(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】廃水処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240722BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20240722BHJP
B01F 21/00 20220101ALI20240722BHJP
【FI】
C02F3/12 F
C02F1/78
B01F21/00
(21)【出願番号】P 2020092064
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】520186347
【氏名又は名称】株式会社AQUA System Labo
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】大上 明美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紀仁
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-75872(JP,A)
【文献】特開2019-048254(JP,A)
【文献】特開平6-254583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12 - 3/26
C02F 1/70 - 1/78
B01F 21/00 -25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内の廃水に曝気を行うことにより前記廃水を活性汚泥法によって浄化する曝気槽と、その曝気槽に供給するオゾンを発生させるオゾン発生装置と、を備え
、前記曝気槽が、前記廃水が供給される第1曝気槽と、その第1曝気槽で処理された廃水が供給される第2曝気槽と、を有して構成される廃水処理システムにおいて、
前記オゾン発生装置から供給されたオゾンを液体に溶解させる第1気体溶解装置
と、前記第2曝気槽から取水した廃水に酸素を含む気体を溶解させる第2気体溶解装置と、を備え、
前記第1気体溶解装置は、前記オゾンが大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、前記液体を供給することでオゾン溶解水を生成し、そのオゾン溶解水を前記
第1曝気槽に供給
し、
前記第2気体溶解装置は、前記酸素を含む気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、前記廃水を供給することで酸素溶解水を生成し、その酸素溶解水を前記第1曝気槽に返送し、
前記第2曝気槽における曝気の送気倍率よりも、前記第1曝気槽における曝気の送気倍率が小さく設定されることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項2】
酸素を発生させる酸素発生装置を備え、
前記第2気体溶解装置は、前記酸素発生装置から供給された酸素を前記廃水に溶解させて酸素溶解水を生成することを特徴とする請求項
1記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記第1気体溶解装置は、前記
第1曝気槽から取水した廃水に前記オゾンを溶解させてオゾン溶解水を生成することを特徴とする請求項1
又は2に記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記
第1曝気槽と前記第1気体溶解装置との間に設けられるオゾン溶解水貯留槽を備え、
前記
第1曝気槽と前記オゾン溶解水貯留槽との間、及び前記オゾン溶解水貯留槽と前記第1気体溶解装置との間のそれぞれにおいて前記廃水および前記オゾン溶解水を循環させることにより、濃縮させた前記オゾン溶解水を前記オゾン溶解水貯留槽に貯留することを特徴とする請求項
3記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記
第2曝気槽で処理された廃水が供給され、前記廃水中の汚泥を沈殿させる沈殿槽と、その沈殿槽から供給される汚泥を脱水して乾燥汚泥を生成する脱水装置と、その脱水装置から供給される乾燥汚泥を焼却する焼却炉と、を備え、
前記汚泥の脱水時に前記脱水装置で生じた水は、前記
第1曝気槽、又は前記
第1曝気槽よりも上流側に返送されることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記
第1曝気槽よりも上流側に設けられる加圧浮上槽を備え、
前記加圧浮上槽は、加圧浮上法によって汚泥を除去した廃水を前記
第1曝気槽に供給し、
前記脱水装置は、前記沈殿槽および前記加圧浮上槽のそれぞれから供給される汚泥を脱水し、
前記汚泥の脱水時に前記脱水装置で生じた水は、前記加圧浮上槽、又は前記加圧浮上槽よりも上流側に返送されることを特徴とする請求項
5記載の廃水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理システムに関し、特に、廃水の浄化効率を向上できる廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、活性汚泥法によって廃水の浄化が行われる生物処理槽3に、オゾンを供給する技術が記載されている。この技術のように、廃水にオゾンを供給することにより、廃水中の有機物等の汚染物質をオゾンによって分解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-071238号公報(例えば、段落0029~0034、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、オゾンを廃水中で曝気させる構成であるため、廃水に対するオゾンの溶解度を十分に高められず、廃水の浄化効率が悪いという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、廃水の浄化効率を向上できる廃水処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の廃水処理システムは、槽内の廃水に曝気を行うことにより前記廃水を活性汚泥法によって浄化する曝気槽と、その曝気槽に供給するオゾンを発生させるオゾン発生装置と、を備え、前記曝気槽が、前記廃水が供給される第1曝気槽と、その第1曝気槽で処理された廃水が供給される第2曝気槽と、を有して構成されるものであり、前記オゾン発生装置から供給されたオゾンを液体に溶解させる第1気体溶解装置と、前記第2曝気槽から取水した廃水に酸素を含む気体を溶解させる第2気体溶解装置と、を備え、前記第1気体溶解装置は、前記オゾンが大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、前記液体を供給することでオゾン溶解水を生成し、そのオゾン溶解水を前記第1曝気槽に供給し、前記第2気体溶解装置は、前記酸素を含む気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、前記廃水を供給することで酸素溶解水を生成し、その酸素溶解水を前記第1曝気槽に返送し、前記第2曝気槽における曝気の送気倍率よりも、前記第1曝気槽における曝気の送気倍率が小さく設定される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の廃水処理システムによれば、第1気体溶解装置では、オゾンが大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、液体を供給することでオゾン溶解水を生成する。よって、オゾンを液体中で曝気する場合に比べ、オゾンの溶解度が高いオゾン溶解水を生成できる。このオゾン溶解水を第1曝気槽に供給することにより、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0008】
また、請求項1記載の廃水処理システムによれば、オゾン溶解水による廃水の浄化が第1曝気槽で行われ、その第1曝気槽で浄化された廃水が第2曝気槽で更に曝気されるので、廃水を効果的に浄化できる。このように、第1曝気槽にオゾン溶解水が供給される場合、例えば、第1曝気槽で通常の曝気を行うと、その曝気による気泡によって廃水(オゾン溶解水)からオゾンが気化し、廃水の浄化効率が低下することがある。これに対して請求項2によれば、第2曝気槽における曝気の送気倍率よりも、第1曝気槽における曝気の送気倍率が小さく設定されるので、第1曝気槽内の廃水(オゾン溶解水)からオゾンが気化することを抑制できる。よって、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0009】
また、請求項1記載の廃水処理システムによれば、次の効果を奏する。第2曝気槽から取水された廃水には、第2気体溶解装置によって酸素を含む気体が溶解される。第2気体溶解装置は、酸素を含む気体が大気圧以上に加圧されて充填される容器内に、廃水を供給することで酸素溶解水を生成するので、酸素を含む気体を廃水中で曝気する場合に比べ、酸素の溶解度が高い酸素溶解水を生成できる。この酸素溶解水を第1曝気槽に返送することにより、第1曝気槽内の活性汚泥中の微生物が活性化され易くなるので、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0010】
更に、第2曝気槽内の廃水が第2気体溶解装置を介して第1曝気槽に返送されるので、その返送される水量の分、廃水の処理量が増加する。即ち、曝気槽を別途設けることなく、廃水の処理量を増加できるという効果がある。
【0011】
請求項2記載の廃水処理システムによれば、請求項1記載の廃水処理システムの奏する効果に加え、酸素発生装置で生成した酸素を廃水に溶解させて酸素溶解水を生成することにより、例えば、空気を廃水に溶解させる場合に比べ、酸素溶解水の酸素濃度を高めることができる。この酸素濃度の高い酸素溶解水を第1曝気槽に返送することにより、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0012】
また、酸素は、空気(窒素)に比べて水への溶解度が高いため、第1曝気槽に返送された酸素溶解水から酸素が気化することを抑制できる。これにより、酸素の気化による気泡が第1曝気槽内に生じることを抑制できるので、第1曝気槽内の廃水(オゾン溶解水)からオゾンが気化することを抑制できる。よって、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の廃水処理システムによれば、請求項1又は2に記載の廃水処理システムの奏する効果に加え、第1気体溶解装置は、第1曝気槽から取水した廃水にオゾンを溶解させるので、廃水中の汚染物質がオゾンによって分解され易くなる。よって、廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の廃水処理システムによれば、請求項3記載の廃水処理システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1曝気槽と第1気体溶解装置との間にはオゾン溶解水貯留槽が設けられ、第1曝気槽とオゾン溶解水貯留槽との間、及びオゾン溶解水貯留槽と第1気体溶解装置との間のそれぞれにおいて、廃水およびオゾン溶解水が循環される。よって、例えば、第1曝気槽とオゾン溶解水貯留槽との間の循環量よりも、オゾン溶解水貯留槽と第1気体溶解装置との間の循環量を多くすることにより、オゾン溶解水貯留槽に貯留されるオゾン溶解水を濃縮する(オゾン濃度を高める)ことができる。この濃縮されたオゾン溶解水を第1曝気槽に供給することにより、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0015】
請求項5記載の廃水処理システムによれば、請求項1から4のいずれかに記載の廃水処理システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2曝気槽で処理された廃水は沈殿槽に供給され、廃水中の汚泥が沈殿槽に沈殿する。沈殿槽に沈殿した汚泥は脱水装置によって脱水され、その脱水された乾燥汚泥が焼却炉で焼却されるので、廃水中の汚染物質が外部に排出されることを抑制できるという効果がある。また、汚泥の脱水時に脱水装置で生じた水は、第1曝気槽、又は第1曝気槽よりも上流側に返送されることで再度浄化されるので、これによっても、廃水中の汚染物質が外部に排出されることを抑制できるという効果がある。
【0016】
請求項6記載の廃水処理システムによれば、請求項5記載の廃水処理システムの奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1曝気槽よりも上流側には加圧浮上槽が設けられ、この加圧浮上槽における加圧浮上法により、汚泥が除去された廃水が第1曝気槽に供給されるので、第1曝気槽における廃水の浄化効率を向上できるという効果がある。
【0017】
また、加圧浮上槽で除去された汚泥は、沈殿槽で生じた汚泥と共に、共通の脱水装置および焼却炉で処理されるので、汚泥の処理系統を統一して廃水処理システムを簡素化できるという効果がある。そして、脱水装置で生じた水は、加圧浮上槽、又は加圧浮上槽よりも上流側に返送されることで再度浄化されるので、廃水中の汚染物質が外部に排出されることを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態における廃水処理システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における廃水処理システム1のブロック図である。
図1では、各配管における廃水などの液体の流路(移動経路)や汚泥の流路を実線の矢印で図示し、オゾンや酸素などの気体の流路を破線の矢印で図示している。
【0020】
なお、
図1における各配管の矢印は、以下に説明する廃水処理システム1の各構成が、かかる配管によって接続されていることを定義するものである。また、各配管における液体(汚泥)や気体の移送は、図示しないポンプやコンプレッサ等によって行われる。
【0021】
図1に示すように、廃水処理システム1は、工場や病院等の施設で生じた廃水を浄化して処理水とし、その処理水を該施設内で再利用したり、周囲の環境に放流(排出)したりするためのシステムである。廃水処理システム1では、好気性微生物を含む活性汚泥が浮遊する(又は活性汚泥が添加された)廃水に対し、活性汚泥法による浄化とオゾンによる浄化とを組み合わせた処理を行って処理水を生成する。
【0022】
図1に示すように、廃水処理システム1は、配管2を介して流入した廃水が貯留される流量調整槽3を備える。流量調整槽3は、流量調整槽3よりも下流側の各処理槽へ供給する廃水の流量を調整するための槽である。流量調整槽3に貯留される廃水は、配管4を通して加圧浮上槽5に供給される。
【0023】
加圧浮上槽5は、廃水中に微細な気泡を発生させ、その気泡が付着した汚泥(有機物等の汚染物質)を水面側に浮上させる装置であり、公知の構成が採用可能であるので詳細な説明は省略する。
【0024】
加圧浮上槽5では、加圧浮上法によって廃水の水面付近に浮上した汚泥Sが除去される。その除去された汚泥Sは、後述する濃縮汚泥貯留槽29に配管6を通して供給される。濃縮汚泥貯留槽29は、汚泥Sが貯留される槽であるが、この濃縮汚泥貯留槽29よりも下流側の処理については後述する。
【0025】
一方、加圧浮上槽5で一部の汚泥が除去された廃水は、配管7を通して曝気槽8に供給される。曝気槽8は、廃水中で曝気(散気)を行うためのブロワ9が設けられる槽であり、このブロワ9の曝気により、曝気槽8内の廃水に空気(又は酸素)が供給される。これにより、活性汚泥中の微生物が活性化され、有機物等の汚染物質が微生物によって分解される。また、曝気槽8では、この活性汚泥法による汚染物質の分解に加え、オゾンによる汚染物質の分解も行われる。
【0026】
具体的には、曝気槽8内の廃水は、配管10を通してオゾン溶解水貯留槽11に供給され、オゾン溶解水貯留槽11に貯留される廃水(後述するオゾン溶解水)は、配管12を通して気体溶解装置13に供給される。
【0027】
気体溶解装置13には、配管14を介してオゾン発生装置15からオゾンが供給されている。このオゾン発生装置15は、気体のオゾンを生成する公知の装置であるので詳細な説明を省略する。
【0028】
気体溶解装置13は、オゾン発生装置15からのオゾンが内部に供給される容器体(図示せず)を備え、気体溶解装置13の容器体内には、オゾンが大気圧以上に(例えば、1気圧に)加圧されて充填される。その充填状態の容器体内に配管12を通して廃水が送り込まれることにより、加圧されたオゾンに廃水が接触し、オゾンが高濃度に溶解したオゾン溶解水が生成される。なお、この気体溶解装置13は、例えば、特願2006-270114号の気体溶解装置(酸素溶解装置1)が例示される。
【0029】
気体溶解装置13で生成されたオゾン溶解水は、配管16を通してオゾン溶解水貯留槽11に返送され、オゾン溶解水貯留槽11に返送されたオゾン溶解水は、配管17を通して曝気槽8に返送される。つまり、曝気槽8からオゾン溶解水貯留槽11に送られた廃水は、気体溶解装置13でオゾンが溶解されることでオゾン溶解水となって曝気槽8に返送される。
【0030】
このように、気体溶解装置13で生成されたオゾン溶解水を曝気槽8に供給することにより、曝気槽8でオゾンを曝気する場合に比べ、オゾンの溶解度が高いオゾン溶解水を曝気槽8に供給できる。よって、曝気槽8内の廃水中の汚染物質を効果的に分解できるので、曝気槽8における廃水の浄化効率を向上できる。
【0031】
ここで、曝気槽8にオゾン溶解水を供給することを目的とする場合、例えば、曝気槽8の廃水ではなく、水道水などの他の液体にオゾンを溶解させて曝気槽8に供給することも可能である。これに対して本実施形態では、気体溶解装置13において、曝気槽8から取水した廃水を用いてオゾン溶解水を生成するので、オゾンを廃水に直接溶解させることができる。これにより、廃水中の汚染物質が分解され易くなるので、廃水の浄化効率を向上できる。
【0032】
また、このようにオゾンを廃水に直接溶解させる場合、例えば、オゾン溶解水貯留槽11を省略し、廃水およびオゾン溶解水の循環を曝気槽8と気体溶解装置13との間で直接行う構成でも良い。しかし、そのような構成では、オゾンを高濃度に溶解させたオゾン溶解水を曝気槽8に供給することが難しくなる。
【0033】
これに対して本実施形態では、曝気槽8及び気体溶解装置13の間にオゾン溶解水貯留槽11が設けられる。曝気槽8とオゾン溶解水貯留槽11との間においては、配管10,17によって廃水(オゾン溶解水)の循環が行われ、オゾン溶解水貯留槽11と気体溶解装置13との間においては、配管12,16によって廃水(オゾン溶解水)の循環が行われる。
【0034】
そして、配管10,17における廃水(オゾン溶解水)の循環量よりも、配管12,16における循環量が多くなるように調整されている。つまり、配管10を通してオゾン溶解水貯留槽11に供給される廃水の水量よりも、配管16を通してオゾン溶解水貯留槽11に供給されるオゾン溶解水の水量の方が多いため、オゾン溶解水貯留槽11に貯留されるオゾン溶解水を濃縮することができる。これにより、オゾンを高濃度に溶解させたオゾン溶解水を曝気槽8に供給することができるので、曝気槽8の廃水中の汚染物質が更に分解され易くなる。よって、曝気槽8における廃水の浄化効率をより効果的に向上できる。
【0035】
このように、曝気槽8では、ブロワ9の曝気によって活性化した微生物(活性汚泥法)と、気体溶解装置13によって生成されたオゾン溶解水とのそれぞれによって汚染物質が分解される。よって、曝気槽8内の廃水の汚染物質を効果的に分解できる。
【0036】
曝気槽8で処理された廃水は、配管18を通して後段の曝気槽19に供給される。曝気槽19は、廃水中で曝気(散気)を行うためのブロワ20が設けられる槽であり、このブロワ20の曝気によって曝気槽19内の廃水に空気(又は酸素)が供給される。これにより、活性汚泥中の微生物が活性化され、廃水中の汚染物質が更に分解されるので、廃水を効果的に浄化できる。
【0037】
ここで、上述した通り、前段の曝気槽8には気体溶解装置13で生成されたオゾン溶解水が供給されている。この場合、例えば、曝気槽8で通常の曝気を行うと、その曝気による気泡によって曝気槽8内の廃水(オゾン溶解水)からオゾンが気化し易くなり、曝気槽8での廃水の浄化効率が低くなることがある。
【0038】
これに対して本実施形態では、後段の曝気槽19内の廃水にブロワ20から供給される空気の流量は、廃水量および汚染物質のBOD等の数値により異なるが、例えばBOD20000(mg/L)程度の汚染濃度が高い廃水に対する一般的な曝気量(例えば、40~50m3/分)に設定されるのに対し、前段の曝気槽8の廃水にブロワ9から供給される空気の流量は、通常の曝気量よりも少なく(例えば、4.0~5.0m3/分に)設定されている。なお、各曝気槽8,19に流入する廃水量はほぼ同一である。
【0039】
即ち、曝気槽8,19における曝気による空気の流量(m3/分)をaとし、曝気槽8,19に配管7,18から流入する廃水の流量(m3/分)をbとした場合に、R=a/bで表される送気倍率Rは、後段の曝気槽19では通常の値(例えば、3~5倍)であるのに対し、前段の曝気槽8では通常の値の1/8~1/10程度の小さい値(例えば、0.3~0.5倍)に設定される。これにより、廃水(オゾン溶解水)に溶解しているオゾンが曝気槽8での曝気によって気化することを抑制できるので、曝気槽8における廃水の浄化効率を向上できる。
【0040】
この一方で、前段の曝気槽8での曝気量を少なくすると、曝気槽8内の廃水中の酸素量が不足するおそれがあるため、本実施形態では、後段の曝気槽19から取水した廃水に酸素を溶解させて前段の曝気槽8に返送する構成を採用している。
【0041】
具体的には、後段の曝気槽19からは、配管21を通して気体溶解装置22に廃水が供給される。気体溶解装置22には、配管23を介して酸素発生装置24から酸素が供給されている。この酸素発生装置24は、気体の酸素を生成する公知の装置であるので詳細な説明を省略する。
【0042】
気体溶解装置22は、酸素発生装置24からの酸素が内部に供給される容器体(図示せず)を備え、気体溶解装置22の容器体内には、酸素が大気圧以上に(例えば、1気圧に)加圧されて充填される。その充填状態の容器体内に配管21を通して廃水が送り込まれることにより、加圧された酸素に廃水が接触し、酸素が高濃度に溶解した酸素溶解水が生成される。なお、この気体溶解装置22は、例えば、特願2006-270114号の気体溶解装置(酸素溶解装置1)が例示される。
【0043】
気体溶解装置22で生成された酸素溶解水は、配管25を通して前段の曝気槽8に返送されるので、曝気槽8での曝気量を少なくした場合であっても、曝気槽8内の廃水中の酸素量が不足することを抑制できる。これにより、曝気槽8内の活性汚泥中の微生物を酸素によって活性化させ、汚染物質の分解を促進させることができるので、曝気槽8における廃水の浄化効率を向上できる。
【0044】
更に、酸素は、空気(窒素)に比べて廃水への溶解度が高いため、前段の曝気槽8に返送された(大気圧に戻された)酸素溶解水から酸素が気化することを抑制できる。これにより、酸素の気化による気泡が曝気槽8内に生じることを抑制できるので、曝気槽8内の廃水(オゾン溶解水)からオゾンが気化することを抑制できる。よって、曝気槽8における廃水の浄化効率を向上できる。
【0045】
このように、廃水の浄化効率を向上させるためには、曝気槽の規模が大きく、廃水への酸素の供給量が多い方が好ましい。この場合、例えば、曝気槽8,19に加え、後段の曝気槽19の下流側(又は曝気槽8,19の間)に追加の曝気槽を別途設け、その曝気槽で廃水に曝気を行うことも可能である。しかしながら、そのような構成、即ち、曝気によって酸素を供給する構成の場合、廃水に対する酸素の溶解度を高めることが難しいため、廃水の浄化効率を十分に高めることができない。
【0046】
これに対して本実施形態では、後段の曝気槽19から取水した廃水に気体溶解装置22を用いて酸素を溶解させて酸素溶解水を生成し、その酸素溶解水を前段の曝気槽8に返送している。これにより、例えば、別途設けた曝気槽で廃水に曝気を行う場合に比べ、酸素を高濃度に溶解させた酸素溶解水を曝気槽8に返送できる。よって、曝気槽8における廃水の浄化効率を向上できる。
【0047】
更に、後段の曝気槽19内の廃水が気体溶解装置22を介して前段の曝気槽8に返送されことで廃水が滞留するので、その滞留する水量(即ち、配管21,25及び気体溶解装置22を通る水量)の分、廃水の処理量が増加する。即ち、曝気槽を別途設けることなく、廃水の処理量を増加させることができる。
【0048】
後段の曝気槽19で処理された廃水は、配管26を通して沈殿槽27に供給される。沈殿槽27は、廃水を静置させて廃水中の活性汚泥(汚染物質)を沈殿させるための槽である。沈殿槽27の槽底部に沈殿した汚泥Sは、配管28を通して濃縮汚泥貯留槽29に供給される。
【0049】
濃縮汚泥貯留槽29に貯留される汚泥Sは、配管30を通じて脱水装置31に供給されて脱水処理が行われる。脱水装置31は、ろ過や遠心分離などによって汚泥Sを脱水する公知の装置であるので詳細な説明を省略する。
【0050】
脱水装置31での脱水によって生じた乾燥汚泥は、焼却炉32で焼却されるため、廃水処理システム1を備える施設(例えば、工場や病院)から汚染物質が外部に排出されることを抑制できる。また、焼却炉32での焼却時に生じた熱は、ボイラーや熱交換器などを使用して、該施設内における給湯や発電などに再利用されるので、焼却炉32で生じる熱エネルギーを有効利用できる。また、加圧浮上槽5及び沈殿槽27のそれぞれで生じた汚泥Sが共通の脱水装置31及び焼却炉32で処理されるので、汚泥Sの処理系統を統一して廃水処理システム1を簡素化できる。
【0051】
脱水装置31での脱水時に生じた水には汚染物質が混入しているが、この水は、配管33を通して流量調整槽3に返送され、上述した一連の廃水処理の工程で再度浄化される。これにより、廃水処理システム1を備える施設から汚染物質が外部に排出されることを抑制できる。
【0052】
一方、沈殿槽27の上澄み液は、廃水が浄化された処理水となり、配管34を通して放流槽35に供給される。放流槽35は、処理水を貯留するための槽であり、放流槽35内の処理水は、廃水処理システム1を備える施設内で再利用されるか、若しくは、施設外に放流される。
【0053】
上述した一連の廃水処理により、浄化前の廃水のBOD(生物化学的酸素要求量)が30000(mg/L)を超えるものであっても、浄化後の処理水のBODを5(mg/L)以下に低減させることができる。
【0054】
よって、例えば、処理水を施設内で再利用する際には、空調の室外機に対する散水用の水や、風呂用の水として再利用することができ、この場合には、上述した焼却炉32で生じた熱は、空調のための電力供給や、風呂の給湯のために使用できる。また、浄化後の処理水のBODは5(mg/L)以下に低減されているため、処理水を施設外に放流する場合には、周囲の環境汚染を抑制できる。
【0055】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0056】
上記実施形態では、2つの曝気槽8,19によって廃水の浄化が行われる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、曝気槽19を省略しても良いし、曝気槽8,19の間、加圧浮上槽5と前段の曝気槽8との間、又は後段の曝気槽19と沈殿槽27との間に追加の曝気槽を1又は複数設けても良い。
【0057】
また、曝気槽19における曝気の送気倍率よりも、曝気槽8における曝気の送気倍率が小さく設定される場合を説明したが、曝気槽8,19における曝気の送気倍率が同一であっても良いし、曝気槽19における曝気の送気倍率よりも、曝気槽8における曝気の送気倍率を大きくしても良い。
【0058】
また、気体溶解装置13により、曝気槽8から取水した廃水にオゾンを溶解させて曝気槽8に返送する場合を説明したが、例えば、気体溶解装置13において水道水などの他の液体にオゾンを溶解させて曝気槽8に供給する構成でも良い。また、後段の曝気槽19や沈殿槽27、又は放流槽35から取水した廃水にオゾンを溶解させて前段の曝気槽8に返送する構成でも良い。
【0059】
また、1つの気体溶解装置13によってオゾン溶解水を生成する場合を説明したが、例えば、2以上の気体溶解装置13によってオゾン溶解水を生成して曝気槽8(オゾン溶解水貯留槽11)に供給する構成でも良い。更に、オゾン溶解水貯留槽11を省略し、曝気槽8と気体溶解装置13との間において、廃水およびオゾン溶解水を直接循環させる構成でも良い。
【0060】
また、気体溶解装置22により、曝気槽19から取水した廃水に酸素を溶解させて曝気槽8に返送する場合を説明したが、例えば、曝気槽19から取水した廃水に空気を溶解させて曝気槽8に返送する構成でも良い。また、沈殿槽27、又は放流槽35から取水した廃水に酸素を溶解させて曝気槽8に返送する構成でも良いし、気体溶解装置22を省略する構成でも良い。
【0061】
なお、気体溶解装置22によって廃水に空気を溶解させる構成の場合には、その廃水(空気溶解水)が曝気槽8に返送されて大気圧に戻されることで気泡が発生する。よって、このような構成の場合には、ブロワ9を省略し、曝気槽8に返送された廃水に生じる気泡を利用して曝気を行っても良い。これにより、曝気槽8で曝気を行うための機能と、曝気槽19から曝気槽8に廃水(酸素溶解水)を返送するための機能とを気体溶解装置22に兼用させることができる。
【0062】
また、上記実施形態では、気体溶解装置22により、曝気槽19から取水した廃水に酸素を溶解させて曝気槽8に返送する場合を説明したが、例えば、曝気槽8から取水した廃水に空気(酸素を含む気体)を溶解させて曝気槽8に返送する構成でも良い。更に、2以上の気体溶解装置22によって酸素溶解水を生成して曝気槽8に返送する構成でも良い。
【0063】
また、脱水装置31で生じた水が流量調整槽3に返送される場合を説明したが、例えば、脱水装置31で生じた水を加圧浮上槽5や曝気槽8,19に返送しても良いし、オゾン溶解水貯留槽11や気体溶解装置13に供給しても良い。
【0064】
また、沈殿槽27の上澄み液が処理水とされる場合を説明したが、例えば、沈殿槽27の上澄み液に対し、限界ろ過膜(UF膜)を用いたろ過等、他の追加の浄化処理を行ったものを処理水としても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 廃水処理システム
5 加圧浮上槽
8 曝気槽(第1曝気槽)
11 オゾン溶解水貯留槽
13 気体溶解装置(第1気体溶解装置)
15 オゾン発生装置
19 曝気槽(第2曝気槽)
22 気体溶解装置(第2気体溶解装置)
24 酸素発生装置
27 沈殿槽
31 脱水装置
32 焼却炉
S 汚泥