(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】送電線監視のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240722BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240722BHJP
G01B 11/14 20060101ALI20240722BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240722BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02G1/02
G01B11/00 A
G01B11/14 Z
G01B11/06 Z
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2020561605
(86)(22)【出願日】2019-01-25
(86)【国際出願番号】 US2019015194
(87)【国際公開番号】W WO2019147965
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-20
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520268805
【氏名又は名称】ラインビジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ピニー,ネイサン ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】マッケスニー,トーマス アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】グルド,エリオット ジェイ.
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-78849(JP,A)
【文献】特開2009-68951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0098683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0066600(US,A1)
【文献】特開2016-13038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180616(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0123750(US,A1)
【文献】中国実用新案第203084193(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106932084(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
G01B 11/00
G01B 11/14
G01B 11/06
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダ・センサであるクリアランス・センサと、
送電線を形成する導体の幾何形状および/または動きを査定し、前記導体のダイナミック・ライン・レーティングを
計算するために前記クリアランス・センサからのデータを処理するコントローラと
を含
み、
前記クリアランス・センサは、水平の上方30度と90度との間で前記導体をスキャンするように角度を付けられる送電線監視システム。
【請求項2】
前記クリアランス・センサは、3次元点群測定値を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記データから前記導体の経路を外挿する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記導体ごとに画定された3次元検索領域を使用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記導体の前記動きを解決し、その特性を表すために、繰り返されるスキャンの前記データを処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記導体上に形成された氷の厚さを測定するために前記データを処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記導体は複数設けられており、
前記コントローラは、前記導体の間の導体間間隔を測定するために前記データを処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
送電線を形成する導体を測定するのにライダ・センサであるクリアランス・センサを使用することと、
前記導体の幾何形状および/または動きを含めて前記導体を査定し、前記導体のダイナミック・ライン・レーティングを
計算するために前記クリアランス・センサからのデータを処理することと
、
水平の上方30度と90度との間で前記導体をスキャンするように前記クリアランス・センサの角度を付けることと、
を含む、送電線監視方法。
【請求項9】
前記コントローラは、前記導体を識別するために前記クリアランス・センサからの点群を処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記導体の前記動きを査定するために前記クリアランス・センサからのタイムスタンプ情報を用いて点群を処理する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記クリアランス・センサは、前記送電線の下で地表面もしくはその付近に取り付けられるか、または前記送電線の前記導体の付近であるがこれと電気的に接触していない構造体に取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれている、2018年1月26日に出願した米国特許仮出願第62/622603号の、35米国特許法第119(e)条の下での利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の架空送電線は、空間構成においてお互いから分離され、送電線塔(または支持塔)の間を走る、単一の撚られたケーブルまたは束に配置された複数の撚られた副導体からなる3つの電圧を与えられた位相導体と、1つまたは複数の電圧を与えられない架空地線(OHGW)とからなる。導体は、通常、鋼、アルミニウム、銅、合金、または炭素複合材料のストランドから構成され、所望の腐蝕耐性特性(たとえば、亜鉛めっき)、光学特性、および他の特性を達成するためにさまざまな表面処理が適用される。各導体は、しばしば電線を介して伝送される電力の異なる相を搬送し、送電線を介して流れる総電力は、3つの相のそれぞれを通って流れる電力の和である。導体束は、通常、スペーサによって接続された2つから4つまでの導体からなる。以下の議論では、導体束は、単に「導体」と呼ばれ、これは、送電線を通って流れる電力の相を搬送する送電線の媒体を指すと理解されなければならない。各送電線を構成する導体は、特定の周波数(米国では60Hz、欧州では50Hz)の交流(AC)および電圧、直流(DC)および電圧を搬送することができ、あるいは、建設期間中、保守期間中、または緊急停止期間中には電圧を除去され得る。
【0003】
導体は、塔の間で一直線に延びるのではなく、2つの隣接する塔の間で懸垂線の形状をとる。これに関して、送電線の機械的張力の量を減らすために、導体に「たるみ」が設けられる。たるみは、一般に、2つの隣接する塔の間の導体の最低点と比較した、導体が塔に接続される場所の高さの差と定義される。たるみが少なすぎると、張力が高くなりすぎる可能性があり、導体が、引張り応力に起因して破砕する可能性があり、あるいは、導体が、過度の風振動または他の振動をこうむり、これも導体ストランドの材料疲労によって引き起こされる破砕につながる可能性がある。たるみが多すぎると、導体の長さが増え、したがってコストが高まる。さらに、たるみが多すぎると、導体が、風の中でより大きい振幅で外にスイングし、したがって、他の導体、塔の構造体、またはたとえば木もしくは建物などの他の近くの物体に接触しまたは閃絡する可能性がある。
【0004】
時間変動する電気的動作条件および気象条件も、導体のたるみに影響する。実際に、ぶらさがる懸垂線導体は、導体が相互関係のある平均温度、張力、およびたるみを有する熱機械系を表す。導体が暖かい空気、陽光、または電気抵抗加熱によって加熱される時に、導体材料の長さ方向の熱膨張は、導体の延びおよび張力減少を引き起こし、減らされた地上高(増やされたたるみ)をもたらす。導体が気象(冷たい空気、風、放たれる黒体放射、または降雨)によって冷却される時に、長さ方向の熱収縮は、張力を増やし、たるみを減らす。張力、温度、およびたるみの間の相互関係は、これらの変数のうちのいずれか1つの測定または判定が、熱機械モデルを使用することによって他の変数のいずれかまたは両方を計算することを可能にすることを意味する。
【発明の概要】
【0005】
本発明に従って作られた装置は、通常は導体との接触または直接の機械的接触なしに、送電線の1つまたは複数の導体の高さなどの幾何形状または3次元懸垂線形状を判定するのに使用される。さらに、本発明の装置および方法は、導体の高さおよび他の特性の連続的でリアルタイムの監視を可能にする。
【0006】
一般に、一態様によれば、本発明は、ライダ・ベースのクリアランス・センサを含む送電線監視システムを特徴とする。
【0007】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線の電場および/または磁場を測定することと、送電線の位置を測定することと、電場および/または磁場の測定からの送電線によって伝送される電力の推定値を改善するのに位置を使用することとを含む、送電線電力測定値を生成する方法を特徴とする。
【0008】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線電力測定値を生成するシステムであって、送電線の電場および/または磁場を測定する1つまたは複数の電磁場センサと、送電線の位置を測定するクリアランス・センサと、電場および/または磁場の測定からの送電線によって伝送される電力の推定値を改善するのに測定された位置を使用するコンピュータとを含むシステムを特徴とする。
【0009】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線の近くの電場および/または磁場を測定することと、送電線の周囲の気象の特徴を表すことと、気象と測定された電場および/または磁場とに基づいて第1の測定プロセスを使用して送電線の導体温度を推定することと、送電線の位置および/またはたるみを測定することと、測定された位置/たるみから第2の測定プロセスを使用して送電線の導体温度を推定することと、第1の測定プロセスおよび第2の測定プロセスから導出された導体温度の比較に基づいて異常条件を判定することとを含む、送電線に関する起こり得る異常を検出する方法を特徴とする。
【0010】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線の近くの電場および/または磁場を測定する1つまたは複数の電磁場センサと、気象情報と測定された電場および/または磁場とに基づいて第1の測定プロセスを使用して送電線の導体温度を推定するコンピュータと、送電線の位置および/またはたるみを測定するクリアランス・センサとを含む、送電線に関する起こり得る異常を検出するシステムを特徴とする。ここで、コンピュータは、測定された位置/たるみから第2の測定プロセスを使用して送電線の導体温度を推定し、第1の測定プロセスおよび第2の測定プロセスから導出された導体温度の比較に基づいて異常条件を判定する。
【0011】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線に関する風条件を検出する方法であって、送電線の位置を測定することと、測定された位置に基づいて風条件を推定することとを含む方法を特徴とする。
【0012】
一般に、別の態様によれば、本発明は、送電線に関する風条件を検出するシステムであって、送電線の位置を測定するクリアランス・センサと、送電線の測定された位置に基づいて風条件を推定するコンピュータとを含むシステムを特徴とする。
【0013】
構成および部品の組合せのさまざまな新規の詳細を含む本発明の上記および他の特徴および他の利点は、添付図面を参照してより具体的に説明され、特許請求の範囲で指摘される。本発明を実施する特定の方法およびデバイスが、例として示され、本発明の限定としては示されないことを理解されたい。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱せずにさまざまな多数の実施形態で実施され得る。
【0014】
添付図面では、符号は、異なる図面を通じて同一の部分を指す。図面は、必ずしも原寸通りではなく、本発明の原理を示す強調が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による、送電線監視システムが取り付けられた送電線スパンを支える送電線塔を示す概略図である。
【
図2】中央処理施設と通信する送電線監視システムを示す概略図である。
【
図3】レーダー・ベースのクリアランス・センサに関して日単位で測定された、時間の関数としての、センチメートル単位の導体距離と華氏単位の局所温度とを示すプロットである。
【
図4A-4B】地表面付近に配置されたライダ・ベースのクリアランス・センサを使用してイメージングされ、実際に測定された点群データから導体形状をモデル化し、外挿する数学的な最良あてはめの線を示す、それぞれ、y-z平面およびy-x平面での3つの導体を示すプロットである。
【
図5】スパンを支え、本システムのコントローラによって使用される導体検索方式を示す送電線監視システムによって監視される送電線塔を示す概略図である。
【
図6】導体のクリアランス・センサによって生成された点群内の点を識別し、あてはめるためにマイクロコントローラ50によって使用されるプロセスを示す流れ図である。
【
図7】導体の動きを識別し、分析するためにマイクロコントローラ50によって使用されるプロセスを示す流れ図である。
【
図8】EMFセンサ情報およびクリアランス・センサ情報から送電線をモデル化する方法を示す図である。
【
図9】起こり得る異常が存在するかどうかを判定するためにEMFセンサ情報およびクリアランス・センサ情報から送電線をモデル化する方法を示す図である。
【
図10】風速を査定し、検証し、その後、みかけの風速および他の要因からダイナミック・ライン・レーティング(Dynamic Line Rating)を計算するためにクリアランス・センサ情報からの送電線のモデルを使用する方法を示す図である。
【
図11】メートル単位のブローアウト距離と、風向きおよび異なる風速の関数とを示す散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、以下で、添付図面を参照してより十分に説明するが、添付図面には、本発明の例示的実施形態が示されている。しかし、本発明は、多数の異なる形で実施され得、本明細書で示される実施形態に限定されると解釈されてはならず、これらの実施形態は、本開示が完全になり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるようにするために提供されるものである。
【0017】
本明細書で使用される時に、用語「および/または」は、関連してリストされた項目のうちの1つまたは複数の任意のすべての組合せを含む。さらに、単数形および冠詞「a」、「an」、および「the」は、そうではないと明示的に述べられない限り、複数形をも含むことが意図されている。さらに、用語includes(含む)、comprises(含む)、including(含む)、および/またはcomprising(含む)は、本明細書で使用される時に、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはその群の存在または追加を除外しないことを理解されたい。さらに、構成要素またはサブシステムを含む要素が、別の要素に接続されまたは結合されるものとして言及されかつ/または図示される時に、その要素が、他の要素に直接に接続されまたは結合されても、介在する要素が存在してもよいことを理解されたい。
【0018】
他の形で定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の通常の技量を有する者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。さらに、一般に使用される辞書で定義されるものなどの用語は、関連技術の文脈でのその意味と一貫する意味を有するものとして理解されなければならず、本明細書でそのように特に定義されない限り、理想化された意味または極度に形式的な意味では解釈されない。
【0019】
図1は、送電線の3つの導体82-1、82-2、および82-3のスパンを支持する例示的な送電線塔80Aおよび80Bを示す。導体は、塔80の碍子支持体86に接続する碍子連84からぶら下がる。たとえば、一般に、架空地線(OHGW)88も、電光保護のために設けられる。
【0020】
本発明は、導体82およびその導体によって搬送される電気を監視する送電線監視システム10に関する。図示の例では、送電線監視システム10は、主エンクロージャ60M内に配置され、主エンクロージャ60Mは、コントローラ50およびおそらくは電力システムを含む。1つまたは複数のEMFセンサ42、44が、導体82の周囲の電磁場(EMF)を監視するために塔80に取り付けられる。追加の1つまたは複数のセンサ・エンクロージャ60Cも、導体82の幾何形状を監視するために1つまたは複数のクリアランス・センサ20のために設けられる。EMFセンサ42、44およびセンサ・エンクロージャ(1つまたは複数)60Cは、通常は制御、データ転送、および電力を提供する耐候性配線ハーネスを用いて主エンクロージャ60Mに接続される。
【0021】
しばしば、センサ連合システムは、塔80または近くの別々の取り付け柱もしくは他の構造物12に取り付けられ、送電線監視システム10のクリアランス・センサおよび/またはEMFセンサ20を支える。好ましくは、センサ連合システムは、調整可能な角度ブラケット、スライドするマウント、回転するマウント、および、さまざまな地上ベースまたは塔ベースの取り付け位置および取り付けタイプ(柱、キャビネット、丸天井、壁、屋根、送電構造ベース、三脚など)を考慮して、クリアランス・センサ20が架空導体/ワイヤを正確に狙うことを可能にする他の位置調整機構を含む。連合システムは、設置時に一度または保守中にもう一度、調整され、定位置に固定され得、あるいは、モーターまたは他の電気機械デバイスによって継続的かつ自律的に調整され得る。一般に、センサ連合システムは、監視される導体82から、しばしば35メートルを超えない距離、通常は10メートルと50メートルとの間の見通し線距離で伝送構造柱/脚に設置される。連合システムは、しばしば、クリアランス・センサ・システム20のボアサイトBに上向きに導体を狙わせることを可能にする。具体的には、クリアランス・センサ・システム20は、水平の上方30度と90度との間で導体をスキャンするように角度を付けられる。
【0022】
図示の実施形態では、送電線監視システム10の1つまたは複数のEMFセンサ42、44は、監視システム10の主ハウジング60Mから離れ、おそらくは異なる導体82に近接して設置される。EMFセンサの配置は、異なる導体または異なる3相回路に関連するEMF信号の間の理想的な信号対雑音または分離を提供するために、電磁場モデルに基づいて最適化され得る。
【0023】
図示の例では、クリアランス・センサ20は、導体82-1、82-2、82-3、およびOHGW 88のすべての位置を検出する。この図は、スキャンされる導体エリアS内の例示的な導体82-1のスキャンを示す。箱82-M内の点Pは、クリアランス・センサ20のスキャンからの実際に測定されたデータを表す。これらの点は、スキャンされる導体エリアSの両側で導体をモデル化される導体エリアMに外挿するのに使用される。
【0024】
図2は、送電線監視システム10を示す概略図である。
【0025】
通常、監視システム10は、主ハウジング60Mまたは別々のハウジング内に配置された充電可能なバッテリ54によって電力を供給される。バッテリからの電力は、パワー・レール52を介してマイクロコントローラ50などの監視システム10の電子構成要素に分配される。好ましい実施形態では、バッテリ54は、太陽電池パネル50、電気化学燃料電池、および/または使用可能な場合に幹線電源によって充電される。電力管理システム55が、バッテリ54の充電を制御し、おそらくは、システムの構成要素に分配される電力を条件付ける。通常、電力管理システム55は、それぞれのワイヤリング・ハーネスを介してクリアランス・センサ20およびEMF変換器42、44にも電力を分配する。バッテリ電圧モニタ56が、バッテリ54の電圧を監視し、この情報をコントローラ50に渡す。
【0026】
監視システム10は、送電線の1つまたは複数の導体82の位置を検出するために通常は別々のセンサ・ハウジング60C内に設置される1つまたは複数のクリアランス・センサ20を含む。ほとんどの実施形態では、1つまたは複数のクリアランス・センサ20は、1つまたは複数の導体82に物理的に接触せずに、1つまたは複数の導体82から所定の初期距離に位置決めされる。次に、1つまたは複数のクリアランス・センサ20は、送電線の下で地表面もしくはその付近に取り付けられるか、または送電線の導体の付近であるがこれと電気的に接触していない構造体(たとえば、柱、塔脚)に取り付けられる。導体との直接の電気的接触または機械的接触を要求しないことによって、クリアランス・センサ20は、非常にさまざまな位置に配置され得、監視される導体の機械的または電気的な完全性または挙動を傷付けず、または他の形で影響しない。
【0027】
この目的で、(i)周波数変調連続波(FMCW)レーダー・センサ、(ii)レーザー・パルスおよび飛行時間(ToF)分析に頼るレーザー・レンジファインダまたはライダ・センサ、(iii)高周波サウンド・パルスを放ち、その後に目標物体からのパルスの反射をリスンする超音波レンジファインダおよび/またはレベル検出センサ、および(iv)カメラまたは他の光学センサを含むがそれらに限定されない、複数のタイプのクリアランス・センサを使用し、送電線監視システム10に組み込むことができる。監視される導体への追加のハードウェア(たとえば、リフレクタ・ターゲット、RFレゾネータ、RFIDタグなど)の取り付けは、各センサ・タイプが変更されない導体の位置を検出できるので、通常は不要である。特殊な情況で、センサ信号品質を改善するために導体表面の光学特性を変更するために、導体の表面コーティングの変更が必要になる場合がある。
【0028】
送電線監視システム10のマイクロコントローラ50は、1つまたは複数のクリアランス・センサ20からデータを受信し、メモリ構成要素または他のコンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行して、1つまたは複数のクリアランス・センサ20から受信されたデータに対してある種の条件付け動作を実行して、デジタル・データ・ストリームを生成する。一般に、マイクロコントローラ50は、プロセッサ、メモリ、および入出力(I/O)周辺機器を単一のチップ上に含む、コンパクトな集積回路上で実施されたコンピュータ・システムである。他の例では、より一般的なコントローラが使用され得、機能するコンピュータに必要な1つまたは複数のマイクロプロセッサ)メモリ、入出力(I/O)、および他の特徴が共通の基板上で実施される「シングル・ボード・コンピュータ」スタイル・コントローラなどが使用され得る。
【0029】
その後、結果のデジタル・データ・ストリームが、とりわけ、(i)送電線の1つまたは複数の導体の位置を判定し、次に(ii)下に横たわる地面に対する相対的な1つまたは複数の導体のそれぞれの高さ、(iii)ぶら下がる休止位置からの1つまたは複数の導体の動きおよび水平変位(「ブローアウト」)、および(iv)複数の導体が存在する場合の最小導体間距離を判定するために分析される。もちろん、そのような分析は、必須の命令(メモリ構成要素または他のコンピュータ可読媒体に記憶される)を実行する適当なモジュールを含むデジタル・コンピュータ・プログラム(すなわち、コンピュータのプロセッサによって実行されるコンピュータ可読命令)の使用を介して達成されることが好ましい。下で説明するように、そのような分析を、中央サーバ・システムおよび分析論エンジン130で実行することができ、あるいは、いくつかの実施形態では、そのような分析を、マイクロコントローラ50または別のコンピュータを介して局所的に実行することができ、あるいは、処理を、これらのコンピュータのうちの複数の間で分散させることができる。
【0030】
一般に、マイクロコントローラ50は、マイクロプロセッサ、プロセッサ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)内で実施されたプロセッサ、または、デジタルおよびアナログのセンサ・データ・ストリームを収集し、結果のデジタル・データを編成し、センサ・データの値/量に基づいて基本的な信号条件付けおよび論理演算を実行し、その後に中央処理施設100への送信のためにデータをアセンブルする、他のコンピュータベースのシステム50である。マイクロコントローラ50は、センサ構成または分析構成の変更が要求される時に、中央処理施設100から再プログラミング命令または再パラメータ化命令を受信することもできる。構成調整は、人間の分析者のアクションによって、またはシステム計算結果に基づく自動化されたアルゴリズム手段によって、達成され得る。その後、導体幾何形状データが、関心を持つ当事者に通信され、あるいは、判定された導体幾何形状データが、下でさらに説明するように、後続の計算および分析で使用され得る。
【0031】
送電線監視システム10は、好ましくは、たとえば周囲気温を感知する温度センサ32、空気の湿度レベルを感知する湿度センサ34、および/または風速を検出する風力計36を含む、送電線の付近の環境条件を感知しまたは測定する、ある種の補助センサをも含む。さらに、この例示的実施形態では、装置10は、送電線の導体82に関連するACまたはDCのベクトル磁場を感知する1つまたは複数の磁気変換器42および送電線の導体82に関連するACまたはDCの電場を感知する電場変換器44など、電磁場(EMF)センサをも含む(送電線を介する電流および電力の正味の流れを判定するためのそのような磁気変換器42および電気変換器44の使用が、参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第6714000号および米国特許第6771058号に記載されている)。
【0032】
すべてのそのような補助センサからのデータすなわち環境データおよび/または動作データは、マイクロコントローラ50に通信され、これによって受信もされ、マイクロコントローラ50は、やはり、受信されたデータに対してある種の条件付け動作を実行するためにメモリ構成要素または他のコンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行することが好ましい。これらの補助センサからのデータは、単独でまたはクリアランス・センサからのデータと組み合わされて、下でさらに説明するように、送電線の導体の洗練された分析の一部として使用され得る。
【0033】
送電線監視システム10は、データを送信する通信サブシステム60をも含む。そのような通信サブシステム60は、1つまたは複数のモデム、ラジオ、通信ケーブル、ローカル・データ・ポート、またはデータを送信する他の適切な手段からなるものとすることができる。この例示的実施形態では、通信サブシステム60が、条件付けされたデータをマイクロコントローラ50から中央処理施設100、具体的にはその中央サーバ・システムおよび分析論エンジン130(「中央サーバおよび分析論エンジン」と称する場合もある)に送信し、ここで、送電線の1つまたは複数の導体の位置の判定および下に横たわる地面Gに対する1つまたは複数の導体のそれぞれの近似高さの判定の最終ステップが実行されることが企図されている。
【0034】
一般に、通信サブシステム60は、マイクロコントローラ50から中央サーバ100または技師のポータブル・コンピューティング・デバイス、ラップトップ・コンピュータにデータを移動するのに使用される、1つまたは複数のワイヤレス・モデム、トランシーバ・ラジオ、通信ケーブル、またはローカル・データ・ポート(たとえば、USB)を含む。セルラ・モデム、衛星モデム、免許交付されたラジオ・モデム、および免許不要のラジオ・モデムが、通信サブシステムの例の明示である。通信サブシステムは、通常は両方向であり、セキュリティおよびデータ・プライバシのために暗号化されまたは符号化されたデータ送信が可能である。
【0035】
より詳細には、通信サブシステム60は、1つまたは複数のオンボードのセルラ・モデムおよび/または衛星モデムを含み、中央処理施設100にセンサ・データを送信し、中央処理施設100では、追加の高度な分析論および監視プロセス分析論が実行される。セルラ・モデムが使用されることが好ましい。さまざまなサードパーティ・セルラ・モデム・モジュール/ゲートウェイが、主要なキャリア・ネットワーク上での全世界での使用のために構成されている。もう1つは、オプション 衛星モデムである。セルラ・ネットワーク・カバレージの外部でのある種のリモート展開に関して、Iridium(登録商標)衛星通信機器を指定することができる。さらに、無指向性アンテナおよび/または指向性(たとえば、八木)アンテナなどのアンテナが、通信サブシステム60の一部である。通常、アンテナは、局所信号強度要件および方向要件に合わせて指定される。追加のオプションは、ISM帯(たとえば、900MHz)または免許交付された帯域でのプライベート・ラジオ通信である。
【0036】
さらに、上で述べたように、送電線監視システム10は、送電線の1つまたは複数の導体の高さの判定を可能にするだけではなく、送電線の性能、安全性、および材料条件に関して人間の観察者に知らせる、導体およびその環境の他の特性の連続的でリアルタイムの監視をも可能にする。アクション可能なリアルタイム性能情報の最も一般的な明示は、ダイナミック・ライン・レーティング(DLR)の計算にあり、DLRは、それを超えると導体過熱が発生し得る気象条件に応答する導体に対する最大の仮説電流負荷を表す。リアルタイムの動作条件および導体性能に基づいてDLRを計算することによって、より正確なレーティングを使用し、スケジューリングされた電力市場発電機ディスパッチを計算することができ、既存の送電容量の使用の向上が可能になる。さらに、導体のたるみ、温度、電流負荷、および機械的サイクルの長期監視は、資産所有者が、以前の仮定より積極的に導体を動作させることができるかどうか、または導体が機械的応力および関連する材料劣化(たとえば、クリープ、腐蝕)に起因して寿命末期に達しようとしているかどうかを判断するのを助けることができる。
【0037】
本発明による例示的方法は、一般に、(a)送電線の1つまたは複数の導体の位置および/または3次元幾何形状を検出する1つまたは複数のセンサを位置決めするステップであって、1つまたは複数のセンサは、1つまたは複数の導体および塔/碍子構造から所定の初期距離に位置決めされる、位置決めするステップと、(b)コンピュータのプロセッサを介して、デジタル・データ・ストリームを生成するために1つまたは複数のセンサからのデータ受信するステップと、(c)コンピュータのプロセッサを介して、(i)送電線の1つまたは複数の導体の位置を判定し、その後、(ii)下に横たわる地面に対する相対的な1つまたは複数の導体のそれぞれのたるみおよび/または高さならびに導体の3次元幾何形状、導体の対の間の最小導体間間隔を判定するために、デジタル・データ・ストリームを分析するステップと、(d)関心を持つ当事者に高さを通信するステップとを含む。
【0038】
本発明による別の例示的方法は、一般に、(a)送電線の1つまたは複数の導体の位置を検出する1つまたは複数のセンサを位置決めするステップであって、1つまたは複数のセンサは、1つまたは複数の導体から所定の初期距離に位置決めされる、位置決めするステップと、(b)コンピュータのプロセッサを介して、1つまたは複数のセンサから位置データを受信するステップと、(c)(i)送電線の付近の環境条件を感知しもしくは測定し、または(ii)送電線の付近の動作条件を感知しもしくは測定するために少なくとも1つの補助センサを位置決めするステップと、(d)コンピュータのプロセッサを介して、補助センサから補助データを受信するステップと、(e)(i)送電線の1つまたは複数の導体の位置を判定し、(ii)下に横たわる地面に対する相対的な1つまたは複数の導体のそれぞれのたるみおよび/または高さを判定し、(iii)送電線の性能を監視するために、コンピュータのプロセッサを介して位置データおよび補助データを分析するステップとを含む。
【0039】
マイクロコントローラ50は、その通信サブシステム60を使用して中央処理施設100の中央サーバおよび分析論エンジン130と通信する。それと同時に、中央処理施設100は、異なる位置および/または送電線の異なる塔にある他の監視システム10ならびに他の送電線上の監視システムとも通信する。
【0040】
次に、中央サーバおよび分析論エンジン130は、クライアント・データ対話インターフェース132を提供し、好ましい実施形態では、クライアントの資産管理ならびに送電線監視および制御システムに直接データ供給134をも提供する。
【0041】
中央サーバおよび分析論エンジン130、クライアント・データ対話インターフェース132、およびクライアント直接データ供給134は、複数の形で実施され得る、1つまたは複数のコンピュータ・システムによって実行される機能を表す。通常、中央サーバ、インターフェース、およびデータ供給は、いくつかの例でそれぞれが1つまたは複数の中央処理装置、メモリ、およびディスクまたはソリッド・ステート不揮発性ドライブを有するアプリケーション・サーバを含む1つまたは複数のコンピュータ・システム上で実行する。他の場合に、エンジン、インターフェース、および供給は、加入者がインターネットを介してコンピュータの仮想クラスタを展開するオンデマンド・クラウド・コンピューティング・プラットフォーム上で実施される。
【0042】
複数の異なる技術を使用して、クリアランス・センサ(1つまたは複数)20を実施することができる。このセンサ機能を、地面またはワイヤ/導体に対する相対的な別の固定基準点の上の実質的に水平な導体の高さを測定する共通の能力を共有するセンサ・タイプのスイートの1つまたは複数として明示することができる。架空導体高さは、通常、1~2cmの所望の精度を伴って、5~100メートルの距離内で測定される。これらのセンサは、地表面もしくはその付近の固定位置マウントまたは電圧を与えられた架空ワイヤと電気接触していない構造体(たとえば、柱、塔脚)に取り付けられることが意図されている。導体クリアランスは、逆に、ぶら下がるワイヤ・アセンブリの両端の固定取り付け点の下の導体たるみまたはぶら下がる導体の変位を指す場合がある。
【0043】
一実施態様では、クリアランス・センサ20は、FMCWレーダー(周波数変調連続波レーダー)センサである。このタイプのデバイスは、通常、サイロ、タンク、プールなどの中の固体および液体のレベル検出および測距に使用される。
【0044】
図3は、日単位で測定された時間の関数としての、センチメートル単位の導体距離と華氏単位の局所温度とのプロットである。この現場テスト・データは、Siemens Aktiengesellschaftによって販売されるSITRANS LR560 FMCW RADARシステムを用いて測定された架空導体クリアランスを示す。このデータは、測定周囲気温と比較され、これに相関する、センチメートル・スケール精度を示す。相対的に低い電流負荷を有する導体に関して、導体の温度は、周囲温度に密に相関するはずである。ここでは、架空導体のクリアランス(したがって、平均温度)が、48時間周期にわたって周囲温度に強く相関することを示す。
【0045】
別の実施態様では、クリアランス・センサ20は、レーザー・レンジファインダ/ライダ・センサである。回転するまたは静止の単一センサ構成または複数センサ・アレイ構成のいずれかを、レーザー・パルスおよび飛行時間(ToF)分析を使用して架空導体/ワイヤの位置およびクリアランスを判定するのに使用することができる。複数センサ・レーザー/ライダ構成に関して、導体の複数同時測定が、その長さに沿った異なる点で行われ、導体形状/位置の3次元幾何分析を可能にする。さらに、レーザー/ライダ・スキャンは、繰り返すサンプルでの同一導体のすばやい再スキャンを可能にし、同一導体からとられたスキャン・データの時系列の比較による導体動き(たとえば、ギャロップ、風振動)の分析を可能にする。
【0046】
図4Aおよび
図4Bは、地表面付近に配置されたライダ・センサを使用してイメージングされた、3相送電回路導体の例のライダ・クリアランス・センサ・データをプロットしたものである。データが、山を登る傾いたスパンから収集されたことに留意されたい。
図4Aは、y-z平面内でデータをプロットし、
図4Bは、x-y平面でデータをプロットし、z軸は、高さを表し、y軸は、導体の長さに沿って水平に走り、x軸は、横方向である。
【0047】
箱82-M内の点は、ライダ・クリアランス・センサ20のスキャンからの実際に測定されたデータを表す。これらは、マルチチャネル・ライダから収集された3次元点群測定値を示す離散点であり、各チャネルは、スピンするライダの回転軸に対して相対的に固定された迎角でスキャンする。
【0048】
箱82-N内の点は、所望の導体測定値に関連しないスキャナによって検出された点を表す。これらの点は、雑音として破棄される。
【0049】
線82-1、82-2、82-3は、懸垂線(双曲余弦)関数の曲線あてはめを使用して、測定されたデータおよび導体の既知の取り付け点から外挿された導体の位置を表す。線は、非線形最小二乗あてはめ演算を使用して、測定された点82-Mにあてはめられた。導体形状の線形近似の最小二乗あてはめも可能であり、非線形あてはめは、懸垂線、放物線、高次多項式、または、導体の真の形状もしくは経路の他の数学的近似を含むことができる。導体形状モデルを作成して、動く導体の定在波または他の動的形状特性を反映することもできる。
【0050】
破線82-1’、82-2’、82-3’は、碍子取り付け位置の間で直線を形成する、導体の仮説の0たるみ位置を表す。
【0051】
図5は、コントローラ50が、導体の位置を解決するために導体82-1、82-2、82-3のそれぞれに対応する側定点82-Mをどのように使用するのかを示す。
【0052】
より詳細には、通常は初期構成プロセス中に、排他的な3次元検索領域90が、ライダ・クリアランス・センサ20によってスキャンされる体積領域92内で導体82-1、82-2、82-3のそれぞれについて画定される。一般に、体積領域92は、水平の上方30度と90度との間の角度をスキャンするように構成され得る。
【0053】
図示の実施形態では、これらの検索領域90は、それぞれの導体82-1、82-2、82-3の予想される位置を中心とする円筒である。
【0054】
一般に、これらの領域90を、円筒、箱、または事前に計算されたもしくは最後に測定された懸垂線経路からの半径距離によって記述することができる。他の例では、領域は、球面座標系内の領域によって画定される。検索領域は、適切な導体が見つからない時または検出されあてはめられる点が元の検索領域の縁の近くにある時に、コントローラ50によって拡張されまたはアルゴリズム的に平行移動される領域になる場合がある。この導体突き止めプロセスは、事前に構成された検索領域なしで任意の点群内の直線形状または懸垂線形状のパターンを識別するために、高度の分析プロセス、たとえばコンピュータ化されたパターン認識を使用しても実行されてもよい。
【0055】
一般に、このアルゴリズムは、体積領域92内にあり、導体あてはめプロセス内で無視されなければならない、ランダムな点としても検出される雪、雨、ほこり、葉、または鳥94に帰する虚偽の報告に対して頑健でなければならない。
【0056】
一例では、ハフ変換または他のコンピュータ・パターン認識方法が、投票手続きによって、あるクラスの形状(懸垂線形状)内の物体(電力線導体)の不完全な実例を見つけるのに使用される。検索領域は、以前の結果または内部論理動作に基づいてコントローラ50によって動的に生成されてもよい。十分な点が見つからない場合に、検索半径を広げることが好ましい。
【0057】
ライダ・データは、繰り返されるスキャンの時系列である。一例では、コントローラ50は、ライダ・データを分析し、タイムスタンプを付けて、導体82-1、82-2、82-3の動きを解決し、その特性を表す。この概念は、ライダに制限されず、同一タイプの時系列分析を、導体の位置を検出する他の代替のセンサに適用することができる。導体の動きは、一般に、オペレータにとって望ましくなく、疲労/応力/故障および潜在的な導体間閃絡につながる。
【0058】
さらに、ライダ・データは、いくつかの例で、導体82-1、82-2、82-3上に形成される氷の厚さを直接に測定するのにも使用される。ここで、コントローラ50は、ライダ点群直径データ自体に基づいて導体直径を解決する。導体がライダ・データですばやく幅広くなる場合に、コントローラは、温度が氷点未満であることを温度センサ32からの周囲気温が示す場合に、導体上の氷の存在を結論する。その後、コントローラ50は、氷厚さの測定である 点群分布の幅広さに基づいて、氷の厚さを査定する。
【0059】
さらに、ライダ・データは、いくつかの例で、導体82-1、82-2、82-3の間の最小直線距離である導体間間隔を査定し、その特性を表すのにも、コントローラ50によって使用される。コントローラ50は、任意の2つの導体が測定され、その完全な幾何形状が計算された後に、ライダ・データから作られた3D幾何モデル・データから直接に間隔を計算する。
【0060】
一般に、導体がお互いならびに地面または他の物体にどれほど近くなり得るのかを規定する安全コードがある。これは、2つの電線が上下構成で同一の構造体に結ばれる時、または2つの電線が交差し、一方が他方の上を進まなければならない時に、特に重要である。
【0061】
別の実施態様では、クリアランス・センサ20は、1つまたは複数のレーダー・センサまたは超音波センサである。超音波レンジファインダおよび/またはレベル検出センサを使用して、導体クリアランス/高さを判定することができる。これらのセンサは、高周波音パルスを放ち、その後、目標物体からのパルスの反射をリスンし、距離/高さを判定するためにToF分析を実行することによって働く。これらのセンサは、空気の密度が、したがって音速が、温度および湿度の変化に応答して変化するので、較正およびリアルタイム調整のために温度センサ(1つまたは複数)および湿度センサ(1つまたは複数)が付随しなければならない。このタイプの例のセンサは、Siemens Ag Echomax XPSシリーズである。
【0062】
別の実施態様では、クリアランス・センサ20は、カメラ/光学センサである。ここで、カメラは、固定されたカメラ視点/視角に対して相対的に架空導体/ワイヤを結像するのに使用される。カメラ内の組込みコントローラまたはマイクロコントローラ50上で実行するコンピュータ自動化された画像分析プロセスによって、導体の位置を判定することができる。この方法は、単一の画像取込で複数の導体を結像/測定できるという利点と、導体上の氷/雪累積を視覚化し、測定する能力とを有する。要するに、短いバーストでのまたは継続的なビデオの取込は、口語で「ギャロップ」と称する、風によって誘導される風振動によって引き起こされる導体動きの検出および分析を可能にする。
【0063】
一例では、1つまたは複数のカメラは、空および空の雲とおそらくは太陽などの関連しない背景物体に対して前景物体としての送電線の識別を周期的に可能にする組込み画像分析論システムを含む。発光ダイオード(LED)、フラッシュバルブ、または他の光源を使用する可視光または不可視の赤外もしくは紫外のフラッシュの使用は、背景画像アーティファクトまたは干渉の除去を助けるのに使用され得る。というのは、前景物体(導体など)が、通常の光学表面反射率を有する離れた物体よりも、フラッシュされた光によってより強く照明されるからである。
【0064】
電気変換器44および磁気変換器42は、集合的に電磁場(EMF)センサ・システムとも呼ばれるが、架空導体によって放たれまたは作られる電場および磁場を測定するのに使用される。これらの測定値は、導体クリアランス・センサからの測定値と組み合わされて、導体幾何形状および関連するEMFパターンの3次元モデル化に基づく、架空導体上に存在する電流波形および電圧波形の非常に正確な計算を可能にする。導体クリアランス・センサ(1つまたは複数)から入手される導体の動的に測定された形状を組み込むことによって、より正確で高精度のEMFモデルを構築することができ、これを用いて、EMFセンサ値を、より高い精度および詳細さで解釈することができる。電場センサは、通常、平板コンデンサ・タイプのセンサまたは分圧器タイプのセンサである。磁気変換器42は、磁場センサとも称し、通常は、誘導コイル磁場センサ技術またはソリッド・ステート磁場センサ技術(たとえば、ホール効果センサ、磁気抵抗センサ)を含む。
【0065】
温度計/温度センサ32を含む気象センサが、他のセンサ測定値の内部較正およびリアルタイム調整に使用される。というのは、多くのセンサが、温度ドリフト依存性を有するからである。温度計は、周囲気温に関するデータを収集するのに使用され、この周囲気温は、後で議論するダイナミック・ライン・レーティングの計算の鍵になる要因でもある。風速センサおよび風向きセンサ(たとえば、従来の機械式タイプおよび超音波タイプを含む風力計36)ならびに太陽放射/日射センサも、ダイナミック・ライン・レーティング値のその後の計算に使用される。
【0066】
上で説明したハードウェア能力、エレクトロニクス能力、および分析論能力は、中央サーバ100による、電圧を与えられた導体、電圧を除去された導体(設置中または保守中)、および架空地線(OHGW)を含む架空送電線および配電線のリアルタイム特性および性能の測定に使用される。リアルタイムで条件および性能を監視することによって、配電網オペレータは、送電グリッドを介するより低コストのおよびまたはより低汚染の発電源へのより幅広いアクセスを使用可能にすることによって、発電および送電資産利用を最適化し、エンドユーザの平均電力料金を下げ、二酸化炭素、重金属、NOx、SOx、および粒子の排出を減らす潜在能力を有する、発電機ディスパッチ、電線、および/または変電所スイッチング構成に対する調整を行うことができる。アクション可能なリアルタイム導体性能情報の最も一般的な明示は、ダイナミック・ライン・レーティングの計算にある。
【0067】
ダイナミック・ライン・レーティングは、中央サーバ100によって計算され、次のように説明される。まず、導体クリアランスが、電力線に沿った監視システム10ごとに非接触クリアランス・センサ20によって測定される。通常、中央サーバ100は、送電線の長さに沿って分布する監視システム10のうちの複数からデータを収集する。
【0068】
次に、導体平均温度が、測定されたクリアランス(またはたるみ)から計算される。各ぶら下がる懸垂線導体は、熱機械系を表し、この熱機械系では、吊るされた導体が、相互に関係する平均温度、長さ、水平張力、およびたるみを有する。水平張力は、通常、自由にスイングする懸垂碍子が使用される場合に同一の送電線の隣接する後続のスパンに伝達され、したがって、監視される導体スパンを、熱機械的挙動に関して、隣接するスパンの代表と考えることができる。導体が、気象または電気抵抗加熱によって加熱される時に、長さ方向の熱膨張が、導体を延ばし、張力を下げ、減らされた地上高(増えたたるみ)をもたらす。導体が、気象(風または降雨)によって冷却される時に、長さ方法の熱収縮が、張力を増やし、たるみを減らす。張力、温度、およびたるみの間の相互関係は、これらの変数のうちの任意の1つの測定が、中央サーバ100が熱機械モデルを使用することによって他の変数の一方または両方を計算することを可能にすることを意味する。そのようなモデルは、初期仕様に基づく導体、塔、および碍子の工学モデルから計算され得るが、しばしば、経時的な機械的特性または材料特性の変化を取り込むためまたは工学仕様に対する相対的な初期設置条件の不確実性を考慮に入れるために、中央サーバ100によって、導体クリアランス/たるみ、温度、および/または張力の経験的測定値を用いて較正され、または調整もされる。たとえば、工学ドキュメンテーションは、導体が、60°Fの温度および10000ポンドの張力で設置され、10フィートのたるみをもたらさなければならないと指定する場合がある。しかし、架線工夫による設置中に、たるみおよび張力を正確に測定することはできるが、導体の正確な温度が、未知または推定され、初期たるみ/張力/温度関係が、工学仕様から変化する場合がある。
【0069】
次に、導体または回路の負荷すなわちアンペア単位の電流の流れが、各監視システム10の非接触クリアランス・センサ20およびEMF変換器42、44から収集されたデータを使用して、中央サーバ100によって計算される。ぶら下がる導体の幾何形状は、次の双曲余弦関数によって記述される形状を有する懸垂線を形成する。
【数1】
ここで、hは、導体の高さを表し、yは、その経路に沿った導体の水平位置を表し、「a」は、懸垂線形状の凹部の形状または度合を支配するパラメータであり、y
0およびz
0は、原点すなわち(x,y,z)=(0,0,0)に対する相対的な実際の導体の最も低い点の並進オフセットを表す。
【0070】
EMFセンサ・デバイス(1つまたは複数)の位置での架空導体経路に沿った単位電流によって放たれる磁場が、ビオサバールの法則を使用して、導体の測定されたおよび/または計算された懸垂線経路に沿って数値経路積分を実行することによって、中央サーバ100によって計算される。
【数2】
ここで、
B
0は、アンペア/メートル(A m
-1)単位の、センサ位置rでの単位ベクトル磁場であり、
rは、メートル(m)単位の、EMFセンサ・デバイスのベクトル位置であり、
dcは、Cすなわち2つの選択された端点の間の吊るされた導体の懸垂線経路に沿った、無限小の電線要素であり、
r’は、電線要素cとセンサ位置rとの間の変位ベクトルであり、r’=r-cであり、
I
0は、アンペア(A)単位の、導体に沿った単位電流であり、
μ
0およびπは、定数である。
【0071】
単一の架空ワイヤまたは3相AC回路の場合に、導体に沿った電流は、測定されたベクトル磁場(EMFセンサ・デバイス(1つまたは複数)からの)を各装置10に関連するモデル単位ベクトル磁場B0と比較することによって、中央サーバ100によって計算される。米国特許第6714000号および米国特許第6771058号を参照されたい。
【0072】
架空ワイヤまたは回路の複数のまたはより複雑な集合および複数のEMFモニタ位置/ユニットに関して、同一のモデル単位ベクトル磁場が、各EMFセンサ位置で導体/ワイヤ経路ごとに、中央サーバ100によって計算される。この場合に、各架空ワイヤ上の電流は、各回路上の可変電流の、測定された磁場の値とモデル磁場の値との間の二乗平均平方根誤差を最小にする数値プロセス(たとえば、線形または非線形の最小二乗、勾配降下、および/または関連する数値アルゴリズム)を使用して計算される。参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第8280652 B2号を参照されたい。
【0073】
導体温度および電流負荷が、コントローラ50および/または中央処理施設100のサーバ・コンピュータによって判定された後に、これらの変数の最近のヒストリも、通常は中央処理施設100によって収集される(約4時間以内のヒストリ)。さらに、局所気象センサからの気象データまたは気象データ・サービス・プロバイダによって提供されるリモートに計算された気象モデルが、太陽放射/日射および周囲温度を含めて、中央処理施設100によって収集される。風速データおよび風向きデータを、中央サーバ100によって、局所センサまたはモデル・データから収集することもできる。
【0074】
導体のリアルタイム性能に関連する観察された/計算された変数に鑑みて導体温度を支配する物理プロセスを分析することによって、中央サーバ100は、現在の気象条件および導体特性を考慮して、架空線の有効な対流冷却潜在能力を推論することができる。
【0075】
4つの熱伝達現象すなわち、導体の放射冷却(黒体冷却)、導体の太陽または他の放射加熱(放射吸収)、電流によって引き起こされる導体の抵抗加熱(「ジュール加熱」または「オーム加熱」)、ならびに風または他の局所対流現象によって誘導される導体の表面を横切る空気の動きによって引き起こされる導体の対流冷却が、架空導体の温度を支配する主な要因である。
【0076】
上でリストした熱伝達現象を記述する経験式が、IEEE Std. 738-2012に詳細に記載されている。
【0077】
導体温度および負荷の現在値および最近観測された値ならびに現在および最近の気温および太陽放射を調べることと、IEEE Std. 738または同様の参照標準規格に概要を示された式を使用することと、によって、中央処理施設100は、導体の現在温度を説明する、有効垂直(導体の長軸に対して)風速を計算する。この有効垂直風速を手にして、現在の気象条件が無期限に一定に保たれると仮定して、導体の最大動作温度(MOT)未満に留まりながら導体が経験し得る最大連続電流負荷を計算することができる。この最大電流負荷を、ダイナミック・ライン・レーティング(DLR)と呼ぶ。関連する式(やはりIEEE Std. 738に記載)を使用する同様の計算は、モデル負荷電流が定義された期間、たとえば5分または1時間にわたって適用されることだけを仮定する、短期のまたは過渡的な電流負荷レーティングを与えることができる。これらのレーティングは、しばしば、短期緊急レーティング(Short-Term Emergency Rating)または過渡的レーティング(Transient Rating)と呼ばれ、通常は同等のDLRより大きい。
【0078】
着氷(導体表面上の氷蓄積の形成)、ギャロップ(しばしば、強風条件での氷形成によって促進される、導体動きの大きいスイングにつながる、導体の、風によって誘導される振動)、および風振動(導体ストランドの疲労および腐蝕につながる、風によって誘導される高周波振動)などの望ましくない導体条件の、中央処理施設100によるリアルタイム分析は、位相間または位相対グラウンドの導体閃絡、導体(1つまたは複数)の氷または振動によって誘導される機械的延び/疲労/故障/破損、およびグラウンドクリアランス違反などの危険な状況の高められたリスクについて、送電運営会社資産管理システムに中央サーバ100が警告することを可能にする。このリアルタイム情報を手に、機敏なグリッド・オペレータは、改修活動方式または他の手順を実行して、資産に対するリスクを低減し、システムレベルのカスケードする障害を回避することができる。
【0079】
非接触クリアランス・センサ測定値の他の短期応用例は、ストランデッド導体設計もしくはレガシ導体設計と比較した新規の導体設計、ストランディング、材料組成、変更技法もしくは修復技法、または表面処理の評価を含む。新規の塔構造、新規の碍子構造、または導体幾何配置に関連する性能改善を、設計クレームと比較して測定し、分析し、検証することもできる。
【0080】
より長い期間にわたって架空導体の竣工性能を分析することによって、エンジニアおよびプランナは、資産の健全性および保守/交換スケジュールのモデルをパラメータ化することができる。導体たるみ/クリアランス、温度、電流負荷、および機械サイクルの長期現場監視は、導体を以前の仮定より積極的に動作させられるかどうか、または、導体が、機械的応力および関連する材料劣化(たとえば、アルミニウム導体ストランドの完全な焼きなまし)に起因して寿命末期に達しようとしているかどうかを資産所有者が判断するのを助けることができる。
【0081】
その後、DLRを計算するのに使用される非接触クリアランス・センサ20を使用して、特定の送電経路のライン・レーティング予測を検証し、パラメータ化し、調整することができる。数週、数月、または数年にわたって集計されたリアルタイムDLRは、気象学データに基づくDLR予測の精度および/または不確実性を検証し、定量化するのを助け、これによって、予測されたレーティングの信頼度および信頼性を高めることができる。高精度の予測されたレーティングは、既存の送電能力の使用の増加を可能にするスケジューリングされた電力市場発電機ディスパッチを計算に入れ、低価格の、低排出の、または再生可能な発電機から発する電気の割合を高めることができる。
【0082】
図6は、導体のクリアランス・センサによって生成された点群内の点を識別し、あてはめるためにマイクロコントローラ50によって使用されるプロセスを示す流れ図である。
【0083】
より詳細には、ステップ410で、ライダ・センサまたはレーダー・センサなどのクリアランス・センサ20を使用してシーンの広域スキャンを実行する。これは、広域点群を作り、これらは、デカルト座標(x,y,z)または方位角、迎角、および半径の球面座標であるものとすることができる。
【0084】
コントローラ50は、ステップ416で、導体の初期測量幾何形状に関する情報をも記憶する。通常、これは、導体が碍子連からぶら下がる位置(碍子/導体クランプ位置)、および具体的にはクリアランス・センサ20の位置に関する位置を含む。これが、共通の座標系を生じる。それと同時に、コントローラは、ステップ420で、導体の最後に測定された幾何形状にアクセスする。
【0085】
初期測量(416)および最後に測定された幾何形状(420)からの情報を使用して、ステップ418で、その導体のセグメント・モデル幾何形状を生成する。これは、デカルト座標系などの選択された座標系内のセグメント平均位置を含む。これは、主成分分析から入手されるセグメント主成分をも含む。最後に、このモデルは、導体のあてはめられた線から以前に測定された点の二乗平均平方根(RMS)距離を含む。このセグメント幾何形状モデルは、その後、ステップ414で、点群内の点ごとに使用される。具体的には、セグメント幾何形状モデルからのスカラ距離を計算する。
【0086】
ステップ422では、所定の距離Rminを超えて存在する点を識別する。これらの点は、現在の導体の査定に関して無視されるが、ステップ426に示されているように、他の導体を検索する時には再処理される。
【0087】
その一方で、ステップ424では、導体幾何形状モデルの所定の距離Rmin以内の点をステップ424で識別する。これらの点から、ステップ428で、3次元の直線にあてはめるための線形最小二乗を実行する。その後、ステップ430では、あてはめられた線が満足であるかどうかを判定する。すなわち、あてはめられた線 可能な導体のよい表現であるかどうかを判定する。
【0088】
導体が悪いあてはめである場合には、ステップ332で、より大きいRminを用いてこのプロセスを繰り返すか、エラー・メッセージを送る。
【0089】
その一方で、線が満足なあてはめであると判定される場合には、この線のパラメータが、その導体の最後のタイプおよび測定された幾何形状として保存される。ステップ434で、点を懸垂線あてはめ動作に渡す。最後に、ステップ436で、懸垂線を、分離された導体点および既知の碍子/導体クランプ位置にあてはめる。
【0090】
図7は、導体の動きを識別し、分析するためにマイクロコントローラ50によって使用されるプロセスを示す流れ図である。
【0091】
より詳細には、ステップ410で、ライダ・センサまたはレーダー・センサなどのクリアランス・センサ20を使用して、シーンの広域スキャンを実行する。これは、広域点群を作り、これらは、デカルト座標(x,y,z)または方位角、迎角、および半径の球面座標であるものとすることができる。しかし、スキャンは、スキャンがおそらくは5から10秒以上続く限り、前にスキャンされたものとは異なる。その結果は、点のそれぞれのタイムスタンプ測定値を有する点群である。
【0092】
ステップ440では、この生成された点群の点を、導体の1つに関連付ける。各点は、その点の座標と、その点が測定された時を示すタイムスタンプとの組合せである。
【0093】
ステップ442では、線または懸垂線を分離された点にあてはめる。その後、あてはめられた線からの点のRMS距離Drmsを判定する。
【0094】
ステップ444では、距離Drmsが小さいか否かを査定する。具体的には、Drmsが導体直径に匹敵するかどうかを査定する。たとえば、Drmsが導体直径の2倍未満である場合には、ステップ446で、導体が静止しまたはほぼ静止していると結論する。ステップ458で、この結論を記録する。
【0095】
その一方で、導体直径の2倍を超えるDrmsなど、大きいRMS距離が、ステップ448であてはめられた線と測定された点との間に存在する場合には、ステップ450から始まる導体動き計算を実行する。
【0096】
具体的には、たとえばステップ452で、ライダ・クリアランス・センサ20の単一のスキャンの点の群を収集する。次に、クリアランス・センサ20の各データ収集期間内の点に懸垂線をあてはめる。ステップ454で、点のこれらのセットのそれぞれについて、セグメント平均位置、セグメント主成分、あてはめの品質、あてはめられた点の個数、および平均タイムスタンプを記録する。この分析は、その後、ステップ456で、クリアランス・センサによるスキャンの系列のそれぞれについて行われる。この情報から、振幅すなわち、あてはめられた懸垂線の間の最大距離が計算される。また、振動または動きの周波数または周期が計算される。その後、ステップ458で、この情報が記憶され、おそらくは中央サーバ130に送られる。
【0097】
図8は、EMFセンサすなわち磁場センサ42および電場センサ44からのEMF測定値を改善するためにクリアランス・センサ20からの情報を使用するのにマイクロコントローラ50および/または中央処理施設100によって使用されるプロセスを示す流れ図である。
【0098】
一般に、3次元のクリアランス・センサによって測定された導体位置は、固定されたまたは近似の導体幾何形状に頼るEMFモデルと比較して動的でより正確な3次元EMFモデルの作成を可能にする。この正確な幾何形状は、入力として電場データ、磁場データ、および導体幾何形状をとる最適化されたEMFモデルに基づく電線の電流、電圧、および電力の計算を容易にする。
【0099】
一般に、導体の幾何形状が、EMFセンサ42、44に関して既知である場合には、その幾何形状情報を使用して、導体からの電磁場の測定を改善することができる。これが生じるのは、検出される磁場/電場が、場センサと導体形状82の長さに沿った無限小セグメントの系列との間の距離の二乗の関数であるからである。
【0100】
より詳細には、動的で3次元の導体幾何形状を知ることは、観察されたEMF信号を監視される送電線上の電流、電圧、および電力の流れに関する結論に写像するモデルを改善する。この改善は、導体形状および地上高の変化がアウトバウンドEMF信号の振幅および位相角にどのように影響するのかを考慮に入れることのできない、2次元断面または3次元のいずれかの、静的で時間不変の導体形状モデルと比較して測定される。クリアランス・センサによって測定された3次元の導体位置データは、固定されたまたは近似の導体幾何形状に頼るEMFモデルと比較して、動的でより正確な3D EMFモデルの作成を可能にする。電線の電流(I)、電圧(V)、および電力(P)の計算は、入力として電場データ、磁場データ、および導体幾何形状をとるEMFモデルに基づく。
【0101】
具体的には、1つまたは複数のクリアランス・センサ、たとえばライダ・センサは、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100に送られるスキャン・データ410を生成する。好ましくは、このデータは、たとえば
図5で説明した3つの空間次元での導体の位置と、
図6で説明した導体の動きとを指定する。このデータから、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100は、導体位置436とすべての導体動き458とを解決する。その後、この情報は、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100によって使用されるEMFモデル222に供給される。
【0102】
それと同時に、磁場センサ42および電場センサ44を含むEMFセンサからのEMFセンサ・データ216が、磁場の大きさ218および電場の大きさ220を計算するのに使用される。この情報は、EMFモデル222に供給される。
【0103】
EMFモデル222は、磁場情報および導体幾何形状情報を使用し、測定されたベクトル磁場値を磁場のモデル単位値によって除算することによって3相または単一相のAC電線電圧を判定する計算224を実行するために。これらのモデル単位値は、回路の位相順序(たとえば、「ABC」、「ACB」など)に関連する既知の位相シフトを有する監視される導体上の電流の1.0アンペアrmsによる産物になるセンサ位置に存在するモデル化される磁場フェーザ(正弦波のオイラー方程式表記)を表す複素数である。これらのモデル単位フェーザは、ビオサバールの法則として知られるベクトル・クロス乗積方程式を使用して、導体の3次元経路に沿った導体の無限小セグメントの系列のセンサ位置で作られる磁場のベクトル和(経路積分)として計算される。
【0104】
EMFモデル222は、測定された電場を使用して、クーロンの法則を使用することによって電線電圧ならびに電線電圧と電線電流との間の位相オフセットを計算する228。測定された導体幾何形状情報は、導体の経路に従う3次元電荷分布モデルを作成するのに使用される。センサ位置でのモデル電場が、導体形状に沿った電荷分布の無限小要素にわたる経路積分を使用して計算され、鏡像電荷法が、監視されるシーンの下の地球によって形成されるグラウンド平面Gの存在を考慮に入れるのに使用される。最後に、この情報から、ステップ226で、複素数の電線電流と電線電圧との積として電線電力を判定する。結果の複素電力Pから、実際の電力(ワットまたはREAL(P))、無効電力(バールまたはIMAG(P))、皮相電力(ボルト-アンペア、ABS(P))、または力率(皮相電力に対する実際の電力の比率)を、その後に計算することができる。
【0105】
好ましい実施形態では、気象センサ情報または気象データ330も、EMFモデル222によって、電線電力計算226を実行するのに使用される。より詳細には、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100は、温度センサ32、湿度センサ34、および風力計36からの情報をさらに使用して、EMFモデル222の精度を改善する。たとえば、磁場変換器および電場変換器からの生のアナログ・センサ・データを変換するアナログ-デジタル変換器の電気的応答は、通常、温度に対する依存性を有し、温度が既知の時に補正され得るバイアスをもたらす。別の例では、濡れた土および草木をもたらす降雨が、電圧を与えられた高電圧導体によって作られる電場勾配をステアリングし、強化することが周知である。気象センサまたは気象データによって観察される降雨の期間中またはその後に、電場モデルの振幅、位相、およびベクトル方向に対する動的補正を、局所的な湿りによって引き起こされるセンサ値の観察された変化に相関して行い、EMFモデルおよびセンサ・データを使用する電線電力のより正確で高精度の判定をもたらすことができる。
【0106】
図9は、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100が、どのようにして異常としての導体たるみインジケータとして機能し、さらに、おそらくは導体上の氷蓄積を検出するのかを示す流れ図である。
【0107】
一般に、ライダなどのクリアランス・センサ20は、スパンまたはストリング・セクション内の平均導体温度を計算するのに使用される、測定された導体位置を作る。この計算プロセスまたは測定プロセスは、張力の下でぶら下がる乾いて清浄な導体の熱膨張を前提とする。このたるみベースの温度は、その後、異なる測定プロセスによる、EMFベースの電線電流(抵抗加熱を引き起こす)および気象センサまたは気象データの入力からの導体温度推定値と比較される。たるみベースの導体温度と気象/EMFベースの導体温度とが、あるしきい値を超えて食い違う場合には、これは、導体上の氷形成(この判定を、温度データおよび降雨データによって助けることができる)、異物接触、または、導体を吊るす機械的構造/碍子/導体システムの故障もしくは変更などの異常な条件を暗示する。
【0108】
より詳細には、クリアランス・センサ、たとえばライダのスキャン・データ410が、クリアランス・センサ20とマイクロコントローラ50および/または中央処理施設100とによって生成される。クリアランス・センサは、生のスキャン・データを生成する。その後、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100は、送電線に関する1つまたは複数のクリアランス・センサの既知の位置などのさらなる情報を使用して、3次元導体幾何形状を判定する。このデータから、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100は、導体位置436およびすべての導体動き458を解決する。好ましくは、送電線の位置および動きの幾何形状は、3次元で解決される。
【0109】
この情報は、導体たるみまたは垂直位置ステップ350と、ステップ352で導体の横の動きまたは導体ブローアウトまたは水平位置とを解決するのに使用される。この情報から、ステップ354で、張力の下でぶら下がるワイヤの熱膨張に基づく計算された平均導体温度が計算される。
【0110】
しばしば同時に、磁場センサ42および電場センサ44を含むEMFセンサからのEMFセンサ・データ216は、磁場の大きさ218および電場の大きさ220を計算するのに使用される。この情報は、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100によって使用されるEMFモデル222に供給される。
【0111】
ここで、EMFモデル222は、磁場を使用する 電線電流計算224を実行する。電場は、電線電圧を計算するのに使用される228。この情報から、監視される導体によって伝導される電力を判定するために、電線電力計算226を実行することができる。
【0112】
好ましい実施形態では、気象センサ情報または気象データ330は、ステップ356で、気象情報およびEMFモデル222からの電流に基づいて導体温度の推定値を独立に生成するのに使用される。気象情報は、通常、気象サービスからの気象情報と一緒に、温度センサ32、湿度センサ34、および風力計36から導出される。電流は、導体を加熱し、風、湿度、および気温は、導体の熱放散の、したがって冷却の速度に影響する。
【0113】
ステップ360では、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100が、たるみベースの導体温度とモデル・ベースの導体温度とを比較する。具体的には、ステップ354で、クリアランス・センサ・データが、導体温度の1つの基礎を提供し、ステップ356で、導体温度の別の推定値が、導体を通る電流および気象に基づいて生成される。
【0114】
独立のセンサベースの方法から入手された2つの推定導体温度を、ステップ362でマイクロコントローラ50および/または中央処理施設100によって比較することができる。2~3℃以内の類似性がある場合には、相互に補強された測定値がある。この検証された導体温度は、ステップ364で記録される。
【0115】
その一方で、ステップ358で温度が一致しない場合には、ステップ366で、機械的問題、構造的問題、または電気的問題を識別し、これをグリッド・オペレータに警告することのできる人間ベースまたはアルゴリズム・ベースの分析プロセスの注意を必要とする異常条件として、または資産の健全性を劣化させる可能性がある他の異常条件として、測定タイムスタンプにフラグを立てる。導体温度の異常な差が、長い時間期間にわたって複数の独立の温度推定方法の間で観察される場合には、これは、導体の延び、ストランド破損、碍子またはシャックルの故障、構造基礎の沈下、または点検、保守、もしくは交換の他の理由を示す可能性がある。
【0116】
好ましい実施形態では、この導体上での氷蓄積が可能であるか否かまたは別の異常が存在するか否かを判定するために、さらなる処理が実行される。
【0117】
具体的には、ステップ368で、気温、風速、風向き、放射、および降雨/湿度など、気象センサおよび/または気象サービスからの気象データからの情報が、気象センサからアクセスされ、またはステップ330でリモートにアクセスされる。次に、氷がありそうであるか否かの判定を行う。
【0118】
氷の可能性があると判定される場合には、導体着氷警告を生成する。導体たるみの観察された逸脱に基づいて、ステップ370で、導体長さの1メートルあたりの重さおよび推定される氷厚さを生成する。
【0119】
その一方で、氷の可能性が低いと判定される場合には、導体異常警告を生成する。そのような異常は、おそらくは、機械的故障、または、塔、腕木、碍子、もしくは導体材料の変化に起因する可能性がある。おそらく、導体に接触している、木または別の電柱などの異物がある。この警告は、ステップ372で発行される。
【0120】
図10は、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100が、どのようにして風力計としての導体分析を使用するのかを示す流れ図である。ここで、中立のぶら下がり位置から離れる導体の水平位置が、導体の位置および温度に影響する局所水平風速に関する知識を推論するのに使用される。
【0121】
風によって誘導される水平導体の動きまたは変位を、一般に「ブローアウト」と称する。クリアランス・センサ20によって測定される時に、観察されるブローアウトを使用して、流体動力学モデルを使用して有効垂直水平風速を計算することができる。風速のこの測定値を使用して、気温と比較した導体温度に基づく計算された風速(DLRを計算する時に使用される標準的方法)または気象/気象学観察から直接の風速を補足することができる。風速のこの独立の評価は、導体温度が周囲気温に近い(DLRを計算する標準的方法で大きい不確実性もたらす)時または気象センサもしくは気象学的観察が他の形で使用不能もしくは信頼できない時に、特に有用になる可能性がある。これらの場合に、標準的方法の代替物としてブローアウトベースの風速の保守的な推定値を使用して、DLRを計算することができる。
【0122】
より詳細には、クリアランス・センサ、たとえばライダのスキャン・データ210が、クリアランス・センサ20によって生成される。このデータから、マイクロコントローラ50および/または中央処理施設100は、すばやく連続する複数の導体位置スキャンの時系列分析に基づいて、導体形状および位置212とすべての導体動き214とを解決する。通常、クリアランス・センサは、生のスキャン・データを生成する。その後、3次元導体幾何形状を判定するのに送電線に関する1つまたは複数のクリアランス・センサの既知の方位などのさらなる情報を使用するマイクロコントローラ50および/または中央処理施設100。
【0123】
この情報は、ステップ350で導体のたるみまたは垂直位置を、ステップ352で導体の横の動きまたは導体ブローアウトまたは水平位置を解決するのに使用される。この情報から、ステップ354で、ぶら下がる導体の全長を計算でき、張力の下のぶら下がるワイヤの熱膨張に基づく平均導体温度が計算される。
【0124】
風速の潜在的な確認の一部として、ダイナミック・ライン・レーティングを計算することはできない。というのは、たるみ対温度測定方法の正確さ/不確実性を考慮すると、高い風速が、導体温度が周囲気温から区別不能になる範囲まで導体を冷却するからである。さらに、導体温度が周囲気温から2~3度以内である時に、標準的な方法を使用して、受け入れられる確実性を伴ってダイナミック・ライン・レーティングを計算することはできない。その代わりに、みかけ上垂直の風速の計算の前に、最小の「温度上昇」または周囲より高い導体温度が要求され、後続のDLR計算は、動作的に有用になるのに十分に低い不確実性を伴って実行され得る。これは、「温度上昇」項が、みかけの風速の微分の分母に現れ、0に近い温度上昇値の固定された絶対的な不確実性に関する出力DLR値の不確実性を膨張させることにつながる(すなわち、温度上昇が0に近く、周囲温度と導体温度との両方の温度を±2度以内判定できるのみである場合に、風速出力およびDLR出力が、膨大な不確実性を有する大きい値を有する)からである。
【0125】
その一方で、ステップ380で、導体位置の監視を使用して、極端な風事象を検出することができる。この情報を、気象センサ情報または気象データ330に対して確認することができる。通常、この気象情報は、気象サービスからの気象情報と一緒に、温度センサ32、湿度センサ34、および風力計36から導出される。
【0126】
ステップ386で、流体動力学ベクトル力モデルを使用するみかけの水平風速が、導体の水平スイングを水平風速に写像するのに使用される。その後、観察された導体ブローアウトによって正当化される高められた風速(高められたレーティングのために好ましい)を使用してDLRを計算する384。
【0127】
図11は、風向きおよび異なる風速の関数としてのメートル単位のブローアウト距離の散布図である。例の導体は、約-40度すなわち北北西の方向に沿って方位を定められている(0度は北を示し、90度は東を示す)。
【0128】
風速インジケータとしてのブローアウト法の有用性が示されている。風向きに対する明瞭なシヌソイド依存が存在する。また、より高い風速は、より大きいブローアウト・レベルにつながる。図示されているように、風が、0度および180度に近い風入斜角を伴って導体の長さに沿って吹く時に、ブローアウトは非常に小さい。風が横に吹く時には、ブローアウトが増加し、指向性は非常に明瞭である。
【0129】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して具体的に図示し、説明したが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずに、形態および詳細におけるさまざまな変更をおこなえることを理解しよう。