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特許7523786光学薄膜フィルター及びビームシェーパー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】光学薄膜フィルター及びビームシェーパー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20240722BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20240722BHJP
   B23K 26/06 20140101ALI20240722BHJP
【FI】
G02B5/28
H01S3/10 Z
B23K26/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020117309
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014771
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 宗男
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-141687(JP,A)
【文献】特開2004-037867(JP,A)
【文献】特表2007-531008(JP,A)
【文献】特表2007-527326(JP,A)
【文献】特開平10-208275(JP,A)
【文献】特公平07-102470(JP,B2)
【文献】特開2007-029959(JP,A)
【文献】特開平02-133511(JP,A)
【文献】国際公開第2012/071050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
H01S 3/10
B23K 26/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に形成された光学多層膜と、
を備えており、
前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、
前記光学多層膜に入射する前の前記光線の電場の楕円率と、前記光学多層膜により断面強度分布が変換された前記光線の電場の楕円率との変化量である楕円率変化量が、0.5以下である
ことを特徴とする光学薄膜フィルター。
【請求項2】
基材と、
前記基材の表面に形成された光学多層膜と、
を備えており、
前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、
前記光学多層膜に入射する前の前記光線の断面強度分布は、ガウシアン型であり、
前記光学多層膜により変換された前記光線の断面強度分布は、フラットトップ型である
ことを特徴とする光学薄膜フィルター。
【請求項3】
基材と、
前記基材の表面に形成された光学多層膜と、
を備えており、
前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、
前記光学多層膜に入射する前の前記光線の断面強度分布は、フラットトップ型であり、
前記光学多層膜により変換された前記光線の断面強度分布は、ドーナツ型である
ことを特徴とする光学薄膜フィルター。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の光学薄膜フィルターと、
1以上のレンズと、
を備えており、
少なくとも1つの前記レンズは、前記光線を屈折して、前記光学薄膜フィルターに対し入射させる
ことを特徴とするビームシェーパー。
【請求項5】
前記光学薄膜フィルター及び1以上の前記レンズのうちの少なくとも何れかが、ケースに入れられている
ことを特徴とする請求項4に記載のビームシェーパー。
【請求項6】
前記光学薄膜フィルターより前記光線の上流側に、ピンホールを有するピンホール板が設けられており、
少なくとも1つの前記レンズは、前記ピンホールにおいて前記光線を合焦させる
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のビームシェーパー。
【請求項7】
複数の前記レンズの一部又は全部は、前記光学薄膜フィルターより前記光線の上流側に配置されており、前記光線を拡径するものである
ことを特徴とする請求項4ないし請求項6の何れかに記載のビームシェーパー。
【請求項8】
前記光学薄膜フィルター及び1つの前記レンズに代えて、前記光学多層膜を成膜した1つのレンズが配置されている
ことを特徴とする請求項4ないし請求項7の何れかに記載のビームシェーパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線の断面強度分布を変更可能な光学薄膜フィルター及びビームシェーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーから発振されるビームの断面強度分布を変更可能なビームシェーパーとして、特許文献1(特公平7-102470号公報)に記載されたフィルターが知られている。
このフィルターは、図2に記載されるように、ビームの断面強度分布を、ガウス型分布A(ガウシアン型)から、平坦な強度分布C(フラットトップ型)に変更するものである。
レーザー加工では、ビームの断面強度分布が、発振直後の一般的な態様であるガウシアン型からフラットトップ型に変更されると、厚板の切断がより円滑に行われることとなる。即ち、ガウシアン型では、切断途中の厚板の加工部分の断面(溶け込み形状)がすり鉢状になり、当該加工部分の所定以上の深さが確保され難く、厚板の切断が途中で進まなくなる。これに対し、フラットトップ型では、溶け込み形状が柱状になり、切断途中の加工部分の深さが確保され、厚板の切断が完了する。
このフィルターは、[0023]に記載されるように、透光板に膜厚勾配を持たせたり、透明材料に同波長域に吸収スペクトルを有する密度勾配を持たせて含有させた透光板としたり、透明板の表面にアルミニウム等の金属薄膜を真空蒸着等によって膜厚が変化するように形成したりすることにより構成される(アポダイジングフィルター)。
【0003】
又、同様なフィルターとして、特許文献2(特開2002-98930号公報)に記載された位相板が知られている。
この位相板は、[0022],図2図3に記載されるように、同心円帯状の膜厚の低い部分を2領域有しており、ガウシアンビームをフラットトップビームに変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平7-102470号公報
【文献】特開2002-98930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の各種のアポダイジングフィルターでは、膜厚又は密度の高低分布が付与されるため、製造時にその分布に応じ調整されたマスクを要する等、製造が複雑になる。
又、上述の各種のアポダイジングフィルターのうち、アルミニウム等の金属薄膜等を用いてビームを部分的に吸収することで断面強度分布を調整するものでは、ビームのエネルギーが吸収により蓄積して、比較的に短寿命となり、特にハイパワーレーザーに対して耐性が低く損傷し易いものとなる。
【0006】
そこで、本発明の主な目的は、製造を行い易い光学薄膜フィルター,ビームシェーパーを提供することである。
又、本発明の別の主な目的は、長寿命であり、ハイパワーレーザービームの断面強度分布変換が耐久性の高い状態で行える光学薄膜フィルター,ビームシェーパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光学薄膜フィルターにおいて、基材と、前記基材の表面に形成された光学多層膜と、を備えており、前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、
前記光学多層膜に入射する前の前記光線の電場の楕円率と、前記光学多層膜により断面強度分布が変換された前記光線の電場の楕円率との変化量である楕円率変化量が、0.5以下であることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、基材と、前記基材の表面に形成された光学多層膜と、を備えており、前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、前記光学多層膜に入射する前の前記光線の断面強度分布は、ガウシアン型であり、前記光学多層膜により変換された前記光線の断面強度分布は、フラットトップ型であることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、基材と、前記基材の表面に形成された光学多層膜と、を備えており、前記光学多層膜は、干渉により、自身に入射させる光線の波長において、前記光線の入射角度に応じた透過率である入射角度依存透過率を有するものであり、前記入射角度依存透過率により、前記光学多層膜に屈折させて入射させた前記光線の断面強度分布を変換するものであり、前記光学多層膜に入射する前の前記光線の断面強度分布は、フラットトップ型であり、前記光学多層膜により変換された前記光線の断面強度分布は、ドーナツ型であることを特徴とするものである。
【0008】
上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明は、ビームシェーパーにおいて、上記の光学薄膜フィルターと、1以上のレンズと、を備えており、少なくとも1つの前記レンズは、前記光線を屈折して、前記光学薄膜フィルターに対し入射させることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記光学薄膜フィルター及び1以上の前記レンズのうちの少なくとも何れかが、ケースに入れられていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記光学薄膜フィルターより前記光線の上流側に、ピンホールを有するピンホール板が設けられており、少なくとも1つの前記レンズは、前記ピンホールにおいて前記光線を合焦させることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、複数の前記レンズの一部又は全部は、前記光学薄膜フィルターより前記光線の上流側に配置されており、前記光線を拡径するものであることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、前記光学薄膜フィルター及び1つの前記レンズに代えて、前記光学多層膜を成膜した1つのレンズが配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
そこで、本発明の主な効果は、製造を行い易い光学薄膜フィルター,ビームシェーパーが提供されることである。
又、本発明の別の主な効果は、長寿命であり、ハイパワーレーザービームの断面強度分布変換が耐久性の高い状態で行える光学薄膜フィルター,ビームシェーパーが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)は本発明の第1形態に係るビームシェーパーの模式図であり、(B)はその一部についての変更例の模式図であり、(C)はビームのガウシアン型の断面強度分布の模式的なグラフ(横軸は光軸からの距離dで縦軸は相対強度である)及び数式であり、(D)はビームのフラットトップ型の断面強度分布の模式的なグラフ及び数式である。
図2】(A)は本発明の第2形態に係るビームシェーパーの模式図であり、(B)はその一部についての変更例の模式図である。
図3】(A)は本発明の第3形態に係るビームシェーパーの模式図であり、(B)はその一部についての変更例の模式図である。
図4】(A)は本発明の第4形態に係るビームシェーパーの模式図であり、(B)はその一部についての変更例の模式図である。
図5】本発明の実施例1に係る光学多層膜の各層の物理膜厚が示されるグラフである。
図6】本発明の実施例1に係る反射防止膜の各層の物理膜厚が示されるグラフである。
図7】本発明の実施例1においてレンズ及び光学薄膜フィルターをレンズの上方からみた模式図であって、ビームが直線偏光する場合の図である。
図8】本発明の実施例1においてレンズ及び光学薄膜フィルターをレンズの上方からみた模式図であって、ビームが円偏光する場合の図である。
図9】楕円率に関する模式図である。
図10】実施例1の光学多層膜に対し、ビームが、1064nmを含む波長域での各波長において角度θ=0°で入射する場合の分光透過率分布を示すグラフである。
図11】実施例1の光学多層膜に対し、波長1064nmのビームが、角度θ(横軸)で入射する場合の透過率の目標値T(θ),p偏光に対する透過率T,s偏光に対する透過率T,位相差Δ(縦軸)を示すグラフである。
図12】波長1064nmのビームにおける、空間座標(横軸)と、実施例1の光学多層膜8に係る透過率の目標値T(θ),p偏光に対する透過率T,s偏光に対する透過率T,入射の角度θ(縦軸)との関係を示すグラフである。
図13】(A)~(C)は、方位角φが順に0°,45°,90°である平面における直線偏光したビームの、空間座標に対する、実施例1での変換前後及び目標値に係る断面強度分布、並びに楕円率分布を示すグラフである。
図14】ビームが進む方向に向かってみたビームの断面図に、極座標(d,φ)における所定の軸及び点を重ねた模式図である。
図15】(A)は、図14で表された点(0,0)における直線偏光したビームの実施例1での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフであり、図15(B)~(F)は、順に点(2,0)、(2,22.5)、(2,45)、(2,67.5)、(2,90)における直線偏光したビームの実施例1での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
図16】(A)~(E)は、順に点(4,0)、(4,22.5)、(4,45)、(4,67.5)、(4,90)における直線偏光したビームの実施例1での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
図17】(A)~(E)は、順に点(10,0)、(10,22.5)、(10,45)、(10,67.5)、(10,90)における直線偏光したビームの、実施例1の光学多層膜8での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
図18】(A)~(C)は、円偏光したビームに対する実施例1による変換に係る図13(A)~(C)と同様のグラフである。
図19】円偏光したビームに対する実施例1による変換に係る図15と同様のグラフである。
図20】円偏光したビームに対する実施例1による変換に係る図16と同様のグラフである。
図21】円偏光したビームに対する実施例1による変換に係る図17と同様のグラフである。
図22】本発明の実施例2に係る図5同様図である。
図23】本発明の実施例2に係る図10同様図である。
図24】本発明の実施例2に係る図11同様図である。
図25】本発明の実施例2に係る図12同様図である。
図26】本発明の実施例2(直線偏光)に係る図13同様図である。
図27】本発明の実施例2(直線偏光)に係る図15同様図である。
図28】本発明の実施例2(直線偏光)に係る図16同様図である。
図29】本発明の実施例2(直線偏光)に係る図17同様図である。
図30】本発明の実施例2(円偏光)に係る図18同様図である。
図31】本発明の実施例2(円偏光)に係る図19同様図である。
図32】本発明の実施例2(円偏光)に係る図20同様図である。
図33】本発明の実施例2(円偏光)に係る図21同様図である。
図34】本発明の実施例3に係る図5同様図である。
図35】本発明の実施例3に係る図10同様図である。
図36】本発明の実施例3に係る図11同様図である。
図37】本発明の実施例3に係る図12同様図である。
図38】本発明の実施例3(直線偏光)に係る図13同様図である。
図39】本発明の実施例3(直線偏光)に係る図15同様図である。
図40】本発明の実施例3(直線偏光)に係る図16同様図である。
図41】本発明の実施例3(直線偏光)に係る図17同様図である。
図42】本発明の実施例3(円偏光)に係る図18同様図である。
図43】本発明の実施例3(円偏光)に係る図19同様図である。
図44】本発明の実施例3(円偏光)に係る図20同様図である。
図45】本発明の実施例3(円偏光)に係る図21同様図である。
図46】本発明の実施例4に係る図5同様図である。
図47】本発明の実施例4に係る図6同様図である。
図48】本発明の実施例4に係る図10同様図である。
図49】本発明の実施例4に係る図11同様図である。
図50】本発明の実施例4に係る図12同様図である。
図51】本発明の実施例4(直線偏光)に係る図13同様図である。
図52】本発明の実施例4(直線偏光)に係る図15同様図である。
図53】本発明の実施例4(直線偏光)に係る図16同様図である。
図54】本発明の実施例4(直線偏光)に係る図17同様図である。
図55】本発明の実施例4(円偏光)に係る図18同様図である。
図56】本発明の実施例4(円偏光)に係る図19同様図である。
図57】本発明の実施例4(円偏光)に係る図20同様図である。
図58】本発明の実施例4(円偏光)に係る図21同様図である。
図59】本発明の実施例5に係る図5同様図である。
図60】本発明の実施例5に係る図10同様図である。
図61】本発明の実施例5に係る図11同様図である。
図62】本発明の実施例5に係る図12同様図である。
図63】本発明の実施例5(直線偏光)に係る図13同様図である。
図64】本発明の実施例5(直線偏光)に係る図52同様図である。
図65】本発明の実施例5(直線偏光)に係る図53同様図である。
図66】本発明の実施例5(円偏光)に係る図18同様図である。
図67】本発明の実施例5(円偏光)に係る図56同様図である。
図68】本発明の実施例5(円偏光)に係る図57同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。尚、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
【0012】
[第1形態]
図1(A)は、本発明の第1形態に係るビームシェーパー1の模式図である。
ビームシェーパー1は、レンズ2と、光学薄膜フィルター4と、を有している。
ビームシェーパー1は、ビームBの断面強度分布を変換するものである。ビームBの断面強度分布は、ビームBの進行方向に垂直な断面におけるエネルギー分布である。尚、断面強度分布の変換の対象は、レーザー発振器からのビームB以外の光線であっても良い。
ビームシェーパー1は、レーザー加工装置における被加工物WOを載置するテーブルに隣接して配置されている。
ビームBは、レーザー加工装置に設けられたレーザー発振器から発振される。ビームBは、レーザー発振器から横方向に発出し、ミラーによりレンズ2の方向(上下方向)に方向変換され、レンズ2に上方から入射する。
尚、ビームシェーパー1は、被加工物WO(テーブル)から離れて配置されていても良い。ビームBにおけるレーザー発振器からの発出方向及びミラーによる反射後の方向等の各種の方向のうち少なくとも何れかは、上述あるいは図示の方向と異なっていても良い。ビームシェーパー1は、レーザー加工装置以外に設けられても良い。
【0013】
レンズ2は、凸レンズであり、ここでは凸面と平面とを有する平凸レンズである。平凸レンズでは、板状の光学薄膜フィルター4を平面側へ配置し易く、好ましい。
レンズ2は、透光性を有しており、自身に入射する、波長λでビーム径2D(直径)のビームBを屈折させ、焦点距離fだけ離れた光軸L上の点である焦点Fで収束させる。
ビームBの中心軸と、レンズ2の光軸Lは、一致している。
レンズ2の材質は、特に限定されず、例えばガラス、結晶、あるいは樹脂である。
【0014】
ビームBは、レンズ2の凸面に入射し、界面である凸面の形状により、焦点Fで収束するような角度θを有するように折れ曲がる。角度θは、光軸Lに対する折れ曲がったビームBの部分の角度である。角度θは、光軸Lからの距離dに伴って変化し、d=0でθ=0であり、dが増加するとθが増加して、d=D(ビームBの半径)で最大値θmaxとなる。即ち、角度θは、距離dの関数θ(d)である。ビームBの断面における同心円状の部分(距離dが一定である部分)は、同じ角度θで折れ曲がる。
レンズ2は、角度θの最大値θmaxを可及的に大きく確保して光学多層膜8の設計に余裕を持たせる観点から、例えばレンズ2の直径より短い焦点距離fを有する等、ある程度短い焦点距離fを有するものが好ましい。
又、幾何学的な関係から、θ(d),θmaxは、順に次の式(1),(2)で示される。ここで、tan-1は、tanの逆関数である。
【0015】
【数1】
【0016】
光学薄膜フィルター4は、基材6と、光学多層膜8と、反射防止膜10と、を有している。
基材6は、板状であり、光学多層膜8が成膜された第1面R1と、反射防止膜10が成膜された第2面R2と、を備えている。
基材6は、透光性を有する。
基材6の材質は、特に限定されず、例えば石英ガラス等のガラス、結晶、あるいは樹脂である。
基材6の形状は、特に限定されず、例えば平行平板、あるいはウェッジ付きである。
基材6の肉厚は、特に限定されないところ、収差を抑制する観点から、薄い方が好ましい。但し、基材6の最低限以上の強度が確保されることが好ましい。
尚、図1(B)に示されるように、光学薄膜フィルター4は、光学多層膜8のみから成り、レンズ2の表面R’(平凸レンズの平面)に付着されても良い。この場合、レンズ2が付着された光学薄膜フィルター4専用のものとなる一方、光学薄膜フィルター4による収差が最低限まで抑制される。
【0017】
光学多層膜8は、誘電体材料あるいは半導体材料を用いた無機多層膜であり、誘電体多層膜あるいは半導体多層膜である。
光学多層膜8は、基材6の第1面R1における一部又は全部に形成される。尚、光学多層膜8は、第1面R1及び第2面R2に形成されても良い。
光学多層膜8は、低屈折率層及び高屈折率層を含む。又、光学多層膜8は、更に中屈折率層を含み得る。
高屈折率層及び低屈折率層(並びに中屈折率層)の層数及び材質の選択、並びに各層における厚み(層に係る物理膜厚あるいは光学膜厚)の増減といった設計要素の変更により、光学多層膜8の設計が変更される。
例えば、中屈折率層がこれと光学的に等価である高屈折率層と低屈折率層との組合せにより置換される等、光学多層膜8における一部又は全部の構造は、光学的に等価な他の構造に置換されても良い。
【0018】
高屈折率層は、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化ニオブ(Nb)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ランタン(La)、シリコン(Si)、若しくは酸化プラセオジム(Pr)又はこれらの二種以上の混合物といった高屈折率材料から形成される。
又、低屈折率層は、例えば、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化アルミニウムと酸化プラセオジムとの組合せ(Al-Pr)、酸化アルミニウムと酸化ランタンとの組合せ(Al-La)、若しくは酸化アルミニウムと酸化タンタルとの組合せ(Al-Ta)、又はこれらの二種以上の混合物といった低屈折率材料から形成される。
中屈折率層は、例えばAl、Pr、La、Al-Pr、Al-La、といった中屈折率材料から形成される。
尚、例えば、上述の高屈折率材料から2つの材料を選択して、光学多層膜8が形成されても良い。又、光学多層膜8の外部に、防汚膜等の他の機能を有する膜が組み合わせられても良い。
【0019】
光学多層膜8の低屈折率層及び高屈折率層(並びに中屈折率層)は、真空蒸着法あるいはイオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等により形成される。
光学多層膜8は、基材6における複数の面に形成されても良い。例えば、光学多層膜8は、平行平板あるいはウェッジ付き、凹面、凸面の基材6の表裏両面に形成されても良い。
【0020】
反射防止膜10は、光学多層膜8と同様に、主に低屈折率層及び高屈折率層を交互に積層した膜である。反射防止膜10は、第2面R2におけるビームBの反射を抑えるように設計される。
反射防止膜10は、基材6の第2面R2における一部又は全部に形成される。
尚、反射防止膜10は、第1面R1及び第2面R2に形成されても良い。反射防止膜10は、省略されても良い。
【0021】
光学薄膜フィルター4は、レンズ2におけるビームBの出射側、即ちレンズ2の平面側に配置される。光学薄膜フィルター4は、光学多層膜8に基材6を介さず直接入射させるため、光学多層膜8がレンズ2に近い側となるように配置される。尚、光学薄膜フィルター4は、基材6がレンズ2に近い側となるように配置されても良い。
光学多層膜8には、レンズ2により、角度θ(d)を有するビームBが入射する。よって、角度θは、入射角度に相当する。
【0022】
レーザー発振器から光学多層膜8入射直前までのビームBにおける断面強度分布は、図1(C)に示されるようなガウシアン型であり、ビームBの円状の断面の中心においてビームBの強度が最も強く、中心から同心円状に強度が弱くなっていき、ビームBの外縁で強度が十分に小さいような分布である。
このガウシアン型の断面強度分布f(d)は、最も強い強度を1として、一般に次の式(3)で表される。ここで、σは標準偏差であり、f(d)の半値全幅FWHMは、2√(2ln2)σであって、lnは自然対数である。
【0023】
【数2】
【0024】
光学多層膜8は、ビームBが入射する角度θに応じて透過率が所定の態様で変化するように設計されている。
一般に、光をフィルタリングする光学多層膜8は、光の入射の角度θが増加すると、分光透過率分布が短波長側へシフトする特性を有している。即ち、光学多層膜8では、多層での干渉状態が入射の角度θにより異なり、干渉に入射の角度θへの依存性が存在して、透過率が入射の角度θに依存したものとなる(入射角度依存透過率)。
例えば、θ=0(垂直入射)において、700nmの波長を境界として、これより短波長側で100%に近い透過率を持ち、長波長側で0%に近い透過率を持つショートウェーブパスフィルタにおいて、θが増加すると、700nmより短い波長を境界として、これより短波長側で100%に近い透過率を持ち、長波長側で0%に近い透過率を持つように、分光透過率分布が短波長側にシフトする。
かような特性は、従来、波長軸(横軸)方向について注目されてきた。これに対し、本発明では、透過率軸(縦軸)方向の変化に注目し、当該変化を制御することで、入射の角度θに依存した所望の透過率を有する光学多層膜8を構成する。
光学多層膜8は、透過率が100%未満である場合、主にビームBの一部の反射により透過率を減少させる。光学多層膜8において、ビームBの吸収は殆ど起こらず、透過率の減少に寄与しない。
【0025】
光学多層膜8では、ビームBの断面強度分布が、ガウシアン型の断面強度分布f(d)からフラットトップ型の断面強度分布f(d)に変換されるような、角度θに伴う透過率を有するように設計される(フラットトップ裾有り型:後述の実施例1,2,4、フラットトップ裾切り型:後述の実施例3)。尚、光学多層膜8は、断面強度分布を、ガウシアン型から、フラットトップ型以外の他の型に変換するものであっても良いし、ガウシアン型以外の型から、フラットトップ型あるいは他の型に変換するものであっても良い(フラットトップ裾切り型からドーナツ型への変換:後述の実施例5)。
フラットトップ型の断面強度分布f(d)は、より詳しくは、ガウシアン型の断面強度分布f(d)において半値を超える部分(半値全幅FWHMの線より上の部分)をカットした分布であり、次の式(4)で示される。このカットにより、半値全幅FWHMを直径とする円形のフラット部(断面強度分布が3次元である場合)が形成され、当該フラット部が、ビームBの強度の面で有効に被加工物WO等に作用する有効断面領域となる。尚、フラットトップ型の断面強度分布f(d)は、例えば2/3を超える部分をカットした分布とする等、様々に変更されても良い。
【0026】
【数3】
【0027】
光学多層膜8の角度θ毎の透過率の目標値T(θ)は、各型の断面強度分布f(d),f(d)に基づいて、次の式(5)により算出される。
光学多層膜8は、透過率の目標値T(θ)に適合するように設計され、理想的には、角度θに応じた透過率T(θ)が、目標値T(θ)と全く同一のものとなる(T(θ)=T(θ))。尚、現実的には、光学多層膜8は、透過率T(θ)が可及的に目標値T(θ)に近づくように設計される。
【0028】
【数4】
【0029】
透過率T(θ)を有する光学多層膜8をビームBが通過することにより、ビームBの断面強度分布がガウシアン型からフラットトップ型に変換され、ビームBが、レンズ2の収束作用により、断面強度分布が相似的に縮小しつつ、被加工物WOに達する。
厳密には、光学薄膜フィルター4が配置されずレンズ2のみとされた場合のビームBの外縁(図1における光学薄膜フィルター4以下のビームBの点線)に対し、光学薄膜フィルター4が配置される第1形態では、光学薄膜フィルター4(主に基材6)によりビームBが屈折されることから、ビームBの外縁がズレることとなる。尚、図1では、明確化のため、ビームBの外縁のズレが誇張されている。
実際には、ビームBの外縁のズレは光学薄膜フィルター4の肉厚に比例し、光学薄膜フィルター4(基材6)が薄い板状であれば、ズレは十分に小さいから、被加工物WOは、光学薄膜フィルター4が配置されない場合と同じく、レンズ2から焦点距離fだけ離れた位置に配置すれば良い。又、精密性が重視される場合、あるいは強度の確保等により光学薄膜フィルター4の肉厚が比較的に厚い場合には、ビームBの外縁のズレを算出して、そのズレの分だけ被加工物WOの位置をずらせば良い。ズレの算出等について、基材6をレンズ2側に配置する場合も、同様である。尚、図1(B)に示される変更例の場合、光学多層膜8付きのレンズ2は、各種の収差の発生が抑制され、配置等において光学多層膜8のないレンズ2と同様に取り扱える。
被加工物WOは、収束され且つ断面強度分布がフラットトップ型に変換されたビームBにより加工される。
【0030】
第1形態の光学薄膜フィルター4は、基材6と、基材6の表面Rに形成された光学多層膜8と、を備えており、光学多層膜8は、干渉により、自身に入射させるビームBの波長において、ビームBの入射の角度θに応じた透過率T(θ)(設計上の目標値T(θ))である入射角度依存透過率を有するものであり、その入射角度依存透過率により、光学多層膜8に屈折させて入射させたビームBの断面強度分布を変換するものである。
よって、光学薄膜フィルター4は、基材6に光学多層膜8を成膜するだけで製造され、製造を行い易い光学薄膜フィルター4が提供される。
又、光学多層膜8は、反射により透過率を低減させるため、自身にビームBのエネルギーは蓄積されない。従って、光学薄膜フィルター4は、長寿命となり、ハイパワーレーザーに対しても耐性が高く損傷が防止されたものとなる。
【0031】
又、第1形態の光学薄膜フィルター4では、光学多層膜8に入射する前のビームBの電場の楕円率kと、光学多層膜8により断面強度分布が変換されたビームBの電場の楕円率kとの変化量である楕円率変化量が、0.5以下である。よって、変換前後で偏光状態が保存され、特に、加工に適した円偏光のビームBの断面強度分布を、円偏光のままあるいは円偏光に近い状態で変換する光学薄膜フィルター4が提供される。
更に、光学多層膜8に入射する前のビームBの断面強度分布は、ガウシアン型であり、光学多層膜8により変換されたビームBの断面強度分布は、フラットトップ型である。よって、発振直後の断面強度分布として一般的なガウシアン型を、厚板加工等に適したフラットトップ型に変換する、製造容易であり、長寿命でハイパワー対応可能な光学薄膜フィルター4が提供される。
加えて、第1形態のビームシェーパー1は、光学薄膜フィルター4と、1つのレンズ2と、を備えており、レンズ2は、ビームBを屈折して、光学薄膜フィルター4に対し入射させる。よって、光学薄膜フィルター4に対し、ビームBを、様々な入射の角度θを有する状態で入射させるレンズ2を備えた、製造容易で耐性の高いビームシェーパー1が提供される。
【0032】
[第2形態]
図2(A)は、本発明の第2形態に係るビームシェーパー101の模式図である。
ビームシェーパー101は、第1形態と同様であるレンズ2及び光学薄膜フィルター4を備えている。
レンズ2の凸面は、被加工物WO側に配置される。光学薄膜フィルター4の基材6は、レンズ2の平面と対向して配置される。
尚、図2(B)に示されるように、レンズ2及び光学薄膜フィルター4は、レンズ2及びその平面に形成された光学多層膜8に置き換えることができる。この場合、第1形態の図1(B)の場合と同様な効果が発揮される。又、第2形態は、第1形態と同様の変更例を適宜有する。
【0033】
又、ビームシェーパー101は、レンズ102を備えている。
レンズ102は、レンズ2と同様に成る。レンズ102の焦点距離fは、レンズ2と同じである。
レンズ102は、レンズ2に対し、平面をレンズ2の平面と向かい合わせた状態で、焦点距離fの2倍離れた位置に配置されている。レンズ102は、レンズ2からみて、被加工物WOと反対側に配置されている。レンズ102は、ビームBの光路において、レンズ2及び光学薄膜フィルター4の上流に配置されている。
【0034】
更に、ビームシェーパー101は、レンズ112を備えている。
レンズ112は、凸レンズであり、ここでは平凸レンズである。
レンズ112の焦点距離f’は、レンズ2,102の焦点距離fに比べて十分に(例えば2倍以上)大きい。
レンズ112の凸面は、レンズ2の凸面と向かい合っており、レンズ2の凸面と隣接している。
レンズ2,102,112の光軸Lは揃えられており、ビームBの中心軸と一致している。
【0035】
レンズ2,102,112、及び光学薄膜フィルター4は、ケース120内に配置されている。ケース120は、レンズ102側でビームBを入れる上孔121と、レンズ112側でビームBを出す下孔122とを有している。尚、下孔122には、被加工物WOからの飛散物がケース120内に入り込まないように、透光性を有する窓板が設置されても良い。
ケース120内には、ピンホール板124が設置されている。ピンホール板124は、光軸Lと直交するように設けられている。ピンホール板124は、ピンホールPHを有する。ピンホール板124は、レンズ2,102の中間に配置されている。ピンホール板124のレンズ2,102に対する各距離は、互いに等しい。ピンホールPHは、光軸L上に配置されている。
【0036】
上孔121から入ったガウシアン型のビームBは、レンズ102により収束し、ピンホールPHで焦点F’を結んで(合焦して)下方に発散し、光学多層膜8に、入射する角度θが光軸Lからの距離dに応じた状態で入射する。
ビームBは、光学多層膜8によりフラットトップ型に変換され、光学多層膜8及び基材6を出て、レンズ2に至る。
発散するビームBは、レンズ2により平行光に戻され、レンズ112に達する。
ビームBは、フラットトップ型の断面強度分布のままレンズ112により収束され、下孔122から出て、焦点距離f’だけ離れた被加工物WOに当てられる。
被加工物WOは、収束され且つ断面強度分布がフラットトップ型に変換されたビームBにより加工される。
【0037】
第2形態のビームシェーパー101は、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ2,102,112と、を備えており、レンズ102は、ビームBを屈折して、光学薄膜フィルター4に対し入射させる。よって、光学薄膜フィルター4に対し、ビームBを、様々な入射の角度θを有する状態で入射させるレンズ102を備えた、製造容易で耐性の高いビームシェーパー101が提供される。
又、第2形態のビームシェーパー101では、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ2,102,112とが、ケース120に入れられている。よって、光学多層膜8等から出た反射光を始めとするビームBの散乱光がケース120の外部に放射される事態が防止され、散乱光によるレーザー発振器等(外部機器等)への影響の発生が抑制される。
更に、第2形態のビームシェーパー101では、光学薄膜フィルター4よりビームBの上流側に、ピンホールPHを有するピンホール板124が設けられており、レンズ102は、ピンホールPHにおいてビームBを合焦させる(焦点F’)。よって、ピンホール板124により、散乱光がビームBの上流側に戻る事態が防止され、散乱光によるレーザー発振器等への影響の発生が抑制される。又、被加工物WOに対してビームBを収束させるためのレンズ112は、短焦点距離のレンズ2より低廉な中焦点距離以上のものとすることが可能である。
【0038】
[第3形態]
図3(A)は、本発明の第3形態に係るビームシェーパー201の模式図である。
ビームシェーパー201は、レンズ202、及び第1形態と同様の光学薄膜フィルター4を備えている。
レンズ202は、凸レンズであり、平凸レンズである。レンズ202の平面は、被加工物WO側に配置される。光学薄膜フィルター4の光学多層膜8は、レンズ202の平面と対向して配置される。
レンズ202の焦点距離fは、第1形態のレンズ2の焦点距離fより長い。
尚、図3(B)に示されるように、レンズ202及び光学薄膜フィルター4は、レンズ202及びその平面に形成された光学多層膜8に置き換えることができる。この場合、第1形態の図1(B)の場合と同様な効果が発揮される。又、第3形態は、第1形態及び第2形態と同様の変更例を適宜有する。
【0039】
又、ビームシェーパー201は、レンズ212を備えている。
レンズ212は、凹レンズであり、ここでは凹面と平面とを有する平凹レンズである。レンズ212の焦点距離fは、負の値である。レンズ212の凹面には、発振されたビームBが入射し、レンズ212の平面から発散する。レンズ212は、ビームBの径を拡大する。尚、レンズ212は、両凹レンズ等であっても良い。
レンズ212は、レンズ202の上流に配置されている。レンズ212の平面は、レンズ202側に配置されている。
【0040】
更に、ビームシェーパー201は、レンズ222を備えている。
レンズ222は、凸レンズであり、ここでは平凸レンズである。
レンズ222の焦点距離fは、レンズ212の焦点距離fの絶対値より大きい。
レンズ222は、レンズ212,202の間であって、レンズ202に近い側に配置されている。レンズ222は、レンズ202に隣接している。レンズ222の凸面は、レンズ202の凸面と向かい合っている。
レンズ222の平面に入射したレンズ212からの発散光は、凸面で平行光となる。尚、レンズ222で発散度合が弱められても良い。
レンズ202,212,222の光軸Lは揃えられており、ビームBの中心軸と一致している。
レンズ212,222の組合せは、ガリレオ式である。
【0041】
レンズ202,212,222、及び光学薄膜フィルター4は、ケース230内に配置されている。ケース220は、レンズ212側でビームBを入れる上孔231と、レンズ112側でビームBを出す下孔232とを有している。尚、下孔232には、被加工物WOからの飛散物がケース220内に入り込まないように、透光性を有する窓板が設置されても良い。
【0042】
上孔231から入ったガウシアン型のビームBは、レンズ212により発散し、レンズ222で拡径された平行光となり、レンズ202で収束して、光学多層膜8に、入射する角度θが光軸Lからの距離dに応じた状態で入射する。
ビームBは、光学多層膜8によりフラットトップ型に変換され、光学多層膜8及び基材6を出て、下孔232から出、レンズ202から焦点距離fだけ離れた被加工物WOに当てられる。
被加工物WOは、収束され且つ断面強度分布がフラットトップ型に変換されたビームBにより加工される。
【0043】
第3形態のビームシェーパー201は、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ202,212,222と、を備えており、レンズ202は、ビームBを屈折して、光学薄膜フィルター4に対し入射させる。よって、光学薄膜フィルター4に対し、ビームBを、様々な入射の角度θを有する状態で入射させるレンズ202を備えた、製造容易で耐性の高いビームシェーパー201が提供される。
又、第3形態のビームシェーパー201では、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ202,212,222とが、ケース230に入れられている。よって、光学多層膜8等から出た反射光を始めとするビームBの散乱光がケース230の外部に放射される事態が防止され、散乱光によるレーザー発振器等への影響の発生が抑制される。
更に、第3形態のビームシェーパー201では、複数のレンズ212,222は、光学薄膜フィルター4よりビームBの上流側に配置されており、ビームBを拡径するものである。よって、光学多層膜8に対し角度θを付けてビームBを入射させるためのレンズ202に対し、拡径されたビームBが入射することとなり、短焦点距離のレンズ2より低廉な中焦点距離以上のレンズ202が用いられても、角度θの幅が十分に確保された(角度θの最大値θmaxが十分に大きい)状態でビームBが入射することとなり、中焦点距離以上のレンズ202が使用されても光学多層膜8の設計に余裕を持たせることができる。
【0044】
[第4形態]
図4(A)は、本発明の第4形態に係るビームシェーパー301の模式図である。
ビームシェーパー301は、第3形態におけるガリレオ式のレンズ212,222をケプラー式のレンズ312,222に代え、更にピンホール板334を追加した他、第3形態と同様に成る。
即ち、ビームシェーパー301は、第3形態の凹面を上流側に有するレンズ212に代わり、凸面を上流側に有するレンズ312を、上孔231側に有している。
レンズ312は、凸レンズであって、平凸レンズであり、ここではレンズ212の焦点距離fと正負のみ異なる焦点距離f’を有する。尚、レンズ312は、両凸レンズ等であっても良い。
【0045】
レンズ202,222,312の光軸Lは揃えられており、ビームBの中心軸と一致している。
レンズ312の凸面に入射したビームBは、平面を出て収束光となり、焦点F”を結んだ後で発散光となってレンズ222に至る。レンズ312は、焦点距離f’より遠方で、ビームBの径を拡大する。
ケース230内には、ピンホール板334が設置されている。ピンホール板334は、光軸Lと直交するように設けられている。ピンホール板334は、ピンホールPHを有する。ピンホール板334は、レンズ222,312の中間に配置されている。ピンホールPHは、光軸L上の焦点F”を含むように配置されている。
尚、図4(B)に示されるように、レンズ202及び光学薄膜フィルター4は、レンズ202及びその平面に形成された光学多層膜8に置き換えることができる。この場合、第1形態の図1(B)の場合と同様な効果が発揮される。又、第4形態は、第1形態ないし第3形態と同様の変更例を適宜有する。
【0046】
上孔231から入ったガウシアン型のビームBは、レンズ312により収束後に発散し、レンズ222で拡径された平行光となり、レンズ202で収束して、光学多層膜8に、入射する角度θが光軸Lからの距離dに応じた状態で入射する。
ビームBは、光学多層膜8によりフラットトップ型に変換され、光学多層膜8及び基材6を出て、下孔232から出、レンズ202から焦点距離fだけ離れた被加工物WOに当てられる。
被加工物WOは、収束され且つ断面強度分布がフラットトップ型に変換されたビームBにより加工される。
【0047】
第4形態のビームシェーパー301は、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ202,222,312と、を備えており、レンズ202は、ビームBを屈折して、光学薄膜フィルター4に対し入射させる。よって、光学薄膜フィルター4に対し、ビームBを、様々な入射の角度θを有する状態で入射させるレンズ202を備えた、製造容易で耐性の高いビームシェーパー301が提供される。
又、第4形態のビームシェーパー301では、光学薄膜フィルター4と、3つのレンズ202,222,312とが、ケース230に入れられている。よって、光学多層膜8等から出た反射光を始めとするビームBの散乱光がケース230の外部に放射される事態が防止され、散乱光によるレーザー発振器等への影響の発生が抑制される。
更に、第4形態のビームシェーパー301では、光学薄膜フィルター4よりビームBの上流側に、ピンホールPHを有するピンホール板334が設けられており、レンズ312は、ピンホールPHにおいてビームBを合焦させる(焦点F”)。よって、ピンホール板334により、散乱光がビームBの上流側に戻る事態が防止され、散乱光によるレーザー発振器等への影響の発生が抑制される。又、被加工物WOに対してビームBを収束させるためのレンズ202は、短焦点距離のレンズ2より低廉な中焦点距離以上のものとすることが可能である。
又更に、第4形態のビームシェーパー301では、複数のレンズ222,312は、光学薄膜フィルター4よりビームBの上流側に配置されており、ビームBを拡径するものである。よって、光学多層膜8に対し角度θを付けてビームBを入射させるためのレンズ202に対し、拡径されたビームBが入射することとなり、短焦点距離のレンズ2より低廉な中焦点距離以上のレンズ202が用いられても、角度θの幅が十分に確保された状態でビームBが入射することとなり、中焦点距離以上のレンズ202が使用されても光学多層膜8の設計に余裕を持たせることができる。
【0048】
そして、上記第1~第4形態の何れにも存在する変更例において(図1(B),図2(B),図3(B),図4(B))、光学薄膜フィルター4及び1つのレンズ(第1,第2形態:レンズ2、第3,第4形態:レンズ202)に代えて、光学多層膜8を表面R’に成膜した1つのレンズ(第1,第2形態:レンズ2、第3,第4形態:レンズ202)が配置されている。
この場合、ビームBの断面強度分布の変更が可能である光学薄膜フィルター4による収差が、最低限まで抑制される。
【実施例
【0049】
次に、本発明の上記実施形態に準じた実施例が示される。
但し、実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。特に、実施例におけるビームBの波長は、1064nm、355nmとされているところ、本発明におけるビームBの波長は、これらのものに限られない。
又、本発明の捉え方により、実施例が、本発明の範囲外となる実質的な比較例となったり、比較例が、本発明の範囲内である実質的な実施例となったりすることがある。
【0050】
[実施例1:フラットトップ裾有り型1]
≪構成等≫
本発明に係る実施例1として、上記第1形態におけるガウシアン型からフラットトップ型(フラットトップ裾有り型)への変換フィルターとしての光学多層膜8を含むビームシェーパー1に属するものが形成された。
各種の値は、次の表1に示される通りである。光学多層膜8の各層(奇数層:Ta,偶数層:SiO)の物理膜厚は、図5に示される通りである。反射防止膜10の各層(奇数層:SiO,偶数層:Ta)の物理膜厚は、図6に示される通りである。
【0051】
【表1】
【0052】
≪直線偏光と入射位置等≫
図7は、レンズ2及び光学薄膜フィルター4をレンズ2の上方からみた模式図であって、ビームBが直線偏光する場合の図である。図7において、x軸は、レンズ2の光軸Lと直交しており、直線偏光の方向にとられる。又、y軸は、レンズ2の光軸L及びx軸と直交するようにとられる。
ビームBの中心軸は、光軸L(z軸)と一致した状態で、図7の紙面手前から奥方向(z軸+方向)へ進む。ビームBは、レンズ2で焦点Fに向かい屈折されて、光学薄膜フィルター4(光学多層膜8)に角度θで入射する。
光学多層膜8に対して、xz平面P1内で入射するビームBは、p偏光となる。より詳しくは、ビームBの全強度に対するp偏光強度比が1で、s偏光強度比が0となる。
一方、光学多層膜8に対して、yz平面P2内で入射するビームBは、s偏光となる。より詳しくは、p偏光強度比が0で、s偏光強度比が1となる。
他方、xz平面がz軸周り(図7の反時計回り)で方位角φだけ回転した平面P3内で入射するビームBは、p偏光及びs偏光が共存したものとなる。より詳しくは、ビームBの動径方向成分(cosφに比例)がp偏光となり、方位角方向成分(sinφに比例)がs偏光となり、p偏光強度比が(cosφ)で、s偏光強度比が(sinφ)となる。
光学多層膜8通過後において光軸Lの周りで強度が対称なビームBとする観点からは、光学多層膜8の透過率特性は、p偏光とs偏光とで同じであることが好ましい。又、光学多層膜8通過後において通過前の偏光状態を維持する観点からは、光学多層膜8の透過率特性は、通過前後でのp偏光とs偏光との位相差が0であることが好ましい。
光学多層膜8の特性が、その設計及び製造の少なくとも一方によって好ましい状態からの差を生じると、直線偏光のビームBは、光学多層膜8の通過により、楕円偏光になる。
【0053】
≪円偏光と入射位置等≫
図8は、ビームBが円偏光する場合の図7同様図である。
円偏光の場合、p偏光成分とs偏光成分との比は、常に1:1となる。
よって、円偏光は、光学多層膜8の光学特性がp偏光に対するものとs偏光に対するものとで同等で、且つ光学多層膜8の通過後のp偏光とs偏光との位相差が0であると、保存される。
光学多層膜8の特性が、その設計及び製造の少なくとも一方によって好ましい状態からの差を生じると、円偏光のビームBは、光学多層膜8の通過により、楕円偏光になる。
レーザー加工において、直線偏光あるいは楕円偏光のビームBで切断した場合、被加工物WOに入射するビームBの偏光方向に依存して光の吸収が異なる結果、加工方向により加工幅,表面粗さ等の加工品質が異なってしまうこと、及びこれを回避するために異方性のない円偏光のビームBで加工すれば良いことが知られている。かような観点からは、光学多層膜8は、円偏光のビームBを円偏光のまま通過させることが好ましく、実施例1の光学多層膜8は、この観点に鑑みて設計されている。
【0054】
円偏光のビームBが光学多層膜8においてどの程度円偏光の状態を保持して通されたかに関係する指標として、ここでは楕円率が示される。
図9は、楕円率に関する模式図であり、光学多層膜8通過後のビームB(楕円偏光)における電場ベクトルの軌道の一例を示すグラフである。図9中、Eはp偏光の電場であり、Eはs偏光の電場である。電場ベクトルの軌道に係る楕円の中心は、EとEとの交点(原点)を通る。
光学多層膜8通過前に次の式(6)の電場を有するビームBが、光学多層膜8通過後、図9に示されるように、次の式(7)の電場を有したとする。ここで、aは光学多層膜8通過前のEの振幅であり、aは光学多層膜8通過前のEの振幅であり、ωは周波数であり、Δは偏光状態を表すパラメータ(0°で直線偏光,+90°で受光する側からみて右回りの円偏光)であり、Tは光学多層膜8のs偏光に対する透過率であり、Tは光学多層膜8のs偏光に対する透過率であり、Δは透過位相差、即ちp偏光とs偏光との位相差δ-δである。
【0055】
【数5】
【0056】
つまり、光学多層膜8通過後のビームBに係る電場ベクトルの軌道は、Eに対して偏光方位角ψだけ図9の反時計回りで回転したEξの方向において振幅a’=a√Tで振動し、Eに対して偏光方位角ψだけ図9の反時計回りで回転したEηの方向において振幅a’=a√Tで振動するものとなる。
そして、楕円率kが、(a’,a’)、あるいはEξη平面における原点から(a’,a’)への線分とEξ軸との角度である楕円率角χにより、式(8),(9)で表される。
【0057】
【数6】
【0058】
楕円率kは、1であれば右回りの円偏光を示し、0であれば直線偏光を示し、-1であれば左回りの円偏光を示す。
尚、偏光方位角ψは次の式(10)で示され、Eξ軸は次の式(11)で示され、Eη軸は次の式(12)で示される。
【0059】
【数7】
【0060】
楕円率kは、直線偏光が光学多層膜8においてどの程度直線偏光の状態を保持して通されたかに関係する指標としても用いることができる。
即ち、直線偏光が楕円率k=0であるところ、変換後でも直線偏光を完全に維持していれば楕円率kは0のままであるし、変換後に楕円偏光となれば、楕円率kが大きいほど直線偏光からかけ離れることになる。
【0061】
≪直線偏光における変換等≫
図10は、実施例1の光学多層膜8に対し、ビームBが、1064nmを含む波長域での各波長において角度θ=0°で入射する場合の分光透過率分布を示すグラフである。
実施例1の光学多層膜8は、波長1064nmのビームB(Nd:YAG(Neodymium:Yttrium Aluminum Garnet)レーザー基本波長)に対して設計されている。図10において、波長1064nmでの透過率は50%であり、波長1064±10nmにおいて、透過率は5%から95%程度まで比例的に単調増加し、波長1064+10nm以上で、透過率が100%に近い(95%以上である)状態が、波長1100nm程度まで続いている。透過率特性は、入射する角度θの増加と共に短波長側へシフトする。そして、短波長側へシフトした場合の波長1064nmでの透過率は、シフト量(角度θ)の増加と共に上昇していき、所定の角度θ以上で100%に近い状態となる。
【0062】
図11は、実施例1の光学多層膜8に対し、波長1064nmのビームBが、角度θ(横軸)で入射する場合の透過率の目標値T(θ),p偏光に対する透過率T,s偏光に対する透過率T,位相差Δ(縦軸)を示すグラフである。
光学多層膜8の設計において、角度θで変化する透過率の目標値T(θ)として、入射の角度θ=0°で透過率が50%であり、θ=9°強までガウシアン型の断面強度分布の頂部の曲線を打ち消すように透過率が単調増加し、その角度以降、透過率が100%で維持されるものが設定される。
その目標値T(θ)に対し、光学多層膜8の実際の透過率T(θ)は、p偏光に対する透過率T及びs偏光に対する透過率Tの双方共に、十分に近づいたものとなっている。
尚、厳密には、入射の角度θが3°程度以上となると、透過率T,Tのズレが生じ、又位相差Δも0°から離れていくため、透過率の偏光依存性が見られるようになる。
【0063】
図12は、波長1064nmのビームBにおける、空間座標(横軸)と、実施例1の光学多層膜8に係る透過率の目標値T(θ),p偏光に対する透過率T,s偏光に対する透過率T,入射の角度θ(縦軸)との関係を示すグラフである。図12は、光学多層膜8を透過した直後のビームBについて表されている。このビームBの空間分布は、被加工物WOに至るまで、収束により、光軸Lを中心として相似的に縮小されていく。かような透過直後の事項、及び縮小の事項は、以下、適宜同様に当てはまる。
空間座標は、光軸Lに垂直なある放射方向における距離dの点と、その反対方向における距離dの点にマイナスをつけた点との集合で表される。例えば、方位角φの平面内の光軸Lに垂直な直線上で、一方の光軸Lからの距離dの点が空間座標+dとされ、他方の距離dの点が空間座標-dとされる。
光学多層膜8の透過率の目標値T(θ)は、空間座標が±5mm程度内である領域、即ち光軸Lを中心とする半径5mm程度の円内領域において、ガウシアン型と横軸を中心に対称となる状態で、距離dの絶対値に対して単調増加している。これに対し、p偏光に対する透過率T,s偏光に対する透過率Tは、十分に近づいている。
【0064】
図13(A),(B),(C)は、方位角φが順に0°,45°,90°である平面における直線偏光したビームBの、空間座標に対する、変換前後及び目標値に係る断面強度分布(変換前の最大強度を1とした相対強度の分布)、並びに楕円率分布を示すグラフである。
断面強度分布の目標値は、透過率が目標値T(θ)であった場合の光学多層膜8を通過したビームBの断面強度分布である。
光学多層膜8の断面強度分布は、どの方位角φでも、概ね断面強度分布の目標値に対し、一致又は隣接するように追従できている。
厳密には、光学多層膜8では、方位角φにより、s偏光及びp偏光に対する透過率特性に差異があるため、ビームBの断面強度分布は、方位角φにより異なっている。
光学多層膜8通過後の楕円率kは、方位角φ=0°,90°では空間座標によらず常に0であるものの、方位角φがそれら以外の値であると、光軸Lから離れるほど増加していく。
【0065】
図14は、ビームBが進む方向に向かってみたビームBの断面図に、極座標(d,φ)における所定の軸及び点を重ねた模式図である。
図15(A)は、図14で表された点(0,0)における直線偏光したビームBの、実施例1の光学多層膜8での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフであり、図15(B)~(F)は、順に点(2,0)、(2,22.5)、(2,45)、(2,67.5)、(2,90)における直線偏光したビームBの、実施例1の光学多層膜8での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
図16(A)~(E)は、順に点(4,0)、(4,22.5)、(4,45)、(4,67.5)、(4,90)における直線偏光したビームBの、実施例1の光学多層膜8での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
図17(A)~(E)は、順に点(10,0)、(10,22.5)、(10,45)、(10,67.5)、(10,90)における直線偏光したビームBの、実施例1の光学多層膜8での変換前後の電場ベクトルの軌道を示すグラフである。
【0066】
図15(A)で示されるように、(0,0)即ちレンズ2の中心を通る直線偏光したビームBの部分は、光学多層膜8に垂直に入射する。よって、当該部分の偏光は関係せず、当該部分の楕円率kは変換前後で0である。
図15図17で示されるように、何れの距離dにおいても、方位角φ=45°で変換後の楕円率kが最大となる。又、0°及び90°を除く何れの方位角φにおいても、距離d=2(光軸Lから2.0mm)に対してd=4で楕円率kが大きくなる。
光学多層膜8通過後の楕円率kは、図15図17中ビームBの断面強度分布の裾部分(d=10mm)を除く中央部分(有効断面領域)において最大となる(4,45)の点でも0.074であり、即ち楕円率kの変換前(k=0)に対する変換後の最大(k=0.074)の変化量は0.074であり、直線偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で十分に維持される。
【0067】
≪円偏光における変換等≫
図18(A)~(C)は、円偏光したビームBに対する実施例1による変換に係る図13(A)~(C)と同様のグラフである。
光学多層膜8の断面強度分布は、円偏光に対しても、どの方位角φでも、概ね断面強度分布の目標値に対し、一致又は隣接するように追従できている。
厳密には、光学多層膜8では、円偏光に対しては、方位角φの方向では断面強度及び楕円率の双方共に方向依存性がない。一方、距離dの方向ではs偏光に対する差異及びp偏光に対する差異があり、断面強度及び楕円率の双方共に方向依存性が存在する。
光学多層膜8通過後の楕円率kは、方位角φによらず、空間座標=0(光軸L上)では常に1(円偏光)であるものの、光軸Lから離れるほど減少していく。
【0068】
図19図21は、円偏光したビームBに対する実施例1による変換に係る図15図17と同様のグラフである。
図19図21で示されるように、距離dが一定であれば、何れの方位角φにおいても光学多層膜8通過後の楕円率kは一定である。又、楕円率kは、光軸L上で1であり、距離dが大きくなるほど小さくなる。
楕円率kは、図19図21中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=4.0mmで0.852であり、楕円率kの変換前(k=1)に対する変換後の最大(k=0.852)の変化量は1-0.852=0.148であり、円偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で十分に維持される。
尚、楕円率kの変化量(楕円率変化量)は、種々のシミュレーション等により、直線偏光及び円偏光といった偏光状態に関わらず、0.5以下に収まれば、ビームBの断面強度分布の変換による影響を被加工物WO等に及ぼし難くなり、好ましいことが判明している。
【0069】
[実施例2:フラットトップ裾有り型2]
≪構成等≫
本発明に係る実施例2として、上記第1形態におけるガウシアン型からフラットトップ型への変換フィルターとしての光学多層膜8を含むビームシェーパー1に属するものが形成された。
各種の値は、次の表2に示される通りである。
光学多層膜8の各層(奇数層:Ta,偶数層:SiO)の物理膜厚は、図22に示される通りである。光学多層膜8の層数は、実施例1,2で変わらないものの、実施例2の各層の物理膜厚は、総じて実施例1より増えている。
反射防止膜10は、実施例1と同じである。
【0070】
【表2】
【0071】
≪直線偏光における変換等≫
図23は、実施例2に係る図10同様図である。図24は、実施例2に係る図11同様図である。図25は、実施例2に係る図12同様図である。
実施例2の光学多層膜8は、波長1064nmのビームB(Nd:YAGレーザー基本波長)に対して設計されている。
実施例2の光学多層膜8における透過率特性は、大要実施例1と同様であり、更にp偏光に対する透過率Tとs偏光に対する透過率Tとの差異が、様々な角度θ及び空間座標にわたって実施例1より小さくなったものである。特に、フラットトップ型断面強度分布の中央部(フラット部)に対応する入射の角度θ≦10°程度の領域で、位相差Δが殆ど0であり、変換前後での偏光状態が保存される透過率特性が確保される。
又、波長1064+10nm程度以上波長1100nm程度までの波長域で、透過率が実施例1より更に100%に近づいている。
【0072】
図26は、本発明の実施例2(直線偏光)に係る図13同様図である。
図27図29は、本発明の実施例2(直線偏光)に係る図15図17と同様の図である。
実施例2の光学多層膜8におけるs偏光とp偏光との透過率特性の差異は、実施例1の光学多層膜8における当該差異より小さいため、実施例2の光学多層膜8を通過したビームBの断面強度は、実施例1の当該断面強度より更に等方的になる。
又、実施例2の位相差Δは、実施例1の位相差Δより小さいため、実施例2における楕円率kの変化は、実施例1における当該変化より小さくなる。
即ち、楕円率kは、図27図29中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=4.0mmで最大0.005であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.005であり、直線偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0073】
≪円偏光における変換等≫
図30図33は、実施例2(円偏光)に係る図18図21と同様の図である。
円偏光においても、実施例2の位相差Δが実施例1の位相差Δより小さいことにより、実施例2における楕円率kの変化は、実施例1における当該変化より小さくなる。
即ち、楕円率kは、図31図33中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=4.0mmで0.989であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.011であり、円偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0074】
[実施例3:フラットトップ裾切り型]
≪構成等≫
本発明に係る実施例3として、上記第1形態におけるガウシアン型からフラットトップ型への変換フィルターとしての光学多層膜8を含むビームシェーパー1に類するものが形成された。ここで、実施例3では、ガウシアン型をフラットトップ裾切り型に変換するものである。フラットトップ裾切り型は、フラットトップ型における中央部分の断面強度分布を残して裾部分の断面強度分布を0とした(0に近づけるものを含む)もので、ここでは光軸Lを中心として全幅2√(2ln2)σ以内で強度が一定となり(中央部分)、全幅2√(2ln2)σ外で強度が0となる(裾部分)ものである。フラットトップ裾切り型は、フラットトップ型の一種である。即ち、フラットトップ型には、フラットトップ裾有り型とフラットトップ裾切り型とが含まれる。
各種の値は、次の表3に示される通りである。
光学多層膜8の各層(奇数層:Ta,偶数層:SiO)の物理膜厚は、図34に示される通りである。光学多層膜8の層数は、実施例1,2より増えている。
反射防止膜10は、実施例1と同じである。
【0075】
【表3】
【0076】
≪直線偏光における変換等≫
図35は、実施例3に係る図10同様図である。図36は、実施例3に係る図11同様図である。図37は、実施例3に係る図12同様図である。
実施例3の光学多層膜8は、波長1064nmのビームB(Nd:YAGレーザー基本波長)に対して設計されている。
実施例3の光学多層膜8における透過率特性は、波長約1070nmまでは実施例2と同様であり、更に約1070nmで透過率が100%付近から0%まで急激に低下し、更に長波長側で透過率0%が維持されるようなものである。
【0077】
図38は、本発明の実施例3(直線偏光)に係る図13同様図である。
実施例3の光学多層膜8は、何れの方位角φにおいても、ビームBの断面強度分布の目標値に十分に追従している。厳密には、透過率を極めて狭い波長域内で100%近くから0%まで急激に落とすフィルターの構成は一般に困難であり、変換後のビームBの断面強度分布は、断面強度分布の目標値における垂直に近い透過率分布の部分に対して、多少のなまりが存在する。
図39図41は、本発明の実施例3(直線偏光)に係る図15図17と同様の図である。
実施例3の光学多層膜8におけるs偏光とp偏光との透過率特性の差異は、十分に小さいため、実施例3の光学多層膜8を通過したビームBの断面強度分布は、十分に等方的である。
又、実施例3の位相差Δは、十分に小さいため、実施例3における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図39図41中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=2.0mmで最大0.008であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.008であり、直線偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0078】
≪円偏光における変換等≫
図42図45は、実施例3(円偏光)に係る図18図21と同様の図である。
円偏光においても、実施例3の位相差Δが十分に小さいことにより、実施例3における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図43図45中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=2.0mmで0.985であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.015であり、円偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
又、距離d=10mm(図45)における変換後のビームBの電場ベクトル軌道は、殆ど0になっており、フラットトップ裾切り型における裾切りの作用が現れている。
【0079】
[実施例4:フラットトップ裾有り型3]
≪構成等≫
本発明に係る実施例4として、上記第1形態におけるガウシアン型からフラットトップ型への変換フィルターとしての光学多層膜8を含むビームシェーパー1に属するものが形成された。
各種の値は、次の表4に示される通りである。
光学多層膜8の各層(奇数層:HfO,偶数層:SiO)の物理膜厚は、図46に示される通りである。
反射防止膜10の各層(奇数層:SiO,偶数層:HfO)の物理膜厚は、図47に示される通りである。
実施例4の光学多層膜8は、波長355nmのビームB(Nd:YAGレーザー第3高調波)に対して設計されている。FWHMは実施例1~3より狭く、レンズ2の外径及び焦点距離fは実施例1~3より小さく、θmaxは実施例1~3より大きい。
【0080】
【表4】
【0081】
≪直線偏光における変換等≫
図48~50は、実施例4に係る図10図12と同様の図である。
図48において、実施例4の光学多層膜8における波長355nmでの透過率は50%であり、波長355±5nmにおいて、透過率は10%から98%程度まで比例的に単調増加し、波長355+5nm以上で、透過率が100%に近い(96%以上である)状態が、波長373nm程度まで続いている。透過率特性は、入射する角度θの増加と共に短波長側へシフトする。そして、短波長側へシフトした場合の波長355nmでの透過率は、シフト量(角度θ)の増加と共に上昇していき、所定の角度θ以上で100%に近い状態となる。
【0082】
図51は、本発明の実施例4(直線偏光)に係る図13同様図である。
実施例4の光学多層膜8は、何れの方位角φにおいても、ビームBの断面強度分布の目標値(θmax=31.1°程度までのもの)に十分に追従している。
図52図54は、本発明の実施例4(直線偏光)に係る図15図17と同様の図である。但し、それぞれd=2に対応する点(2,0)、(2,22.5)、(2,45)、(2,67.5)、(2,90)に代えて、それぞれd=0.5に対応する点(0.5,0)、(0.5,22.5)、(0.5,45)、(0.5,67.5)、(0.5,90)におけるものが示され、同様に、それぞれd=4に対応する各点に代えてd=1.0に対応する各点におけるものが示され、又それぞれd=10に対応する各点に代えてd=2.5に対応する各点におけるものが示される。この点、後述する実施例4の円偏光においても同様である。
実施例4の光学多層膜8におけるs偏光とp偏光との透過率特性の差異は、十分に小さいため、実施例4の光学多層膜8を通過したビームBの断面強度分布は、十分に等方的である。
又、実施例4の位相差Δは、十分に小さいため、実施例4における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図52図54中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=1.0mmで最大0.011であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.011であり、直線偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0083】
≪円偏光における変換等≫
図55図58は、実施例4(円偏光)に係る図18図21と同様の図である。
円偏光においても、実施例4の位相差Δが十分に小さいことにより、実施例4における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図56図58中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=1.0mmで0.978であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.022であり、円偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0084】
[実施例5:ドーナツ型]
≪構成等≫
本発明に係る実施例5として、上記第1形態におけるビームシェーパー1に類するものが形成された。実施例5の光学多層膜8は、フラットトップ裾切り型をドーナツ型に変換するものである。ドーナツ型は、フラットトップ裾切り型における強度が0以外でフラットとなった部分内に、強度が落ち込む中央強度低下部分を有するもので、ここでは光軸Lを中心として全幅2mm程度(光軸Lから±1mm程度)以内である円柱状部分で強度が0となり(穴部分)、その外側で光軸Lを中心として外径全幅2√(2ln2)σ以内で強度が一定となり(中央部分)、全幅2√(2ln2)σ外で強度が0となるものである。ドーナツ型では、穴部分を除く中央部分が、有効断面領域となる。ドーナツ型の断面強度分布を有するビームBは、例えば穴部分に相当する形状を有する微細な突起を加工する際に用いられる。尚、光学多層膜8は、フラットトップ裾有り型をドーナツ型に変換するもの等であっても良い。
実施例5における各種の値は、次の表5に示される通りである。
又、光学多層膜8の各層(奇数層:HfO,偶数層:SiO)の物理膜厚は、図59に示される通りである。光学多層膜8の層数は、実施例4より増えている。
実施例4の光学多層膜8は、波長355nmのビームB(Nd:YAGレーザー第3高調波)であって断面強度分布がフラットトップ裾切り型に調整されたもの対して設計されている。
反射防止膜10は、実施例4と同じである。
【0085】
【表5】
【0086】
≪直線偏光における変換等≫
図60図62は、実施例5に係る図10図12と同様の図である。
実施例5の光学多層膜8における透過率特性は、波長約355nmまでの短波長域で透過率が0%あるいは0%に近く、波長約355nmから+2nmの狭い波長域で透過率が急激に100%近く(95%程度)まで上昇し、波長約355+2nmより長波長側で透過率が100%近くに維持されるようなものである。
【0087】
図63は、本発明の実施例5(直線偏光)に係る図13同様図である。
実施例5の光学多層膜8は、何れの方位角φにおいても、ビームBの断面強度分布の目標値に十分に追従している。厳密には、透過率を極めて狭い波長域内で0%近くから100%まで急激に上げるフィルターの構成は一般に困難であり、変換後のビームBの断面強度分布は、断面強度分布の目標値における垂直に近い透過率分布の部分に対して、多少のなまりが存在する。
図64図65は、本発明の実施例5(直線偏光)に係る図52図53と同様の図である。尚、実施例5において、距離d=3.0では、何れの方位角φにおいても変換前後で電場がなかったため、d=3.0に係る図(図54に相当する図)は、実施例5では省略される。この点、実施例5の円偏光の場合においても同様である。
実施例5の光学多層膜8では、光軸Lに近い距離d=0.5の各点において(図64)、変換前の電場ベクトルの軌道が変換後において縮小されている。かような縮小は、ドーナツ型の穴部分の形成の現れである。他方、実施例5の光学多層膜8では、光軸Lからやや離れた距離d=1.5の各点において(図65)、変換前の電場ベクトルの軌道が変換後においても比較的に維持されている。かような維持は、ドーナツ型の有効断面領域部分の形成の現れである。
実施例5の光学多層膜8におけるs偏光とp偏光との透過率特性の差異は、特に空間座標が±3mm以内の領域で十分に小さいため、実施例5の光学多層膜8を通過したビームBのドーナツ型の断面強度分布は、十分に等方的である。
又、実施例5の位相差Δは、十分に小さいため、実施例5における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図64図65中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=1.5mmで最大0.021であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.021であり、直線偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0088】
≪円偏光における変換等≫
図66は、実施例5(円偏光)に係る図18同様図である。
図67図68は、実施例5(円偏光)に係る図56図57と同様の図である。
実施例5の光学多層膜8では、円偏光においても、光軸Lに近い距離d=0.5の各点において(図67)、変換前の電場ベクトルの軌道が変換後において縮小されており、又光軸Lからやや離れた距離d=1.5の各点において(図68)、変換前の電場ベクトルの軌道が変換後においても維持されている。
更に、円偏光においても、実施例5の位相差Δが十分に小さいことにより、実施例5における楕円率kの変化は、十分に小さくなる。即ち、楕円率kは、図67図68中ビームBの断面強度分布の中央部分(有効断面領域)に属するd=1.5mmで0.958であり、楕円率kの変換前に対する変換後の最大の変化量は0.042であり、円偏光したビームBの偏光状態は、特に中央部分において、変換前後で極めて精度の良い状態で維持される。
【0089】
実施例5では、光学多層膜8に入射する前のビームBの断面強度分布は、フラットトップ型であり、光学多層膜8により変換されたビームBの断面強度分布は、ドーナツ型である。
よって、微小な突起を加工可能なドーナツ型のビームBが、製造容易で長寿命な光学薄膜フィルター4により実現される。
【符号の説明】
【0090】
1,101,201,301・・ビームシェーパー、2,102,112,202,212,222,312・・レンズ、4・・光学薄膜フィルター、6・・基材、8・・光学多層膜、120,230・・ケース、124,334・・ピンホール板、B・・ビーム(光線)、PH・・ピンホール、R・・(基材6の)表面、R’・・(レンズ2の)表面、WO・・被加工物、θ・・角度(入射角度)、θmax・・(角度θの)最大値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図39
図40
図41
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図44
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図59
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