設けられており、前記注入ゲート跡が該係止片を外れた位置に設けられている請求項1~の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項9】
前記周壁の外面は、軸直角方向の割型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有している請求項1~の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項10】
前記周壁の外面は、軸方向の抜型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有していない請求項1~の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項11】
前記注入ゲート跡が前記周壁の周方向で複数設けられている請求項1~10の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項12】
前記周壁の少なくとも基端部における軸直角方向の外寸が周方向において異ならされており、
外寸が大きい幅広部において、前記穿刺針の基端部に固定される針ハブに係合される係合部と、該針ハブに係止されて前記針先の再突出を阻止する係止片との少なくとも一方が設けられていると共に、
外寸が小さい幅狭部に前記注入ゲート跡が設けられている請求項1~11の何れか1項に記載の針先プロテクタ。
【請求項13】
穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、
前記針先プロテクタが該穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、
該周壁は先端側に筒状部を有し、
該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、
該厚肉部の外面に凹所が設けられている針先プロテクタとされており、
該針先プロテクタの厚肉部の外面の少なくとも一部が患者の皮膚と接触する接触部とされて、該接触部には凹所が開口している針組立体。
【請求項14】
前記接触部が前記穿刺用針体の留置に際して患者の皮膚と接触する請求項13に記載の針組立体。
【請求項15】
前記注入ゲート跡が前記接触部を外れた位置に設けられている請求項13又は14に記載の針組立体。
【請求項16】
前記針先プロテクタの前記厚肉部の外面には、前記接触部と該接触部に対して径方向の反対側に位置する部分との何れか一方に突出ピン跡が設けられている請求項1315の何れか1項に記載の針組立体。
【請求項17】
穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、
前記針先プロテクタが請求項6に記載の針先プロテクタとされており、
前記拡開部は幅狭部と該幅狭部よりも外寸が大きい幅広部とを備え、前記注入ゲート跡が該幅広部側に設けられていると共に、
該針先プロテクタは、前記穿刺針の基端に固定された針ハブに設けられた係合腕と着脱可能に係合される係合部を該幅広部に備えている針組立体。
【請求項18】
前記注入ゲート跡は前記係合部の基端側に設けられている請求項17に記載の針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(発明A)は、抜去された穿刺針の針先を覆う針先プロテクタと、針先プロテクタを備える針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析などを行う際に用いられる留置針などの穿刺用針体の使用後の誤穿刺や頻回使用の防止、或いは、廃棄処理の容易化などの目的で、体内管腔から抜去された穿刺針の針先を保護する針先プロテクタが採用されている。針先プロテクタ及びそれを備える針組立体としては、例えば、特開2017-196060号公報(特許文献1)に開示されている。即ち、特許文献1のプロテクタ付き医療用針によれば、針管を血管等から引き抜く際に、プロテクタが針管に対して針先側へ移動し、患者から抜去された針管がプロテクタの内周へ収容されて、針管の針先が外部に露出しないようにされる。
【0003】
ところで、針先プロテクタは、樹脂によって形成される場合があり、この場合には、例えば射出成形などの型成形によって製造される。即ち、針先プロテクタの形状に対応する金型のキャビティに樹脂材料を充填して硬化させることにより、所定形状の針先プロテクタが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-196060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、針先プロテクタは、穿刺針の周囲を囲んで覆う比較的に薄肉の周壁を有しており、針先プロテクタを型成形によって形成しようとすると、圧力損失による樹脂材料の充填不良などが問題になる場合があった。また、医療従事者の使用方法や使用される患者側の視点に立つと、改良の余地があった。
【0006】
発明Aの解決課題は、安全性が高く、射出成形などの樹脂の型成形によって安定して製造することが可能な、新規な針先プロテクタを提供することにある。
【0007】
また、発明Aは、穿刺用針体を構成する穿刺針の針先を保護する針先プロテクタとして上記の針先プロテクタを備える針組立体を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、発明Aを把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、発明Aでは、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
発明Aの第1の態様は、穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、前記周壁は先端側に筒状部を有し、該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、該厚肉部の外面に凹所が設けられており、前記注入ゲート跡が該凹所の内面に設けられているものである。
【0010】
本態様の針先プロテクタには、成形に際して、周壁の厚肉部を成形する部分に樹脂材料の注入ゲートが設定されて、金型のキャビティにおいて断面積の大きい部分から小さい部分へ向かって樹脂材料が充填される。それ故、キャビティに樹脂材料を充填する際に、キャビティの断面積の変化による圧力損失が生じ難く、樹脂材料の充填不良を回避することができて、所定形状の針先プロテクタを安定して得ることができる。また、厚肉部が過度に厚肉になるのを防ぐことができる。その結果、厚肉部に気泡が混入する、ヒケやボイドが発生するなどの不具合を回避することができる。例えば、厚肉部の内面と外面の形状が異なっているなどして、厚肉部の厚さが一定ではない場合には、厚肉部において特に厚肉となる部分の外面に凹所を設けることができる。その結果、厚肉部が部分的に著しく厚肉となるのを防ぐことができる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
さらに、例えば注入ゲート跡が突起状となる場合などに、注入ゲート跡が凹所の内面に設けられることによって厚肉部の外面よりも外側へ突出し難くなる。これにより、厚肉部が患者の皮膚などに接する場合に、注入ゲート跡が引っ掛かって痛みを与えるなどの問題が生じ難い。
【0015】
なお、凹所の形成部分では周壁の厚さが減少するが、厚さ寸法が大きな部分を含む厚肉部に凹所を形成すれば、凹所の形成部分において周壁が過度に薄肉となるのを防ぐことができる。それ故、凹所の内面に注入ゲート跡を設けて、注入ゲート跡の患者などへの接触を回避する効果を得る場合にも、成形時には樹脂材料の充填不良を有効に防いで、所定形状の針先プロテクタを安定して製造することが可能となる。
【0016】
発明Aの第の態様は、発明Aの第の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記凹所の深さ寸法が前記周壁の先端側に向かって次第に小さくなっているものである。
【0017】
本態様の針先プロテクタによれば、例えば凹所の内面に注入ゲート跡が設けられるように注入ゲートの位置が設定されている場合に、成形時の樹脂材料の充填圧力ひいては成形時の樹脂密度の急変を避けて、針先プロテクタの強度の確保とヒケ等の成形不良の防止が図られ得る。
【0018】
発明Aの第の態様は、発明Aの第1又は第2の態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記凹所の開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされているものである。
【0019】
本態様の針先プロテクタによれば、凹所の開口端縁部が患者の皮膚に触れる場合に、患者に痛みや違和感を与え難い。また、凹所の開口端縁部が角のない形状とされることによって、凹所の開口端縁部が欠けるなどの不具合も生じ難い。
発明Aの第4の態様は、発明Aの第1~第3の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記凹所の底壁は、筒状部より厚肉とされているものである。
発明Aの第5の態様は、穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、前記周壁は先端側に筒状部を有し、該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、該周壁が光の透過を許容する透明乃至は半透明とされていると共に、前記注入ゲート跡における該周壁の透光性が該周壁の他の部分よりも低くなっているものである
本態様の針先プロテクタには、成形に際して、周壁の厚肉部を成形する部分に樹脂材料の注入ゲートが設定されて、金型のキャビティにおいて断面積の大きい部分から小さい部分へ向かって樹脂材料が充填される。それ故、キャビティに樹脂材料を充填する際に、キャビティの断面積の変化による圧力損失が生じ難く、樹脂材料の充填不良を回避することができて、所定形状の針先プロテクタを安定して得ることができる。また、透光性の違いによって注入ゲート跡を目視で容易に確認できることから、注入ゲート跡を目印として針先プロテクタの向きなどを簡単に把握することができる。
【0020】
発明Aの第6の態様は、発明Aの第1~第5の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記周壁には前記筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚が大きな部分を含み且つ外寸が大きくされた拡開部があり、前記注入ゲート跡が該拡開部の外面に設けられているものである。
【0021】
本態様の針先プロテクタによれば、外径が大きくされた拡開部において注入ゲート跡が設定される厚肉部が設けられることにより、拡開部を含む周壁の内径が厚肉部において著しく小さくなるのを防ぐことが可能となる。
【0022】
【0023】
【0024】
発明Aの第の態様は、発明Aの第1~第の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記注入ゲート跡が、前記穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係合される係合部を外れた位置に設けられているものである。
【0025】
本態様の針先プロテクタによれば、係合部の形成によって形状が複雑になったり、断面積が小さくなったりする部分を外れた位置に注入ゲートが設定されることにより、成形不良をより有利に回避することができる。
【0026】
発明Aの第の態様は、発明Aの第1~第の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記周壁が前記穿刺針の前記針先を覆った状態において該穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係止されて該針先の再露出を阻止する係止片が設けられており、前記注入ゲート跡が該係止片を外れた位置に設けられているものである。
【0027】
本態様の針先プロテクタによれば、周壁において係止片を外れた部分を厚肉部とすれば、周壁において係止片が設けられた部分を比較的に薄肉とすることができる。その結果、係止片に気泡が混入したり、ヒケやボイドが発生することを抑止できる。また、係止片の形成によって形状が複雑になったり、断面積が小さくなったりする部分を外れた位置に注入ゲートが設定されることにより、成形不良をより有利に回避することができる。
【0028】
発明Aの第の態様は、発明Aの第1~第の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記周壁の外面は、軸直角方向の割型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有しているものである。
【0029】
本態様の針先プロテクタによれば、周壁の外面において大きな形状自由度を実現することができる。注入ゲート跡が周壁の外面に形成されるように樹脂材料の注入ゲート位置を設定すれば、軸直角方向で割型を取り外す際にランナーが引張切断されるピンゲートを採用することができて、複数の針先プロテクタを省スペースで同時に成形し易くなり、針先プロテクタの量産性の向上が図られ得る。
【0030】
発明Aの第10の態様は、発明Aの第1~第の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記周壁の外面は、軸方向の抜型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有していないものである。
【0031】
本態様の針先プロテクタは、注入ゲート跡が周壁の外面に形成されるように樹脂材料の注入ゲート位置を設定すれば、軸方向で抜型を取り外す際にランナーが抜き型によって切断されるトンネルゲートを採用することができる。それ故、比較的少ない形成材料によって針先プロテクタを製造することができる。
【0032】
発明Aの第11の態様は、発明Aの第1~第10の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記注入ゲート跡が前記周壁の周方向で複数設けられているものである。
【0033】
本態様の針先プロテクタによれば、成形時に金型のキャビティに対して周方向の複数箇所から樹脂材料を充填することにより、樹脂材料の充填不良がより生じ難くなる。
【0034】
発明Aの第12の態様は、発明Aの第1~第11の何れか1つの態様に記載された針先プロテクタにおいて、前記周壁の少なくとも基端部における軸直角方向の外寸が周方向において異ならされており、外寸が大きい幅広部において、前記穿刺針の基端部に固定される針ハブに係合される係合部と、該針ハブに係止されて前記針先の再突出を阻止する係止片との少なくとも一方が設けられていると共に、外寸が小さい幅狭部に前記注入ゲート跡が設けられているものである。
【0035】
本態様の針先プロテクタによれば、軸直角方向の外寸が大きい幅広部では、係合部と係止部の少なくとも一方を配するスペースが確保し易い。軸直角方向の外寸が小さい幅狭部は、係合部と係止部の少なくとも一方が配される幅広部よりも厚肉とし易く、成形時に樹脂材料の充填を効率的に実現することができる。
【0036】
【0037】
【0038】
発明Aの第13の態様は、穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、前記針先プロテクタが該穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、該周壁は先端側に筒状部を有し、該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられており、該厚肉部の外面に凹所が設けられている針先プロテクタとされており、該針先プロテクタの厚肉部の外面の少なくとも一部が患者の皮膚と接触する接触部とされて、該接触部には凹所が開口しているものである。
【0039】
本態様の針組立体によれば、針先プロテクタの接触部に凹所が設けられることにより、患者の体表面と接する接触部の面積が小さくされて、接触部の接触による痛みや違和感が低減される。
【0040】
発明Aの第14の態様は、発明Aの第13の態様に記載された針組立体において、前記接触部が前記穿刺用針体の留置に際して患者の皮膚と接触するものである。
【0041】
本態様の針組立体によれば、穿刺用針体としての留置針を留置する際に患者と接触する接触部に凹所が設けられて、接触部の患者への接触面積が小さくされることにより、留置時に接触部の接触によって患者に与える痛みや違和感が低減される。
【0042】
発明Aの第15の態様は、発明Aの第13又は第14の態様に記載された針組立体において、前記注入ゲート跡が前記接触部を外れた位置に設けられているものである。
【0043】
本態様の針組立体によれば、注入ゲート跡の患者への接触が回避されることで、針先プロテクタが患者に接触しても患者に痛みや違和感を与え難い。
【0044】
発明Aの第16の態様は、発明Aの第13~第15の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記針先プロテクタの前記厚肉部の外面には、前記接触部と該接触部に対して径方向の反対側に位置する部分との何れか一方に突出ピン跡が設けられているものである。
【0045】
本態様の針組立体によれば、成形品を金型から取り外すために用いられる金型の突出ピンによって形成される突出ピン跡が、針先プロテクタの厚肉部の外面における接触部又は接触部と径方向反対側の何れか一方に位置して設定される。これにより、針先プロテクタにおける接触部の向きを、突出ピン跡を目印として把握することができる。
【0046】
発明Aの第17の態様は、穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、前記針先プロテクタが第6の態様に記載の針先プロテクタとされており、前記拡開部は幅狭部と該幅狭部よりも外寸が大きい幅広部とを備え、前記注入ゲート跡が該幅広部側に設けられていると共に、該針先プロテクタは、前記穿刺針の基端に固定された針ハブに設けられた係合腕と着脱可能に係合される係合部を該幅広部に備えているものである。
【0047】
本態様の針組立体によれば、注入ゲート(注入ゲート跡)が幅広部に設けられることで、係合部にウェルドラインを発生させ難くすることができる。その結果、針先プロテクタの係合部の強度が高くなり、針ハブの係合腕を針先プロテクタに対してより強固に係合させることができる。それ故、針ハブと針先プロテクタの意図しない分離等が回避されて、針先保護機構の誤作動が防止され得る。また、例えば係合部が外力によって破壊されて、針先保護機構が正常に機能しなくなる等の不具合等も防止され得る。
【0048】
17の態様において、注入ゲート跡は係合部の基端側に設けられていることが好ましい。係合部は針先プロテクタの基端部に設けられることが多く、針先プロテクタの基端部の強度が低下しやすいため、より強度が求められる。したがって、このように構成することで係合部の基端側にウェルドラインを発生しにくくすることができる。その結果、係合部の強度が高くなり、安全性がより向上する。
【発明の効果】
【0049】
発明Aによれば、安全性が高く、射出成形などの樹脂の型成形によって針先プロテクタを安定して形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】発明Aの第1の実施形態としての針組立体を示す平面図
図2図1に示す針組立体の底面図
図3図1に示す針組立体の正面図
図4図3のIV-IV断面図
図5図1のV-V断面図
図6図1に示す針組立体を構成する針先プロテクタの斜視図
図7図6に示す針先プロテクタの右側面図
図8図6に示す針先プロテクタの製造工程を説明する縦断面図
図9図1に示す針組立体において針先プロテクタによる針先の保護状態を示す縦断面図
図10】発明Aの第2の実施形態としての針組立体の要部を示す縦断面図
図11】発明Aの別の1実施形態としての針先プロテクタの製造工程を説明する縦断面図
図12】発明Aの別の1実施形態としての針先プロテクタの斜視図
図13】発明Aの別の1実施形態としての針先プロテクタの斜視図
図14】発明Aの別の1実施形態としての針先プロテクタの斜視図
図15】発明Bの第1の実施形態としての穿刺用針体を備えた針組立体の平面図
図16図15に示す針組立体の正面図
図17図16のXVII-XVII断面図
図18図15のXVIII-XVIII断面図
図19図15に示す針組立体において針先プロテクタによる針先の保護状態を示す縦断面図
図20】発明Bの第2の実施形態としての穿刺用針体の縦断面図
図21】発明Cの第1の実施形態としての針組立体を示す平面図
図22図21に示す針組立体の正面図
図23図22のXXIII-XXIII断面図
図24図23の要部を拡大して示す図
図25図21のXXV-XXV断面図
図26図21に示す針組立体を構成する針先プロテクタの斜視図
図27図26に示す針先プロテクタの右側面図
図28図25に示す針組立体において、針ハブを針先プロテクタに対して基端側へ引き抜く途中の状態を示す断面図であって、留置針の傾動が当接部で制限されている状態を示す図
図29図25に示す針組立体において、穿刺針の針先が針先プロテクタの先端と一致する位置まで針ハブを基端側へ引き抜いた状態を示す断面図であって、留置針の傾動が当接部で制限されている状態を示す図
図30図21に示された針組立体を針先の保護状態で示す断面図であって、図34に対応する図
図31図30の要部を拡大して示す断面図
図32】発明Cの別の一実施形態としての針先プロテクタを備える針組立体の要部を、針先の保護状態で示す断面図であって、図31に対応する図
図33】発明Dの第1の実施形態としての針先プロテクタ付きの針組立体を示す平面図
図34図33に示す針先プロテクタ付きの針組立体の正面図
図35図33のXXXV-XXXV断面図
図36図35のXXXVI-XXXVI断面図
図37図33に示す針先プロテクタ付きの針組立体を構成する針ハブの第2部品の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、発明Aの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図1~5には、発明Aの第1の実施形態としての針先プロテクタA-10を備える針組立体A-12が示されている。針組立体A-12は、針先プロテクタA-10に対して穿刺用針体A-14が針軸方向で移動可能に挿通された構造を有している。以下の説明において、特に説明がない限り、先端側とは穿刺用針体A-14の後述する針先A-20側である図1中の左方を、基端側とは穿刺用針体A-14の穿刺方向後方となる図1中の右方を、それぞれ言う。また、原則として、上下方向とは縦方向である図3中の上下方向を、左右方向とは横方向である図1中の上下方向を、それぞれ言う。なお、発明Aに係る図1図14では、見易さのために、各符号「A-○○」(○○は部位に対応する数字)において、「A-」の記載を省略した。また、図1図14が発明Aに係る図面であることを分かり易くするために、図1図14中に[発明A]と記載した。
【0053】
より詳細には、穿刺用針体A-14は、穿刺針A-16と針ハブA-18を備えている。穿刺針A-16は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されており、一端が鋭利な先細形状を有する針先A-20とされている。穿刺針A-16の先端部分には貫通孔A-22が形成されており、血液が穿刺針A-16の内腔に流入し易くなっている。
【0054】
針ハブA-18は、全体として略円筒形状とされており、先端部分に穿刺針A-16の基端部分が挿入状態で固定されている。これにより、針ハブA-18の内腔と穿刺針A-16の内腔が針軸方向で連通されている。針ハブA-18は、先端部分を構成する針支持部A-24と、基端部分を構成するプロテクタ連結部A-26とを備えている。
【0055】
針支持部A-24は、略円筒形状とされており、例えば硬質の樹脂により形成されている。針支持部A-24の先端部分における内径寸法は、穿刺針A-16の外径寸法と略同じとされている。針支持部A-24の先端部分の内周面には、内周側へ向けて突出する環状の位置決め突部A-28が設けられている。そして、針支持部A-24の先端側の開口から穿刺針A-16の基端部分が挿入されて、穿刺針A-16の基端と位置決め突部A-28とが相互に当接することによって、穿刺針A-16が針ハブA-18に対して針軸方向(図1中の左右方向)で位置決めされている。なお、穿刺針A-16と針支持部A-24は、必要に応じて接着等されていても良い。
【0056】
針支持部A-24は、針軸方向の中間部分の外周面が、先端側に向かって次第に大径となるテーパ状面A-30とされている。これにより、針支持部A-24は、テーパ状面A-30を有する針軸方向の中間部分が、先端部分及び基端部分よりも小径とされた小径筒部A-32とされている。
【0057】
針支持部A-24におけるテーパ状面A-30よりも先端部分には、外周面に開口する係止凹部A-34が形成されている。係止凹部A-34は、全周に亘って略一定の断面形状で連続する環状とされている。係止凹部A-34の形成箇所における針支持部A-24の最小外径寸法は、小径筒部A-32の最小外径寸法である基端の外径寸法と略同じとされている。
【0058】
針支持部A-24における係止凹部A-34よりも先端側には、環状の大径支点部A-36が外周面に突出している。大径支点部A-36は、針支持部A-24の先端乃至は先端に近い位置に設けられており、本実施形態では針支持部A-24の先端部を構成している。大径支点部A-36の形成部分における針支持部A-24の外径寸法は、小径筒部A-32の最大外径寸法である先端の外径寸法よりも大きくされている。
【0059】
係止凹部A-34の内面を構成する基端側面は、軸直角方向に広がる環状の基端側規制面A-38とされており、係止凹部A-34の底面とテーパ状面A-30とが基端側規制面A-38を介して段差状に連続している。係止凹部A-34の内面を構成する先端側面は、軸直角方向に広がる環状の先端側規制面A-40とされており、係止凹部A-34の底面と大径支点部A-36の外周面とが先端側規制面A-40を介して段差状に連続している。係止凹部A-34の基端側内面によって構成された基端側規制面A-38における軸直角方向の寸法は、先端側規制面A-40における軸直角方向の寸法に比べて、僅かに大きくされている。
【0060】
プロテクタ連結部A-26は、例えば針支持部A-24と同様に、硬質の樹脂によって形成されている。プロテクタ連結部A-26は、全体として段付きの略円筒形状とされており、先端側が小径の連結筒部A-42とされていると共に、基端側が大径の接続筒部A-44とされている。そして、プロテクタ連結部A-26は、連結筒部A-42に針支持部A-24の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針支持部A-24に固定されている。プロテクタ連結部A-26の縦方向(図3中の上下方向)の表面には、略矩形の凹部A-46が形成されている。本実施形態の凹部A-46は、図1に示すように、連結筒部A-42の表面に設けられているが、接続筒部A-44の表面に設けられていても良いし、連結筒部A-42と接続筒部A-44に跨って設けられていても良い。
【0061】
プロテクタ連結部A-26は、接続筒部A-44に外部管路A-47の先端が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、外部管路A-47に固定されている。プロテクタ連結部A-26の両側に針ハブA-18の基端部(針支持部A-24)と外部管路A-47が接続されることにより、穿刺針A-16の内腔と針ハブA-18の内腔とが外部管路A-47に連通されており、穿刺針A-16の先端開口から外部管路A-47に至る流体流路A-48が穿刺用針体A-14に設けられている。
【0062】
接続筒部A-44には、先端側へ向かって延び出す一対の係合腕A-50,50が設けられている。係合腕A-50,50は、径方向に対向して配置されており、連結筒部A-42の外周を連結筒部A-42よりも先端側まで延び出している。係合腕A-50,50は、連結筒部A-42に対して外周に離れて配置されていると共に、接続筒部A-44との接続部分が薄肉且つ幅狭とされており、外力の作用によって相互に接近する方向への弾性変形が許容されている。
【0063】
係合腕A-50,50の先端部分には、それぞれフックA-52が形成されている。フックA-52は、各係合腕A-50において係合腕A-50,50の対向方向外側へ向けて突出している。一対のフックA-52,52は、係合腕A-50,50が接近方向へ弾性変形することによって、相互に接近する方向へ移動するようになっている。
【0064】
針先プロテクタA-10は、図6にも示すように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂などの硬質の合成樹脂により一体成形されている。針先プロテクタA-10は、好適には、可視光の透過を許容する透明乃至は半透明とされている。針先プロテクタA-10は、筒状の周壁A-54を備えており、周壁A-54の内周には針軸方向に貫通する内孔A-56が形成されている。針先プロテクタA-10は周壁A-54内に気泡、ヒケ、ボイド等を有しない。針先プロテクタA-10は、針軸方向の基端に開口する基端側開口部A-57を有する。
【0065】
周壁A-54は、先端側が略真円環形状の断面を有する筒状部としての円筒状部A-58とされていると共に、基端側が円筒状部A-58よりも大きな外寸を有して外周に広がる拡開部A-60とされており、針軸方向で形状が異ならされている。拡開部A-60は、円筒状部A-58よりも外寸が大きいことから、周方向の長さが円筒状部A-58よりも長くされている。
【0066】
拡開部A-60は、図7に示すように、略楕円筒形状とされており、小径方向である図7中の上下方向(縦方向)における外周面の幅寸法(外寸)に比べて、大径方向である図7中の左右方向(横方向)における外周面の幅寸法(外寸)の方が大きくされている。拡開部A-60を構成する壁部のうち、縦方向の壁部を構成する部分が外寸が小さい幅狭部A-62,62とされている一方、横方向の壁部を構成する部分が外寸が大きい幅広部A-64,64とされている。そして、幅狭部A-62,62の対向方向と、幅広部A-64,64の対向方向とが、互いに略直交している。なお、本実施形態では、拡開部A-60が縦方向と横方向で異なる寸法を有する態様について説明するが、この態様に限定されるものではなく、例えば、拡開部の縦方向と横方向の寸法は略同一であってもよい。また、針先プロテクタの先端側および基端側の拡開部A-60における断面形状は、それぞれ、円形(楕円、長円などを含む)や多角形状など各種形状が採用され得る。尤も、針先プロテクタの基端側に設けられる拡開部は必須なものではなく、針先プロテクタは、単なるストレートの筒形状であってもよい。
【0067】
幅広部A-64,64の外周面は、図4~6に示すように、先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされている。円筒状部A-58の外周面と幅広部A-64,64の外周面は、滑らかに接続されている。円筒状部A-58から幅広部A-64,64にかけての肉厚寸法は、針軸方向で略一定とされている。幅広部A-64,64は、外周面と内周面が相互に対応する略楕円弧断面とされており、厚さ寸法が周方向で略一定とされている。そして、拡開部A-60の内周には、縦方向寸法より横方向寸法の方が大きい扁平形状の断面を有する内部空間A-66が、針先プロテクタA-10を貫通する内孔A-56の基端部分に形成されている。内部空間A-66は、横方向の内法寸法が基端側に向かって次第に大きくなっている。
【0068】
幅広部A-64,64には、板厚方向で貫通する係合部としての貫通窓A-68,68が形成されている。貫通窓A-68,68の周方向寸法は、フックA-52,52の周方向寸法よりも大きくされている。本実施形態では、針先プロテクタA-10の成形に際して、外周面の成形用金型が縦方向に型割されることから、貫通窓A-68,68は、縦方向の脱型に際してアンダーカットの生じない形状とされている。
【0069】
幅狭部A-62,62は、外周面が略楕円形断面とされていると共に、内周面が幅狭部A-62,62の対向方向と直交する略平面とされている。これにより、幅狭部A-62,62は、周方向の中央に向かって次第に厚肉とされており、周方向の中央部分が厚肉部A-70,70とされている。換言すれば、針先プロテクタA-10は、先端部の厚さ寸法よりも厚さ寸法が大きくされている部分を含む厚肉部A-70,70を含んでいる。
【0070】
図7に示すように、幅狭部A-62,62の厚肉部A-70,70における厚さ寸法は、円筒状部A-58及び幅広部A-64,64の厚さ寸法よりも大きくされている部分を含んでいる。幅広部A-64,64よりも小径とされた幅狭部A-62,62が、少なくとも厚肉部A-70,70において幅広部A-64,64よりも厚肉とされていることにより、拡開部A-60の内部空間A-66は、周壁A-54の軸方向視において拡開部A-60の外周面よりも扁平率が大きい横長の扁平形状とされている。また、基端側開口部A-57の周壁部分は、幅狭部A-62,62側の厚肉部A-70,70と、幅広部A-64,64側のブリッジ部A-71,71とを含んで構成されている。ブリッジ部A-71は、幅広部A-64において貫通窓A-68よりも基端側を周方向に延びる部分であり、内側の形状が略円弧形状とされている。針先プロテクタA-10の基端における周壁A-54と、ブリッジ部A-71,71の内側の形状は対応する形状となっている。このように構成することで、ブリッジ部A-71,71と厚肉部A-70,70の接続箇所が薄肉となることを回避し、強度を確保しやすくできる。
【0071】
上下両側の厚肉部A-70,70の外面には、図1,5に示すように、それぞれ凹所A-72が開口している。凹所A-72,72は、略矩形の開口形状を有している。凹所A-72,72は、厚肉部A-70,70の先端部分に設けられており、厚肉部A-70,70の外面を構成する外周面と先端面にそれぞれ開口する切欠き状の凹所とされている。凹所A-72,72は、開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされていることが望ましい。凹所A-72,72は、底面が縦方向と略直交して広がる平面とされており、先端側に向かって深さ寸法が次第に小さくなっている。
【0072】
上側の厚肉部A-70の外面には、凹所としての凹みA-74が開口している。凹みA-74は、略矩形の開口形状を有している。凹みA-74は、厚肉部A-70の外面を構成する外周面と基端面にそれぞれ開口する切欠き状の凹所とされている。凹みA-74は、開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされていることが望ましい。凹みA-74は、貫通窓A-68,68に対して周方向で離れた周方向間の中央部分に配されている。厚肉部A-70における凹みA-74の形成部分において、凹みA-74の底壁部は、好適には円筒状部A-58よりも厚肉であることが望ましいが、円筒状部A-58よりも薄肉であっても良い。凹みA-74の深さ寸法は、凹所A-72の最大深さ寸法よりも小さくされている。これによれば、拡開部A-60が凹みA-74の形成によって過剰に肉薄となり難く、拡開部A-60において針先プロテクタA-10に必要な強度を確保することができる。針先プロテクタA-10の拡開部A-60は、後述する係止片A-78,78(可撓片)が配置される箇所であり、針先プロテクタA-10の安全性を高める上で、拡開部A-60に必要な強度を備えさせることは重要である。また、凹みA-74の深さ寸法は、凹所A-72の最大深さ寸法よりも大きくされていてもよい。これによれば、周壁A-54において、凹みA-74の形成部分よりも凹所A-72の形成部分において強度を高めて、凹みA-74よりも先端側で必要な強度を確保することが可能となる。
【0073】
周壁A-54の内周面には、図4に示すように、拡開部A-60の前端部分において軸直角方向に広がる環状の段差状面A-76が形成されている。周壁A-54の内周面は、段差状面A-76よりも先端側が基端側よりも大径とされている。なお、段差状面A-76の軸直角方向の寸法は、係止凹部A-34における先端側規制面A-40の軸直角方向の寸法よりも小さくされている。
【0074】
また、周壁A-54には、拡開部A-60の内周面から内部空間A-66へ突出する一対の係止片A-78,78(可撓片)が設けられている。係止片A-78,78は、図4に示すように、周壁A-54の拡開部A-60における幅広部A-64,64に一体形成されている。係止片A-78,78は、幅広部A-64,64の内周側において、幅広部A-64,64に対応する位置に配置されている。係止片A-78,78は、横方向で対向して設けられており、周方向で相互に離隔している。係止片A-78,78は、段差状面A-76よりも基端側において周壁A-54の基端側に向かって突出している。係止片A-78,78は、段差状面A-76から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びており、少なくとも突出先端部分が周壁A-54の幅広部A-64,64から内周側に離れて配されている。係止片A-78,78は、それぞれ周方向に湾曲している。係止片A-78,78は、可撓性を有する板状の部材である。なお、係止片A-78,78は一対に限定されるものではなく、少なくとも1つが設けられていればよい。
【0075】
係止片A-78,78の突出先端(針軸方向基端)には、内周側へ屈曲して突出する一対の係止爪A-80,80が形成されている。係止爪A-80,80の内周面は、図7に示すように、それぞれ周方向に湾曲しており、係止爪A-80,80の突出先端における内周面の曲率半径は、針支持部A-24における小径筒部A-32の外周面の曲率半径と略等しくされている。また、係止爪A-80,80の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部A-32の外径寸法と略等しくされている一方、テーパ状面A-30における先端部分の最大外径寸法よりも小さくされている。尤も、係止爪A-80,80の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部A-32の外径寸法よりも僅かに小さくされていても良いし、僅かに大きくされていても良い。
【0076】
係止爪A-80,80の基端側端面A-82,82は、図4に示すように、内周部分が軸直角方向に広がる小壁部A-82a,82aとされていると共に、外周部分が外周側に向かって針軸方向の先端側に傾斜する傾斜面A-82b,82bとされている。本実施形態では、小壁部A-82a,82aにおける軸直角方向の寸法が、係止凹部A-34の基端側規制面A-38における軸直角方向の寸法と略同じか或いは僅かに大きくされている。これにより、後述するように係止爪A-80,80が基端側規制面A-38に当接する際には、基端側規制面A-38の全面が小壁部A-82a,82aに当接して、十分に大きな当接面積が確保され得る。更にまた、小壁部A-82a,82aの外周側に位置する傾斜面A-82b,82bが、外周側になるにつれて針軸方向の先端側に傾斜していることから、小壁部A-82a,82aと基端側規制面A-38とが傾斜面A-82b,82bに干渉されることなく当接する。
【0077】
また、係止爪A-80,80の突出先端(針軸方向の基端)は、拡開部A-60の基端よりも針軸方向で先端側に位置している。従って、係止片A-78,78の全体が、拡開部A-60の内部空間A-66に収容されている。
【0078】
針先プロテクタA-10は、例えば、図8に示すように、軸直角方向に組み合わされる割型A-84,86を含んで構成された金型A-88によって外周形状が成形される。針先プロテクタA-10の外周面が縦方向に組み合わされた割型A-84,86によって成形されることにより、割型A-84,86のパーティング面A-90に突出するパーティングラインA-92が、図3に示すように、針先プロテクタA-10の横方向の外面において軸方向に延びて形成されている。これにより、パーティングラインA-92が患者に触れ難くなっており、パーティングラインA-92の接触による痛みなどが回避される。なお、針先プロテクタA-10がパーティングラインA-92を有しないように構成することで、パーティングラインA-92の接触による痛みなどを回避することができる。
【0079】
針先プロテクタA-10の成形に際して、樹脂材料を金型A-88のキャビティA-94に充填する注入ゲートA-96の痕跡である注入ゲート跡A-98は、図1,5に示すように、一方の幅狭部A-62の周方向中央部分である厚肉部A-70の外面に設けられている。本実施形態では、注入ゲートA-96が周方向の1箇所に設けられており、注入ゲート跡A-98が、上側の厚肉部A-70の外面に開口する凹みA-74の内面に設けられている。注入ゲートA-96が幅狭部A-62に1箇所設けられることで、注入ゲートA-96側の幅狭部A-62にウェルドラインが発生することを防ぎつつ、薄肉となりやすいブリッジ部A-71,71にウェルドラインが発生することを防止できる。その結果、ブリッジ部A-71,71の強度を向上させることができる。注入ゲート跡A-98は、幅狭部A-62に設けられていることから、幅広部A-64,64側に設けられた貫通窓A-68,68及び係止片A-78,78を周方向に外れた位置に設けられている。
【0080】
注入ゲートA-96から注入される樹脂材料は、図8からも理解されるように、キャビティA-94に対して、厚肉部A-70を成形する部分から注入(射出)される。これにより、樹脂材料は、キャビティA-94において断面積が大きい広い部分から断面積が小さい狭い部分へ向かって充填される。それ故、樹脂材料のキャビティへの充填に際して、圧力損失による樹脂材料の充填不良などが生じ難く、針先プロテクタA-10を安定した品質で製造することができる。
【0081】
針先プロテクタA-10の軸方向又は軸交差方向の断面積は、注入ゲート跡A-98よりも基端側が注入ゲート跡A-98における断面積以下とされていることが好ましく、また注入ゲート跡A-98よりも先端側が注入ゲート跡A-98における断面積以下とされていることが好ましい。しかしながら、このような態様に限定されたものではなく、注入ゲート跡A-98と、針先プロテクタA-10の先端又は基端との間に、断面積が注入ゲート跡A-98における断面積より大きい箇所が設けられていてもよい。また、当該断面積(体積)の変化量は徐々に変化することが好ましい。しかしながら、このような態様に限定されたものではなく、ボイドやヒケ等が発生しない程度であれば、断面積(体積)が段階的に変化する等、断面積(体積)が徐々に変化していない部分があってもよい。
【0082】
また、注入ゲート跡A-98が凹みA-74内に収容された状態とされることにより、患者等の注入ゲート跡A-98への接触を防ぎつつ、注入ゲートA-96の位置を厚肉大径とされる針先プロテクタA-10の基端部分に設定して、針先プロテクタA-10を効率的に製造することができる。
【0083】
注入ゲートA-96は、割型A-84,86の脱型に際して引き切られるピンゲートとされている。これにより、注入ゲート跡A-98は、凹みA-74の底面から突出して形成されやすく、針組立体A-12を皮膚に留置した際の違和感や痛みが発生しやすい。注入ゲート跡A-98の突出高さは、凹みA-74の深さよりも小さくされており、凹みA-74の底面から突出する注入ゲート跡A-98が、凹みA-74の開口端面よりも底部側に位置して、凹みA-74に収容されている。
【0084】
注入ゲート跡A-98は、引き切られる際に周壁A-54の他の部分よりも透光性が低下している。即ち、注入ゲート跡A-98は、周壁A-54の他の部分よりも通過する可視光の吸収度合いが大きくなっており、透明性が低下している。これにより、注入ゲート跡A-98は、目視によって簡単に確認することが可能とされている。従って、例えば、穿刺用針体A-14に対する針先プロテクタA-10の周方向の向きなどを外観上で把握するための目印として、注入ゲート跡A-98の位置を利用することができる。
【0085】
注入ゲート跡A-98は、拡開部A-60の外周面に設けられる場合に、拡開部A-60の横断面における外周面の接線方向に対して、略直交する方向に設けられることが望ましい。より好適には、注入ゲート跡A-98は、拡開部A-60の外周面に設けられる場合に、楕円筒状とされた拡開部A-60の短軸と長軸との少なくとも一方の軸上に設けられる。これによれば、注入ゲートA-96から金型A-88のキャビティA-94へ注入される樹脂が、キャビティA-94内で均一に行きわたり易くなり、引け巣などの成形不良が発生し難くなる。
【0086】
また、拡開部A-60の内周面における注入ゲート跡A-98と対応する部分は、注入ゲート跡A-98に向かって凸となるように凹んだ形状とされていてもよい。これによれば、注入ゲートA-96からキャビティA-94へ注入された樹脂が、当該凹んだ形状を成形する金型A-88の凸部によって周方向両側へ案内されて、樹脂材料がキャビティA-94の周方向両側へ行きわたり易くなり、成形不良が生じ難くなる。
【0087】
針先プロテクタA-10の成形用金型は、割型A-84,86に加えて、脱型用の突出ピンA-100,100を備えている。突出ピンA-100は、割型A-84,86の脱型方向である上下方向に延びており、突出先端面がキャビティA-94の壁内面の一部を構成している。そして、樹脂成形品の成形完了後に、割型A-84,86を開き、突出ピンA-100,100で樹脂成形品を押し出すことにより、樹脂成形品(針先プロテクタA-10)が割型A-84から取り外される。このように、キャビティA-94の壁内面が部分的に突出ピンA-100,100の先端面で構成されることにより、針先プロテクタA-10の外周面には、図2に示すように、2つの突出ピン跡A-102,102が形成されている。突出ピン跡A-102,102は、浅底の円形凹状とされている。突出ピン跡A-102,102は、針先プロテクタA-10の下面に形成されており、一方が円筒状部A-58の下面に設けられていると共に、他方が拡開部A-60における下側の厚肉部A-70の外周面に設けられている。このような突出ピン跡A-102,102が周方向の一部に設けられていることにより、突出ピン跡A-102,102を針先プロテクタA-10の周方向の向きを特定するための目印として利用することもできる。なお、突出ピン跡A-102の形成位置は特に限定されないし、突出ピン跡A-102は、1つ或いは3つ以上が設けられていても良い。
【0088】
針先プロテクタA-10の先端部分には、図1に示すように、翼状部A-104が設けられている。翼状部A-104は、例えば軟質の樹脂により形成されている。翼状部A-104は、筒状の嵌合筒部A-106に対して、板状の連結部A-108,108が嵌合筒部A-106の接線方向に突出して一体形成されていると共に、連結部A-108,108の嵌合筒部A-106からの突出先端側にそれぞれ翼本体A-110が一体形成されている。翼状部A-104は、嵌合筒部A-106が円筒状部A-58の先端部分に外嵌されることによって、針先プロテクタA-10の周壁A-54に取り付けられている。なお、図7では、翼状部A-104が装着される前の針先プロテクタA-10の樹脂成形品が示されており、図7の針先プロテクタA-10に対して別部品とされた翼状部A-104が外挿状態で取り付けられる。
【0089】
針先プロテクタA-10の内孔A-56に対して穿刺用針体A-14が基端側の開口部から挿通されることにより、針先プロテクタA-10が穿刺用針体A-14に外挿装着されて、針組立体A-12が構成されている。図1などに示す針組立体A-12の使用前の初期状態では、穿刺用針体A-14の針先A-20が針先プロテクタA-10よりも先端側に位置しており、針先A-20が露出している。この初期状態では、図4に示すように、針先プロテクタA-10の拡開部A-60に設けられた貫通窓A-68,68に対して、穿刺用針体A-14の針ハブA-18に設けられたフックA-52,52が入り込んで係止されている。これにより、針先プロテクタA-10と針ハブA-18が連結状態とされて、針先A-20の突出状態が維持されると共に、例えば翼状部A-104を持って穿刺を行う際に、穿刺時の抵抗等による穿刺針A-16の針軸方向基端側への移動が規制される。
【0090】
針組立体A-12の初期状態では、針先プロテクタA-10の係止爪A-80,80が針支持部A-24の小径筒部A-32の外周面に当接している。なお、これら係止爪A-80,80は、小径筒部A-32の外周面に当接することで僅かに外周側に押されていても良いし、小径筒部A-32の外周面に対して僅かに離隔していても良い。
【0091】
針組立体A-12は、穿刺針A-16を患者の血管に穿刺して穿刺用針体(留置針)14を留置することにより、流体流路A-48を通じての輸液や採血、血液透析に供される。なお、本実施形態の針組立体A-12では翼状部A-104が設けられていることから、例えば翼状部A-104を摘まみつつ、穿刺用針体A-14の穿刺針A-16を穿刺することが可能となる。穿刺用針体A-14を穿刺状態で留置する際には、翼状部A-104の位置でテープ固定することにより、皮膚に対して広い接触面積をもって固定することができる。
【0092】
穿刺用針体A-14が留置された状態では、針先プロテクタA-10の下側(図7中の下側)の厚肉部A-70の周方向中央部分が患者の皮膚に接触する。従って、下側の厚肉部A-70の下面における周方向中央部分が、本実施形態の接触部A-112とされている。接触部A-112には、凹所A-72が開口している。凹所A-72は、内面の少なくとも一部が患者に接触しないようになっており、接触部A-112の患者への接触面積が小さくされている。これにより、接触部A-112が患者に接触する際の痛みや違和感が低減され得る。特に、凹所A-72の開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされていれば、凹所A-72の開口端縁部が患者の皮膚に引っ掛かり難くなって、凹所A-72の開口端縁部の接触に起因する痛みや違和感が低減される。また、注入ゲート跡A-98は、患者への接触部A-112とは反対側となる上側(図7中の上側)の厚肉部A-70に設けられており、接触部A-112を外れた位置に配されていることから、患者の皮膚には接触しない。なお、図5では、穿刺用針体A-14が患者に穿刺されて留置された状態における患者の体表面が、二点鎖線で仮想的に図示されている。
【0093】
また、穿刺用針体A-14の穿刺や後述する抜去の作業に際して、医療従事者が針先プロテクタA-10の厚肉部A-70,70に触れる場合に、厚肉部A-70の外面に開口する凹みA-74の開口面積が十分に小さくされており、指先が凹みA-74の奥側までは挿入され難くなっている。これにより、凹みA-74の底面に突出する注入ゲート跡A-98に医療従事者が触れ難く、注入ゲート跡A-98の接触による痛みや違和感を医療従事者に与え難い。特に、凹みA-74の開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされていれば、凹みA-74の開口端縁部が医療従事者の指先などに引っ掛かり難くなって、凹みA-74の開口端縁部の接触に起因する痛みや違和感が低減される。
【0094】
穿刺用針体A-14を抜去する場合には、翼状部A-104において針先プロテクタA-10がテープ固定された状態のまま、針ハブA-18における係合腕A-50,50が手指で内側へ押圧される。これにより、フックA-52,52と貫通窓A-68,68との係止が解除されて、穿刺用針体A-14を針先プロテクタA-10に対して基端側へ移動させることが可能となる。穿刺用針体A-14を針先プロテクタA-10に対して基端側へ移動させて穿刺針A-16を皮膚から抜去することで、針先プロテクタA-10が穿刺用針体A-14に対して針先A-20側に移動する。
【0095】
フックA-52,52と貫通窓A-68,68が解除された状態において、針先プロテクタA-10に対して基端側へ移動させる外力を穿刺用針体A-14に加えない限り、穿刺用針体A-14が針先プロテクタA-10に対して基端側へ移動しないようになっている。即ち、係止爪A-80,80が先端側に向かって大径となるテーパ状面A-30に当接していることにより、穿刺用針体A-14が針先プロテクタA-10に対する基端側への移動を防止されている。これにより、意図せず穿刺用針体A-14の針先A-20が針先プロテクタA-10で保護されてしまう不具合が防止され得る。
【0096】
穿刺用針体A-14を針先プロテクタA-10に対して基端側へ移動させることにより、係止爪A-80,80がテーパ状面A-30に対して摺接し、係止片A-78,78の弾性復元力が係止爪A-80,80をテーパ状面A-30へ押し付ける付勢力として作用する。それ故、使用者は、係止爪A-80,80とテーパ状面A-30の接触による抵抗力によって、針先プロテクタA-10から穿刺用針体A-14を引き抜いている感触を確認しつつ、穿刺用針体A-14を移動させることができる。
【0097】
図9に示すように、穿刺用針体A-14を針先プロテクタA-10に対して所定の位置まで後退移動させる(穿刺用針体A-14の針先A-20側へ針先プロテクタA-10を前進移動させる)ことにより、穿刺針A-16の針先A-20が針先プロテクタA-10で覆われる。更に、係止片A-78,78の自由端側に設けられた係止爪A-80,80が係止凹部A-34の開口上に移動することで、弾性的に形状復元した係止爪A-80,80が係止凹部A-34内に入り込む。これにより、係止爪A-80,80の小壁部A-82a,82aと係止凹部A-34の基端側規制面A-38とが当接して係止される。そして、穿刺用針体A-14の針先プロテクタA-10に対する先端側への移動が制限されて、穿刺用針体A-14の針先A-20の再露出が阻止される。
【0098】
係止片A-78,78の前端部分に設けられた段差状面A-76と、係止凹部A-34の先端側規制面A-40とが当接して係止されることにより、穿刺用針体A-14の基端側への移動が制限される。これにより、穿刺用針体A-14の針先プロテクタA-10に対する基端側への抜出しが阻止される。それ故、針先プロテクタA-10に対する穿刺用針体A-14の軸方向両側への移動が阻止されて、針先プロテクタA-10による針先A-20の保護状態が維持される。
【0099】
本実施形態では一対の係止片A-78,78が設けられており、係止片A-78,78が針先プロテクタA-10の周壁A-54に一体成形されていることとも相俟って、係止爪A-80,80と基端側規制面A-38を係止させた際に、針先プロテクタA-10が穿刺用針体A-14に対してがたつく等の不具合が効果的に防止され得る。このように、係止片A-78を2つ、又は3つ以上設けることで、針先プロテクタA-10における穿刺用針体A-14に対する基端側への後退がより確実に阻止されて、針先A-20の再露出防止効果が一層安定して発揮され得る。この場合、複数の係止片A-78は、針先プロテクタA-10の中心軸に対して略対称に配置されることが好ましい。
【0100】
穿刺用針体A-14の針先A-20が針先プロテクタA-10で保護された状態において、翼状部A-104のテープ固定を解除して、針組立体A-12を患者から取り外す。尤も、針先A-20の保護の手順は上記の手順に限定されるものではない。具体的には、例えば、翼状部A-104におけるテープ固定を解除し、針組立体A-12の全体を後退移動させて穿刺針A-16を血管から抜去した後、穿刺用針体A-14を針先プロテクタA-10に対して後退移動させることで、穿刺針A-16の針先A-20が保護されるようにしても良い。
【0101】
なお、係止爪A-80,80が係止凹部A-34に入り込んだ際に、係止爪A-80,80の先端が係止凹部A-34の底面に当接することで、その当接の衝撃や音を使用者が確認することができる。それ故、例えば、使用者が穿刺用針体A-14の引抜操作を途中で中断してしまうなどのおそれが回避されて、針先プロテクタA-10による針先A-20の保護がより確実に実現され得る。
【0102】
上記の如き構造とされた針先プロテクタA-10及び針組立体A-12では、穿刺用針体A-14の針先A-20の再露出を防止する係止片A-78,78の全体が、筒状の周壁A-54の内部に収容されて設けられている。それ故、意図せず外部から係止片A-78,78に接触することが略不可能とされている。従って、針先プロテクタA-10による穿刺用針体A-14の針先A-20の保護状態において、係止片A-78,78と係止凹部A-34との係止を意図せず解除して針先A-20を針先プロテクタA-10から再露出させることが効果的に防止され得る。
【0103】
係止片A-78,78が針ハブA-18に係止された状態において、例えば、針先プロテクタA-10及び/又は針ハブA-18に曲げ方向などの外力が及ぼされた場合に、係止片A-78,78が外周側に離れて位置する幅広部A-64,64に当接し得る。これにより、係止片A-78,78の外周側への変形が制限されて、係止片A-78,78の針ハブA-18に対する係止が解除されるおそれが低減されることから、穿刺用針体A-14の針先A-20の保護状態が安定して維持され得る。
【0104】
係止片A-78,78は、針先プロテクタA-10の基端側において拡開された拡開部A-60に設けられている。これにより、係止片A-78,78の大きさを十分に確保しつつ、係止片A-78,78間に挿通される針ハブA-18の針支持部A-24の外径寸法も十分に大きくされ得る。更にまた、本実施形態では、拡開部A-60が扁平な略楕円形状とされており、その外周面が円筒状部A-58の外周面から滑らかに連続していることから、拡開部A-60などが患者に接触して、患者が痛みを感じるおそれが低減されている。
【0105】
さらに、拡開部A-60は軸交差方向の断面視において、係止片A-78,78と対応する方向の湾曲の曲率よりも、凹所A-72又は凹みA-74に対応する方向の湾曲の曲率の方が緩やかに構成されている。換言すれば、凹所A-72又は凹みA-74は、拡開部A-60の曲率が係止片A-78,78と対応する方向の湾曲の曲率よりも緩やかな部分に構成されている。当該部分は、留置時に患者と接触し得る部分であり、接触による患者の痛みや不快感等に影響しやすいが、このように構成されることで、凹所A-72又は凹みA-74によって患者との接触面積が低減され、留置時の痛みや不快感等をより低減できる。
【0106】
また、注入ゲート跡A-98は針先プロテクタA-10において翼状部A-104の翼本体A-110が位置する側の面と反対側の面に設けられている。このように構成されることにより、患者と接触することで患者に痛みを与えやすい注入ゲート跡A-98が、患者と接触し難い位置に設けられて、留置時の痛みや不快感等を低減できる。さらに、翼本体A-110が位置する側の面と反対側の面に設けられた凹所A-72又は凹みA-74に注入ゲート跡A-98が設けられることによって、留置時の痛みや不快感等をより低減できる。
【0107】
係止片A-78,78が、拡開部A-60を構成する幅広部A-64,64の内側に設けられていることから、幅広部A-64,64が厚肉となることが回避されて、成形時の部材内への気泡の混入や、ボイドやヒケの発生などによる寸法誤差の発生や品質の低下が抑えられる。また、係止部(係止片A-78,78)は、幅広部A-64,64と同じ方向(軸方向の基端側)に延びるように設けられることが好ましい。これによれば、拡開部A-60が必要以上に大きくなり難く、幅広部A-64,64の内側のスペースを巧く利用することができると共に、幅広部A-64,64が厚肉となることも回避される。
【0108】
係止片A-78,78は、基端側に向かって延びていることから、針先プロテクタA-10に対する穿刺用針体A-14の引抜きに際して引っ掛かったりすることがなく、スムーズな引抜きが実現され得る。
【0109】
相互に係止される係止爪A-80,80の小壁部A-82a,82a(第1係止部)と係止凹部A-34の基端側規制面A-38(第3係止部)とが、何れも軸直角方向に広がっている。更に、相互に係止される段差状面A-76(第2係止部)と係止凹部A-34の先端側規制面A-40(第4係止部)とが、何れも軸直角方向に広がっている。それ故、小壁部A-82a,82a及び段差状面A-76を備える針先プロテクタA-10と、基端側規制面A-38及び先端側規制面A-40を備える針ハブA-18は、アンダーカット形状がなく成形が容易である。しかも、小壁部A-82a,82aと基端側規制面A-38の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。同様に、段差状面A-76と先端側規制面A-40の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。また、それぞれの当接面積も十分に確保することができて、穿刺用針体A-14に対する針先プロテクタA-10の先端側及び基端側への移動が、より確実に阻止され得る。
【0110】
針先プロテクタA-10の周壁A-54の基端部に拡開部A-60が設けられており、拡開部A-60において外径寸法の大きい幅広部A-64,64に貫通窓A-68,68と係止片A-78,78が設けられていると共に、拡開部A-60において外径寸法の小さい幅狭部A-62に注入ゲート跡A-98が設けられている。これにより、幅広部A-64,64において貫通窓A-68,68と係止片A-78,78を設けるためのスペースが確保され易くなる。幅狭部A-62,62では、貫通窓A-68,68と係止片A-78,78を設けるために形状に制限がある幅広部A-64,64に比して、形状の自由度が大きく、厚肉部A-70を設け易い。
【0111】
図10には、発明Aの第2の実施形態としての針先プロテクタA-120を備える針組立体A-122が示されている。以下の説明において、発明Aの第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0112】
針先プロテクタA-120は、上下両側の厚肉部A-70,70に凹みA-74,74が形成されており、各凹みA-74の底面にそれぞれ注入ゲート跡A-98が形成されている。要するに、針先プロテクタA-120は、注入ゲート跡A-98が複数設けられていると共に、それら複数の注入ゲート跡A-98,98がそれぞれ凹みA-74,74内に設けられている。
【0113】
従って、針先プロテクタA-120は、成形時の図示しないキャビティに対して周方向の2箇所から樹脂材料を充填される。これにより、針先プロテクタA-120の成形に際して樹脂材料の充填不良がより生じ難く、所定形状の針先プロテクタA-120を安定して得ることができる。
【0114】
下側の厚肉部A-70の下面に設けられて、患者の皮膚に接触し得る接触部A-112には、凹所A-72に加えて、凹みA-74が開口している。この凹みA-74の内面は、少なくとも底部が患者の皮膚に接することがなく、凹みA-74の底面が接触部A-112を外れた部分とされている。従って、接触部A-112に開口する凹みA-74の底面に突出する注入ゲート跡A-98は、接触部A-112を外れて設けられている。これにより、接触部A-112側に注入ゲート跡A-98が形成されていても、注入ゲート跡A-98の患者への接触が防止されて、注入ゲート跡A-98の接触に起因する痛みや不快感などが回避される。
【0115】
なお、注入ゲート跡A-98は、3つ以上であっても良い。また、複数の注入ゲート跡A-98が形成される場合に、少なくとも1つの注入ゲート跡A-98が凹みA-74を外れた位置で厚肉部A-70の外面に形成されていても良い。
【0116】
以上、発明Aの実施形態について詳述してきたが、発明Aはその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、凹所としての凹所A-72,72と凹みA-74が厚肉部A-70,70の外周面に開口して設けられていたが、凹所は、厚肉部A-70の軸方向端面に開口するように設けることもできる。具体的には、周壁A-54の基端部に設けられる厚肉部A-70の基端面において軸方向に開口するように凹所を設けても良い。
【0117】
前記実施形態の凹所は、注入ゲート跡A-98が設けられない凹所A-72と、注入ゲート跡A-98が設けられた凹みA-74との両方によって構成されていたが、凹所は何れか一方だけで構成され得る。また、凹所A-72と凹みA-74の形成数や配置は、適宜に変更され得る。具体的には、例えば、凹所A-72が1つだけであっても良いし、凹みA-74が2つ以上の複数であっても良い。なお、凹所は、設けられていなくても良い。また、注入ゲート跡A-98が凹所A-72に設けられていてもよい。
【0118】
前記実施形態では、針先プロテクタA-10の周壁A-54の外周面が割型A-84,86によって成形される例を示したが、図11に示すような抜型を用いて針先プロテクタの周壁の外周面を成形することもできる。図11に示す針先プロテクタの外周面を成形する金型A-130は、筒状のキャビティ壁内面を有して軸方向に脱型される抜型とされていることから、成形品である針先プロテクタの周壁の外周面は、軸方向に延びるパーティングラインを有していない。それ故、パーティングラインを軸方向で患者や医療従事者等に触れ難い部分に設定することが可能であり、患者や医療従事者等に触れ易い部分の表面形状をより滑らかにすることができる。従って、患者や医療従事者等が針先プロテクタに触れる際に、バリ状のパーティングラインに触れ難くなって、痛みや違和感をより低減することができる。
【0119】
また、図11の金型A-130のキャビティA-132に樹脂材料を注入する注入ゲートA-134は、金型A-130を成形品(針先プロテクタ)から取り外す際に、ランナーが金型A-130によってせん断方向に切断されるトンネルゲートとされている。トンネルゲートを採用すれば、ランナーの長さを短くできることから、少ない樹脂材料によって効率的に成形品を得ることができる。
【0120】
注入ゲート跡A-98は、凹所の内面に形成されることが望ましいが、凹所に収容されることなく、凹所を外れた位置で厚肉部A-70の外面に形成されていても良い。
【0121】
注入ゲート跡A-98は、厚肉部A-70の外周面に設けられる他、厚肉部A-70の軸方向端面に設けられ得る。要するに、厚肉部A-70の外面とは、外周面だけを言うものではなく、外周面と軸方向端面を何れも含む。
【0122】
具体的には、例えば、図12に示す針先プロテクタA-140のように、拡開部A-60の軸方向の基端面に開口する凹所A-142を形成し、凹所A-142の底面に注入ゲート跡A-98が形成されていてもよい。針先プロテクタA-140において、注入ゲート跡A-98は、拡開部A-60の幅狭部A-62,62の軸方向端面にそれぞれ設けられている。もっとも、図13に示す針先プロテクタA-150のように、拡開部A-60の幅広部A-64,64の基端面に凹所A-142および注入ゲート跡A-98を設けることもできる。なお、図13に示す針先プロテクタA-150は、幅広部A-64,64の周方向の中央部分が、両端部分よりも厚肉の厚肉部A-70とされている。
【0123】
図13に示すように注入ゲートA-96(注入ゲート跡A-98)が幅広部A-64,64側に設けられることにより、貫通窓A-68,68を有する係合部としての幅広部A-64,64にウェルドラインを発生させ難くすることができる。幅広部A-64,64の強度が高くなることにより、針ハブA-18の係合腕A-50を針先プロテクタA-10に対してより強固に固定させることができる。それ故、針先プロテクタA-150と針ハブA-18の意図しない分離が防止されて、針先保護機構の誤作動が防止され得る。また、例えば幅広部A-64,64が外力によって破壊される等して、針先保護機構が正常に機能しなくなるといった不具合も防止され得る。 注入ゲートA-96(注入ゲート跡A-98)は係合部の基端側に設けられていることが好ましい。係合部は針先プロテクタA-150の基端部に設けられることが多く、針先プロテクタA-150の基端部の強度が低下しやすいため、より強度が求められる。したがって、このように構成することで係合部の基端側にウェルドラインを発生しにくくすることができる。その結果、係合部の強度が高くなり、安全性がより向上する。
【0124】
図12,13の針先プロテクタA-140,150では、上下一対または左右一対の注入ゲート跡A-98が設けられた例を示したが、注入ゲート跡A-98の数や軸方向端面における配置等は限定されない。例えば、図12に示した上下一対の注入ゲート跡A-98,98に加えて、図13に示した左右一対の注入ゲート跡A-98,98を備えていてもよく、その場合には4つの注入ゲート跡A-98を有する構造とされる。
【0125】
また、拡開部A-60の基端面は、患者の皮膚に触れ難い非接触部分であることから、凹所A-142を設けることなく、注入ゲート跡A-98を針先プロテクタの基端面から突出するように設けてもよい。しかしながら、針先プロテクタA-140,150が図示しない針ハブに連結された針組立体の使用前の状態において、拡開部A-60の基端面は針ハブの先端面に重ね合わされる。それ故、注入ゲート跡A-98は、拡開部A-60の基端面から突出することなく、凹所A-142内に収容された状態で設けられることが望ましく、それによって、針先プロテクタA-140,150と針ハブのがたつきなどを防ぐことができる。
【0126】
なお、注入ゲート跡A-98が拡開部A-60の基端面に形成されるように注入ゲートの位置が設定される場合には、注入ゲート跡A-98が筒状とされた針先プロテクタA-140,150の軸方向と略平行に設けられることが望ましい。これによれば、針先プロテクタA-140,150を成形する金型のキャビティへ注入ゲートから注入される樹脂が、キャビティ内で均一に行きわたり易くなり、成形不良が発生し難くなる。
【0127】
前記実施形態では、幅狭部A-62,62の外周面に注入ゲート跡A-98が設けられた例を示したが、拡開部A-60の外周面に注入ゲート跡A-98を設ける場合には、図14に示す針先プロテクタA-160のように、幅広部A-64の外周面に注入ゲート跡A-98を設けることもできる。幅広部A-64は患者に接し難い側方(左右方向)に位置していることから、針先プロテクタA-160では、注入ゲート跡A-98が凹所に収容されることなく突出して設けられている。もっとも、幅広部A-64に注入ゲート跡A-98が設けられる場合にも、幅広部A-64に開口する凹所が形成されて、注入ゲート跡A-98が凹所内に設けられるようにすれば、注入ゲート跡A-98の突出が抑えられる。針先プロテクタA-160のように左右方向の側面を構成する幅広部A-64に注入ゲート跡A-98が形成される場合に、注入ゲート跡A-98は、一対の幅広部A-64,64にそれぞれ設けられていてもよいし、何れか一方の幅広部A-64だけに設けられていてもよい。
【0128】
図14に示すように注入ゲートA-96(注入ゲート跡A-98)が幅広部A-64,64側に設けられることにより、貫通窓A-68,68を有する係合部としての幅広部A-64,64にウェルドラインを発生させ難くすることができる。幅広部A-64,64の強度が高くなることにより、針ハブA-18の係合腕A-50を針先プロテクタA-160に対してより強固に固定させることができる。それ故、針先プロテクタA-160と針ハブA-18の意図しない分離が防止されて、針先保護機構の誤作動が防止され得る。また、例えば幅広部A-64,64が外力によって破壊される等して、針先保護機構が正常に機能しなくなるといった不具合も防止され得る。 注入ゲートA-96(注入ゲート跡A-98)は係合部の基端側に設けられていることが好ましい。係合部は針先プロテクタA-160の基端部に設けられることが多く、針先プロテクタA-160の基端部の強度が低下しやすいため、より強度が求められる。したがって、このように構成することで係合部の基端側にウェルドラインを発生しにくくすることができる。その結果、係合部の強度が高くなり、安全性がより向上する。
【0129】
針先プロテクタA-10に示した幅狭部A-62の厚肉部A-70の外周面に設けられる注入ゲート跡A-98と、針先プロテクタA-140,150に示した拡開部A-60の軸方向基端面に設けられる注入ゲート跡A-98と、針先プロテクタA-160に示した幅広部A-64の外周面に設けられる注入ゲート跡A-98とを、適宜に組み合わせて採用することもできる。
【0130】
注入ゲート跡A-98の形成数や配置は、特に限定されるものではなく、例えば、注入ゲート跡A-98が複数設けられる場合には、軸方向で相互にずれた位置に配置され得る。
【0131】
拡開部A-60は必須ではなく、例えば、周壁A-54の外径寸法が軸方向で略一定とされて、内径寸法の変化によって厚肉部A-70が形成されていても良い。また、厚肉部A-70が設けられる周壁A-54の基端部分は、先端部分より小径であっても良い。
【0132】
係止片A-78は周壁A-54で覆われた内部に形成されている例を示したが、このような態様に限定されたものではなく、拡開部A-60が切り欠きを有し、係止片A-78が外側から見えるように構成されていてもよい。また、係止片A-78は凹所A-72又は凹みA-74に設けられていてもよい。
なお、本発明は、もともと以下(i)~(xx)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、前記周壁は先端側に筒状部を有し、該周壁には該筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚寸法が大きな部分を有する厚肉部が設けられて、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該厚肉部に設けられている針先プロテクタ、
(ii) 前記厚肉部の外面に凹所が設けられている(i)に記載の針先プロテクタ、
(iii) 前記注入ゲート跡が前記凹所の内面に設けられている(ii)に記載の針先プロテクタ、
(iv) 前記凹所の深さ寸法が前記周壁の先端側に向かって次第に小さくなっている(ii)又は(iii)に記載の針先プロテクタ、
(v) 前記凹所の開口端縁部が角のない湾曲断面形状とされている(ii)~(iv)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(vi) 前記周壁には前記筒状部の基端側に該筒状部よりも肉厚が大きな部分を含み且つ外寸が大きくされた拡開部があり、前記注入ゲート跡が該拡開部の外面に設けられている(i)~(v)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(vii) 穿刺針に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた樹脂製の針先プロテクタであって、前記周壁は、筒状部と、該筒状部よりも外寸が大きい拡開部とを備え、成形時における樹脂材料の注入ゲート跡が該拡開部に設けられている針先プロテクタ、
(viii) 前記注入ゲート跡が、前記穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係合される係合部を外れた位置に設けられている(i)~(vii)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(ix) 前記周壁が前記穿刺針の前記針先を覆った状態において該穿刺針の基端側に設けられた針ハブに係止されて該針先の再露出を阻止する係止片が設けられており、前記注入ゲート跡が該係止片を外れた位置に設けられている(i)~(viii)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(x) 前記周壁の外面は、軸直角方向の割型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有している(i)~(ix)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(xi) 前記周壁の外面は、軸方向の抜型によって成形されて軸方向に延びるパーティングラインを有していない(i)~(ix)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(xii) 前記注入ゲート跡が前記周壁の周方向で複数設けられている(i)~(xi)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(xiii) 前記周壁の少なくとも基端部における軸直角方向の外寸が周方向において異ならされており、外寸が大きい幅広部において、前記穿刺針の基端部に固定される針ハブに係合される係合部と、該針ハブに係止されて前記針先の再突出を阻止する係止片との少なくとも一方が設けられていると共に、外寸が小さい幅狭部に前記注入ゲート跡が設けられている(i)~(xii)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(xiv) 前記周壁が光の透過を許容する透明乃至は半透明とされていると共に、前記注入ゲート跡における該周壁の透光性が該周壁の他の部分よりも低くなっている(i)~(xiii)の何れか1項に記載の針先プロテクタ、
(xv) 穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで該穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、前記針先プロテクタが(i)~(xiv)の何れか1項に記載の針先プロテクタとされており、該針先プロテクタの前記厚肉部の外面の少なくとも一部が患者の皮膚と接触する接触部とされて、該接触部には(ii)に記載の凹所が開口している針組立体、
(xvi) 前記接触部が前記穿刺用針体の留置に際して患者の皮膚と接触する(xv)に記載の針組立体、
(xvii) 前記注入ゲート跡が前記接触部を外れた位置に設けられている(xv)又は(xvi)に記載の針組立体、
(xviii) 前記針先プロテクタの前記厚肉部の外面には、前記接触部と該接触部に対して径方向の反対側に位置する部分との何れか一方に突出ピン跡が設けられている(xv)~(xvii)の何れか1項に記載の針組立体、
(xix) 穿刺針を備える穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで穿刺針の針先を覆う針先プロテクタを備えた針組立体であって、前記針先プロテクタが(vi)又は(vii)に記載の針先プロテクタとされており、前記拡開部は幅狭部と該幅狭部よりも外寸が大きい幅広部とを備え、前記注入ゲート跡が該幅広部側に設けられていると共に、該針先プロテクタは、前記穿刺針の基端に固定された針ハブに設けられた係合腕と着脱可能に係合される係合部を該幅広部に備えている針組立体、
(xx) 前記注入ゲート跡は前記係合部の基端側に設けられている(xix)に記載の針組立体、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、成形に際して、周壁の厚肉部を成形する部分に樹脂材料の注入ゲートが設定されて、金型のキャビティにおいて断面積の大きい部分から小さい部分へ向かって樹脂材料が充填される。それ故、キャビティに樹脂材料を充填する際に、キャビティの断面積の変化による圧力損失が生じ難く、樹脂材料の充填不良を回避することができて、所定形状の針先プロテクタを安定して得ることができる。
上記(ii)に記載の発明では、厚肉部が過度に厚肉になるのを防ぐことができる。その結果、厚肉部に気泡が混入する、ヒケやボイドが発生するなどの不具合を回避することができる。例えば、厚肉部の内面と外面の形状が異なっているなどして、厚肉部の厚さが一定ではない場合には、厚肉部において特に厚肉となる部分の外面に凹所を設けることができる。その結果、厚肉部が部分的に著しく厚肉となるのを防ぐことができる。
上記(iii)に記載の発明では、例えば注入ゲート跡が突起状となる場合などに、注入ゲート跡が凹所の内面に設けられることによって厚肉部の外面よりも外側へ突出し難くなる。これにより、厚肉部が患者の皮膚などに接する場合に、注入ゲート跡が引っ掛かって痛みを与えるなどの問題が生じ難い。なお、凹所の形成部分では周壁の厚さが減少するが、厚さ寸法が大きな部分を含む厚肉部に凹所を形成すれば、凹所の形成部分において周壁が過度に薄肉となるのを防ぐことができる。それ故、凹所の内面に注入ゲート跡を設けて、注入ゲート跡の患者などへの接触を回避する効果を得る場合にも、成形時には樹脂材料の充填不良を有効に防いで、所定形状の針先プロテクタを安定して製造することが可能となる。
上記(iv)に記載の発明では、例えば凹所の内面に注入ゲート跡が設けられるように注入ゲートの位置が設定されている場合に、成形時の樹脂材料の充填圧力ひいては成形時の樹脂密度の急変を避けて、針先プロテクタの強度の確保とヒケ等の成形不良の防止が図られ得る。
上記(v)に記載の発明では、凹所の開口端縁部が患者の皮膚に触れる場合に、患者に痛みや違和感を与え難い。また、凹所の開口端縁部が角のない形状とされることによって、凹所の開口端縁部が欠けるなどの不具合も生じ難い。
上記(vi)に記載の発明では、外径が大きくされた拡開部において注入ゲート跡が設定される厚肉部が設けられることにより、拡開部を含む周壁の内径が厚肉部において著しく小さくなるのを防ぐことが可能となる。
上記(vii)に記載の発明では、成形に際して、筒状部よりも外寸が大きく外周面の周方向長さが長い拡開部を成形する部分に、樹脂材料の注入ゲートが設定される。これにより、成形用金型のキャビティにおける周方向長さが長い部分に、十分な圧力で樹脂材料を充填することができて、樹脂材料の充填不良を回避することができる。
上記(viii)に記載の発明では、係合部の形成によって形状が複雑になったり、断面積が小さくなったりする部分を外れた位置に注入ゲートが設定されることにより、成形不良をより有利に回避することができる。
上記(ix)に記載の発明では、周壁において係止片を外れた部分を厚肉部とすれば、周壁において係止片が設けられた部分を比較的に薄肉とすることができる。その結果、係止片に気泡が混入したり、ヒケやボイドが発生することを抑止できる。また、係止片の形成によって形状が複雑になったり、断面積が小さくなったりする部分を外れた位置に注入ゲートが設定されることにより、成形不良をより有利に回避することができる。
上記(x)に記載の発明では、周壁の外面において大きな形状自由度を実現することができる。注入ゲート跡が周壁の外面に形成されるように樹脂材料の注入ゲート位置を設定すれば、軸直角方向で割型を取り外す際にランナーが引張切断されるピンゲートを採用することができて、複数の針先プロテクタを省スペースで同時に成形し易くなり、針先プロテクタの量産性の向上が図られ得る。
上記(xi)に記載の発明では、注入ゲート跡が周壁の外面に形成されるように樹脂材料の注入ゲート位置を設定すれば、軸方向で抜型を取り外す際にランナーが抜き型によって切断されるトンネルゲートを採用することができる。それ故、比較的少ない形成材料によって針先プロテクタを製造することができる。
上記(xii)に記載の発明では、成形時に金型のキャビティに対して周方向の複数箇所から樹脂材料を充填することにより、樹脂材料の充填不良がより生じ難くなる。
上記(xiii)に記載の発明では、軸直角方向の外寸が大きい幅広部では、係合部と係止部の少なくとも一方を配するスペースが確保し易い。軸直角方向の外寸が小さい幅狭部は、係合部と係止部の少なくとも一方が配される幅広部よりも厚肉とし易く、成形時に樹脂材料の充填を効率的に実現することができる。
上記(xiv)に記載の発明では、透光性の違いによって注入ゲート跡を目視で容易に確認できることから、注入ゲート跡を目印として針先プロテクタの向きなどを簡単に把握することができる。
上記(xv)に記載の発明では、針先プロテクタの接触部に凹所が設けられることにより、患者の体表面と接する接触部の面積が小さくされて、接触部の接触による痛みや違和感が低減される。
上記(xvi)に記載の発明では、穿刺用針体としての留置針を留置する際に患者と接触する接触部に凹所が設けられて、接触部の患者への接触面積が小さくされることにより、留置時に接触部の接触によって患者に与える痛みや違和感が低減される。
上記(xvii)に記載の発明では、注入ゲート跡の患者への接触が回避されることで、針先プロテクタが患者に接触しても患者に痛みや違和感を与え難い。
上記(xviii)に記載の発明では、成形品を金型から取り外すために用いられる金型の突出ピンによって形成される突出ピン跡が、針先プロテクタの厚肉部の外面における接触部又は接触部と径方向反対側の何れか一方に位置して設定される。これにより、針先プロテクタにおける接触部の向きを、突出ピン跡を目印として把握することができる。
上記(xix)に記載の発明では、注入ゲート(注入ゲート跡)が幅広部に設けられることで、係合部にウェルドラインを発生させ難くすることができる。その結果、針先プロテクタの係合部の強度が高くなり、針ハブの係合腕を針先プロテクタに対してより強固に係合させることができる。それ故、針ハブと針先プロテクタの意図しない分離等が回避されて、針先保護機構の誤作動が防止され得る。また、例えば係合部が外力によって破壊されて、針先保護機構が正常に機能しなくなる等の不具合等も防止され得る。
上記(xix)の態様において、注入ゲート跡は係合部の基端側に設けられていることが好ましい。係合部は針先プロテクタの基端部に設けられることが多く、針先プロテクタの基端部の強度が低下しやすいため、より強度が求められる。したがって、このように構成することで係合部の基端側にウェルドラインを発生しにくくすることができる。その結果、係合部の強度が高くなり、安全性がより向上する。
【0133】
[発明B]
ところで、図15~20には、発明Aとは異なる課題を解決し得る独立した発明Bとして認識され得る針組立体が示されている。発明Bは、穿刺針の基端側に針ハブが設けられた穿刺用針体とそれを用いた穿刺用の針組立体に関するものである。
【0134】
従来から、輸液や採血、血液透析などを行う際に用いられる留置針などの穿刺用針体が知られている。留置針は、鋭利な針先を有する穿刺針の基端側に針ハブが固定された構造を有している。そして、留置針が患者の血管などの体内管腔に穿刺されて留置され、針ハブに外部管路が接続されることにより、留置針の内腔と外部管路とを通じて輸液や採血、血液透析などが実施される。
【0135】
ところで、留置針は、例えば、特開2017-196060号公報(特許文献1)に開示されているように、外部管路が針ハブに設けられた接続穴に挿入されて、接続穴の内面に対して接着や溶着などの手段で固定されることにより、外部管路が接続されている。
【0136】
しかし、発明者が詳細に検討したところ、例えば外部管路が大きな変形を生じる際に、外部管路が接続穴の開口端で過度に折れ曲がって損傷したり、外部管路が接続穴から抜けてしまうおそれがあった。
【0137】
発明Bの解決課題は、外部管路の変形を抑えて、外部管路の損傷や抜けを防ぐことができる、新規な穿刺用針体を提供することにある。
【0138】
また、発明Bは、上記の穿刺用針体を備える針組立体を提供することも目的とする。
【0139】
以下、発明Bを把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、発明Bでは、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0140】
発明Bの第1の態様は、穿刺針の基端側に針ハブが設けられた穿刺用針体であって、前記針ハブの基端側には接続穴が形成されていると共に、外部管路が外挿装着される接続ポートが該接続穴の壁部から該針ハブの基端側に向かって突設されているものである。
【0141】
本態様の穿刺用針体によれば、外部管路が接続穴に挿入されると共に、外部管路が接続ポートに外挿装着されることから、外部管路が接続ポートから分離し難い。
【0142】
発明Bの第2の態様は、発明Bの第1の態様に記載された穿刺用針体において、前記接続ポートが前記接続穴の開口端よりも内方に位置しているものである。
【0143】
本態様の穿刺用針体によれば、接続ポートに外挿状態で装着された外部管路が、接続ポートの突出先端よりも外方において接続穴の内面に当接することで変形量を制限されており、外部管路が過度に折り曲げられるなどして損傷するのを防ぐことができる。
【0144】
発明Bの第3の態様は、発明Bの第1又は第2の態様に記載された穿刺用針体において、前記接続穴は、基端側の内寸が先端側の内寸よりも大きくされているものである。
【0145】
本態様の穿刺用針体によれば、外部管路を接続穴に挿入する作業が容易になる。
【0146】
発明Bの第4の態様は、発明Bの第3の態様に記載された穿刺用針体において、前記接続穴が前記針ハブの基端側に向かって大径となるテーパ形状を有しているものである。
【0147】
本態様の穿刺用針体によれば、接続穴の内周面の面積を大きく得ることができることから、例えば外部管路を接続穴の内周面に接着する際に接着面積が大きくなって、接着強度を大きく得ることができる。なお、本態様は、接続穴の全体が開口端に向かって大径となるテーパ形状とされている場合だけでなく、接続穴が軸方向で部分的に開口端に向かって大径となるテーパ形状とされている場合も含む。
【0148】
発明Bの第5の態様は、発明Bの第1~第4の何れか1つの態様に記載された穿刺用針体において、前記接続穴の開口縁部の断面が湾曲形状を有しているものである。
【0149】
本態様の穿刺用針体によれば、外部管路を接続穴へ挿入する際に、湾曲断面形状とされた接続穴の開口縁部が外部管路を接続穴へ案内するガイドとして機能することから、外部管路を接続穴へ挿入し易くなる。また、例えば、接続穴の開口縁部の断面が接続穴の内周へ向かって凸となる湾曲形状とされていれば、接続穴の開口縁部を滑らかな形状とすることによって、接続ポートに接続された外部管路が変形して接続穴の開口縁部に接触する場合に、接続穴の開口縁部への接触による外部管路の損傷が防止される。
【0150】
発明Bの第6の態様は、発明Bの第1~第5の何れか1つの態様に記載された穿刺用針体において、前記接続ポートが先細のテーパ状外周面を有しているものである。
【0151】
本態様の穿刺用針体によれば、外部管路を接続ポートに外挿する作業が容易になる。接続ポートの外周面を外部管路に固着する場合には、接続ポートと外部管路の固着面積が大きく確保されて、固着強度の向上が図られ得る。なお、本態様は、接続ポートの外周面の全体がテーパ状外周面とされている場合だけでなく、接続ポートの外周面が軸方向で部分的にテーパ状外周面を備えている場合を含む。
【0152】
発明Bの第7の態様は、発明Bの第1~第6の何れか1つの態様に記載された穿刺用針体であって、前記接続ポートの先端外周縁部の断面が角のないR形状とされているものである。
【0153】
本態様の穿刺用針体によれば、接続ポートの先端外周縁部の断面が角のないR形状を有していることから、外部管路が折れ曲がった場合であっても、接続ポートが外部管路を突き破ることを防止できる。
【0154】
発明Bの第8の態様は、発明Bの第1~第7の何れか1つの態様に記載された穿刺用針体と、該穿刺用針体に対して針軸方向に移動することで前記穿刺針の針先を覆う針先プロテクタとを備えた針組立体であって、前記針ハブの基端側には前記針先プロテクタに係合される一対の腕部が設けられており、該一対の腕部の対向方向と平行な軸方向縦断面において、該腕部の最小厚さ寸法が前記接続穴の周壁の最小厚さ寸法よりも大きく設定されているものである。
【0155】
本態様の針組立体によれば、針ハブと針先プロテクタの分離に際して外力が作用して変形等する腕部の強度を確保することができる。
【0156】
発明Bの第9の態様は、発明Bの第8の態様に記載された針組立体において、前記接続穴の周壁よりも厚肉とされた補強部が、前記接続穴よりも先端側に設けられているものである。
【0157】
例えば、外部管路が針ハブに接着される場合に、接着剤の可塑剤が付着することで接続穴よりも先端側にクラックが生じるなどして、針ハブが損傷するおそれがある。本態様の針組立体によれば、損傷のおそれがある部分に厚肉の補強部が設けられることにより、針ハブの損傷による外部管路の接着不良などが防止される。
【0158】
発明Bによれば、穿刺用針体において、外部管路の変形を抑えて、外部管路の損傷や抜けを防ぐことができる。
【0159】
以下、発明Bの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0160】
図15~18には、発明Bの第1の実施形態としての穿刺用針体B-10を備える針組立体B-12が示されている。針組立体B-12は、穿刺用針体B-10が針先プロテクタB-14に対して針軸方向で移動可能に挿通された構造を有している。以下の説明において、特に説明がない限り、先端側とは穿刺用針体B-10の後述する針先B-20側である図15中の左方を、基端側とは穿刺用針体B-10の穿刺方向後方となる図15中の右方を、それぞれ言う。また、原則として、上下方向とは縦方向である図16中の上下方向を、左右方向とは横方向である図26中の上下方向を、それぞれ言う。なお、発明Bに係る図15図20では、見易さのために、各符号「B-○○」(○○は部位に対応する数字)において、「B-」の記載を省略した。また、図15図20が発明Bに係る図面であることを分かり易くするために、図15図20中に[発明B]と記載した。
【0161】
より詳細には、穿刺用針体B-10は、穿刺針B-16と、穿刺針B-16の基端側に設けられた針ハブB-18とを備えている。穿刺針B-16は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されており、一端が鋭利な先細形状を有する針先B-20とされている。穿刺針B-16の先端部分には貫通孔B-22が形成されており、血液が穿刺針B-16の内腔に流入し易くなっている。
【0162】
針ハブB-18は、全体として略円筒形状とされており、先端部分に穿刺針B-16の基端部分が挿入状態で固定されている。これにより、針ハブB-18の内腔と穿刺針B-16の内腔が針軸方向で連通されている。針ハブB-18は、先端部分を構成する針支持部B-24と、基端部分を構成するプロテクタ連結部B-26とを備えている。
【0163】
針支持部B-24は、略円筒形状とされており、例えば硬質の合成樹脂により形成されている。針支持部B-24の先端部分における内径寸法は、穿刺針B-16の外径寸法と略同じとされており、針支持部B-24の先端側の開口から穿刺針B-16の基端部分が挿入されて固定されている。なお、穿刺針B-16と針支持部B-24は、必要に応じて接着等されていても良い。
【0164】
針支持部B-24は、針軸方向の中間部分の外周面が、先端側に向かって次第に大径となるテーパ状面B-30とされている。これにより、針支持部B-24は、テーパ状面B-30を有する針軸方向の中間部分が、先端部分及び基端部分よりも小径とされた小径筒部B-32とされている。針支持部B-24の外周面は、外寸が軸方向で変化するテーパ状面B-30に限定されたものではなく、後述する凹部B-34及び凸部B-36以外が軸方向で略一定の外寸とされていても良い。
【0165】
針支持部B-24におけるテーパ状面B-30よりも先端部分には、外周面に開口する凹部B-34が形成されている。凹部B-34は、全周に亘って略一定の断面形状で連続する環状とされている。凹部B-34の形成箇所における針支持部B-24の最小外径寸法は、小径筒部B-32の最小外径寸法である基端の外径寸法と略同じとされている。
【0166】
針支持部B-24における凹部B-34よりも先端側には、環状の凸部B-36が外周面に突出している。凸部B-36は、針支持部B-24の先端乃至は先端に近い位置に設けられており、本実施形態では針支持部B-24の先端部を構成している。凸部B-36の形成部分における針支持部B-24の外径寸法は、小径筒部B-32の最大外径寸法である先端の外径寸法よりも大きくされている。
【0167】
凹部B-34の内面を構成する基端側面は、軸直角方向に広がる環状の基端側規制面B-38とされており、凹部B-34の底面とテーパ状面B-30とが基端側規制面B-38を介して段差状に連続している。凹部B-34の内面を構成する先端側面は、軸直角方向に広がる環状の先端側規制面B-40とされており、凹部B-34の底面と凸部B-36の外周面とが先端側規制面B-40を介して段差状に連続している。凹部B-34の基端側内面によって構成された基端側規制面B-38における軸直角方向の寸法は、先端側規制面B-40における軸直角方向の寸法に比べて、僅かに大きくされている。
【0168】
プロテクタ連結部B-26は、例えば針支持部B-24と同様に、硬質の合成樹脂によって形成されている。プロテクタ連結部B-26は、全体として段付きの略円筒形状とされており、先端側が小径の連結筒部B-42とされていると共に、基端側が大径の接続筒部B-44とされている。そして、プロテクタ連結部B-26は、連結筒部B-42に針支持部B-24の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針支持部B-24に固定されている。プロテクタ連結部B-26の縦方向(図16中の上下方向)の表面には、略矩形の凹所B-46が形成されている。本実施形態の凹所B-46は、図15に示すように、連結筒部B-42の表面に設けられているが、接続筒部B-44の表面に設けられていても良いし、連結筒部B-42と接続筒部B-44に跨って設けられていても良い。針支持部B-24とプロテクタ連結部B-26は、一体成形されていても良い。
【0169】
針ハブB-18の接続筒部B-44は、図17,18に示すように、接続穴B-48を有している。接続穴B-48は、略円形断面を有している。接続穴B-48は、開口と反対側である先端側に底部B-50を有している。接続筒部B-44の内孔が底部B-50を軸方向に貫通しており、底部B-50が環状に設けられている。接続穴B-48は、開口側である基端側が、底部B-50側である先端側よりも大径とされている。接続穴B-48は、基端側である開口端に向かって次第に大径となっており、接続穴B-48の周壁内面がテーパ筒形状とされている。接続穴B-48の開口縁部は、その断面が周壁内面の傾斜角度が部分的に大きくされた湾曲断面形状の開口拡開部B-52を備えている。
【0170】
接続穴B-48よりも先端側には、接続穴B-48の周壁よりも軸直角方向で厚肉とされた補強部B-54が設けられている。本実施形態の補強部B-54は、接続穴B-48の底部B-50を含んで構成されている。補強部B-54は、開口拡開部B-52よりも厚肉となっている。補強部B-54の内周面及び外周面は、接続穴B-48の周壁の外周面及び後述する接続ポートB-56の内周面と連続して設けられているが、例えば、補強部B-54において外周と内周の少なくとも一方へ突出する突部を設けて、補強部B-54をより厚肉とすることもできる。
【0171】
接続穴B-48の底部B-50には、接続ポートB-56が突設されている。接続ポートB-56は、筒状とされている。接続ポートB-56は、接続穴B-48の周壁に対して内周側に設けられている。接続ポートB-56は、接続穴B-48の壁部を構成する底部B-50から接続穴B-48の開口に向かって基端側へ突出しており、これによって、針ハブB-18における外部管路B-60の接続部分を比較的に小径とすることが可能とされている。接続ポートB-56の内周面は、軸方向で略一定の径寸法を有する円筒面とされている。接続ポートB-56の外周面は、径寸法が軸方向で基端側へ向かって次第に小さくなっており、先細のテーパ状外周面B-58とされている。接続ポートB-56は、図17に拡大して示すように、先端外周縁部の断面が角のないR形状とされている。接続ポートB-56は、接続筒部B-44と別体でも良いが、本実施形態では接続筒部B-44と一体形成されている。
【0172】
プロテクタ連結部B-26は、接続筒部B-44の接続穴B-48に外部管路B-60の先端が挿入されて、外部管路B-60の先端が接続ポートB-56に外挿状態で取り付けられる。外部管路B-60は、接続穴B-48の内周面及び接続ポートB-56に対して、必要に応じて接着や溶着が施される。外部管路B-60が接続筒部B-44に接続されることにより、プロテクタ連結部B-26の両側に針支持部B-24と外部管路B-60が接続されて、穿刺針B-16の内腔と針ハブB-18の内腔とが外部管路B-60に連通されている。これにより、穿刺針B-16の先端開口から外部管路B-60に至る流体流路B-62が穿刺用針体B-10に設けられている。
【0173】
外部管路B-60の先端が接続穴B-48に挿入されるだけでなく、接続ポートB-56に対して外挿されることにより、外部管路B-60が針ハブB-18に対してより強固に接続されて、外部管路B-60の針ハブB-18からの抜けが防止される。
【0174】
接続穴B-48の内周面がテーパ形状とされていることにより、接続穴B-48の内周面に外部管路B-60の外周面が固着される場合に、固着面積が大きく確保される。同様に、接続ポートB-56の外周面がテーパ形状とされていることにより、接続ポートB-56の外周面に外部管路B-60の内周面が固着される場合に、固着面積が大きく確保される。これらにより、針ハブB-18に対する外部管路B-60の固着強度を大きく得ることが可能とされている。
【0175】
接続筒部B-44には、先端側へ向かって延び出す一対の腕部B-64,64が設けられている。腕部B-64,64は、径方向に対向して配置されており、連結筒部B-42の外周を連結筒部B-42よりも先端側まで延び出している。腕部B-64,64は、連結筒部B-42に対して外周に離れて配置されていると共に、接続筒部B-44との接続部分が薄肉且つ幅狭とされており、外力の作用によって相互に接近する方向への弾性変形が許容されている。
【0176】
腕部B-64,64の先端部分には、それぞれフックB-66が形成されている。フックB-66は、各腕部B-64において腕部B-64,64の対向方向の外側へ向けて突出している。一対のフックB-66,66は、腕部B-64,64が接近方向へ弾性変形することによって、相互に接近する方向へ移動するようになっている。
【0177】
針先プロテクタB-14は、図15~18に示すように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂やMBS樹脂などの硬質の合成樹脂により一体成形されている。針先プロテクタB-14は、好適には、可視光の透過を許容する透明乃至は半透明とされている。針先プロテクタB-14は、筒状の周壁B-68を備えており、周壁B-68の内周には針軸方向に貫通する内孔B-70が形成されている。
【0178】
周壁B-68は、先端側が略真円環形状の断面を有する先端筒状部としての円筒状部B-72とされていると共に、基端側が円筒状部B-72よりも大径とされた大径筒状部としての拡開部B-74とされている。拡開部B-74は、針軸方向で形状が異なる。
【0179】
拡開部B-74は、略楕円筒形状とされており、小径方向である縦方向における外周面の幅寸法に比べて、大径方向である横方向における外周面の幅寸法の方が大きくされている。拡開部B-74を構成する壁部のうち、縦方向の壁部を構成する部分が幅狭部B-76,76とされている一方、横方向の壁部を構成する部分が幅狭部B-76,76よりも大きな寸法を有する幅広部B-78,78とされている。そして、幅狭部B-76,76の対向方向と、幅広部B-78,78の対向方向とが、互いに略直交している。幅狭部B-76,76と幅広部B-78,78は、同じ寸法であっても良い。
【0180】
幅広部B-78,78の外周面は、先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされている。円筒状部B-72の外周面と幅広部B-78,78の外周面は、滑らかに接続されている。円筒状部B-72から幅広部B-78,78にかけての肉厚寸法は、針軸方向で略一定とされている。幅広部B-78,78は、外周面と内周面が相互に対応する略楕円弧断面とされており、厚さ寸法が周方向で略一定とされている。そして、拡開部B-74の内周には、縦方向寸法より横方向寸法の方が大きい扁平形状の断面を有する内部空間B-80が、針先プロテクタB-14を貫通する内孔B-70の基端部分に形成されている。内部空間B-80は、横方向の内法寸法が基端側に向かって次第に大きくなっている。
【0181】
幅広部B-78,78には、板厚方向で貫通する係合部としての貫通窓B-82,82が形成されている。貫通窓B-82,82の周方向寸法は、フックB-66,66の周方向寸法よりも大きくされている。本実施形態では、針先プロテクタB-14の成形に際して、外周面の成形用金型が縦方向に型割されることから、貫通窓B-82,82は、縦方向の脱型に際してアンダーカットの生じない形状とされている。
【0182】
周壁B-68の内周面には、拡開部B-74の前端部分において軸直角方向に広がる環状の段差状面B-84が形成されている(図19参照)。周壁B-68の内周面は、段差状面B-84よりも先端側が基端側よりも大径とされている。なお、段差状面B-84の軸直角方向の寸法は、凹部B-34における先端側規制面B-40の軸直角方向の寸法よりも小さくされている。
【0183】
また、周壁B-68には、拡開部B-74の内周面から内部空間B-80へ突出する一対の突片B-86,86が設けられている。突片B-86,86は、図17に示すように、周壁B-68の拡開部B-74における幅広部B-78,78に一体形成されている。突片B-86,86は、幅広部B-78,78の内周側において、幅広部B-78,78に対応する位置に配置されている。突片B-86,86は、横方向で対向して設けられており、周方向で相互に離隔している。突片B-86,86は、段差状面B-84よりも基端側において周壁B-68の基端側に向かって突出している。突片B-86,86は、段差状面B-84から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びており、少なくとも突出先端部分が周壁B-68の幅広部B-78,78から内周側に離れて配されている。突片B-86,86は、それぞれ周方向に湾曲している。突片B-86は、凹部B-34及び凸部B-36以外の針支持部B-24の外周面と接触しないように設けられていても良い。拡開部B-74が切欠きを有し、突片B-86,86が切欠きから距離をおいて設けられていても良い。
【0184】
突片B-86,86の突出先端(針軸方向基端)には、内周側へ屈曲して突出する一対の爪部B-88,88が形成されている。爪部B-88,88の内周面は、それぞれ周方向に湾曲しており、爪部B-88,88の突出先端における内周面の曲率半径は、針支持部B-24における小径筒部B-32の外周面の曲率半径と略等しくされている。また、爪部B-88,88の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部B-32の外径寸法と略等しくされている一方、テーパ状面B-30における先端部分の最大外径寸法よりも小さくされている。尤も、爪部B-88,88の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部B-32の外径寸法よりも僅かに小さくされていても良いし、僅かに大きくされていても良い。なお、凸部B-36及び凹部B-34以外の針支持部B-24の外周面が一定径である場合、爪部B-88,88の突出先端における径方向での対向面間距離は、当該外周面の外径寸法に対して、僅かに小さくされていても良いし、僅かに大きくされていても良いし、略同じとされていても良い。
【0185】
爪部B-88,88の基端側端面B-90,90は、内周部分が軸直角方向に広がる垂直面B-90a,90aとされていると共に、外周部分が外周側に向かって針軸方向の先端側に傾斜する傾斜面B-90b,90bとされている(図19参照)。本実施形態では、垂直面B-90a,90aにおける軸直角方向の寸法が、凹部B-34の基端側規制面B-38における軸直角方向の寸法と略同じか或いは僅かに大きくされている。これにより、後述するように爪部B-88,88が基端側規制面B-38に当接する際には、基端側規制面B-38の全面が垂直面B-90a,90aに当接して、十分に大きな当接面積が確保され得る。更にまた、垂直面B-90a,90aの外周側に位置する傾斜面B-90b,90bが、外周側になるにつれて針軸方向の先端側に傾斜していることから、垂直面B-90a,90aと基端側規制面B-38とが傾斜面B-90b,90bに干渉されることなく当接する。
【0186】
また、爪部B-88,88の突出先端(針軸方向の基端)は、拡開部B-74の基端よりも針軸方向で先端側に位置している。従って、突片B-86,86の全体が、拡開部B-74の内部空間B-80に収容されている。
【0187】
針先プロテクタB-14の先端部分には、図15に示すように、翼状部B-92が設けられている。翼状部B-92は、例えば軟質の合成樹脂により形成されている。翼状部B-92は、筒状の嵌合筒部B-94に対して、板状の連結部B-96,96が嵌合筒部B-94の接線方向に突出して一体形成されていると共に、連結部B-96,96の嵌合筒部B-94からの突出先端側にそれぞれ翼本体B-98が一体形成されている。翼状部B-92は、嵌合筒部B-94が円筒状部B-72の先端部分に外嵌されることによって、針先プロテクタB-14の周壁B-68に取り付けられている。
【0188】
針先プロテクタB-14の内孔B-70に対して穿刺用針体B-10が基端側の開口部から挿通されることにより、針先プロテクタB-14が穿刺用針体B-10に外挿装着されて、針組立体B-12が構成されている。図15などに示す針組立体B-12の使用前の初期状態では、穿刺用針体B-10の針先B-20が針先プロテクタB-14よりも先端側に位置しており、針先B-20が露出している。この初期状態では、図17に示すように、針先プロテクタB-14の拡開部B-74に設けられた貫通窓B-82,82に対して、穿刺用針体B-10の針ハブB-18に設けられたフックB-66,66が入り込んで係合されている。これにより、針先プロテクタB-14と針ハブB-18が連結状態とされて、針先B-20の突出状態が維持されると共に、例えば翼状部B-92を持って穿刺を行う際に、穿刺時の抵抗等による穿刺針B-16の針軸方向基端側への移動が規制される。
【0189】
針組立体B-12の初期状態では、針先プロテクタB-14の爪部B-88,88が針支持部B-24の小径筒部B-32の外周面に当接している。なお、これら爪部B-88,88は、小径筒部B-32の外周面に当接することで僅かに外周側に押されていても良いし、小径筒部B-32の外周面に対して僅かに離隔していても良い。
【0190】
針組立体B-12は、穿刺針B-16を患者の血管に穿刺して留置針としての穿刺用針体B-10を留置することにより、流体流路B-62を通じての輸液や採血、血液透析等に用いられる。なお、本実施形態の針組立体B-12では翼状部B-92が設けられていることから、例えば翼状部B-92を摘まみつつ、穿刺用針体B-10の穿刺針B-16を穿刺することが可能となる。穿刺用針体B-10を穿刺状態で留置する際には、翼状部B-92の位置でテープ固定することにより、皮膚に対して広い接触面積をもって固定することができる。
【0191】
穿刺用針体B-10を抜去する場合には、翼状部B-92において針先プロテクタB-14がテープ固定された状態のまま、針ハブB-18における腕部B-64,64が手指で内側へ押圧される。これにより、フックB-66,66と貫通窓B-82,82との係止が解除されて、穿刺用針体B-10を針先プロテクタB-14に対して基端側へ移動させることが可能となる。穿刺用針体B-10を針先プロテクタB-14に対して基端側へ移動させて穿刺針B-16を皮膚から抜去することで、針先プロテクタB-14が穿刺用針体B-10に対して針先B-20側に移動する。
【0192】
フックB-66,66と貫通窓B-82,82が解除された状態において、針先プロテクタB-14に対して基端側へ移動させる外力を穿刺用針体B-10に加えない限り、穿刺用針体B-10が針先プロテクタB-14に対して基端側へ移動しないようになっている。即ち、爪部B-88,88が先端側に向かって大径となるテーパ状面B-30に当接していることにより、穿刺用針体B-10が針先プロテクタB-14に対する基端側への移動を防止されている。これにより、意図せず穿刺用針体B-10の針先B-20が針先プロテクタB-14で保護されてしまう不具合が防止され得る。
【0193】
穿刺用針体B-10を針先プロテクタB-14に対して基端側へ移動させることにより、爪部B-88,88がテーパ状面B-30に対して摺接し、突片B-86,86の弾性復元力が爪部B-88,88をテーパ状面B-30へ押し付ける付勢力として作用する。それ故、使用者は、爪部B-88,88とテーパ状面B-30の接触による抵抗力によって、針先プロテクタB-14から穿刺用針体B-10を引き抜いている感触を確認しつつ、穿刺用針体B-10を移動させることができる。
【0194】
図19に示すように、穿刺用針体B-10を針先プロテクタB-14に対して所定の位置まで後退移動させる(穿刺用針体B-10の針先B-20側へ針先プロテクタB-14を前進移動させる)ことにより、穿刺針B-16の針先B-20が針先プロテクタB-14で覆われる。更に、突片B-86,86の自由端側に設けられた爪部B-88,88が凹部B-34の開口上に移動することで、弾性的に形状復元した爪部B-88,88が凹部B-34内に入り込む。これにより、爪部B-88,88の垂直面B-90a,90aと凹部B-34の基端側規制面B-38とが当接して係止される。そして、穿刺用針体B-10の針先プロテクタB-14に対する先端側への移動が制限されて、穿刺用針体B-10の針先B-20の再露出が阻止される。
【0195】
突片B-86,86の前端部分に設けられた段差状面B-84と、凹部B-34の先端側規制面B-40とが当接して係止されることにより、穿刺用針体B-10の基端側への移動が制限される。これにより、穿刺用針体B-10の針先プロテクタB-14に対する基端側への抜出しが阻止される。それ故、針先プロテクタB-14に対する穿刺用針体B-10の軸方向両側への移動が阻止されて、針先プロテクタB-14による針先B-20の保護状態が維持される。
【0196】
本実施形態では一対の突片B-86,86が設けられており、突片B-86,86が針先プロテクタB-14の周壁B-68に一体成形されていることとも相俟って、爪部B-88,88と基端側規制面B-38を係止させた際に、針先プロテクタB-14が穿刺用針体B-10に対してがたつく等の不具合が効果的に防止され得る。このように、突片B-86を2つ、又は3つ以上設けることで、針先プロテクタB-14における穿刺用針体B-10に対する基端側への後退がより確実に阻止されて、針先B-20の再露出防止効果が一層安定して発揮され得る。この場合、複数の突片B-86は、針先プロテクタB-14の中心軸に対して略対称に配置されることが好ましい。
【0197】
穿刺用針体B-10の針先B-20が針先プロテクタB-14で保護された状態において、翼状部B-92のテープ固定を解除して、針組立体B-12を患者から取り外す。尤も、針先B-20の保護の手順は上記の手順に限定されるものではない。具体的には、例えば、翼状部B-92におけるテープ固定を解除し、針組立体B-12の全体を後退移動させて穿刺針B-16を血管から抜去した後、穿刺用針体B-10を針先プロテクタB-14に対して後退移動させることで、穿刺針B-16の針先B-20が保護されるようにしても良い。
【0198】
なお、爪部B-88,88が凹部B-34に入り込んだ際に、爪部B-88,88の先端が凹部B-34の底面に当接することで、その当接の衝撃や音を使用者が確認することができる。それ故、例えば、使用者が穿刺用針体B-10の引抜操作を途中で中断してしまうなどのおそれが回避されて、針先プロテクタB-14による針先B-20の保護がより確実に実現され得る。
【0199】
上記の如き構造とされた針先プロテクタB-14及び針組立体B-12では、穿刺用針体B-10の針先B-20の再露出を防止する突片B-86,86の全体が、筒状の周壁B-68の内部に収容されて設けられている。それ故、意図せず外部から突片B-86,86に接触することが略不可能とされている。従って、針先プロテクタB-14による穿刺用針体B-10の針先B-20の保護状態において、突片B-86,86と凹部B-34との係止を意図せず解除して針先B-20を針先プロテクタB-14から再露出させることが効果的に防止され得る。
【0200】
突片B-86,86が針ハブB-18に係止された状態において、例えば、針先プロテクタB-14及び/又は針ハブB-18に曲げ方向などの外力が及ぼされた場合に、突片B-86,86が外周側に離れて位置する幅広部B-78,78に当接し得る。これにより、突片B-86,86の外周側への変形が制限されて、突片B-86,86の針ハブB-18に対する係止が解除されるおそれが低減されることから、穿刺用針体B-10の針先B-20の保護状態が安定して維持され得る。
【0201】
突片B-86,86は、針先プロテクタB-14の基端側において拡開された拡開部B-74に設けられている。これにより、突片B-86,86の大きさを十分に確保しつつ、突片B-86,86間に挿通される針ハブB-18の針支持部B-24の外径寸法も十分に大きくされ得る。更にまた、本実施形態では、拡開部B-74が略楕円形状とされており、その外周面が円筒状部B-72の外周面から滑らかに連続していることから、拡開部B-74などが患者に接触して、患者が痛みを感じるおそれが低減されている。
【0202】
突片B-86,86が、拡開部B-74を構成する幅広部B-78,78の内側に設けられていることから、幅広部B-78,78が厚肉となることが回避されて、成形時の部材内への気泡の混入、ヒケやボイドの発生などによる寸法誤差の発生や品質の低下が抑えられる。また、係止部(突片B-86,86)は、幅広部B-78,78と同じ方向(軸方向の基端側)に延びるように設けられることが好ましい。これによれば、拡開部B-74が必要以上に大きくなり難く、幅広部B-78,78の内側のスペースを巧く利用することができると共に、幅広部B-78,78が厚肉となることも回避される。
【0203】
突片B-86,86は、基端側に向かって延びていることから、針先プロテクタB-14に対する穿刺用針体B-10の引抜きに際して引っ掛かったりすることがなく、スムーズな引抜きが実現され得る。
【0204】
相互に係止される爪部B-88,88の垂直面B-90a,90aと凹部B-34の基端側規制面B-38とが、何れも軸直角方向に広がっている。更に、相互に係止される段差状面B-84と凹部B-34の先端側規制面B-40とが、何れも軸直角方向に広がっている。それ故、垂直面B-90a,90a及び段差状面B-84を備える針先プロテクタB-14と、基端側規制面B-38及び先端側規制面B-40を備える針ハブB-18は、アンダーカット形状がなく成形が容易である。しかも、垂直面B-90a,90aと基端側規制面B-38の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。同様に、段差状面B-84と先端側規制面B-40の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。また、それぞれの当接面積も十分に確保することができて、穿刺用針体B-10に対する針先プロテクタB-14の先端側及び基端側への移動が、より確実に阻止され得る。
【0205】
接続ポートB-56が接続穴B-48の開口端面よりも底部B-50側に位置しており、接続ポートB-56が接続穴B-48に対して収容状態で配されていることから、針ハブB-18に接続される外部管路B-60の先端部が接続ポートB-56の先端を起点として折れ曲がる際に、外部管路B-60の変形量が接続穴B-48の周壁内面への当接によって制限される。それ故、外部管路B-60の過大な変形による損傷が回避されて、外部管路B-60の耐久性の向上が図られる。
【0206】
接続ポートB-56の先端外周縁部の断面が角のないR形状とされていることによって、外部管路B-60の内周面が接続ポートB-56の先端外周縁部に押し当てられたとしても、外部管路B-60の損傷が生じ難い。
【0207】
接続ポートB-56が接続穴B-48に対して収容された状態で設けられていることにより、例えば、外部管路B-60が取り付けられる前の接続ポートB-56が、別部材などに干渉して引っ掛かるのを防ぐことができる。また、接続ポートB-56が接続穴B-48の周壁によって周囲を保護されることから、接続ポートB-56の損傷も生じ難い。
【0208】
接続穴B-48の内周面がテーパ形状とされており、接続穴B-48が開口端に向かって大径とされていることから、外部管路B-60を接続穴B-48に挿入し易い。特に、接続ポートB-56の外周面が先細のテーパ状外周面B-58とされていることにより、接続穴B-48の開口側において接続穴B-48の内周面と接続ポートB-56の外周面との間隔が大きくなっており、外部管路B-60を接続穴B-48と接続ポートB-56の間に差し入れ易くなっている。
【0209】
さらに、接続穴B-48の開口部分に大径で湾曲断面形状を有する開口拡開部B-52が設けられていることにより、接続穴B-48に外部管路B-60を挿入する際に、外部管路B-60の先端が開口拡開部B-52に当接することで案内されて、外部管路B-60の接続穴B-48への挿入が容易になる。
【0210】
接続穴B-48の開口部分が大径とされた開口拡開部B-52を備えていることにより、外部管路B-60の変形が接続穴B-48の開口部分に触れることなくある程度まで許容されて、外部管路B-60の接続穴B-48の周壁に対する過度の押し付けが防止される。また、外部管路B-60が開口拡開部B-52に当接する際に、開口拡開部B-52が湾曲断面形状を有していることにより、外部管路B-60において開口拡開部B-52への当接による応力集中が生じ難い。
【0211】
接続穴B-48よりも先端側に厚肉の補強部B-54が設けられており、例えば外部管路B-60が針ハブB-18に接着される場合に針ハブB-18において接着剤の可塑剤によって損傷し易い部分が、補強部B-54とされている。これにより、針ハブB-18の損傷が防止されて、外部管路B-60と針ハブB-18の接着不良などが回避される。
【0212】
図20には、発明Bの第2の実施形態としての穿刺用針体B-100が示されている。穿刺用針体B-100は、穿刺針B-16の基端部が針ハブB-102によって支持された構造を有している。以下の説明において、発明Bの第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0213】
針ハブB-102は、先端部分が小径筒状の針支持部B-103とされていると共に、基端部分が針支持部B-103よりも大径のプロテクタ連結部B-104とされている。プロテクタ連結部B-104は、針支持部B-103と一体形成されており、基端面に開口する接続穴B-106を有している。
【0214】
接続穴B-106は、有底の円形穴とされており、針ハブB-102の内孔が底部B-108の中央を軸方向に貫通している。接続穴B-106の周壁内面は、底部B-108に近い部分が開口側に向かって次第に大径となるテーパ形状とされていると共に、開口に近い部分が略一定の径寸法で軸方向に延びる円筒状面とされている。このように、接続穴は、必ずしも全体がテーパ形状である必要はなく、部分的にテーパ形状の部分を有していても良い。接続穴B-106の開口端縁部は、その断面が角のない湾曲断面形状を有する開口拡開部B-110とされている。
【0215】
プロテクタ連結部B-104における接続穴B-106よりも先端側には、補強部B-112が設けられている。補強部B-112は、接続穴B-106の周壁よりも径方向の厚さ寸法が大きくされている。補強部B-112は、接続穴B-106の底部B-108を含んで構成されている。補強部B-112における先端側(針支持部B-103側)の端部は、先端側に向かって次第に小径となるテーパ形状とされている。
【0216】
接続穴B-106の底部B-108には、軸方向で接続穴B-106の開口側へ向かって突出する接続ポートB-114が設けられている。接続ポートB-114は、接続穴B-106の開口端面よりも底部B-108側に位置して、接続穴B-106に収容された状態で設けられている。
【0217】
接続穴B-106の周壁には、一対の腕部B-116,116が一体形成されている。腕部B-116,116は、軸直角方向に対向して配置されており、プロテクタ連結部B-104の外側に配されて、基端部においてプロテクタ連結部B-104の基端部に一体的につながっている。腕部B-116,116は、プロテクタ連結部B-104に対して離れて配置されていると共に、プロテクタ連結部B-104との接続部分が薄肉とされており、外力の作用によって相互に接近する軸直角方向への弾性変形が許容されている。
【0218】
一対の腕部B-116,116の対向方向と平行な軸方向縦断面を示す図20において、一対の腕部B-116,116の最小厚さ寸法Tが、接続穴B-106の周壁の最小厚さ寸法tよりも大きく設定されている。これにより、針ハブB-102と図示しない針先プロテクタとを分離させる際に外力が及ぼされて変形する腕部B-116,116の強度が、十分に確保される。更に、腕部B-116,116に対する外力の作用時に、接続穴B-106において腕部B-116,116の最小厚さよりも薄肉とされた部分に必要に応じて応力を分散させることによって、腕部B-116,116への応力集中が緩和されて、腕部B-116,116の耐久性の向上が図られる。
【0219】
なお、本実施形態において、針ハブB-102から腕部B-116,116が外周側へ突出して且つ前方に延びるように設けられている。そして、腕部B-116,116の突出部位よりも先端側にまで達して接続穴B-106が設けられている態様において、針ハブB-102における腕部B-116,116の突出部位よりも先端側に位置する接続穴B-106の周壁の最小厚さ寸法よりも腕部B-116,116の最小厚さ寸法が大きく設定される。それ故、針ハブB-102において腕部B-116,116の突出部位よりも後端側に比して要求強度が大きい先端側に対して、それよりも更に大きな厚さ寸法を腕部B-116,116に設定することで、腕部B-116,116の強度を一層有利に確保することが可能になる。
【0220】
以上、発明Bの実施形態について詳述してきたが、発明Bはその具体的な記載によって限定されない。例えば、接続穴の具体的な形状は特に限定されず、軸方向で略一定の径寸法とされていても良い。また、接続穴B-48の内周面は、例えば、全体が縦断面において湾曲する湾曲断面形状であっても良い。
【0221】
前記実施形態の接続ポートB-56は、外周面の全体がテーパ状外周面B-58で構成されているが、例えば、接続ポートB-56の基端側の外周面がテーパ状外周面B-58とされていると共に、接続ポートB-56の先端側の外周面が略一定の外径寸法を有する非傾斜の筒状面とされていても良い。また、接続ポートB-56のテーパ状外周面B-58は、傾斜角度が軸方向で変化する湾曲断面形状や屈折断面形状などであっても良い。また、テーパ状外周面B-58は必須ではなく、例えば、接続ポートB-56の外径寸法が軸方向で略一定であっても良い。また、例えば、接続ポートB-56の内径が軸方向で突出先端に向かって大きく或いは小さくなっていても良い。
【0222】
接続ポートB-56は、例えば接続穴B-48の壁部を構成する接続穴B-48の周壁から突出して設けられていても良く、接続穴B-48において底部B-50は必須ではない。
【0223】
[発明C]
また、図21~32には、発明A,Bとは異なる課題を解決し得る独立した発明Cとして認識され得る針組立体が示されている。発明Cは、血管などに穿刺されて留置される穿刺針の使用後に、抜去された穿刺針の針先を保護する針組立体に関するものである。
【0224】
従来から、輸液や採血、血液透析などを行う際に用いられる留置針が知られている。留置針は、鋭利な針先を有する穿刺針の基端部に針ハブが固定された構造を有している。そして、穿刺針が患者の血管などの体内管腔に穿刺されて留置され、針ハブに外部管路が接続されることにより、穿刺針の内腔と外部管路とを通じて輸液や採血、血液透析などが実施される。
【0225】
ところで、穿刺針は、使用後の誤穿刺や頻回使用の防止、或いは、廃棄処理の容易化などの目的で、体内管腔から抜去された穿刺針の針先を保護する針先プロテクタを備えるものがある。針先プロテクタ及びそれを備える針組立体としては、例えば、特開2017-196060号公報(特許文献1)に開示されている。即ち、特許文献1のプロテクタ付き医療用針によれば、針管を血管等から引き抜く際に、プロテクタが針管に対して針先側へ移動し、患者から抜去された針管がプロテクタの内周へ収容されて、針管の針先が外部に露出しないようにされる。
【0226】
しかし、発明者が特許文献1について詳細に検討したところ、針先プロテクタを穿刺針に対して針先側へ移動させる際に、穿刺針が針先プロテクタに対して相対的に大きく傾動し得るという、新規な課題が明らかとなった。そして、穿刺針が針先プロテクタに対して傾動すると、例えば、患者から抜去された穿刺針の針先が傾動によって患者の皮膚に接触し、患者に痛みを与えてしまうなどのおそれがあった。
【0227】
発明Cの解決課題は、穿刺針の針先プロテクタに対する傾動を抑えることができる、新規な構造の針組立体を提供することにある。
【0228】
以下、発明Cを把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、発明Cでは、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0229】
発明Cの第1の態様は、基端側に針ハブが設けられた穿刺針と、該針ハブに装着されて該穿刺針に対し相対移動することで該穿刺針の針先を覆う周壁を備えた針先プロテクタとを、含む針組立体であって、前記針先プロテクタにおいて前記針ハブに当接して該針先プロテクタの該針ハブに対する傾動を制限する当接部が、該周壁の基端側の開口部分に設けられているものである。
【0230】
本態様の針組立体によれば、針ハブが周壁の基端側の開口部分に設けられた当接部に当接することで、穿刺針の針先プロテクタに対する相対傾動を制限することができる。これにより、例えば、針先プロテクタを持ちながら穿刺針を引き抜く際に、穿刺針の針先の傾動を抑えることができる。それ故、患者から抜去された針先が、針先プロテクタに収容される前に患者の皮膚に触れてしまうなどの不具合を回避することができる。
【0231】
発明Cの第2の態様は、発明Cの第1の態様に記載された針組立体において、前記周壁の基端側の開口部は縦方向が横方向よりも小さくされた扁平形状とされており、該周壁の基端側の開口部分における縦方向の両側に前記当接部が設けられているものである。
【0232】
本態様の針組立体によれば、周壁の基端側の開口部分において開口幅が小さい縦方向の両側に当接部を設けることで、針ハブの当接部への当接によって穿刺針の針先プロテクタに対する傾動を効果的に制限することができる。
【0233】
発明Cの第3の態様は、発明Cの第2の態様に記載された針組立体において、前記周壁の内周における横方向には、前記針先側へ向けた前記周壁の移動位置において前記針ハブに係止されて基端側へ向かう該周壁の後退を阻止することで該針先の再露出を防止する係止部が設けられているものである。
【0234】
本態様の針組立体によれば、開口幅が大きい横方向では周壁の内周スペースが比較的に大きく確保され易い。そこで、周壁の横方向の内周スペースを利用して、針先プロテクタが穿刺針の基端側へ移動するのを防ぐ係止部を設けることによって、針先プロテクタの大径化を特に縦方向において抑えながら、針先の再露出を防ぐ機構を設けることができる。
【0235】
発明Cの第4の態様は、発明Cの第1~第3の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記穿刺針の前記針先と前記周壁の該針先側の先端とが針軸方向で略同じ位置にある状態において、該穿刺針の該周壁に対する傾動が、前記当接部によって該針先が該周壁に接触しない大きさに制限されるものである。
【0236】
穿刺針の針先が周壁から露出した状態では、針先と周壁の先端との位置が一致する直前において穿刺針の傾動が最大となる。そこで、本態様の針先プロテクタによれば、針先と周壁の先端との位置が一致する状態において、針先が周壁内面よりも内周側に位置するように穿刺針の傾動が制限される。これにより、穿刺針の針先プロテクタに対する相対的な傾動が十分に抑えられて、例えば針先の患者への接触などが防止される。
【0237】
発明Cの第5の態様は、発明Cの第1~第4の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記針ハブの前記針先側の端部に大径支点部が設けられており、前記穿刺針の前記周壁に対する傾動に際して該大径支点部が該周壁へ当接されるものである。
【0238】
本態様の針組立体によれば、穿刺針の針先プロテクタに対する相対的な傾動の中心が針ハブの先端部に設定されて、穿刺針の傾動中心から針先までの距離が短くなると共に、傾動中心から当接部までの距離が長くなる。これにより、穿刺針の傾動に際して、針先の動きが当接部によってより一層抑えられる。
【0239】
発明Cの第6の態様は、発明Cの第1~5の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記穿刺針の傾動が前記針ハブの前記周壁への当接によって制限されて、前記当接部が該周壁の基端側の開口部分を含んで構成されるものである。
【0240】
本態様の針組立体によれば、針ハブが直接的又は間接的に周壁に当接することで、針ハブの周壁に対する相対的な傾動が制限される。これにより、当接部を構成するために特別な部材や部位を設ける必要がなく、周壁を利用した簡単な構造によって当接部が実現される。
【0241】
発明Cによれば、穿刺針の針先プロテクタに対する相対的な傾動を抑えることができる。
【0242】
以下、発明Cの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0243】
図21~25には、発明Cの第1の実施形態としての針先プロテクタC-10を備える針組立体C-12が示されている。この針組立体C-12は、針先プロテクタC-10に対して留置針C-14が針軸方向で移動可能に挿通された構造を有している。以下の説明において、特に説明がない限り、先端側とは後述する穿刺針C-16の針先C-20側である図21中の左方を、基端側とは留置針C-14の穿刺方向後方となる図21中の右方を、それぞれ言う。また、原則として、上下方向とは縦方向である図22中の上下方向を、左右方向とは横方向である図21中の上下方向を、それぞれ言う。なお、発明Cに係る図21図32では、見易さのために、各符号「C-○○」(○○は部位に対応する数字)において、「C-」の記載を省略した。また、図21図32が発明Cに係る図面であることを分かり易くするために、図21図32中に[発明C]と記載した。
【0244】
より詳細には、留置針C-14は、穿刺針C-16と針ハブC-18を備えている。穿刺針C-16は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されており、一端が鋭利な先細形状を有する針先C-20とされている。穿刺針C-16の先端部分には貫通孔C-22が形成されており、血液が穿刺針C-16の内腔に流入し易くなっている。
【0245】
針ハブC-18は、全体として略円筒形状とされており、先端部分に穿刺針C-16の基端部分が挿入状態で固定されている。これにより、針ハブC-18の内腔と穿刺針C-16の内腔が針軸方向で連通されている。針ハブC-18は、先端部分を構成する針支持部C-24と、基端部分を構成するプロテクタ連結部C-26とを備えている。
【0246】
針支持部C-24は、略円筒形状とされており、例えば硬質の合成樹脂により形成されている。針支持部C-24の先端部分における内径寸法は、穿刺針C-16の外径寸法と略同じとされている。針支持部C-24の先端部分の内周面には、内周側へ向けて突出する環状の位置決め突部C-28が設けられている。そして、針支持部C-24の先端側の開口から穿刺針C-16の基端部分が挿入されて、穿刺針C-16の基端と位置決め突部C-28とが相互に当接することによって、穿刺針C-16が針ハブC-18に対して針軸方向(図21中の左右方向)で位置決めされている。なお、穿刺針C-16と針支持部C-24は、必要に応じて接着等されていても良い。
【0247】
針支持部C-24は、針軸方向の中間部分の外周面が、先端側に向かって次第に大径となるテーパ状面C-30とされている。これにより、針支持部C-24は、テーパ状面C-30を有する針軸方向の中間部分が、先端部分及び基端部分よりも小径とされた小径筒部C-32とされている。
【0248】
針支持部C-24におけるテーパ状面C-30よりも先端部分には、外周面に開口する係止凹部C-34が形成されている。係止凹部C-34は、全周に亘って略一定の断面形状で連続する環状とされている。係止凹部C-34の形成箇所における針支持部C-24の最小外径寸法は、小径筒部C-32の最小外径寸法である基端の外径寸法と略同じとされている。
【0249】
針支持部C-24における係止凹部C-34よりも先端側には、環状の大径支点部C-36が外周面に突出している。大径支点部C-36は、針支持部C-24の先端乃至は先端に近い位置に設けられており、本実施形態では針支持部C-24の先端部を構成している。大径支点部C-36の形成部分における針支持部C-24の外径寸法は、小径筒部C-32の最大外径寸法である先端の外径寸法よりも大きくされている。
【0250】
係止凹部C-34の内面を構成する基端側面は、軸直角方向に広がる環状の基端側規制面C-38とされており、係止凹部C-34の底面とテーパ状面C-30とが基端側規制面C-38を介して段差状に連続している。係止凹部C-34の内面を構成する先端側面は、軸直角方向に広がる環状の先端側規制面C-40とされており、係止凹部C-34の底面と大径支点部C-36の外周面とが先端側規制面C-40を介して段差状に連続している。係止凹部C-34の基端側内面によって構成された基端側規制面C-38における軸直角方向の寸法は、先端側規制面C-40における軸直角方向の寸法に比べて、僅かに大きくされている。
【0251】
プロテクタ連結部C-26は、例えば針支持部C-24と同様に、硬質の合成樹脂によって形成されている。プロテクタ連結部C-26は、全体として段付きの略円筒形状とされており、先端側が小径の連結筒部C-42とされていると共に、基端側が大径の接続筒部C-44とされている。そして、プロテクタ連結部C-26は、連結筒部C-42に針支持部C-24の基端部分が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、針支持部C-24に固定されている。プロテクタ連結部C-26の縦方向(図22中の上下方向)の表面には、略矩形の凹部C-46が形成されている。本実施形態の凹部C-46は、図21に示すように、連結筒部C-42の表面に設けられているが、接続筒部C-44の表面に設けられていても良いし、連結筒部C-42と接続筒部C-44に跨って設けられていても良い。
【0252】
プロテクタ連結部C-26は、接続筒部C-44に外部管路C-47の先端が挿入されて、必要に応じて接着や溶着が施されることにより、外部管路C-47に固定されている。プロテクタ連結部C-26の両側に針支持部C-24と外部管路C-47が接続されることにより、穿刺針C-16の内腔と針ハブC-18の内腔とが外部管路C-47に連通されており、穿刺針C-16の先端開口から外部管路C-47に至る流体流路C-48が留置針C-14に設けられている。
【0253】
接続筒部C-44には、先端側へ向かって延び出す一対の係合腕C-50,50が設けられている。係合腕C-50,50は、径方向に対向して配置されており、連結筒部C-42の外周を連結筒部C-42よりも先端側まで延び出している。係合腕C-50,50は、連結筒部C-42に対して外周に離れて配置されていると共に、接続筒部C-44との接続部分が薄肉且つ幅狭とされており、外力の作用によって相互に接近する方向への弾性変形が許容されている。
【0254】
係合腕C-50,50の先端部分には、それぞれフックC-52が形成されている。フックC-52は、各係合腕C-50において係合腕C-50,50の対向方向外側へ向けて突出している。一対のフックC-52,52は、係合腕C-50,50が接近方向へ弾性変形することによって、相互に接近する方向へ移動するようになっている。
【0255】
針先プロテクタC-10は、図26に示すように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂などの硬質の合成樹脂により一体成形されている。針先プロテクタC-10は、筒状の周壁C-54を備えており、周壁C-54の内周には針軸方向に貫通する内孔C-56が形成されている。
【0256】
周壁C-54は、先端側が略真円環形状の断面を有する円筒状部C-58とされていると共に、基端側が円筒状部C-58よりも大径で外周に広がる拡開部C-60とされており、針軸方向で形状が異ならされている。
【0257】
拡開部C-60は、図27にも示すように、略楕円筒形状とされており、小径方向である図26中の上下方向(縦方向)における外周面の幅寸法に比べて、大径方向である図26中の左右方向(横方向)における外周面の幅寸法の方が大きくされている。拡開部C-60を構成する壁部のうち、縦方向の壁部を構成する部分が幅狭部C-62,62とされている一方、横方向の壁部を構成する部分が幅広部C-64,64とされており、幅狭部C-62,62の対向方向と幅広部C-64,64の対向方向とが互いに直交している。なお、拡開部C-60は、上下方向及び左右方向が略同寸法であってもよい。また、拡開部C-60の外周面の断面形状は、円形や矩形等であってもよい。
【0258】
幅広部C-64,64の外周面は、先端側から基端側に向かって外径寸法が次第に大きくされている。円筒状部C-58の外周面と幅広部C-64,64の外周面は、滑らかに接続されている。円筒状部C-58から幅広部C-64,64にかけての肉厚寸法は、針軸方向で略一定とされていると共に、幅狭部C-62,62の肉厚寸法より小さくされている。換言すれば、幅狭部C-62,62は、円筒状部C-58や幅広部C-64,64よりも肉厚寸法が大きい厚肉部とされている。そして、拡開部C-60の内周には、縦方向寸法より横方向寸法の方が大きい扁平形状の断面を有する内部空間C-66が、針先プロテクタC-10を貫通する内孔C-56の基端部分に形成されている。内部空間C-66は、横方向の内法寸法が基端側に向かって次第に大きくなっている。
【0259】
幅広部C-64,64には、板厚方向で貫通する針ハブ係合部としての貫通窓C-68,68が形成されている。貫通窓C-68,68の周方向寸法は、フックC-52,52の周方向寸法よりも大きくされている。本実施形態では、針先プロテクタC-10の成形に際して、外周面の成形用金型が縦方向に型割されることから、貫通窓C-68,68は、縦方向の脱型に際してアンダーカットの生じない形状とされている。
【0260】
幅狭部C-62,62の外周面には、周方向の中央部分に凹部C-70が形成されている。凹部C-70は、略矩形の開口形状で縦方向の外表面に開口を有しており、貫通窓C-68,68に対して周方向で離れて配されている。
【0261】
周壁C-54の内周面には、図24に示すように、拡開部C-60の前端部分において軸直角方向に広がる環状の段差状面C-74が形成されている。周壁C-54の内周面は、段差状面C-74よりも先端側が基端側よりも大径とされている。なお、段差状面C-74の軸直角方向の寸法は、係止凹部C-34における先端側規制面C-40の軸直角方向の寸法よりも小さくされている。
【0262】
また、内部空間C-66内には、周壁C-54の拡開部C-60の内周面から内部空間C-66へ突出する係止部としての一対の係止片C-76,76が設けられている。係止片C-76,76は、図24,27に示すように、周壁C-54の拡開部C-60における幅広部C-64,64に一体形成されている。係止片C-76,76は、幅広部C-64,64の内周側において、幅広部C-64,64に対応する位置に配置されている。係止片C-76,76は、横方向で対向して設けられており、周方向で相互に離隔している。係止片C-76,76は、段差状面C-74よりも基端側において周壁C-54の基端側に向かって突出している。係止片C-76,76は、段差状面C-74から基端側に向かって針軸方向と略平行に延びていると共に、それぞれ周方向に湾曲している。
【0263】
係止片C-76,76の突出先端(針軸方向基端)には、内周側へ屈曲して突出する一対の係止爪C-78,78が形成されている。係止爪C-78,78の内周面は、図27に示すように、それぞれ周方向に湾曲しており、係止爪C-78,78の突出先端における内周面の曲率半径は、針支持部C-24における小径筒部C-32の外周面の曲率半径と略等しくされている。また、係止爪C-78,78の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部C-32の外径寸法と略等しくされている一方、テーパ状面C-30における先端部分の最大外径寸法よりも小さくされている。尤も、係止爪C-78,78の突出先端における径方向での対向面間距離は、小径筒部C-32の外径寸法よりも僅かに小さくされていても良いし、僅かに大きくされていても良い。
【0264】
さらに、係止爪C-78,78の基端側端面C-80,80は、内周部分が軸直角方向に広がる垂直面C-80a,80aとされていると共に、外周部分が外周側に向かって針軸方向の先端側に傾斜する傾斜面C-80b,80bとされている。本実施形態では、垂直面C-80a,80aにおける軸直角方向の寸法が、係止凹部C-34の基端側規制面C-38における軸直角方向の寸法と略同じか或いは僅かに大きくされている。これにより、後述するように係止爪C-78,78が基端側規制面C-38に当接する際には、基端側規制面C-38の全面が垂直面C-80a,80aに当接して、十分に大きな当接面積が確保され得る。更にまた、垂直面C-80a,80aの外周側に位置する傾斜面C-80b,80bが、外周側になるにつれて針軸方向の先端側に傾斜していることから、垂直面C-80a,80aと基端側規制面C-38とが傾斜面C-80b,80bに干渉されることなく当接する。
【0265】
また、係止爪C-78,78の突出先端(針軸方向の基端)は、拡開部C-60の基端よりも針軸方向で先端側に位置している。従って、係止片C-76,76の全体が、拡開部C-60の内部空間C-66に収容されている。
【0266】
針先プロテクタC-10の先端部分には、翼状部C-82が設けられている。翼状部C-82は、例えば軟質の合成樹脂により形成されている。翼状部C-82は、筒状の嵌合筒部C-84に対して、板状の連結部C-86,86が嵌合筒部C-84の接線方向に突出して一体形成されていると共に、連結部C-86,86の嵌合筒部C-84からの突出先端側にそれぞれ翼本体C-88が一体形成されている。翼状部C-82は、嵌合筒部C-84が円筒状部C-58の先端部分に外嵌されることによって、針先プロテクタC-10の周壁C-54に取り付けられている。
【0267】
針先プロテクタC-10の内孔C-56に対して留置針C-14が挿通されることにより、針先プロテクタC-10が留置針C-14に外挿装着されて、針組立体C-12が構成されている。図21などに示す針組立体C-12の使用前の初期状態では、留置針C-14の針先C-20が針先プロテクタC-10よりも先端側に位置しており、針先C-20が露出している。この初期状態では、針先プロテクタC-10の拡開部C-60に設けられた貫通窓C-68,68に対して、留置針C-14の針ハブC-18に設けられたフックC-52,52が入り込んで係止されている。これにより、針先プロテクタC-10と針ハブC-18が連結状態とされて、針先C-20の突出状態が維持されると共に、例えば翼状部C-82を持って穿刺を行う際に、穿刺時の抵抗等による穿刺針C-16の針軸方向基端側への移動が規制される。
【0268】
針組立体C-12の初期状態では、針先プロテクタC-10の係止爪C-78,78が針支持部C-24の小径筒部C-32の外周面に当接している。なお、これら係止爪C-78,78は、小径筒部C-32の外周面に当接することで僅かに外周側に押されていても良いし、小径筒部C-32の外周面に対して僅かに離隔していても良い。
【0269】
針組立体C-12は、穿刺針C-16を患者の血管に穿刺して留置針C-14を留置することにより、流体流路C-48を通じての輸液や採血、血液透析に供される。なお、本実施形態の針組立体C-12では翼状部C-82が設けられていることから、例えば翼状部C-82を摘まみつつ、留置針C-14の穿刺針C-16を穿刺することが可能となる。留置針C-14を穿刺状態で留置する際には、翼状部C-82の位置でテープ固定することにより、皮膚に対して広い接触面積をもって固定することができる。
【0270】
留置針C-14を抜去する場合には、翼状部C-82において針先プロテクタC-10がテープ固定された状態のまま、針ハブC-18における係合腕C-50,50が手指で内側へ押圧される。これにより、フックC-52,52と貫通窓C-68,68との係止が解除されて、留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動させることが可能となる。留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動させて穿刺針C-16を皮膚から抜去することで、針先プロテクタC-10が留置針C-14に対して針先C-20側に移動する。
【0271】
フックC-52,52と貫通窓C-68,68との係止が解除された状態において、針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動させる外力を留置針C-14に加えない限り、留置針C-14が針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動しないようになっている。即ち、係止爪C-78,78が先端側に向かって大径となるテーパ状面C-30に当接していることにより、留置針C-14が針先プロテクタC-10に対する基端側への移動を防止されている。これにより、意図せず留置針C-14の針先C-20が針先プロテクタC-10で保護されてしまう不具合が防止され得る。
【0272】
留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動させることにより、係止爪C-78,78がテーパ状面C-30に対して摺接し、係止片C-76,76の弾性復元力が係止爪C-78,78をテーパ状面C-30へ押し付ける付勢力として作用する。それ故、使用者は、係止爪C-78,78とテーパ状面C-30の接触による抵抗力によって、針先プロテクタC-10から留置針C-14を引き抜いている感触を確認しつつ、留置針C-14を移動させることができる。
【0273】
留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動させる際に、留置針C-14は、針先プロテクタC-10に対する傾動を生じ得る。即ち、係止爪C-78,78がテーパ状面C-30に摺接している他は、留置針C-14の針支持部C-24と針先プロテクタC-10の周壁C-54との間には隙間が設けられている。それ故、フックC-52,52と貫通窓C-68,68の係止が解除されて、留置針C-14が針先プロテクタC-10に対して基端側へ移動すると、留置針C-14の中心軸である針軸に対して、針先プロテクタC-10の中心軸が相対的に傾斜し得る。留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する縦方向の傾動に際して、留置針C-14が針ハブC-18の先端部分に設けられた大径支点部C-36において、針先プロテクタC-10の周壁C-54と当接する。それ故、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する縦方向の傾動は、図28に示すように、大径支点部C-36と周壁C-54との当接部分を中心として生じる。
【0274】
そして、傾動中心となる大径支点部C-36と周壁C-54との当接部分から基端側へ十分に離れた位置で、針ハブC-18が拡開部C-60の幅狭部C-62に直接的に当接することによって、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する縦方向の傾動が制限される。このように、針ハブC-18に当接することで留置針C-14の傾動を制限する傾動制限部としての機能を発揮する縦方向の当接部C-90が、針先プロテクタC-10の周壁C-54の基端側の開口部分に設けられている。本実施形態の当接部C-90は、周壁C-54の基端側の開口部分を構成する幅狭部C-62,62の内周部分によって構成されており、当接部C-90が縦方向の両側に設けられている。
【0275】
このような当接部C-90による留置針C-14の傾動制限によって、留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して基端側へ引き抜く際に、穿刺針C-16の傾動が制限されて針先C-20の軸直角方向の動きが抑えられる。それ故、例えば、血管などから抜去された穿刺針C-16の針先C-20が、留置針C-14の縦方向の傾動によって患者の皮膚に接触して患者を傷付けるなどの不具合が回避される。
【0276】
好適には、図29に示す針先C-20が針先プロテクタC-10の周壁C-54の先端に対して針軸方向で同じ位置にある状態において、留置針C-14の傾動によって針先C-20が周壁C-54に接触しないように、留置針C-14の傾動が当接部C-90によって制限される。これにより、針先C-20が針先プロテクタC-10の周壁C-54よりも先端に露出している状態では、針先C-20が周壁C-54よりも外周側に位置することがなく、針先C-20が患者の皮膚などに接するのを有効に防止できる。
【0277】
針先C-20が針先プロテクタC-10の周壁C-54の先端に対して針軸方向で同じ位置にある状態において、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する傾動の中心となる大径支点部C-36は、針先プロテクタC-10の軸方向中央よりも基端側に位置していることが望ましい。換言すれば、上記の状態において、針先C-20から大径支点部C-36までの距離が、針先プロテクタC-10の軸方向長さの1/2よりも長くされることが望ましい。より好適には、針先C-20から大径支点部C-36までの距離が、針先プロテクタC-10の軸方向長さの2/3よりも長くされる。
【0278】
周壁C-54の基端部分を構成する拡開部C-60は、縦方向寸法が横方向寸法よりも小さくされた扁平形状とされており、縦方向の内法寸法が横方向の内法寸法よりも小さくされている。これにより、留置針C-14が針先プロテクタC-10に対して縦方向で傾動する際に、針ハブC-18が当接部C-90に対して比較的に傾動が小さい段階で速やかに当接して、留置針C-14の傾動が小さく制限される。また、針先プロテクタC-10の基端部分は、縦方向の内法寸法が小さくされながら、横方向の内法寸法が十分に確保されることから、留置針C-14の傾動を縦方向で効果的に制限しながら、係止片C-76,76などを配するスペースを横方向において確保することができる。
【0279】
なお、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する横方向の傾動は、針ハブC-18の大径支点部C-36が周壁C-54の内周面に当接すると共に、係止片C-76,76が針ハブC-18の外周面に当接することによって、ある程度制限される。これにより、本実施形態の針先プロテクタC-10は、横方向の当接部が係止片C-76,76に設けられており、係止片C-76,76によって横方向の傾動制限部が構成されている。
【0280】
図30,31に示すように、留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して所定の位置まで後退移動させる(留置針C-14の針先C-20側へ針先プロテクタC-10を前進移動させる)ことにより、穿刺針C-16の針先C-20が針先プロテクタC-10で覆われる。更に、係止片C-76,76の自由端側に設けられた係止爪C-78,78が係止凹部C-34の開口上に移動することで、弾性的に形状復元した係止爪C-78,78が係止凹部C-34内に入り込む。そして、係止爪C-78,78の垂直面C-80a,80aと係止凹部C-34の基端側規制面C-38とが当接して係止されることにより、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する先端側への移動が制限されて、留置針C-14の針先C-20の再露出が阻止される。
【0281】
係止片C-76,76の前端部分に設けられた段差状面C-74と、係止凹部C-34の先端側規制面C-40とが当接して係止されることにより、留置針C-14の基端側への移動が制限される。これにより、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する基端側への抜出しが阻止される。それ故、針先プロテクタC-10に対する留置針C-14の軸方向両側への移動が制限されて、針先プロテクタC-10による針先C-20の保護状態が維持される。
【0282】
本実施形態では一対の係止片C-76,76が設けられており、係止片C-76,76が針先プロテクタC-10の周壁C-54に一体成形されていることとも相俟って、係止爪C-78,78と基端側規制面C-38を係止させた際に、針先プロテクタC-10が留置針C-14に対してがたつく等の不具合が効果的に防止され得る。このように、係止片C-76を2つ、又は3つ以上設けることで、針先プロテクタC-10における留置針C-14に対する基端側への後退がより確実に阻止されて、針先C-20の再露出防止効果が一層安定して発揮され得る。この場合、複数の係止片C-76は、針先プロテクタC-10の中心軸に対して略対称に配置されることが好ましい。
【0283】
また、針先C-20が針先プロテクタC-10の周壁C-54に収容された状態において、留置針C-14の周壁C-54に対する傾動は、針先C-20が周壁C-54の内周面に接触しない大きさに制限されることが望ましい。
【0284】
留置針C-14の針先C-20が針先プロテクタC-10で保護された状態において、翼状部C-82のテープ固定を解除して、針組立体C-12を患者から取り外す。尤も、針先C-20の保護の手順は上記の手順に限定されるものではない。具体的には、例えば、翼状部C-82におけるテープ固定を解除し、針組立体C-12の全体を後退移動させて穿刺針C-16を血管から抜去した後、留置針C-14を針先プロテクタC-10に対して後退移動させて、穿刺針C-16の針先C-20を保護するようにしても良い。
【0285】
なお、係止爪C-78,78が係止凹部C-34に入り込んだ際に、係止爪C-78,78の先端が係止凹部C-34の底面に当接することで、その当接の衝撃や音を使用者が確認することができる。それ故、例えば、使用者が留置針C-14の引抜操作を途中で中断してしまうなどのおそれが回避されて、針先プロテクタC-10による針先C-20の保護がより確実に実現され得る。
【0286】
上記の如き構造とされた針先プロテクタC-10及び針組立体C-12では、留置針C-14の針先C-20の再露出を防止する係止片C-76,76の全体が、筒状の周壁C-54の内部に収容されて設けられている。それ故、意図せず外部から係止片C-76,76に接触することが略不可能とされている。従って、針先プロテクタC-10による留置針C-14の針先C-20の保護状態において、係止片C-76,76と係止凹部C-34との係止を意図せず解除して針先C-20を針先プロテクタC-10から再露出させることが効果的に防止され得る。
【0287】
係止片C-76,76が針ハブC-18に係止された状態において、例えば、留置針用針先プロテクタC-10及び/又は針ハブC-18に曲げ方向などの外力が及ぼされた場合に、係止片C-76,76が外周側に離れて位置する幅広部C-64,64に当接し得る。これにより、係止片C-76,76の外周側への変形が制限されて、係止片C-76,76の針ハブC-18に対する係止が解除されるおそれが低減されることから、留置針C-14の針先C-20の保護状態が安定して維持され得る。
【0288】
係止片C-76,76は、針先プロテクタC-10の基端側において拡開された拡開部C-60に設けられている。これにより、係止片C-76,76の大きさを十分に確保しつつ、係止片C-76,76間に挿通される針ハブC-18の針支持部C-24の外径寸法も十分に大きくされ得る。更にまた、本実施形態では、拡開部C-60が略楕円形状、即ち患者に接触する部分が折れ点や角などを有しない滑らかな曲面形状とされており、その外周面が円筒状部C-58の外周面から滑らかに連続していることから、拡開部C-60などが患者に接触して、患者が痛みを感じるおそれが低減されている。
【0289】
係止片C-76,76が、拡開部C-60を構成する幅広部C-64,64の内側に設けられていることから、幅広部C-64,64が厚肉となることが回避されて、成形時の部材内への気泡の混入、ヒケやボイドの発生などによる寸法誤差の発生や品質の低下が抑えられる。また、係止部(係止片C-76,76)は、幅広部C-64,64と同じ方向(軸方向の基端側)に延びるように設けられることが好ましい。これによれば、拡開部C-60が必要以上に大きくなり難く、幅広部C-64,64の内側のスペースを巧く利用することができると共に、幅広部C-64,64が厚肉となることも回避される。
【0290】
係止片C-76,76は、基端側に向かって延びていることから、針先プロテクタC-10に対する留置針C-14の引抜きに際して引っ掛かったりすることがなく、スムーズな引抜きが実現され得る。
【0291】
係止片C-76,76は径方向で対向して一対が設けられていることから、針先プロテクタC-10による針先C-20の保護状態、即ち係止片C-76,76が係止凹部C-34に入り込んだ係止状態において、嵌合筒部C-84が係止片C-76,76の径方向間に挟持される。それ故、針先プロテクタC-10と留置針C-14(針支持部C-24)とが径方向間でぐらついたりすることがなく、針先プロテクタC-10による留置針C-14の針先C-20の保護状態が安定して維持され得る。
【0292】
相互に係止される係止爪C-78,78の垂直面C-80a,80aと係止凹部C-34の基端側規制面C-38とが、何れも軸直角方向に広がっている。更に、相互に係止される段差状面C-74と係止凹部C-34の先端側規制面C-40とが、何れも軸直角方向に広がっている。それ故、垂直面C-80a,80a及び段差状面C-74を備える針先プロテクタC-10と、基端側規制面C-38及び先端側規制面C-40を備える針ハブC-18は、アンダーカット形状がなく成形が容易である。しかも、垂直面C-80a,80aと基端側規制面C-38の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。同様に、段差状面C-74と先端側規制面C-40の当接による当接力及び当接反力が、軸方向に対して傾斜することなく作用する。また、それぞれの当接面積も十分に確保することができて、留置針C-14に対する針先プロテクタC-10の先端側及び基端側への移動が、より確実に阻止され得る。
【0293】
係止片C-76,76を周壁C-54の内周空間に突出するように設けたことで、例えば針先プロテクタC-10を型成形により製造する際に、針先プロテクタC-10の内周側を成形する金型を針先プロテクタC-10の針軸方向で脱型させることができる。それ故、金型の種類数を少なく抑えることができて、針先プロテクタC-10の製造効率の向上も図られ得る。
【0294】
針先プロテクタC-10は、例えば、軸方向に組み合わされる金型によって内周形状が成形されると共に、縦方向に組み合わされる金型によって外周形状が成形される。針先プロテクタC-10の外周面が縦方向に組み合わされた金型によって成形されることから、図22に示すように、金型のパーティング面に突出するパーティングラインC-92が、針先プロテクタC-10の横方向の外面に軸方向に延びて形成されている。これにより、パーティングラインC-92が患者に触れ難くなっており、パーティングラインC-92の接触による痛みなどが回避される。
【0295】
針先プロテクタC-10の成形に際して樹脂材料を金型のキャビティに充填するゲートの痕跡であるゲート跡C-94が、針先プロテクタC-10の凹部C-70内に設けられている(図21参照)。それ故、ゲート跡C-94が針先プロテクタC-10の縦方向の表面に突出して形成されていても、凹部C-70内に収容されることから、ゲート跡C-94が患者などに触れ難くなっている。しかも、凹部C-70の開口面積が指先の大きさに対して小さくされていることから、指先が凹部C-70に入り難く、針先プロテクタC-10を指先で持って操作する医療従事者も凹部C-70内のゲート跡C-94に触れ難い。従って、例えば、ゲートが金型の脱型に際して引き切られるピンゲートとされて、ゲート跡C-94が突出して残る場合にも、ゲート跡C-94への接触が問題になり難い。
【0296】
なお、金型のキャビティが広い部分から樹脂材料を充填することで、樹脂材料の充填不良などが生じ難くなるが、大径とされた拡開部C-60から樹脂材料を充填しようとすると、ゲート跡C-94が小径の針支持部C-24よりも外周側に形成されて患者等に触れ易くなる。しかしながら、ゲート跡C-94が凹部C-70内に収容された状態となっていることにより、患者等のゲート跡C-94への接触を防ぎつつ、ゲートの位置を大径とされる針先プロテクタC-10の基端部分に設定して、針先プロテクタC-10を効率的に製造することができる。
【0297】
同様に、針ハブC-18のプロテクタ連結部C-26も上下に分割された金型によって形成されており、パーティングラインC-96が横方向の表面に突出していることから、プロテクタ連結部C-26のパーティングラインC-96が患者に接触し難い。また、プロテクタ連結部C-26のゲート跡C-98は、プロテクタ連結部C-26の縦方向の表面に形成された凹部C-46の底面に突出しており、ゲート跡C-98が凹部C-46に収容されている。それ故、ゲート跡C-98がプロテクタ連結部C-26の縦方向の表面に形成されていても、ゲート跡C-98が患者に接触し難い。凹部C-46の開口面積が指先の大きさに対して小さくされており、針ハブC-18を指先で持って操作する医療従事者も凹部C-46内のゲート跡C-98に接触し難い。なお、ゲート跡C-98は、幅広部C-64,64側に設けられていてもよい。これによれば、針先プロテクタC-10の中でも薄肉となりやすい貫通窓C-68,68を備える係合部としての幅広部C-64,64にウェルドラインが発生し難くなる。その結果、幅広部C-64,64の強度が高くなり、針ハブC-18の係合腕C-50,50を針先プロテクタC-10に対してより強固に係合させることができる。それ故、針ハブC-18と針先プロテクタC-10の意図しない分離等が回避されて、針先保護機構の誤作動が防止され得る。また、例えば幅広部C-64,64が外力によって破壊されて、針先保護機構が正常に機能しなくなる等の不具合等も防止され得る。
【0298】
以上、発明Cの実施形態について詳述してきたが、発明Cはその具体的な記載によって限定されない。前記実施形態では、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する縦方向の傾動を制限する当接部C-90と、横方向の傾動を制限する当接部(係止片C-76,76)との両方が設けられているが、縦方向の当接部だけを設けることもできる。
【0299】
前記実施形態では、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する横方向の傾動を制限する当接部が、係止片C-76,76によって構成される構造を例示したが、例えば、留置針C-14の針ハブC-18と針先プロテクタC-10の周壁C-54(幅広部C-64,64)との当接によって、横方向の当接部を構成することもできる。
【0300】
当接部C-90は、例えば、幅狭部C-62,62を内周側へ厚肉としたり、幅狭部C-62,62から内周へ突出する凸部を設けるなどして、留置針C-14の針ハブC-18に対する縦方向のクリアランスを調節することもできる。これにより、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する傾動の許容範囲を調節することができる。なお、幅狭部C-62,62の内周面に凹所を形成したり、幅狭部C-62,62を内周側において薄肉とすれば、留置針C-14の針先プロテクタC-10に対する傾動がより大きく許容される。
【0301】
例えば、図32に示すように、拡開部C-60の内部空間C-66において、係止片C-76,76の外周側への変形量を制限する変形量制限部C-140,140を設けることもできる。変形量制限部C-140は、拡開部C-60の内周面から基端側に突出する突部C-142によって構成されている。突部C-142は、例えば、複数が幅狭部C-62,62の間において周方向で相互に離隔して並んで設けられていても良い。突部C-142は、係止片C-76に対して横方向(図32中の上下方向)で所定の距離を隔てて設けられており、係止片C-76の横方向外側への弾性変形が許容されている。
【0302】
このような変形量制限部C-140,140を設けることにより、係止片C-76,76の横方向外側への移動が、変形量制限部C-140,140によって制限されて、係止片C-76,76と基端側規制面C-38,38との係止が解除され難くなる。更に、係止片C-76,76の横方向外側への変形量が制限されることにより、留置針C-14と針先プロテクタC-10の横方向の傾動が、係止片C-76,76によって効果的に制限される。図32の構造では、留置針C-14の針ハブC-18が係止片C-76,76を介して変形量制限部C-140,140に当接することで、留置針C-14の横方向の傾動が制限されている。従って、図32の構造では、針ハブC-18に当接する当接部が係止片C-76,76によって構成されており、針ハブC-18の横方向の傾動を制限する傾動制限部が、係止片C-76,76と、変形量制限部C-140,140を備えた周壁C-54の幅広部C-64,64とによって構成されている。
【0303】
前記実施形態における周壁C-54の基端側の開口部分は、幅狭部C-62,62と幅広部C-64,64とを有する拡開部C-60とされており、縦方向寸法が横方向寸法よりも小さくされた扁平形状とされているが、周壁C-54の基端側の開口部分は、例えば真円形断面とされていても良い。また、周壁C-54の基端側の開口部分は、先端部分である円筒状部C-58よりも大径とされているが、周壁C-54は、軸方向の全体が略一定の径寸法であっても良いし、基端部分が先端部分よりも径寸法が小さくなっていても良い。周壁C-54の断面形状は、角のない円形乃至は楕円形であることが望ましいが、例えば、多角形や異形とすることもできる。
【0304】
留置針C-14と針先プロテクタC-10の傾動の中心となる大径支点部C-36は、針ハブC-18の先端部分に設けられることが望ましいが、例えば針ハブC-18における針支持部C-24の軸方向中間部分に設けることもできる。大径支点部は、針先C-20が針先プロテクタC-10に収容される状態において、針先プロテクタC-10の基端側の開口部分に設けられる当接部よりも先端側に位置していれば良い。
【0305】
[発明D]
また、図33~37には、発明A~Cとは異なる課題を解決し得る独立した発明Dとして認識され得る針組立体が示されている。発明Dは、例えば、血管に穿刺されて留置される留置針などとして用いられる針組立体に関するものである。
【0306】
従来から、輸液や投薬、人工透析などにおいて用いられる針組立体が知られている。針組立体は、例えば、特開2017-196060号公報(特許文献1)に示されているように、中空針の基端側に針ハブが設けられた構造を有している。
【0307】
ところで、特許文献1にも示されているように、針ハブには可撓性のチューブが接続されている場合がある。特許文献1では、針ハブの基端側に接続管部が設けられており、接続管部の内周へ可撓性チューブが挿入されることで、針ハブに可撓性チューブが接続されている。また、針ハブの接続管部と可撓性チューブは、例えば、接着剤を用いた接着によって相互に固定される場合がある。
【0308】
ところが、発明者が検討した結果、特許文献1に記載の構造において、針ハブと可撓性チューブを接着しようとする場合に、針ハブと可撓性チューブの間の適切な領域を接着剤によって接着することが難しいという、新規な課題が明らかになった。具体的には、例えば、接着剤が接着すべき領域の全体に行きわたらなかったり、接着剤が可撓性チューブの先端側にまで入り込んで、可撓性チューブの内腔を塞いでしまう等の不適切な接着態様になるおそれがあり、針ハブと可撓性チューブのより適切な接着を実現し得る構造が求められていた。
【0309】
発明Dの解決課題は、針ハブと可撓性のチューブとを適切に接着することができる、新規な構造の針組立体を提供することにある。
【0310】
以下、発明Dを把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、発明Dでは、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0311】
発明Dの第1の態様は、穿刺針の基端側に針ハブが設けられた構造を有する針組立体であって、前記針ハブの基端側に向けて開口する接続穴が設けられて、該接続穴に可撓性のチューブの端部が挿入されており、該チューブの外径寸法以下の内径寸法をもって該接続穴に設けられた嵌合部に該チューブが嵌め入れられていると共に、該接続穴における該嵌合部よりも基端側には拡径された接着部が設けられて該チューブの外周面が接着されているものである。
【0312】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、例えば、接着部よりも先端側においてチューブが嵌合部に嵌め入れられた状態で、接着部の内周面とチューブの外周面との間に接着剤が注入される際に、注入された接着剤が接着部とチューブの間に保持される。これにより、接着剤がチューブの先端側まで回り込み難く、針ハブの内腔やチューブの内腔が接着剤によって狭窄または閉塞されるのを防ぐことができる。
【0313】
また、チューブの外周面と接着部の内周面との少なくとも一方に接着剤が塗布された後でチューブの端部を接続穴に挿入する場合に、接着剤が嵌合部よりも先端側に入り難い。即ち、例えば、チューブの端部が接着部の内周を通過する際にチューブの端部の外周面に接着剤が付着したとしても、付着した接着剤がチューブの嵌合部への嵌め入れによって削ぎ取られて、接着剤がチューブと嵌合部の間に入り難く、チューブと接着部の間に保持される。その結果、接着剤がチューブの先端側において針ハブの内腔に入るのを防いで、針ハブの内腔やチューブの内腔が接着剤によって狭窄乃至閉塞されるのを防ぐことができる。
【0314】
また、チューブが嵌合部に嵌め入れられることから、チューブの端部が接着部に接着される前に針ハブに対して位置決めされている。それ故、チューブの針ハブに対する接着が容易になり、製造し易くなると共に、接着部分の品質の安定化も図られ得る。
【0315】
発明Dの第2の態様は、発明Dの第1の態様に記載された針組立体において、前記接着部の内周領域を該接着部の基端から先端側へ離れた位置において外部空間に連通する連通路が設けられているものである。
【0316】
接着剤の注入に際して接着部の内周領域に存在する空気が外部に排出される必要があるが、例えば接着部とチューブの間へ基端側から接着剤が注入されると、接着剤よりも先端側に空気が密封されてしまって、接着剤の先端側への浸入が空気によって阻害されるおそれがある。本態様に従う構造とされた針組立体によれば、接着部の内周領域が先端側において連通路を通じて外部空間に連通されることから、接着剤が基端側から注入される際に空気が連通路を通じて外部空間に排出される。それ故、接着剤が空気によって阻まれることなくより先端側まで導入されて、接着態様の安定化が図られると共に、接着部がチューブに対して広い範囲にわたって接着されて、接着強度を大きく得ることができる。
【0317】
また、例えば、連通路を通じて接着部とチューブの間に接着剤を注入することもできる。これによれば、接着剤が先端側から注入されることから、接着部とチューブの間の空気が接続穴の基端開口から外部に排出されて、接着剤が基端側まで導入され、接着部とチューブの接着面積を大きく確保することができる。
【0318】
発明Dの第3の態様は、発明Dの第2の態様に記載された針組立体において、前記連通路が前記針ハブの周方向の複数箇所に配されているものである。
【0319】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、可撓性のチューブが変形するなどして連通路の開口を塞いだとしても、複数の連通路が周方向の複数箇所に配されていることによって、チューブによって塞がれていない他の連通路を通じて空気の排出、或いは接着剤の注入が実現される。
【0320】
発明Dの第4の態様は、穿刺針の基端側に針ハブが設けられた構造を有する針組立体であって、前記針ハブの基端側に向けて開口する接続穴が設けられて、該接続穴に可撓性のチューブの端部が挿入されており、該チューブの外径寸法以上の内径寸法をもって該接続穴に設けられた接着部において該チューブの外周面が接着されていると共に、該接着部の基端から先端側へ離れた位置において該接着部の内周領域を外部空間に連通する連通路が、該針ハブの周方向の複数箇所に設けられているものである。
【0321】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、接着部の内周領域が先端側において連通路を通じて外部空間に連通されることから、接着剤が基端側から注入される際に空気が連通路を通じて外部空間に排出される。それ故、接着剤が空気によって阻まれることなくより先端側まで導入されて、接着態様の安定化が図られると共に、接着部がチューブに対して広い範囲にわたって接着されて、接着強度を大きく得ることができる。
【0322】
また、例えば、接着剤が連通路を通じて接着部とチューブの間に先端側から注入されるようにしてもよい。これによれば、接着部とチューブの間の空気が接続穴の基端開口から外部に排出されて、接着剤が基端側まで導入され、接着部とチューブの接着面積を大きく確保することができる。
【0323】
可撓性のチューブが変形するなどして連通路の開口を塞いだとしても、複数の連通路が周方向の複数箇所に配されていることによって、チューブによって塞がれていない他の連通路を通じて空気の排出または接着剤の注入が実現される。
【0324】
発明Dの第5の態様は、発明Dの第2~第4の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記接続穴の先端部分の壁内面に凹溝が形成されており、該凹溝の開口が前記チューブで覆われることによって前記連通路が構成されているものである。
【0325】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、接続穴の壁内面に凹溝が形成された簡単な構造によって連通路を得ることができて、針ハブの製造が容易になる。また、凹溝の開口をチューブで覆う構造によって、より通路断面積の小さな連通路を形成し易く、例えば、空気の通過が許容され且つ接着剤の通過が阻止される連通路を、通路断面積を小さくして流通抵抗を十分に大きく設定することによって実現できる。
【0326】
発明Dの第6の態様は、発明Dの第2~第5の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記連通路が前記接続穴の前記周壁部を前記接着部において貫通して設けられているものである。
【0327】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、接着部を貫通する孔によって連通路を簡単に設けることができる。また、連通路の通路断面形状の変化が生じ難く、連通路において意図しない狭窄や閉塞が生じるのを防ぐことができる。
【0328】
発明Dの第7の態様は、発明Dの第2~第6の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記連通路は、空気の通過が許容され、且つ接着剤の通過が阻止されているものである。
【0329】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、接着剤が連通路を通じて外部に漏れ出したり、連通路を通じて針ハブの内腔へ入った接着剤によって針ハブの内腔やチューブの内腔が狭窄乃至閉塞されたりするのを防ぐことができる。
【0330】
発明Dの第8の態様は、発明Dの第1~第7の何れか1つの態様に記載された針組立体において、前記針ハブの内周には、前記チューブの先端面に重ね合わされる段差面が設けられているものである。
【0331】
本態様に従う構造とされた針組立体によれば、チューブの先端面が段差面に重ね合わされることによって、チューブが針ハブに対して軸方向で位置決めされる。それ故、チューブが針ハブの接続穴に対して適切な位置まで挿入されて、チューブと針ハブの適切な接着が容易になる。
【0332】
発明Dによれば、針組立体において、針ハブと可撓性のチューブとを適切に接着することができる。
【0333】
以下、発明Dの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0334】
図33~36には、発明Dの第1の実施形態としての針先プロテクタ付針組立体D-10が示されている。針先プロテクタ付針組立体D-10は、穿刺針D-12の基端側に設けられた針ハブD-14に針先プロテクタD-16が装着された構造を有している。以下の説明において、特に説明がない限り、先端側とは穿刺針D-12の後述する針先D-20側である図33中の左方を、基端側とは針先プロテクタ付針組立体D-10の穿刺方向後方となる図33中の右方を、それぞれ言う。また、原則として、上下方向とは縦方向である図34中の上下方向を、左右方向とは横方向である図33中の上下方向を、それぞれ言う。なお、発明Dに係る図33図37では、見易さのために、各符号「D-○○」(○○は部位に対応する数字)において、「D-」の記載を省略した。また、図33図37が発明Dに係る図面であることを分かり易くするために、図33図37中に[発明D]と記載した。
【0335】
より詳細には、穿刺針D-12は、例えばステンレス鋼などの金属で形成されており、一端が鋭利な先細形状を有する針先D-20とされている。穿刺針D-12の先端部分には貫通孔D-22が形成されており、血液が穿刺針D-12の内腔に流入し易くなっている。
【0336】
針ハブD-14は、全体として筒状とされており、図35に示すように、軸方向に貫通する内腔D-24を備えている。針ハブD-14の内腔D-24の先端部分には、穿刺針D-12の基端部分が挿入状態で固定されている。これにより、穿刺針D-12の内腔が針ハブD-14の内腔D-24に連通されている。針ハブD-14は、先端部分を構成する第1部品D-26と、基端部分を構成する第2部品D-28とを備えている。本実施形態の第1部品D-26と第2部品D-28は別部品とされているが、第1部品D-26と第2部品D-28は一体成形されていてもよい。
【0337】
第1部品D-26は、略円筒形状とされており、例えば硬質の合成樹脂により形成されている。第1部品D-26の先端部分における内径寸法は、穿刺針D-12の外径寸法と略同じとされている。そして、第1部品D-26の先端側の開口から穿刺針D-12の基端部分が挿入されて、穿刺針D-12が針ハブD-14に対して固定されている。なお、穿刺針D-12は、針ハブD-14の第1部品D-26に対して、圧入等の手段によって非接着で固定されていてもよいし、接着剤を用いて接着されていてもよい。
【0338】
第1部品D-26は、針軸方向の中間部分の外周面が、先端側に向かって次第に大径となるテーパ状面D-32とされている。これにより、第1部品D-26は、テーパ状面D-32を有する針軸方向の中間部分が、先端部分および基端部分よりも小径とされている。
【0339】
第1部品D-26におけるテーパ状面D-32よりも先端部分には、外周面に開口する係止凹部D-36が形成されている。係止凹部D-36は、全周にわたって略一定の断面形状で連続する環状とされている。係止凹部D-36の形成箇所における第1部品D-26の最小外径寸法は、テーパ状面D-32の最小外径寸法と略同じとされている。
【0340】
第2部品D-28は、例えば第1部品D-26と同様に、硬質の合成樹脂によって形成されている。第2部品D-28は、全体として段付きの略円筒形状とされている。第2部品D-28の先端部分には、先端に向けて開口する連結穴D-38を備えた連結筒部D-40が設けられている。そして、第1部品D-26の基端部分が連結筒部D-40の連結穴D-38に挿入されて、必要に応じて接着や溶着によって固定されることにより、第2部品D-28が第1部品D-26に固定されている。
【0341】
第2部品D-28の基端部分には、基端に向けて開口する接続穴D-42を備えた接続筒部D-44が設けられている。接続筒部D-44は、図35~37に示すように、略円筒形状とされている。接続筒部D-44が接続穴D-42の周壁部とされて、接続筒部D-44の内腔が接続穴D-42とされており、針ハブD-14の内腔D-24の基端部分が接続穴D-42によって構成されている。
【0342】
接続筒部D-44は、図35に示すように、基端部分の内周面が基端に向けて外周へ傾斜するテーパ内面D-46とされており、基端に向けて次第に薄肉となっている。従って、接続筒部D-44の内腔である接続穴D-42は、開口側の端部である基端部が先端部よりも大径とされている。接続筒部D-44において、テーパ内面D-46を周壁内面とする基端部分が接着部D-48とされていると共に、テーパ内面D-46よりも先端側が接着部D-48に比して小径の嵌合部D-50とされている。接着部D-48は、接続筒部D-44において、嵌合部D-50よりも基端側に設けられている。接着部D-48の最大内径寸法は、後述するチューブD-84の外径寸法以上とされており、好適にはチューブD-84の外径寸法よりも大きくされている。また、嵌合部D-50の最小内径寸法は、チューブD-84の外径寸法以下とされており、好適にはチューブD-84の外径寸法よりも小さくされている。
【0343】
接続穴D-42の先端側には、段差面D-52が設けられている。即ち、針ハブD-14の内腔D-24は、接続穴D-42において大径とされており、針ハブD-14の内周面において接続穴D-42よりも先端側と接続穴D-42との境界に段差面D-52が形成されている。段差面D-52は、周方向に延びる略円環状の平面とされており、軸直角方向に広がっている。
【0344】
接続筒部D-44は、図35,37に示すように、径方向に貫通する連通路としての第1連通路D-54を備えている。第1連通路D-54は、接着部D-48を貫通してテーパ内面D-46に開口しており、接着部D-48の基端よりも先端側において接続穴D-42に連通されている。この第1連通路D-54によって、接着部D-48の内周領域D-55が、接着部D-48の基端よりも先端側において外部空間に連通されて開放されている。本実施形態では、接続筒部D-44の上下両側に一対の第1連通路D-54,54が上下方向に延びて設けられている。また、本実施形態の第1連通路D-54は、円形断面を有する孔とされているが、断面形状は限定されるものではない。また、第1連通路D-54の断面積は、好適には、後述する第2連通路D-88の断面積よりも大きくされている。
【0345】
接続筒部D-44には、図35~37に示すように、凹溝D-56が形成されている。凹溝D-56は、略半円形の断面形状を有している。凹溝D-56は、接続筒部D-44の先端部分に形成されており、基端部がテーパ内面D-46上に位置している。凹溝D-56は、周方向の複数箇所に形成されており、本実施形態では4つの凹溝D-56,56,56,56が設けられて、周方向で略均等に配されている。凹溝D-56は、接続筒部D-44の内周面に開口して軸方向に延びる第1溝部D-58と、段差面D-52に開口して第1溝部D-58の先端から内周へ向けて径方向に延びる第2溝部D-60とを、一体的に連続して備えている。
【0346】
第2部品D-28には、連結筒部D-40の左右両側に位置する一対の係合腕D-62,62が設けられている。係合腕D-62は、接続筒部D-44から先端に向けて突出して設けられており、連結筒部D-40よりも先端側まで達している。係合腕D-62,62は、連結筒部D-40に対して左右方向の外側へ離れて配されていると共に、接続筒部D-44との接続部分が薄肉且つ幅狭とされており、外力の作用によって相互に接近する方向への弾性変形が許容されている。
【0347】
係合腕D-62の先端部分には、フックD-64が形成されている。フックD-64は、係合腕D-62において左右方向の外側へ向けて突出している。一対の係合腕D-62,62に設けられたフックD-64,64は、係合腕D-62,62が接近方向へ弾性変形することによって、相互に接近する方向へ移動するようになっている。
【0348】
針ハブD-14には、針先プロテクタD-16が装着されている。針先プロテクタD-16は、使用済みの穿刺針D-12の針先D-20を覆うことにより、穿刺針D-12の頻回使用や穿刺針D-12の誤穿刺を防止する部材であって、従来から公知の各種構造が採用され得る。本実施形態の針先プロテクタD-16は、図33~35に示すように、全体として針軸方向に延びる略筒形状とされており、例えばポリプロピレンやポリカーボネート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレートやABS樹脂などの硬質の合成樹脂により一体成形されている。
【0349】
針先プロテクタD-16は、筒状の周壁D-66を備えている。周壁D-66の先端側は、略真円環形状の断面を有する円筒部D-68とされている。円筒部D-68の先端部分には、翼状部D-70が取り付けられている。翼状部D-70は、例えば軟質の合成樹脂により形成されている。翼状部D-70は、板状の翼本体D-72が筒状の嵌合筒部D-74から接線方向に突出した構造を有している。翼状部D-70は、嵌合筒部D-74が円筒部D-68の先端部分に外嵌されることによって、針先プロテクタD-16の周壁D-66に取り付けられている。
【0350】
周壁D-66の基端側は、円筒部D-68よりも大径で外周に広がる拡開部D-76とされており、針軸方向で形状が異ならされている。拡開部D-76は、略楕円筒形状とされており、小径方向である上下方向(図34中の上下方向)における外周面の幅寸法に比べて、大径方向である左右方向(図33中の上下方向)における外周面の幅寸法の方が大きくされている。拡開部D-76の左右方向の外寸は、先端側から基端側に向かって次第に大きくなっており、拡開部D-76の外周面の先端が円筒部D-68の外周面に段差や凹凸をなすことなく滑らかにつながっている。なお、拡開部D-76は、上下方向の外寸と左右方向の外寸が略同じであってもよい。また、拡開部D-76の外周面の断面形状は、円形や矩形等であってもよい。
【0351】
拡開部D-76の左右方向の両側には、左右方向に貫通する貫通窓D-78がそれぞれ形成されている。貫通窓D-78は、図33,34に示すように、周方向に所定の長さを有するスリット状とされている。貫通窓D-78の周方向の長さ寸法は、フックD-64の周方向の幅寸法よりも大きくされている。
【0352】
拡開部D-76における左右方向の中央部分には、係止部D-80が設けられている。係止部D-80は、図33,35に示すように、拡開部D-76の上下両側の基端部分にそれぞれ一体形成されており、左右両側にスリット状の切込みが形成されることによって、拡開部D-76の壁部から周方向で独立している。これにより、係止部D-80は、拡開部D-76の先端部分から基端へ向けて突出する板状とされており、板厚方向である上下方向において弾性的な曲げ変形が許容されている。
【0353】
また、係止部D-80には、上下方向の内側に向けて突出する係止爪D-82が設けられている。係止爪D-82は、針先プロテクタD-16の単体状態において、内周面が基端側へ向けて内傾する傾斜形状とされており、上下一対の係止爪D-82,82の上下方向の対向間距離が基端に向けて小さくなっている。また、上下一対の係止爪D-82,82の対向間距離の最小寸法は、針ハブD-14の第1部品D-26の外径寸法よりも小さくされている。
【0354】
針先プロテクタD-16は、図35に示すように、針ハブD-14に外挿状態で装着される。そして、針ハブD-14のフックD-64,64が針先プロテクタD-16の貫通窓D-78,78に差し入れられて、フックD-64,64が貫通窓D-78,78の基端縁部に係止されることにより、針先プロテクタD-16が針ハブD-14に対して先端側への移動を制限された状態で連結されている。針先プロテクタD-16の係止爪D-82は、針ハブD-14の第1部品D-26の外周面に弾性的に押し当てられている。
【0355】
針先プロテクタD-16は、使用済みの穿刺針D-12の針先D-20を覆うものである。即ち、穿刺針D-12が血管等へ穿刺された後で血管等から抜去されると、係合腕D-62,62は、使用者の指先によって摘ままれるなどして、左右方向で相互に接近する方向へ押し込まれる。これにより、フックD-64,64が貫通窓D-78,78よりも内周側へ移動して、フックD-64,64と貫通窓D-78,78の基端側縁部との係止が解除される。その結果、針先プロテクタD-16の針ハブD-14に対する先端側への移動が許容される。そして、使用者が針先プロテクタD-16を針ハブD-14に対して先端側へ押し込んで移動させる、換言すれば、針ハブD-14を針先プロテクタD-16に対して基端側へ引いて移動させることにより、穿刺針D-12の針先D-20が針先プロテクタD-16の内周へ収容される。
【0356】
針先D-20を覆う位置まで移動した針先プロテクタD-16は、係止爪D-82,82が針ハブD-14の係止凹部D-36に入り込んで、係止爪D-82,82が係止凹部D-36の先端側内面と基端側内面とに係止されることにより、針ハブD-14に対する先端側および基端側への移動が制限される。これにより、穿刺針D-12の針先D-20は、針先プロテクタD-16から再露出することなく、針先プロテクタD-16の内周に収容された状態とされる。
【0357】
ところで、針ハブD-14には、医療用のチューブD-84が接続されている。チューブD-84は、合成樹脂材料などによって形成されて、可撓性を有しており、柔軟に変形可能とされている。チューブD-84は、一方の端部が針ハブD-14に固定されている。即ち、チューブD-84の一方の端部は、針ハブD-14の基端側に向けて開口する接続穴D-42に挿入されている。そして、チューブD-84の一方の端部が、嵌合部D-50に嵌め入れられていると共に、チューブD-84の外周面と接着部D-48の内周面とが接着剤D-86によって相互に接着されている。また、チューブD-84の先端面は、針ハブD-14の内周面に設けられた段差面D-52に軸方向で重ね合わされる。これにより、チューブD-84の接続穴D-42への挿入端の位置が、段差面D-52への当接によって軸方向において規定される。なお、嵌合部D-50に嵌め入れられたチューブD-84の先端部分は、嵌合部D-50への当接反力によって径方向で内向きに押し込まれて変形した状態とされており、チューブD-84の弾性に基づいて嵌合部D-50に嵌め合わされている。
【0358】
チューブD-84が接続穴D-42の嵌合部D-50に嵌合されることにより、凹溝D-56の内側開口がチューブD-84によって覆われる。これにより、針ハブD-14の接続筒部D-44とチューブD-84の重ね合わせ面間を延びる連通路としての第2連通路D-88が、凹溝D-56によって構成されている。本実施形態では、凹溝D-56が周方向の4箇所に配されていることから、各凹溝D-56の内側開口がチューブD-84によって覆われることによって、第2連通路D-88が周方向の4箇所に配されている。
【0359】
第2連通路D-88は、基端開口がテーパ内面D-46に開口して、接着部D-48の内周領域D-55に連通されていると共に、先端開口がチューブD-84よりも先端側において内周へ開口して、針ハブD-14の内腔D-24に連通されている。そして、接着部D-48の内周領域D-55と外部空間が、第2連通路D-88と針ハブD-14の内腔D-24を通じて相互に連通されており、接着部D-48の内周領域D-55が、第2連通路D-88を通じて外部空間に開放されている。
【0360】
接着剤D-86は、医療器具である針ハブD-14とチューブD-84の接着に使用可能な硬化型接着剤であって、例えば、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型接着剤の他、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ホットメルト型接着剤、アクリル系接着剤などが好適に用いられる。
【0361】
接着剤D-86は、チューブD-84の端部が差し入れられた針ハブD-14の接続穴D-42に対して注入される。接着剤D-86は、接続穴D-42の基端開口から針ハブD-14の接続筒部D-44とチューブD-84の間に注入されてもよいが、本実施形態では、第1連通路D-54を通じて針ハブD-14の接続筒部D-44とチューブD-84の間に注入される。接続穴D-42の基端側の開口部分である接着部D-48は、内径寸法が先端部分である嵌合部D-50よりも大きくされており、接着部D-48において接続筒部D-44の内周面とチューブD-84の外周面との隙間がより大きくされている。これにより、接続筒部D-44とチューブD-84の間に接着剤D-86が所定の量だけ溜まって保持される。なお、接着剤D-86を注入する際には、針ハブD-14を針先D-20側である先端側が鉛直下方向を向くように保持したり、接続穴D-42の基端開口を適切な蓋部材等で覆うことが望ましい。これにより、第1連通路D-54から接続穴D-42内へ注入された接着剤D-86が接続穴D-42の基端開口からこぼれ難くなる。
【0362】
接着剤D-86が第1連通路D-54を通じて第1連通路D-54よりも先端側へ注入される際に、接続穴D-42内の空気は、第1連通路D-54よりも先端側に配された第2連通路D-88を通じて、針ハブD-14の内腔D-24へ排出される。これにより、接着剤D-86の先端側への進行が接続穴D-42内の空気によって阻害されず、針ハブD-14とチューブD-84がより広い範囲で接着される。
【0363】
第2連通路D-88は、周方向で部分的に設けられて通路断面積が十分に小さくされていることにより、空気の通過が許容されていると共に、接着剤D-86の通過が阻止されている。それ故、接続穴D-42に注入される接着剤D-86は、第2連通路D-88を通じて針ハブD-14の内腔D-24に入り込むことがなく、針ハブD-14の内腔D-24やチューブD-84の先端開口が接着剤D-86によって全体的に或いは部分的に塞がれることがない。なお、第2連通路D-88は、接着剤D-86が途中まで浸入しても問題はないが、接着剤D-86が第2連通路D-88を通過して針ハブD-14の内腔D-24まで到達しないことが望ましい。
【0364】
第2連通路D-88は、針ハブD-14の内面に形成された凹溝D-56の開口をチューブD-84で覆うことによって形成されていることから、硬質の針ハブD-14を貫通する孔で構成された第1連通路D-54に比して、通路断面積をより小さくし易い。それ故、第2連通路D-88の基端側への開口面積を十分に小さくすることによって、接着剤D-86の第2連通路D-88の通過を阻止可能な程度に第2連通路D-88の流通抵抗を大きく設定することもできる。
【0365】
以上により、針ハブD-14における接続穴D-42の内面とチューブD-84との接着剤D-86による接着領域が適切に制御されて設けられる。それ故、針ハブD-14とチューブD-84の接着による固定強度が十分に大きく得られると共に、接着剤D-86の回り込みによる針ハブD-14の内腔D-24やチューブD-84の内腔の狭窄乃至閉塞が回避される。
【0366】
可撓性のチューブD-84は、針ハブD-14に対して図35のようなまっすぐな状態で挿入されない場合もある。例えば、チューブD-84が基端側へ向けて上方向に湾曲していると、上側の第2連通路D-88がチューブD-84によって覆われて遮断される場合もあり得る。しかしながら、針ハブD-14では、複数の第2連通路D-88が周方向の異なる位置に配されていることから、1つの第2連通路D-88が遮断されたとしても、他の第2連通路D-88が連通状態とされて、第2連通路D-88を通じた空気抜きが実現される。同様に、第1連通路D-54についても、複数が周方向の異なる位置に配されていることから、全ての第1連通路D-54が同時に遮断されるのが防止されて、接着剤D-86のスムーズな注入が可能とされる。
【0367】
接着剤D-86は、例えば、チューブD-84の端部が針ハブD-14の接続穴D-42に挿入された状態で接続穴D-42に注入されるが、チューブD-84の外周面と接続穴D-42(接着部D-48)の内周面との少なくとも一方に接着剤D-86が塗布された後で、チューブD-84が接続穴D-42に挿入されてもよい。この場合、チューブD-84の先端部分が接続穴D-42の嵌合部D-50に嵌め入れられる際に、チューブD-84の外周面が嵌合部D-50の内周面に押し付けられた状態で嵌め入れられることから、チューブD-84の外周面に付着した接着剤D-86が嵌合部D-50によって削ぎ取られる。それ故、例えば、チューブD-84の先端部分が接着部D-48の内周を通過する際に接着剤D-86がチューブD-84の先端部分の外周面に付着したとしても、接着剤D-86がチューブD-84と嵌合部D-50の間に入り込み難い。従って、接着剤D-86がチューブD-84の先端側で針ハブD-14の内腔D-24に入るのを防ぐことができて、針ハブD-14の内腔D-24やチューブD-84の内腔が接着剤D-86によって狭窄乃至閉塞されるのを防ぐことができる。
【0368】
以上、発明Dの実施形態について詳述してきたが、発明Dはその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、接続筒部D-44の基端側に孔状の第1連通路D-54が設けられると共に、接続筒部D-44の先端側に凹溝D-56による第2連通路D-88が設けられた例を示したが、連通路は、第1連通路D-54と第2連通路D-88の何れか一方だけによって構成することもできる。また、孔状の連通路を接着部D-48の先端部分に設けてもよい。
【0369】
前記実施形態では、第2連通路D-88において空気の通過を許容し且つ接着剤D-86の通過を阻止する構成として、第2連通路D-88の通路断面積を小さくして流通抵抗を大きく設定することが例示されている。しかしながら、空気の通過を許容し且つ接着剤D-86の通過を阻止する構成は、例えば、空気の通過を許容し且つ接着剤D-86の通過を阻止するフィルタが、第2連通路D-88に設けられることによっても、実現され得る。
【0370】
前記実施形態の第2連通路D-88は、先端側の開口が針ハブD-14の内腔D-24を介して外部空間に連通されていたが、針ハブD-14の内腔D-24を介することなく外部空間に直接連通されていてもよい。具体的には、例えば、第1溝部D-58の先端部から径方向内側へ延びる第2溝部D-60に代えて、第1溝部D-58の先端部から径方向外側へ延びる孔が設けられることにより、第2連通路を外部空間に直接的に連通することができる。
【0371】
前記実施形態では、接着剤D-86が第1連通路D-54を通じて接続穴D-42へ導入されると共に、接続穴D-42内の空気が第2連通路D-88を通じて排出される例を示した。しかしながら、例えば、接着剤D-86が第2連通路D-88を通じて接続穴D-42へ導入されると共に、第1連通路D-54と接続穴D-42の基端開口が、空気を排出するための通気口とされていてもよい。第1連通路D-54が接続穴D-42内の空気を排出する通気口として用いられる場合に、第1連通路D-54は、前記実施形態の第2連通路D-88と同様に、空気の通過が許容されると共に、接着剤D-86の通過が阻止されることが望ましい。
【0372】
また、接着剤D-86が接続穴D-42の基端開口から接続穴D-42内へ導入されて、第1連通路D-54と第2連通路D-88の両方が、接続穴D-42内の空気を排出するための通気口とされてもよい。この場合、接着剤D-86が接続穴D-42の基端開口から注入される際に、接続穴D-42内の空気は、先ず、第1連通路D-54と第2連通路D-88の両方を通じて外部に排出される。これにより、接着剤D-86が接続穴D-42の開口に留まることなく内部まで入り込んで、接続筒部D-44の内周面とチューブD-84の外周面が広い範囲で接着される。次に、接着剤D-86が第1連通路D-54の内側開口を塞ぐ位置まで充填されると、接続穴D-42内の空気は第1連通路D-54を通じて外部に排出されなくなる。ここにおいて、第2連通路D-88が第1連通路D-54よりも先端側に配されていることから、第2連通路D-88を通じた針ハブD-14の内腔D-24への空気の排出が継続される。それ故、第1連通路D-54が接着剤D-86によって塞がれたとしても、接続穴D-42内の空気によって接着剤D-86の先端側への進行が阻害されず、針ハブD-14とチューブD-84がより広い範囲で接着される。
【0373】
連通路の数、配置、形状、大きさなどは、何れも特に限定されない。例えば、連通路が接着剤D-86の導入に用いられる場合には、前記実施形態の第1連通路D-54のように、通路断面積が比較的に大きくされて、接着剤D-86がスムーズに導入されることが望ましい。また、連通路が空気の排出に用いられる場合には、前記実施形態の第2連通路D-88のように、断面積が比較的に小さくされて、接着剤D-86が浸入し難くされることが望ましい。
【0374】
前記実施形態では、接着部D-48の内周面がテーパ内面D-46とされており、それによって接着部D-48とチューブD-84の間に接着剤D-86を保持するスペースが形成されているが、接着部D-48とチューブD-84の間にスペースを形成する構造は、テーパ内面D-46に限定されない。具体的には、例えば、接続筒部D-44の内周面に段差が設けられて、接着部D-48の内径寸法がチューブD-84の外径寸法よりも大きくされることにより、接着部D-48とチューブD-84の間に接着剤D-86を保持するスペースが形成されるようにもできる。
【0375】
針先プロテクタD-16は、必須ではなく省略することもできる。また、前記実施形態の針先プロテクタD-16とは構造や材質が異なる針先プロテクタを採用してもよい。
【符号の説明】
【0376】
A-10 針先プロテクタ
A-12 針組立体
A-14 穿刺用針体
A-16 穿刺針
A-18 針ハブ
A-20 針先
A-22 貫通孔
A-24 針支持部
A-26 プロテクタ連結部
A-28 位置決め突部
A-30 テーパ状面
A-32 小径筒部
A-34 係止凹部
A-36 大径支点部
A-38 基端側規制面
A-40 先端側規制面
A-42 連結筒部
A-44 接続筒部
A-46 凹部
A-47 外部管路
A-48 流体流路
A-50 係合腕
A-52 フック
A-54 周壁
A-56 内孔
A-57 基端側開口部
A-58 円筒状部
A-60 拡開部
A-62 幅狭部
A-64 幅広部
A-66 内部空間
A-68 貫通窓
A-70 厚肉部
A-71 ブリッジ部
A-72 凹所
A-74 凹み
A-76 段差状面
A-78 係止片(可撓片)
A-80 係止爪
A-82 基端側端面
A-82a 小壁部
A-82b 傾斜面
A-84 割型
A-86 割型
A-88 金型
A-90 パーティング面
A-92 パーティングライン
A-94 キャビティ
A-96 注入ゲート
A-98 注入ゲート跡
A-100 突出ピン
A-102 突出ピン跡
A-104 翼状部
A-106 嵌合筒部
A-108 連結部
A-110 翼本体
A-112 接触部
A-120 針先プロテクタ
A-122 針組立体
A-130 金型
A-132 キャビティ
A-134 注入ゲート
A-140 針先プロテクタ
A-142 凹所
A-150 針先プロテクタ
A-160 針先プロテクタ
B-10 穿刺用針体
B-12 針組立体
B-14 針先プロテクタ
B-16 穿刺針
B-18 針ハブ
B-20 針先
B-22 貫通孔
B-24 針支持部
B-26 プロテクタ連結部
B-30 テーパ状面
B-32 小径筒部
B-34 凹部
B-36 凸部
B-38 基端側規制面
B-40 先端側規制面
B-42 連結筒部
B-44 接続筒部
B-46 凹所
B-48 接続穴
B-50 底部
B-52 開口拡開部
B-54 補強部
B-56 接続ポート
B-58 テーパ状外周面
B-60 外部管路
B-62 流体流路
B-64 腕部
B-66 フック
B-68 周壁
B-70 内孔
B-72 円筒状部
B-74 拡開部
B-76 幅狭部
B-78 幅広部
B-80 内部空間
B-82 貫通窓
B-84 段差状面
B-86 突片
B-88 爪部
B-90 基端側端面
B-90a 垂直面
B-90b 傾斜面
B-92 翼状部
B-94 嵌合筒部
B-96 連結部
B-98 翼本体
B-100 穿刺用針体
B-102 針ハブ
B-103 針支持部
B-104 プロテクタ連結部
B-106 接続穴
B-108 底部
B-110 開口拡開部
B-112 補強部
B-114 接続ポート
B-116 腕部
C-10 針先プロテクタ
C-12 針組立体
C-14 留置針
C-16 穿刺針
C-18 針ハブ
C-20 針先
C-22 貫通孔
C-24 針支持部
C-26 プロテクタ連結部
C-28 位置決め突部
C-30 テーパ状面
C-32 小径筒部
C-34 係止凹部
C-36 大径支点部
C-38 基端側規制面
C-40 先端側規制面
C-42 連結筒部
C-44 接続筒部
C-46 凹部
C-47 外部管路
C-48 流体流路
C-50 係合腕
C-52 フック
C-54 周壁
C-56 内孔
C-58 円筒状部
C-60 拡開部
C-62 幅狭部
C-64 幅広部
C-66 内部空間
C-68 貫通窓
C-70 凹部
C-74 段差状面
C-76 係止片
C-78 係止爪
C-80 基端側端面
C-80a 垂直面
C-80b 傾斜面
C-82 翼状部
C-84 嵌合筒部
C-86 連結部
C-88 翼本体
C-90 当接部
C-92 パーティングライン
C-94 ゲート跡
C-96 パーティングライン
C-98 ゲート跡
C-140 変形量制限部
C-142 突部
D-10 針先プロテクタ付針組立体(針組立体)
D-12 穿刺針
D-14 針ハブ
D-16 針先プロテクタ
D-20 針先
D-22 貫通孔
D-24 内腔
D-26 第1部品
D-28 第2部品
D-32 テーパ状面
D-36 係止凹部
D-38 連結穴
D-40 連結筒部
D-42 接続穴
D-44 接続筒部
D-46 テーパ内面
D-48 接着部
D-50 嵌合部
D-52 段差面
D-54 第1連通路(連通路)
D-55 内周領域
D-56 凹溝
D-58 第1溝部
D-60 第2溝部
D-62 係合腕
D-64 フック
D-66 周壁
D-68 円筒部
D-70 翼状部
D-72 翼本体
D-74 嵌合筒部
D-76 拡開部
D-78 貫通窓
D-80 係止部
D-82 係止爪
D-84 チューブ
D-86 接着剤
D-88 第2連通路(連通路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37