(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】プロテクター
(51)【国際特許分類】
A63B 71/12 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A63B71/12 A
(21)【出願番号】P 2022100137
(22)【出願日】2022-06-22
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390040165
【氏名又は名称】株式会社二子商事
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】西本 充晶
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】特許第7054551(JP,B1)
【文献】特開2007-268064(JP,A)
【文献】特表2003-533304(JP,A)
【文献】特開2012-016528(JP,A)
【文献】特開2011-188919(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185452(WO,A1)
【文献】特開2010-220944(JP,A)
【文献】米国特許第06182299(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/00-71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面から見て、中央領域保護部(1)と左右の側方保護部(2)(2)とを有するプロテクターに於て、
上記中央領域保護部(1)は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部(3)が、上下複数段状に設けられ、かつ、該前面壁部(3)の各々の前面は、下方後傾状に形成され、
さらに、上下隣り合う
上記前面壁部(3)(3)の
間に形成された段差部(7)は、下方を向いていることを特徴とするプロテクター。
【請求項2】
正面から見て、中央領域保護部(1)と左右の側方保護部(2)(2)とを有するプロテクターに於て、
上記中央領域保護部(1)は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部(3)を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部(3)の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部(3)の下端縁(3a)の後面が下側の上記前面壁部(3)に接触するように重なり、上下隣り合う上記前面壁部(3)(3)の段差部(7)は、上記下端縁(3a)の最下端部によって形成されて下方を向いていることを特徴とするプロテクター。
【請求項3】
正面から見て、中央領域保護部(1)と左右の側方保護部(2)(2)とを有するプロテクターに於て、
上記中央領域保護部(1)は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部(3)を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部(3)の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部(3)が下側の上記前面壁部(3)と段差部(7)をもって一体に連設され、上記段差部(7)は、下方を向いていることを特徴とするプロテクター。
【請求項4】
上下複数段状の前面壁部(3)がボール(20)から衝撃を受けて押圧変形した際に裏側から当接して過大変形することを防ぐ発泡弾性樹脂体(21)を、備える請求項1,2又は3記載のプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
以前、本出願人は、
図10に示すように、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材48が、しころ状に重ねて構成され、衝撃吸収部材48の前面壁部40が前方下方を向いたプロテクターを提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のプロテクターは、下側の前面壁部40の上端縁41の後面を、直上の前面壁部40の下端縁43の前面と、スライド自在に当接状としており、段差部45が上方を向いているので、下側の前面壁部40と上側の前面壁部40との当接箇所にボール47が当たると、ボール47が上方向に跳ね返るという問題があった。また、キャッチャーがプロテクターを装着してプレー中にキャッチャーフライを(胸や腹にて)スライディング捕球(矢印Z参照)した場合、
図11に示すように、隣合う前面壁部40と前面壁部40との間が開いて、砂や土がプロテクター内部に入るという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、ボールが上側の前面壁部と下側の前面壁部との当接箇所に当たっても、ボールを下方へ落下させることができるプロテクターを提供することを目的とする。また、キャッチャーがスライディング捕球しても、砂や土がプロテクター内部に入ることを防止することができるプロテクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプロテクターは、正面から見て、中央領域保護部と左右の側方保護部とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部が、上下複数段状に設けられ、かつ、該前面壁部の各々の前面は、下方後傾状に形成され、さらに、上下隣り合う上記前面壁部の間に形成された段差部は、下方を向いているものである。
【0007】
また、正面から見て、中央領域保護部と左右の側方保護部とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部の下端縁の後面が下側の上記前面壁部に接触するように重なり、上下隣り合う上記前面壁部の段差部は、上記下端縁の最下端部によって形成されて下方を向いているものである。
【0008】
また、正面から見て、中央領域保護部と左右の側方保護部とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部が下側の上記前面壁部と段差部をもって一体に連設され、上記段差部は、下方を向いているものである。
【0009】
また、上下複数段状の前面壁部がボールから衝撃を受けて押圧変形した際に裏側から当接して過大変形することを防ぐ発泡弾性樹脂体を、備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプロテクターによれば、ボールが上側の前面壁部と下側の前面壁部との当接箇所に当たっても、ボールを下方へ落下させることができる。また、キャッチャーがスライディング捕球しても、砂や土がプロテクター内部に入ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示す正面図である。
【
図3】スライディング捕球時の状態を示す断面図である。
【
図5】衝撃吸収部材がボールから衝撃を受けた状態を示す断面図である。
【
図7】第4の実施の形態の要部を示す断面図である。
【
図9】第5の実施の形態の衝撃緩和構造体を示す斜視図である。
【
図11】従来例のスライディング捕球時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1・
図2は、本発明の第1の実施の形態を示す。正面から見て、人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部1と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部2,2とを、有する。中央領域保護部1は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部3が、上下複数段状に設けられる。前面壁部3の各々の前面は、下方後傾状に形成される。
【0013】
身体に沿って密接状に装着される鉛直状の裏皮8を備える。裏皮8は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の発泡体から成る衝撃吸収材、及び、裏生地等を積層したものが、好ましい。裏皮8に上下複数枚の衝撃吸収部材9が取着されている。衝撃吸収部材9が、表て面皮10と、裏面皮11と、表て面皮と裏面皮11との間に配設された発泡樹脂層12とから成る三層構造である。
【0014】
表て面皮10は、例えば、人工皮革、合成皮革、ポリエステル生地、ナイロン生地等から成る。裏面皮11は、例えば、人工皮革、合成皮革、ポリエステル生地、ナイロン生地等から成る。発泡樹脂層12は、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等から成る。特に、ボール等の衝撃が加わっても跳ねない素材である低反発ポリウレタン発泡体が、好ましい。表て面皮10、裏面皮11、発泡樹脂層12を、ホットメルト(フィルム状)にて金型内に積層状に設置して、ホットプレス又はコールドプレスにて所定形状に成型して、衝撃吸収部材9を製造する。
【0015】
衝撃吸収部材9が、前面壁部3と、前面壁部3の上端縁13から後方へ連設された上面壁部14と、上面壁部14の後端縁15から上方へ連設されて裏皮8に取着される後面壁部16と、を有する。上下隣接する上側の前面壁部3の下端縁17の後面と、上下隣接する下側の前面壁部3の上端縁13の前面とが、スライド自在に当接している。すなわち、上側の前面壁部3の下端縁3aの後面が下側の前面壁部3に接触するように重なり、上下隣り合う前面壁部3,3の段差部7は、前面壁部3の下端縁3aの最下端部によって形成されて下方を向いている。
【0016】
本発明のプロテクターにボール20が当たった場合、
図2に2点鎖線にて示すように、ボール20は、キャッチャーの足元近くに落下する。特に、上下隣接する上側の前面壁部3と下側の前面壁部3との段差部7の近傍にボール20が当たっても、ボール20が上方へ跳返ることなく、ボール20をキャッチャーの足元近くに落下させることができる。
【0017】
キャッチャーが本発明のプロテクターを装着して、プレー中にキャッチャーフライを(胸や腹にて)スライディング捕球(矢印Z参照)した場合、
図3に示すように、プロテクターは地面Gに押圧されて、隣接する前面壁部3と前面壁部3とがスライドする。このとき、プロテクター内部は閉じた状態のままなので、内部に砂や土が入ることを防止することができる。
【0018】
図4・
図5は、第2の実施の形態を示す。上下複数段状の前面壁部3がボール20から衝撃を受けて押圧変形した際に裏側から当接して過大変形することを防ぐ発泡弾性樹脂体21を、備える。発泡弾性樹脂体21は、例えば、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等から成る。発泡弾性樹脂体21は、裏皮8へ縫着等により取着するための薄肉部22と、上下隣合う上面壁部14と上面壁部14との間に配設される山型厚肉部23とを、上下交互に有する。発泡弾性樹脂体21の前面24に表て面皮25が固着される。表て面皮25は、例えば、人工皮革、合成皮革、ポリエステル生地、ナイロン生地等から成る。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0019】
図6は、第3の実施の形態を示す。発泡弾性樹脂体21が、裏皮8に固着される薄肉発泡樹脂体26と、薄肉発泡樹脂体26に接着等により固着される山型厚肉発泡樹脂体27と、から成る。発泡弾性樹脂体21の頂部28と表て面皮25との間に、ウレタン系樹脂から成る衝撃吸収体29を有する。その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0020】
図7は、第4の実施の形態を示す。薄肉発泡樹脂体26と山型厚肉発泡樹脂体27との間に、衝撃吸収体29が介在して、接着等により相互に固着される。その他の構成は、第3の実施の形態と同様である。
【0021】
図8・
図9は、第5の実施の形態を示す。衝撃吸収部材9が、前面壁部3と、上下隣接する上側の前面壁部3と上下隣接する下側の前面壁部3とを連設する段差部7を、交互にかつ一体に有する。すなわち、上側の前面壁部3が下側の前面壁部3と段差部7をもって一体に連設される。段差部7が下方を向いている。衝撃吸収部材9は、一層のエラストマーから成形されている。
【0022】
最上段の前面壁部3の上端縁32から後方へ上面壁部33が連設され、上面壁部33の後端縁34から上方へ上後面壁部35が連設されて、上後面壁部35が裏皮8に縫着等により取着される。最下段の前面壁部3の下端縁36から後方へ下面壁部37が連設され、下面壁部37の後端縁38から下方へ下後面壁部39が連設されて、下後面壁部39が裏皮8に縫着等により取着される。その他の構成は、第2の実施の形態と同様である。なお、
図9に示すように、衝撃吸収部材9が、発泡弾性樹脂体21と(表て面皮25を介して)近接するのが好ましい。
【0023】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、第1の実施の形態、第2の実施の形態、第3の実施の形態、第4の実施の形態の衝撃吸収部材9が、一層のエラストマーから成形されたものとするも良い。また、第5の実施の形態の衝撃吸収部材9を、(第1の実施の形態等のように、)表て面皮10と、裏面皮11と、表て面皮10と裏面皮11との間に配設された発泡樹脂層12とから成る三層構造としたものとするも良い。また、第5の実施の形態の発泡弾性樹脂体21の頂部28と表て面皮25との間に、衝撃吸収体29を有するものとするも良い。また、第5の実施の形態の薄肉発泡樹脂体26と山型厚肉発泡樹脂体27との間に、衝撃吸収体29を介在させて、接着等により相互に固着したものとするも良い。
【0024】
以上のように、本発明は、正面から見て、中央領域保護部1と左右の側方保護部2,2とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部1は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部3が、上下複数段状に設けられ、かつ、該前面壁部3の各々の前面は、下方後傾状に形成され、さらに、上下隣り合う上記前面壁部3,3の間に形成された段差部7は、下方を向いているので、ボール20が上側の前面壁部3と下側の前面壁部3との当接箇所に当たっても、ボール20を下方へ落下させることができる。
【0025】
また、正面から見て、中央領域保護部1と左右の側方保護部2,2とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部1は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部3を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部3の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部3の下端縁3aの後面が下側の上記前面壁部3に接触するように重なり、上下隣り合う上記前面壁部3,3の段差部7は、上記下端縁3aの最下端部によって形成されて下方を向いているので、キャッチャーがキャッチャーフライをスライディング捕球しても、砂や土がプロテクター内部に入ることを防止することができる。また、キャッチャーが、プロテクターを装着した状態で、上半身を容易に曲げることができる。さらに、衝撃吸収部材9は、(上半身前面全体にわたる部材を製造する場合と比較して、)小さな金型にて製造することができる。
【0026】
また、正面から見て、中央領域保護部1と左右の側方保護部2,2とを有するプロテクターに於て、上記中央領域保護部1は、左右方向に長い帯板形状の前面壁部3を、上下複数段状に有し、かつ、上記前面壁部3の各々の前面は、下方後傾状に形成されるとともに、上側の上記前面壁部3が下側の上記前面壁部3と段差部7をもって一体に連設され、上記段差部7は、下方を向いているので、部品点数が少なく、組立てが容易である。
【0027】
また、上下複数段状の前面壁部3がボール20から衝撃を受けて押圧変形した際に裏側から当接して過大変形することを防ぐ発泡弾性樹脂体21を、備えるので、ボール20からの衝撃を吸収して、衝撃吸収部材9の過大変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 中央領域保護部
2 側方保護部
3 前面壁部
7 段差部
8 裏皮
9 衝撃吸収部材
21 発泡弾性樹脂体