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  • 特許-ヘルメット、及び、設置方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ヘルメット、及び、設置方法
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/24 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A42B3/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020000229
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110044
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509137814
【氏名又は名称】株式会社ウインズジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】片岡 匡史
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148291(WO,A1)
【文献】特開2011-002450(JP,A)
【文献】特表2003-507594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側が凹曲面であるシールドと、
このシールドの内側に設けられた、シート状のインナーバイザーと
を含み、
前記シールドは、
前記インナーバイザーの外周端部が突き当たる突き当て壁面と、
前記突き当て壁面よりも内側に設けられ、前記シールドの表面から突出した突出部と、
前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入され、挿入された状態において、前記突出部よりも高く突出する弾性部材と
を有し、
前記弾性部材は、前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入されていない状態において、前記突き当て壁面と前記突出部との間の間隔よりも太い紐状又はリング状であり、弾性変形させた状態で、前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入されている
ヘルメット。
【請求項2】
前記突き当て壁面は、前記インナーバイザーの外周全域にわたって連続的に形成されており、
前記弾性部材は、前記インナーバイザーの外周全域にわたって連続的に配置されている
請求項に記載のヘルメット。
【請求項3】
インナーバイザーと、
前記インナーバイザーを嵌め込むための凹部が、内側の表面に形成されているシールドと、
前記凹部の外縁近傍において、前記シールドの内側表面から突出した突出部と、
前記突出部の外側に配置された弾性部材と
を有し、
前記シールドの内側は、凹曲面であり、
前記弾性部材は、前記凹部の壁面と前記突出部との間に挿入されていない状態において、前記凹部の壁面と前記突出部との間の間隔よりも太い紐状又はリング状であり、弾性変形させた状態で、前記凹部の壁面と前記突出部との間に挿入されている
ヘルメット。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記突出部の外側に配置された状態において、前記突出部よりも高く、前記シールドの内側表面から突出している
請求項に記載のヘルメット。
【請求項5】
前記弾性部材は、表面に粘着性を有する
請求項2又は4に記載のヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット、及び、設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シールドバイザーと、シールドバイザーに取り外し可能に取り付けられるように適合したオーバーレイバイザーとを有し、オーバーレイバイザーは、オーバーレイバイザー外縁の少なくとも一部に一体的に形成されたスペーサ、およびスペーサの遠位面上のガスケットを備えるバイザーアセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】EP-A1-003469941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、防曇性に優れたシールドを有するヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るヘルメットは、シールドと、このシールドの内側に設けられた、シート状のインナーバイザーとを含み、前記シールドは、前記インナーバイザーの外周端部が突き当たる突き当て壁面と、前記突き当て壁面よりも内側に設けられ、前記シールドの表面から突出した突出部と、前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入され、挿入された状態において、前記突出部よりも高く突出する弾性部材とを有する。
【0006】
好適には、前記弾性部材は、前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入されていない状態において、前記突き当て壁面と前記突出部との間の間隔よりも太い紐状又はリング状であり、弾性変形させた状態で、前記突き当て壁面と前記突出部との間に挿入されている。
【0007】
好適には、前記突き当て壁面は、前記インナーバイザーの外周全域にわたって連続的に形成されており、前記弾性部材は、前記インナーバイザーの外周全域にわたって連続的に配置されている。
【0008】
また、本発明に係るヘルメットは、インナーバイザーと、前記インナーバイザーを嵌め込むための凹部が、内側の表面に形成されているシールドと、前記凹部の外縁近傍において、前記シールドの内側表面から突出した突出部と、前記突出部の外側に配置された弾性部材とを有する。
【0009】
好適には、前記弾性部材は、前記突出部の外側に配置された状態において、前記突出部よりも高く、前記シールドの内側表面から突出している。
【0010】
好適には、前記弾性部材は、表面に粘着性を有する。
【0011】
また、本発明に係る設置方法は、シールドにインナーバイザーを設置する設置方法であって、前記シールドの内側表面に形成された凹部に、弾性部材を配置する工程と、シート状のインナーバイザーを前記凹部に嵌め込み、嵌め込まれたインナーバイザーを、配置された弾性部材に接触させる工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気密性の高い中空となる層を有するため曇りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態におけるヘルメット1の全体構成を例示する図である。
図2】組み立てた状態の複合シールド5を模式的に表す図である。
図3】分解した状態の複合シールド5を模式的に表す図である。
図4】複合シールド5の構造を説明するための模式図である。
図5】実施形態における設置方法(S10)を説明するフローチャートである。
図6】シールド10に弾性部材30を配置する状態を例示する図である。
図7】シールド10にインナーバイザー20を配置する状態を例示する図である。
図8】実施例1の複合シールド5における変形例1を例示する図である。
図9】実施例1の複合シールド5における変形例2を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態におけるヘルメット1の全体構成を例示する図である。
図2は、組み立てた状態の複合シールド5を模式的に表す図である。
図3は、分解した状態の複合シールド5を模式的に表す図である。
図1に例示するように、ヘルメット1は、帽体3と、複合シールド5とを有する。また、図2及び図3に例示するように、複合シールド5は、フェイスシールド10(以下シールド10と称呼する)と、インナーバイザー20と、弾性部材30とを有する。シールド10は、ヘルメット1の内側に位置する内壁面において、インナーバイザー20及び弾性部材30を設置される。
シールド10は、透光性のある透明な樹脂で形成された三次元凹曲板材である。本例のシールド10は、例えば、ポリカーボネートにより形成されている。シールド10は、凹部100と、突き当て壁面102と、突出部104と、溝部106とを有する。なお、シールド10は、本発明に係るシールドの一例である。
【0015】
凹部100は、ヘルメット1の内側に位置するシールド10の内側表面に形成された凹みである。凹部100は、インナーバイザー20の外縁形状と略同じ外縁形状に形成される。これにより、シールド10の内側表面にインナーバイザー20を嵌め込むことができる。凹部100は、帽体3を貫通する開口部より大きく形成される。ここで開口部は、複合シールド5を通じてヘルメット1の着用者に視界を提供する部分である。即ち、凹部100は、ヘルメット1の着用者に視界を提供する領域を覆う程度に形成される。
【0016】
突き当て壁面102は、凹部100の一部の壁面である。突き当て壁面102は、シールド10の内側にインナーバイザー20を嵌め込んだ場合において、インナーバイザー20の外周端部が突き当たる。本例の突き当て壁面102は、図3に例示したように、インナーバイザー20の外周全域と突き当たるよう、インナーバイザー20の外周全域にわたって連続的に形成される。なお、突き当て壁面102は、本発明に係る突き当て壁面の一例である。
【0017】
突出部104は、突き当て壁面102よりも内側に設けられ、凹部100の外縁近傍において凹部100の底面の表面(凹部底面100a)から一部が突出した突起である。即ち、突出部104は、シールド10の表面から突出している。突出部104の突出長さは、シールド10の内側表面より突出しない長さであり、インナーバイザー20を凹部100に嵌め込んだ時に、インナーバイザー20とシールド10との表面が平滑となるような長さとなっている。また、突出部104は、突き当て壁面102に沿って、凹部100の凹部底面100aを一周して形成される。なお、突出部104は、本発明に係る突出部の一例である。
【0018】
溝部106は、突き当て壁面102と突出部104との間に位置する溝であり、後述する弾性部材30を挿入するために設けられる。溝部106は、突き当て壁面102に沿って、凹部100の凹部底面100aを一周して形成される。また、溝部106は、突き当て壁面102と突出部104との間に挿入していない状態における弾性部材30の太さよりも狭い溝幅となっている。
【0019】
インナーバイザー20は、透光性を有する透明な樹脂で形成された平面形状のシート材である。インナーバイザー20は、シールド10の凹部100に取り付けられていない状態で、シールド10の内壁面より曲率が小さい。また、インナーバイザー20の両面のうち、少なくとも一方の面に防曇層を設けている。また、インナーバイザー20は、可撓性を有するシート材でもある。インナーバイザー20は、例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、又は、ポリエチレンテレフタレートにより構成できる。なお、本例のインナーバイザー20は、シールド10と同じ素材であるポリカーボネートである。ポリカーボネートにより構成したインナーバイザー20は、耐熱性および耐吸湿性を備える。これにより、熱や水分による影響を受けにくく変形量が小さい。さらに、インナーバイザー20は、可撓性を有するため、弾性的に湾曲させても湾曲前の状態に復元しようとする高い反発力を備える。インナーバイザー20は、本発明に係るインナーバイザーの一例である。
【0020】
弾性部材30は、紐状又はリング状である、弾性変形する合成樹脂部材である。本例の弾性部材30は、リング状のシリコーンゴムである。弾性部材30は、弾性変形させた状態で、突き当て壁面102と突出部104との間に位置する溝部106に挿入される。溝部106に挿入された弾性部材30は、突出部104よりも高く突出する。そして、弾性部材30は、シールド10の凹部100にインナーバイザー20を嵌め込んだ場合において、インナーバイザー20と接触し、かつ、インナーバイザー20の外周全域にわたって連続的に配置される。これにより、弾性部材30は、シールド10とインナーバイザー20との間における中空となる空間層(以下、空気層ALと称呼する)を密閉するためのシーリング材として機能する。また、弾性部材30の太さは、突き当て壁面102と突出部104との間に挿入されていない状態において突き当て壁面102と突出部104との間の間隔よりも太い。また、弾性部材30は、表面に粘着性を有してもよく、インナーバイザー20との高い密閉性が期待できる。なお、弾性部材30は、本発明に係る弾性部材の一例である。
【0021】
図4は、複合シールド5の構造を説明するための模式図である。図4(A)は、図2に例示した複合シールド5における長手方向の断面を例示する図であり、図4(B)は、図2に例示した複合シールド5における短手方向の断面を例示する図である。
図4に例示するように、インナーバイザー20は、シールド10の三次元凹曲面である内壁面に沿うように弾性的に湾曲させ撓ませた状態で、シールド10の凹部100に嵌め込まれている。嵌め込まれたインナーバイザー20とシールド10との接続位置における表面は、段差なく略平滑となっている。また、凹部100に嵌め込んだインナーバイザー20は、曲げ撓ませる前の状態に復元しようとする反発力が生じているため、外周端部20aを突き当て壁面102に突き当てると共に、インナーバイザー20の周縁を突出部104及び弾性部材30に押し付けた状態となっている。このように、複合シールド5は、シールド10の凹部100から脱落することなくインナーバイザー20を嵌め込むことができると共に、気密性の高い空気層ALを得ることができる。
【0022】
図5は、実施形態における設置方法(S10)を説明するフローチャートである。
まず、本設置方法の概要を説明すると、図5に例示するように、作業者は、シールド10の内側表面に形成された凹部100の溝部106に、弾性部材30を弾性変形させながら配置し(S100)、凹部100及びインナーバイザー20の表面を清掃する(S102)。そして、作業者は、弾性部材30を配置した凹部100に、弾性的に湾曲させ撓ませたインナーバイザー20を嵌め込む(S104)。
このように、作業者は、シールド10の内側表面にインナーバイザー20を配置することができる。
【0023】
以下、図6及び図7を参照しながら、図6に例示するステップS100~S104における工程を詳細に説明する。
図6は、シールド10に弾性部材30を配置する状態を例示する図である。
図7は、シールド10にインナーバイザー20を配置する状態を例示する図である。
ステップ100(S100)において、図6(A)に例示するように、作業者は、溝部106の溝幅よりも太い弾性部材30を弾性変形させながら、溝部106に押し込み配置する。即ち、シールド10の内側表面に形成された凹部100の外縁近傍に、弾性部材30を配置する。本例の弾性部材30は、リング状であるため、凹部100の外縁全域にわたって連続的に配置する。また、図6(B)に例示するように、溝部106に押し込まれた弾性部材30は、弾性変形しているため、突出部104よりも高く、シールド10の内側表面、具体的には凹部100の凹部底面100aにおける表面から突出している。
【0024】
ステップ102(S102)において、作業者は、弾性部材30を配置したシールド10の内側表面である凹部底面100aと、インナーバイザー20におけるシールド10と対向する面と清掃し、埃等の汚れを除去する。このとき、弾性部材30の表面に粘着性がある場合、作業者は、弾性部材30の表面を水洗いし埃等の汚れを落とすことにより、弾性部材30の表面における粘着性を復元させる。
【0025】
ステップ104(S104)において、図7(A)に例示するように、作業者は、インナーバイザー20を長手方向及び短手方向に曲げ撓ませて、シールド10の凹部100に嵌め込む。嵌め込まれたインナーバイザー20は、図4及び図7(B)に例示したように、外周端部20aを突き当て壁面102に突き当てた状態となるともに、弾性的に湾曲させ撓ませたインナーバイザー20の周縁を弾性部材30に接触させ、弾性部材30を押圧する。これにより、インナーバイザー20は、シールド10の凹部100から脱落することなく嵌め込んだ状態を維持することができると共に、気密性の高い空気層ALを得ることができる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のヘルメット1によれば、インナーバイザー20を撓ませた状態でシールド10の凹部100に嵌め込むことにより、撓ませる前の状態に復元しようとする反発力を用いて、インナーバイザー20の外縁全域を弾性部材30に接触させて押圧することができるため、空気層ALの気密性を高めることができる。また、インナーバイザー20がシールド10の凹部100から脱落することを防止できる。
また、本実施形態のヘルメット1は、設置工程が比較的簡易であるため、メンテナンスも容易に行うことができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。なお、ヘルメットは、バイク用だけでなく、防災用ヘルメット等であってもよい。また、ゴーグルは、スキー・スノーボード用だけでなく、水泳用等であってもよい。また、眼鏡であってもよい。
【0027】
次に、上記実施例における変形例を説明する。なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
上記実施例では、突き当て壁面102がシールド10やインナーバイザー20の面に対して垂直となるよう形成した場合を具体例としたが、これに限定するものではなく、シールド10やインナーバイザー20の面に対して傾斜するよう形成してもよい。
図8は、実施例1の複合シールド5における変形例1を例示する図である。図8(A)は、複合シールド5における長手方向の断面を例示する図であり、図8(B)は、図8(A)のM部を例示する拡大図であり、図8(C)は、M部におけるシールド10のみを例示する拡大図である。
図8に例示するように、シールド10において、突き当て壁面102は、溝部106の上方に被さるように、突出部104や溝部106に向かって、シールド10の面に対して傾斜している。これにより、インナーバイザー20は、凹部100に設けてもシールド10から脱落しにくくなる。
【0028】
[変形例2]
上記実施例では、突き当て壁面102をシールド10の内側面から突出しないよう形成する場合を具体例としたが、これに限定するものではなく、突き当て壁面102をシールド10の内側面から突出して形成してもよい。
図9は、実施例1の複合シールド5における変形例2を例示する図である。図9(A)は、複合シールド5における長手方向の断面を例示する図であり、図9(B)は、図8(A)のN部を例示する拡大図であり、図9(C)は、N部におけるシールド10のみを例示する拡大図である。
図9に例示するように、突き当て壁面102は、直線面102aと拡径面102bと有し、これら壁面が滑らかに連続している。突き当て壁面102において、直線面102aの一部と拡径面102bとは、シールド10の内側面から突出した突き当て用の壁面となっている。また、シールド10の内側面から突出した突起には、突き当て壁面102が含まれるとも換言できる。このように、突き当て壁面102は、シールド10の内側面から突出するよう形成することにより、いわゆるインナーバイザー20を係止するピンの壁面のように機能させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1…ヘルメット
5…複合シールド
10…フェイスシールド
100…凹部
100a…凹部底面
102…突き当て壁面
104…突出部
106…溝部
20…インナーバイザー
20a…外周端部
30…弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9