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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】移植装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A01C11/02 302C
A01C11/02 302Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021144413
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023037687
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】竹田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】林 幅帥
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174857(JP,A)
【文献】特開2017-143791(JP,A)
【文献】実開昭63-177111(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0043195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00 - 11/02
A01C 11/04 - 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗箱に保持された複数のポット苗を圃場に移植する移植装置であって、
前記苗箱から前記ポット苗を取り出す苗取り出し部と、
前記苗取り出し部から受け渡された前記ポット苗を水平方向一方側から他方側へ輸送する横送りベルトと、
前記横送りベルトよりも他方側かつ下方において前記ポット苗を下方へ輸送する縦送りベルトと、
前記横送りベルトよりも他方側において、前記縦送りベルトに向かって下向きに前記ポット苗を押し出す送り出し爪と、
前記横送りベルトの他方側の端部付近において、前記横送りベルトの上方に配置され、前記横送りベルトの幅方向に延びる送出ローラーと、
前記送出ローラーよりも他方側、かつ、前記送り出し爪の移動経路よりも一方側に配置される補助部材と、
前記縦送りベルトの下流側において、前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付け部と、
を有し、
前記補助部材の下端部は、前記送出ローラーの下端部よりも上側に配置される、移植装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移植装置であって、
前記補助部材の下端部は、前記送出ローラーの中心軸よりも下側に配置される、移植装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の移植装置であって、
前記補助部材は、前記幅方向に延びる、移植装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の移植装置であって、
前記補助部材は、その下端面が、下方へ向かって突出する曲面状である、移植装置。
【請求項5】
請求項3に記載の移植装置であって、
前記補助部材は、円柱状である、移植装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、稲や野菜などの苗を圃場に移植する移植機として、苗箱に育成されたポット苗を圃場に移植する移植機が知られている。従来の野菜を圃場に移植する移植機については、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
図13に示すように、特許文献1に記載の移植機では、ポット苗Nが横送りベルトA51上を水平方向に搬送され、横送りベルトA51の下流側端部に達すると、送り出し爪A364によって縦送りベルトA52の一対のベルトA521の間へ押し出される。ここで、図13中には、横送りベルトA51の下流側端部付近に、苗Nの根部を下流側へと送り出すための送出ローラーA90が記載されている。送出ローラーA90は、横送りベルトA51の上方、かつ、送り出し爪A364よりも上流側に設けられている。
【0004】
下流側の端部において、横送りベルトA51は下方へと落ち込むため、下流側へと苗Nを押し出す力が弱くなる。そこで、このような送出ローラーA90を配置して、図11中に矢印で示すように、苗Nの根部を送り出し爪A364の下方へと送り出すことによって、苗Nがスムーズに送り出し爪A364の下方に配置される。これにより、送り出し爪A364の動作とタイミングがずれにくく、搬送不良が抑制される。
【0005】
【文献】特開2018-174857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、苗Nの根部の状態によって、送出ローラーA90の表面に沿って引き上げられ、苗Nが斜め上方へと浮き上がってしまう場合がある。このとき、送り出し爪A364が上方へと戻っていくタイミングで苗Nが浮き上がると、苗Nが送出ローラーA90の上方まで引き上げられ、搬送不良となってしまう。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、移植装置において、搬送不良を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、苗箱に保持された複数のポット苗を圃場に移植する移植装置であって、前記苗箱から前記ポット苗を取り出す苗取り出し部と、前記苗取り出し部から受け渡された前記ポット苗を水平方向一方側から他方側へ輸送する横送りベルトと、前記横送りベルトよりも他方側かつ下方において前記ポット苗を下方へ輸送する縦送りベルトと、前記横送りベルトよりも他方側において、前記縦送りベルトに向かって下向きに前記ポット苗を押し出す送り出し爪と、前記横送りベルトの他方側の端部付近において、前記横送りベルトの上方に配置され、前記横送りベルトの幅方向に延びる送出ローラーと、前記送出ローラーよりも他方側、かつ、前記送り出し爪の移動経路よりも一方側に配置される補助部材と、前記縦送りベルトの下流側において、前記ポット苗を圃場へ植え付ける植え付け部と、を有し、前記補助部材の下端部は、前記送出ローラーの下端部よりも上側に配置される。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の移植装置であって、前記補助部材の下端部は、前記送出ローラーの中心軸よりも下側に配置される。
【0010】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の移植装置であって、前記補助部材は、前記幅方向に延びる。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの移植装置であって、前記補助部材は、その下端面が、下方へ向かって突出する曲面状である。
【0012】
本願の第5発明は、第3発明の移植装置であって、前記補助部材は、円柱状である。
【発明の効果】
【0013】
本願の第1発明から第5発明によれば、送出ローラーによってポット苗が引き寄せられた場合であっても、ポット苗が上方へ引き上げられるのを抑制できる。したがって、欠株を生じることなくポット苗の移植を行うことができる。
【0014】
特に、本願の第2発明によれば、送出ローラーによってポット苗が引き寄せられた場合の引き上げ高さを小さくできる。したがって、ポット苗への落下による衝撃を抑制できる。
【0015】
特に、本願の第4発明および第5発明によれば、ポット苗が補助部材に接触した際の衝撃を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る移植装置の側面図である。
図2】一実施形態に係る苗箱の上面図である。
図3】一実施形態に係る苗箱およびポット苗の断面図である。
図4】一実施形態に係る移植部の斜視図である。
図5】一実施形態に係る移植部の側面図である。
図6】一実施形態に係る移植部の背面図である。
図7】一実施形態に係る苗搬送部の斜視図である。
図8】一実施形態に係る苗搬送部の一部の側面図である。
図9】一実施形態に係る苗搬送部の一部の上面図である。
図10】一実施形態に係る苗搬送部の一部の背面図である。
図11】一実施形態に係る苗搬送部の一部の背面図である。
図12】一実施形態に係る苗搬送部の一部の背面図である。
図13】従来の移植装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、移植装置の進行方向を「前方向」、移植装置の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、前後方向および上下方向と直交する方向を左右方向と称する。なお、本願では、移植装置の使用時の姿勢に従って上下方向を定義する。
【0018】
<1.第1実施形態>
<1-1.移植装置全体の構成について>
図1は、移植装置1の側面図である。この移植装置1は、苗箱において育成された複数の野菜のポット苗を、圃場100へ移植する装置である。本実施形態の移植装置1は、いわゆる歩行型の移植装置である。この移植装置1は、搭載したエンジン111の駆動力により自走しながら、ポット苗を順次に圃場100へ移植する。作業者は、移植装置1に伴って歩行しながら、空になった苗箱の取り出し、新たな苗箱の供給、および移植装置1の操作を行う。
【0019】
図1に示すように、移植装置1は、本体部11と、車輪12と、操作部13と、苗箱載置台14と、移植部20とを有する。本実施形態の移植装置1は、2条用の移植装置であるため、2つの移植部20を有する。
【0020】
本体部11は、エンジン111と、エンジン111から出力される動力をPTO軸を介して移植部20へと伝達する動力伝達機構とを有する。車輪12は、本体部11、操作部13、苗箱載置台14および移植部20を走行自在に支持する。車輪12は、エンジン111の出力した動力によって回転し、移植装置1を走行させる。
【0021】
操作部13は、移植装置1の使用時に作業者が把持するハンドル131と、移植装置1の各部を操作するための操作部132とを有する。苗箱載置台14は、移植前または移植後の苗箱を載置可能である。移植部20は、ポット苗を苗箱から取り出して圃場100へと移植する。
【0022】
<1-2.移植部の構成について>
次に、移植部20の詳細な構成について説明する。図2は、この移植装置1で移植されるポット苗を育成するための苗箱9の上面図である。図3は、苗箱9と、苗箱9内で育成されたポット苗Nとの断面図を概念的に示した図である。図2および図3に示すように、苗箱9は、表側の面から裏側に向かって窪むカップ状の苗室91を複数有する。すなわち、苗室91は、苗箱9の表側に開口を有し、苗箱9の裏側に底部を有する。複数の苗室91は、2次元的に配置される。また、苗箱9は、苗箱9の両端部に沿って配置される複数の把持孔92を有する。
【0023】
各苗室91に土を入れた後、各苗室91内に播種し、育苗することで、図3に示すように、複数のポット苗Nが得られる。ポット苗Nは、苗室91において土と根とにより構成される根部N1と、根部N1から延びる茎葉部N2とから成る。育成したポット苗Nは、苗箱9に収容されたまま苗箱9ごと移植装置1へ載置される。
【0024】
各苗室91の底には、底面孔911が設けられている。本実施形態では、底面孔911は、Y字形状をしている。なお、底面孔911は、単なる円形や四角形等の貫通孔であってもよく、Y字形状や十文字形状等の切り込みであってもよい。
【0025】
上述の通り、本実施形態の移植装置1には2つの移植部20が搭載されている。具体的には、移植装置1は、左の移植部20と右の移植部20とにより構成される2条用のユニットを有する。左の移植部20と右の移植部20とは、左右対称の構造をしている。このため、以下では、左の移植部20について説明する。
【0026】
図4は、移植部20の斜視図である。図5は、移植部20の側面図である。図6は、移植部20の背面図である。図4図6に示すように、移植部20は、苗取り出し部31と、苗搬送部32と、苗植え付け部33とを有する。
【0027】
苗取り出し部31は、苗箱搬送部41と、苗押し出し部42と、苗反転部43とを有する。
【0028】
苗箱搬送部41は、苗箱載置面411と、苗箱送り出し部412とを有する。苗箱載置面411は、苗箱9の搬送経路に沿って配置される。移植処理を行う場合には、ポット苗Nが育成された苗箱9を、苗箱載置面411に苗室91の底部が沿うように配置する。苗箱送り出し部412は、苗箱9の把持孔92に搬送爪(図示せず)を引っかけて送り出す。これにより、苗箱9が搬送経路に沿って搬送される。
【0029】
苗押し出し部42は、苗箱9の搬送経路の途中において、苗箱9に収容されたポット苗Nの根部N1を苗室91から押し出して、ポット苗Nを取り出す。苗押し出し部42は、略水平に並ぶ複数の押出棒421を有する。押出棒421は、苗箱9において配列された苗室91の底面孔911に挿入されることにより、搬送経路上を搬送される苗箱9内に保持されたポット苗Nの根部N1を、苗室91から押し出す。これにより、左右方向に並ぶ複数のポット苗Nが、複数の押出棒421によって同時に押し出され、苗箱9から取り出される。
【0030】
苗箱9は、搬送経路に沿って湾曲しながら搬送される。図5に示すように、苗押し出し部42によってポット苗Nが押し出される押し出し位置付近では、苗箱9は略垂直に配置される。このとき、ポット苗Nの姿勢は、後方に根部N1、前方に茎葉部N2が配置された状態となっている。押出棒421が底面孔911から前方へ向かって苗室91内に挿入されることにより、ポット苗Nは、苗箱9から前方へと押し出される。
【0031】
苗反転部43は、苗押し出し部42によって苗箱9から押し出された複数のポット苗Nを受け取り、ポット苗Nの前後方向を反転させて苗搬送部32の後述する横送りベルト51上に載置する。これにより、ポット苗Nは、前方に根部N1、後方に茎葉部N2が配置された状態で横送りベルト51上に載置される。
【0032】
本実施形態では、苗押し出し部42が苗箱9の一列分である10個のポット苗Nを同時に押し出し、苗反転部43が当該10個のポット苗Nを同時に反転して横送りベルト51上に載置する。
【0033】
苗搬送部32は、横送りベルト51と、縦送り部52と有する。横送りベルト51は、ポット苗Nを左向きに搬送する。縦送り部52は、横送りベルト51の下流側において、ポット苗Nを下方へと搬送し、苗植え付け部33へとポット苗Nを受け渡す。苗搬送部32の詳細な構成については、後述する。
【0034】
苗植え付け部33は、苗搬送部32から受け取ったポット苗Nを圃場100へと植え付ける。苗植え付け部33は、植え付けカップ331と、駆動力入力部332と、アーム333とを有する。
【0035】
植え付けカップ331は、縦送り部52の下流側において、内部にポット苗Nを保持し、ポット苗Nを圃場100へと植え付ける。駆動力入力部332には、本体部11から回転駆動力が入力される。駆動力入力部332は、本体部11から入力された回転駆動力をアーム333へと伝達する。
【0036】
アーム333の先端には、植え付けカップ331が取り付けられる。アーム333は、駆動力入力部332から入力された回転駆動力によって、植え付けカップ331を、最も上方に配置された苗受け取り位置と、最も下方に配置された植え付け位置とを通る軌道上を回動させる。すなわち、植え付け位置は、苗受け取り位置よりも下方に配置される。図4図6において、植え付けカップ331は苗受け取り位置に配置されている。
【0037】
植え付けカップ331は、上部が開口となっている。苗受け取り位置において、植え付けカップ331の上部の開口は、縦送り部52の後述する縦送りベルト520の下流側の端部の直下に配置される。これにより、植え付けカップ331は、苗受け取り位置において、縦送り部52によって搬送されたポット苗Nを受け取り、保持する。なお、植え付けカップ331は、苗受け取り位置において、上部の開口から下方に向かってすぼむ円錐状の形状をしている。
【0038】
その後、植え付けカップ331は、植え付け位置へと移動し、植え付けカップ331の先端が圃場100へと刺さるとともに、植え付けカップ331の先端が開く。このとき、植え付けカップ331の先端が刺さることによって、圃場100にポット苗Nを植え付けるための凹部が形成される。そして、植え付けカップ331の先端が開くことによって、ポット苗Nが開いた先端から下方へと落下する。
【0039】
先端が開いた状態のまま、植え付けカップ331が上方へと退避すると、圃場100に形成された凹部内にポット苗Nの根部N1が配置された状態で、ポット苗Nが植え付けカップ331から離脱する。これにより、ポット苗Nが圃場100へと植え付けられる。
【0040】
<1-3.苗搬送部の構成について>
続いて、苗搬送部32の詳細な構成について、図7図12を参照しつつ説明する。なお、以下では、左の移植部20の苗搬送部32について説明する。図7は、苗搬送部32を示した斜視図である。図8は、苗搬送部32の一部の構成を示した側面図である。図9は、苗搬送部32の一部の構成を示した上面図である。図10~12は、苗搬送部32の一部の構成を示した背面図である。
【0041】
図7に示すように、苗搬送部32は、上述した横送りベルト51および縦送り部52に加えて、送出ローラー53、補助部材54、送り出し爪55、第1案内板56および第2案内板57を有する。
【0042】
横送りベルト51は、ポット苗Nを水平方向へ輸送するベルトコンベアである。この横送りベルト51は、図7中に破線矢印で示すように、苗反転部43から受け取ったポット苗を左方向へ輸送する。横送りベルト51の上に、苗反転部43から運ばれたポット苗Nが載置される。具体的には、各横送りベルト51には、10個のポット苗Nが載置される。そして、各横送りベルト51は、そのポット苗Nを縦送り部52に向かって輸送する。
【0043】
以下では、横送りベルト51について、搬送方向上流側である右側を「水平方向一方側」または単に「一方側」、搬送方向下流側である左側を「水平方向他方側」または単に「他方側」と称する。
【0044】
なお、図7図12に示す苗搬送部32は左の移植部20の苗搬送部32であるため、図6に示すように、苗搬送部32の左側に苗植え付け部33が配置される。このため、横送りベルト51における搬送方向が左方向である。右の移植部20においては、苗搬送部32の右側に苗植え付け部33が配置されるため、横送りベルト51における搬送方向が右方向となる。
【0045】
また、横送りベルト51には、図7に示すように、複数の苗間突起511が設けられている。本実施形態では、横送りベルト51は、4つの苗間突起511により構成される突起群512を複数組有する。1組の突起群512に含まれる4つの苗間突起511は、搬送方向の同じ位置に、搬送方向と直交する幅方向に間隔を空けて配置される。そして、複数の突起群512は、搬送方向に間隔を空けて配置される。
【0046】
苗反転部43から運ばれたポット苗Nはそれぞれ、2組の突起群512の間に配置される。これにより、隣合うポット苗N間に苗間突起511が配置され、隣合うポット苗N同士が干渉するのが抑制される。
【0047】
なお、苗間突起511は、搬送時に隣り合うポット苗Nの根部N1の間に配置されるように、横送りベルト51のうち、前側に配置される。ここで、横送りベルト51のうち、苗間突起511が配置される幅方向(前後方向)の領域を「根部配置領域510」と称する。ポット苗Nの根部N1は、横送りベルト51のうちの根部配置領域510に載置される。
【0048】
縦送り部52は、横送りベルト51の他方側において、ポット苗Nを下方へ輸送する。縦送り部52はポット苗Nを1つずつ下方へ輸送する。縦送り部52はそれぞれ、左右に間隔を空けて配置された一対の縦送りベルト520を有する。
【0049】
縦送りベルト520は、一対のプーリ61,62と、環状ベルト63とを有する。一対のプーリ61,62は、回転駆動力が入力される駆動プーリ61と、駆動プーリ61の下方に配置される従動プーリ62とからなる。なお、駆動プーリ61と従動プーリ62とは、上下の位置が逆であってもよい。
【0050】
2つの環状ベルト63のうち、略平行に配置され、かつ、左右方向に対向する部分が、一対の苗挟持面60(図10参照)としての役割を果たす。苗挟持面60は、互いに左右方向に間隔を空けて配置される。駆動プーリ61は、苗挟持面60が上方から下方へと移動する方向に回転する。具体的には、縦送り部52の右側の縦送りベルト520が有する駆動プーリ61は、後方から見て反時計回りに回転する。一方、左側の縦送りベルト520が有する駆動プーリ61は、後方から見て時計回りに回転する。これにより、間隔を空けて左右方向に向かい合う一対の苗挟持面60は、その間にポット苗Nを挟持しながら上方から下方へと輸送することができる。
【0051】
一対の苗挟持面60の間隔、すなわち、苗挟持面60同士の左右方向の間隔は、ポット苗Nの根部N1の太さの60%以上80%以下であることが好ましい。一対の苗挟持面60の間隔をこの範囲とすることにより、苗挟持面60が、根部N1を破壊することなく、根部N1をしっかりと挟持することができる。
【0052】
環状ベルト63には、図7および図8に示すように、複数の挟持突起631が設けられている。挟持突起631はそれぞれ、環状ベルト63のうち、後ろ側に配置される。これにより、挟持突起631はポット苗Nの根部N1に接触せず、茎葉部N2を挟持することができる。
【0053】
送出ローラー53は、図7図9に示すように、横送りベルト51の幅方向に延びる。送出ローラー53は、横送りベルト51の根部配置領域510において、横送りベルト51の上方に配置される。送出ローラー55は、PTO軸から得られる駆動力により、横送りベルト75と同期して回転する。具体的には、送出ローラー53は、下面側が一方側から他方側へ向かう方向に回転する。このため、本実施形態の送出ローラー53は後方から見て時計回りに回転する。すなわち、図10図12において、送出ローラー53は時計回りに回転する。
【0054】
また、横送りベルト51の上面と、送出ローラー53の下端部との間隔は、ポット苗Nの根部N1の太さよりもやや狭い。これにより、横送りベルト51の他方側の端部付近まで搬送されたポット苗Nの根部N1は、横送りベルト51と送出ローラー53との間に挟み込まれて、他方側へと送り出される。
【0055】
なお、送出ローラー53の表面は、弾性力のあるゴム等の材料で形成される。これにより、横送りベルト51と送出ローラー53との間で根部N1を挟む際に、根部N1を傷つけずに送り出すことができる。
【0056】
補助部材54は、送出ローラー53よりも他方側、かつ、送り出し爪55の移動経路よりも一方側に配置される。補助部材54は、横送りベルト51の幅方向に延びる。本実施形態では、補助部材54は、送出ローラー53よりも細い円柱状の部材である。補助部材54の下端部は、送出ローラー53の下端部よりも上側に配置される。
【0057】
図8図12に示されるように、送り出し爪55は、横送りベルト51、送出ローラー53および補助部材54よりも他方側に配置される。送り出し爪55は、図8および図10に示す上昇位置P1と、図11に示す下降位置P2との間を往復する。これにより、ポット苗Nの根部N1を、横送りベルト51の搬送方向一方側の端部から縦送り部52の一対の苗挟持面60間へと押し込む。
【0058】
送り出し爪55は、横送りベルト51の根部配置領域510と前後方向の位置が重なる。これにより、送り出し爪55は、ポット苗Nのうち、根部N1のみに接触し、茎葉部N2には接触しにくい。
【0059】
図7に示すように、第1案内板56および第2案内板57は、横送りベルト51の根部配置領域510と幅方向(前後方向)の位置が重なる。また、送り出し爪55の移動範囲も、根部配置領域510と前後方向の位置が重なる。すなわち、第1案内板56、第2案内板57および送り出し爪55は、ポット苗Nの根部N1に対して作用する。
【0060】
図10図12に示すように、第1案内板56は、横送りベルト51の他方側に配置される。図10および図12に示すように、第1案内板56は、無負荷状態において、下方に向かうにつれて左右方向の位置が横送りベルト51へと近づくように配置されている。すなわち、左の移植部20の苗搬送部32においては、第1案内板56は、下方に向かうにつれて右側へ向かうように傾斜して配置される。このため、図10に示すように、横送りベルト51の他方側端部まで搬送されたポット苗Nの根部N1は、一時的に、第1案内板56と第2案内板57とに挟まれる。
【0061】
第1案内板56は、上部が回動可能に固定される。これにより、外部から負荷がかかると、第1案内板56は、図11中に破線矢印で示したように、下端部が横送りベルト51から離れる方向に回動可能である。この第1案内板56によって、ポット苗Nが横送りベルト51の他方側端部から落下する際に、他方側へと飛び出すのが抑制される。すなわち、ポット苗Nが縦送り部52の苗挟持面60間に向かわずに誤った方向へと向かうのが抑制される。
【0062】
第2案内板57は、横送りベルト51の他方側端部付近から下方へ向けて略垂直に延びる。これにより、横送りベルト51の他方側端部から落下して第1案内板56に当たったポット苗Nの根部N1が、一方側へと飛び出すのが抑制される。すなわち、ポット苗Nが縦送り部52の苗挟持面60間に向かわずに誤った方向へと向かうのが抑制される。
【0063】
図8および図10図12を参照しつつ、横送りベルト51から縦送り部52へのポット苗Nの受け渡し時の苗搬送部32の動きについて、詳しく説明する。
【0064】
図10は、送り出し爪55が上昇位置P1に配置されたタイミングを示している。この時点において、横送りベルト51の他方側まで搬送されて横送りベルト51の他方側端部から落下したポット苗Nの根部N1が、第1案内板56と第2案内板57との間に一時的に保持されている。この後、送り出し爪55は、図10中に実線矢印で示すように、上昇位置P1から真っすぐ下向きに移動する。
【0065】
そして、送り出し爪55は、図11に示す下降位置P2まで下降する。図11は、送り出し爪55が下降位置P2に配置されたタイミングを示している。これにより、送り出し爪55は、無負荷状態の第1案内板56と第2案内板57との間に保持されたポット苗Nの根部N1を、下方へと押し込む。図11には、送り出し爪55がポット苗Nの根部N1を下方へと押し込む様子が示されている。
【0066】
送り出し爪55がポット苗Nの根部N1を一対の苗挟持面60間へと押し込む際、第1案内板56は、送り出し爪55の動きによって負荷がかかる。これにより、図11中に破線矢印で示すように、第1案内板56は横送りベルト51から離れる方向へと回動する。これにより、ポット苗Nが下方へと送り出される。続いて、送り出し爪55は、図11中に実線矢印で示すように、下降位置P2から上方かつ水平方向他方側へ移動した後、さらに上方かつ水平方向一方側へ移動して上昇位置P1へと戻る。なお、図12は、下降位置P2から上昇位置P1へと向かう途中の中間位置P3に送り出し爪55が配置されたタイミングを示している。
【0067】
このように、下降位置P2から上昇する際にいったん他方側へ移動することによって、送り出し爪55が、次に横送りベルト51の他方側端部から落下するポット苗Nの根部N1と干渉することを抑制する。
【0068】
一方、図11に示すように、横送りベルト51上を水平方向一方側から他方側へと搬送されるポット苗Nの根部N1は、横送りベルト51の他方側端部付近で、横送りベルト51と送出ローラー53とに挟まれながら、横送りベルト51の他方側へと送り出される。
【0069】
図12に示すように、下降位置P2から上昇位置P1へと向かう際に、送り出し爪55はいったん、横送りベルト51から離れる。すなわち、中間位置P3は、上昇位置P1および下降位置P2と比べて、水平方向他方側に位置する。これによって、次のポット苗N(すなわち横送りベルト51上で最も他方側に配置されたポット苗N)が送り出し爪55と接触するのが抑制されている。
【0070】
しかしながら、時折、ポット苗Nの根部N1が送り出し爪55と接触してしまう場合がある。このような場合に、図12中に破線矢印で示すように、ポット苗Nの根部N1が、上方へ向かう送り出し爪55と、上方かつ他方側へと向かう送出ローラー53の表面とに挟まれて、上方へ引き上げられてしまう。このため、仮に、補助部材54が無い場合、送り出し爪55と接触すると、ポット苗Nの根部N1は送出ローラー53と送り出し爪55とに挟まれて、送出ローラー53の上方へと向かい、欠株となってしまう。
【0071】
これに対し、補助部材54が有る場合、ポット苗Nの根部N1が送り出し爪55と接触して上方へと引き上げられてしまった場合であっても、ポット苗Nの根部N1は、補助部材54によって上方への動きが制止され、ポット苗Nは下方へ落下し、根部N1が第1案内板56と第2案内板57との間へと配置される。これにより、欠株が生じることなく、スムーズにポット苗Nの移植を行うことができる。
【0072】
上述の通り、補助部材54の下端部は、送出ローラー53の下端部よりも上側に配置される。これにより、ポット苗Nが送出ローラー53の他方側へと正常に搬送される際に、補助部材54が根部N1の移動を妨げない。
【0073】
また、本実施形態では、補助部材54の下端部は、送出ローラー53の中心軸よりも下側に配置される。これにより、ポット苗Nが送出ローラー53に引き上げられた場合の引き上げ高さを小さくできる。したがって、ポット苗Nが高くまで引き上げられることによって、落下による衝撃が大きくなるのを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態では、上述の通り、補助部材54は円柱状である。このため、補助部材54の下端面は、下方へ向かって突出する曲面状である。これにより、ポット苗Nの根部N1が補助部材54に接触した際の、根部N1への衝撃を小さくできる。したがって、補助部材54に接触することによって根部N1が壊れるのを抑制できる。
【0075】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0076】
上記の実施形態では、補助部材54が円柱状であったが、本発明はこれに限られない。例えば、補助部材54は、板状、四角柱状、あるいは六角柱状等の他の形状であってもよい。
【0077】
上記の実施形態の移植装置は、野菜の苗を対象とした移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、稲の苗を圃場に移植する移植装置であってもよい。
【0078】
上記の実施形態の移植装置は、苗植え付け部が植え付けカップを有する所謂カップ方式の移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、例えば、所謂溝切方式の移植装置であってもよい。溝切方式の移植装置において、苗植え付け部は、圃場に溝を切る溝切部と、当該溝に苗の根部を配置する植え付け機構と、苗の植え付け後に当該溝を埋め戻す土寄せ部とを有する。
【0079】
また、上記の実施形態の移植装置は2条分のポット苗を同時に移植できる、いわゆる2条植の移植装置であったが、本発明の移植装置は、2条植には限られない。例えば、1条植、4条植、6条植および8条植の移植装置に、本発明を適用してもよい。
【0080】
また、上記の実施形態の移植装置に使用した苗箱は、横10列、縦22列に苗室が並ぶものであったが、本発明に使用する苗箱の苗室の数は、これに限られない。
【0081】
また、上記の実施形態の移植装置は、歩行型の移植装置であったが、本発明はこれに限られない。本発明の移植装置は、トラクターによって牽引されるものであってもよい。その場合、トラクターのエンジンからPTO軸を介して移植部に、回転駆動力を入力してもよい。
【0082】
また、移植装置の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 移植装置
9 苗箱
20 移植部
31 苗取り出し部
32 苗搬送部
33 苗植え付け部
51 横送りベルト
52 縦送り部
53 送出ローラー
54 補助部材
55 送り出し爪
100 圃場
520 縦送りベルト
N ポット苗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13