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特許7523834吸入型血管作動性腸ポリペプチドの新しい投与計画
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】吸入型血管作動性腸ポリペプチドの新しい投与計画
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20240722BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240722BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P11/00
A61P31/14
A61K9/72
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023519345
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 TR2021051296
(87)【国際公開番号】W WO2022119535
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】63/121,541
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523109482
【氏名又は名称】センチュリオン イラック サナイ ヴェ ティカレット アノニム シルケティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャカレ、グニゼ
(72)【発明者】
【氏名】エルファ、ムスタファ エルシン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】History of Changes for Study:NCT04360096, [online], 2020-10-29, ClinicalTrials.gov archive,2020年10月29日,NCT ID:NCT04360096 [Retrieved on 2024-01-12], Retrieved from the internet:<https://clinicaltrials.gov/study/NCT04360096?tab=history&a=3>
【文献】History of Changes for Study:NCT04536350, [online], 2020-11-06, ClinicalTrials.gov archive,2020年11月06日,NCT ID:NCT04536350 [Retrieved on 2024-01-12], Retrieved from internet:<https://clinicaltrials.gov/study/NCT04536350?tab=history&a=3>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/22
G16H 20/10
A61P 11/00
A61P 31/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アビプタジルをそれを必要とする患者に1日に2回又は3回投与することによる患者の肺疾患の治療ためのアビプタジルを含む医薬組成物であって、投与間の期間が15分から90分の間であり、投与がネブライザーを用いて適用され、肺疾患が、SARS‐CoV‐2ウイルスによって引き起こされるCovid‐19肺疾患であり、各投与におけるアビプタジルの投与量が50~110μgである、上記医薬組成物
【請求項2】
アビプタジルの第1の投与量が100μgである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
アビプタジルの第2の投与量が100μgである、請求項1又は2に記載の医薬組成物
【請求項4】
投与間の期間が30分である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項5】
10
治療が5~21日間継続される、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項6】
前記患者が、Covid‐19肺病変を有する60歳以上の年齢である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺疾患の治療に用いるためのアビプタジル(Aviptadil)の新規投与計画(dosage regimen)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VIPアゴニストは、呼吸器系において強力な気管支拡張作用と免疫調節作用を有することから、喘息、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、サルコイドーシス、COVID‐19、及び炎症性上気道疾患への使用が示唆されている。
【0003】
吸入型VIPアゴニストは局所的な効果を示す。したがって、全身的な副作用は少ないと予想される。(Mathioudakis,Chatzimavridou‐Grigoriadou et al.2013)。異なる吸入投与量を評価した。ヒスタミン誘発気管支収縮に対する保護について、375μgの単回吸入VIPが簡単に評価された。吸入型VIPの有効性は知られていたが、この研究では活性を示すことができなかった。エアロゾル化VIPの有効性の欠如は、急速な代謝による不活性化、又は粘液層タンパク質との熱心な結合によるものと説明された。したがって、副作用は報告されなかった(Altiere,Kung et al.1984)。
【0004】
別の研究では、吸入VIPアゴニストがヒトのヒスタミンに対する気管支反応性に及ぼす影響を判断するために、被験者は100μgのVIPアゴニストを単回投与された(Barnes and Dixon 1984)。プロプラノロール誘発気管支収縮に対するVIPアゴニストの効果を決定するために、臨床試験でVIPを70μgの単回吸入投与として使用した(Crimi,Palermo et al.1988)。
【0005】
WO2003061680A2では、吸入VIP投与量は5ng及び200μg/kg体重の間、好ましくは20ng及び20μg/kg体重の間と記載され、100μg及び200μg投与量が患者に使用されたが、この適用の薬量学詳細が記載されていなかった。US20060241028A1では、VIP吸入は、サルコイドーシスの治療のために、1日12mlの0.9%NaCl中に200μgの投与量を4回に分けて12週間使用された。
【0006】
内因性アビプタジルは、28アミノ酸の神経ペプチド/神経伝達物質で、血管作動性腸管ペプチド(VIP)として知られている(Delgado and Ganea 2013)。アビプタジルは、欧米諸国では古くから使用されているペプチドである。
【0007】
アビプタジルを用いた研究を記述した先行技術が存在する。例えば、EP1855661Blは、ヒト及び動物で実施された制御された実験を開示している。ここで、実験で使用される1日の投与量は、400マイクログラムを、それぞれ100マイクログラムのアビプタジルの4回の単回投与に分割したものである。心室後中隔欠損(post‐VSD)に伴う肺高血圧症、CREST症候群に伴う肺高血圧症、外因性アレルギー性肺胞炎に伴う肺高血圧症、COPDに伴う肺高血圧症、及び特発性肺動脈高血圧症(IPAH)に罹患した患者に対するアビプタジルの効果が調査されている。
【0008】
また、原発性肺高血圧症に対しては、Petkovらにより、1日あたり合計200μgのアビプタジルを4回単回吸入する治療法が検討された。彼らは、その強力な全身及び肺血管拡張作用による血管作動性腸ペプチドによる原発性肺高血圧症の治療のための新しい概念を定義した:有効であると予測される1日100~200μgの濃度範囲と1日200μgがテストされた(Petkov,Mosgoeller et al.2003)。また、100μgの吸入アビプタジルの単回投与が、肺高血圧症の治療に用いられた(Leuchte,Baezner et al.2008)。そこで、慢性肺高血圧症(PH)に対する吸入アビプタジルの血行動態、血液ガスに対する急性効果及び安全性を試験するため、PH患者計20名に右心カテーテル中にアビプタジル100μg投与量を単回吸入させた。別の研究では、吸入したVIPが免疫調節の役割を持つかどうかを検証するために、オープンな臨床第II相試験が計画された。組織学的に証明されたサルコイドーシスで、疾患が活発な20人の患者に、4週間、ネブライザー(噴霧器、吸入器)でVIPを投与した。サルコイドーシスにおけるVIPの免疫調節効果を評価するため、患者は超音波ネブライザーで1日4回、50μgの合成VIPを吸入した(Prasse,Zissel et al.2010)。アビプタジルの吸入製剤は、免疫チェックポイント阻害剤肺炎の患者に見られる肺胞炎を軽減する局所療法として、70μgの投与量を1日3回使用した(Frye,Meiss et al.2020)。Barnesらは、気管支運動緊張と吸入ヒスタミンに対する気管支反応に対するVIPの効果を研究した。彼らは、6人のアトピー性喘息患者にVIP(100μg)と対照液を無作為の順序で別々の日に二重盲検法で与え、その効果を比較した(Barnes and Dixon 1984)。喘息患者を対象とした研究では、β‐アドレナリン及びコリン作動性受容体の遮断が達成され、気管支運動緊張に対する吸入VIP(70μg)の効果が評価された。
【0009】
喘息患者6名を対象に4日間で試験を実施した(Crimi,Palermo et al.1988)。このように、アビプタジルの投与方法、特にネブライザー製剤については、長年にわたり検討が行われている。
【0010】
ネブライザーは1~5μmのエアロゾル粒子を発生させることができるが、細菌やウイルスを肺の奥深くに運ぶ可能性がある。ネブライザーを使った治療では、飛沫核やエアロゾルを介した感染伝染のリスクが高まる可能性がある。ウイルスの伝播は複雑な事象であり、接種物、十分な量の病原体、及び宿主が必要である。呼吸器系ウイルスの伝染経路は、接触(皮膚から皮膚へ、又は物体/表面)、飛沫、エアロゾルによる伝染に分けられる。咳やくしゃみで発生する飛沫は、エアロゾル(5~10μm超)よりも広範囲に広がる。粒子が大きいので1m以上には広がらないが、表面に付着することで接触による汚染を引き起こすことができる。一方、エアロゾルは呼吸時に発生し、空気中に長時間留まる(Sethi,Barjaktarevic et al.2020)
【0011】
ネブライザーによる治療では、呼吸のエアロゾルによる伝染の危険性がある(Amirav and Newhouse 2020)。知られているように、ネブライザーは粒子を環境中に拡散させる(Reychler,Vecellio et al 2020)。これらのエアロゾル粒子は長距離を移動することができると考えられている。
【0012】
COVID‐19感染患者におけるネブライザー治療は、生存しているコロナウイルスを環境中の感受性の高い宿主に感染させる可能性を持っている。(Amirav and Newhouse 2020)。現在計画されている臨床試験では、患者が1日3回ネブライザーを使用することを考慮すると、病原体の伝染リスクは高いと考えられる。ネブライザー療法を受けるCOVID‐19患者が、ウイルスの拡散を引き起こす可能性があると考えることができる(Amirav and Newhouse 2020)。つまり、医療従事者や患者は、Covid‐19に限らず、他の感染性疾患に対しても、長期間にわたって重篤な感染症のリスクにさらされることになるのである。
【0013】
ネブライゼーション(噴霧療法)とCOVID‐19の伝播の関係については現在研究が進められているが、ネブライゼーション治療がCOVID‐19の伝播に関連していることを示唆する知見もある。カリフォルニア州の患者1名にネブライゼーションを含むエアロゾル生成治療が実施された。この治療期間中、患者と対峙した際に保護具を使用しなかった医療従事者121名のうち43名がCOVID‐19の症状を示し、3名が陽性であった。しかし、ネブライゼーションとCOVID‐19の関係は証明されていない(Heinzerling,Stuckey et al.2020)。別の研究では、代替ウイルストレーサーとして弱毒生インフルエンザワクチンが用いられた。それによると、ジェットネブライザーとフェイスマスクによるネブライゼーション治療を受けている成人患者の呼吸をシミュレートし、3カ所の異なる地点から採取した空気サンプルを調べた。患者の頭部付近の領域から採ったサンプルからは1リットルあたり612個のウイルスが検出されたのに対し、腹部付近の領域では1リットルあたり174個のウイルスが検出された。
【0014】
患者の足元付近の領域では118ウイルス/リットルが検出された。この研究により、エアロゾルの放出濃度は患者からの距離に応じて減少することが明らかになった(Tang,Kalliomaki et al.2020)。フェイスマスクとともに使用するジェットネブライザーのリザーバーにウイルス分泌物が入るため、ウイルス伝染のリスクが高まる可能性がある(McGrath,O’Toole et al.2019)。拡散を防ぐために、ネブライザーをマウスピースで使用することが提案されている(Sethi,Barjaktarevic et al.2020)。
【0015】
Societe de Pneumologie de Langue Franc’Aerosoltherapy(GAT)ワーキンググループは、SARS‐CoV‐2のアウトブレイク時にネブライゼーションによる薬剤送達を避けるよう推奨している。このように、ネブライザーによるウイルスの拡散を防ぐことが目的である。ネブライザーは、多くの研究で示されているように、様々な微生物に患者を感染させる可能性がある。これらの研究はSARS‐CoV‐2にも外挿でき、ネブライザーは感染性があると考えられる(Reychler,Vecellio et al.2020)。また、SARS‐CoV‐2はプラスチック上で72時間生存できることが示されている(van Doremalen,Bushmaker et al.2020)。このように、ネブライザーの使用中に、汚染されたネブライザーにより発生した粒子が、患者から患者の周囲の人々、あるいは医療従事者にまで拡散することになる。ネブライザーリザーバーは、ネブライザー治療中は十分には保護されていないのである。リザーバーは患者の手や患者の唾液で汚染されることがある。したがって、適切な粒子径を持つため、長距離を移動して医療従事者の上気道や下気道に侵入することができる(Reychler,Vecellio et al.2020)。
【0016】
エアロゾル中のウイルスの安定性を調べるため、in vitro試験を実施した。この試験では、SARS‐CoV‐2を含むエアロゾルジェットネブライザーを用意し、ネブライゼーション後のエアロゾル中でウイルスが3時間生存していることが確認された。SARS‐CoV‐1で実験を繰り返したところ、同様の結果が得られた(van Doremalen,Bushmaker et al 2020)。SARS‐CoV‐1は空気感染することが示唆されているため、SARS‐CoV‐2も空気感染する可能性がある。
【0017】
ネブライザーによる治療を受けた患者のネブライザー使用後のエアロゾル飛沫によるCOVID‐19の輸送については研究が進められているが、まだ十分なエビデンスはない。カナダ小児科学会(The Canadian Pediatric Society)及びぜんそく管理に関する国際指針(Global Initiative for Asthma)は、必要な場合を除き、ネブライザーを使用しないよう勧告している。そのほか、英国国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence(NICE))及び英国公衆衛生庁(Public Health England(PHE))は、実行可能な場合はネブライザー療法を継続するよう推奨している。疾病対策予防センター(CDC)もネブライザーによる治療に反対はしていないが、医療従事者の暴露カテゴリーが不明であるとしている(Sethi,Barjaktarevic et al.2020)。
【発明の概要】
【0018】
提供された情報に基づき、本発明者らは、医療従事者への曝露リスクを低減するために、必要な患者にのみ、1日により少ない回数でネブライゼーションの使用を制限することが妥当であると考える(Reychler、Vecellio et al.2020)。さらに、Covid‐19の治療におけるアビプタジルの使用を開示する先行技術が存在する。最近の臨床試験では、メッシュネブライザーを用いたCOVID‐19の治療のために、100μgの吸入アビプタジルを1日3回使用する予定である(NCT04360096)。別の試験(NCT04536350)では、COVID‐19に関連するARDSの予防を目的として、被験者に標準治療に加えて67μgの投与量のアビプタジルを1日3回、10日間吸入投与する予定である。
【0019】
しかし、先に説明したように、ネブライザーによる治療法を用いなければならないCOVID‐19患者は、その環境と医療従事者の双方にとってリスク要因である。ネブライザー治療のリスクを軽減及び除去するために、アビプタジルの改善された効果的な投与方法が依然として求められている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、有効量のアビプタジルを対象に投与することにより、それを必要とする対象における肺疾患を治療する方法を提供する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、先行技術の投与レジームと比較して、アビプタジルが1日に少なくとも2回、好ましくは一日に2回投与される、それを必要とする対象における肺疾患の治療における使用のためのアビプタジルを提供する。このように、アビプタジルを1日3回ネブライゼーションにより投与する代わりに、投与回数を減らすことにより、ウイルス感染を減少させることができる。本発明者らは、特にCovid‐19のようなパンデミック状態において、患者の親族と医療従事者の両方を保護することを目的としている。
【0022】
本発明によれば、それを必要とする対象における肺疾患の治療に使用するためのアビプタジルは、1日に少なくとも2回、好ましくは1日に2回投与され、投与間の期間は200分を超えず、又は好ましくは投与間の期間は5~120分であり;より好ましくは15~110分、20~100分、25~90分又は15~90分及び最も好ましくは30分である。アビプタジルの投与間の期間を大幅に短縮することにより、ウイルスの拡散を抑えながら治療を行うことができ、副作用なく患者のコンプライアンスを高めることができることが、驚くべきことに見出されたのである。
【0023】
本発明の別の実施形態では、アビプタジルは1日に3回投与され、投与間の期間が200分を超えない、又は好ましくは投与間の期間が5~120分;より好ましくは15~90分、最も好ましくは30分である。
【0024】
本発明のすべての実施形態において、治療は3~30日間、好ましくは5~21日間、より好ましくは7~14日間継続される。
【0025】
ここで、「投与量」という用語は、1回に投与されるアビプタジルの量をいう。アビプタジルの投与量は、1~150μgであり、好ましくは40~120μg又は50~110μgであり、より好ましくは100μgである。
【0026】
本発明によれば、アビプタジルは、1日に少なくとも2回投与される。したがって、投与は、第1の投与量と第2の投与量とを含む。アビプタジルの第1の投与量は、1~150μg、好ましくは40~120μg又は50~110μg、より好ましくは100μgである。アビプタジルの第2の投与量は、1~150μg、好ましくは40~120μg又は50~110μg、より好ましくは100μgである。
【0027】
本発明によれば、アビプタジルは、肺疾患;好ましくはSARS‐CoV‐2ウイルスによって引き起こされるCovid‐19疾患、喘息、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、サルコイドーシス又はベリリウム中毒;より好ましくはSARS‐CoV‐2ウイルスによって引き起こされるCovid‐19疾患の治療のために用いられる。
【0028】
本発明によれば、アビプタジルの投与は、ネブライザー、好ましくはM‐nebモバイルメッシュネブライザーMN‐300/9を用いて適用される。
【0029】
全ての実施形態において、本発明は、肺疾患の治療に使用するための肺投与用のアビプタジルの医薬組成物を提供する。この組成物は、ネブライザーによって送達されるのに適している。
【0030】
本発明によれば、組成物は、0.001~1%w/vの範囲でアビプタジルを含む。
【0031】
本発明の一実施形態では、アビプタジルの組成物は、保存料、抗酸化剤、キレート剤、緩衝剤、酸性化剤、乳化剤、アルカリ化剤、着色剤、可溶化剤、安定剤、可塑剤、粘性調整剤又は先行技術において知られている他の賦形剤であってよい少なくとも1つの追加の賦形剤を含んでいる。
【0032】
本発明の組成物は、ポリソルベート、レシチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギナート)、ガム、脂肪酸の塩、微結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る少なくとも一つの乳化剤を含んでいてよい。
【0033】
本発明の組成物は、EDTA又はその既知の塩の1つ(EDTA四ナトリウム、EDTA二ナトリウム又はEDTAナトリウム)、メタケイ酸ナトリウム、DTPA、NT又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る少なくとも1つのキレート剤も含んでいてもよい。
【0034】
本発明の組成物は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、炭酸塩緩衝剤、水酸化物緩衝剤、リン酸塩緩衝剤及び酢酸塩緩衝剤又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る少なくとも1つの緩衝剤も含んでいてもよい。
【0035】
本発明によれば、組成物は、1~5μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するアビプタジルの粒子の分散系である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、肺疾患の治療に使用するためのアビプタジルは、塩の形態であり、好ましくは酢酸塩である。
【0037】
本発明による組成物は、アビプタジルを賦形剤と混合するステップ、及び組成物のpHを調整するステップを含むプロセスによって得ることができる。このプロセスはまた、濾過及び充填のステップを含んでいる。プロセスにおいて、賦形剤は水に溶解され、次いで、アビプタジルは賦形剤の組成物に添加され、溶解される。pHは5.7に調整される。無菌濾過及び充填のステップが実行される。
【実施例
【0038】
例1
試験において、プラセボ群と治療群を比較した。プラセボ群では、医師が適切と判断した標準的な医学的治療が、保健省公衆衛生総局(the Ministry of Health,General Directorate of Public Health)発行のトルコ共和国COVID‐19(SARS‐CoV‐2感染症)成人患者治療ガイドライン(the Turkish Republic COVID-19(SARS-CoV-2 INFECTION) ADULT PATIENT TREATMENT GUIDELINES)に従って行われ、プラセボが使用される予定である。
【0039】
治験薬及びプラセボの現在の製剤は以下のとおりである(表1)。なお、治験薬及びプラセボはいずれも無菌製剤であり、適正製造基準(good manufacturing requirements)に適合していた。
【0040】
表1.治験薬とプラセボの内容
【表1】
【0041】
治療群では、上記の標準的な医療処置に加えて、この治療群に無作為に割り付けられた患者に、アビプタジルを1日2回、両投薬間の投与間隔を30分として吸入投与することとする。ネブライゼーションにはM‐neb mobile mesh nebulizer MN‐300/9を使用した。空気動力学的中央粒子径は4±0.16μmである。アビプタジル治療は、最短7日間、最長14日間を目標とする。試験対象者は、COVID‐19肺病変を有する18歳以上の患者及び入院中の患者とする。新しい薬量学を用いた吸入アビプタジルの有効性、安全性、認容性を評価した。有効性のパラメーターとして、患者の集中治療室入室率を評価した。
【0042】
結果
我々の主な目標は、COVID‐19感染症の伝染リスクが低減した、副作用のない、Covid‐19患者に使用するためのアビプタジルの新しい投与計画を開発することである。治療群に16名の患者、プラセボ群に13名の患者を登録した。本法では、新投与量の吸入アビプタジルは患者の認容性が良好である。有害事象は27患者に47件認められ、そのうち治療群で認められた有害事象は40.43%であった。なお、いずれの有害事象も治験薬との関連は認められなかった(表2)。
【0043】
表2.有害事象の分布
【表2】
【0044】
治療群において60歳以上の患者を対象に患者の中治療室への入室率を評価したところ、治療群では25%、プラセボ群では66.7%が集中治療室に入室していることが確認された(表3)。
【0045】
表3.集中治療室入室時の年齢別分布
【表3】
【0046】
結論
本発明は、COVID‐19感染症の伝染リスクが低減した、副作用のない、Covid‐19患者に使用するためのアビプタジルの新しい投与計画を提供するものである。この目的のために実施された試験では、治験薬はすべての患者によく容認され、高リスクの年齢層で有効であることが示された。また、この投与計画では、薬物及び薬量学的な有害事象は認められなかった。