(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】耐力壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240722BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
E04B2/56 643A
E04B2/56 605E
E04B2/56 611C
E04B2/56 611B
E04B2/56 651L
E04B2/56 652L
E04B2/56 652N
E04H9/02 321B
(21)【出願番号】P 2020061033
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】梶川 久光
(72)【発明者】
【氏名】三津橋 歩
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 春彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 由佳
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255624(JP,A)
【文献】登録実用新案第3132427(JP,U)
【文献】特開2006-097396(JP,A)
【文献】特開2011-153437(JP,A)
【文献】特開昭64-001876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04H 9/02
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材と、
両端部が前記隣り合う第一フレーム材に接合され、前記隣り合う第一フレーム材同士を連結
して水平に配置される複数の金属
製の棒材である連結材と、を備えており、
前記複数の連結材は、前記隣り合う第一フレーム材の長さ方向に並んで、かつ互いに間隔を空けて配置されており、
さらに、前記複数の連結材は、両端部が、前記隣り合う第一フレーム材の双方に差し込まれて接合されて前記隣り合う第一フレーム材によって支持され、かつ、両端部を除く部位が、前記隣り合う第一フレーム材間において剥き出しの状態となっており、
前記複数の連結材における前記両端部は、前記隣り合う第一フレーム材のうち互いに対向する側面のうち、各々の第一フレーム材の中心線上の位置に差し込まれ、さらに、前記複数の連結材は、前記隣り合う第一フレーム材のうち同一鉛直面上に配置された側面から間隔を空けて配置されており、
前記隣り合う第一フレーム材に対する前記複数の連結材の接合部には、前記隣り合う第一フレーム材が水平力を受けた場合に、当該水平力に伴って前記複数の連結材の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項2】
請求項1に記載の耐力壁構造において、
前記隣り合う第一フレーム材同士を連結するパネル材を更に備えており、
前記隣り合う第一フレーム材に対する前記複数の連結材の接合部に適用された前記モーメント抵抗接合は、前記
水平力を受けて前記パネル材に破壊が生じた後にも、当該
水平力に
伴って前記複数の連結材の両端部に生じる回転モーメントに抵抗することを特徴とする耐力壁構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の耐力壁構造において、
前記第一フレーム材のうち前記複数の連結材が配置される位置には、当該複数の連結材の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴が形成され、
前記接合用差込穴の内側面と、前記連結材の外側面との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の耐力壁構造において、
前記第一フレーム材のうち前記複数の連結材が配置される位置には、当該複数の連結材の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴が形成され、
前記接合用差込穴に差し込まれる前記連結材の端部断面における縦横の寸法は、前記接合用差込穴の内側面と、前記連結材の端部における外側面との間に空隙が形成されないように設定されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の耐力壁構造において、
前記第一フレーム材のうち前記複数の連結材が配置される位置には、当該複数の連結材の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴が形成され、
前記接合用差込穴の内側面には雌ネジが形成され、
前記連結材は棒状部材であり、前記連結材の端部には雄ネジが形成されていることを特徴とする耐力壁構造。
【請求項6】
請求項5に記載の耐力壁構造において、
前記連結材の両端部は、前記隣り合う第一フレーム材のうち互いに平行かつ対向しない外側面から側方に突出しており、当該突出する両端部にはナットが設けられていることを特徴とする耐力壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐力壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物においては、地震時や台風時の水平荷重に抵抗するため、必要壁量を満たすように耐力壁が設けられる。
このような耐力壁としては、隣り合う柱材間の開口部に筋交いを架け渡したり、隣り合う柱材間の開口部全面を覆うように構造用合板を張り付けたりすることで構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、耐力壁を、例えば中層・高層の木造建物や延べ面積の広い木造建物のような比較的規模の大きな木造建物の建築に使用することが求められている。
しかしながら、比較的規模の大きな木造建物に、例えば規模の小さい木造の戸建て住宅に使用されるような通常の耐力壁を適用すると、粘り強さを発揮するための性質である靭性が十分でない場合があり、耐震性を維持しにくい。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐力壁における靭性を向上させ、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、耐力壁1構造であって、例えば
図1~
図7に示すように、建物躯体における下部構造と上部構造との間に挟まれた状態で、前記建物躯体に組み込まれる耐力壁1構造であって、
互いに間隔を空けて隣り合う木製の鉛直材である第一フレーム材2と、
両端部が前記隣り合う第一フレーム材2に接合され、前記隣り合う第一フレーム材2同士を連結
して水平に配置される複数の金属
製の棒材である連結材3と、を備えており、
前記複数の連結材3は、前記隣り合う第一フレーム材2の長さ方向に並んで、かつ互いに間隔を空けて配置されており、
さらに、前記複数の連結材3は、両端部が、前記隣り合う第一フレーム材2の双方に差し込まれて接合されて前記隣り合う第一フレーム材2によって支持され、かつ、両端部を除く部位が、前記隣り合う第一フレーム材2間において剥き出しの状態となっており、
前記複数の連結材3における前記両端部は、前記隣り合う第一フレーム材2のうち互いに対向する側面のうち、各々の第一フレーム材2の中心線上の位置に差し込まれ、さらに、前記複数の連結材3は、前記隣り合う第一フレーム材2のうち同一鉛直面上に配置された側面から間隔を空けて配置されており、
前記隣り合う第一フレーム材2に対する前記複数の連結材3の接合部には、前記隣り合う第一フレーム材2が水平力を受けた場合に、当該水平力に伴って前記複数の連結材の両端部に生じる回転モーメントに抵抗するモーメント抵抗接合が適用されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、複数の連結材3は、木製の鉛直材である隣り合う第一フレーム材2の長さ方向に並んで、かつ互いに間隔を空けて配置されており、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結材3の接合部には、隣り合う第一フレーム材2が水平力を受けた場合に、当該水平力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されているので、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結材3からなる耐力壁1の骨格部分の靭性を向上させることができる。
そのため、隣り合う第一フレーム材2が水平力を受けた場合にも、複数の連結材3によって靭性の高い状態を確保・維持し、耐力壁1としての機能を損なわずに、水平力に抵抗できることとなる。これにより、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば
図1に示すように、請求項1に記載の耐力壁1構造において、
前記隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4を更に備えており、
前記隣り合う第一フレーム材2に対する前記複数の連結材3の接合部に適用された前記モーメント抵抗接合は、前記
水平力を受けて前記パネル材4に破壊が生じた後にも、当該
水平力に抵抗することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4を更に備えているので、パネル材4によって耐力壁1の耐力を向上させることができる。
さらに、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結材3の接合部に適用されたモーメント抵抗接合は、水平力を受けてパネル材4に破壊が生じた後にも、当該水平力に抵抗するので、水平力を受けてパネル材4に破壊が生じた後であっても、耐力壁1は、複数の連結材3によって靭性の高い状態を確保・維持することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば
図2,
図3に示すように、請求項1又は2に記載の耐力壁1構造において、
前記第一フレーム材2のうち前記複数の連結材3が配置される位置には、当該複数の連結材3の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2a,2bが形成され、
前記接合用差込穴2a,2bの内側面と、前記連結材3の外側面との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、第一フレーム材2のうち複数の連結材3が配置される位置に形成された接合用差込穴2a,2bの内側面と、連結材3の外側面との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されているので、連結材3を保持した状態で接着剤が硬化すると、応力を接着剤の付着力と連結材3を介して伝達し、接合耐力を発生させることになる。そのため、複数の連結材3を、隣り合う第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結材3からなる耐力壁1の骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば
図4,
図6,
図7に示すように、請求項1又は2に記載の耐力壁1(1A,1C)構造において、
前記第一フレーム材2のうち前記複数の連結材13,33が配置される位置には、当該複数の連結材13,33の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2a,32bが形成され、
前記接合用差込穴2a,32bに差し込まれる前記連結材13,33の端部断面における縦横の寸法は、前記接合用差込穴2a,32bの内側面と、前記連結材13,33の端部における外側面との間に空隙が形成されないように設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、接合用差込穴2a,32bに差し込まれる連結材13,33の端部断面における縦横の寸法は、接合用差込穴2a,32bの内側面と、連結材13,33の端部における外側面との間に空隙が形成されないように設定されているので、接合用差込穴2a,32bの内側面と連結材13,33の端部における外側面とがぴったりと接して合致する。そのため、接合用差込穴2a,32bの内側面と連結材13,33の端部における外側面との接触面積を広く確保すれば、接着剤を用いなくても、第一フレーム材2に対する連結材13,33の接合強度を向上できる。そのため、複数の連結材13,33を、隣り合う第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結材13,33からなる耐力壁1の骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図5に示すように、請求項1又は2に記載の耐力壁1(1B)構造において、
前記第一フレーム材2のうち前記複数の連結材23が配置される位置には、当該複数の連結材23の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2bが形成され、
前記接合用差込穴2bの内側面には雌ネジが形成され、
前記連結材23は棒状部材であり、前記連結材23の端部には雄ネジが形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、第一フレーム材2のうち複数の連結材23が配置される位置には、当該複数の連結材23の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2bが形成され、接合用差込穴2bの内側面には雌ネジが形成され、連結材23は棒状部材であり、連結材23の端部には雄ネジが形成されているので、連結材23の端部が、接合用差込穴2bにねじ込まれ、接合用差込穴2bの内側面と連結材23の外側面とがぴったりと接して合致する。そのため、接着剤を用いなくても、第一フレーム材2に対する連結材23の接合強度を向上できる。そのため、複数の連結材23を、隣り合う第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結材23からなる耐力壁1の骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば
図5に示すように、請求項5に記載の耐力壁1(B)構造において、
前記連結材23の両端部は、前記隣り合う第一フレーム材2のうち互いに平行かつ対向しない外側面2eから側方に突出しており、当該突出する両端部にはナット23aが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、連結材23の両端部は、隣り合う第一フレーム材2のうち互いに平行かつ対向しない外側面2eから側方に突出しており、当該突出する両端部にはナット23aが設けられているので、連結材23が接合用差込穴2bから引き抜かれることを防止でき、第一フレーム材2に対する連結材23の接合強度を更に向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐力壁における靭性を向上させ、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】第一フレーム材に対する連結材の接合部の一例を示す断面図である。
【
図3】第一フレーム材に対する連結材の接合部の一例を示す断面図である。
【
図4】単管パイプを用いた場合の耐力壁を示す断面図である。
【
図5】長ボルトを用いた場合の耐力壁を示す断面図である。
【
図6】木質の横架材を用いた場合の耐力壁を示す斜視図である。
【
図7】第一フレーム材に対する横架材の接合部を示す部分拡大図である。
【
図8】パネル材として建築用木質パネルを用いた耐力壁を示す斜視図である。
【
図9】建築用木質パネルの配置例を示す平断面図である。
【
図10】直交方向に隣接する耐力壁の連結構造を示す平断面図である。
【
図11】コーナ部において共有される第一フレーム材に対する連結材の配置を説明する斜視図である。
【
図12】コーナ部において共有される第一フレーム材に対する連結材の接合部の一例を示す断面図である。
【
図13】(a)は、同一方向に隣接する耐力壁の連結構造を示す正断面図であり、(b)は、平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。なお、以下の実施形態及び図示例における方向は、あくまでも説明の便宜上設定したものである。
【0021】
図1において符号1は、耐力壁を示す。この耐力壁1は、主として、例えば、中層・高層の木造建物や、延べ面積の広い木造建物のような、比較的規模の大きな木造建物の建築に使用されるものである。このような比較的規模の大きな木造建物以外にも、例えば、戸建て住宅のような比較的規模の小さな木造建物に使用してもよいし、建物のリフォーム時に採用してもよい。さらに、耐力壁1は、枠組壁工法やパネル工法による建物以外にも、木造軸組構法による建物に使用してもよいし、木造と非木造を組み合わせた混構造の建物に使用してもよい。
【0022】
また、このような耐力壁1を建物に組み込む場合、耐力壁1は、基礎や梁、土台、床等の下部構造材6(
図4,
図5参照)上に立設され、上には、梁や床、上階の壁(耐力壁を含む)等の上部構造材7(
図4,
図5参照)が載せられる。つまり、耐力壁1は、下部構造材6と上部構造材7との間に挟まれた状態に設けられる。
【0023】
さらに、耐力壁1は、棒鋼やボルト、長ボルト等の棒材によって下部構造材6及び上部構造材7に接合されている。すなわち、耐力壁1には、棒材の一端が差し込まれる差込穴2c(
図7参照)が形成され、下部構造材6と上部構造材7にも、棒材の他端が差し込まれる差込穴が形成されることになる。
棒材としては、異形棒鋼や全ねじボルト等のように、表面に凹凸のある長尺な棒材が好適に用いられる。
また、棒材による耐力壁1と下部構造材6及び上部構造材7との接合には、後述するグルードインロッド(GIR:Glued in Rod)と呼ばれる方法が採用される。
なお、本実施形態においては、棒材による耐力壁1と下部構造材6及び上部構造材7との接合には、グルードインロッドの方法を採用したが、例えば接合用の金物を用いるなど、その他の方法を採用してもよい。
【0024】
以上のような耐力壁1は、互いに間隔を空けて隣り合う第一フレーム材2と、隣り合う第一フレーム材2同士を連結する複数の連結材3と、隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4と、を備えている。また、耐力壁1は、隣り合う第一フレーム材2同士を連結する第二フレーム材5を更に備えている。
【0025】
第一フレーム材2は、水平方向(横方向・左右方向)よりも上下方向に長尺な構造用集成材であり、平断面視において正方形状に形成されている。なお、本実施形態においては、第一フレーム材2として構造用集成材が用いられているが、通常の角材でもよいし、例えばLVL(Laminated Veneer Lumber)による柱材でもよい。すなわち、第一フレーム材2は、木製の柱状部材である。また、断面形状も正方形状ではなく、矩形状でもよいし、円状(正円、長円)であってもよい。
【0026】
第一フレーム材2のうち、複数の連結材3が配置される位置(隣り合う第一フレーム材2における互いに対向する側面であり、以下、内側面2dと呼称する。)には、当該複数の連結材3の端部が差し込まれて接合される複数の接合用差込穴2a又は複数の接合用差込穴2bが、上下方向に間隔を空けて形成されている。
複数の接合用差込穴2aは、
図2に示すように、第一フレーム材2を左右方向に貫通しない穴(非貫通孔)であり、隣り合う第一フレーム材2における内側面2dに形成されている。
複数の接合用差込穴2bは、
図3に示すように、第一フレーム材2を左右方向に貫通する貫通孔であり、隣り合う第一フレーム材2における内側面2dから、当該内側面2dとは反対側の、隣り合う第一フレーム材2における互いに平行かつ対向しない側面(以下、外側面2e)にかけて貫通形成されている。
なお、本実施形態においては、
図2に示す接合用差込穴2aを採用するが、
図3に示す接合用差込穴2bを採用してもよく、特に限定されるものではない。
また、第一フレーム材2の上端部には、上記の差込穴2cが形成されている。図示はしないが、第一フレーム材2の下端部にも差込穴2cが形成されている。
【0027】
複数の連結材3は、水平方向(横方向・左右方向)に長尺な棒材であり、本実施形態においては、異形棒鋼や全ねじボルト等のように、表面に凹凸のある長尺な棒材が好適に用いられる。そのため、本実施形態においては、連結材3を、以下、連結用棒材3と呼称する。
そして、複数の連結用棒材3は、隣り合う第一フレーム材2の長さ方向(上下方向)に並んで、かつ、隣り合う第一フレーム材2の長さ方向(上下方向)に互いに間隔を空けて設けられている。複数の連結用棒材3同士の間隔は、本実施形態においては等間隔とされているが、異なる間隔で配置されてもよい。また、これら複数の連結用棒材3は、隣り合う第一フレーム材2の下端部から上端部にかけて、なるべく満遍なく設けられることが望ましい。また、耐力壁1に用いられる本数も、数本(例えば3~4本)程度ではなく、例えば10本以上など、より数多く用いられることが望ましい。
【0028】
また、複数の連結用棒材3は、その両端部が、隣り合う第一フレーム材2に対してグルードインロッドの方法によって接合されている。より詳細に説明すると、連結用棒材3と第一フレーム材2側の接合用差込穴2aとの空隙に接着剤を充填し、その接着剤の硬化により、応力を接着剤の付着力と連結用棒材3を介して伝達し、接合耐力を発生させる方法である。
すなわち、連結用棒材3と、第一フレーム材2側の接合用差込穴2aとの間には空隙があり、接着剤が充填されていない状態では、連結用棒材3は第一フレーム材2に対して接合されない。
【0029】
耐力壁1が強い外力(水平力)を受けた場合、隣り合う第一フレーム材2は、同一の方向に傾くように動こうとする。このような第一フレーム材2の動きに対し、複数の連結用棒材3が、第一フレーム材2の長さ方向(上下方向)に並んで設けられていると、隣り合う第一フレーム材2が同一の方向に傾こうとする動きを抑制できることとなる。つまり、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結用棒材3の接合部には、外力に抵抗するモーメント抵抗接合が適用されていることになり、下部構造材6と上部構造材7との間に挟まれた状態に設けられた耐力壁1は、靭性が高い状態となる。
ここで、靭性とは、耐力壁1に対して外力による変形が生じた後も壁としての機能が著しく低下しない粘り強さを発揮するための性質を指し、このような靭性は、隣り合う第一フレーム材2が複数の連結用棒材3によって連結され、かつ、複数の連結用棒材3が、隣り合う第一フレーム材2に対してモーメント抵抗接合されることにより確保される。
【0030】
第二フレーム材5は、隣り合う第一フレーム材2における上端部と下端部のそれぞれに設けられ、隣り合う第一フレーム材2同士を連結している。
第二フレーム材5は、上下方向よりも水平方向(横方向・左右方向)に長尺な構造用であり、縦断面視において正方形状に形成されている。この第二フレーム材5も、第一フレーム材2と同様に、構造用集成材以外の木材でもよい。また、断面形状も、第一フレーム材2と同様に、正方形状でなくてもよい。
なお、第二フレーム材5は、隣り合う第一フレーム材2における上端部と下端部だけでなく、隣り合う第一フレーム材2における上下方向の中間部分などに設けられてもよい。
【0031】
第二フレーム材5の両端部には、当該第二フレーム材5の両端部と隣り合う第一フレーム材2とを接合するための複数の接合用棒材5aが差し込まれる複数の接合用差込穴が形成されている。また、隣り合う第一フレーム材2のうち、第二フレーム材5が配置される位置には、当該第一フレーム材2と第二フレーム材5の端部とを接合する複数の接合用棒材5aが差し込まれる複数の接合用差込穴が形成されている。これら複数の接合用差込穴は、第一フレーム材2を左右方向に貫通する貫通孔である。第二フレーム材5に形成された複数の接合用差込穴の位置と、第一フレーム材2に形成された複数の接合用差込穴の位置は整合している。そのため、複数の接合用棒材5aを、左の第一フレーム材2における左側面と右の第一フレーム材2における右側面から、第二フレーム材5に向かって差し込むことができる(
図7参照)。
すなわち、隣り合う第一フレーム材2と第二フレーム材5は、複数の接合用棒材5aによってモーメント抵抗接合されていることになる。
【0032】
パネル材4は、合板などの矩形板材である。このようなパネル材4は、幅寸法(左右方向の寸法)が、隣り合う第一フレーム材2間の間隔寸法よりも長く設定され、隣り合う第一フレーム材2のうち同一鉛直面上に配置された正面及び背面の側面2f間に亘って設けられて接着されている。
なお、パネル材4は、一枚の大判なものでもよいし、複数に分割されたパネル材4を上下方向に並べて隣り合う第一フレーム材2間に設けるようにしてもよい。
また、パネル材4は、上下端部の第二フレーム材5に接し、接着によって接合されてもよい。
パネル材4は、第一フレーム材2や上下端部の第二フレーム材5に対して接着により接合されるが、これに限られるものではなく、釘などの固定具によって固定されて接合されてもよい。
また、複数に分割されたパネル材4を上下方向に並べて設ける場合は、接着で接合されたパネル材4と、固定具によって接合されたパネル材4とが混在してもよい。さらに、例えば開口部が形成される箇所などのように、場合によっては、パネル材4が部分的に設けられなくてもよい。
【0033】
以上のようなパネル材4は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有しているが、耐力壁1が強い外力を受けた場合には、破壊が生じる場合がある。破壊が生じる直前までは、複数の連結用棒材3と共に耐力壁1を補強する効果を発揮する。
【0034】
以上のように構成された耐力壁1は、例えば、中層・高層の木造建物や、延べ面積の広い木造建物のような、比較的規模の大きな木造建物に組み込まれる。当該木造建物が地震や台風等によって強い外力(水平力)を受けると、耐力壁1は剪断方向に変形しようとする。ここで、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結用棒材3との接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているので、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結用棒材3からなる耐力壁1の骨格部分の変形性能は、パネル材4自体の変形性能よりも高い。そのため、耐力壁1が一定値以上の外力を受けると、パネル材4に破壊が生じる場合がある。
従来公知の耐力壁の場合は、耐力壁に剛性を付与するパネル材に破壊が生じると、耐力壁としての機能を損なう。これに対して、本実施形態によれば、複数の連結用棒材3は、隣り合う第一フレーム材2の長さ方向に並んで、かつ互いに間隔を空けて配置されており、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結用棒材3の接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているため、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結用棒材3からなる耐力壁1の骨格部分の靭性を向上させることができる。
そのため、隣り合う第一フレーム材2が外力を受けた場合にも、複数の連結用棒材3によって靭性の高い状態を確保・維持し、耐力壁1としての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなる。これにより、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0035】
また、耐力壁1は、隣り合う第一フレーム材2同士を連結するパネル材4を更に備えているので、パネル材4によって耐力壁1の耐力を向上させることができる。
さらに、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結用棒材3の接合部に適用されたモーメント抵抗接合は、外力を受けてパネル材4に破壊が生じた後にも、当該外力に抵抗するので、外力を受けてパネル材4に破壊が生じた後であっても、耐力壁1は、複数の連結用棒材3によって靭性の高い状態を確保・維持することができる。
【0036】
また、第一フレーム材2のうち複数の連結用棒材3が配置される位置に形成された接合用差込穴2a,2bの内側面と、連結用棒材3の外側面との間に空隙が形成され、当該空隙には接着剤が充填されているので、連結用棒材3を保持した状態で接着剤が硬化すると、応力を接着剤の付着力と連結用棒材3を介して伝達し、接合耐力を発生させる。そのため、連結用棒材3を、第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結用棒材3からなる耐力壁1の骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0037】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。また、以下の各変形例において、上述の実施形態と共通する要素については、共通の符号を付し、説明を省略又は簡略する。
【0038】
〔変形例1〕
本変形例における耐力壁1Aには、連結材として、単管パイプ13が用いられている。単管パイプ13は、中空筒状に形成された鋼管であり、両端部は開放されている。
隣り合う第一フレーム材2の内側面2dには、複数の単管パイプ13の両端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2aが形成されている。
【0039】
接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との間には空隙が形成され、かつ当該空隙に接着剤が充填されてもよいし、空隙が形成されず、接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面とがぴったりと接して合致するようにしてもよい。
【0040】
接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との間には空隙が形成され、かつ当該空隙に接着剤が充填される場合は、単管パイプ13の中空部に接着剤が入り込んでもよい。すなわち、単管パイプ13の両端部において、接着剤が、単管パイプ13の外側面と内側面にも接するので、そのまま硬化すれば、接着剤によって単管パイプ13の筒壁を内外から挟み込むことができる。これにより、第一フレーム材2に対する単管パイプ13の接合強度を向上できる。
【0041】
接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との間に空隙が形成されず、接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面とがぴったりと接して合致する場合は、接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との接触面積を広く確保することが望ましい。
接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との接触面積を広く確保する場合は、接合用差込穴2aの穴深さを、接着剤を用いる場合よりも深くしてもよい。さらに、接合用差込穴2aの奥行き方向にある穴底に、単管パイプ13の端部開口部に差し込まれて単管パイプ13の内側面に接する突出部を形成してもよい。
このように接合用差込穴2aの内側面と単管パイプ13の外側面との接触面積を広く確保できれば、接着剤によって接着されていなくても、第一フレーム材2に対する単管パイプ13の接合強度を向上できる。
また、貫通孔ではない接合用差込穴2aに替えて、貫通孔である接合用差込穴2bを第一フレーム材2に形成し、それに合わせた長さの単管パイプ13を用いるようにしてもよい。
【0042】
本変形例によれば、隣り合う第一フレーム材2同士を連結する複数の連結材として、比較的安価な単管パイプ13を用いたとしても、隣り合う第一フレーム材2と複数の単管パイプ13からなる耐力壁1Aの骨格部分の靭性を向上させることができる。
そのため、隣り合う第一フレーム材2が外力を受けた場合にも、複数の単管パイプ13によって靭性の高い状態を確保・維持し、耐力壁1Aとしての機能を損なわずに、外力に抵抗できることとなる。これにより、コストや部品点数の上昇を抑えつつ、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0043】
〔変形例2〕
本変形例における耐力壁1Bには、連結材として、長ボルト23が用いられている。本変形例においては、長ボルト23の長さ方向両端部に雄ネジ(図示省略)が形成されているが、長ボルト23のうち、少なくとも一端部に雄ネジが形成されていればよい。なお、このように長ボルト23の一端部にのみ雄ネジを形成するパターンの場合、長ボルト23の他端部は、上記のグルードインロッドの方法を採用する。
隣り合う第一フレーム材2には、複数の長ボルト23の両端部が差し込まれる、貫通孔である複数の接合用差込穴2bが形成されている。これら複数の接合用差込穴2bの内側面には、長ボルト23における雄ネジが合致する雌ネジが形成されている。
【0044】
本変形例における長ボルト23は、両端部が、隣り合う第一フレーム材2のうち互いに平行かつ対向しない外側面2eから側方に突出する長さに設定されている。
長ボルト23における第一フレーム材2の外側面2eから突出する両端部にはナット23aがねじ込まれて設けられている。これにより、隣り合う第一フレーム材2を、左右方向の外側から中央側に向かって挟み込むことができる。
【0045】
本変形例によれば、第一フレーム材2のうち複数の長ボルト23が配置される位置には、当該複数の長ボルト23の端部が差し込まれる複数の接合用差込穴2bが形成され、接合用差込穴2bの内側面には雌ネジが形成され、長ボルト23は棒状部材であり、連結材23の端部には雄ネジが形成されているので、長ボルト23の端部が、接合用差込穴2bにねじ込まれ、接合用差込穴2bの内側面と長ボルト23の外側面とがぴったりと接して合致する。そのため、接着剤を用いなくても、第一フレーム材2に対する長ボルト23の接合強度を向上できる。そのため、複数の長ボルト23を、隣り合う第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の長ボルト23からなる耐力壁1Bの骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0046】
また、長ボルト23の両端部は、隣り合う第一フレーム材2のうち互いに平行かつ対向しない外側面2eから側方に突出しており、当該突出する両端部にはナット23aが設けられているので、長ボルト23が接合用差込穴2bから引き抜かれることを防止でき、第一フレーム材2に対する長ボルト23の接合強度を更に向上できる。
なお、長ボルト23の両端部は外側面2eから側方に突出し、ナット23aが外側面2eに設けられているが、内側面に接するナットを設けて内外側面から第一フレーム材2を挟み込むようにしてもよい。
また、長ボルト23の両端部を外側面2eから側方に突出させなくてもよい。その場合、ナット23aは第一フレーム材2に埋め込まれる。
【0047】
なお、接合用差込穴2bの内側面に形成された雌ネジと、長ボルト23の外側面に形成された雄ネジとの間に僅かに空隙を形成し、当該空隙に接着剤を充填してもよい。これにより、ネジによる固定と接着剤による固定とを併用できるので、第一フレーム材2に対する長ボルト23の接合強度を向上できる。又は、接合用差込穴2bの内側面に雌ネジを形成せずに、接合用差込穴2bの内側面と長ボルト23の外側面に形成された雄ネジとの間の空隙に接着剤を充填することと、ナット23aによる締め付けを併用して、第一フレーム材2に対する長ボルト23の接合強度を向上させてもよい。
【0048】
〔変形例3〕
本変形例における耐力壁1Cには、連結材として、横架材33が用いられている。横架材33は、上下方向よりも水平方向(横方向・左右方向)に長尺な構造用集成材であり、平断面視において矩形状に形成されている。なお、本実施形態においては、横架材33として構造用集成材が用いられているが、通常の角材でもよいし、例えばLVLによる横架材でもよい。すなわち、横架材33は、木製の梁状部材である。また、断面形状も矩形状ではなく、正方形状でもよい。
【0049】
隣り合う第一フレーム材2のうち、複数の横架材33が配置されて当該複数の横架材33の両端部が差し込まれる位置には、貫通孔である複数の接合用差込穴32bが形成されている。複数の接合用差込穴32bは、横架材33の断面形状に合わせて矩形状の貫通孔として形成されている。
接合用差込穴32bに差し込まれる横架材33の端部断面における縦横の寸法は、横架材33が接合用差込穴32bに差し込まれた場合に、接合用差込穴32bの内側面と、横架材33の外側面との間に空隙が形成されないように設定されている。これにより、接合用差込穴32bの内側面と横架材33の外側面は、ぴったりと接して合致する。
【0050】
接合用差込穴32bの内側面と横架材33の外側面との間に空隙が形成されず、接合用差込穴32bの内側面と横架材33の外側面とがぴったりと接して合致する場合は、接合用差込穴32bの内側面と横架材33の外側面との接触面積を広く確保することが望ましい。そのため、接合用差込穴32bは上記のように貫通孔とされており、横架材33は、隣り合う第一フレーム材2の外側面2e間の長さに設定されている。
なお、横架材33における長さ方向両端面は、隣り合う第一フレーム材2の外側面2eと面一となっている。
【0051】
本変形例によれば、貫通孔である接合用差込穴32bに差し込まれる木質の横架材33の端部断面における縦横の寸法は、接合用差込穴32bの内側面と、横架材33の端部における外側面との間に空隙が形成されないように設定されているので、接合用差込穴32bの内側面と横架材33の端部における外側面とがぴったりと接して合致する。そのため、接合用差込穴2aの内側面と横架材33の端部における外側面との接触面積を広く確保すれば、接着剤を用いなくても、第一フレーム材2に対する横架材33の接合強度を向上できる。そのため、複数の横架材33を、隣り合う第一フレーム材2に対して確実にモーメント抵抗接合することができ、隣り合う第一フレーム材2と複数の横架材33からなる耐力壁1Cの骨格部分の変形性能を格段に向上させることができる。
【0052】
〔変形例4〕
上記の実施形態におけるパネル材4は、合板などの矩形板材であるとしたが、本変形例における耐力壁1Dのパネル材44は、
図8に示すように、中空状に形成された建築用木質パネルが用いられている。
建築用木質パネルは、縦横の框材によって形成された枠体44aと、この枠体44aの少なくとも一側面(本変形例においては正面側及び背面側の双方)に設けられた面材44bと、を有する中空パネル体である。枠体44aの内部には、框材と平行する補強桟材44cを組み込まれており、さらに、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されてもよい。
このような中空状の建築用木質パネルであるパネル材44は、
図8,
図9に示すように、隣り合う第一フレーム材2における内側面2d間に架け渡されて設けられる。また、パネル材44は、複数の連結用棒材3の正面側と背面側のうち、いずれか一方若しくは両方に設けられる。このとき、複数の連結用棒材3は、
図9に示すように、隣り合う第一フレーム材2の軸心よりも正面側又は背面側にずれて配置されてもよい。さらに、隣り合う第一フレーム材2のうち同一鉛直面上に配置された正面及び背面の側面2fと、パネル材44の表面は面一の状態になっていることが好ましい。
【0053】
本変形例におけるパネル材44によれば、面材44bが枠体44aに接着されて一体化しているため、矩形板材からなるパネル材4とは異なり、パーツ全体(枠体44a、面材44b、補強桟材44c)で剛性と強度を保持するようになっている。
また、パネル材44自体は、木質であるため、ある程度の粘り強さも有しているが、耐力壁1Dが強い外力を受けた場合には、破壊が生じる場合がある。しかしながら、隣り合う第一フレーム材2に対する複数の連結用棒材3の接合部には、モーメント抵抗接合が適用されているため、隣り合う第一フレーム材2と複数の連結用棒材3からなる耐力壁1の骨格部分の靭性を向上させることができる。
【0054】
〔変形例5〕
本変形例における耐力壁1Eは、
図10に示すように、平面視においてコーナ部Cを介して直交配置されており、平面視においてロ字状に形成された四角筒状の柱状体50を構成している。
換言すれば、柱状体50は、四側面に耐力壁1Eを備えた状態となっている。より詳細に説明すると、当該柱状体50は、四隅に配置された4本の第一フレーム材2と、隣り合う第一フレーム材2間に設けられた連結用棒材3及びパネル材44と、を含んで構成されている。なお、パネル材44は、矩形板材からなるパネル材4を採用してもよい。
【0055】
耐力壁1Eを、平面視においてコーナ部Cを介して直交配置する場合は、コーナ部Cを介して隣接する耐力壁1E同士が、1本の第一フレーム材2を共有することになるが、その場合、一方の耐力壁1Eにおける連結用棒材3と、他方の耐力壁1Eにおける連結用棒材3との納まりに不具合が生じないようにする必要がある。
【0056】
図10,
図11においては、隣接する耐力壁1Eの連結用棒材3同士が干渉しないように、上下方向の位置が互い違いになるように並べられて配置されている。このような配置にすれば、連結用棒材3が第一フレーム材2に形成された接合用差込穴2a(2b)に差し込まれる差し込み深さ(連結用棒材3の長さ)に関係なく、隣接する耐力壁1Eの連結用棒材3同士を直交配置することが可能となる。
【0057】
図12は、隣接する耐力壁1Eの連結用棒材3同士が、上下方向において同一の位置(高さ位置)に設けられた場合の構造を示している。
すなわち、直交する連結用棒材3同士が同一の高さ位置に配置されるため、第一フレーム材2には、第一差込穴52aと、第二差込穴52bと、からなる直交型差込穴52aが形成されている。
図12における直交型差込穴52は、平断面視において十字状に形成されており、一方の連結用棒材3が第一差込穴52aに深く差し込まれている。また、他方の連結用棒材3が第二差込穴52bに浅く差し込まれ、かつ、先端が、第一差込穴52aに差し込まれた一方の連結用棒材3に接している。
このような状態で直交型差込穴52に接着剤を充填し、その接着剤を硬化させれば、応力を接着剤の付着力と双方の連結用棒材3を介して伝達し、接合耐力を発生させることが可能となる(グルードインロッドの方法)。
【0058】
なお、
図12に示す直交型差込穴52は、平断面視において十字状に形成されているが、これに限られるものではなく、平断面視L字状に形成されてもよいし、平断面視T字状に形成されてもよい。
平断面視L字状に形成される場合は、一方及び他方の連結用棒材3における長さ寸法を揃えてもよいし、接触し合う端部を斜め45度にカットして直角に配置できるようにしてもよい。
平断面視T字状に形成される場合は、深く差し込まれる方の連結用棒材3から差し込み、その後に、浅く差し込まれる方の連結用棒材3を差し込む、という手順を規定することができる。
また、
図10に示す柱状体50において、隣接する耐力壁1Eの連結用棒材3同士を同一の高さ位置に設ける場合は、
図12に示す構造を四隅に採用すれば、連結用棒材3の長さを全て揃えることができる。
【0059】
本変形例によれば、一方の耐力壁1Eにおける連結用棒材3と、他方の耐力壁1Eにおける連結用棒材3を、1本の第一フレーム材2を共有して当該第一フレーム材2に差し込むことができるので、隣接する耐力壁1Eにおける連結用棒材3同士が干渉し合うことがなく、耐力壁1Eを平面視においてコーナ部Cを介して直交配置する場合に、支障がない。
さらに、耐力壁1Eを平面視において直交配置すれば、少なくとも2方向に耐力を発揮することになるので、比較的規模の大きな木造建物でも十分な耐震性を維持することができる。
【0060】
〔変形例6〕
本変形例においては、
図13に示すように、1本の第一フレーム材2を共有して隣接する複数の耐力壁1Fが、平面視において同一方向に設けられている。本変形例の場合も、一方の耐力壁1Fにおける連結材23と、他方の耐力壁1Eにおける連結材23との納まりに不具合が生じないようにする必要がある。
【0061】
図13においては、隣接する耐力壁1Fの連結材23同士が干渉しないように、上下方向の位置が互い違いになるように並べられて配置されている。
このような配置にすれば、連結材23が第一フレーム材2に形成された接合用差込穴2a(2b)に差し込まれる差し込み深さ(連結材23の長さ)に関係なく、隣接する耐力壁1Fの連結材23同士を、平面視において同一方向に配置することが可能となる。
特に、本変形例においては、連結材23として長ボルト23を使用している。そのため、ナット23aで締め付ける必要がある分、長ボルト23の両端部が側方に突出するが、隣接する耐力壁1Fにおける長ボルト23同士を上下互い違いに配置すれば、当該長ボルト23同士が干渉し合うことがないので、納まりの面で支障がない。
【0062】
なお、本変形例においては、連結材23として長ボルト23を使用したが、これに限られるものではなく、上記の実施形態及び各変形例で挙げたような他の連結材を使用してもよい。
【0063】
〔変形例7〕
上記の実施形態及び各変形例で挙げられた連結材(異形棒鋼、全ねじボルト、単管パイプ、長ボルト、木質の横架材)の他にも、丸棒や角型鋼管(角パイプ)等を連結材として適宜採用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 耐力壁
2 第一フレーム材
2a 接合用差込穴
2b 接合用差込穴
2d 内側面
2e 外側面
3 連結用棒材
4 パネル材
13 単管パイプ
23 長ボルト
23a ナット
32b 接合用差込穴
33 横架材