(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240722BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240722BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240722BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20240722BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0566
H01M4/134
H01M50/474
(21)【出願番号】P 2023513411
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2021122172
(87)【国際公開番号】W WO2022179107
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】202110204662.0
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】袁 偉
(72)【発明者】
【氏名】王 淳
(72)【発明者】
【氏名】陳 明月
(72)【発明者】
【氏名】高 欣竹
(72)【発明者】
【氏名】王 程
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-201323(JP,A)
【文献】特開2019-021391(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110684(WO,A1)
【文献】特開2018-195576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にセパレータが設けられた電池ケースを含み、
前記セパレータの両端が
前記電池ケースの中央にそれぞれ接続され、
前記セパレータと
前記電池ケースの一端との間に第1室が設けられ、
前記セパレータと
前記電池ケースの他端との間に第2室が設けられ、
前記第1室の内部には、
前記電池ケースの
前記一端に当接する電極シートが設けられ、
前記第2室の内部には、両端がそれぞれ
前記セパレータと
前記電池ケースの
前記他端に当接し、
シート表面に曲面を有する曲面リチウムシートでできた電池負極が設けられ、
前記第1室と
前記第2室の内部には、共に電解液が満たされ、
前記電極シートと
前記電池負極がそれぞれ
前記電解液に浸されて
おり、
前記電池負極には、両端がそれぞれ前記電池負極と前記電池ケースの前記他端に当接する弾性装置が設けられている、
ことを特徴とする曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項2】
前記弾性装置が弾性シートである、
ことを特徴とする請求項
1に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項3】
前記弾性シートと
前記電池負極との間には、両端がそれぞれ
前記弾性シートと
前記電池負極に当接するガスケットが設けられている、
ことを特徴とする請求項
2に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項4】
前記電極シートは、
前記曲面リチウムシートでできている、
ことを特徴とする請求項1に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項5】
前記曲面リチウムシートは、高さが10mm未満である窪みを複数含む、
ことを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項6】
内部にセパレータが設けられた電池ケースを含み、
前記セパレータの両端が前記電池ケースの中央にそれぞれ接続され、
前記セパレータと前記電池ケースの一端との間に第1室が設けられ、前記セパレータと前記電池ケースの他端との間に第2室が設けられ、
前記第1室の内部には、前記電池ケースの前記一端に当接する電極シートが設けられ、
前記第2室の内部には、両端がそれぞれ前記セパレータと前記電池ケースの前記他端に当接し、シート表面に曲面を有する曲面リチウムシートでできた電池負極が設けられ、
前記第1室と前記第2室の内部には、共に電解液が満たされ、前記電極シートと前記電池負極がそれぞれ前記電解液に浸されており、
前記曲面リチウムシートは、高さが10mm未満である窪みを複数含む、
ことを特徴とする曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池の製造方法であって、
前記曲面リチウムシートの製造方法として、エンボス加工及び圧延によって平面リチウムシートを曲面加工して製造
する、
ことを特徴とす
る曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池
の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池の製造方法であって、
前記曲面リチウムシートの製造方法として、
所要の
前記曲面リチウムシートの形状の曲面金型を製造するステップと、
ポリプロピレン膜及び
前記曲面金型を順に平面リチウムシートの平面に敷き、
前記曲面金型、
前記ポリプロピレン膜及び
前記平面リチウムシートを治具で締め付けるステップと、
プレス装置で
前記曲面金型に押し付け、
前記平面リチウムシートを
前記曲面金型と同じ曲面に形成させるステップと、
前記曲面金型及び
前記ポリプロピレン膜を取り出して所要の
前記曲面リチウムシートを得るステップと、を含む、
ことを特徴とす
る曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池
の製造方法。
【請求項9】
前記曲面金型
を3D印刷法によって製造
する、
ことを特徴とする請求項8に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池
の製造方法。
【請求項10】
前記曲面金型の
前記3D印刷法は、
モデリングソフトウェアを使用して所要の
前記曲面リチウムシートをモデル化して曲面モデルを得るステップと、
スライシングソフトウェアを使用して
前記曲面モデルをスライスして複数のスライス画像を得るステップと、
前記複数のスライス画像をレイヤごとに印刷して
前記曲面金型を取得するステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の技術分野に関し、特に、曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用電子機器分野、新エネルギー自動車分野、エネルギー貯蔵分野では、リチウム電池の容量、寿命、安全性に対する要求がますます高くなっており、高容量かつ長寿命を有し高い安全性を兼ね持つリチウム電池のニーズが切実に増えている。
【0003】
現在、金属リチウムは、その高い理論比容量(3860mAh/g)とすべての金属の中で最も負の電気陰性度により、リチウム二次電池の最適なソリューションと見なされている。そのため、リチウム金属電池は、さまざまな分野で広く応用されている。
【0004】
しかし、従来技術のリチウム金属電池は、リチウム金属の粉末化やデンドライトが発生しやすく、それによりリチウム電池のクーロン効率が低下し、電池容量が減少し、サイクル効率及び耐用年数が減少するなどの技術的問題を有する。
【0005】
したがって、リチウムデンドライトを抑制し、負極のリチウム金属の粉末化を防止し、リチウム電池のサイクル安定性を向上できるリチウム金属電池の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術に存在する技術的問題に対して、本発明の目的は、リチウムデンドライトの成長を抑制し、負極のリチウム金属の粉末化を防止し、リチウム電池のサイクル安定性を向上し、耐用年数を延ばすことのできる曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池であって、内部にセパレータが設けられた電池ケースを含み、セパレータの両端が電池ケースの中央にそれぞれ接続され、セパレータと電池ケースの一端との間に第1室が設けられ、セパレータと電池ケースの他端との間に第2室が設けられ、第1室の内部には、電池ケースの一端に当接する電極シートが設けられ、第2室の内部には、両端がそれぞれセパレータと電池ケースの他端に当接し、曲面リチウムシートでできた電池負極が設けられ、第1室と第2室の内部には、共に電解液が満たされ、電極シートと電池負極がそれぞれ電解液に浸されている。
【0009】
更に、電池負極には、両端がそれぞれ電池負極と電池ケースの他端に当接する弾性装置が設けられている。
【0010】
更に、弾性装置は、弾性シートである。
【0011】
更に、弾性シートと電池負極との間には、両端がそれぞれ弾性シートと電池負極に当接するガスケットが設けられている。
【0012】
更に、電極シートは、曲面リチウムシートでできている。
【0013】
更に、曲面リチウムシートは、高さが10mm未満である窪みを複数含む。
【0014】
曲面リチウムシートの製造方法として、エンボス加工及び圧延によって平面リチウムシートを曲面加工して製造される。
【0015】
曲面リチウムシートの製造方法として、所要の曲面リチウムシートの形状の曲面金型を製造するステップと、ポリプロピレン膜及び曲面金型を順に平面リチウムシートの平面に敷き、曲面金型、ポリプロピレン膜及び平面リチウムシートを治具で締め付けるステップと、プレス装置で曲面金型に押し付け、平面リチウムシートを曲面金型と同じ曲面に形成させるステップと、曲面金型及びポリプロピレン膜を取り出して所要の曲面リチウムシートを得るステップと、を含む。
【0016】
更に、曲面金型は、3D印刷法によって製造される。
【0017】
更に、曲面金型の3D印刷法は、モデリングソフトウェアを使用して所要の曲面リチウムシートをモデル化して曲面モデルを得るステップと、スライシングソフトウェアを使用して曲面モデルをスライスして複数のスライス画像を得るステップと、複数のスライス画像をレイヤごとに印刷して曲面金型を取得するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0018】
全体的に言えば、本発明は、以下の利点を有する。
曲面リチウムシート自体には一定の曲率があるため、リチウム核生成の過程で、リチウムコアの隆起によってSEI膜が突き上げられる際に引き起こされるSEI膜の面積の変化が小さくなるので突き破りにくく、SEI膜の破裂を効果的に防止する。曲面リチウムシートによって、効果的に電池負極のSEI膜の面積を拡張するため、デンドライトの成長、体積増加によって引き起こされるSEI膜の突き破りを効果的に減らし、SEI膜が破裂しにくくなる。また、曲面リチウムシートとセパレータとの接触が線接触であるため、曲面リチウムシートの凹んだ領域は、電解液が効果的に貯蔵される領域となり、リチウム金属電池の一定回数のサイクルの後でも、電解質による浸潤を常に維持することができる。曲面リチウムシートは、電池負極の有効表面積を増加させ、電気化学反応速度を高め、リチウムイオン移動経路を増加させるため、リチウム金属電池の電池容量及びサイクル効率を維持し、耐用年数を延ばすことに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1におけるリン酸鉄リチウム半電池の組み立ての概略図である。
【
図2】実施例1でそれぞれ曲面リチウムシート、平面リチウムシートを電池負極としたリン酸鉄リチウム半電池の、2Cの条件下での放電比容量及びクーロン効率を示すグラフである。
【
図3】実施例2で曲面リチウムシート、平面リチウムシートを電極シート、電池負極としたリチウム対称電池のサイクル電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
実施例1
図1に示すように、曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池は、内部にセパレータ6が設けられた電池ケース2を含む。セパレータ6の両端は、電池ケース2の中央にそれぞれ接続される。セパレータ6と電池ケース2の一端との間に第1室が設けられ、セパレータ6と電池ケース2の他端との間に第2室が設けられている。第1室の内部には、電池ケース2の一端に当接する電極シート1が設けられている。第2室の内部には、両端がそれぞれセパレータ6と電池ケース2の他端に当接し、曲面リチウムシートでできた電池負極5が設けられている。第1室と第2室の内部には、共に電解液7が満たされ、電極シート1と電池負極5がそれぞれ電解液7に浸されている。
【0022】
本実施例において、電極シート1の活物質としてリン酸鉄リチウムを用いる(面密度14.5mg/cm2)。リチウム金属電池が放電すると、曲面リチウムシートでできた電池負極5が脱リチウムを開始し、リチウムイオンがセパレータ6を通って電解質7に入り、電極シート1上の活物質と接触してリチウムインターカレーション反応が発生する。それと同時に、電池ケース2の他端から電池ケース2の一端に電子が進入する。電極シート1が電池ケース2の一端に当接しているため、電子が電極シート1の活物質に進入してリチウムイオンと電荷の中和を行い、リチウム金属電池の放電プロセスが完了する。リチウム金属電池の充電時に、電極シート1上の活物質からリチウムイオンが脱離して電解液7に入り、セパレータ6を通して曲面リチウムシートと接触する。電極シート1上の活物質から電子が移動し、電池ケース2の一端と電池ケース2の他端を順に通して曲面リチウムシート上のリチウムイオンと電荷のバランスを取り、充電プロセスが完了する。
【0023】
リチウム金属負極の安定性の向上は、リチウム電池技術の発展を確保するための重要な研究方向である。出願人は、従来技術のリチウム金属電池におけるリチウムデンドライトの急速な成長及びリチウム金属電池の性能低下の主な理由が、電池負極5として平面リチウムシートが使用されることであることを独自に発見した。
【0024】
金属リチウムの反応性が高いため、従来の液体電解質で形成される固体電解質界面膜(SEI膜)が安定せず、電池容量、サイクル効率及び寿命が低下する可能性がある。一方、リチウム電池の充放電サイクルでは、リチウム負極の析出と剥離が起こり続け、体積変化が大きくなり、リチウム金属の粉末化やデンドライトが発生しやすく、リチウム電池のクーロン効率及び容量が低下する。
【0025】
具体的には、従来技術のリチウム金属電池の放電プロセス中に、平面リチウムシートの負極に電子を失い、リチウムイオンが平面リチウムシートの負極の表面で核生成され、平面リチウムシート上のSEI膜が同じく平面であり、リチウム核生成の後にSEI膜を突き破ることでSEI膜にクラックが発生し、リチウムイオンがクラックに堆積し続け、リチウムデンドライトが急速に成長する。同時に、平面リチウムシートとセパレータ6の間の接触が平面接触であるため、リチウム金属電池の一定回数のサイクルの後、平面リチウムシート上で核生成とデンドライトの成長が起こり、その結果、平面リチウムシート上の特定の位置がもはや電解質7によって浸潤されず、それによってリチウム金属電池の性能が低下する。
【0026】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、独創的に曲面リチウムシートを電池負極5として使用する。曲面リチウムシート自体には一定の曲率があるため、リチウム核生成の過程で、リチウムコアの隆起によってSEI膜が突き上げられる際に引き起こされるSEI膜の面積の変化が小さくなるので突き破りにくく、SEI膜の破裂を効果的に防止する。曲面リチウムシートによって、効果的に電池負極5のSEI膜の面積を拡張するため、デンドライトの成長、体積増加によって引き起こされるSEI膜の突き破りを効果的に減らし、SEI膜が破裂しにくくなる。また、曲面リチウムシートとセパレータ6との接触が線接触であるため、曲面リチウムシートの凹んだ領域は、電解液7が効果的に貯蔵される領域となり、リチウム金属電池の一定回数のサイクルの後でも、電解質7による浸潤を常に維持することができる。曲面リチウムシートは、電池負極5の有効表面積を増加させ、電気化学反応速度を高め、リチウムイオン移動経路を増加させるため、リチウム金属電池の電池容量及びサイクル効率を維持し、耐用年数を延ばすことに有利である。
【0027】
本実施例の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池に対して、LAND CT2001A電池テストシステムを使用してサイクル性能テストを行う。
【0028】
図2から分かるように、曲面リチウムシートの電池負極5に基づくリチウム金属電池の可逆容量は、2Cレートで40サイクル後も86.1mAhg
-1に達し、容量維持率が81.5%を超える。同じ条件下で、平面リチウムシートの電池負極5に基づくリチウム金属電池の可逆容量は、74.9mAhg
-1にすぎず、容量維持率が71.4%にすぎない。テスト結果は、曲面リチウムシートがリチウム金属電池の容量保持率とサイクル安定性を大幅に改善し、リチウムデンドライトを抑制し、負極のリチウム金属の粉末化を防止し、リチウム電池のサイクル安定性を向上させ、それによってリチウム金属のサイクル寿命を向上させる。
【0029】
上記の実験から、曲面リチウムシートの電池負極5に基づくリン酸鉄リチウム半電池は、平面リチウムシートの電池負極5に基づくリン酸鉄リチウム半電池よりも優れた利点及び有効性を有することが分かる。
【0030】
更に、電池負極5には、両端がそれぞれ電池負極5と電池ケース2の他端に当接する弾性装置が設けられている。
【0031】
弾性装置は、導電体であり、リチウム金属電池内部の良好な導電性を確保するために、電池負極5及び電池ケース2と密接に接触している。
【0032】
好ましくは、弾性装置は、弾性シート4である。
【0033】
弾性シート4と電池負極5との間には、両端がそれぞれ弾性シート4と電池負極5に当接するガスケット3が設けられている。
【0034】
ガスケット3の配置は、弾性シート4と電池負極5との間の接触面積を増加させ、リチウム金属電池内部の良好な導電性を維持することに有利である。
【0035】
曲面リチウムシートの高さは、10mm未満である。
【0036】
具体的には、曲面リチウムシートの曲面は、Oを原点、x軸とy軸を底面の2軸、z軸を底面に直交する垂直軸とする3次元空間座標系にある。z方向の値の範囲は、[-5mm,5mm]に制限され、xとyの値の範囲は、任意の実数であり、単位は、ミリメートル(平面を除く任意の空間の曲面)である。
【0037】
実施例2
本実施例と実施例1との相違点は、電極シート1が曲面リチウムシートでできていることである。すなわち、リチウム対称電池の電極シート1と電池負極5の両方は、曲面リチウムシートでできている。
【0038】
LAND CT2001A電池テストシステムを使用して、本実施例のリチウム対称電池の定電流サイクル性能テストを行う。
【0039】
図3から、電極シート1と電池負極5の両方に曲面リチウムシートを使用したリチウム対称電池の分極電圧は、3mA/cm
2の電流密度、1mAh/cm
2の蒸着容量で約900000秒でサイクルした後、わずか0.16Vであることがわる。同じ条件下で、平面リチウムシートに基づくリチウム対称電池の分極電圧は、約340000秒間のサイクル後に0.16Vに達し、その後のサイクルで分極電圧が増え続き、約560000秒間のサイクル後に0.38Vに達する。セパレータ6は、過度に成長したデンドライトによって突き破られ、局所的な短絡を引き起こし、その後のサイクルで分極電圧が乱れる。結果は、曲面リチウムシートがリチウム対称電池のリチウムデンドライトの成長を効果的に抑制し、分極電圧を低下させることを示す。
【0040】
以上の実験から、曲面リチウムシートの電池負極5に基づく電池は、通常の平面リチウムシートに基づく電池よりも寿命が長く、安全性が高いことが分かる。
【0041】
実施例3
曲面リチウムシートの製造方法として、エンボス加工及び圧延によって平面リチウムシートを曲面加工して製造される。
【0042】
任意に、曲面リチウムシートの製造方法として、所要の曲面リチウムシートの形状の曲面金型を製造するステップと、ポリプロピレン膜及び曲面金型を順に平面リチウムシートの平面に敷き、曲面金型、ポリプロピレン膜及び平面リチウムシートを治具で締め付けるステップと、プレス装置で曲面金型に押し付け、平面リチウムシートを曲面金型と同じ曲面に形成させるステップと、曲面金型及びポリプロピレン膜を取り出して所要の曲面リチウムシートを得るステップと、を含む。
【0043】
具体的に、ポリプロピレン膜を平面リチウムシートの表面に敷き、精密ボール盤の治具のジョーの中央位置に配置し、次に曲面金型を平面リチウムシートと位置合わせして平面リチウムシートの上に配置する。精密ボール盤の治具のハンドルを正転させ、ジョーにクランプされた対象物を加圧し、プレス動作を完了させた後、精密ボール盤の治具のハンドルを逆転させ、クランプされた対象物を取り外し、曲面リチウムシートを取り出す。
【0044】
ポリプロピレン膜を曲面金型と平面リチウムシートの間に配置するため、プレスが完了した後、曲面金型は、曲面リチウムシートから簡単に分離され、くっつかない。
【0045】
任意に、曲面金型は、3D印刷法によって製造される。
【0046】
曲面金型の3D印刷法は、モデリングソフトウェアを使用して所要の曲面リチウムシートをモデル化して曲面モデルを得るステップと、スライシングソフトウェアを使用して曲面モデルをスライスして複数のスライス画像を得るステップと、複数のスライス画像をレイヤごとに印刷して曲面金型を取得するステップと、を含む。
【0047】
具体的に、モデリングソフトウェアSolidWorksを使用してモデル化してstp形式で出力する。スライシングソフトウェアを使用して、印刷設定に従って曲線モデルをスライスし、png形式のスライス画像を出力する。DLPプリンターを使用して、パラメータを設定してスライスをレイヤーごとに印刷して曲面金型を取得する。
【0048】
上記の実施例は、本発明の好適な実施形態である。しかし、本発明の実施形態は、上記の実施例によって制限されない。上記の実施例以外に、本発明の趣旨や原理から逸脱せずに為した変更、修正、置換、組み合わせ、簡単化は、いずれも同等効果の置換方式であり、全て本発明の保護範囲に含まれる。
【0049】
(付記1)
内部にセパレータが設けられた電池ケースを含み、
セパレータの両端が電池ケースの中央にそれぞれ接続され、
セパレータと電池ケースの一端との間に第1室が設けられ、セパレータと電池ケースの他端との間に第2室が設けられ、
第1室の内部には、電池ケースの一端に当接する電極シートが設けられ、
第2室の内部には、両端がそれぞれセパレータと電池ケースの他端に当接し、曲面リチウムシートでできた電池負極が設けられ、
第1室と第2室の内部には、共に電解液が満たされ、電極シートと電池負極がそれぞれ電解液に浸されている、
ことを特徴とする曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0050】
(付記2)
電池負極には、両端がそれぞれ電池負極と電池ケースの他端に当接する弾性装置が設けられている、
ことを特徴とする付記1に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0051】
(付記3)
弾性装置が弾性シートである、
ことを特徴とする付記2に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0052】
(付記4)
弾性シートと電池負極との間には、両端がそれぞれ弾性シートと電池負極に当接するガスケットが設けられている、
ことを特徴とする付記3に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0053】
(付記5)
電極シートは、曲面リチウムシートでできている、
ことを特徴とする付記1に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0054】
(付記6)
曲面リチウムシートは、高さが10mm未満である窪みを複数含む、
ことを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0055】
(付記7)
曲面リチウムシートの製造方法として、エンボス加工及び圧延によって平面リチウムシートを曲面加工して製造される、
ことを特徴とする付記6に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0056】
(付記8)
曲面リチウムシートの製造方法として、
所要の曲面リチウムシートの形状の曲面金型を製造するステップと、
ポリプロピレン膜及び曲面金型を順に平面リチウムシートの平面に敷き、曲面金型、ポリプロピレン膜及び平面リチウムシートを治具で締め付けるステップと、
プレス装置で曲面金型に押し付け、平面リチウムシートを曲面金型と同じ曲面に形成させるステップと、
曲面金型及びポリプロピレン膜を取り出して所要の曲面リチウムシートを得るステップと、を含む、
ことを特徴とする付記6に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0057】
(付記9)
曲面金型は、3D印刷法によって製造される、
ことを特徴とする付記8に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【0058】
(付記10)
曲面金型の3D印刷法は、
モデリングソフトウェアを使用して所要の曲面リチウムシートをモデル化して曲面モデルを得るステップと、
スライシングソフトウェアを使用して曲面モデルをスライスして複数のスライス画像を得るステップと、
複数のスライス画像をレイヤごとに印刷して曲面金型を取得するステップと、を含む、
ことを特徴とする付記9に記載の曲面リチウムシート負極を有するリチウム金属電池。
【符号の説明】
【0059】
1:電極シート
2:電池ケース
3:ガスケット
4:弾性シート
5:電池負極
6:セパレータ
7:電解液