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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】3Dスキャン方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/24 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021191196
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077771
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521516444
【氏名又は名称】株式会社Arcana製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140796
【弁理士】
【氏名又は名称】原口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】古川 貴一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恭平
(72)【発明者】
【氏名】玉置 和孝
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-148493(JP,A)
【文献】特開2018-149187(JP,A)
【文献】特開2007-333508(JP,A)
【文献】特開2016-070938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をカメラで撮影してフォトグラメトリーによって前記対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法であって、
前記対象物の形状の認識を可能にするために前記対象物の表面に付着される表面付着材を前記対象物の表面に不均一に付着させる付着ステップと、
前記付着ステップによって前記表面付着材が表面に不均一に付着させられた前記対象物に可視光線以外の特定の波長の電磁波を照射して前記対象物を前記カメラで撮影する非可視光線電磁波照射撮影ステップと、
前記非可視光線電磁波照射撮影ステップによって撮影された画像である非可視光線電磁波照射画像であって、前記対象物に対する前記カメラの視点が異なる複数の前記非可視光線電磁波照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって前記対象物の形状データを生成する形状データ生成ステップと
を備え、
前記表面付着材は、前記特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する物質であり、
前記形状データ生成ステップは、複数の前記非可視光線電磁波照射画像における前記対象物の表面への前記表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数の前記非可視光線電磁波照射画像を結び付けるステップであることを特徴とする3Dスキャン方法。
【請求項2】
前記付着ステップによって前記表面付着材が表面に不均一に付着させられた前記対象物に可視光線を照射して前記対象物を前記カメラで撮影する可視光線照射撮影ステップと、
前記可視光線照射撮影ステップによって撮影された画像である可視光線照射画像であって、前記視点が異なる複数の前記可視光線照射画像に基づいて前記形状データに対するテクスチャーデータを生成するテクスチャーデータ生成ステップと
を備え、
前記テクスチャーデータ生成ステップは、複数の前記可視光線照射画像を、これらの前記可視光線照射画像と撮影された前記視点がそれぞれ同一であって、前記形状データ生成ステップにおいて互いに結び付けられる複数の前記非可視光線電磁波照射画像同士の結び付けに合わせて結び付けることによって、前記テクスチャーデータを生成するステップであることを特徴とする請求項1に記載の3Dスキャン方法。
【請求項3】
前記非可視光線電磁波照射撮影ステップおよび前記可視光線照射撮影ステップのそれぞれは、前記対象物に対して前記カメラが相対移動させられることによって前記視点が変更されて撮影が複数回実行され、
同一の前記視点に対する、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップにおける撮影と、前記可視光線照射撮影ステップにおける撮影とは、互いの実行の間に前記視点が変更されることなく実行されることを特徴とする請求項2に記載の3Dスキャン方法。
【請求項4】
前記表面付着材は、蛍光物質であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の3Dスキャン方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法、3Dスキャナー、表面付着材および3Dデータ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法として、ランダムな形状の微粉体である表面反射材を、光の反射率が低い対象物の表面に付着させた後、この対象物を3Dスキャナーによってスキャンする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-070938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来とは異なる方法で対象物の3Dデータを生成することができる3Dスキャン方法、3Dスキャナー、表面付着材および3Dデータ生成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の3Dスキャン方法は、対象物をカメラで撮影してフォトグラメトリーによって前記対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法であって、前記対象物の形状の認識を可能にするために前記対象物の表面に付着される表面付着材を前記対象物の表面に付着させる付着ステップと、前記付着ステップによって前記表面付着材が表面に付着させられた前記対象物に可視光線以外の特定の波長の電磁波を照射して前記対象物を前記カメラで撮影する非可視光線電磁波照射撮影ステップとを備え、前記表面付着材は、前記特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する物質であることを特徴とする。
【0006】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する表面付着材が使用されるので、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物や、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物であっても、対象物の表面に表面付着材を付着した状態で可視光線以外の特定の波長の電磁波を対象物に照射して対象物をカメラで撮影することによって、対象物の形状の認識を可能にする。したがって、本発明の3Dスキャン方法は、従来とは異なる方法で対象物の3Dデータを生成することができる。
【0007】
本発明の3Dスキャン方法は、前記付着ステップによって前記表面付着材が表面に付着させられた前記対象物に可視光線を照射して前記対象物を前記カメラで撮影する可視光線照射撮影ステップと、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップによって撮影された画像である非可視光線電磁波照射画像であって、前記対象物に対する前記カメラの視点が異なる複数の前記非可視光線電磁波照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって前記対象物の形状データを生成する形状データ生成ステップと、前記可視光線照射撮影ステップによって撮影された画像である可視光線照射画像であって、前記視点が異なる複数の前記可視光線照射画像に基づいて前記形状データに対するテクスチャーデータを生成するテクスチャーデータ生成ステップとを備えても良い。
【0008】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、対象物の表面に付着した表面付着材が目立つ非可視光線電磁波照射画像に基づいて対象物の形状データを生成し、対象物の表面に付着した表面付着材が目立たない可視光線照射画像に基づいて形状データに対するテクスチャーデータを生成するので、対象物の表面に付着した表面付着材が目立つ非可視光線電磁波照射画像に基づいてテクスチャーデータを生成する構成と比較して、適切なテクスチャーデータを生成することができる。
【0009】
本発明の3Dスキャン方法において、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップにおける複数の前記視点の少なくとも一部と、前記可視光線照射撮影ステップにおける複数の前記視点の少なくとも一部とは、互いに同一であっても良い。
【0010】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、対象物に対するカメラの視点が互いに同一である非可視光線電磁波照射画像および可視光線照射画像を生成することができるので、非可視光線電磁波照射画像に基づいて生成する形状データに対して、可視光線照射画像に基づいて生成するテクスチャーデータの位置精度を向上することができる。
【0011】
本発明の3Dスキャン方法において、前記テクスチャーデータ生成ステップは、前記形状データに対する複数の前記非可視光線電磁波照射画像の関係性と、前記視点に基づいた前記非可視光線電磁波照射画像および前記可視光線照射画像の対応関係とに基づいて前記テクスチャーデータを生成するステップであっても良い。
【0012】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、形状データに対する複数の非可視光線電磁波照射画像の関係性と、対象物に対するカメラの視点に基づいた非可視光線電磁波照射画像および可視光線照射画像の対応関係とに基づいてテクスチャーデータを生成するので、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物や、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物であっても、形状データを高精度に生成することができれば、この形状データに対するテクスチャーデータも高精度に生成することができる。
【0013】
本発明の3Dスキャン方法において、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップおよび前記可視光線照射撮影ステップのそれぞれは、前記対象物に対して前記カメラが相対移動させられることによって前記視点が変更されて撮影が複数回実行され、同一の前記視点に対する、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップにおける撮影と、前記可視光線照射撮影ステップにおける撮影とは、互いの実行の間に前記視点が変更されることなく実行されても良い。
【0014】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、対象物に対してカメラが相対移動させられることによって対象物に対するカメラの視点が変更されて非可視光線電磁波照射撮影ステップおよび可視光線照射撮影ステップのそれぞれにおける撮影が複数回実行される場合に、対象物に対するカメラの同一の視点に対する、非可視光線電磁波照射撮影ステップにおける撮影と、可視光線照射撮影ステップにおける撮影とが互いの実行の間に、対象物に対するカメラの視点が変更されることなく実行されるので、非可視光線電磁波照射画像と、この非可視光線電磁波照射画像と対象物に対するカメラの視点が同一である可視光線照射画像とにおける対象物の位置にずれが生じる可能性を低減することができる。
【0015】
本発明の3Dスキャン方法は、前記非可視光線電磁波照射撮影ステップによって撮影された画像である非可視光線電磁波照射画像であって、前記視点が異なる複数の前記非可視光線電磁波照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって前記対象物の形状データを生成する形状データ生成ステップを備え、前記形状データ生成ステップは、複数の前記非可視光線電磁波照射画像における前記対象物の表面への前記表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数の前記非可視光線電磁波照射画像を結び付けるステップであっても良い。
【0016】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、複数の非可視光線電磁波照射画像における対象物の表面への表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数の非可視光線電磁波照射画像を結び付けるので、複数の非可視光線電磁波照射画像を高精度に結び付けることができ、その結果、対象物の形状データを高精度に生成することができる。
【0017】
本発明の3Dスキャン方法において、前記表面付着材は、蛍光物質であっても良い。
【0018】
この構成により、本発明の3Dスキャン方法は、表面付着材が蛍光物質であるので、対象物の表面に付着された表面付着材に可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されなくなってから、対象物の表面に付着された表面付着材が可視光線を発しなくなるまでの時間、すなわち、対象物の表面に表面付着材が付着されていることが視認され難くなるまでの時間を、表面付着材が燐光物質である場合と比較して短縮することができる。
【0019】
本発明の3Dスキャナーは、フォトグラメトリーによる対象物の形状データの生成に使用される画像がカメラで撮影されるために、可視光線以外の特定の波長の電磁波を前記対象物に照射する非可視光線電磁波照射部と、前記形状データに対するテクスチャーデータの生成に使用される画像が前記カメラで撮影されるために、可視光線を前記対象物に照射する可視光線照射部とを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成により、本発明の3Dスキャナーは、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する表面付着材が表面に付着された対象物をカメラで撮影して対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法の実現に適している。したがって、本発明の3Dスキャナーは、従来とは異なる方法で対象物の3Dデータを生成することができる。
【0021】
本発明の表面付着材は、対象物をカメラで撮影してフォトグラメトリーによって前記対象物の3Dデータを生成する3Dスキャン方法において、前記対象物の形状の認識を可能にするために前記対象物の表面に付着される表面付着材であって、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する物質であることを特徴とする。
【0022】
この構成により、本発明の表面付着材は、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発するので、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物や、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物の表面に付着された状態で可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射された対象物がカメラで撮影されることによって、対象物の形状の認識を可能にする。したがって、本発明の表面付着材は、従来とは異なる方法で対象物の3Dデータを生成することができる。
【0023】
本発明の3Dデータ生成プログラムは、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射された対象物がカメラで撮影された画像である非可視光線電磁波照射画像であって、前記対象物に対する前記カメラの視点が異なる複数の前記非可視光線電磁波照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって前記対象物の形状データを生成する形状データ生成部と、可視光線が照射された前記対象物が前記カメラで撮影された画像である可視光線照射画像であって、前記視点が異なる複数の前記可視光線照射画像に基づいて前記形状データに対するテクスチャーデータを生成するテクスチャーデータ生成部とをコンピューターに実現させることを特徴とする。
【0024】
この構成により、本発明の3Dデータ生成プログラムを実行するコンピューターは、対象物の表面に付着した表面付着材が目立つ非可視光線電磁波照射画像に基づいて対象物の形状データを生成し、対象物の表面に付着した表面付着材が目立たない可視光線照射画像に基づいて形状データに対するテクスチャーデータを生成するので、対象物の表面に付着した表面付着材が目立つ非可視光線電磁波照射画像に基づいてテクスチャーデータを生成する構成と比較して、適切なテクスチャーデータを生成することができる。
【0025】
本発明の3Dデータ生成プログラムは、対象物の形状の認識を可能にするために前記対象物の表面に付着される表面付着材が表面に付着させられた前記対象物に可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されて前記対象物がカメラで撮影された画像である非可視光線電磁波照射画像であって、前記対象物に対する前記カメラの視点が異なる複数の前記非可視光線電磁波照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって前記対象物の形状データを生成する形状データ生成部をコンピューターに実現させ、前記表面付着材は、前記特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する物質であり、前記形状データ生成部は、複数の前記非可視光線電磁波照射画像における前記対象物の表面への前記表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数の前記非可視光線電磁波照射画像を結び付けることを特徴とする。
【0026】
この構成により、本発明の3Dデータ生成プログラムを実行するコンピューターは、複数の非可視光線電磁波照射画像における対象物の表面への表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数の非可視光線電磁波照射画像を結び付けるので、複数の非可視光線電磁波照射画像を高精度に結び付けることができ、その結果、対象物の形状データを高精度に生成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の3Dスキャン方法、3Dスキャナー、表面付着材および3Dデータ生成プログラムは、従来とは異なる方法で対象物の3Dデータを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】右側面側から観察された場合の、本発明の第1の実施の形態に係る3Dスキャナーの斜視図である。
図2】左側面側から観察された場合の、図1に示す3Dスキャナーの斜視図である。
図3】開閉カバーが開かれていてスマートフォンがセットされていない状態で左側面側から観察された場合の、図1に示す3Dスキャナーの斜視図である。
図4】一部が切断された状態での、図1に示す3Dスキャナーの斜視図である。
図5図1に示す3Dスキャナーの一部の断面図である。
図6図1に示す3Dスキャナーのブロック図である。
図7図1に示す3Dスキャナーによる対象物の撮影方法のフローチャートである。
図8図1に示す3Dスキャナーによる対象物の3Dデータの生成方法のフローチャートである。
図9】(a)図7に示す処理によって生成されたUV光照射画像の一例を示す図である。 (b)図8に示す処理によって生成された形状データで示される形状の一例を示す図である。
図10】(a)図7に示す処理によって生成された白色光照射画像の一例を示す図である。 (b)図8に示す処理によって生成されたテクスチャーデータで示されるテクスチャーの一例を示す図である。
図11】(a)白色光照明およびUV光照明の図5に示す例とは異なる例を示す図である。 (b)白色光照明およびUV光照明の図5および図11(a)に示す例とは異なる例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係る3Dスキャナーの斜視図である。
図13図12に示す3Dスキャナーのブロック図である。
図14図12に示す3Dスキャナーによる対象物の撮影方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る3Dスキャナーの構成について説明する。
【0031】
図1は、右側面側から観察された場合の本実施の形態に係る3Dスキャナー10の斜視図である。図2は、左側面側から観察された場合の3Dスキャナー10の斜視図である。図3は、開閉カバー32が開かれていてスマートフォン80がセットされていない状態で左側面側から観察された場合の3Dスキャナー10の斜視図である。図4は、一部が切断された状態での3Dスキャナー10の斜視図である。図5は、3Dスキャナー10の一部の断面図である。
【0032】
図1図5に示すように、3Dスキャナー10は、脚20と、カメラを備えるスマートフォン80を支持するカメラ支持部30と、スキャンの対象物90を支持する対象物支持部40とを備えている。
【0033】
3Dスキャナー10に適した対象物90としては、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する物が考えられる。可視光線を吸収する部分としては、例えば黒色の部分が考えられる。可視光線を透過する部分としては、例えば透明の部分が考えられる。表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物90は、可視光線が照射された状態でのみカメラで撮影されたとしても、撮影された画像において、対象物90の表面のうち可視光線を吸収しまたは透過する部分に特徴点が無いので、適切な3Dデータが生成されることが困難である。また、3Dスキャナー10に適した対象物90としては、例えば、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない物も考えられる。表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物90は、可視光線が照射された状態でのみカメラで撮影されたとしても、撮影された画像において、対象物90の表面のうち単色で特徴が得られない部分に特徴点が無いので、適切な3Dデータが生成されることが困難である。
【0034】
脚20は、本体21と、本体21の左側に固定されているモーター22と、モーター22の出力軸に取り付けられている歯車23とを備えている。
【0035】
本体21は、カメラ支持部30を回転可能に支持するための軸受21aを右側に備えている。本体21は、矢印10aで示す左右方向に延在する軸21bを左側に備えている。
【0036】
カメラ支持部30は、曲面の一部に開口31aが形成された略円柱状のケース31と、開口31aを覆う開閉可能な開閉カバー32と、スマートフォン80をケース31に対して固定することによってスマートフォン80のカメラをケース31に対して固定するカメラ固定部33と、対象物90に光を照射するための照明装置34と、ケース31の左側面に固定されている歯車35とを備えている。
【0037】
ケース31は、矢印10aで示す左右方向に延在する軸31bを右側に備えている。軸31bは、本体21の軸受21aによって回転可能に支持されている。ケース31は、本体21の軸21bを回転可能に支持するための軸受31cを左側に備えている。ケース31の軸31bの中心線と、本体21の軸21bの中心線とは、矢印10aで示す方向に延在する同一の直線上に配置されている。ケース31は、カメラ固定部33に固定された状態のスマートフォン80のカメラのレンズに対向する位置に設けられた窓31dが形成されている。
【0038】
カメラ固定部33は、ケース31の外周に設けられている。カメラ固定部33は、スマートフォン80のカメラのレンズが窓31dに対向する状態でスマートフォン80をケース31に対して固定することが可能である。
【0039】
照明装置34は、ケース31の内周面に設置されている。照明装置34は、白色光を照射するリング照明である白色光照明34aと、UV光を照射するリング照明であるUV光照明34bとを備えている。白色光照明34aおよびUV光照明34bは、例えば、LED(Light Emitting Diode)によって構成されている。白色光照明34aは、可視光線としての白色光を対象物90に照射するものであり、本発明の可視光線照射部を構成している。UV光照明34bは、可視光線以外の特定の波長の電磁波としてのUV光を対象物90に照射するものであり、本発明の非可視光線電磁波照射部を構成している。窓31dの中心と、白色光照明34aの中心と、UV光照明34bの中心とは、ケース31の軸31bの中心線に直交する同一の直線上に配置されている。
【0040】
歯車35の中心は、ケース31の軸31bの中心線上に配置されている。歯車35は、脚20の歯車23と噛み合っている。
【0041】
対象物支持部40は、カメラ支持部30のケース31の内部に配置されている。対象物支持部40は、脚20の軸21bに固定されている台41と、台41に固定されているモーター42と、モーター22の出力軸に取り付けられていて対象物90を支持するターンテーブル43とを備えている。対象物支持部40は、台41が脚20の軸21bに固定されているので、矢印10aで示す方向に延在する直線を中心とした回転方向に脚20に対して回転しない。
【0042】
脚20と、カメラ支持部30のケース31、カメラ固定部33および歯車35と、対象物支持部40とは、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点を変更するものである。
【0043】
図6は、3Dスキャナー10のブロック図である。
【0044】
図6に示すように、3Dスキャナー10は、モーター22、白色光照明34a、UV光照明34bおよびモーター42を制御するコンピューター50を備えている。コンピューター50は、例えば、PC(Personal Computer)によって構成されている。
【0045】
コンピューター50は、種々の操作が入力される例えばキーボード、マウスなどの操作デバイスである操作部51と、種々の情報を表示する例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部52と、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部53と、各種の情報を記憶する例えば半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部54と、コンピューター50全体を制御する制御部55とを備えている。
【0046】
記憶部54は、対象物90をカメラで撮影するための撮影プログラム54aと、対象物90の3Dデータを生成するための3Dデータ生成プログラム54bとを記憶している。撮影プログラム54aおよび3Dデータ生成プログラム54bは、それぞれ、例えば、コンピューター50の製造段階でコンピューター50にインストールされていても良いし、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの外部の記憶媒体からコンピューター50に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター50に追加でインストールされても良い。
【0047】
制御部55は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、制御部55のCPUの作業領域として用いられるメモリーとしてのRAM(Random Access Memory)とを備えている。制御部55のCPUは、記憶部54または制御部55のROMに記憶されているプログラムを実行する。
【0048】
制御部55は、撮影プログラム54aを実行することによって、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点の変更を制御する視点変更制御部55aと、対象物90に白色光を照射する可視光線照射制御部55bと、対象物90にUV光を照射する非可視光線電磁波照射制御部55cとを実現する。
【0049】
制御部55は、3Dデータ生成プログラム54bを実行することによって、対象物90の形状データを生成する形状データ生成部55dと、形状データ生成部55dによって生成された形状データに対するテクスチャーデータを生成するテクスチャーデータ生成部55eとを実現する。
【0050】
次に、3Dスキャナー10による対象物90のスキャンの準備について説明する。
【0051】
まず、作業者は、対象物90の形状の認識を可能にするために対象物90の表面に付着される表面付着材としての蛍光増白剤の粉末を水に溶かしたものをスプレーを用いて対象物90の表面に吹き付けた後、対象物90の表面を乾燥させる。したがって、対象物90の表面には、蛍光増白剤が不均一に付着する。ここで、蛍光増白剤は、UV光が照射されることによって可視光線を発する蛍光物質である。UV光が照射されることによって表面付着材が可視光線を発するので、対象物90の表面に付着した表面付着材は、表面に表面付着材が付着されてUV光が照射された対象物90の画像(以下「UV光照射画像」という。)において目立つ。したがって、表面付着材は、対象物90の表面に薄く付着させられるだけで良い。表面付着材が対象物90の表面に薄く付着させられている場合、対象物90の表面に付着した表面付着材は、可視光線下において目立たず、その結果、白色光が照射された対象物90の画像(以下「白色光照射画像」という。)においても目立たない。表面付着材として使用される蛍光増白剤は、対象物90が可視光線下に存在する場合に、対象物90の表面に付着させられる前と、対象物90の表面に付着させられた後とで、対象物90の表面の色相の変化が肉眼で区別され難いものであることが好ましい。表面付着材として使用される蛍光増白剤の粉末は、可視光線下に存在する場合に、肉眼で一つ一つが認識されることができない細かさのものであることが好ましい。
【0052】
次いで、作業者は、開閉カバー32を開けて、ケース31の開口31aからケース31の内部のターンテーブル43の上に対象物90を設置した後、開閉カバー32を閉じる。開閉カバー32が閉じられることによって、ケース31の内部に外乱光が入ることを抑えることができるので、スマートフォン80のカメラによって撮影された対象物90の画像における外乱光の影響を抑えることができる。
【0053】
次に、3Dスキャナー10による対象物90の撮影方法について説明する。
【0054】
図7は、3Dスキャナー10による対象物90の撮影方法のフローチャートである。
【0055】
図7に示すように、作業者は、コンピューター50を操作することによって、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの位置および向き、すなわち、視点を、特定の複数の視点のうち、対象物90が未だ撮影されていないいずれか1つの視点に変更する(S101)。
【0056】
ここで、コンピューター50の視点変更制御部55aは、モーター22を駆動することによって、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの位置および向きを変更することができる。すなわち、モーター22が駆動されると、モーター22の出力軸に取り付けられている歯車23と噛み合っている歯車35を備えているカメラ支持部30が回転するので、カメラ支持部30に支持されているスマートフォン80のカメラの、対象物90に対するアングルが変更される。
【0057】
また、コンピューター50の視点変更制御部55aは、モーター42を駆動することによって、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの位置および向きを変更することができる。すなわち、モーター42が駆動されると、モーター42の出力軸に取り付けられているターンテーブル43が回転するので、ターンテーブル43に支持されている対象物90に対するスマートフォン80のカメラの位置および向きが変更される。
【0058】
なお、特定の複数の視点は、近隣の複数の視点のそれぞれで撮影された画像同士が一部重なるように決められる。
【0059】
作業者は、S101の後、コンピューター50を操作することによって、可視光線照射制御部55bに白色光照明34aを点灯させて非可視光線電磁波照射制御部55cにUV光照明34bを消灯させる(S102)。したがって、対象物90には、白色光照明34aによって白色光が照射される。
【0060】
作業者は、S102の後、スマートフォン80のカメラによって対象物90を撮影する(S103)。したがって、白色光照射画像が生成される。なお、表面付着材として使用される蛍光増白剤の粉末は、白色光照明34aによって対象物90に白色光が照射されている場合に、スマートフォン80のカメラの有効画素数に対して、一つ一つが認識されることができない細かさのものが好ましい。すなわち、表面付着材として使用される蛍光増白剤の粉末は、白色光照射画像に現れない程度の細かさのものが好ましい。
【0061】
作業者は、S103の後、コンピューター50を操作することによって、可視光線照射制御部55bに白色光照明34aを消灯させて非可視光線電磁波照射制御部55cにUV光照明34bを点灯させる(S104)。したがって、対象物90には、UV光照明34bによってUV光が照射される。
【0062】
作業者は、S104の後、スマートフォン80のカメラによって対象物90を撮影する(S105)。したがって、UV光照射画像が生成される。
【0063】
作業者は、S105の後、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの特定の複数の視点のうち、対象物90が未だ撮影されていない視点が存在するか否かを判断する(S106)。
【0064】
作業者は、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの特定の複数の視点のうち、対象物90が未だ撮影されていない視点が存在するとS106において判断すると、S101を実行する。
【0065】
作業者は、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの特定の複数の視点のうち、対象物90が未だ撮影されていない視点が存在しないとS106において判断すると、図7に示す撮影方法を終了する。
【0066】
図7に示す撮影方法において、白色光が照射された対象物90の撮影は、UV光が照射された対象物90の撮影より先に実行されている。しかしながら、白色光が照射された対象物90の撮影は、UV光が照射された対象物90の撮影より後に実行されても良い。
【0067】
図7に示す撮影方法において、スマートフォン80のカメラによる撮影は、作業者がスマートフォン80を操作することによって実行される。しかしながら、コンピューター50がスマートフォン80を操作可能である場合には、スマートフォン80のカメラによる撮影は、作業者がコンピューター50を操作することによって実行されても良い。
【0068】
図7に示す撮影方法は、作業者が各工程を実行している。しかしながら、図7に示す撮影方法の少なくとも一部が例えばコンピューター50によって自動化されても良い。例えば、図7に示す撮影方法は、コンピューター50によって最初から最後まで完全に自動化されても良い。
【0069】
次に、3Dスキャナー10による対象物90の3Dデータの生成方法について説明する。
【0070】
図8は、3Dスキャナー10による対象物90の3Dデータの生成方法のフローチャートである。
【0071】
図8に示すように、作業者は、コンピューター50を操作することによって、形状データ生成部55dに対象物90の形状データを生成させる(S121)。形状データ生成部55dは、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像に基づいてフォトグラメトリーによって対象物90の形状データを生成する。ここで、上述したように対象物90の表面には蛍光増白剤が不均一に付着しているので、対象物90の表面への蛍光増白剤の付着のパターンは、対象物90の表面上の場所毎に異なる。したがって、形状データ生成部55dは、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像における対象物90の表面への蛍光増白剤の付着のパターンの共通性に基づいて、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像を結び付ける。対象物90の表面への蛍光増白剤の付着のパターンの共通性は、対象物90の表面への蛍光増白剤の付着の有無のパターンの共通性でも良いし、対象物90の表面への蛍光増白剤の付着の濃淡のパターンの共通性でも良い。
【0072】
図9(a)は、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像の一例を示す図である。図9(b)は、S121によって生成された形状データで示される形状の一例を示す図である。
【0073】
図9に示すUV光照射画像および形状は、理解を容易にするために簡略化されている。
【0074】
複数回のS105の処理によって、図9(a)に示すように、UV光照射画像aおよびUV光照射画像bが生成されたとする。
【0075】
図9において、黒三角は、UV光照射画像a、bと、S121によって生成された形状データで示される形状とにおいて対象物90上に現れている蛍光増白剤の模様を示している。黒三角は、理解を容易にするためのイメージであり、実際の色、形状がそれぞれ黒、三角であるわけではない。黒三角で表されている模様は、互いに異なる視点から撮影されたUV光照射画像aおよびUV光照射画像bを結び付ける特徴点となる。
【0076】
図9(a)においては、UV光照射画像aにおける2つの模様がそれぞれ円で囲まれ、これらの模様にそれぞれ対応するUV光照射画像bにおける2つの模様がそれぞれ円で囲まれ、互いに対応する模様を囲む円同士が破線で繋がれている。これらの円および破線は、理解を容易にするために描かれており、実際にはUV光照射画像aおよびUV光照射画像bに含まれていない。また、図9(a)においては、UV光照射画像aおよびUV光照射画像bにおいて互いに対応する模様として2組の模様のみが代表として円および破線によって示されている。しかしながら、実際には、UV光照射画像aおよびUV光照射画像bにおいて互いに対応する模様は、2組より多い。
【0077】
形状データ生成部55dは、S121において、UV光照射画像aおよびUV光照射画像bに基づいてフォトグラメトリーによって図9(b)に示す形状データを生成する。具体的には、異なる視点から得られる特徴点同士を三角測量の手法を用いることで撮影対象の3次元形状を得ることができる。
【0078】
図8に示すように、作業者は、S121の後、コンピューター50を操作することによって、S121において生成された形状データに対するテクスチャーデータをテクスチャーデータ生成部55eに生成させる(S122)。テクスチャーデータ生成部55eは、複数回のS103の処理によって生成された白色光照射画像に基づいてテクスチャーデータを生成する。ここで、テクスチャーデータ生成部55eは、S121において生成された形状データに対する複数のUV光照射画像の関係性と、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点に基づいたUV光照射画像および白色光照射画像の対応関係とに基づいてテクスチャーデータを生成する。
【0079】
図10(a)は、複数回のS103の処理によって生成された白色光照射画像の一例を示す図である。図10(b)は、S122によって生成されたテクスチャーデータで示されるテクスチャーの一例を示す図である。
【0080】
図10に示す白色光照射画像およびテクスチャーは、理解を容易にするために簡略化されている。
【0081】
複数回のS103の処理によって、図10(a)に示すように、白色光照射画像Aおよび白色光照射画像Bが生成されたとする。白色光照射画像Aおよび白色光照射画像Bには、蛍光増白剤の模様は写り込んでいない。
【0082】
白色光照射画像Aは、図9(a)に示すUV光照射画像aと同一の視点で撮影された画像である。白色光照射画像Bは、図9(a)に示すUV光照射画像bと同一の視点で撮影された画像である。すなわち、白色光照射画像Aは、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点に基づくと、UV光照射画像aに対応する。同様に、白色光照射画像Bは、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点に基づくと、UV光照射画像bに対応する。これらの対応関係と、図9(b)に示す形状データに対するUV光照射画像a、bの関係性とに基づいて、テクスチャーデータ生成部55eは、図10(b)に示すテクスチャーデータを生成する。
【0083】
図8に示す生成方法は、作業者が各工程を実行している。しかしながら、図8に示す生成方法の少なくとも一部が例えばコンピューター50によって自動化されても良い。例えば、図8に示す生成方法は、コンピューター50によって最初から最後まで完全に自動化されても良い。
【0084】
図7に示す撮影方法と、図8に示す生成方法とは、コンピューター50によって自動的に連続して実行されても良い。
【0085】
以上に説明したように、本実施の形態は、UV光が照射されることによって可視光線を発する表面付着材が使用されるので、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物90や、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物90の表面に表面付着材を付着した状態でUV光を対象物90に照射して対象物90をスマートフォン80のカメラで撮影することによって、対象物90の形状の認識を可能にする。したがって、本実施の形態は、従来とは異なる方法で対象物90の3Dデータを生成することができる。
【0086】
本実施の形態は、対象物90が可視光線下に存在する場合に、対象物90の表面に付着させられる前と、対象物90の表面に付着させられた後とで、対象物90の表面の色相の変化が肉眼で区別され難い表面付着材が使用されるので、表面に表面付着材が付着されてUV光が照射された対象物90が通常の環境下、すなわち、可視光線下に存在する場合に、対象物90の表面に表面付着材が付着されていることが視認され難い。したがって、本実施の形態は、通常の環境下、すなわち、可視光線下に存在する対象物90から表面付着材が除去される必要が無く、その結果、作業者の負担を軽減することができる。なお、表面付着材は、図7に示す撮影方法の終了後に対象物90から除去されても良い。
【0087】
3Dスキャナー10は、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する表面付着材が表面に付着された対象物90をカメラで撮影して対象物90の3Dデータを生成する3Dスキャン方法の実現に適している。
【0088】
本実施の形態は、表面付着材が蛍光物質であるので、対象物90の表面に付着された表面付着材にUV光が照射されなくなってから、対象物90の表面に付着された表面付着材が可視光線を発しなくなるまでの時間、すなわち、対象物90の表面に表面付着材が付着されていることが視認され難くなるまでの時間を、表面付着材が燐光物質である場合と比較して短縮することができる。
【0089】
本実施の形態は、表面付着材が蛍光増白剤であるので、UV光が照射されることによって可視光線を発する能力が、UV光が照射されることによって徐々に低下する。そのため、本実施の形態は、表面に表面付着材が付着されている対象物90が、UV光を含む通常の環境下に存在するだけでも、UV光が照射されることによって可視光線を発する能力が時間の経過とともに低下する。したがって、本実施の形態は、対象物90から表面付着材が除去される必要性が特に低い。
【0090】
表面付着材は、本実施の形態において蛍光増白剤である。しかしながら、表面付着材は、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する物質であれば、蛍光増白剤以外の物質でも良い。例えば、表面付着材は、例えばブラックライトインクなど、蛍光増白剤以外の蛍光物質でも良いし、蛍光物質以外の物質でも良い。例えば、表面付着材は、燐光物質でも良い。
【0091】
本実施の形態は、対象物90の表面に付着した表面付着材が目立つUV光照射画像に基づいて対象物90の形状データを生成し(S121)、対象物90の表面に付着した表面付着材が目立たない白色光照射画像に基づいて形状データに対するテクスチャーデータを生成する(S122)ので、対象物90の表面に付着した表面付着材が目立つUV光照射画像に基づいてテクスチャーデータを生成する構成と比較して、適切なテクスチャーデータを生成することができる。
【0092】
本実施の形態は、白色光を照射した対象物90の撮影(S102~S103)と、UV光を照射した対象物90の撮影(S104~S105)とが対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点が互いに同一であるので、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点が互いに同一であるUV光照射画像および白色光照射画像を生成することができる。したがって、本実施の形態は、UV光照射画像に基づいて生成する形状データに対して、白色光照射画像に基づいて生成するテクスチャーデータの位置精度を向上することができる。
【0093】
なお、白色光を照射した対象物90の撮影(S102~S103)における対象物90に対するスマートフォン80のカメラの複数の視点と、UV光を照射した対象物90の撮影(S104~S105)における対象物90に対するスマートフォン80のカメラの複数の視点とは、一部が異なっていても良い。
【0094】
本実施の形態は、対象物90に対してスマートフォン80のカメラが相対移動させられることによって対象物90に対するカメラの視点が変更されて、白色光を照射した対象物90の撮影(S102~S103)と、UV光を照射した対象物90の撮影(S104~S105)とのそれぞれが複数回実行される場合に、対象物90に対するカメラの同一の視点に対する、白色光を照射した対象物90の撮影(S102~S103)と、UV光を照射した対象物90の撮影(S104~S105)とが互いの実行の間に、対象物90に対するカメラの視点が変更されることなく実行されるので、白色光照射画像と、この白色光照射画像と対象物90に対するカメラの視点が同一であるUV光照射画像とにおける対象物90の位置にずれが生じる可能性を低減することができる。
【0095】
なお、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの同一の視点に対する、白色光を照射した対象物90の撮影と、UV光を照射した対象物90の撮影とは、互いの実行の間に、対象物90に対するカメラの視点が変更されても良い。例えば、特定の複数の視点の全てに対して、白色光を照射した対象物90の撮影と、UV光を照射した対象物90の撮影とのうちの一方が実行された後、特定の複数の視点の全てに対して、白色光を照射した対象物90の撮影と、UV光を照射した対象物90の撮影とのうちの他方が実行されても良い。
【0096】
本実施の形態は、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像における対象物90の表面への表面付着材の付着のパターンの共通性に基づいて、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像を結び付ける(S121)ので、複数回のS105の処理によって生成されたUV光照射画像を高精度に結び付けることができ、その結果、対象物90の形状データを高精度に生成することができる。
【0097】
本実施の形態は、形状データに対する複数のUV光照射画像の関係性と、対象物90に対するスマートフォン80のカメラの視点に基づいたUV光照射画像および白色光照射画像の対応関係とに基づいてテクスチャーデータを生成する(S122)ので、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する対象物90や、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない対象物90であっても、形状データを高精度に生成することができれば、この形状データに対するテクスチャーデータも高精度に生成することができる。
【0098】
3Dスキャナー10は、本実施の形態において、図5に示すように白色光照明34aがUV光照明34bより外側に配置されている。しかしながら、白色光照明34aがUV光照明34bより内側に配置されても良い。
【0099】
図11(a)は、白色光照明34aおよびUV光照明34bの図5に示す例とは異なる例を示す図である。図11(b)は、白色光照明34aおよびUV光照明34bの図5および図11(a)に示す例とは異なる例を示す図である。
【0100】
3Dスキャナー10は、本実施の形態において、図5に示すように白色光照明34aおよびUV光照明34bがリング照明である。しかしながら、白色光照明34aおよびUV光照明34bは、リング照明でなくても良い。例えば、白色光照明34aおよびUV光照明34bの形状は、図11に示すように、直線状でも良い。窓31d、白色光照明34aおよびUV光照明34bの配置は、様々な配置が採用されることが可能である。
【0101】
3Dスキャナー10は、本実施の形態において、対象物90の形状データと、この形状データに対するテクスチャーデータとを生成する(S121~S122)。しかしながら、3Dスキャナー10は、対象物90の形状データのみが必要である場合には、白色光を照射した対象物90の撮影(S102~S103)が省略されても良い。
【0102】
表面付着材に可視光線を発生させる、可視光線以外の特定の波長の電磁波は、本実施の形態においてUV光である。しかしながら、表面付着材に可視光線を発生させる、可視光線以外の特定の波長の電磁波は、UV光以外の電磁波でも良い。
【0103】
3Dスキャナー10は、以上において、対象物90を撮影するカメラとして、スマートフォン80のカメラが採用されている。しかしながら、3Dスキャナー10は、対象物90を撮影するカメラとして、スマートフォン80のカメラ以外のカメラが採用されても良い。例えば、3Dスキャナー10は、対象物90を撮影するカメラとして、産業用カメラが採用されても良い。
【0104】
本実施の形態においては、表面付着材の粉末を水に溶かしたものをスプレーを用いて対象物90の表面に吹き付けることによって、対象物90の表面に表面付着材を付着させている。しかしながら、対象物90の表面への表面付着材の付着方法としては、他の方法が採用されても良い。例えば、表面付着材の粉末をそのまま対象物90の表面に吹き付けることによって、対象物90の表面に表面付着材を付着させても良い。なお、表面付着材の粉末をそのまま対象物90の表面に吹き付けるより、表面付着材の粉末を水に溶かしたものをスプレーを用いて対象物90の表面に吹き付ける方が、対象物90の表面に表面付着材が不均一に付着する。
【0105】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態に係る3Dスキャナーの構成について説明する。
【0106】
なお、本実施の形態に係る3Dスキャナーの構成要素のうち、第1の実施の形態に係る3Dスキャナー10(図1参照。)の構成要素と同様の構成要素については、3Dスキャナー10の構成要素と同一の符号を付して説明を省略する。
【0107】
図12は、本実施の形態に係る3Dスキャナー210の斜視図である。
【0108】
図12に示すように、3Dスキャナー210は、対象物290の外周に配置される複数の支柱211を備えている。支柱211のそれぞれは、複数のカメラ212と、複数の白色光照明213と、複数のUV光照明214とを備えている。
【0109】
3Dスキャナー210に適した対象物290としては、例えば、表面の少なくとも一部が可視光線を吸収しまたは透過する物が考えられる。また、3Dスキャナー210に適した対象物290としては、例えば、表面の少なくとも一部が単色で特徴が得られない物も考えられる。
【0110】
図13は、3Dスキャナー210のブロック図である。
【0111】
図13に示すように、3Dスキャナー210は、カメラ212、白色光照明213およびUV光照明214を制御するコンピューター50を備えている。
【0112】
記憶部54は、対象物290をカメラ212で撮影するための撮影プログラム254aと、3Dデータ生成プログラム54bとを記憶している。撮影プログラム254aおよび3Dデータ生成プログラム54bは、それぞれ、例えば、コンピューター50の製造段階でコンピューター50にインストールされていても良いし、USBメモリーなどの外部の記憶媒体からコンピューター50に追加でインストールされても良いし、ネットワーク上からコンピューター50に追加でインストールされても良い。
【0113】
制御部55は、撮影プログラム254aを実行することによって、カメラ212を制御する撮影部255aと、可視光線照射制御部55bおよび非可視光線電磁波照射制御部55cとを実現する。
【0114】
次に、3Dスキャナー210による対象物290のスキャンの準備について説明する。
【0115】
まず、作業者は、対象物290の形状の認識を可能にするために対象物290の表面に付着される表面付着材としての蛍光増白剤の粉末を水に溶かしたものをスプレーを用いて対象物290の表面に吹き付けた後、対象物290の表面を乾燥させる。したがって、対象物290の表面には、蛍光増白剤が不均一に付着する。
【0116】
次いで、作業者は、複数の支柱211によって囲まれる位置に対象物290を設置する。
【0117】
次に、3Dスキャナー210による対象物290の撮影方法について説明する。
【0118】
図14は、3Dスキャナー210による対象物290の撮影方法のフローチャートである。
【0119】
図14に示すように、作業者は、コンピューター50を操作することによって、可視光線照射制御部55bに全ての白色光照明213を点灯させて非可視光線電磁波照射制御部55cに全てのUV光照明214を消灯させる(S301)。したがって、対象物290には、全ての白色光照明213によって白色光が照射される。
【0120】
作業者は、S301の後、コンピューター50を操作することによって、撮影部255aに全てのカメラ211によって対象物290を撮影させる(S302)。したがって、対象物290に対するカメラ211の視点が異なる複数の白色光照射画像が生成される。
【0121】
作業者は、S302の後、コンピューター50を操作することによって、可視光線照射制御部55bに全ての白色光照明213を消灯させて非可視光線電磁波照射制御部55cに全てのUV光照明214を点灯させる(S303)。したがって、対象物290には、全てのUV光照明214によってUV光が照射される。
【0122】
作業者は、S303の後、コンピューター50を操作することによって、撮影部255aに全てのカメラ211によって対象物290を撮影させる(S304)。したがって、対象物290に対するカメラ211の視点が異なる複数のUV光照射画像が生成される。
【0123】
作業者は、S304が終了すると、図14に示す撮影方法を終了する。
【0124】
図14に示す撮影方法において、白色光が照射された対象物290の撮影は、UV光が照射された対象物290の撮影より先に実行されている。しかしながら、白色光が照射された対象物290の撮影は、UV光が照射された対象物290の撮影より後に実行されても良い。
【0125】
図14に示す撮影方法は、作業者が各工程を実行している。しかしながら、図14に示す撮影方法の少なくとも一部が例えばコンピューター50によって自動化されても良い。例えば、図14に示す撮影方法は、コンピューター50によって最初から最後まで完全に自動化されても良い。
【0126】
3Dスキャナー210による対象物290の3Dデータの生成方法については、第1の実施の形態に係る3Dスキャナー10による対象物90の3Dデータの生成方法と同様であるので、説明を省略する。
【0127】
3Dスキャナー210は、第1の実施の形態に係る3Dスキャナー10と同様の作用効果を得ることができる。ただし、3Dスキャナー210は、対象物290に対してカメラ211が相対移動させられるものではないので、3Dスキャナー10の作用効果のうち、対象物に対してカメラが相対移動させられることに関する作用効果を得ることはできない。
【0128】
3Dスキャナー210は、例えば、可視光線以外の特定の波長の電磁波が照射されることによって可視光線を発する、蛍光増白剤以外の物質が表面付着材として採用されることができるなど、第1の実施の形態に係る3Dスキャナー10と同様の変更内容が採用されることができる。ただし、3Dスキャナー210は、対象物290に対してカメラ211が相対移動させられるものではないので、3Dスキャナー10の変更内容のうち、対象物に対してカメラが相対移動させられることに関する変更内容が採用されることはできない。
【符号の説明】
【0129】
10 3Dスキャナー
34a 白色光照明(可視光線照射部)
34b UV光照明(非可視光線電磁波照射部)
54b 3Dデータ生成プログラム
55d 形状データ生成部
55e テクスチャーデータ生成部
80 スマートフォン(カメラ)
90 対象物
210 3Dスキャナー
212 カメラ
213 白色光照明(可視光線照射部)
214 UV光照明(非可視光線電磁波照射部)
290 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14