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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】温浴施設
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/06 20060101AFI20240722BHJP
   F23B 40/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61H33/06 J
F23B40/00
A61H33/06 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023222836
(22)【出願日】2023-12-28
(65)【公開番号】P2024095631
(43)【公開日】2024-07-10
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2022212456
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512097787
【氏名又は名称】株式会社弘商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉井 政弘
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0150756(US,A1)
【文献】特開2006-006621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0077546(US,A1)
【文献】特開2016-077587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/06
F23B 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温浴室を形成する固定壁と、
前記温浴室を形成する床面と、
前記固定壁に設けられ、利用客が前記温浴室に出入りするための出入口と、
前記固定壁において前記出入口と別に設けられ、前記温浴室を加熱するための燃料を出し入れするための開口と
を有し、
前記燃料を燃焼する燃焼室が、前記固定壁に対し前記温浴室の外にある
温浴施設。
【請求項2】
前記開口を解放する第1位置と当該開口を覆う第2位置との間を移動する移動壁
を有する請求項1に記載の温浴施設。
【請求項3】
前記移動壁を備えた台車と、
前記床面に沿って前記第1位置から前記第2位置まで前記台車を導くガイドと
を有する請求項2に記載の温浴施設。
【請求項4】
前記温浴室の外において前記開口と通じる燃焼室を有し、
前記移動壁が前記第2位置にあるとき、前記台車が前記燃焼室内に位置する
請求項3に記載の温浴施設。
【請求項5】
前記燃焼室において、前記開口の前記温浴室から見て反対側に設けられた扉を有し、
前記ガイドは、開いた状態の前記扉を介して前記台車の一部が前記燃焼室の外に露出する位置まで前記台車を導く
請求項4に記載の温浴施設。
【請求項6】
前記開口が、
前記固定壁の一部に形成された第1開口と、
前記固定壁において前記温浴室内から見て前記第1開口と反対側に形成された第2開口と
を有し、
前記第1開口から前記燃料を出し入れするための第1台車と、
前記第2開口から前記燃料を出し入れするだめの第2台車と
を有する請求項1に記載の温浴施設。
【請求項7】
前記開口が、
前記固定壁の一部に形成された第1開口と、
前記固定壁において前記温浴室内から見て前記第1開口と反対側に形成された第2開口と
を有し、
前記第1開口から前記燃料を出し入れするための台車と
を有する請求項1に記載の温浴施設。
【請求項8】
前記固定壁と前記温浴室の中心との間において前記床面に設けられた表面構造を有し、
前記表面構造が、前記燃料を排出するための溝を有し、
前記開口が、前記溝に面する位置に設けられる
請求項1に記載の温浴施設。
【請求項9】
前記固定壁において、前記溝に対応する位置に設けられ、前記燃料に着火するためのバーナーを有する
請求項に記載の温浴施設。
【請求項10】
前記台車が、二次燃焼機構を有する
請求項に記載の温浴施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、韓国式サウナ等の温浴施設に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国式サウナでは温浴室内で薪を焚き、温浴室の壁に熱を吸収させる。利用客は、薪が焚かれた状態の温浴室内で温浴効果の提供を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-41601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、日本では消防法の規定により、燃料が燃焼している状態の温浴室内に利用客を入れることができない。このため、温浴室の外側において燃料を燃焼させる韓国式サウナが提案されている(例えば特許文献1)。しかし、このような構成において利用客に提供される温浴効果は物足りないものになる。
【0005】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、燃料が燃焼している状態の温浴室内に利用客を入れることなく、燃料が燃焼している温浴室内において利用客に提供される温浴効果と同等の温浴効果を提供することができる温浴施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る温浴施設は、温浴室を形成する固定壁と、前記温浴室を形成する床面と、前記固定壁に設けられ、利用客が前記温浴室に出入りするための出入口と、前記固定壁において前記出入口と別に設けられ、前記温浴室を加熱するための燃料を出し入れするための開口とを有する。
【0007】
この温浴施設は、前記第1開口を解放する第1位置と当該第1開口を覆う第2位置との間を移動する移動壁を有してもよい。
【0008】
この温浴施設は、前記移動壁を備えた台車と、前記床面に沿って前記第1位置から前記第2位置まで前記台車を導くガイドとを有してもよい。
【0009】
この温浴施設は、前記温浴室の外において前記第1開口と通じる燃焼室を有し、前記移動壁が前記第2位置にあるとき、前記台車が前記燃焼室内に位置してもよい。
【0010】
この温浴施設は、前記燃焼室において、前記第1開口の前記温浴室から見て反対側に設けられた扉を有し、前記ガイドは、開いた状態の前記扉を介して前記台車の一部が前記燃焼室の外に露出する位置まで前記台車を導いてもよい。
【0011】
前記開口が、前記固定壁の一部に形成された第1開口と、前記固定壁において前記温浴室内から見て前記第1開口と反対側に形成された第2開口とを有し、この温浴施設は、前記第1開口から前記燃料を出し入れするための第1台車と、前記第2開口から前記燃料を出し入れするだめの第2台車とを有してもよい。
【0012】
前記開口が、前記固定壁の一部に形成された第1開口と、前記固定壁において前記温浴室内から見て前記第1開口と反対側に形成された第2開口とを有し、この温浴施設は、前記第1開口から前記燃料を出し入れするための台車を有してもよい。
【0013】
この温浴施設は、前記固定壁と前記温浴室の中心との間において前記床面に設けられた表面構造を有し、前記表面構造が、前記燃料を排出するための溝を有し、前記開口が、前記溝に面する位置に設けられてもよい。
【0014】
この温浴施設は、前記固定壁において、前記溝に対応する位置に設けられ、前記燃料に着火するためのバーナーを有してもよい。
【0015】
前記台車が、二次燃焼機構を有してもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、移動壁を第1位置に移動させ、第1開口から燃料を温浴室内に入れ、燃料により音浴室内を加熱することができる。その後、移動壁を第2位置に移動させて第1開口を覆い、第1開口から燃料が出た温浴室内において、利用客に温浴を行わせることができる。従って、この発明によれば、燃料が燃焼している状態の温浴室内に利用客を入れることなく、燃料が燃焼している温浴室内において利用客に提供される温浴効果と同等の温浴効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態である温浴施設の平面図である。
図2】同温浴施設を利用客の出入りするエントランス側から見た正面図である。
図3A】同温浴施設の温浴室及び燃焼室の断面図である。
図3B】同温浴施設の温浴室及び燃焼室の断面図である。
図3C】同温浴施設の温浴室及び燃焼室の断面図である。
図4】同温浴施設における床面と台車の断面図である。
図5A】第1変形例である温浴施設の断面図である。
図5B】第1変形例である温浴施設の正面図である。
図6A】第2変形例である温浴施設の平面図である。
図6B】第2変形例である温浴施設の平面図である。
図7】第3変形例である温浴施設の平面図である。
図8】変形例に係る台車の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、この発明の一実施形態である温浴施設(又は温浴設備)1の平面図である。ここでいう温浴施設は、蒸気浴又は熱気浴、すなわちいわゆるサウナを提供する施設である。また、図2は、同実施形態において、利用客が出入りするエントランス40側から温浴施設1を見た正面図である。また、図3A~Cは、同実施形態における温浴室10及び燃焼室50の断面図である。また、図4は、同実施形態において、床面30の上を移動する台車60の断面図である。
【0019】
温浴室10は、利用客に温浴サービスを提供する部屋であり、固定壁20と、床面30とにより形成される。固定壁20は、床面30に対して固定されている。床面30は、耐熱性のある矩形状の板であり、温浴室10に下方から面している。なお床面30は温浴施設1の構造上の床を構成するものであり、この例では床面30の上に全面に渡ってさらに床板(図示略)が張られる。利用者はこの床板の上を歩いたり、座ったりすることができる。床板の上にベンチなどの家具が設置されてもよい。固定壁20は、床面30の上の空間を四方から取り囲む側壁部21と、温浴室10の天井をなし、上方に丸く膨らんだ天井壁22と、側壁部21及び天井壁22を接続するジョイント23とにより構成されている。ここで、側壁部21は、耐火レンガを積層した内側層21aと、断熱レンガを積層した外側層21bとからなる。同様に、天井壁22は、耐火レンガを積層した内側層22aと、断熱レンガを積層した外側層22bとからなる。
【0020】
天井壁22には、複数の開口、具体的には、照明窓24と、換気口25と、散水口26とが設けられている。この例では、2個の照明窓24と、1個の換気口25と、1個の散水口26とが設けられている。照明窓24には、耐熱ガラス等がはめ込まれている。なおこれら開口の種類、数、及び位置はあくまで例示である。
【0021】
エントランス40は、利用客が温浴室10に出入りするための前室である。このように前室を設けることにより、温浴室10の温度が低下することを抑制することができる。エントランス40は、固定壁20(より具体的には側壁部21)の正面側に設けられている。このエントランス40は、外側の扉41と、内側の扉42(出入口の一例)とを有する。利用客は、この扉41及び42を開けて、外部から温浴室10内に入り、また、温浴室10内から外部へ出ることができる。温浴施設1の運用上は、利用客が温浴室10に出入りする際には、扉41及び扉42のいずれか一方のみを開け、他方は閉じていることが推奨される。
【0022】
燃焼室50は、固定壁20(より具体的には側壁部21)の背面側に設けられている。この燃焼室50内の下部には、温浴室10の床面30と繋がった床面30が配置されている。燃焼室50は、燃料である薪が積まれた台車60を収容し、薪を燃焼させる部屋である。燃焼室50の天井壁には排気口56が設けられている。また、燃焼室50の側部又は上部に、作業用の開口(いわゆるマンホール又はハンドホール)が設けられてもよい。
【0023】
側壁部21において、燃焼室50が設けられた領域には、燃料である薪(及びこの例では台車60)を温浴室10に出し入れするための開口211が設けられている。燃焼室50は、温浴室10の外において開口211と通じる。台車60は、開口211を介して、燃焼室50から温浴室10へ、あるいは温浴室10から燃焼室50へ移動可能である。開口211は、利用客が温浴室10に出入りするための出入口とは別の開口の一例である。
【0024】
図3A~C及び図4に示すように、燃焼室50の床面30には、複数対の車輪33が取り付けられている。この例では、4対の車輪33が取り付けられている。これら複数対の車輪33は、燃焼室50から温浴室10に向かう方向(すなわち温浴室10の外部から内部に向かう方向)に沿って配置される。一方、台車60の荷台61の下面にはレール62が設けられているレール62は、車輪33の上に載っている。台車駆動部52により、台車60には温浴室10の中又は外に向かう力が与えられる。台車60は、車輪33及びレール62に案内されて、燃焼室50から温浴室10へ、あるいは温浴室10から燃焼室50へ移動する。すなわち、車輪33及びレール62は、床面30に沿って第1位置P1から第2位置P2まで台車60を導くガイドの一例である。
【0025】
燃焼室50の外側には、制御盤51及び台車駆動部52が設けられている。ここで、制御盤51には、この温浴施設1の各部を操作するための操作子と各部の制御を行う制御部が設けられている。台車駆動部52は、モータと、このモータの回転軸の回転運動を並進運動に変換して、台車60に伝達する伝達部とからなり、制御盤51の操作子の操作に応じて台車60を駆動する。
【0026】
燃焼室50における開口211の反対側の壁面には開口59があり、この開口59には扉53が配置される。図3A~Cに示すように、扉53は、チェーンとモータからなる扉駆動部55によって上下方向に駆動され、開口59の開閉を行う。扉53には、ガスバーナー54が埋め込まれている。このガスバーナー54は、燃焼室50内の燃料への着火を行うための手段である。
【0027】
台車60の荷台61上において、燃焼室50と反対側の端部には、矩形状の移動壁65が設けられている。移動壁65は、固定壁20に対して移動するという意味において「移動」壁という。この移動壁65は、開口211に丁度収まる程度の面積を有している。本実施形態において、移動壁65が開口211のある第2位置P2にあるとき(図3A)、台車60は燃焼室50内に位置する。このとき、燃焼室50側の固定壁20(より具体的には側壁部21)と移動壁65とは、温浴室10内から見たときに、ほぼ段差の無い状態(いわゆる面一)である。外観上、固定壁20と移動壁65とは、利用客からはただの壁のように見える。また、この状態で、台車60の荷台61の一部は、燃焼室50の外部に露出している(図3Aの部分61a)。
【0028】
次に本実施形態の動作を説明する。温浴施設1の利用を可能にするために、まず、作業者(例えば、温浴施設の従業員)は、扉駆動部55によって扉53を持ち上げ、台車駆動部52によって台車60を外に引き出す(図3B)。このとき、移動壁65は、第3位置P3にある。第3位置P3は、第2位置P2よりも外側、例えば、固定壁20よりも外側の位置である。レール62は、台車60を第3位置P3まで引き出すことができる程度の長さを有し、車輪33は、台車60を第3位置P3まで引き出すことができるように配置される。このように、台車60を第3位置P3まで引き出すことができることにより、台車60の荷台61に薪を載せる作業がしやすくなる。
【0029】
荷台61に薪を載せると、作業者は、台車駆動部52によって台車60を第2位置P2まで移動し、扉駆動部55によって扉53を降ろして開口59を塞ぐ(図3A)。作業者は、ガスバーナー54を点火し、燃焼室50内の燃料への着火を行う。そして、排気口56を利用した換気を行いつつ、燃焼室50内で燃料の燃焼を行う。
【0030】
燃焼室50内の燃料の燃焼が十分に強くなると、作業者は、台車駆動部52により、台車60を温浴室10内に移動する。移動後において移動壁65は、温浴室10内の第1位置P1に位置する(図3C)。この状態で荷台は61は温浴室10内に開放される(より詳細には、荷台61のうち薪が載っている部分が温浴室10内に位置する)ので、燃焼する薪で温浴室10内が加熱される。このとき開口211は(燃焼室50に対して)解放した状態となる。ただし、扉53は閉じているため、温浴室10及び燃焼室50は外部からは閉じられている。このようにして温浴室10を囲う固定壁20の蓄熱が行われる。また、この状態で扉53と荷台61との間の隙間が最小となるよう、荷台61は図の左右方向において十分な長さを有する(荷台61が短すぎると扉53の下部に隙間が大きく開き、そこから熱が逃げてしまう)。
【0031】
前述のとおり床面30の上に利用者が乗る床板(図示略)が設けられるが、この床板は、台車60の移動に支障の無い程度の高さを有する。例えば、図3Cの破線Fが床板のレベルである。この高さの床板であれば、台車60が第1位置P1にあっても荷台61及びレール62と床板が干渉しない。
【0032】
固定壁20の蓄熱が十分に行われると、台車60を燃焼室50側に駆動し、移動壁65を開口211のある第2位置P2に移動させることにより、開口211を覆う(図3A)。これにより温浴室10は、燃焼している燃料が開口211から取り出され、開口211が移動壁65によって覆われた状態になる。そこで、この温浴室10内において、利用客に温浴を行わせる。利用客と燃焼室50とは、移動壁65により隔てられており、温浴中に利用客が薪に直接触れることはない。
【0033】
この後、作業者は、台車60を外に引き出し(図3B)、薪を掻き出して廃棄する。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、燃料が燃焼している状態の温浴室10内に利用客を入れることなく、燃料が燃焼している温浴室10内において利用客に提供される温浴効果と同様な温浴効果を提供することができる。
【0035】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項のうち複数の事項が組み合わせて適用されてもよい。
【0036】
(1)第1変形例
図5は第1変形例に係る温浴施設1Aをエントランス40側から見た正面図である。なお。図5において上記実施形態(図2参照)の各部に対応した部分には共通の符号が付されている。また、第1変形例の特徴と関連が低い部分は図示を省略している。
【0037】
詳細な図示は省略するが、温浴施設1Aは、2つの燃焼室50a及び50bを有する。燃焼室50a及び50bは、温浴室10を四方から囲む固定壁20の側壁部21のうち相互に対向する2つの側壁部21の外側に設けられる。燃焼室50と温浴室10とを繋ぐため、固定壁20は、2つの開口211a(第1開口の一例)及び開口211b(第2開口の一例)を有する。開口211aは、温浴室10と燃焼室50aとを繋ぐ開口であり、開口211bは、温浴室10と燃焼室50bとを繋ぐ開口である。燃焼室50a及び50bには、それぞれ専用の台車60a(第1台車の一例)及び台車60b(第2台車の一例)が用いられる。
【0038】
上述の実施形態において温浴室10を暖めた後で薪は廃棄されたが、温浴室10が暖まり台車60を燃焼室に戻した後も、薪は燃焼を続けていることがある。そのため、薪をすぐに廃棄したのでは薪のエネルギーを十分に活用できていない可能性がある。そこで、この変形例では、燃焼室50を2つ設け、一方を温浴室10の加熱前に薪を燃焼させるために、他方を温浴室10の加熱後に薪を再利用するために使用する。この例において、薪の再利用は、薪の燃焼により発生した熱をエントランス40(前室)に提供することにより行われる。このため、燃焼室50a及び50bの排気口は、それぞれダクト90a及び90bを介してエントランス40に接続される。温浴室10を暖めた後、台車60aが燃焼室50aに戻されると、薪は燃焼を続ける。ここで発生した熱気はダクト90aを介してエントランス40に供給される。すなわち、薪の再利用によりエントランス40を加熱することができ、温浴室10の温度低下を抑制することができる。燃焼室50aにおいて薪を再利用している間、次の加熱に備え、作業者は、燃焼室50bにおいて台車60bの上で薪を燃焼させる。温浴室10の温度が下がってしまったら、(温浴室10の利用を停止し、)作業者は、台車60bを温浴室内に入れ、温浴室10を加熱する。温浴室10が暖められたら、作業者は、台車60bを燃焼室50bに戻す。その後、台車60b上の薪は燃焼室50bにおいて再利用され、エントランス40を加熱する。台車60b上の薪を再利用している間、作業者は、燃焼室50aの扉53aを開け、使用後の薪(又は灰)を廃棄する。このように台車を2台(及び燃焼室を2つ)有する構成により、使用後の薪を再利用することができ、また、次の加熱の準備を別の台車及び燃焼室50で行うことができ、営業の効率化に寄与することができる。
【0039】
この例において、送風機及び/又はバルブなどを用いて燃焼室50からエントランス40に供給される熱気の流れを制御してもよい。燃焼室の熱気をそのままエントランス409に供給すると温度が高すぎて危険な場合があるので、その場合は燃焼室からの熱気に外気を混合する。ダクト90は排気口56に接続されるものに限定されず、燃焼室50において、熱気供給用に排気口56とは別に通気口を設けてもよい。
【0040】
(2)第2変形例
図6A及びBは、第2変形例に係る温浴施設1Bの平面図を示す。第2変形例の特徴と関連が低い部分は図示を省略している。この例では、温浴室10の床面積よりも広い(例えば、床面積の1.5~2倍程度の)面積の荷台61を有する1台の台車を用いてもよい。図6Aは、台車60が、荷台61の一部が燃焼室50内に位置する第2位置P2にある状態を例示する。台車60の荷台61は広く、床面30をほぼ全てカバーする。この状態で作業者は、荷台61のうち、燃焼室50内の領域(図の領域X)に薪を載せ、バーナーで着火する。燃焼が十分になると、作業者は、台車60を第1位置P1に移動させる(図6B)。第1位置P1は、燃焼室にあった薪が温浴室10内にくる位置である。この状態で温浴室10を十分に暖めた後、作業者は、台車60を第2位置P2に戻す(図6A)。利用客は、この状態で、荷台の上を歩いたり座ったりすることになる。
【0041】
なお、固定壁20の側壁部21には、台車を通すための開口(この開口は、荷台61の高さ程度の高さであればよい)が開いており、特に領域Xに相当する位置には、薪を通すためより広い(薪を通す高さ)の開口が開いている。領域Xに相当する開口は、台車60が第2位置P2にあるときに、移動壁により閉じられてもよい。この移動壁は、台車60に設けられていてもよいし、台車60とは別体のもので、例えば作業者の手により開口にはめ込まれてもよい。あるいは、この移動壁は、固定壁20に蝶番などにより一部が固定され、作業者の手により開閉(すなわち移動の別の例)されてもよい。
【0042】
実施形態においては、薪が載せられる荷台61と、利用客がその上を歩く床板とが別体であった。そのため、薪を燃焼させたときの熱は温浴室10の固定壁20には伝わりやすいものの、床板には伝わりにくいという問題があった。この変形例においては、利用者が歩く床板となる荷台61に直接、薪が載せられるので、薪を燃焼した熱が床板に伝わりやすい。
【0043】
なお、荷台61の大きさは図6A及びBの例に限定されない。例えば、図6A及びBでは、台車60の移動方向に垂直な方向(図の左右方向)において、床面30と荷台61の幅がほぼ等しい例を示した。しかし、荷台61の幅は、床面30の幅より狭くてもよい。単に荷台61の幅が床面30の幅より狭いだけだと温浴室内の床に段差ができてしまうので、この段差を埋めるため、荷台61が無い部分は床面30の上に床板を設けてもよい。この床板の高さは、荷台61とほぼ同じである。
【0044】
(3)第3変形例
図7は第3変形例に係る温浴施設1Cの平面図である。なお。図7において上記実施形態(図1参照)の各部に対応した部分には共通の符号が付されている。第3変形例の特徴と関連が低い部分は図示を省略している。
【0045】
第3変形例において、固定壁20と温浴室10の(平面図における)中心との間には、床面30に表面構造が設けられる。この表面構造は、床面30自体に形成されてもよいし、床面30上に別の構造体を設置することにより形成されてもよい。図7の例では、床面30の上に、床面30よりも面積の小さい床板71が設置され、床板71により表面構造が形成される。すなわち床板71は固定壁20近辺はカバーしておらず、固定壁20近辺では床面30が露出している。床板71と床面30とは高さが異なるため、この高低差により溝72が形成される。
【0046】
溝72は、燃料を排出するための溝である。利用客を入れる前に、作業者は、溝72に薪を置く。側壁部21のうち、床板71よりも低い位置には、ガスバーナー54が埋め込まれている。ガスバーナー54は、溝72の角の近辺に設けられる。この例では複数(4つ)のガスバーナー54が、図の反時計回りに熱気を回転させるような向きで設置される。作業者は、ガスバーナー54により溝72内の薪に着火する。薪の燃焼により、温浴室10内が加熱される。溝72は、温浴室10の固定壁20周辺を一周している。このように溝72が一周していることにより、熱が温浴室10を回りやすくなり、温浴室10を加熱する効果が高まる。なお、溝72を一周させると利用客のエントランスからの入口に段差ができてしまうが、営業時には橋など渡せばよい。
【0047】
温浴室10が十分に暖まると、作業者は、固定壁20に設けられた開口(図7では略)から灰を外に掻き出す。この開口は、溝72に面する位置に、溝72と同じ高さで(すなわち溝72との間に段差が生じないように)形成される。開口は、灰を外に掻き出すとき以外は営業時には移動壁により閉じられている。
【0048】
なおここでは床板71と溝72の底面とで高さが異なる(溝72の方が深い)が、床板71と溝72の底面との高さが同じであってもよい。例えば、床板71が床面30の前面をカバーし、側壁部21に沿って壁が設けられる。この壁により溝72が形成される。
【0049】
(4)第4変形例
上述の実施形態における温浴施設1、1A、1B、及び1Cにおいては、例えば冬場等、気温の低い時期になかなか温浴施設内の温度が上がらない場合がある。このような例に対処するため、温浴施設は、二次燃焼(又はロケットストーブ)の仕組みを有してもよい。二次燃焼とは、燃料である薪から発生した可燃ガスのうち、一次燃焼で燃え切らず煙となった未燃焼ガス(タールなどの微粒子)に、高温の二次空気を送り込み再度燃やすことをいう。煙が出にくく、効率よく高火力を生み出せるのが特徴である。二次燃焼機構の基本構造は、窯の中央付近において垂直方向(又は上下方向)に延びる熱上昇路(ヒートライザー)を有する。熱上昇路の下部には水平方向に燃焼路が設けられる。燃焼路の入口は焚口である。焚口にくべられた薪が燃焼すると可燃性ガスが発生する。発生した可燃性ガスが熱上昇路内で二次燃焼を起こす。二次燃焼により熱上昇路内に上昇気流が発生する。上昇気流により燃焼路内に負圧が生じ、外気が薪口から燃焼路に引き込まれる。このように、二次燃焼機構の特徴は、燃焼路への空気の吸い込みを増やす点にある。
【0050】
二次燃焼機構の具体例としては、垂直に延びる熱上昇路に水平に延びる燃焼路を結合した、いわゆるL字型構造、及びL字型構造の焚口を垂直方向(又は上向き)に曲げたJ字型構造などが知られている。
【0051】
さらに、上記のL字型及びJ字型構造以外にも、焚口に代えて、又は加えて、薪を載せる台の横又は下に空気を取り入れる空気孔を設け、さらに、炉(熱上昇路)の上部に二次燃焼を起こさせるための空気を取り入れる空気孔を設けた構造が採用されてもよい。炉(熱上昇路)の上部に空気を効果的に供給するために、燃焼炉の外側にもう1つ壁を設け、これら2つの壁の空隙を通って上昇した空気が熱上昇路上部の空気孔から吸い込まれるような構造としてもよい。上記で説明した構造においてその一部が省略されてもよい。
【0052】
図8は、この変形例における台車60の構造を例示する図である。この例において、台車60は、両側部に側壁68を有する(台車60の進行方向と垂直な方向の端部が側部である)。側壁68は、台車60の進行方向に延び、荷台61に対して壁を形成する。側壁68には凸部67が設けられる。凸部67は、台車60の進行方向に沿って複数箇所(例えば3カ所)設けられる。凸部67には、網69が載せられる。薪は網69の上に載せる。薪を点火すると、網69の下の隙間から空気が供給され、二次燃焼が起こる。これにより、薪をより高温で、より長い時間燃焼させることができ、固定壁20への蓄熱を促進することができる。
【0053】
(5)他の変形例
温浴室10を加熱するための燃料は薪に限定されない。炭又は固形燃料など、薪以外の燃料が用いられてもよい。
【0054】
温浴室10の形状は、平面図において四角形であるものに限定されない。四角形以外の多角形、又は円形であるものなど、どのような形状であってもよい。実施形態及び変形例において、固定壁20に形成される開口の位置、数、形状、及び大きさはあくまで例示である。
【0055】
台車を移動させるガイド及び駆動手段は、実施形態において例示したものに限定されない。床面にレールが、台車に車輪が設けられてもよい。あるいは、レールと車輪以外のガイドが用いられてもよい。
【0056】
移動壁は実施形態において例示したものに限定されない。固定壁に設けられた開口を閉じることができるものであれば、その移動方向は、温浴室10内から見て上下方向又は左右方向など、どのような方向であってもよい。実施形態においては台車60に移動壁65が備えられる例を説明したが、移動壁65は台車60とは別の構造体であってもよい。
【0057】
温浴施設1、1A、1B、及び1Cを構成する材料は、実施形態において例示したものに限定されない。所望の機能を実現できるものであれば、温浴施設1、1A、1B、及び1Cは、どのような材料で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B,1C……温浴施設、10……温浴室、20……固定壁、30……床面、40……エントランス、50……燃焼室、60……台車、P1……第1位置、P2……第2位置、21……側壁部、22……天井壁、21a,22a……内側層、21b,22b……外側層、41,42,53,53a……扉、54……ガスバーナー、51……制御盤、52……台車駆動部、56……排気口,25……換気口、26……散水口、24……照明窓、61……荷台、62……レール、33……車輪、55……扉駆動部、71……床板、72……溝。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8