(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】粉砕装置
(51)【国際特許分類】
B02C 15/08 20060101AFI20240722BHJP
B02C 17/16 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B02C15/08 A
B02C17/16 B
(21)【出願番号】P 2020074891
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504124783
【氏名又は名称】アシザワ・ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】石川 剛
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-125192(JP,A)
【文献】特開平03-065252(JP,A)
【文献】特開平02-265660(JP,A)
【文献】特開2001-190974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 17/00 - 17/24
B02C 15/00 - 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、
自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、
前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、
を備え、
前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であ
り、
前記回転体は、前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を受け入れ可能な入口開口を有し、
前記通路は、前記回転体の径方向の外側に進むに従って通路幅が小さくなる区間を有することを特徴とする、
粉砕装置。
【請求項2】
粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、
自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、
前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、
前記回転体から離れた前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を、再度、前記回転体の前記通路に移動させる移動機構を備え、
前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であることを特徴とする、
粉砕装置。
【請求項3】
前記粉砕容器は、
前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を受け入れ可能な受入開口と、
前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を外部に排出可能な排出開口と、
を有し、
前記回転体は、前記受入開口を通過した前記粉砕対象物および前記粉砕媒体の入口としての入口開口を有し、
前記移動機構は、
前記排出開口および前記受入開口を通じて前記粉砕容器に繋がり、前記粉砕容器と共に循環路を形成する循環路形成管と、
前記循環路形成管の内部において、前記排出開口から前記受入開口に向かう気流を発生させる気流生成部と、
を備え、
前記循環路形成管における前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を排出する側の開口は、前記回転体の前記通路内に位置するか、または、前記入口開口の手前に位置することを特徴とする、
請求項
2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、
自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、
前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、
前記回転体の径方向において前記対向面と対向するように前記対向面と前記回転体との間に配置される除去部と、
前記除去部を前記対向面の周方向に移動させる移動部と、
を備え、
前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であり、
前記除去部は、前記移動部により移動することにより、前記対向面に堆積する前記粉砕対象物に接触して、前記対向面に堆積する前記粉砕対象物を除去することを特徴とする、
粉砕装置。
【請求項5】
前記移動部は、前記除去部が前記回転体の回転軸の周りを旋回するよう前記除去部を移動させ、
前記移動部による前記除去部の旋回速度は、前記回転体の回転速度よりも小さいことを特徴とする、
請求項
4に記載の粉砕装置。
【請求項6】
粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、
自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、
前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、
前記回転体の回転方向を向くと共に、前記回転体の径方向に延在する面を有し、且つ前記回転体の回転軸の周りを旋回可能に設けられる案内羽根
と、
を備え、
前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であり、
前記案内羽根が前記回転軸の周りを旋回することにより、前記収容空間に気流が発生することを特徴とする、
粉砕装置。
【請求項7】
前記対向面は、セラミックスにより形成されることを特徴とする、
請求項1~
6のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項8】
前記回転体の前記中心軸の軸方向と平行な軸を中心に前記回転体を回転させる回転体回転部を備えることを特徴とする、
請求項1~
7のいずれかに記載の粉砕装置。
【請求項9】
前記通路内の前記粉砕対象物は、前記回転体回転部により前記回転体が回転すると、前記粉砕媒体と共に、遠心力により前記開口を通じて前記対向面に向かって移動して、前記対向面に衝突することを特徴とする、
請求項
8に記載の粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉砕対象物を粉砕する装置として、粉砕対象物が堆積する堆積面と、その堆積面に対向配置され凸状に湾曲する処理面と、を備え、上記堆積面と上記処理面とを上記堆積面に沿って相対移動させる移動手段を備えた粉体処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。堆積面は、粉砕対象物が収容される容器部材の軸周りの内周面に相当する。上記粉体処理装置によれば、上記堆積面と上記処理面とを上記堆積面に沿って相対移動させると、粉砕対象物は、上記処理面により上記堆積面側に押し付けられながら擦りつけられる。つまり、粉砕対象物には、上記堆積面および上記処理面により圧縮力とせん断力が加えられる。結果、粉砕対象物は、上記粉体処理装置により粉砕される。
【0003】
また、上記のほか、回転軸の周囲に配置した複数のミルポットを公転させながら自転させる、遠心力を利用した粉体処理装置として遊星ボールミルがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2004/112964号公報
【文献】特開2002-143706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、粉砕対象物が上記堆積面に堆積しないとそもそも粉砕対象物を粉砕することができない。粉砕対象物が重力により容器部材の深さ方向の内部底面側に集まると、粉砕対象物を効率良く粉砕することができない。また、特許文献2では、バッチ式であり、装置の大型化によるスケールアップが難しい。
【0006】
上記に鑑み、本発明は、効率良く処理能力を向上する粉砕装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の粉砕装置は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、を備え、前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の粉砕装置は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、を備え、前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であり、前記回転体は、前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を受け入れ可能な入口開口を有し、前記通路は、前記回転体の径方向の外側に進むに従って通路幅が小さくなる区間を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の粉砕装置は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、前記回転体から離れた前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を、再度、前記回転体の前記通路に移動させる移動機構と、を備え、前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の粉砕装置において、前記粉砕容器は、前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を受け入れ可能な受入開口と、前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を外部に排出可能な排出開口と、を有し、前記回転体は、前記受入開口を通過した前記粉砕対象物および前記粉砕媒体の入口としての入口開口を有し、前記移動機構は、前記排出開口および前記受入開口を通じて前記粉砕容器に繋がり、前記粉砕容器と共に循環路を形成する循環路形成管と、前記循環路形成管の内部において、前記排出開口から前記受入開口に向かう気流を発生させる気流生成部と、を備え、前記循環路形成管における前記粉砕対象物および前記粉砕媒体を排出する側の開口は、前記回転体の前記通路内に位置するか、または、前記入口開口の手前に位置することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の粉砕装置は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、前記回転体の径方向において前記対向面と対向するように前記対向面と前記回転体との間に配置される除去部と、前記除去部を前記対向面の周方向に移動させる移動部と、を備え、前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であり、前記除去部は、前記移動部により移動することにより、前記対向面に堆積する前記粉砕対象物に接触して、前記対向面に堆積する前記粉砕対象物を除去することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の粉砕装置において、前記移動部は、前記除去部が前記回転体の回転軸の周りを旋回するよう前記除去部を移動させ、前記移動部による前記除去部の旋回速度は、前記回転体の回転速度よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の粉砕装置は、粉砕対象物を粉砕する粉砕装置であって、自身の外周面に設けられる開口まで延在する通路を内部に有し、前記粉砕対象物と、前記粉砕対象物を粉砕可能な粉砕媒体を前記通路に収容可能な回転体と、前記回転体を収容する収容空間、および、前記回転体の前記開口に対向すると共に前記回転体の中心軸の周りに環状に延在する対向面を内部に有する粉砕容器と、前記回転体の径方向において前記対向面と対向するように前記対向面と前記回転体との間前記回転体の回転方向を向くと共に、前記回転体の径方向に延在する面を有し、且つ前記回転体の回転軸の周りを旋回可能に設けられる案内羽根と、を備え、前記粉砕媒体及び前記粉砕対象物は、前記回転体を回転させることにより前記開口を通じて前記通路から前記収容空間に移動可能であり、前記案内羽根が前記回転軸の周りを旋回することにより、前記収容空間に気流が発生することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の粉砕装置において、前記対向面は、セラミックスにより形成されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の粉砕装置において、前記回転体の前記中心軸の軸方向と平行な軸を中心に前記回転体を回転させる回転体回転部を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の粉砕装置において、前記通路内の前記粉砕対象物は、前記回転体回転部により前記回転体が回転すると、前記粉砕媒体と共に、遠心力により前記開口を通じて前記対向面に向かって移動して、前記対向面に衝突することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粉砕装置によれば、効率良く粉砕対象物を粉砕することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態における粉砕装置の概略図である。
【
図2】(A)は、本発明の実施形態における粉砕装置における粉砕容器に収容された状態の回転体の平面図である。(B)は、(A)におけるF-F矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
<全体構成>
図1を参照して、本発明の実施形態における粉砕装置1について説明する。粉砕装置1は、粉砕対象物100を粉砕するものである。粉砕装置1は、
図1に示すように、回転体2と、回転体回転部3と、粉砕容器4と、粉砕媒体5と、循環機構6と、除去機構7と、案内羽根8と、を備える。
【0021】
<回転体>
回転体2は、
図1に示す回転体2の軸方向A(以下、単に軸方向Aと呼ぶ。)に切った回転体2の断面図に示すように、回転体2の中心から回転体2の径方向R(以下、単に径方向Rと呼ぶ。)の外側に進むに従って通路幅が小さくなる(先細りとなる)区間を有する錐台状のテーパー通路20を内部に有する。そのテーパー通路20の断面形状は、円形、又は、多角形、又は、その他の形状であってもよい。また、テーパー通路20は、中心から径方向Rに沿って左右両側に延びる。そして、軸方向Aにおける回転体2の上端20A(粉砕容器4の蓋部41に近位な端部)には、テーパー通路20を外部に開放すると共に、軸方向Aにおいて粉砕容器4の受入開口47に対向する入口開口21が設けられる。また、径方向Rにおける回転体2の外縁部分(外縁領域)を構成する外周面23には、テーパー通路20を外部に開放すると共に、径方向Rにおいて粉砕容器4の内壁面42に対向する出口開口22が設けられる。以上のような、テーパー通路20には、粉砕対象物100及び、粉砕装置1で粉砕される粉砕媒体5が収容される。テーパー通路20に収容される粉砕対象物100および粉砕媒体5は、入口開口21から入ってきて出口開口22から排出される。なお、回転体2は、入口開口21及び出口開口22以外の場所では開口していない。また、回転体2は、
図1に示すように、回転体回転部3における回転体駆動軸30に取り付けられ、回転体駆動軸30の回転に伴って回転する。
【0022】
また、回転体2は、
図2(A)の平面図に示すように、中央に位置する円盤部200と、円盤部200の外縁201から放射状に径方向Rの外側に突出する4つの突出部210と、を有する。各突出部210は、錐台状に形成され、円盤部200の周方向に略90°毎に等間隔に設けられる。また、
図2(B)の断面図に示すように、4つの突出部210は、粉砕容器4との関係では、円盤部200の外縁201を起点として粉砕容器4の内壁面42に向かって突出する。結果、
図2(A)の平面図に示すように、回転体2は、全体として略手裏剣状(十字形状)に形成される。そして、上記説明した入口開口21は、円盤部200の上端側の中央に設けられる。上記説明した出口開口22は、突出部210の先端に設けられる。また、テーパー通路20は、円盤部200及び突出部210の内部に設けられる。従って、テーパー通路20も、略90°毎に等間隔に設けられる。
【0023】
なお、突出部210及びテーパー通路20は、複数個が回転体2又は円盤部200の周方向に等間隔に設けられ、少なくとも2つあればよい。
【0024】
なお、回転体2は、全体が円盤状に構成されてもよい。この場合でも、回転体2の内部には、上記と同様の構造を有するテーパー通路20、入口開口21、及び出口開口22が設けられる。
【0025】
<回転部>
回転体回転部3は、
図1に示すように、回転体2を回転させるものである。なお、本発明において「回転」とは、正逆方向に回転可能であってもよいし、正逆方向の一方側に回転可能であってもよい。回転体回転部3は、回転体駆動軸30と、回転体側軸駆動部31と、を有する。本実施形態において回転体駆動軸30は、回転体2の中心軸24と同軸となる。そして、回転体駆動軸30は、回転体2に繋がる。回転体側軸駆動部31は、中心軸24を中心に回転体駆動軸30を回転させるものである。回転体側軸駆動部31で回転体駆動軸30を回転させると、中心軸24を回転軸として回転体2は回転する。回転体側軸駆動部31として、例えば、モーターが挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他のものであってもよい。回転体駆動軸30が回転体2の中心軸24と同軸でない場合、回転体2の回転軸は、中心軸24以外の中心軸24と平行な別の軸となるが、そのようなものも本発明に含まれる。
【0026】
<粉砕容器>
粉砕容器4は、回転体2を収容するものである。粉砕容器4は、
図1に示すように、容器本体部40と、蓋部41と、を有する。本実施形態において容器本体部40は、有底円筒状をしているが、これに限定されるものではなく、有底筒状であれば、その他の形状であってもよい。
【0027】
そして、容器本体部40は、
図1に示すように、回転体2を収容可能な大きさの収容空間49を有する。また、容器本体部40は、容器本体部40の深さ方向Dの上端に上方側容器開口44を有し、容器本体部40の深さ方向Dの下端に下方側容器開口45を有する。収容空間49は、上方側容器開口44を通じて外部に開放される。下方側容器開口45は、回転体駆動軸30を通すためのものである。回転体駆動軸30は、下方側容器開口45を通過して収容空間49の中央付近まで延在し、回転体2に繋がる。
【0028】
回転体2は、
図2に示すように、自身の中心軸24と容器本体部40の深さ方向Dの中心軸40Cとが同軸となるように、粉砕容器4の収容空間49に収容される。また、回転体2は、外周周りを容器本体部40の内壁面42により取り囲まれる。そして、内壁面42は、回転体2の径方向Rにおいて回転体2の出口開口22と対向する対向領域を有し、その対向領域で構成される面を対向面43と呼ぶ。そして、回転体2と共に出口開口22は、回転体2の中心軸24の周りを回転するため、対向領域は環状の領域となり、対向面43も環状面となる。
【0029】
後述するように対向面43には、出口開口22から飛び出す粉砕対象物100が衝突する。この衝撃で、粉砕対象物100は粉砕される。この意味で、対向面43は、出口開口22から飛び出す粉砕対象物100にとっては、衝突面として機能する。
【0030】
また、容器本体部40は、
図1に示すように、対向面43よりも容器本体部40の深さ方向Dの下方側(内部側底面48側)に、収容空間49を外部に開放する排出開口46を有する。排出開口46は、粉砕対象物100および粉砕媒体5を粉砕容器4の外に排出させるために設けられる。
【0031】
蓋部41は、
図1に示すように、容器本体部40の上方側容器開口44を塞ぐ。本実施形態において蓋部41は、円盤状となっている。そして、蓋部41には、外部と収容空間49を連通させる受入開口47が蓋部41の中央に設けられる。
【0032】
粉砕容器4は、例えば、全体または一部がセラミックスで形成されることが好ましい。一部がセラミックスで形成される場合、特に、粉砕容器4のうち、対向面43を構成する部分がセラミックスで形成されることが好ましい。
【0033】
<粉砕媒体>
粉砕媒体5は、粉砕対象物100を粉砕可能な材料で構成される。粉砕媒体5には、例えば、ジルコニアビーズ、超硬ビーズ、スチールビーズの少なくとも1つが含まれることが想定されるが、これに限定されるものではなく、その他の種類のビーズが含まれてもよい。また、粉砕媒体5は、後述する循環路を通過可能な大きさを有する。これにより、粉砕媒体5は、後述する循環路を循環することができる。
【0034】
<循環機構>
循環機構6は、回転体2から飛び出した粉砕対象物100および粉砕媒体5を、再度、回転体2に戻すことを繰り返し行う。なお、循環機構6のみならず、回転体2から飛び出した粉砕対象物100および粉砕媒体5を、繰り返しではなく、外部からの操作を受けて回転体2のテーパー通路20に再度戻す戻し機構をも含む機構を移動機構と定義した場合、本発明の循環機構6は、他の移動機構により置き換えられてもよい。本実施形態における循環機構6は、例えば、循環路形成管60と、気流生成部61とを有する。
【0035】
循環路形成管60は、
図1に示すように、排出開口46および受入開口47で粉砕容器4に繋がり、回転体2のテーパー通路20及び粉砕容器4と共に循環路を形成するものである。本実施形態における循環路形成管60は、例えば、排出開口46を起点として90度方向に3回折り返して、受入開口47および入口開口21を通過して、回転体2の内部側底面28よりも手前まで延在する。結果、循環路形成管60の一端側の端部開口63は、テーパー通路20内に位置する。なお、循環路形成管60は、入口開口21を通過せず、入口開口21の手前(受入開口47と入口開口21の間)まで延在する態様であってもよい。
【0036】
気流生成部61は、循環路形成管60の内部において、排出開口46から受入開口47に向かう気流を生成するものである。気流生成部61は、例えば、
図1に示すように、コアンダ効果を利用して気体の流量を増幅するノズル(以下、コアンダノズルと呼ぶ。)610と、コアンダノズル610に増幅用の気体を供給する気体供給部611と、を有する。
【0037】
気体供給部611は、例えば、コンプレッサにより構成され、コアンダノズル610に圧縮された空気を供給する。気体供給部611が圧縮された空気をコアンダノズル610に供給すると、コアンダノズル610で気体の単位時間あたりの流量が増幅される。コアンダノズル610では、例えば、気体供給部611から供給された流量が略7倍程度増幅される。そして、循環路形成管60には、単位時間あたりの流量が増幅された気体が排出開口46から受入開口47に向かって流れる。結果、循環路には、時計回りに流れる気流が生成される。これにより、回転体2から飛び出した粉砕対象物100および粉砕媒体5は、循環路形成管60を通って端部開口63から排出され、再度、回転体2のテーパー通路20に供給される。
【0038】
なお、コアンダノズル610の機能を安定させるため、エアフィルタ62を設け、そこから気体を逃がす。例えば、コアンダノズル610が取り込んだ2次エア(増幅した空気)をエアフィルタ62から逃がさない場合、循環経路内圧が高まるため、負圧吸引によるコアンダ効果が得られない。
【0039】
本実施形態における循環機構6によれば、粉砕対象物100を繰り返し、循環路に沿って循環させることができるため、粉砕対象物100の対向面43への衝突を繰り返し行うことができる。
【0040】
<除去機構>
除去機構7は、対向面43に堆積する粉砕対象物100を除去するものである。除去機構7は、
図1に示すように、除去部70と、回転体駆動軸30と同軸の除去側駆動軸71と、除去側軸駆動部72と、を有する。
【0041】
除去部70は、対向面43と対向するように、対向面43と回転体2との間に配置されるものである。本実施形態において除去部70は、例えば、
図1に示すように、2つのL字型板状体により構成される。そして、そのL字型板状体は、L字の一方側の辺に対応する部分(径方向延在部73A)が除去側駆動軸71を起点として粉砕容器4の内壁面42の近傍まで径方向Rに沿って延びると共に、L字の他方側の辺に対応する部分(深さ方向延在部73B)が深さ方向Dに略平行に対向面43に対向する高さまで延びる姿勢で、除去側駆動軸71により保持される。2つのL字型板状体におけるL字の一方側の辺に対応する部分(径方向延在部73A)は、
図2(A)に示すように、除去側駆動軸71を起点として反対方向に延びる。
【0042】
除去側軸駆動部72は、
図2(A)に示すように、除去側駆動軸71を回転させることにより2つのL字型板状体を対向面43の周方向に旋回させる。
【0043】
なお、除去側軸駆動部72が除去側駆動軸71を回転させる回転速度は、回転体駆動軸30の回転速度との間に速度差が生じるような速度となることが好ましいが、特に、回転体駆動軸30の回転速度よりも遅くなるよう構成されることが好ましい。つまり、除去部70の旋回速度は、回転体2の回転速度よりも小さいことが好ましい。結果、2つのL字型板状体は、粉砕対象物100の対向面43への衝突をなるべく邪魔しないようにすることができる。
【0044】
なお、L字型板状体におけるL字の他方の辺に対応する部分(深さ方向延在部73B)を除去部70と捉え、L字型板状体におけるL字の他方の辺に対応する部分(深さ方向延在部73B)、除去側駆動軸71及び除去側軸駆動部72を、除去部70(深さ方向延在部73B)を粉砕容器4の内壁面42の周方向に移動させる移動部と捉えてもよい。
【0045】
<案内羽根>
案内羽根8は、回転体駆動軸30の周りを旋回可能に設けられる。案内羽根8は、例えば、板状体によりに構成され、
図1に示すように、回転体2の回転方向を向くと共に、回転体2の径方向Rの外側に延在する平面部分を有する。そして、案内羽根8は、回転体駆動軸30または回転体2に繋がる。
【0046】
案内羽根8が回転体駆動軸30の周りを旋回すると、上記平面部分が空気をかき回して、収容空間49に気流を生成する。これにより、この気流は、収容空間49内の粉砕対象物100を移動させ、排出開口46に誘導する。
【0047】
<粉砕装置の動作>
図1を参照して、粉砕装置1の動作について説明する。まず、例えば、粉砕容器4の受入開口47、又は、蓋部41を外した状態の容器本体部40の上方側容器開口44を通じて、回転体2のテーパー通路20に粉砕対象物100および粉砕媒体5を投入する。そして、回転体2を回転体回転部3により回転させると、粉砕対象物100および粉砕媒体5は、遠心力によりテーパー通路20を通って、回転体2の径方向Rの外側に移動して、出口開口22から外側に飛び出す。本実施形態においてテーパー通路20は、回転体2の径方向Rの外側に進むに従って先細りとなるため、回転体2が回転すると、遠心ポンプのように作用して粉砕対象物100および粉砕媒体5をテーパー通路20に沿って径方向Rの外側に高速に移動させることができる。
【0048】
粉砕対象物100がテーパー通路20を移動する過程で、粉砕対象物100は、粉砕媒体5及びテーパー通路20から摩擦力、およびせん断力などを受けて、粉砕される。そして、出口開口22から外側に飛び出した粉砕対象物100および粉砕媒体5は、対向面43に衝突する。粉砕対象物100は、衝突による衝撃を受けてさらに粉砕される。したがって、本実施形態において粉砕対象物100は、対向面43への衝突による衝撃力だけでなく、共に移動する粉砕媒体5から摩擦力、およびせん断力を受けて粉砕される。このため、本実施形態において粉砕装置1は、従来よりも短時間で効率良く、粉砕対象物100を粉砕することができる。
【0049】
また、粉砕対象物100は、
図1に示すように、対向面43に付着して堆積する。除去部70(L字型板状体)は旋回すると、その堆積する堆積粉砕対象物100Aに接触し、堆積粉砕対象物100Aを崩して容器本体部40の内部側底面48に落とす。
【0050】
一方で、気流生成部61は、循環路を循環する気流を生成する。容器本体部40の内部側底面48に落下した粉砕対象物100、および粉砕媒体5は、
図1に示すように、この気流により、排出開口46を通じて循環路形成管60に移動する。そして、その粉砕対象物100、および粉砕媒体5は、循環路形成管60、受入開口47および入口開口21を通過して、再度、回転体2のテーパー通路20に排出される。テーパー通路20に排出された粉砕対象物100は、粉砕媒体5と共に、再度、遠心力により径方向Rの外側に移動して、対向面43に衝突し、再度、衝突による衝撃を受けてさらに粉砕される。以上の動作が繰り返し行われることにより、粉砕対象物100は、どんどん細かく粉砕される。そして、最終的に、(図示しない)切替弁を操作して、循環路(例えば、循環路形成管60)の途中で分岐する(図示しない)回収管に、粉砕対象物100の流路を切り替える。これにより、細かく粉砕された粉砕対象物100は、(図示しない)回収管に流れていき、(図示しない)回収管の排出開口を通じて回収される。
【0051】
本発明の粉砕装置1は以上のように動作して、粉砕対象物100に衝撃力、圧縮力、せん断力等を与えることができるため、粉砕対象物100にメカノケミカル現象を利用した処理を行う際に、本発明の粉砕装置1を用いることは有用である。ただし、本発明の粉砕装置1は、メカノケミカル現象を利用した処理とは別の処理に用いることも勿論、有用である。
【0052】
尚、本発明の粉砕装置1は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 粉砕装置
2 回転体
3 回転体回転部
4 粉砕容器
5 粉砕媒体
6 循環機構
7 除去機構
8 案内羽根
20 テーパー通路
21 入口開口
22 出口開口
24 中心軸
28 内部側底面
30 回転体駆動軸部
31 回転体側軸駆動部
40 容器本体部
40B 内部側底面
40C 中心軸
41 蓋部
42 内壁面
43 対向面
46 排出開口
47 受入開口
49 収容空間
60 循環路形成管
61 気流生成部
62 エアフィルタ
63 端部開口
70 除去部
71 除去側駆動軸
72 除去側軸駆動部
73A 径方向延在部
73B 深さ方向延在部
100 粉砕対象物
100A 堆積粉砕対象物
200 円盤部
201 外縁
210 突出部
610 コアンダノズル
611 気体供給部
A 軸方向
D 深さ方向