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特許7523761点群データを用いた建設用施工物検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】点群データを用いた建設用施工物検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/03 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01B11/03 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024056796
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207872
【氏名又は名称】大末建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(73)【特許権者】
【識別番号】524123403
【氏名又は名称】株式会社インフラ・ディープサーベイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 浩則
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ブンイ
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058141(JP,A)
【文献】特開2018-142269(JP,A)
【文献】特開2021-152497(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179336(WO,A1)
【文献】特開2021-096610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
21/00-21/32
G01C 1/00-15/14
G06T 1/00-5/94
11/60-13/80
17/05
19/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の測定対象部のある一面の勾配及び凹凸を計測するシステムであって、当該システムは、調査機器と基準板と測定対象部とを備え、
前記基準板は、勾配計測の基準となる一方の軸方向と他方の軸方向とを決める形状を有する維持機構を有し、ここで、前記一方の軸方向と前記他方の軸方向とは互いに直交しており、
前記測定対象部は、測定対象物内部に測定補助基準部を有しており、
前記調査機器は、
点群データを取得する撮像手段と、
勾配基準となる傾斜角度と特定の部位での傾斜の方向及び角度とを計測し記録する勾配角度記録手段と、
前記撮像手段で取得した点群データを記録する点群データ記録手段と
建物のある一面と判定基準である基準水平面との距離を比較して勾配及び凹凸の少なくとも一方を判定する処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記基準板の前記維持機構の一面を前記一方の軸方向に拡張して得た拡張面と前記測定補助基準部との前記他方の軸方向における距離差を基準距離として取得し、前記測定対象物の各点群と前記基準板の前記拡張面との距離を前記基準距離と比較することが可能であり、前記撮像手段で取得した前記基準板の点群データを用いて、前記一方の軸方向に延在する前記基準水平面に対して基準角度分傾斜した基準傾斜面を生成し、前記点群データの同一地点における基準傾斜面からの距離に基づいて要補修箇所情報が生成されて、前記点群データに位置情報及び要補修箇所情報が関連付けられて出力されることを可能とすることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記システムは、隣接する点群の傾斜基準水平面との距離差に基づいて傾斜基準面に対する勾配を判定する勾配検査モードを有し、
前記勾配検査モードにおいては
測定対象部分に含めて撮像した基準板の点群データを拡張して生成した基準水平面と、基準水平面の各点群に所定の傾斜と角度を付与して生成した基準傾斜面を基に、前記基準水平面と前記基準傾斜面を仮想空間上に生成し、
基準水平面と基準傾斜面と点群データとの高低差を仮想空間上で算出することで、
現実空間の傾斜を仮想空間上で検出し、
前記勾配検査モードは、さらに、
基準傾斜面に点群データの排水ドレン位置を重ねることで排水ドレン周辺の傾斜基準と排水ドレンに向かう排水溝の幅、傾斜を有する排水溝基準モデルを仮想空間上に生成し、基準傾斜面、排水溝基準モデル、排水ドレン基準モデルを順に重ねることで設計基準が示す排水基準勾配を仮想空間上に生成することで平坦な面以外の傾斜角度が施工基準に合致することを計測することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記基準水平面からのそれぞれの点群の距離に基づいて施工物の厚さや凹凸を判定する施工物厚さ検査モードを有し、
前記施工物厚さ検査モードにおいては
基準水平面-点群データの距離差を仮想空間上で算出することで、
現実空間の凹凸を仮想空間上で検出し、基準水平面との距離差で現実空間の基準物と基準水平面の距離差を±0の基準距離として現実空間の凹凸の合否を判定することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムを実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群データを用いた建設用施工物検査システムに関するものであり、特に、点群データを3Dデータとして活用して建設現場の検査用のデータ処理をすることで、建設用ウレタンの吹付厚さを検査することや、床面などの勾配を検査することを実現するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の建設においては、施工基準を満たす厚さでの資材の施工や、施工基準に即した傾斜を付けた施工が必要となる。施工後は、一般に、熟練技術者により、勾配検査とウレタン吹付厚検査とが実施される。
【0003】
従来の勾配検査について説明する。例えば建物の屋外に面する床面では、吹き込む雨水を床面に滞留させず排水するため、屋内に近い方から屋外に近い方に向けての緩い傾斜がつけられている。また、屋外に接する位置の雨水を集約して階下に排水する排水管につながる場所には排水ドレンが設置され、排水ドレンに雨水を流し込むための排水溝が掘られており、排水溝は排水ドレンに向けて緩く傾斜している。雨水は床面の傾斜に沿って排水溝に流れ込み、排水溝の傾斜に沿って排水ドレンに流れ込む、また床面の排水ドレン付近は床面から排水ドレンに直接雨水を流し込むため排水ドレンに向かってすり鉢状に傾斜している。勾配が不十分な部位や逆勾配になる部位が存在すると、雨水の滞留を引き起こす施工不良となるため、屋外床面の勾配検査は施工において重要である。
【0004】
屋外床面の勾配検査の方法には、水泡式の水平器により1点の勾配を計測する方法やレーザーを用いてレーザー照射起点から直線状に勾配を計測する方法が用いられる。床面の勾配計測では隣接する場所との高低差の計測が重要であるが、水平器を設置した1カ所の計測やレーザー照射起点を高さの基準とする計測では機器の自己位置と計測地点との比較となり、隣接する点間の高低差の比較には機器の基準位置を変えての複数回の計測が必要となるため、基準位置を移動させることによる設定誤りなどの人為ミスの可能性があり作業手順も煩雑である。
【0005】
従来のウレタン吹付厚検査について説明する。基準に対しての過不足の検査のもう一つの例として、建物の屋外に面する壁面や上階の配管下に位置する天井には、断熱対策及び防水対策のためにウレタンの吹付を行う。ウレタンの吹付後には吹付厚が設計時に定められた数値を過不足なく満たしたことを確認する検査が必須であり、従来の検査方法では、ウレタンの発泡後に基準長さを持つプラスチック製などの基準ピンをウレタン面に刺し、過不足が無いことを確認した後、基準ピン周辺については目視及び必要に応じて手触りで厚さの判定を行う。基準ピンはおおむね1~2メートル間隔で刺すため、吹付面全体の検査には複数回の基準ピン刺しと目視確認が必要となる。作業量の多さに加え、基準ピン周辺は目視確認であることから検査基準を満たすか否かの判定は属人的な検査技術に依るところが大きい
【0006】
そのような検査を支援する先行技術の一例として、以下のような特許文献が挙げられる。特許文献1、特許文献2、特許文献3では、ウレタンなどの吹付厚さを測定および/または検査するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-277813号明細書
【文献】特開2010-085131号明細書
【文献】特許6019924号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ある一面の形状を計測する方法として、3Dカメラなどの撮像手段で取得した点群データを用いる方法が活用されてきている。撮像手段で取得した点群データを床面の勾配計測やウレタン吹付厚さの計測に活用することで、従来の検査手法の誤り検知や、作業の効率化を図ることができる。
【0009】
そこで、本発明の目的のひとつは、撮像手段で取得した点群データと撮像範囲内に含めて同時撮像する基準板から生成する勾配及び/または凹凸を基準水平面との比較によって勾配や凹凸を判定し、当該判定に基づいて床面の勾配や吹付ウレタンの吹付け厚さを判定し、設計基準に即さない個所を発見する、施工検査を支援するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によると、建物の測定対象部のある一面の勾配及び凹凸を計測するシステムであって、当該システムは、調査機器と基準板と測定対象部とを備え、
前記基準板は、勾配計測の基準となる一方の軸方向と他方の軸方向とを決める形状を有する基準板を有し、ここで、前記一方の軸方向と前記他方の軸方向とは互いに直交しており、
前記測定対象部は、測定対象物内部に測定補助基準部を有しており、
前記調査機器は、
点群データを取得する撮像手段と、
勾配基準となる傾斜角度と特定の部位での傾斜の方向及び角度とを計測し記録する勾配角度記録手段と、
前記撮像手段で取得した点群データを記録する点群データ記録手段と
建物のある一面と判定基準である基準水平面との距離を比較して勾配及び凹凸の少なくとも一方を判定する処理手段と、
を備え、
前記処理手段は、前記撮像手段で取得した点群データを用いて、前記一方の軸方向に延在する基準水平面を正とする方向及び角度の傾きを付与した基準傾斜面を生成し、
前記基準板の前記垂直維持機構の一面を前記一方の軸方向に拡張して得た拡張面と前記測定補助基準部との前記他方の軸方向における距離差を基準距離として取得し、前記測定対象物の各点群と前記基準板の前記拡張面との距離を前記基準距離と比較することを特徴とする、システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により点群データを用いて勾配および凹凸を判定する手法により、建設現場において基準板を含めて3Dカメラで取得する点群データを用いた勾配検査や凹凸検査が可能となる。
【0012】
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明のシステムの概略を示し、建物のある一面の勾配及び凹凸を計測するシステムの一例を示す。
図2図2は、本発明の情報処理の一例を示し、特に、勾配検査モードの情報処理の一例を示す。
図3図3は、本発明の情報処理の一例を示し、特に、施工物厚さ検査モードの情報処理の一例を示す。
図4図4は、本発明の一実施例による計測の一例を示す。
図5図5は、本発明の別の実施例によるシステムの概略を示す。
図6図6は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、床面傾斜基準モデルの生成の情報処理の一例を示す。
図7図7は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、実測結果の結合の情報処理の一例を示す。
図8図8は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、モデルと実測結果の比較の情報処理一例を示す。
図9図9は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、排水溝への垂直方向の評価の情報処理の一例を示す。
図10図10は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、排水溝への水平方向の評価の情報処理の一例を示す。
図11図11は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、3Dカメラによる外廊下傾斜精度確認の情報処理の一例を示す。
図12図12は、本発明の別の実施例で使用する基準機の一例を示す。
図13図13は、本発明の別の実施例による情報処理における仮想空間の一例を示す。
図14図14は、本発明の別の実施例による情報処理における排水溝の傾斜方向の一例を示す。
図15図15は、本実施例の別のによる情報処理で使用する正しい傾斜方向のイメージを示す。
図16図16は、本実施例の別のによる情報処理の出力および現実の測定箇所との関係を示す。
図17図17は、本実施例による出力画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施例によるシステムの概略を示し、建物のある一面の凹凸を計測するシステムの一例を示す。
【0015】
図1のシステム1000は、調査機器100と、測定対象部200とから構成される。
【0016】
調査機器100は、制御手段110と、3Dカメラ制御手段120と、記録手段130と、検査モード実行処理手段140と、データ出力手段150とを備える。
【0017】
制御手段110は、調査機器100の内部や外部の各手段を制御したり、必要なデータの送受信を直接的または間接的に制御したりする。制御手段110は、汎用のコンピュータやプロセッサなどでもよい。
【0018】
3Dカメラ制御手段120は、点群データを取得する機能を有する3Dカメラなどの撮像手段121に接続されて、3Dカメラなどの撮像手段121を制御する。なお、本実施例の撮像手段は、点群データを取得する機能を有していればよく、例えば、撮像する対象・精度・用途・環境に応じて、深度カメラ、Lidarカメラ、3Dレーザースキャナーなどを用いてもよい。
【0019】
記録手段130は、3Dカメラで取得した点群データを記録する。例えば、厚さ及び凹凸を計測するための基準として垂直平面を生成するための基準と、凹凸の正誤判定の基準として既存手法でウレタンに刺されたウレタンピンと、正誤判定を行う対象となるウレタン面の点群を記録する。ここで、本実施例において、ウレタンピンは、測定補助基準部の一例であり、後述するように、測定補助基準部と基準板とに基づいて、距離を決定することができる。なお、本実施例において、一方の軸方向の一例を垂直方向、当該一方の軸方向に直交する他方の軸方向の一例を水平方向として説明する。
【0020】
検査モード実行処理手段140は、1つまたは複数の検査モードを実行する。
【0021】
データ出力手段150は、本システムで生成された任意のデータを出力する。
【0022】
測定対象部200は、当該測定対象部の内部に(勾配)基準板210が配置されている。
【0023】
基準板210は、勾配計測の基準となる水平維持機構を有する。水平維持機構の一例は、ジンバルである。計測対象のウレタン面が壁面である場合、ジンバルは基準板が地軸に対して垂直となるよう制御し、計測対象のウレタン面が天井面である場合、ジンバルは基準板が地軸に対して水平となるように制御する。検査モードでは、取得した点群内の基準板の点群情報から基準水平面を生成し、既存手法で正解となるウレタンピン(測定補助基準部220)の位置の点群との距離差を正解距離として算出し、正誤判定を行う対象となるウレタン面の点群と基準板との距離差を正誤判定距離として正解距離を比較する。正誤判定距離が正解距離より短い場合、ウレタン面の厚みがウレタンピンよりも厚いとみなす。正誤判定距離が正解距離より長い場合、ウレタン面の厚みがウレタンピンに満たず厚み不足であるとみなす。厚みの過剰、不測の判定においては、前記の比較の際に許容される距離差を差し引く。
【0024】
図2は、本発明の一実施例による情報処理の一例を示し、特に、勾配検査モードの情報処理の一例を示す。
【0025】
S210では、3Dカメラで取得した基準板の点群データを伸長して、基準水平面を生成する。このとき、伸長の終点座標は計測対象面の端部の点群座標を基準板の点群データの深さ方向の座標に引き上げた座標となる。基準水平面の生成後、基準水平面を用いて基準傾斜面を仮想空間上に生成する。ここで、基準傾斜面は、基準水平面に対して建設現場設計図上に定められた勾配角度及び方向を付与した基準傾斜面である。
【0026】
S220では、3Dカメラで撮像したデータを3Dカメラ制御手段120を介して取得し、点群データを算出する。
【0027】
S230では、基準水平面と基準傾斜面と点群データとの高低差を仮想空間上で算出することで、現実空間の傾斜を仮想空間上で検出する。
【0028】
S240では、基準水平面上の点群データ上での排水ドレン位置に相当する位置に排水ドレン及び排水ドレン周辺の扇状の傾斜情報を持つ排水ドレン基準モデルを用いて、現場設計図情報をもとに排水ドレンモデルからの排水溝の方向、距離、角度を用いて排水ドレンモデルに接続される排水溝モデルを仮想空間上に生成する。その後、基準傾斜面に排水溝基準モデル、排水ドレン基準モデルを順に重ねて高さ方向の座標を基準傾斜面、排水溝基準モデル、排水ドレン基準モデルの順に上書きすることで建設現場設計図が定める排水基準勾配を仮想空間上に生成すし、平坦な面以外の傾斜角度が施工基準に合致することの計測を可能とする(S250)。ここで、排水ドレン基準モデルは、あらかじめ建設現場設計図をもとに所定の基準となるデータとして任意の記憶手段ないに記憶されていてよい。
【0029】
なお、本実施例の詳細については、図4で説明する。
【0030】
図3は、本発明の一実施例による情報処理の一例を示し、特に、施工物厚さ検査モードの情報処理の一例を示す。
【0031】
S310では、基準水平面と点群データとの距離差を仮想空間上で算出する。
【0032】
S320では、現実空間に施工されたウレタンなどの施工物の厚さを仮想空間上で検出する。
なお、本実施例の詳細については、図5以降で説明する。
【実施例1】
【0033】
図4は、本発明の一実施例による計測の一例を示す。
【0034】
本実施例においては、壁に吹付けられたウレタンの厚みを測定する手法について説明する。本実施例においては、ウレタン吹付前後を比較するのではなく、施工後(ウレタン吹付前後)だけでウレタンの厚みを判定を行う。
【0035】
壁などに計測機器を設置したままのウレタン吹付は飛散で故障の恐れがあり、施工前後で同じ位置に計測機器を設置できない場合もあるからである。
【0036】
以下、本実施例の計測について説明する。
【0037】
S410では、3Dカメラが、ウレタンが吹き付けられた壁に基準板を含む測定対象物を刺する又は近くに設置し、基準板の垂直維持機構によって基準板が垂直を維持した状態としてウレタンと基準板を一緒に3Dカメラを用いて撮像し点群データを取得する。垂直維持機構の一例は、基準板の垂直方向の側面である。具体的な一例として、3Dカメラが、まず、基準板とウレタン面を同一画角内に含めて撮像する。そして、当該基準板を撮像範囲に含まない周辺のウレタンの表面を撮像する。これらを測距することにより、点群データを取得する。
【0038】
S420では、仮想空間上で基準板の天面を起点に拡張して基準水平面を作り、ウレタン面点群上に既存手法で刺されたウレタン厚さを確認するウレタンピンの天面から天面部分の厚さを引いた距離をウレタン厚さ基準として基準水平面とウレタン厚さ基準との距離をウレタン厚さ合否判定の基準距離とし、ウレタン面の各点群から基準水平面までの距離と合否判定の基準距離を比較し、過不足を判断する。なお、本実施例の基準距離は一例であり、ウレタンピンの天面を含めた厚さを用いてもよい。
【0039】
過不足の判断においては、基準水平面の座標を基準にして、ウレタン表面の各点群の座標の距離の差を計算する。そして、ウレタン表面の各点群の座標の距離の差が建設現場設計図に定める所定の範囲内であれば、その座標におけるウレタンの吹付厚さは合格であると判定する。一方で、ウレタン表面の各点群の座標の距離の差が所定の範囲外であれば、ウレタンの吹付厚さは不合格であると判定する。ここで、例えば、ウレタン表面の各点群の座標の距離の差がプラス方向の範囲外であれば、ウレタンの吹付厚さが厚すぎるので、当該座標のウレタンを切削することを、走査端末の出力画面(図示せず)などに表示してもよい。一方で、ウレタン表面の各点群の座標の距離の差がマイナス方向の範囲外であれば、ウレタンの吹付厚さが薄すぎるので、当該座標のウレタンを追加で吹き付けることを判定する。
【0040】
操作端末の出力画面(図示せず)などでは、仮想平面の水平方向および垂直方向上の各座標に対応する点群データの情報を紐づけて、出力画面に表示する。具体的な一例として、仮想平面の座標ごとに、ウレタン厚さの情報や当該ウレタンの厚さに対して処置(ウレタンの追加の吹付または切削)の情報を文字や色情報などで表示する。
【0041】
なお、本実施例では、仮想平面と点群を比較することによって、ウレタン厚さの検査について説明したが、別の実施例として、床に向けて凹凸調査、クラック調査にも転用することもできるが、詳細は後述する。
【実施例2】
【0042】
図5は、本発明の別の実施例によるシステムの概略を示す。本実施例においては床の排水勾配が排水ドレンに向けて傾斜している床面の勾配傾斜不足または逆勾配であることを検知する。
【0043】
<計測準備>
基準水平面にするための勾配基準板を床面に設置する。
【0044】
勾配基準板は、下部の自動水平機構により凹凸や傾斜のある床面でも水平で固定される。
【0045】
<計測>
3Dカメラで勾配計測対象の床面を撮像する。この際、3Dカメラを真下に向けて把持したまま対象の床面を歩いた範囲の床面点群データが点群データを処理する任意の手段により記録される。
【0046】
3Dカメラでの撮像中には、勾配基準板を含む画像1枚を基準画像として取得する。
【0047】
<床面傾斜基準モデルの生成>
図6は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、床面傾斜基準モデルの生成の情報処理の一例を示す。
【0048】
S610では、取得した基準画像内の勾配基準板の点群データを水平面の前後左右に拡張し、基準水平面の点群データを生成する。この際、勾配基準板の点群データの拡張の終点座標は計測対象面の端部の点群座標を基準板の点群データの深さ方向の座標に引き上げた座標とし、勾配基準板部分の点群には勾配基準板位置であることを示す属性情報を付与する。
【0049】
S620では、S610で生成した基準水平面を複製してに建設現場設計図の勾配の方向と基準角度(一般的には1/50,1/100などの所定の建築基準に基づく)を与え、排水溝方向に向かって基準角度分傾斜した基準傾斜面を点群データとして生成する。
【0050】
S630では、基準傾斜面と3Dカメラで撮像した点群データを重ね合わせる。重ね合わせの基準位置には、基準水平面の生成時に勾配基準板部分の点群に付与した属性情報を用いる。
【0051】
S640では、基準傾斜面に床面点群データの排水ドレン中心位置を指定し、建設現場設計図にもとづき排水ドレンの縦横及び深さの形状を点群データで生成し、排水ドレン中心位置を起点として扇状の傾斜を持つ排水ドレン基準モデルを生成し、基準傾斜面に重ね合わせる。ここで、排水ドレン基準モデルは、あらかじめ所定の建設現場設計図情報にもとづく勾配基準データとして任意の記憶手段内に記憶されていてよい。
【0052】
S650では、基準傾斜面の排水ドレン中心位置を起点に建設現場設計図の勾配角度、排水溝の幅、排水溝の長さを与えて、排水ドレンに向かう排水溝基準モデルを生成する。
【0053】
S660では、検査基準角度床面モデル、排水溝基準モデル、排水ドレン勾配モデルの順に重ね合わせ、検査対象床面の検査基準床面モデルを生成する。
【0054】
<実測結果の結合:複数回に分けて撮像した点群データを結合する>
図7は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、実測結果の結合の情報処理の一例を示す。
【0055】
S710では、3Dカメラを用いて複数回に分けて計測対象面を撮像する。この際、撮像範囲には前の撮像範囲の終端部分と同一の地点を含むように撮像する。ここで、3Dカメラを垂直方向または水平方向に可動させて複数回に分けて計測対象面を撮像してもよい。
【0056】
S720では、3Dカメラで撮像した画像を結合する。この際、連続する画像間では前の画像の終端部分と続く画像の冒頭部分に含まれる同一地点を結合点として画像を結合する。なお、連続する画像の結合については同一地点の結合の代わりに既知の特徴点を結合基準として処理するように構成されていてもよい。
【0057】
<モデルと実測結果の比較>
図8は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、モデルと実測結果の比較の情報処理一例を示す。
【0058】
S810では、基準傾斜面と、S720で結合した点群データを重ね合わせる。この際、勾配基準板と点群データそれぞれの点群内の、勾配基準板位置を示す属性をもつ点群を基準として重ね合わせる。
【0059】
この際、基準傾斜面の高さ方向の位置は床面に設置された勾配基準板の位置となるため、点群データより高い位置となる。
【0060】
S820では、水平状態の基準水平面は基準傾斜面の最高部より高い位置に置く。
【0061】
S830では、基準傾斜面とS720で結合した点群データの同一地点の距離を比較して記録し、全体距離マップを生成する。
【0062】
<排水溝への内側から外側に向けた方向の勾配評価>
図9は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、排水溝への垂直方向の評価の情報処理の一例を示す。
【0063】
S910では、内側(排水溝の反対側の辺)から外側(排水溝側の辺)に向けて、隣接する2つの点群の、水平面と基準水平面と点群データとを下記のように比較し、傾斜の合否を判定する。
【0064】
S920では、水平面と基準水平面の距離差が大きい方を下流、距離差が小さい方を上流とする。
【0065】
S930では、上記比較を内側から外側の方向に点群データの終端まで行い、隣接する点群との下記関係を点群に情報として記録する。
【0066】
なお、実装に際しては終端まで(1)がない場合は(2)は(3)に含めて問題ない。
【0067】
(1)基準水平面と点群データの差が上流の方が大きい場合、「逆勾配または平坦」とする。
【0068】
(2)基準水平面と点群データの差が下流の方が大きい場合、「逆勾配なし基準超の傾斜」とする
【0069】
(3)基準水平面と点群データの差が上流と下流で等しい場合、「基準どおり」とする。
【0070】
S940では、上記比較を、点群データの排水溝と並行する方向の終端まで行い、点群の内側から外側方向の勾配マップとして記録する。
【0071】
<排水溝と並行する方向の勾配評価>
図10は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、排水溝と並行する方向で行う勾配評価の情報処理の一例を示す。なお、前記の内側から外側に向けた勾配評価の結果を排水溝と並行する方向に接合することで補修箇所判定としては満たされるので、本実施例の情報処理は付加的な構成としてもよい。
【0072】
S1010では、S910と同様に、接する2つの点群の、水平面と基準水平面と点群データとを下記のように比較し、傾斜の合否を判定する。なお、点群の精度、1点当たりの面積を考慮して、ドレンの斜め方向の傾斜を見るには縦横の合算をしてもよい。
【0073】
S1020では、排水溝と並行する方向の両側の終端のいずれか1辺を上流、もう1辺を下流と定める。
【0074】
S1030では、S930と同様に、点群の情報を記録する。
【0075】
S1040では、S940と同様に、勾配マップを記録する。
【0076】
上記の図9の情報処理の結果や図10の情報処理の結果を点群にマークし、検査結果及び要補修箇所として記録、出力する。ここで、要補修箇所の判定方法の一例については、図11にて説明する。
【0077】
<3Dカメラによる外廊下傾斜精度確認>
図11は、本発明の別の実施例による情報処理の一例を示し、特に、3Dカメラによる外廊下傾斜精度確認の情報処理の一例を示す。
【0078】
S1110では、3Dカメラで床面の点群データを取得する。
【0079】
計測開始地点には、下記S1120で基準水平面を作り出すための勾配を維持する測定対象部を設置し、床面と一緒に3Dカメラで撮像する。ここで、本実施例で使用する測定対象部の一例を図12に示す。図12の測定対象部は、ジンバルなどの維持機構の上に天板として基準板が設置されている。基準板は平板で、内側から外側に向け、設計上の傾斜度(1/50または1/100)に傾いた状態を維持する。このような傾斜度を設けることにより、基準板が地面に対して水平を維持することができる。
【0080】
S1120では、上記S1110で撮像した基準機天面の点群データをもとに、計測基準となる仮想空間を仮想空間上に作り出す。本実施例の仮想空面の一例を図13に示している。図13では、基準板を仮想空間上で点群データの終端と同一面積まで広げることにより、建物の外側の高さが低く、内側の高さが高いことをデータ上で認識できるが示されている。
【0081】
ここで、図14に示すように、仮想空間と床面点群データを重ね合わせ、床面点群の排水ドレンの中心位置を仮想空間に写し取り、仮想空間に排水ドレン中心位置から外側に沿って伸びる排水溝を重ね合わせ、排水ドレン中心位置に合わせて排水ドレンを重ね合わせて排水ドレンから放射状に勾配を付け、あるべき勾配の仮想空間を完成させる。図14に示す仮想空間は、建物の内側の方の垂直方向の高さが高く、外側が低いことが表現されている。また、排水溝は、排水ドレンから遠いほど垂直方向の高さが高いことが表現されている。また、排水ドレン周りは排水ドレンの中心から遠ざかるほど(垂直方向の高さが)高いが徐々に勾配が緩くなり床面の勾配角度に近づくことが表現されている。
【0082】
S1130では、S1110の架空平面とS1120の点群データの同一点の距離を点ごとに取得する。
【0083】
S1140では、隣接する点のS1130で取得した距離を比較し、建物の内側<外側となっていれば排水に必要な勾配が確保されており合格と判定する。一方で、内側≧外側となっていれば逆勾配または点群間に勾配がなく平らであり排水に必要な勾配が確保されていないため不合格と判定する。ここで、このような判定をする理由は、排水ドレン周りは本来高い側≦本来低い側であるからである。ここで、本実施例で用する正しい傾斜方向のイメージを図15に示す。図15では、矢印の方向に沿って排水が流れていることを示している。排水ドレンから離れた排水溝周辺では、建物の内側から側溝へ向かって排水が流れている。排水溝に流れ込んだ排水は排水ドレンへ流れる。排水ドレン周辺では、排水溝よりも排水ドレンへ直接流れるような放射状の勾配が構成されている。
【0084】
S1150では、上記結果は点群マップを画像化したものに不合格と判定された範囲を色付けして出力する。当該色付けされた範囲が要補修箇所となる。本実施例の情報処理の出力および現実の測定箇所との関係を図16に示す。図16は、仮想空間と実空間とにおいて、同一位置の点群の距離を取得して、隣接する点群の座標と比較する。図16においては、星印の点群の距離が15mmであり、隣接する点群(四角と丸)の距離(10mm)と比較すると逆勾配であることがわかるのでNGと判定することができる。
【0085】
図17は、本実施例による出力画面の一例である。本実施例の出力画面では、縦方向の線と横方向の線に囲まれた方眼に、それぞれの点群データが存在する。点群データのそれぞれの地点において、測定対象物の位置情報、修正可否情報が関連付けられて出力される。出力の一例は、任意の記憶手段に記憶されたり、出力画面に出力されたりすることである。位置情報は、例えば、基準距離であり、さらに、平面座標に加えて基準平面から測定対象物の表面までの直交する方向の距離(高さ、深さなど)や、ある点の距離と隣接する点の距離との差から計算された傾斜の角度や向きに関する情報を含んでもよい。要補修箇所情報は、例えば、傾斜や距離などに基づいて判定された情報でもよい。さらに、点群データのそれぞれにおいて、関連付けられた共通の情報をラインで結んで表示したり、当該結ばれたラインが形成する領域に色付けしたりして、補習箇所を示してもよい。本実施例では方眼に基準距離との差異を関連付け、基準距離に満たない方眼には斜線、基準距離を超過する方眼には横線を引き、要補修個所であることを示している。
【0086】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【要約】
【課題】建物のある一面の勾配及び凹凸を計測するシステムを提供する。
【解決手段】建物のある一面の勾配及び凹凸を計測するシステムであって、調査機器と測定対象部とを備え、測定対象部は、勾配計測の基準となる水平維持機構を有する基準板を有し、調査機器は、点群データを取得する撮像手段と、勾配基準となる傾斜角度と特定の部位での傾斜の方向及び角度とを計測し記録する勾配角度記録手段と、撮像手段で取得した点群データを記録する点群データ記録手段と建物のある一面である基準水平面に対する勾配及び凹凸を判定する処理手段と、を備え、処理手段は、撮像手段で取得した点群データを用いて、隣接する点群が基準水平面に対する勾配を判定する勾配検査モードと、基準水平面からのそれぞれの点群の距離に基づいて施工物の厚さや凹凸を判定する施工物厚さ検査モードとの少なくとも一方を実行することを特徴とするシステム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17