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特許7523815高弾性及び高密封性を有する多孔質カーボンバルク材及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】高弾性及び高密封性を有する多孔質カーボンバルク材及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/52 20060101AFI20240722BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240722BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C04B35/52
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304Z
C04B35/645
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022104639
(22)【出願日】2022-06-29
(65)【公開番号】P2023051729
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】202111168176.4
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514276562
【氏名又は名称】燕山大学
【氏名又は名称原語表記】YANSHAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 438, Hebei Street, Haigang District, Qinhuangdao City, HeBei 066004 P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャオ チーション
(72)【発明者】
【氏名】ウー インチュイ
(72)【発明者】
【氏名】リャン ツータイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シアオユイ
(72)【発明者】
【氏名】チューコー ツォーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ホー チュイロン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ トンリー
(72)【発明者】
【氏名】シュイ ポー
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ヨンチュン
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112830784(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110357074(CN,A)
【文献】特開2021-031377(JP,A)
【文献】特開2004-043241(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239178(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184495(US,A1)
【文献】S. Osswald et al.,Plasma pressure compaction of nanodiamond,Diamond & Related Materials,2007年09月24日,16,p.1967-1973
【文献】Sebastian Osswald et al.,Control of sp2/sp3 Carbon Ratio and Surface Chemistry of Nanodiamond Powders by Selective Oxidation in Air,Journal of American Chemical Society,128,2006年08月16日,p.11635-11642
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 35/05
C04B 35/107
C04B 35/622-35/84
C04B 35/52-35/536
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質カーボンバルク材であって、
前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、5~35nmであり、
前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は、59~78%であり、
前記多孔質カーボンバルク材の密度は、0.3~1.1g/cm であり、
前記多孔質カーボンバルク材中の孔は、密閉孔であり、
透過型電子顕微鏡により観察したときに、前記多孔質カーボンバルク材は、湾曲した多層グラフェンを前記孔の境界とする三次元多孔質構造を呈する、
多孔質カーボンバルク材。
【請求項2】
前記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは、5%以上であり、及び/又は、
前記多孔質カーボンバルク材の圧縮強度は、100MPaより大きい、
請求項1に記載の多孔質カーボンバルク材。
【請求項3】
前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は、10×10-5Pa・m/s以下である、
請求項1または2に記載の多孔質カーボンバルク材。
【請求項4】
前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は、4×10-5Pa・m/s以下である、
請求項に記載の多孔質カーボンバルク材。
【請求項5】
前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は、2×10-5Pa・m/s以下である、
請求項に記載の多孔質カーボンバルク材。
【請求項6】
前記多孔質カーボンバルク材の密度は、0.5~0.9g/cmである、
請求項1または2に記載の多孔質カーボンバルク材。
【請求項7】
請求項1に記載の多孔質カーボンバルク材の調製方法であって、
アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を前駆体粉末として使用し、前記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の大きさは5~400nmである、工程A)と、
工程A)の前駆体粉末を金型に入れ、プリプレス成型によりプリプレスプリフォームを取得する、工程B)と、
工程B)により取得されるプリプレスプリフォームを焼結金型に入れた後、プリプレスプリフォームを含む焼結金型を焼結装置に入れ、焼結圧力を印加し、その後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行う工程であって、前記焼結は、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結であり、ここで、焼結圧力が40~100MPaであり、焼結温度が1700~2000℃であり、昇温速度は、20~100℃/minであり、保温時間は、1~5minである工程C)と、
金型を取り出し、離型して多孔質カーボンバルク材を取得する、工程D)と、
を含む、
方法。
【請求項8】
工程A)において、前記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは、5~300nmである、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
工程B)において、プリプレス成型は、双方向で圧力を印加し、印加される圧力は、1~20MPaであり、保圧時間は、1~20minである、
請求項に記載の方法。
【請求項10】
工程C)において、焼結金型は、黒鉛金型であり、プリプレスプリフォームと黒鉛金型との間は、黒鉛紙により隔離され、黒鉛金型の周囲は、カーボンフェルトにより包まれている、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程C)において、焼結圧力が設定値に安定された後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行い、
焼結が完了した後、工程D)の前に、
冷却し、常圧まで圧力を開放させる工程C’)を含み、ここで、冷却速度が100~1000℃/minである、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料調製の技術分野に関し、具体的に、多孔質カーボンバルク材及び当該多孔質カーボンバルク材を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機非金属材料は、一般的に脆性材料であり、室温下ではわずかな弾性変形(一般的に1%未満)しか持たない。その弾性限界を超えると、材料中の微小亀裂が急速に拡大し、材料が瞬時に破壊されてしまう。無機非金属材料は、変形能力が非常に悪いため、その適用範囲が大きく制限されている。現代の材料設計では、高強度、高弾性、低密度の高性能無機非金属材料の設計及び調製が、長期的な目標及び課題になっている。
【0003】
カーボンは、sp、sp、spハイブリッドボンドを形成する柔軟性を有するため、低密度、高強度、高硬度、高弾性、調整可能な電子性能等の優れた総合的な性能を有する材料になることができる。一般的には、多孔質構造を構築することにより、低密度及び高弾性のカーボン材料を得ることができる。例えば、最近発展されている炭素系多孔質材料は、低密度及び優れた弾性変形能力を兼ね備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの既知の多孔質材料の気孔は、開放的であり、気密性を有さず、圧縮強度が通常に1MPa以下であるため、その適用範囲が制限されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、高強度、高弾性、高密封性及び低密度を兼ね備えたカーボン材料を提供し、本発明のカーボン材料は、様々な複雑な環境に適応することができる。
【0006】
第1態様において、本発明は、多孔質カーボンバルク材を提供し、そのうち、
前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、3~100nmであり、
前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は、50~87%であり、且つ、
前記多孔質カーボンバルク材中の孔は、密閉孔である。
【0007】
本発明の多孔質カーボンバルク材は、例えば、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を初期の原料として使用し、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結により合成することができる。
【0008】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、3~100nm(例えば、4~100nm又は5~100nm)であり、好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、5~70nm又は5~50nmであり、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、5~40nm又は5~30nmである。
【0009】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は50~87%であり、好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は56~82%であり、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は60~80%である。
【0010】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは5~400nmであり、好ましくは、前記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは5~350nmであり、より好ましくは、前記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは5~300nmである。
【0011】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは5%以上であり、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは6%以上であり、最も好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは7%以上である。なお、本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは、応力除去後にゼロになる。
【0012】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮強度は100MPaより大きく、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の圧縮強度は150MPaより大きい。
【0013】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は10×10-5Pa・m/s以下であり、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率が4×10-5Pa・m/s以下であり、最も好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率が2×10-5Pa・m/s以下である。
【0014】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の密度は、0.3~1.1g/cmであり、より好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の密度は、0.4~1.0g/cmであり、最も好ましくは、前記多孔質カーボンバルク材の密度は、0.5~0.9g/cmである。
【0015】
本発明の多孔質カーボンバルク材の実施形態において、前記多孔質材料は、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を初期の原料として使用し、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結により合成する。好ましくは、前記多孔質材料の初期の原料は、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子のみである。本明細書において、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子は、本分野の既知の材料である。本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは、5~400nmであり、5~350nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましい。
【0016】
第2態様において、本発明は、本発明の第1態様に記載の多孔質カーボンバルク材の調製方法を提供し、前記方法は、
アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を前駆体粉末として使用する、工程A)と、
工程A)の前駆体粉末を金型に入れ、プリプレス成型によりプリプレスプリフォームを取得する、工程B)と、
工程B)により取得されるプリプレスプリフォームを焼結金型に入れた後、プリプレスプリフォームを含む焼結金型を焼結装置に入れ、焼結圧力を印加し、その後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行い、ここで、焼結圧力は、5~150MPaであり、焼結温度は、1000~2000℃である、工程C)と、
金型を取り出し、離型して多孔質カーボンバルク材を取得する、工程D)と、を含む。
【0017】
本発明の方法の実施形態において、使用される原料は、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子であってもよい。好ましくは、使用される原料は、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子のみである。本明細書において、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子は、本分野の既知の材料である。本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程A)のアモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは、5~400nmであり、5~350nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましい。
【0018】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程B)において、プリプレス成型は、双方向で圧力を印加し、印加される圧力は、1~20MPaであり、2~15MPaであることが好ましく、2~10MPaであることがより好ましく、2~5MPaであることが最も好ましい。
【0019】
本発明の方法の一つの同じく好ましい実施形態において、工程B)において、プリプレス成型の保圧時間は、1~20minであり、1~15minであることが好ましく、1~10minであることがより好ましく、1~5minであることが最も好ましい。
【0020】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結圧力は、5~150MPaであり、8~150MPaであることが好ましく、10~100MPaであることがより好ましい。
【0021】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結温度は、1000~2000℃であり、1300~2000℃であることが好ましく、1400~2000℃であることがより好ましい。
【0022】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、昇温速度は、5~200℃/minであり、8~150℃/minであることが好ましく、10~100℃/minであることがより好ましい。
【0023】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、保温時間は、0~30minであり、0~20minであることが好ましく、0~15minであることがより好ましい。
【0024】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結金型は、黒鉛金型であり、プリプレスプリフォームと黒鉛金型との間は、黒鉛紙により隔離され、黒鉛金型の周囲は、カーボンフェルトにより包まれている。
【0025】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結は、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結である。
【0026】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結圧力を印加する前に、任意に、まず、2~10MPaの初期圧力を印加し、真空度が1×10-1Paを超えるまで真空を引いた後に、さらに焼結圧力を印加する。
【0027】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結圧力が設定値に安定された後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行う。
【0028】
好ましくは、焼結が完了した後、工程D)の前に、
冷却し、常圧まで圧力を開放させ、好ましくは、冷却速度が100~1000℃/minである、工程C’)を含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1態様に記載の多孔質カーボンバルク材、及び本発明の第2態様に記載の方法により調製される多孔質カーボンバルク材は、孔径が小さく、空隙率が高く、密閉孔であるため、高強度を有するとともに高弾性も有し、高密封性及び低密度を有する。特に、本発明の第1態様に記載の多孔質カーボンバルク材、及び本発明の第2態様に記載の方法により調製される多孔質カーボンバルク材は、高弾性及び良好な密封性を有するため、密封材料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
当業者であれば、下記の図面が単に説明するためのものであることを理解することができる。これらの図面は、いかなる形で本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
図1】(a)は、本発明の一実施形態により調製される多孔質カーボンバルク材の実物図であり、(b)は、本発明の一実施形態により調製される多孔質カーボンバルク材が水中に浮遊する写真である。
図2】本発明の実施例1~3により得られる多孔質カーボンバルク材のX線回折図であり、そのうち、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は実施例3である。
図3】本発明の実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材の高解像透過型電子顕微鏡画像である。
図4】本発明の実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材の透過型電子顕微鏡画像の明視野画像である。
図5】本発明の一実施形態により調製される多孔質カーボンバルク材の走査型電子顕微鏡画像である。
図6】本発明の実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材の室温一軸圧縮応力―ひずみグラフであり、そのうち、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は実施例3である。
図7】本発明の実施例1~3により調製されるカーボンバルク材の多孔質カーボンバルク材の室温サイクル圧縮応力―ひずみグラフであり、そのうち、(a)は実施例1であり、(b)は実施例2であり、(c)は実施例3である、
図8】本発明の実施例1により得られる多孔質カーボンバルク材を空気雰囲気の600℃下で測定した際に得られるサイクル圧縮応力―ひずみグラフである。
図9】ヘリウム漏れ率試験機の概略図である。
図10図9のヘリウム漏れ率試験機における試験工具3の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、材料が特定の成分を含有する、有する、含む又は備えると記述される場合、又は、方法が特定の工程を含有する、有する、含む又は備えると記述される場合、本発明の材料は、主に上記特定の成分により構成されるか又は上記特定の成分により構成されることと、本発明の方法は、主に上記特定の工程により構成されるか又は上記特定の工程により構成されることと、を予想する。
【0033】
特に明記しない限り、「含む」、「備える」、「含有」、「有する」という用語は、限定するものではなく、オープン用語として使用されると解釈すべきである。
【0034】
特に明記しない限り、本発明の方法、工程等の操作は、常温常圧下で行われる。
【0035】
本明細書で数値範囲が開示されている場合、この範囲は連続的であり、範囲の最小値及び最大値、並びに最小値と最大値との間の各値を含む。また、範囲が整数を示す場合、この範囲の最小値と最大値の間のすべての整数を含む。また、複数の範囲を提供して特徴又は特性を説明す場合、これらの範囲を組み合わせて使用してもよい。即ち、特に明記しない限り、本明細書に開示の全ての範囲は、それに含まれる全てのサブ範囲を含むと理解されべきである。例えば、「1~10」の指定範囲には、最小値1と最大値10との間の全てのサブ範囲が含まれるとみなされべきである。また、本発明の各成分の使用範囲には、本明細書に記載の任意の下限と任意の上限との任意の組み合わせが含まれており、これらの範囲は全て本発明の範囲に含まれる。
【0036】
本明細書において、当業者によって理解されるように、「約」とは、当該用語の具体的な科学的文脈において、それにより定義される数字、パラメーター又は特徴が一定の範囲内(例えば、±5%)の正及び負のパーセンテージ誤差を可能にすることを意味する。なお、本明細書で使用する数量に関する全ての数字、数値、及び表現は様々な測定誤差の影響を受けるため、特に明記しない限り、全ての特定の数値は「約」という用語によって暗示的に修飾していると理解できる。
【0037】
本明細書において、好ましい実施形態におけるいくつかの性能又はパラメータの好ましい値の範囲を更に提供する。当業者にとって、これらの異なる実施形態における異なる性能パラメータの各値の範囲は、任意の方式により組み合わせることができ、全ての可能な組み合わせ方式はいずれも本明細書に開示されていると理解される。
【0038】
本発明の第1態様によれば、多孔質カーボンバルク材を提供し、それは、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子によって調製され、そのうち、
前記多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、3~100nmであり、
前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は、60~80%であり、且つ
前記多孔質カーボンバルク材中の孔は、密閉孔である。
【0039】
本明細書において、「バルク材料」とは、材料が一定の体積を有する塊状固体であることを意味し、即ち、粒子材料又は粉末材料ではない形で存在する固体材料である。
【0040】
本発明の多孔質カーボンブロック材は、孔径が小さい。本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、多孔質カーボンバルク材の孔径の範囲は、3~100nmであってもよく、5~50nmであることが好ましく、5~30nmであることがより好ましい。本明細書において、多孔質カーボンバルク材の孔径は、高解像透過型電子顕微鏡画像から直接測定して取得されることができる。本明細書において、材料の「孔径の範囲がa~b nmである」とは、例えば、高解像透過型電子顕微鏡画像から材料の孔径を測定する場合、材料中の多くの孔の孔径の大きさがいずれもa nm乃至b nmの範囲内にあることを意味する。当業者であれば理解できるように、材料の調製プロセスの制限により、材料の「孔径の範囲がa~b nmである」とは、少量の孔の孔径がa nm乃至b nmの範囲外にあることを排除しない。したがって、「孔径の範囲がa~b nmである」とは、孔の個数を基に、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の孔の孔径の大きさがいずれもa nm乃至b nmの範囲内にあることを意味する。例えば、透過型電子顕微鏡を用いてランダムに選択された材料の1つ又は複数(例えば、3個、5個又は10個)の領域を観察することにより、領域内の孔径を統計して、孔径の大きさが指定の範囲内にある孔の割合を決定することができる。
【0041】
本発明の多孔質カーボンブロック材は、空隙率が高い。本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、前記多孔質カーボンバルク材の空隙率は、50~87%であってもよく、56~82%であることが好ましく、60~80%であることがより好ましい。本明細書において、多孔質カーボンバルク材の空隙率は、測定により得られたサンプルの密度及び黒鉛の理論密度に基づいて算出して取得される。具体的に、空隙率の算出方法は、以下の式のとおりである。
k=1-ρサンプル/ρ黒鉛
ここで、kは空隙率であり、ρサンプルはサンプルの密度であり、ρ黒鉛は黒鉛の理論密度(2.26g/cm)である。
【0042】
サンプル密度の測定、算出方法については後述する。
【0043】
本発明の多孔質カーボンバルク材は、孔が密閉孔である。透過型電子顕微鏡により観察すると、焼結後の湾曲した多層グラフェンシート層が混乱して配列され、湾曲したグラフェンが互いに架橋、支持して、大量のナノスケールの密閉孔が形成されている。本明細書において、「材料中の孔が密閉孔である」とは、例えば、透過型電子顕微鏡により観察する場合、材料中の多くの孔が密閉孔であることを意味する。当業者であれば理解できるように、材料の調製プロセスの制限により、材料の「材料中の孔が密閉孔である」とは、少数又は個別の孔が開放孔であることを排除しない。したがって、「材料中の孔が密閉孔である」とは、孔の個数を計数することにより、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、最も好ましくは少なくとも98%の孔が密閉孔であることを意味する。例えば、透過型電子顕微鏡を用いてランダムに選択された材料の1つ又は複数(例えば、3個、5個又は10個)の領域を観察することにより、領域内の孔に対して分析及び統計を行って、密閉孔の割合を決定することができる。
【0044】
走査型電子顕微鏡により観察すると、本発明の多孔質カーボンバルク材の断面の表面は平らであり、そのうち、ミクロン孔がほとんど存在しない(例えば、個数を計数すると、ミクロン孔が3‰未満であり、より好ましくは1‰未満である)。
【0045】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材は、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子によって調製される。アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を使用することについて、一方では、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドが準安定相であるため、焼結工程において、黒鉛化構造の変化が発生し、且つ、体積の膨張に伴って、粒子間の結合に有利であるため、バルクの強度を向上させ、他方では、アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンド粉体の表面の活性が高いため、焼結工程において、急速に黒鉛化して高曲率のグラフェンシート層を形成し、これらのグラフェンシート層が互いに架橋、支持して、気孔を形成しやすく、材料の密度を低下させる。また、小さい粒径のダイヤモンドから相転移されたオニオンライクカーボンのグラフェンシート層の曲率がより高く、均一に分布した空洞を形成しやすくなるとともに、層間の架橋も生成しやすく、グラフェンのシート層とシート層との間に安定的な接続を形成し、外力の作用下で弾性変形しやすいが、破壊しにくいため、サンプルの弾性限界を向上させる。本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、上記アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは、5~400nmであり、5~350nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましい。
【0046】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、多孔質カーボンバルク材の密度は、0.3~1.1g/cmであり、0.4~1.0g/cmであることが好ましく、0.5~0.9g/cmであることがより好ましい。特に、本発明の多孔質カーボンバルク材の密度は、0.7g/cm以下であることが好ましく、例えば、0.5~0.7g/cmである。
【0047】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材の密度は、サンプルの質量を体積で割ることによって得られる。まず、サンプルを直径が20mmで、高さが5mmの円柱体に加工し、円柱体の体積の計算式に基づいてサンプルの体積Vサンプルを算出し、そして、高精度電子天秤でサンプルの質量mサンプルを測定する。サンプルの密度ρサンプル=mサンプル/Vサンプル
【0048】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは5%以上であり、好ましくは、多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは6%以上であり、より好ましくは、多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは7%以上である。
【0049】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、多孔質カーボンバルク材の圧縮強度は、100MPaより大きく、150MPaより大きいことが好ましく、例えば、本発明の多孔質カーボンバルク材の圧縮強度は、100~400MPaであってもよく、120~350MPaであることが好ましく、150~300MPaであることがより好ましい。
【0050】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみ及び圧縮強度は、GB/T 8489-2006に記載の方法に従って測定される。圧縮強度及び圧縮ひずみの測定は、本分野の常用の材料機械的性質試験機により行われてもよく、室温下で測定サンプルに対して各種の性能測定を行い、測定サンプルは円柱体であってもよく、測定サンプルのサイズは、例えば、直径が3mmで、高さが4.5mmであり、材料機械的性質試験機でロードされたひずみ速度は、例えば、1×10-5~1×10-2である。本発明で用いられる材料機械的性質試験機は、例えば、中国済南金銀豊器械会社のTE-3000型材料機械的性質試験機である。
【0051】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、上記多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は10×10-5Pa・m/s以下であり、好ましくは、本発明の多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は5×10-5Pa・m/s以下であり、より好ましくは、本発明の多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率が2×10-5Pa・m/s以下である。例えば、本発明の多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は0.2×10-5~10×10-5Pa・m/sであり、好ましくは1×10-5~5×10-5Pa・m/sであり、より好ましく1×10-5~2×10-5Pa・m/sであり、さらに、0.2×10-5~1×10-5Pa・m/sに達する。
【0052】
本明細書において、サンプルの密封性は、そのヘリウム漏れ率を測定する方法により表される。ヘリウムガスは、最も小さいガス分子の一つであり、小さな亀裂や小穴に侵入し易い。ヘリウムガスは、化学的不活性を有し、測定部品内のいかなる材料とも反応せず、大気中に微量(5ppm)しか存在しない。ヘリウム漏れ率により装置やデバイスの気密性を表すことは、既に現在工業的に広く用いられている高精度気密性測定方法となっている。ヘリウム漏れ率の測定は、自主的に組み立てられた装置により実行される。図9は、ヘリウム漏れ率試験機の概略図であり、それは、ヘリウムボンベ1、圧力センサー2、試験工具3及びサクションガン4を備え、ここで、サクションガン4は漏れ検知装置に接続されている。図10は、図9のヘリウム漏れ率試験機における試験工具3の部分拡大図であり、それは、弾性シールリング5、ヘリウム吸気口6、キャビティ7、被検サンプル8、ボルト締結蓋板9及びヘリウム排気口10を備える。図9図10に示すように、ヘリウム漏れ率測定は、以下のように行われている。試験媒体はヘリウム(He)であり、被検サンプル8は試験工具3に配置され、試験工具3のヘリウム吸気口6はヘリウムボンベ1に接続され、ヘリウム吸気口6には一定量の気圧P吸気口が設定され、ヘリウム排気口10は開けられて被検サンプル8が入れられ、そして、ボルト締結蓋板9を用いてヘリウム排気口10を覆う。ボルト締結蓋板9には、弾性シールリング5を取り付け可能な突出したシールロッドが設けられ、シールロッドにおける被検サンプル8に接触する部分には、大気に通じる漏れ孔が設けられている。キャビティ7内にヘリウムを注入し、保圧時間は、例えば3minである。ヘリウム漏れ検知装置の測定値の変化を監視する。被検サンプル8は、ヘリウムの漏れが発生すれば、サクションガン4に接続されているヘリウム漏れ検知装置により検知され、ヘリウム漏れ検知装置に装着されたデジタルディスプレイから静圧下でのリアルタイム漏れ率を読み取ることができる。
【0053】
本発明の多孔質カーボンバルク材は、好ましくは、比較的高い圧縮ひずみ(≧5%)を有し、応力除去後に圧縮ひずみがゼロになり、即ち、ゴムと類似した性質を多く表すため、「ゴムライクカーボン」と呼ばれている。好ましくは、上記多孔質カーボンバルク材は「高弾性」を有し、より好ましくは、本明細書に記載のゴムライクカーボンはさらに本明細書に記載の非常に低いヘリウム漏れ率を有し、好ましくは、「高密封性」又は「高気密性」を有する。さらに好ましくは、本明細書に記載のゴムライクカーボンは、本明細書に記載の密度をさらに有し、好ましくは、「軽量」である。透過型電子顕微鏡により観察すると、本発明の多孔質カーボンバルク材は、湾曲した多層グラフェンを孔の境界とする三次元多孔質構造を呈する。具体的に、混乱して配列され且つ互いに架橋された多層グラフェンシート層、及びグラフェンシート層間に形成された大量のナノスケール孔で構成され、これらの孔は密閉孔である。本明細書において、多孔質カーボンバルク材の「高密封性」又は「高気密性」は、このようなゴムライクカーボン構造を有することに起因する。好ましくは、本発明の多孔質カーボンバルク材には、ミクロン孔がほとんど存在しない。
【0054】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材の「高密封性」とは、多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率が5×10-5Pa・m/s以下であることを指す。
【0055】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材の「高弾性」とは、多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみが約5%以上であり、好ましくは約7%以上であり、より好ましくは約10%以上である。したがって、特に好ましくは、本発明の多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは、10%以上である。より好ましくは、上記多孔質カーボンバルク材の圧縮ひずみは、応力除去後にゼロになる。
【0056】
本明細書において、多孔質カーボンバルク材が「軽量」であることは、多孔質カーボンバルク材の密度が非常に低いことを指し、例えば、0.3~1.1g/cmであってもよく、0.4~1.0g/cmであることが好ましく、0.5~0.9g/cmであることがより好ましく、0.7g/cm以下であることが特に好ましく、例えば、0.5~0.7g/cmであってもよい。
【0057】
本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様に記載の多孔質カーボンバルク材の調製方法を提供し、それは、
アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を前駆体粉末として使用する、工程A)と、
工程A)の前駆体粉末を金型に入れ、プリプレス成型によりプリプレスプリフォームを取得する、工程B)と、
工程C)であって、工程B)により取得されるプリプレスプリフォームを焼結金型に入れた後、プリプレスプリフォームを含む焼結金型を焼結装置に入れ、焼結圧力を印加し、その後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行い、ここで、
焼結圧力は、5~150MPaであり、
焼結温度は、1000~2000℃であり、
昇温速度は、5~200℃/minであり、
保温時間は、0~30minである、工程C)と、
金型を取り出し、離型して多孔質カーボンバルク材を取得する、工程D)と、を含む。
【0058】
本発明の多孔質カーボンバルク材の一つの好ましい実施形態において、工程A)のアモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子の結晶粒の大きさは、5~400nmであり、5~350nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましい。
【0059】
本発明の方法の工程B)において、プリプレス成型は、双方向で圧力を印加する。好ましくは、プリプレス成形における印加される圧力は、1~20MPaであり、2~15MPaであることが好ましく、2~10MPaであることがより好ましく、2~5Mpaであることが最も好ましい。好ましくは、プリプレス成形の保圧時間は、1~20minであり、1~15minであることが好ましく、1~10minであることがより好ましく、1~5minであることが最も好ましい。
【0060】
本発明の方法の工程C)において、工程B)により取得されるプリプレスプリフォームを焼結金型に入れた後、プリプレスプリフォームを含む焼結金型を焼結装置に入れ、焼結圧力を印加し、焼結を行う。
【0061】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結は、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結である。本明細書において、放電プラズマ焼結又はホットプレス焼結は、既知の装置を使用して実行することができ、例えば、市販の入手可能な装置を使用すればよく、例えば、住友石炭鉱業株式会社から購入されたSPS-3.20MK-I放電プラズマ焼結装置又は日本富士電波工業会社から購入されたHIGH-MULTI-5000ホットプレス焼結装置である。
【0062】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結圧力は、5~150MPaに設定されてもよく、8~150MPaであることが好ましく、10~100MPaであることがより好ましい。この圧力範囲内にある場合、比較的低い温度下での高強度の焼結体の取得を保証することができ、印加圧力がより小さく、産業的コストを低下させ、産業的に大量に生産し易くするとともに、当該圧力範囲はダイヤモンドナノ粉体の相転移速度を制御でき、結晶の成長が速すぎることを防止できる。
【0063】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結温度は、1000~2000℃に設定されてもよく、より好ましくは1400~2000℃である。
【0064】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、昇温速度は、8~150℃/minに設定されてもよく、より好ましくは10~100℃/minである。
【0065】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、保温時間は、0~20minに設定されてもよく、より好ましくは0~15minである。
【0066】
本発明の方法の工程C)において、好ましくは、焼結金型は、黒鉛金型であり、黒鉛金型の周囲がカーボンフェルトにより包まれ、好ましくは、焼結金型は、黒鉛金型であり、プリプレスプリフォームと黒鉛金型との間は、黒鉛紙により隔離され、黒鉛金型の周囲は、カーボンフェルトにより包まれている。黒鉛金型の周囲がカーボンフェルトにより包まれ、カーボンフェルトにより黒鉛金型の真中の隙間が囲まれ、黒鉛金型中の熱拡散を減らし、黒鉛金型の内部の温度勾配を減らすことができるため、焼結体の微細構造及び機械的性質の不均一を回避することができる。
【0067】
好ましくは、本発明の方法の工程C)において、焼結に工程の前に、任意に、まず、2~10MPaの初期圧力を印加し、真空度が1×10-1Paを超えるまで真空を引いた後に、さらに焼結圧力を印加する。
【0068】
本発明の方法の一つの好ましい実施形態において、工程C)において、焼結圧力が設定値に安定された後に焼結温度まで昇温させ、保温し、焼結を行う。
【0069】
好ましくは、焼結が完了した後、工程D)の前に、工程C’)を含み、工程C’)において、冷却し、常圧まで圧力を開放させ、好ましくは、冷却速度が100~1000℃/minである。
【0070】
本発明の方法の各実施形態、好ましい実施形態、より好ましい実施形態等において、多孔質カーボンバルク材の孔径の大きさ、空隙率、密度、圧縮ひずみ、圧縮強度、ヘリウム漏れ率等の各パラメータの試験方法は、本発明の第1態様の多孔質カーボンバルク材に対して記述された方法と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0071】
本発明の方法により調製される多孔質カーボンバルク材は、本発明の第1態様の多孔質カーボンバルク材に対して記述されたゴムライクカーボンであり、詳細な構造は上記の通りであり、ここでは説明を省略する。
【実施例
【0072】
以下、実施例と組み合わせて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
材料
アモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粉末は、結晶粒の大きさが5~300nmであり、InnoChem Science & Technology Co.,Ltd.から購入される。
【0074】
計器装置
X線回折計は、Bruker D8 Advanceである。
透過型電子顕微鏡は、Talos F200X型であり、Thermo Fisher Scientific会社から購入される。
走査電子顕微鏡は、Helios5型であり、Thermo Fisher Scientific会社から購入される。
材料機械的性質試験機は、TE-3000型であり、中国済南金銀豊器械会社から購入される。
ヘリウム漏れ率試験機は、自主的に組み立てられた装置であり、詳細は、上記及び下記の「性能測定」の内容を参照する。
放電プラズマ焼結装置は、SPS-3.20MK-Iであり、住友石炭鉱業株式会社から購入される。
ホットプレス焼結装置は、HIGH-MULTI-10000であり、日本富士電波工業会社から購入される。
【0075】
実施例1
多孔質カーボンバルク材は、以下の工程により、調製される。
工程A)において、材料を配合する。前駆体粉末として1gのアモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドナノ粒子を計量する。
工程B)において、材料を充填する。工程A)により計量された前駆体粉末を内径15mmの金型内に置き、双方向で圧力を印加してプリプレス成型を行い、圧力の大きさが5MPaで、保圧時間が5minであり、プリプレス成形した後に、プリプレスプリフォームを取得する。
工程C)において、工程B)により取得されたプリプレスプリフォームを焼結用黒鉛金型に入れ、プリプレスプリフォームと黒鉛金型との間が黒鉛紙により隔離され、黒鉛金型の周囲はカーボンフェルトにより包まれ、プリプレスプリフォームを含む焼結金型を取得する。次に、上記プリプレスプリフォームを含む焼結金型を放電プラズマ焼結装置に入れ、放電プラズマ焼結を行い、5MPaの初期圧力を印加し、真空度が5×10-1Paになるまで真空を引き、その後に10MPaの焼結圧力を印加し、焼結圧力が安定された後に焼結温度が1400℃になるまで昇温させ、昇温速度が100°C/minで、保温時間が1minで焼結を行い、焼結が完了した後に加熱プログラムをオフにし、降温させ且つ放圧する。
工程D)において、材料を排出する。装置内の温度が冷却した後に金型を取り出し、離型して多孔質カーボンバルク材を取得する。
【0076】
実施例2
実施例1に類似の方法により多孔質カーボンバルク材を調製し、その相違とは、ホットプレス焼結を使用することであり、ここで、ホットプレス焼結を行う各パラメータは、表1に示す通りである。
【0077】
実施例3
実施例1に類似の方法により多孔質カーボンバルク材を調製し、その相違とは、放電プラズマ焼結のパラメータを変更することであり、本実施例の具体的なパラメータは、表1に示す通りである。
【0078】
【表1】
【0079】
性能測定
以下、各性能測定は、いずれも室温常圧下で行う。
【0080】
圧縮強度及び圧縮ひずみは、GB/T 8489-2006に記載の方法に従って、材料機械的性質試験機により測定される。被検サンプルは円柱体であり、円柱体サンブルは、直径が3mmで、高さが4.5mmであり、材料機械的性質試験機でロードされたひずみ速度は、5×10-4である。
【0081】
密度は、サンプルの質量を体積で割ることによって得られる。まず、サンプルを直径が20mmで、高さが5mmの円柱体に加工し、円柱体の体積の計算式に基づいてサンプルの体積Vサンプルを算出し、高精度電子天秤でサンプルの質量mサンプルを測定する。サンプルの密度 ρサンプル=mサンプル/Vサンプルである。
【0082】
空隙率は、測定により得られたサンプルの密度及び黒鉛の理論密度に基づいて算出して取得される。具体的に、空隙率の算出方法は、以下の通りであり、
k=1-ρサンプル/ρ黒鉛
ここで、kは空隙率であり、ρサンプルはサンプルの密度であり、ρ黒鉛は黒鉛の理論密度(2.26g/cm)である。
【0083】
透過型電子顕微鏡画像:瑪瑙乳鉢を使用してサンプルを粉砕し、アルコールに入れて超音波分散を行い、それから、アルコール及びサンプルの混合液体を10分間放置し、スポイトを使用して上清液を取り、銅マイクログリッドに滴下し、マイクログリッド上のアルコールが蒸発された後に、サンプル粉末を含むマイクログリッドを透過型電子顕微鏡に置いて観察する。
【0084】
孔径の大きさは、高解像透過型電子顕微鏡画像から、ランダムに選択された材料の代表的な領域を直接測定して取得される。
【0085】
サンプルの密封性は、そのヘリウム漏れ率を測定することにより表される。ヘリウムガスは、最も小さいガス分子の一つであり、小さな亀裂や小穴に侵入し易い。ヘリウムガスは、化学的不活性を有し、測定部品内のいかなる材料とも反応せず、大気中に微量(5ppm)しか存在しない。ヘリウム漏れ率により装置やデバイスの気密性を表すことは、既に現在工業的に広く用いられている高精度気密性測定方法となっている。ヘリウム漏れ率の測定は、自主的に組み立てられた装置(図9図10を参照)により以下の方式に従って行われる。試験媒体はヘリウム(He)であり、被検サンプル8は試験工具3に配置され、試験工具3のヘリウム吸気口6はヘリウムボンベ1に接続され、ヘリウム吸気口6には一定量の気圧P吸気口が設定され、ヘリウム排気口10は開けられて被検サンプル8が入れられ、そして、ボルト締結蓋板9を用いてヘリウム排気口10を覆う。ボルト締結蓋板9には、弾性シールリング5を取り付け可能な突出したシールロッドが設けられ、シールロッドにおける被検サンプル8に接触する部分には、大気に通じる漏れ孔が設けられている。キャビティ7内にヘリウムを注入し、保圧時間は、例えば3minである。ヘリウム漏れ検知装置の測定値の変化を監視する。被検サンプル8は、ヘリウムの漏れが発生すれば、サクションガン4に接続されているヘリウム漏れ検知装置により検知され、ヘリウム漏れ検知装置に装着されたデジタルディスプレイから静圧下でのリアルタイム漏れ率を読み取ることができる。
【0086】
測定結果
孔径の大きさ
上記方法に従って、実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材の孔径を測定し、測定結果は、表2に示す通りである。上記から分かるように、本発明の多孔質カーボンバルク材は、孔径が小さい。
【0087】
空隙率
上記方法に従って、実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材の空隙率を測定及び算出し、測定結果は、表2に示す通りである。上記から分かるように、本発明の多孔質カーボンバルク材は、空隙率が高い。
【0088】
密度
図1の(a)に示すように、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材は、不透明な黒色バルクである。図1の(b)に示すように、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材は、水に浮遊し、サンブルの密度が水の密度(1g/cm)よりも小さいことが明らかに観察でき、上記方法に従って測定すると、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材は、密度が0.5g/cmである。表2に示すように、実施例2及び実施例3により調製される多孔質カーボンバルク材は、類似の形状及び水より小さい密度を有する。
【0089】
ヘリウム漏れ率
上記方法により測定して、実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率を取得し、それは表2に示す通りである。上記から分かるように、本発明の多孔質カーボンバルク材は、ヘリウム漏れ率が非常に低いため、高い気密性を有する。
【0090】
ヘリウム漏れ率の測定から分かるように、各実施例の多孔質カーボンバルク材は、ヘリウム漏れ率が2×10-5Pa・m/s以下であり、ゴムのヘリウム漏れ率に相当する(1×10-5Pa・m/s)。ヘリウム漏れ率の測定の結果は、一方で、本発明の材料が高い気密性の特徴を有するため、密封材料とすることが可能であることを直接表し、他方で、本発明の多孔質カーボン材料の孔が密閉孔であることを証明する。
【0091】
態様及び構成
X線回折計を利用して、実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材を分析する。図2に示すように、実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材におけるアモルファスカーボンにより被覆されるダイヤモンドは、乱層黒鉛構造に完全に相転移されることが分かる。
【0092】
図3及び図4は、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材の透過型電子顕微鏡画像であり、これから見られるように、調製されたカーボンバルク材は、混乱して配列された多層グラフェンで構成されている。湾曲したグラフェンが互いに絡み合って架橋することにより、大量の密閉気孔が形成され、気孔の大きさは、5~30nmの範囲内にある。これらの孔が密閉孔であるため、調製された多孔質カーボンバルク材は、非常に低いヘリウム漏れ率を有する。実施例2及び実施例3により調製される多孔質カーボンバルク材は、類似の組織構造を有するため、非常に低いヘリウム漏れ率を有する。実施例1~3により調製される多孔質カーボンバルク材のヘリウム漏れ率は、表2に示す通りである。
【0093】
図5は、実施例1により調製される多孔質カーボンブロック材の走査型電子顕微鏡画像である。図5に示すように、本発明により調製される多孔質カーボンバルク材は、断面の表面が平らであり、これは、多孔質カーボンバルク材の内部の孔が小さく、走査型電子顕微鏡下で気孔を観察することができないことを意味する。実施例2及び実施例3により調製される多孔質カーボンバルク材は、類似の大きさの孔を有する。
【0094】
圧縮強度及び圧縮ひずみ
図6の(a)は、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材の単一圧縮応力―ひずみグラフを示し、圧縮強度が175MPaであり、圧縮ひずみが12.2%であり、応力―ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有する。図7の(a)は、実施例1により調製される生成物のサイクル圧縮応力―ひずみグラフを示し、最大圧縮強度が168MPaであり、最大圧縮ひずみが11%であり、また、応力除去後のサンプルのひずみが完全に回復することは、サンプルが純粋な弾性変形であることを示す。図5は、実施例1により調製される多孔質カーボンバルク材を空気雰囲気の600℃下で測定した際に得られるサイクル圧縮応力―ひずみグラフであり、高温下でも依然として弾性をほぼ保持する。
【0095】
図6の(b)は、実施例2により調製される多孔質カーボンバルク材の単一圧縮応力―ひずみグラフを示し、圧縮強度が240MPaであり、圧縮ひずみが9.8%であり、応力―ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有する。図7の(b)は、実施例2により調製される多孔質カーボンバルク材のサイクル圧縮応力―ひずみグラフを示し、最大圧縮強度が225MPaであり、最大圧縮ひずみが8%であり、また、応力除去後のサンプルのひずみはゼロになる。
【0096】
図6の(c)は、実施例3により調製される多孔質カーボンバルク材の単一圧縮応力―ひずみグラフを示し、圧縮強度が301MPaであり、圧縮ひずみが7.7%であり、応力―ひずみグラフは明らかな非線形特徴を有する。図7の(c)は、実施例3により調製される多孔質カーボンバルク材のサイクル圧縮応力―ひずみグラフを示し、最大圧縮強度が285MPaであり、最大圧縮ひずみが7%であり、また、応力除去後のサンプルのひずみはゼロになる。
【0097】
【表2】
【0098】
上記の実施例は、いずれも本発明の好ましい実施形態であり、これによって本発明の保護範囲が限定されることはない。当業者にとって、本発明に開示の技術的範囲内で、いかなる変更及び改善を行うことができるが、これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。よって、本発明の保護範囲は添付された特許請求の範囲を基準とすべきである。
【0099】
本発明の明細書は、様々な成分として選択可能な材料を列挙しているが、当業者であれば、上記の構成材料の列挙は限定的でも網羅的でもなく、本発明の説明において言及されていない同等の材料によって置き替えても、依然として本発明の目的を実現できることを理解すべきである。本明細書で言及された具体的な実施例は、例として本発明の範囲を限定するのではなく、単に説明のためのものである。
【0100】
また、本発明の各成分の使用範囲には、説明に記載された任意の下限及び任意の上限の任意の組み合わせが含まれ、各具体的な実施例における成分の具体的な含有量を上限又は下限として組み合わせて形成される任意の範囲も含まれ、これらの範囲は全て本発明の範囲に含まれるが、スペースを節約するために、これらの組み合わせによる範囲は明細書には記載されていない。本明細書に列挙された本発明の各特徴は、本発明の他の任意の特徴と組み合わせることができ、これら組み合わせも全て本発明の範囲に含まれるが、スペースを節約するために、これらの組み合わせによる範囲は明細書には記載されていない。
【符号の説明】
【0101】
1 ヘリウムボンベ
2 圧力センサー
3 試験工具
4 サクションガン
5 弾性シールリング
6 ヘリウム吸気口
7 キャビティ
8 被検サンプル
9 ボルト締結蓋板
10 ヘリウム排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10