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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】定量分配器
(51)【国際特許分類】
   F16N 25/00 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
F16N25/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151816
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046007
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000195100
【氏名又は名称】株式会社 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大鷹 英雄
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-130592(JP,A)
【文献】特開2019-065905(JP,A)
【文献】実開昭61-020973(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 1/00-99/00
F16K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給油と脱圧を交互に繰り返す給油ポンプの一次側配管からの潤滑剤が供給される注入部と被給油箇所に至る二次側配管が接続される吐出部とを有するシリンダと、
内部が潤滑剤通路で上記注入部と上記吐出部の間に配置される導油管と、
中心部に上記導油管が挿通され上記シリンダ内で上記注入部側寄りの始端位置と上記吐出部側寄りの終端位置との間を往復動するピストンおよび上記ピストンをその背部側から上記始端位置に向けて付勢するバネ手段と、
上記注入部と上記導油管の一端側との間に形成された上記シリンダの内径よりも小径で上記シリンダに連通する中継室と、
上記中継室内に配置され上記給油ポンプの給油時の圧力と脱圧時の圧力に応じて流路を切り換える傘型弁とを備え、
上記シリンダ内が上記ピストンによりその頭部側が計量室、背部側が蓄油室に区画されているとともに、上記導油管には上記蓄油室に連通する横孔が形成されており、
上記給油ポンプからの給油時には、上記傘型弁により、上記導油管の一端側が塞がれた状態で上記潤滑剤が上記注入部から上記中継室を介して上記計量室に流れ上記ピストンが上記始端位置から上記バネ手段の付勢力に抗して上記終端位置に向けて押し上げられる第1流路が形成され、
上記給油ポンプの脱圧時には、上記傘型弁により、上記第1流路が閉じられるとともに上記導油管の一端側が開かれ上記バネ手段により上記ピストンが上記始端位置に向けて押し戻されて上記計量室内の上記潤滑剤が上記導油管内および上記横孔を介して上記蓄油室へと流れる第2流路が形成され、
次の上記給油ポンプからの給油時に、上記第1流路が形成されるとともに、上記脱圧時に上記蓄油室内に貯留された潤滑剤が上記横孔から上記導油管内を流れて上記吐出部から上記二次側配管に吐出される第3流路が形成される吐出方式が先出し方式の定量分配器において、
上記横孔を塞いで上記蓄油室と上記導油管とを遮断し、上記給油ポンプの脱圧時に上記計量室内の上記潤滑剤を上記導油管から上記吐出部に向けて流して吐出方式を後出し方式に変更する吐出方式変更手段を備えていることを特徴とする定量分配器。
【請求項2】
上記吐出方式変更手段として、上記吐出部から上記導油管内に上記横孔を塞ぐ位置にまで嵌め込まれる閉塞用のパイプが用いられることを特徴とする請求項1に記載の定量分配器。
【請求項3】
上記閉塞用のパイプが所定の軸長を有する金属パイプよりなることを特徴とする請求項2に記載の定量分配器。
【請求項4】
上記閉塞用のパイプとして、上記吐出部に接続される吐出チューブの一端部分が用いられることを特徴とする請求項2に記載の定量分配器。
【請求項5】
上記シリンダは上記吐出部に吐出ニップルを備え、上記吐出ニップルには上記導油管の他端が差し込まれ上記横孔の周りを所定の隙間をもって囲む上記導油管よりも大径のスリーブが形成されており、上記第2流路の形成時には上記潤滑剤が上記横から上記スリーブ内を通って上記蓄油室に至り、上記第3流路形成時には上記蓄油室から上記スリーブ内および上記横孔を経て上記吐出ニップルの吐出口に至るスリーブ内流路が含まれている態様において、
上記吐出方式変更手段として、上記横孔よりも下方の位置で上記スリーブ内流路を塞ぐOリングが用いられることを特徴とする請求項1に記載の定量分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤の供給システムにおいて、給油ポンプから供給される潤滑剤を所定量計量して被給油箇所に供給する定量分配器に関し、さらに詳しく言えば、吐出方式を変更する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、射出成型機等の各種工作機械においては、その軸受部等の作動箇所が焼き付けやかじり等を起こさないように、適時、所定量の潤滑剤を供給する必要がある。これには定量分配器が用いられる。なお、本明細書において、潤滑剤には液状のオイルと呼ばれる潤滑油のほかに粘度の高いグリースも含まれる。
【0003】
定量分配器は、給油と脱圧とを交互に繰り返す給油ポンプに接続されて使用されるが、その吐出方式には、先出し方式(例えば、特許文献1の図9,10参照)と後出し方式(例えば、特許文献2参照)とがある。
【0004】
先出し方式、後出し方式ともに、基本的な構成として、筐体としてのシリンダを備えている。シリンダの一端側は給油ポンプからの一次側配管に接続される注入部になっており、シリンダの他端側には吐出部を有する吐出ニップルが取り付けられている。吐出部には被給油箇所に至る二次側配管が接続される。
【0005】
通常、注入部と吐出部は同軸で、シリンダ内において、これらのポート間には内部が潤滑剤通路となる導油管が配置されている。シリンダ内には、ピストンおよびピストンを注入部側の始端位置に向けて付勢するコイルスプリングが設けられている。ピストンの中心部には導油管が挿通されており、ピストンは導油管に沿って始端位置と終端位置との間で往復動する。
【0006】
注入部と導油管の一端側との間には、シリンダの内径よりも小径でシリンダ内に連通する中継室が形成されており、中継室内には給油ポンプの給油時の圧力と脱圧時の圧力に応じて流路を切り換える傘型弁が設けられている。
【0007】
傘型弁は給油ポンプの給油時の圧力によって押し上げられ、導油管の一端側を塞ぐとともに裾部(スカート部)が縮径し中継室の壁面から離れる。これにより、第1流路として、潤滑剤が注入部から中継室を介してシリンダ内に流れ込み、コイルスプリングの付勢力に抗してピストンを始端位置から終端位置に向けて押し上げる。
【0008】
そして、ピストンが終端位置に達した時点で、ピストンの頭部側のシリンダ内が計量室として潤滑剤の一定量が計量される。
【0009】
次に、給油ポンプが脱圧状態になると、ピストンがコイルスプリングによって押し戻される。これにより、傘型弁が導油管の一端側から離れるとともに裾部が拡径して中継室の壁面に密着するため、第1流路が閉じられる一方で計量室内の潤滑剤が導油管内に向けて流れる第2流路が形成される。
【0010】
後出し方式の場合は、潤滑剤がこのまま導油管を通って吐出部に向けて流れるが、先出し方式になると、ピストンの背部側(頭部とは反対側)が蓄油室として用いられるとともに、導油管に潤滑剤を蓄油室に流す横孔が設けられる。
【0011】
すなわち、先出し方式では、給油ポンプの脱圧時に計量室内の潤滑剤が導油管内を通って横孔から蓄油室内に流れ、潤滑剤の一定量が蓄油室内に一旦貯められる。
【0012】
そして、次の給油ポンプからの給油時に、傘型弁が押し上げられ導油管の一端側が閉じられ、その裾部が縮径して上記第1流路が形成されるとともに、ピストンの上昇によって脱圧時に蓄油室内に貯留された潤滑剤が横孔から導油管内を流れて吐出部から二次側配管に吐出される第3流路が形成される。
【0013】
すなわち、後出し方式の場合には、給油ポンプの脱圧時にシリンダ内のコイルスプリングの付勢力によって潤滑剤が吐出されるため低圧吐出となり、これに対して、先出し方式の場合には、給油ポンプの給油圧力によって潤滑剤が吐出されるため高圧吐出となる。
【0014】
低圧吐出とするか、高圧吐出とするかは被給油箇所の状況等に応じて選択されるが、メーカー側では、ユーザーの注文に適時に応じられるように、後出し方式の定量分配器と先出し方式の定量分配器の両機種を相当数在庫しておく必要がある。しかしながら、これには在庫管理等が難しい、という問題がある。こうしたことから、容易に機種変更できることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2000-199598号公報(図9,10参照)
【文献】実公平03-20640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、先出し方式の定量分配器を容易に後出し方式の定量分配器に変更できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、給油と脱圧を交互に繰り返す給油ポンプの一次側配管からの潤滑剤が供給される注入部と被給油箇所に至る二次側配管が接続される吐出部とを有するシリンダと、内部が潤滑剤通路で上記注入部と上記吐出部の間に配置される導油管と、中心部に上記導油管が挿通され上記シリンダ内で上記注入部側寄りの始端位置と上記吐出部側寄りの終端位置との間を往復動するピストンおよび上記ピストンをその背部側から上記始端位置に向けて付勢するバネ手段と、上記注入部と上記導油管の一端側との間に形成された上記シリンダの内径よりも小径で上記シリンダに連通する中継室と、上記中継室内に配置され上記給油ポンプの給油時の圧力と脱圧時の圧力に応じて流路を切り換える傘型弁とを備え、上記シリンダ内が上記ピストンによりその頭部側が計量室、背部側が蓄油室に区画されているとともに、上記導油管には上記蓄油室に連通する横孔が形成されており、
上記給油ポンプからの給油時には、上記傘型弁により、上記導油管の一端側が塞がれた状態で上記潤滑剤が上記注入部から上記中継室を介して上記計量室に流れ上記ピストンが上記始端位置から上記バネ手段の付勢力に抗して上記終端位置に向けて押し上げられる第1流路が形成され、
上記給油ポンプの脱圧時には、上記傘型弁により、上記第1流路が閉じられるとともに上記導油管の一端側が開かれ上記バネ手段により上記ピストンが上記始端位置に向けて押し戻されて上記計量室内の上記潤滑剤が上記導油管内および上記横孔を介して上記蓄油室へと流れる第2流路が形成され、
次の上記給油ポンプからの給油時に、上記第1流路が形成されるとともに、上記脱圧時に上記蓄油室内に貯留された潤滑剤が上記横孔から上記導油管内を流れて上記吐出部から上記二次側配管に吐出される第3流路が形成される吐出方式が先出し方式の定量分配器において、
上記横孔を塞いで上記蓄油室と上記導油管とを遮断し、上記給油ポンプの脱圧時に上記計量室内の上記潤滑剤を上記導油管から上記吐出部に向けて流して吐出方式を後出し方式に変更する吐出方式変更手段を備えていることを特徴としている。
【0018】
本発明には、上記吐出方式変更手段として、上記吐出部から上記導油管内に上記横孔を塞ぐ位置にまで嵌め込まれる閉塞用のパイプが用いられる態様が含まれる。
【0019】
上記閉塞用のパイプは所定の軸長を有する金属パイプであることが好ましいが、上記シール用のパイプとして、上記吐出部に接続される吐出チューブの一端部分が用いられてもよい。
【0020】
上記シリンダはその吐出側に上記吐出部を有するとともに上記導油管の他端を支持する吐出ニップルを備え、上記吐出ニップルには上記導油管の横孔の周りを所定の隙間をもって囲むスリーブが形成されており、上記第2流路の形成時には上記横から上記スリーブ内を通って上記蓄油室に至り、上記第3流路形成時には上記蓄油室から上記スリーブ内および上記横孔を経て上記吐出部に至るスリーブ内流路が含まれている態様においては、上記吐出方式変更手段として、上記横孔よりも下方の位置で上記スリーブ内流路を塞ぐOリングを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、先出し方式の定量分配器を容易に後出し方式の定量分配器に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の基本形態としての先出し方式に係る定量分配器の(a)給油時の動作を示す断面図、(b)脱圧時の動作を示す断面図。
図2図1の先出し方式の定量分配器を後出し方式に変更した本発明の第1実施形態に係る定量分配器の(a)給油時の動作を示す断面図、(b)脱圧時の動作を示す断面図。
図3図1の先出し方式の定量分配器を後出し方式に変更した本発明の第2実施形態に係る定量分配器の(a)給油時の動作を示す断面図、(b)脱圧時の動作を示す断面図。
図4】(a)本発明の基本形態としての先出し方式に係る定量分配器の別の例を示す脱圧動作時における断面図、(b)(a)の別の例に係る先出し方式の定量分配器を後出し方式に変更した本発明の第3実施形態に係る定量分配器を示す脱圧動作時における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図1ないし図4により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
まず、図1(a)(b)を参照して、本発明の基本形態(前駆体的な形態)としての先出し方式に係る定量分配器1Aについて説明する。本発明は、この先出し方式に係る定量分配器1Aを後出し方式に変更する。
【0025】
この先出し方式に係る定量分配器1Aは、筐体としてのシリンダ10を備えている。シリンダ10の一端側(図1において下端側)には注入部101が形成されており、シリンダ10の他端側(図1において上端側)は吐出部102になっている。注入部101と吐出部102は同軸に配置されている。
【0026】
注入部101には、給油と脱圧を交互に繰り返す図示しない給油ポンプの一次側配管から潤滑剤が供給される。給油ポンプから供給される潤滑剤は、液状のオイルと呼ばれる潤滑油のほかに粘度の高いグリースも含まれる。
【0027】
吐出部102には、吐出ニップル20がOリング(オーリング)201を介して嵌め込まれている。吐出ニップル20には、被給油箇所に至る図示しない二次側配管(吐出チューブ)が接続される。
【0028】
注入部101と吐出部102との間に、内部が潤滑剤通路31である導油管30がシリンダ10の中心軸上に配置されている。この例において、導油管30は吐出ニップル20と一体に形成されているが、図4(a)に示すように、導油管30と吐出ニップル20は別体であってもよい。
【0029】
シリンダ10内には、ピストン40が設けられている。ピストン40の中心部には導油管30が挿通されており、ピストン40は導油管30に沿って始端位置(図1(b)に示す位置)と終端位置(図1(a)に示す位置)との間で往復動する。
【0030】
ピストン40の内周側には、導油管30との接触部をシール(密封)するOリング401が設けられており、また、ピストン40の外周側には、シリンダ10の内周面との接触部をシールするOリング402が設けられている。
【0031】
シリンダ10内において、ピストン40の背部42と吐出ニップル20の内底21との間には、ピストン40を始端位置に向けて付勢する圧縮型のコイルスプリング43が設けられている。
【0032】
この例において、導油管30の上部には、ピストン40の終端位置を規定するための拡径された段差部32が形成されている。導油管30の外周には、ガイド筒44が摺動可能に嵌合している。
【0033】
ガイド筒44の下端には、ピストン40の背部42に当接するフランジ441が形成されており、このフランジ441上にコイルスプリング43の端部が配置されている。ガイド筒44はピストン40とともに移動し、ピストン40はガイド筒44の上端442が段差部32に当接する終端位置まで上昇する。
【0034】
注入部101と導油管30の一端側の流入側端部(図1において導油管30の下端)301との間に中継室50が形成されている。中継室50はシリンダ10の内径よりも小径で注入部101とシリンダ10とに連通している。
【0035】
中継室50内には傘型弁51が配置されている。傘型弁51は、導油管30の流入側端部301を開閉する弁座511と、中継室50の内周面に弾性的に接触する裾部(スカート部)512とを有し、好ましくはその全体がゴム材からなる。
【0036】
シリンダ10内はピストン40により、その頭部41側が計量室111、背部42側が蓄油室112に区画されている。導油管30には、蓄油室112に連通する横孔33が穿設されている。
【0037】
上記給油ポンプからの給油時には、図1(a)に示すように、その給油圧により傘型弁51が押し上げられ、弁座511が導油管30の流入側端部301に当接し、これにより導油管30の流入側端部301が塞がれる一方で、傘型弁51の裾部512が強制的に縮径され、中継室50の内周面との間に隙間ができる。
【0038】
これにより、上記給油ポンプから供給される潤滑剤が注入部101から中継室50を介して計量室111内に流入し、ピストン40をコイルスプリング43の付勢力に抗して押し上げる第1流路が形成される。
【0039】
ピストン40は、ガイド筒44の上端442が導油管30の段差部32に当接する終端位置にまで押し上げられ、これにより計量室111内に1給油サイクル分の潤滑剤が計量される。
【0040】
上記給油ポンプが脱圧に切り替わり、注入部101の圧力が低下すると、図1(b)に示すように、コイルスプリング43の付勢力により傘型弁51が押し下げられるとともに、その裾部512が拡径されて中継室50の内周面に密着するため、導油管30の流入側端部301が開かれる一方で、上記第1流路が遮断される。
【0041】
すなわち、計量室111と導油管30の潤滑剤通路31とが連通し、計量室111と注入部101とが切り離され、コイルスプリング43の付勢力により、ピストン40が始端位置に向けて押し戻され、計量室111内の潤滑剤が導油管30の潤滑剤通路31および横孔33を介して蓄油室112へと流れる第2流路が形成され、蓄油室112内に1給油サイクル分の潤滑剤が溜められる。
【0042】
そして、次の上記給油ポンプからの給油時に、上記第1流路が形成されるとともに、上記脱圧時に蓄油室112内に貯留された潤滑剤がピストン40の上昇に伴って横孔33から導油管30内を流れて吐出ニップル20の吐出口202から二次側配管に吐出される第3流路が形成される。
【0043】
このように、先出し方式の定量分配器1Aにおいては、給油ポンプの給油圧力によってピストン40が押し上げられて、蓄油室112内に貯留されている潤滑剤が吐出されるため高圧吐出となる。
【0044】
この先出し方式の定量分配器1Aを後出し方式とするには、横孔33を塞いで蓄油室112を使用しないようにすればよい。その第1実施形態を図2(a)(b)により説明する。
【0045】
第1実施形態に係る定量分配器1Bは、導油管30内の潤滑剤通路31と蓄油室112を連通する横孔33を塞ぐための構成として、吐出ニップル20内から導油管30の潤滑剤通路31内に向けて差し込まれる閉塞用のパイプ23を備えている。パイプ23は、他の構成要素と同じく真鍮製であることが好ましい。
【0046】
パイプ23は、潤滑剤通路31の上端(導油管30の他端)311から横孔33を横切って横孔33の下方部分に至る長さを有し、横孔33を挟んでその上下2箇所にはシール用のOリング231,232が配置されている。これにより、蓄油室112は潤滑剤通路31と遮断される。
【0047】
この定量分配器1Bにおいても、給油ポンプの給油時には、上記先出し方式の定量分配器1Aと同じく、図2(a)に示すように、ピストン40がコイルスプリング43の付勢力に抗して押し上げられて計量室111内で潤滑剤の計量が行われる。
【0048】
そして、給油ポンプの脱圧時になると、図2(b)に示すように、コイルスプリング43の付勢力により、計量室111内の潤滑剤が導油管30の潤滑剤通路31内に流されるが、横孔33が塞がれているため、潤滑剤はそのまま吐出ニップル20内に向けて流される。
【0049】
このように、この定量分配器1Bは、計量室111内の潤滑剤がコイルスプリング43の付勢力によって吐出されるため、低圧吐出の後出し方式となる。
【0050】
次に、先出し方式の定量分配器1Aを後出し方式とする第2実施形態を図3(a)(b)により説明する。
【0051】
この第2実施形態では、上記第1実施形態の閉塞専用のパイプ23に代えて、図示しない被給油箇所に潤滑剤を供給する吐出チューブ24を用い、その一端を導油管30の潤滑剤通路31内に横孔33を塞ぐ位置にまで差し込む。
【0052】
この種の吐出チューブ24には、通常、軟質の樹脂チューブが用いられるため、吐出チューブ24が容易に外れないようにするため、吐出チューブ24に金属製のソロバン玉リング241を嵌め、吐出ニップル20内に押さえネジ242を螺合し、押さえネジ242にてソロバン玉リング241を締め付けるとよい。
【0053】
次に、図4により、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、図4(a)に示されている先出し方式の定量分配器1Aを後出し方式に変更する。
【0054】
図4(a)の定量分配器1Aでは、吐出ニップル20と導油管30とが別体として形成されている。すなわち、吐出ニップル20は、導油管30の他端側の流出側端部302が差し込まれてその流出側端部302を支持する導油管嵌合部25を備えている。
【0055】
導油管嵌合部25の周りには、吐出ニップル20の内底21よりも下方に延びるスリーブ26が形成されている。スリーブ26は、導油管30よりも大径で横孔33の周りを所定の隙間をもって囲んでいる。
【0056】
この隙間がスリーブ内流路261で、給油ポンプの脱圧時には上記第2流路として、計量室111内の潤滑剤が導油管30の潤滑剤通路31→横孔33→スリーブ内流路261を経て蓄油室112に流れ込む。そして、次の給油ポンプの給油時には、蓄油室112内の潤滑剤がスリーブ内流路261→横孔33→導油管30の流出側端部302を経て吐出ニップル20の吐出口202に至る。
【0057】
図4(a)の先出し方式の定量分配器1Aを後出し方式に変更するため、この第3実施形態では、図4(b)に示すように、横孔33よりも下方の位置にOリング27を配置してスリーブ内流路261を塞ぐようにしている。これによれば、蓄油室112と導油管30とが遮断されるため、先出し方式の定量分配器を後出し方式に変更することができる。
【0058】
なお、Oリング27によりスリーブ内流路261を塞ぐにあたっては、好ましくは、スリーブ26の肉厚をその内径が導油管30の外径にほぼ等しくなるように厚くし、その内周面に溝を掘ってOリング27を嵌め込むとよく、吐出ニップル20を交換するだけで済ませることができる。
【0059】
また、この第3実施形態によれば、スリーブ26の下端262にガイド筒44の上端442が当接するため、スリーブ26の下端262をピストン40の終端位置を規定するストッパーとして利用することができる。
【0060】
いずれにしても、本発明によれば、先出し方式の定量分配器を容易に後出し方式の定量分配器に変更することができるため実用的である。
【符号の説明】
【0061】
1A 先出し方式の定量分配器
1B 後出し方式の定量分配器
10 シリンダ
101 注入部
102 吐出部
111 計量室
112 蓄油室
20 吐出ニップル
202 吐出口
21 内底
23 パイプ
24 吐出チューブ
25 導油管嵌合部
26 スリーブ
261 スリーブ内流路
27 Oリング(スリーブ内流路閉塞用)
30 導油管
301 導油管の流入側端部
302 導油管の流出側端部
31 潤滑剤通路
33 横孔
40 ピストン
41 ピストンの頭部
42 ピストンの背部
43 コイルスプリング
44 ガイド筒
50 中継室
51 傘型弁
511 弁座
512 裾部
図1
図2
図3
図4