(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する分離及び純化方法
(51)【国際特許分類】
C01B 7/19 20060101AFI20240722BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20240722BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C01B7/19 C
B01D53/047
B01D71/02
(21)【出願番号】P 2022506378
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 CN2021094244
(87)【国際公開番号】W WO2022127018
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】202011490114.0
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522040137
【氏名又は名称】浙江天采云集科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヤーリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ランハイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ユーミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユン
(72)【発明者】
【氏名】タン ジンカイ
(72)【発明者】
【氏名】サイ ユエミン
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-501579(JP,A)
【文献】特表2017-532341(JP,A)
【文献】特開平04-228401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0366260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/19
B01D 53/047
B01D 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)
50~80℃の間で冷熱交換され、0.2~0.3MPaまで増圧された
原料ガスに対して行われる中温変圧吸着工程であって、
当該中温変圧吸着工程は第一段PSA及び第二段PSAを含む二段変圧吸
着から構成さ
れ、
当該第一段PSA及び当該第二段PSAの各々は少なくとも2以上の吸着塔
を用い、
当該少なくとも2以上の吸着塔のうち少なくとも1の吸着塔は吸着工程にあり、残りの吸着塔は逆方向減圧
、真空排気、昇圧
、又は最終充
填にあり、
当該原料ガス
が当該第一段PSA
における吸着塔の塔底
に入
れられ、
当該第一段PSAの操作圧力は0.2~0.3MPaであり、操作温度
は50~80℃であり、
当該吸着工程にある吸着塔の塔頂か
ら非吸着相ガス
として純HFガス
が得られ、
当該純HFガスにおいて不純物が凝結
により純HF液体及び不凝ガスが得られ、当該凝結された後の不凝ガス
が、精密濾過され、脱イオン水
に吸収
させた後
、濃度が40~49%であるHF水溶液が
得られ、
当該第一段PSAの吸着塔の塔底から流出する脱離ガス
が、増圧
されて冷熱交換
された後、
当該第二段PSAの吸着塔の塔底
に入
れられ、
当該第二段PSA
の吸着塔の操作圧力は0.2~0.3MPaであり、操作温度は50~80℃であり、
当該第二段PSAの吸着塔の塔頂から流出する非吸着相の中間ガス
が、原料ガスと混合
され、
当該第一段PSA
の吸着塔に戻
され、
当該第二段PSAの吸着塔の塔底から流出する脱離ガス
が濃縮ガスで
ある、
中温変圧吸着工程と、
(2)
前記中温変圧吸着工程
において得られた
前記純HF液体
を膜分離する膜分離工程であって、
1.0~1.6MPaまで増圧され、温度
が50~80℃であ
る当該純HF液体が、無機セラミック膜又はステンレス鋼膜分離システム
であって、膜孔径
が1マイクロメートル未満であ
る膜分離システムを透過し、
浄化純HF液体が得られ、
当該浄化純HF液体において直径が1μmより大きい
不純物のSS粒子の含量
が25(個)単位/ミリリットル(Ea/ml)未満であり、
当該膜
分離システムを透過していな
いSS粒子濃縮液
が、濃縮さ
れ、冷却、沈殿さ
れた後、SS粒子
が除去され、液体
が加熱加圧
された後、
当該膜分離システムに戻
され、更に
当該SS粒子が除去された液体の有効留分
が回収
される、
膜分離工程と、
(3)
前記膜分離工程から
得られた前記浄化純HF液体
を精留するHF精留工程
であって、
当該浄化純HF液体が、上下二段階の精留
塔の構成を
有する精留塔に入れられ、
当該浄化純HF液体
が、下段精留
塔の頂部又は上段精留
塔の底部から入
れられ、
当該上段精留塔の塔頂から取り除
かれた軽留分不純物ガス
がその後の排気ガス吸収工程に
送られ、
当該上段精留
塔の底部又は
当該下段精留
塔の頂部の蒸留物が凝結した後に
得られる不凝ガス
は純度
が99.99%より
高いAHFガスであり、
凝縮した後
に得られる液体は、
当該上段
精留塔又は
当該下段精留
塔に回流
され、
当該下段精留
塔の底部から蒸留され
た重留分を含む不純物留分の塔底物の流体
を凝結した後に
得られる不凝ガス
が前記中温変圧吸着工程に戻
される、
HF精留工程と、
(4)前記中温変圧吸着工程から
得られる前記濃縮ガス
を処理するアンモニア水脱炭工程であって、
当該濃縮ガスは常圧又は僅かな過圧まで増圧
された後、アンモニア水、硫酸
、及び
前記HF精留工程の下段
精留塔から精留
された蒸留物が比率に基づき
混合及び凝結され、当該混合及び凝結により得られた液体が吸収剤とし
てアンモニア水脱炭吸収塔
に入れられ、
炭酸水素アンモニウム
及びフッ化水素アンモニウ
ムの混合溶液
が当該アンモニア水脱炭吸収塔の底から得られ、
当該混合溶液がフッ素ケイ酸法
によるAHF生産過程における原料
として用いられる、
アンモニア水脱炭工程と
を含む
、工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【請求項2】
前記
中温変圧吸着工程(1)に記載の原料ガスは、蛍石法又はフッ素ケイ酸法が調製する非水フッ化水素(AHF)生産過程において生成される工業レベル高濃度フッ化水素(HF
)ガス
であり、
当該工業レベル高濃度フッ化水素ガスは、95~99%(v/v)
のHF
、硫酸(H
2SO
4)、水(H
2O)、二酸化硫黄(SO
2)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、アンモニア(NH
3)、フッ素ケイ酸(H
2SiF
6)、二酸化炭素(CO
2)、クロライド(HClで計算する)、
並びに金属イオン(Me+)及び微細粒子(SS)その他の不純物留分
を含み、
当該金属イオンは、主に水溶性のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ヒ素(As)イオン
であり、
当該微細粒子の直径は1マイクロメートル(μm)より大きく、
温度が20~60℃であり、圧力は常圧又は微圧である
ことを特徴とする請求項1に記載の工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【請求項3】
前記膜分離工程(2)
における前記膜分離システム
は、マイクロフィルタ膜又は限外濾過膜を膜モジュールと
して有する
ことを特徴とする請求項1に記載の工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【請求項4】
前記HF精留工程の
前記上段精留塔の塔頂から蒸留する軽留分不純物ガスは、
前記アンモニア水脱炭吸収塔の塔頂からの不凝ガスと混合
され、硫酸を吸収剤とする排気ガス吸収塔に入
れられ、
当該排気ガス吸収塔の底からフッ素ケイ酸溶液
が得られ、
当該フッ素ケイ酸溶液が、フッ素ケイ酸法
による非水フッ化水素AHF生産過程の原料
として循環使用
され、
当該排気ガス吸収塔の塔頂から流出する不凝ガス
が排ガスとして直接排出
される、排気ガス吸収工程
を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【請求項5】
前記中温変圧吸着工程における吸着塔には、活性酸化アルミニウム、シリカゲル
、及び分子篩とが装填されており、
前記第一段PSA
の吸着塔に装填される吸着剤組成物における酸化アルミニウム:シリカゲル:分子篩の重量比率は(4-6):(2-4):(1-3)であり、
前記第二段PSA
の吸着塔で装填する吸着剤組成物における酸化アルミニウム:シリカゲル:分子篩の重量比は(3-5):(1-3):(3-5)である
ことを特徴とする請求項1に記載の工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【請求項6】
前記HF精留工程から得られる前記AHFガスは、更に凝結
されてAHF液体
が得られ、
当該AHF液体はフッ素交換樹脂に入
れられ、更に
金属イオンが除去
され、UPSS電子レベルのAHF液体
が得られ、
当該UPSS電子レベルのAHF液体は、脱イオン水と任意に調合
され、HF溶液
が得られる
ことを特徴とする請求項1に記載の工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する
精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業レベルの高濃度フッ化水素(HF)を原料として、電子レベルのHFを調製する浄化純化に関する創作である。更に具体的に述べると、工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSA(全温程変圧吸着)に精製する分離及び純化方法に関する創作である。
【背景技術】
【0002】
フッ化水素(HF)は、フッ素化学の基本的な原料であり、有機フッ素、無機フッ化物塩及びその他含フッ素触媒剤、フッ素ケイ酸等の分野の製造に使用できる。HFは、冷媒、界面活性剤、フッ素ゴム、フッ素塗料、含フッ素樹脂、含フッ素農薬、高純度フッ素樹脂、医薬中間体等の有機フッ素分野における応用はますます増えている。現在、半導体産業の発展につれて、超高純度の電子レベルHF(ガスと液体)は、集積回路(IC)と超大規模集積回路(VLSI)のウエハの洗浄、エッチング及び化学蒸着工程に既に広く応用されており、マイクロ電子業界製造工程において、キーポイントとなる基礎化学材料の一つである。また、分析試薬として用いられ、高純度フッ素含有薬品や半導体材料を調製することもできる。
【0003】
現在、工業的な高純度のHFの調製と抽出は、主に工業レベル高濃度のHFを原料とし、蒸留/精留及び膜分離を主な精製方法として採用しており、精留、蒸留、サブボイリング蒸留、減圧蒸留、ガス吸収、マイクロフィルタ、限外濾過、ナノ濾過及び各種構成等を含む。これらの伝統的な純化工程において、原料(液体/ガス)の各留分とHFとの間で異なる温度下における揮発度(沸点)、溶解度又は分子の大きさの差異を利用して、原料の中の不純物を分別分離して、浄化除去することで、純度相当の非水HF(AHF)商品を得ることができる。原料における主要な不純物留分は、フッ素ケイ酸(H2SiF6)、水(H2O)、塩化物(主に、塩化水素HCl)、リン化物(P)、金属酸化物(MeO)、金属イオン及び固体顆粒(SS)等である。電子レベルのHF商品は、EL(一般電子レベル)、UP(超純)、UPS(超高純)、UPSS(超高高純)に分類され、国際半導体業界協会(SEMI)もSEMI-C/Sレベルに対応する標準を制定し、当該標準はUPS/UPSSレベルに相当する。例えば、中国国内で一般的に使用されているUP電子レベルHF(液体)指標は、H2SiF6含量は100ppm未満であり、クロライド(Cl)は5ppm未満であり、Pは1ppm未満であり、MeO/Me+は10ppb未満であり、SS(≧1μm)は25単位(個)/ミリリットル未満であるという標準等である。MeO/Me+は、特に、水溶性ヒ素(As)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)とカリウム(K)等のMeO/Me+不純物であり、必ずきれいに除去にする必要がある。そうでなければ、半導体ウエハの性能に重大な影響が生じる。半導体ウエハ洗浄剤又はウェットエッチングとしての電子レベルHF液体は、そのHF含量が例えば49%である等様々なレベルであり、残りはいずれも脱イオン水である。したがって、工業的には通常、蛍石法やフッ素ケイ酸法を採用しており、非水HF(AHF)を調製する生産過程の精留及び膜濾過の後に、純度が99.9%である純AHFガスを得られる。脱イオン水で吸収した後、シャワー密度、気液比及び膜濾過等を制御する方法を採用し、電子レベルフッ化水素酸を更に純化させて電子レベルHF液体商品を得ることができる。しかしながら、精留過程において、水、HF、及び蛍石法又はフッ素ケイ酸法工程自体から生成されるその他不純物、例えば、硫酸(H2SO4)、二酸化硫黄(SO2)、塩化水素(HCl)、四フッ化ケイ素(SiF4)、アンモニア(NH3)及び二酸化炭素(CO2)等の相互溶解性、及び精留分離が受ける相平衡の制約によりこれらの不純物とHFとを完全に分離することができないことから、得られる純AHFガスには依然として比較的多くの不純物留分が含まれており、それにより、その後の脱イオン水吸収、シャワー密度と気液比の制御、膜濾過等の工程において、これらその後の純化によって、微量又は極微量の不純物留分を除去することも非常に困難である。したがって、蛍石法やフッ素ケイ酸法からAHFを調製する生産過程において獲得した純AHF商品の純度を制御することは極めて重要である。それゆえに、95~99%含量の工業レベルHFやAHF原料ガスに精留、蒸留、サブ蒸留や特殊精留を直接行うと、不純物濃度が低すぎるため、精留又は蒸留のコストが非常に高い。不純物留分とHFとの間の沸点の相違が比較的大きいが、水分はその他各不純物留分の水中での物質移動の分配に影響するため、精留又は蒸留は相平衡に厳しい制限が課され、純化深度は電子レベルの要求には遠く及ばない。
【0004】
吸着法を採用してHF精製を行えるが報告されており、吸着剤は主にアルカリ性金属のフッ素化物であり、金属フッ素化物とHFとが比較的低い温度下で発生する化学反応を利用して、選択的に化学吸着を行い、金属フッ素化物-HFの錯体を形成する。錯体の分解反応は、吸着剤からHFの着脱するために比較的高い温度下で行うことで、吸着剤からの脱着を実現することができ、その他不純物は吸着剤における選択性はなくとも、HFの分離と浄化を実現することができる。この化学吸着法が適用される工程状況のほとんどは、フッ素化反応によりフルオロクロロアルカン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、フッ化スルフリル(SO2F2)等の商品を調製する場合であり、反応によって生成される反応混合ガスは、HFを選択的に吸着し、分離し、回収することができるため、その効果はよりよいが、吸着剤の損失率は大きい。水、硫酸又はSiF4等を含む蛍石法又はフッ素ケイ酸法で得られた粗HF又は純HFに対して、吸着剤が水等の不純物の留分と化学反応することで吸着剤が粉化してしまい、吸着剤の効果が著しく失われてしまうことで、有効に深度脱水不純物除去を行うことができない。特に重要なのは、吸着剤上におけるアルカリ性金属又は金属イオンは、HFと化学反応が発生し、HFガス自体に取り込まれることで、その後のHF純化が困難になってしまう。したがって、化学吸着法は、蛍石法又はフッ素ケイ酸法で調製するAHF工程に対してほとんど有効に応用することができない。
【0005】
これも、現在、我が国中国が低水準の電子レベルAHF商品しか生産することができない主な原因の一つであり、日韓両国で発生した電子レベル半導体化学品に関する貿易紛争において、日本がその技術的な優位性を以て韓国向けの電子レベルAHFの輸出を制限した重要な原因の一つである。日本は国際的に純度が99.9999%~99.99999999%(6N~12N)のAHFを調製する技術を有する極小数の国家である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の既存課題に対して、本発明は工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSA(全温程変圧吸着)に精製する分離及び純化方法を提供することにある。全温程変圧吸着(英文名称:Full Temperature Range-Pressure Swing Adsorption、略称:FTrPSA)は、変圧吸着(PSA)を基礎とし、各種分離技術と相結合することができる方法であり、工業レベルAHF(ガス)における各留分(HFは有効留分であるH2O、H2SO4、SO2、SiF4、NH3、CO2、H2SiF6及び微量のHCl、水溶性Me+イオン及びSS粒子を主な不純物留分とする)自体は、異なる圧力と温度下での吸着/精留/膜分離係数及び物理化学性質の差異性を利用して、主に二段階の中温変圧吸着工程を採用し、HFと精留/膜分離結合することで、中温変圧吸着工程における吸着と脱離が整合性と平衡との繰り返し操作により分離と純化を容易にできるようにすることで、電子レベルのHF商品の製造を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用する技術的思想は以下の通り。
【0008】
工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する分離及び純化方法において、原料ガスは蛍石法又はフッ素ケイ酸法が調製する非水フッ化水素(AHF)生産過程において生成される工業レベル高濃度フッ化水素(HF)のガス、含有濃度が95~99%(v/v)であるHF、及び硫酸(H2SO4)、水(H2O)、二酸化硫黄(SO2)、四フッ化ケイ素(SiF4)、アンモニア(NH3)、フッ素ケイ酸(H2SiF6)、二酸化炭素(CO2)、クロライド(HClで計算する)、金属イオン(Me+)及び微細粒子(SS)その他の不純物留分によるものであり、Me+は、主に水溶性のナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ヒ素(As)イオンとし、SS粒子の直径は1マイクロメートル(μm)より大きく、温度は20~60℃であり、圧力は常圧又は微圧であり、以下の工程を含む。
(1)原料ガスは、50~80℃の間で冷熱交換され、0.2~0.3MPaまで増圧された後、二段変圧吸着(PSA)から構成される中温変圧吸着工程に入り、各段変圧吸着は少なくとも2以上の吸着塔により構成され、少なくとも1の吸着塔は吸着工程にあり、残りの吸着塔は、逆方向減圧又は真空排気、昇圧又は最終充填その他の異なる段階の脱離工程にあり、原料ガスは第一段PSA(1#PSA)吸着塔の塔底から入り、1#PSAの操作圧力は0.2~0.3MPaであり、操作温度50~80℃であり、吸着工程にある吸着塔の塔頂から流出する非吸着相ガスは純HFガスであり、凝結した後の不凝ガスは精密濾過され、脱イオン水を吸収した後、得られる濃度が40~49%であるHF水溶液が一般的な電子ELレベルフッ化水素酸商品として輸出され、凝結した後に形成された純HFは次の工程である膜分離に入り、脱離工程にある1#PSA吸着塔の塔底から流出する脱離ガスは、増圧して冷熱交換した後、第二段PSA(2#PSA)の吸着塔の塔底から入り、2#PSA吸着塔の操作圧力は0.2~0.3MPaであり、操作温度は50~80℃であり、吸着工程にある2#PSA吸着塔の塔頂から流出する非吸着相の中間ガスは、原料ガスと混合し、1#PSA吸着塔に戻り、2#PSA吸着塔の塔底から流出する脱離ガスは濃縮ガスであり、その後のアンモニア水脱炭工程に入り、更に有効留分を回収する、中温変圧吸着。
(2)中温変圧吸着工程から凝結されて形成された純HF液体は、1.0~1.6MPaまで増圧され、温度は50~80℃であり、1級又は2級から構成される無機セラミック膜又はステンレス鋼膜分離システムに入り、膜孔径は1マイクロメートル未満であり、膜を透過した側から浄化純HF液体を流出させ、直径が1μmより大きいSS粒子の含量は25(個)単位/ミリリットル(Ea/ml)未満であり、次の工程であるHF精留に入り、膜を透過していない側にSS粒子濃縮液を濃縮させ、冷却、沈殿させた後、SS粒子を除去し、液体を加熱加圧した後、膜分離システムに戻し、更に有効留分を回収する、膜分離。
(3)膜分離工程からの浄化純HF液体がHF精留工程の精留塔に入り、本工程の精留塔は、上下二段階の精留の構成を採用し、浄化純HF液体は、下段精留の頂部又は上段精留の底部から入り、上段精留塔の塔頂から取り除いた軽留分不純物ガスはその後の排気ガス吸収工程に戻り、上段精留の底部又は下段精留の頂部の蒸留物が凝結した後に形成する不凝ガスはAHFガスであり、純度は99.99%より大きく、直接に電子UP又はUSPレベルAHFの商品ガスとし、凝縮した後形成される液体は、上段又は下段精留の回流とし、下段精留の底部から蒸留された少量の重留分を含む不純物留分の塔底物の流体が凝結した後に形成する不凝ガスは温変圧吸着工程に戻り、更に有効留分を回収し、凝結した後に形成する液体を吸収剤として、次の工程であるアンモニア水脱炭に入る、HF精留。
(4)中温変圧吸着工程からの濃縮ガスは、常圧又は僅かな過圧まで増圧した後、アンモニア水、硫酸及びHF精留工程下段から精留した蒸留物が凝結した後に形成した液体に入り、比率に基づき、吸収剤としてのアンモニア水脱炭吸収塔を混合し、吸収塔底から形成された炭酸水素アンモニウムとフッ化水素アンモニウムとの混合溶液から吐出し、直接フッ素ケイ酸法としてAHF生産過程における返料又は予備混合した反応物質を調製する、アンモニア水脱炭。
【0009】
更に、工程(2)の中膜分離システムはマイクロフィルタ膜又は限外濾過膜を膜モジュールとすることができる。
【0010】
更に、HF精留工程の上段精留塔の塔頂から蒸留する軽留分不純物ガスは、アンモニア水脱炭吸収塔の塔頂からの不凝ガスと混合して、硫酸を吸収剤とする排気ガス吸収塔に入り、吸収塔の底からフッ素ケイ酸溶液を形成し、原料として吐出し、フッ素ケイ酸法が調製する非水フッ化水素AHF生産過程の原料循環使用に直接戻ることができ、吸収塔の塔頂から流出する不凝ガスを排ガスとして直接排出する、排気ガス吸収工程も含む。
【0011】
更に、前記の中温変圧吸着工程における吸着塔には、活性酸化アルミニウム、シリカゲルと分子篩とが装填されており、1#PSA吸着塔に装填される吸着剤組成物における酸化アルミニウム:シリカゲル:分子篩の重量比率は(4-6):(2-4):(1-3)であり、2#PSA吸着塔で装填する吸着剤組成物における酸化アルミニウム:シリカゲル:分子篩の重量比は(3-5):(1-3):(3-5)である。
【発明の効果】
【0012】
三種類の吸着剤の装填数量及び分布は、原料ガスHF濃度の大きさと不純物留分含量の大きさによって決まり、二段PSA吸着塔における吸着剤が装填する数量分布も異なる。
【0013】
更に、排気ガス吸収は、HF精留工程の上段精留塔の塔頂から蒸留する軽留分不純物ガスは、アンモニア水脱炭吸収塔の塔頂からの不凝ガスと混合し、硫酸を吸収剤とする排気ガス吸収塔に入り、吸収塔底からフッ素ケイ酸溶液を形成し、原料として吐出し、フッ素ケイ酸法が調製するAHF生産過程の原料循環使用に直接戻ることができ、吸収塔の塔頂から流出する不凝ガスを排ガスとして直接排出する。
【0014】
更に、上述のHF精留工程の純HF液体入口側端は、上段底部又は下段頂部に設置されており、原料ガスに含まれるH2O、H2SO4、SO2、SiF4、NH3、CO2、H2SiF6の主な不純物留分含量の大きさによって決まる。
【0015】
更に、上述のHF精留工程の上段精留の底部又は下段精留の頂部からの蒸留物が凝結した後に形成する不凝ガスは、AHFガスであり、純度は99.99%より大きく、更に凝結してAHF液体を形成した後、フッ素交換樹脂に入り、更にMe+を除去し、UPSS電子レベルのAHF液体を形成し、脱イオン水と任意に調合して、HF溶液を形成することができ、半導体業界の各種濃度の需要を満たすことができる。
【0016】
先行技術と比較した本発明の有益な効果は以下の通り。
【0017】
1)本発明は、伝統的な蛍石法又はフッ素ケイ酸法により調製したAHF生産過程において生成した高濃度HFガスを原料とし、その原料を半導体業界が必要とするEL/UP/UPSからUPSS電子レベルAHFガス又は液体までのガスを調製することで、AHF精製が受ける伝統精留、蒸留、吸収又は化学吸着等の分離工程の相平衡の制限を受ける又は吸着剤使用寿命が短いという課題を解決した。それにより、当該技術分野における空白を埋めた。
【0018】
2)本発明は、原料ガスにおける各留分(HFは有効留分であり、残りは不純物留分である)自体が異なる圧力と温度下での吸着/凝結/精留/膜分離係数及び物理化学性質の差異性を利用して、二段階の中温変圧吸着工程を主に、凝結、膜分離及びHF精留結合を採用することで、中温変圧吸着工程における吸着と脱離の整合性と平衡の循環操作を容易にすることで、分離と浄化を行い、HFの深度脱水と除去を実現する。
【0019】
3)本発明は、先行技術である化学吸着法は、HFと吸着剤とが低温下で発生する化学(キレート)反応により吸着を行うのに対して、高温下で発生する分解反応は脱離を行うことで至る吸着と脱離との頻繁な循環操作過程において吸着剤損失率が大きいという課題を克服する。それと同時に、水又は硫酸又はSiF4を含む蛍石法又はフッ素ケイ酸法で得られる粗HF又は純HFに対して、先行技術の化学吸着における吸着剤は、水等の不純物留分とも化学反応が発生してしまい、吸着剤の粉化と著しく効果を失ってしまうことになり、効率的に深度脱水除去を行うことができないが、本発明が採用するのは中温変圧の物理吸着であり、このような現象を回避し、吸着剤の使用寿命を長くすることができる。
【0020】
4)本発明は、AHF精製工程における単純精留工程が有する精留塔中部の温度に大きな波動が生じること、塔底の温度が要求を満たさない、HF濃度波動が比較的大きいことから精留效果が好ましくないという課題が発生することを回避することができる。本発明は、まず二段PSAを採用しており、主な重留分不純物の大部分を先に除去し、HF精留工程に入るHF濃度の波動を小さくし、上下二段精留方式を採用し、そこから、AHF商品が調製する深度脱水と除去を実現し、電子レベルAHF商品を獲得すると同時に、40~49%濃度のHF水溶液を獲得することができる。
【0021】
5)本発明は、電子レベルAHFの製造を得ると同時に、中温変圧吸着とHF精留工程との材料が前端の凝結又はアンモニア水脱炭等工程に戻り、更にHFを回収して、AHF商品の收率を90%を超えるようにし、排気ガス吸収工程を通じて排気ガス排出の目標達成を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、技術方案及び利点をより明確に理解できるように、本発明について更に詳細に説明する。なお、本出願で説明する具体的な実施例は、本発明を釈明するためだけに用い、本発明を限定するものではない。即ち、説明する実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。
実施例1
図1が示す様に、工業レベルの高濃度HFを電子レベルのFTrPSAに精製する分離及び純化方法において、原料ガスは、蛍石法及びフッ素ケイ酸法が調製した非水フッ化水素(AHF)の生産過程において生成される工業レベル高濃度フッ化水素(HF)ガスからであり、含有濃度が98%(v/v)であるHFの含水(H
2O)量は1%であり、その他の不純物は、二酸化硫黄(SO
2)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、アンモニア(NH
3)、フッ素ケイ酸(H
2SiF
6)、二酸化炭素(CO
2)、クロライド(HClで計算する)から構成され、その総計は0.9~1.0%であり、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ヒ素(As)イオンを主とする金属イオン(Me+)濃度は極微量のppmレベルであり、微細粒子(dss≧1μm)は100より大きく、温度は20~30℃であり、圧力は常圧であり、具体的な実施工程は以下を構成する。
(1)原料ガスを、60~70℃の間で冷熱交換し、吸込送風機により0.2~0.3MPaまで増圧した後、二段階変圧吸着(PSA)組成における中温変圧吸着工程に入り、第一段PSA(1
#PSA)吸着塔は3つあり、1つは吸着塔に吸着し、その他2つの吸着塔はそれぞれ降圧と真空排気を行い、原料ガスの充填と最終充填の脱離の工程において、原料ガスが1
#PSA吸着塔の塔底から入り、1
#PSAの操作圧力は0.2~0.3Mpaであり、操作温度は60~70℃であり、吸着工程にある吸着塔の塔頂から流出する非吸着相ガスは純HFガスであり、凝結した後の不凝ガスは、精密濾過して脱イオン水を吸収した後、得られる49%であるHF水溶液を一般的な電子ELレベルフッ化水素酸商品として輸出し、凝結した後に形成する純HF液体が次の工程である膜分離に入り、脱離工程にある1
#PSA吸着塔の塔底から龍するする脱離ガスは、増圧と冷熱交換後に、第二段PSA(2
#PSA)の吸着塔底から入り、2
#PSAは3つの吸着塔から組成され、1つの吸着塔は終始吸着状態にあり、その他2つの吸着塔はそれぞれ降圧と真空排気、純HFガス充圧と終充の脱離状態、吸着と脱離の循環操作にあり、2
#PSA吸着塔の操作圧力は0.2~0.3MPaであり、操作温度は60~70℃であり、吸着状態にある2
#PSA吸着塔の塔頂から流出する非吸着相の中間ガスは、原料ガスと混合し1
#PSAに戻り、2
#PSA吸着塔から流出するガスは濃縮ガスであり、その後のアンモニア水脱炭工程に入り、更に有効留分を回収する、中温変圧吸着。
(2)中温変圧吸着工程から、凝結した後に形成する純HF液体は、1.6MPaまで増圧し、温度は60~70℃であり、一級レベル無機セラミック膜分離システムに入り、膜孔径は0.2~0.4マイクロメートルであり、フィルム材料はジルコニア、化チタン及び酸化アルミニウム複合膜であり、ジルコニアと酸化チタンの含有量が酸化アルミニウムを超え、耐食の四フッ素エチレンを防腐密封材料とし、マルチレーン内圧式を形成する膜モジュールは膜を透過する側から浄化純HF液体を流出し、直径が1μmより大きいSS粒子含量は25(個)単位/ミリリットル(Ea/ml)未満であり、次の工程であるHF精留に入り、膜を透過しない側にSS濃縮液を濃縮し、冷却、沈降した後、SS粒子を除去し、液体が加熱加圧された後、膜分離システムに戻り、更に有効留分を回収する、膜分離。
(3)HF精留は、膜分離工程からの浄化純HF液体であり、HF精留工程の精留塔に入り、本工程の精留塔は上下二段階精留組成を採用しており、浄化純HF液体は下段精留の頂部から入り、上段精留塔の操作温度は18~30℃であり、上段精留塔の塔頂から蒸留する軽留分不純物ガスは主に、SO
2、SiF
4等の低沸点の不純物留分で構成されており、その後の排気ガス吸収工程に戻り、上段精留の底部蒸留物から凝結した後に形成する不凝ガスはAHFガスであり、純度は99.99%より大きく、直接電子UP又はUPSレベルAHFの商品ガスとして、凝結した後に形成する液体は、上段精留の還流として、下段精留の操作温度は20~100℃であり、下段精留の底部から蒸留する少量の重留分を含む不純物留分の塔底物流体は凝結した後に不凝ガスに形成し、中温変圧吸着工程に戻り、更に有効留分を回収し、凝結した後に形成する液体は吸収剤としてその後のアンモニア水脱炭工程に入り、HF精留の操作圧力は0.03~0.2Mpaである。
(4)中温変圧吸着工程からの濃縮ガスであり、吸込送風機によって0.03~0.2MPaまで増圧した後、アンモニア水、硫酸及びHF精留工程下段からの精留蒸留物が凝結した後に形成する液体に入り、5:3:2の比率に基づき、吸収剤としてのアンモニア水脱炭吸収塔を混合し、吸収塔底から形成する炭酸水素アンモニウム及びフッ化水素アンモニウム混合溶液を吐出し、直接フッ素ケイ酸法として調製するAHF生産過程における返料又は予備混合した反応物として、アンモニア水脱炭吸収塔の塔頂から流出する不凝ガスがその後の排気ガス吸収工程に入る、アンモニア水脱炭。
(5)HF精留工程の上段精留塔の塔頂から蒸留する軽留分不純物ガスは、アンモニア水脱炭吸収塔の塔頂からの不凝ガスと混合し、硫酸を吸収剤として排気ガス吸収塔に入り、吸収塔底からフッ素ケイ酸溶液を形成し、原料として吐出し、フッ素ケイ酸法が調製するAHF生産過程の原料の循環使用に戻り、吸収塔の塔頂から流出する不凝ガスは、排ガスとして直接排出する、排気ガス吸収。
実施例2
図2が示す通り、実施例1を基礎として、原料ガスは蛍石法により調製するAHF生産過程の高濃度HFガスであり、NH
3又はCO
2の不純物留分がなく、アンモニア水脱炭工程を省くことができる。即ち、中温変圧吸着工程からの濃縮ガス蛍石法が調製するAHF生産過程における凝結工程に戻り、更に有効留分を回収する。
実施例3
実施例1と2を基礎として、上述の中温変圧吸着工程において1
#PSA吸着塔で装填する吸着剤構成比率は、アルミニウム:シリカゲル:分子篩=5:3:2であり、2
#PSA吸着塔で装填する吸着剤構成比率は4:2:4である。
【0024】
以上、上述の実施例は本出願の具体的な実施方法を表し、その説明はより具体的で詳細にしているが、本出願の特許請求の範囲が求める保護の範囲を制限するものとして理解してはならない。なお。本出願の技術の分野における通常の知識を有する者は、本出願の発明の技術的思想の前提下において、若干の変形と改善をすることができ、それらはいずれも本出願の保護の範囲に属する。