(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ノイズブランカ
(51)【国際特許分類】
H04B 1/10 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H04B1/10 F
(21)【出願番号】P 2020111418
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今里 康二郎
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224855(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038536(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/020745(WO,A1)
【文献】特開2006-050018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相関係数の値が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、入力される信号とパルス性雑音のレプリカ信号との相互相関を計算する相関計算部と、
前記相関係数の値が前記所定の閾値以上で前記相互相関が高い場合に前記入力される信号のピークのレベルを検出するピーク検出部と、
前記パルス性雑音のレプリカ信号
と、前記ピークの前記レベル
とを乗算した前記パルス性雑音の波形を減算信号
として出力する乗算器と、
前記入力される信号から前記減算信号を減算する加算器と、を有する、
ことを特徴とするノイズブランカ。
【請求項2】
前記相互相関が高い場合に前記入力される信号から少なくとも前記ピークを含むサンプルを除去して信号をミュートする入力用ブランク処理部と、
前記入力用ブランク処理部から出力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記入力用ブランク処理部から出力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、
前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズブランカ。
【請求項3】
前記入力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記入力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、
前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズブランカ。
【請求項4】
前記加算器から出力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、
前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、
前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズブランカ。
【請求項5】
高周波信号を受信してアナログの受信信号を出力するアンテナ部と、
前記アナログの受信信号をデジタル信号に変換してデジタルの受信信号を出力するA/D変換器と、
前記デジタルの受信信号をダウンコンバートして出力するDDC部と、
入力される信号について所望のチャネル帯域外の周波数成分を除去して出力するチャネルフィルタと、
前記チャネルフィルタから出力される信号のレベルを調整するAGC部と、
前記AGC部から出力される信号を復調する復調部と、を有する回路において、
前記DDC部と前記チャネルフィルタとの間に挿入される、
ことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のノイズブランカ。
【請求項6】
前記パルス性雑音のレプリカ信号のパルス幅が処理レートの1サンプルの幅(即ち、時間長さ)以下である、
ことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のノイズブランカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノイズブランカに関し、特に、高周波信号を受信して所定の出力手段へと供給するデータを生成する無線受信機に用いられるノイズブランカに関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズを抑圧する機序として、例えば、入力信号のノイズを減衰させる処理を行うノイズ処理手段と、入力信号の信号レベルを検出してノイズを検出するためのノイズ検出手段と、ノイズ処理手段にノイズを減衰させる減衰量を設定するための減衰量設定手段とを備え、ノイズ検出手段がノイズを検出すると、ノイズ処理手段が設定された減衰量に応じてノイズを減衰させる処理を行うノイズブランカ、が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線機の受信時に混入するパルス性雑音は、復調データを劣化させ、延いては、復調データに基づいて再生される音声に悪影響を与えて音質を劣化させる、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、パルス性雑音を抑圧/除去して復調データの劣化を防ぐことが可能な、ノイズブランカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、相関係数の値が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、入力される信号とパルス性雑音のレプリカ信号との相互相関を計算する相関計算部と、前記相関係数の値が前記所定の閾値以上で前記相互相関が高い場合に前記入力される信号のピークのレベルを検出するピーク検出部と、前記パルス性雑音のレプリカ信号と、前記ピークの前記レベルとを乗算した前記パルス性雑音の波形を減算信号として出力する乗算器と、前記入力される信号から前記減算信号を減算する加算器と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のノイズブランカにおいて、前記相互相関が高い場合に前記入力される信号から少なくとも前記ピークを含むサンプルを除去して信号をミュートする入力用ブランク処理部と、前記入力用ブランク処理部から出力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記入力用ブランク処理部から出力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のノイズブランカにおいて、前記入力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記入力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のノイズブランカにおいて、前記加算器から出力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から少なくとも前記パルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部と、前記平均用ブランク処理部から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算して前記ピーク閾値として出力する閾値出力部と、前記パルスサンプルが検出された場合に前記加算器から出力される信号から前記パルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部と、をさらに有する、ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載のノイズブランカにおいて、高周波信号を受信してアナログの受信信号を出力するアンテナ部と、前記アナログの受信信号をデジタル信号に変換してデジタルの受信信号を出力するA/D変換器と、前記デジタルの受信信号をダウンコンバートして出力するDDC部と、入力される信号について所望のチャネル帯域外の周波数成分を除去して出力するチャネルフィルタと、前記チャネルフィルタから出力される信号のレベルを調整するAGC部と、前記AGC部から出力される信号を復調する復調部と、を有する回路において、前記DDC部と前記チャネルフィルタとの間に挿入される、ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5に記載のノイズブランカにおいて、前記パルス性雑音のレプリカ信号のパルス幅が処理レートの1サンプルの幅(即ち、時間長さ)以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、入力される信号を復調する前にパルス性雑音のレプリカ信号を減算することによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が狭いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、本来受信したい目的信号(例えば、音声)の波形を残したままパルス性雑音を抑圧/除去することができ、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、入力される信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。請求項2に記載の発明によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、入力される信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を良好に抑えることが可能となる。請求項3に記載の発明によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を良好に抑えることが可能となる。請求項3に記載の発明によれば、さらに、遅延調整の制約が少なくなり、出力用ブランク処理部のブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、入力される信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。請求項4に記載の発明によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。請求項4に記載の発明によれば、さらに、遅延調整の制約が少なくなり、出力用ブランク処理部のブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、DDC部とチャネルフィルタとの間にノイズブランカを挿入するようにしているので、AGC部の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、強いパルス成分を抑圧し、本来受信したい目的信号(例えば、音声)のレベルが自動利得制御によって低下する事態を回避することが可能となり、また、チャネルフィルタの前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、パルス性雑音がフィルタによって時間的に広がる前にパルス性雑音を良好に抑圧/除去することが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、特に、電流スイッチノイズや点火ノイズなど、パルスの幅が狭いパルス性雑音を検出して減衰させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るノイズブランカを含む受信機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】DDC部のインパルス応答(時間波形)の例を示す図である。
【
図3】
図1のノイズブランカの作用効果の検証例を示す図である。(A)は、トーン信号に、パルス性雑音として0.125msごとに短いパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。(B)は、(A)の信号を受信信号として与えてノイズブランカを動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
【
図4】
図1のノイズブランカの作用効果の検証例を示す図である。(A)は、音声信号に、パルス性雑音として0.125msごとに短いパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。(B)は、(A)の信号を受信信号として与えてノイズブランカを動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
【
図5】この発明の実施の形態2に係るノイズブランカを含む受信機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5の第2のノイズブランカの作用効果の検証例を示す図である。(A)は、トーン信号に、パルス性雑音として1秒ごとに1ms幅のパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。(B)は、(A)の信号を受信信号として与えて第2のノイズブランカを動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
【
図7】
図5の第2のノイズブランカの作用効果の検証例を示す図である。(A)は、音声信号に、パルス性雑音として1秒ごとに1ms幅のパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。(B)は、(A)の信号を受信信号として与えて第2のノイズブランカを動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
【
図8】この発明の実施の形態3に係るノイズブランカを含む受信機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】この発明の実施の形態4に係るノイズブランカを含む受信機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係るノイズブランカ5を含む受信機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0021】
受信機1は、高周波信号を受信し、所定の方式でデータ出力を行う出力手段へと供給するデータを生成して出力する装置であり、主として、アンテナ部2と、A/D変換器3と、DDC部4と、ノイズブランカ5と、チャネルフィルタ6と、AGC部7と、復調部8と、を有する。
【0022】
アンテナ部2は、図示していない送信機などから送信される高周波信号を受信し、アナログの受信信号を出力する。
【0023】
A/D変換器3(Analog/Digital Converter)は、アンテナ部2から出力されるアナログの受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号に対して所定のサンプリング周波数に従ってアナログ信号からデジタル信号への変換処理を施して、デジタル変換処理後のデジタルの受信信号を出力する。
【0024】
DDC部4(DDC:Digital Down Converter の略)は、デシメーションフィルタを備え、入力されるデジタル信号に対してダウンサンプリング処理(別言すると、時間軸上における間引き処理/デシメーション処理)を施して周波数の変換処理を行う。
【0025】
DDC部4は、具体的には、A/D変換器3から出力されるデジタルの受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号を高周波帯からベースバンド周波数帯または中間周波数帯へと周波数変換して、ダウンコンバート処理後のベースバンド周波数帯または中間周波数帯の受信信号を出力する。
【0026】
ノイズブランカ5は、DDC部4から出力されるベースバンド周波数帯または中間周波数帯の受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号のノイズ成分を検出するとともに前記ノイズ成分のブランク処理(別言すると、減衰処理)を行い、ブランク処理後の受信信号を出力する。
【0027】
チャネルフィルタ6は、具体的には帯域通過フィルタによって構成され、ノイズブランカ5から出力されるブランク処理後の受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号について所望のチャネル帯域外の周波数成分を除去して、所望のチャネルの周波数成分の受信信号を出力する。
【0028】
AGC部7(AGC:Automatic Gain Control の略)は、後段の復調部8による復調処理後に図示していない出力手段としての例えばスピーカによって再生される音声レベルを安定化させるために利得制御の処理を行う。
【0029】
AGC部7は、フィードフォワード型またはフィードバック型の方式により、チャネルフィルタ6から出力される受信信号のレベルを調整し、レベル調整処理後の受信信号を出力する。
【0030】
復調部8は、AGC部7から出力されるレベル調整処理後の受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号に対して復調処理を施して、復調データを出力する。復調部8から出力される復調データは、必要に応じて各種の処理(例えば、周波数変換処理、デジタル信号からアナログ信号への変換処理)がさらに施されたうえで、図示していない出力手段としての例えばスピーカへと入力される。そして、復調データに基づいて、出力手段としての例えばスピーカから音声が出力される。
【0031】
そして、実施の形態に係るノイズブランカ5は、入力される信号とパルス性雑音のレプリカ信号との相互相関を計算する相関計算部52と、相互相関が高い場合に前記入力される信号のピークのレベルを検出するピーク検出部53と、パルス性雑音のレプリカ信号のレベルを前記ピークのレベルに合わせて減算信号を出力する乗算器56と、前記入力される信号から減算信号を減算する加算器58と、を有する、ようにしている。
【0032】
第1のレプリカ保管部51Aは、パルス性雑音のレプリカ信号を予め記憶する。パルス性雑音のレプリカ信号は、DDC部4のインパルス応答、具体的には、DDC部4が備えるデシメーションフィルタのインパルス応答に基づいて生成される。
【0033】
ここで、ノイズブランカ5は、特に、電流スイッチノイズや点火ノイズなど、パルスの幅が狭いパルス性雑音を検出して減衰させることを主眼とする。具体的には、ノイズブランカ5は、DDC部4におけるダウンコンバート後の周波数に従ってDDC部4から出力される1サンプルの幅(時間長さ)以下の幅のパルス(言い換えると、処理レートの1サンプルの幅以下の幅のパルス)を対象として、検出および減衰を行う。例えば、DDC部4におけるダウンコンバート後の周波数が96kHzである場合には、ノイズブランカ5は、1/96kHz≒10μs以下の幅のパルスを対象として、検出および減衰を行う。
【0034】
DDC部4(具体的には、デシメーションフィルタ)のインパルス応答(時間波形)の例を
図2に示す。
図2に示すインパルス応答が、すなわち、パルス性雑音のレプリカ信号として用いられる信号(時間波形)であり、
図2に示す例は10サンプルで構成されるパルス性雑音のレプリカ信号の例である。
図2に示す例では、1サンプルの時間長さは10μsである。
【0035】
第2のレプリカ保管部51Bは、第1のレプリカ保管部51Aに記憶されるパルス性雑音のレプリカ信号について、所定ピッチの微小遅延が与えられた、前記所定ピッチの微小遅延ごとのパルス性雑音のレプリカ信号を予め記憶する。
【0036】
すなわち、第2のレプリカ保管部51Bには、第1のレプリカ保管部51Aに記憶されるパルス性雑音のレプリカ信号に対して、1サンプルの幅(時間長さ)の、1/Nの遅延を与えたパルス性雑音のレプリカ信号、2/Nの遅延を与えたパルス性雑音のレプリカ信号、3/Nの遅延を与えたパルス性雑音のレプリカ信号、・・・、および、N/Nの遅延を与えたパルス性雑音のレプリカ信号が予め記憶される(但し、Nは2以上の整数)。
【0037】
第2のレプリカ保管部51Bに記憶されるパルス性雑音のレプリカ信号に対して与えられる所定ピッチの微小遅延の前記所定ピッチの程度を決定づける整数Nは、2以上であれば特定の値に限定されるものではなく、パルス性雑音のレプリカ信号の個数が増加することによる演算処理量の増大が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。整数Nは、具体的には例えば、2~32程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0038】
相関計算部52は、DDC部4から出力されて分岐される受信信号の入力を受け、入力された前記受信信号と第1のレプリカ保管部51Aに記憶されているパルス性雑音のレプリカ信号との相互相関を計算する。相関計算部52は、前記パルス性雑音のレプリカ信号を構成するサンプル数が考慮されて区分される(具体的には例えば、パルス性雑音のレプリカ信号を構成するサンプル全体の時間長さと同じ時間長さに区分される)前記受信信号と前記パルス性雑音のレプリカ信号との相互相関を計算する。
【0039】
相関計算部52は、例えば相関係数の値が所定の閾値以上であるか否かに基づいて、相互相関が高いか低いかを表す信号および受信信号を出力する。なお、受信信号とパルス性雑音のレプリカ信号との相互相関が高いということは、パルスの幅が狭いパルス性雑音が検出されたと考えられる。
【0040】
ピーク検出部53は、相関計算部52から出力される相互相関が高いか低いかを表す信号および受信信号の入力を受け、前記相互相関が高い場合には、前記受信信号におけるピークの位置並びにピークのレベル(即ち、ピーク値)を検出する。そして、ピーク検出部53は、受信信号におけるピークの位置に関する情報としてピークタイミングを選択部54に対して出力するとともに、受信信号におけるピークのレベルを乗算器56に対して出力する。
【0041】
一方、上記相互相関が低い場合には、ピーク検出部53は、ピークタイミングの値として0を選択部54に対して出力する。
【0042】
選択部54は、ピーク検出部53から出力されるピークタイミングの入力を受け、入力された前記ピークタイミングに対応する微小遅延が与えられているパルス性雑音のレプリカ信号を第2のレプリカ保管部51Bから読み込んで減算パルス生成部55へと供給する。ただし、ピークタイミングの値として0が入力された場合には、選択部54は、パルス性雑音のレプリカ信号を減算パルス生成部55へと供給する処理を実行しない。
【0043】
減算パルス生成部55は、選択部54から供給されるパルス性雑音のレプリカ信号の入力を受け、入力された前記パルス性雑音のレプリカ信号を構成している複数のサンプルを、これらサンプルの幅(時間長さ)に合わせてタイミングを計って1サンプルずつ出力する。
【0044】
乗算器56は、減算パルス生成部55から出力されるパルス性雑音のレプリカ信号(具体的には、サンプル単位)と、ピーク検出部53から出力される受信信号のピークのレベルとを乗算し、前記パルス性雑音のレプリカ信号のレベルを前記受信信号のピークのレベルに合わせて、パルス性雑音の波形(「減算信号」と呼ぶ)を出力する。
【0045】
第1の遅延回路57Aは、DDC部4から出力される受信信号を、主に相関計算部52およびピーク検出部53における処理時間の合計に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0046】
第2の遅延回路57Bは、第1の遅延回路57Aから出力される受信信号を、主に減算パルス生成部55および乗算器56における処理時間の合計に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0047】
加算器58は、第2の遅延回路57Bから出力される信号(即ち、DDC部4から出力されて遅延させられた受信信号)から、乗算器56から出力される減算信号を減算して出力する。
【0048】
上記により、DDC部4から出力される受信信号から、パルス性雑音のレプリカ信号から調製される信号が減算され、パルス性雑音成分がキャンセルされて受信信号の劣化を防ぐことができる。
【0049】
上記のようなノイズブランカ5の作用効果の検証例を
図3および
図4に示す。
【0050】
図3(A)は、トーン信号に、パルス性雑音として0.125msごとに短いパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。同図(B)は、前記(A)の信号を受信信号として与えてノイズブランカ5を動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
図3(B)に示す結果から、ノイズブランカ5の働きにより、パルス性雑音が適切に抑圧/除去されて、トーン信号が良好に再現されていることが確認される。
【0051】
図4(A)は、音声信号に、パルス性雑音として0.125msごとに短いパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。同図(B)は、前記(A)の信号を受信信号として与えてノイズブランカ5を動作させた場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
図3(B)に示す結果から、ノイズブランカ5の働きにより、実際的な音声信号の場合も、パルス性雑音が適切に抑圧/除去されて、音声信号が良好に再現されていることが確認される。
【0052】
上記のようなノイズブランカ5によれば、受信信号を復調する前にパルス性雑音のレプリカ信号を減算することによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が狭いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、本来受信したい目的信号(例えば、音声)の波形を残したままパルス性雑音を抑圧/除去することができ、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0053】
上記のようなノイズブランカ5によれば、また、DDC部4とチャネルフィルタ6との間にノイズブランカ5を挿入するようにしているので、AGC部7の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、強いパルス成分を抑圧し、本来受信したい目的信号(例えば、音声)のレベルが自動利得制御によって低下する事態を回避することが可能となり、また、チャネルフィルタ6の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、パルス性雑音がフィルタによって時間的に広がる前にパルス性雑音を良好に抑圧/除去することが可能となる。
【0054】
(実施の形態2)
図5は、この発明の実施の形態2に係るノイズブランカを含む受信機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0055】
この実施の形態ではノイズブランカとして上記の実施の形態1におけるノイズブランカ5の後段に第2のノイズブランカ9をさらに含む点で主に実施の形態1と異なる一方で、共通する構成や処理の内容もあり、実施の形態1と同等の構成や処理の内容については同一符号を付することでその説明を省略する。
【0056】
この実施の形態における第2のノイズブランカ9は、ノイズブランカ5の相関計算部52における計算結果に基づいて相互相関が高い場合に入力される信号から少なくともピークを含むサンプルを除去して信号をミュートする入力用ブランク処理部91と、入力用ブランク処理部91から出力される信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部92と、パルスサンプルが検出された場合に入力用ブランク処理部91から出力される信号から少なくともパルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部94と、平均用ブランク処理部94から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算してピーク閾値として出力する閾値出力部95と、パルスサンプルが検出された場合にノイズブランカ5の加算器58から出力される信号からパルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部96と、を有する、ようにしている。
【0057】
入力用ブランク処理部91は、ノイズブランカ5の第1の遅延回路57Aから出力されて分岐される受信信号の入力を受け、ノイズブランカ5のピーク検出部53から出力されて分岐されるピークタイミングが入力されたときに、入力された前記受信信号から所定数のサンプルを除去して信号を0にする(別言すると、ミュートする)。ただし、ピークタイミングの値として0が入力された場合には、入力用ブランク処理部91は、入力された前記受信信号から所定数のサンプルを除去して信号を0にする処理を実行しない。
【0058】
入力用ブランク処理部91は、ノイズブランカ5のピーク検出部53において検出された受信信号のピークの位置を含むサンプルのみを除去するようにしてもよく、或いは、前記ピークの位置を含むサンプルに加えて前記ピークの位置を含むサンプルの前後のサンプルも除去するようにしてもよい。例えば、前記ピークの位置を含むサンプルに加えて、前記ピークの位置を含むサンプルの前後1サンプルずつの、合計3サンプルを除去するようにしてもよい。なお、入力用ブランク処理部91において除去するサンプル数は、特定の値には限定されないものの、除去するサンプル数が増加することによって入力用ブランク処理部91における演算処理量が極端に増大しないように、あまり多くしないようにすることが考慮されて設定されることが好ましい。
【0059】
入力用ブランク処理部91により、DDC部4から出力される受信信号から、パルス性雑音のレプリカ信号と相互相関が高くパルスの応答波形のピークの位置を含むサンプル(および、その前後のサンプル)が除去され、すなわち、パルスの幅が狭いパルス性雑音に該当するサンプルが除去される。
【0060】
パルス検出部92は、入力用ブランク処理部91から出力されるブランク処理後の受信信号の入力を受けるとともに、閾値出力部95から出力されるピーク閾値の入力を受け、前記受信信号のピークを検出するとともに前記ピークの瞬時電力が前記ピーク閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0061】
パルス検出部92は、ピーク閾値よりも大きい受信信号のピークの瞬時電力が検出されると、平均用ブランク処理部94と出力用ブランク処理部96とに対して、瞬時電力がピーク閾値よりも大きい受信信号のピークの位置を含むサンプルが検出されたことを表す信号(「パルスフラグ」と呼ぶ)を出力する。
【0062】
ここで、パルス検出部92へと入力される受信信号は、入力用ブランク処理部91により、パルスの幅が狭いパルス性雑音に該当するサンプルは既に除去されている。したがって、パルスの幅が狭いパルス性雑音に該当するピークが、パルス検出部92によって検出されることはない。
【0063】
第3の遅延回路93は、入力用ブランク処理部91から出力されて分岐されるブランク処理後の受信信号を、主にパルス検出部92における処理時間に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0064】
平均用ブランク処理部94は、第3の遅延回路93から出力される受信信号の入力を受け、パルス検出部92から出力されるパルスフラグが入力されたときに、入力された前記受信信号からパルスの主成分を除去することを目的として所定数のサンプルを除去して信号を0にする(別言すると、ミュートする)。
【0065】
この際、パルス検出部92において検出された受信信号のピークの位置を含むサンプル(「パルスサンプル」と呼ぶ)のみを除去するようにしてもよく、或いは、前記パルスサンプルに加えて前記パルスサンプルの前後のサンプルも除去するようにしてもよい。例えば、前記パルスサンプルに加えて、前記パルスサンプルの前後3サンプルずつの、合計7サンプルを除去するようにしてもよい。なお、平均用ブランク処理部94において除去するサンプル数は、特定の値には限定されないものの、除去するサンプル数が増加することによって平均用ブランク処理部94における演算処理量が極端に増大しないように、あまり多くしないようにすることが考慮されて設定されることが好ましい。
【0066】
閾値出力部95は、最大値保持部951とLPF部952とを備え、平均用ブランク処理部94から出力される受信信号の瞬時電力の最大値の平均値を計算してピーク閾値として出力する。
【0067】
最大値保持部951は、平均用ブランク処理部94から出力されるブランク処理後の受信信号の入力を受け、入力を受けた時点の直近の所定時間における受信信号の瞬時電力の最大値を特定して出力する。受信信号の瞬時電力の最大値を特定する際の直近の時間は、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば10~40ms程度の範囲のうちのいずれかの時間長さに設定されることが考えられる。
【0068】
LPF部952は、無限インパルス応答(IIR:Infinite Impulse Response の略)型のローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter の略)を含んで構成され、最大値保持部951から出力される受信信号の瞬時電力の最大値の入力を受け、IIRフィルタ処理により、前記最大値の平均値(別言すると、受信強度の最大値の平均レベル)を出力する。なお、LPF部952における時定数は、特定の値に限定されるものではなく、例えば0.1~0.3ms程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0069】
ここで、最大値保持部951へと入力される受信信号は、平均用ブランク処理部94により、パルス検出部92によって検出されたパルスの主成分に該当するサンプルは既に除去されている。したがって、LPF部952から出力される平均値は、受信信号の瞬時電力が極端に大きいピークの影響を受けることがなく安定した値となる。このため、パルス検出部92は、LPF部952から出力される平均値をピーク閾値として用いることにより、パルス性雑音に該当する受信信号のピークを適切に検出することができる。
【0070】
出力用ブランク処理部96は、ノイズブランカ5の加算器58から出力されて分岐される減算処理後の受信信号の入力を受け、パルス検出部92から出力されるパルスフラグが入力されたときに、入力された前記受信信号からパルスの主成分およびサイドロープを除去することを目的として所定数のサンプルを除去して信号を0にする(別言すると、ミュートする)。
【0071】
ここで、第2のノイズブランカ9は、特に、雷サージや開閉サージなど、ノイズブランカ5が特に対象とするパルスの幅と比べてパルスの幅が広いパルス性雑音を検出して減衰させることを主眼とする。
【0072】
このため、出力用ブランク処理部96は、例えば1ms程度以下の時間長さのパルスを対象として、パルス発生区間に該当する複数のサンプルを除去する。出力用ブランク処理部96において除去するサンプル数は、特定の値には限定されないものの、例えば、0.2~1ms程度の範囲のうちのいずれかの時間長さに相当するサンプル数に設定されることが考えられる。
【0073】
出力用ブランク処理部96において除去するサンプル数は、パルス検出部92において検出された受信信号のピークの位置を含むサンプル(即ち、パルスサンプル)の前後で異なるようにしてもよい。具体的には例えば、DDC部4におけるダウンコンバート後の周波数が96kHzであって1サンプルの幅(時間長さ)が10μs程度の場合で、0.5ms程度の時間長さのパルス発生区間に該当するサンプルを除去する場合に、パルスサンプルに加えて前記パルスサンプルの前3サンプルおよび後48サンプルの、合計52サンプルを除去するようにしてもよい。
【0074】
セレクタ10は、DDC部4から出力される受信信号(但し、第1の遅延回路57Aと第2の遅延回路57Bとによって所定の遅延が与えられている受信信号)、ノイズブランカ5の加算器58から出力される受信信号(即ち、ノイズブランカ5によるブランク処理が施された受信信号)、および第2のノイズブランカ9の出力用ブランク処理部96から出力される受信信号(即ち、ノイズブランカ5および第2のノイズブランカ9によるブランク処理が施された受信信号)の入力を受け、図示していない制御部からの制御信号に基づいて、前記の3つの受信信号のうちのいずれかを出力する。セレクタ10の働きにより、その時々の環境に応じて例えばユーザが前記の3つの受信信号のうちのいずれかを選択するというモードの選択に合わせて受信信号を出力することが可能となる。ただし、セレクタ10を有することは受信機1として必須の構成ではなく、セレクタ10を有さずに、第2のノイズブランカ9の出力用ブランク処理部96から出力される受信信号(即ち、ノイズブランカ5および第2のノイズブランカ9によるブランク処理が施された受信信号)がチャネルフィルタ6へと入力されるようにしてもよい。
【0075】
上記により、DDC部4から出力される受信信号のうちの、パルス部分の信号が0となり(別言すると、ミュートされ)、パルス性雑音成分が除去されて受信信号の劣化を防ぐことができる。
【0076】
上記のような第2のノイズブランカ9の作用効果の検証例を
図6および
図7に示す。
【0077】
図6(A)は、トーン信号に、パルス性雑音として1秒ごとに1ms幅のパルスを重畳させた信号を示す図である。同図(B)は、前記(A)の信号(時間波形)を受信信号として与えて第2のノイズブランカ9を動作させた(尚、ノイズブランカ5は動作させない)場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
図6(B)に示す結果から、第2のノイズブランカ9の働きにより、パルス部分の信号が0とされて(別言すると、ミュートされて)、パルス性雑音が適切に除去されていることが確認される。
【0078】
図7(A)は、音声信号に、パルス性雑音として1秒ごとに1ms幅のパルスを重畳させた信号(時間波形)を示す図である。同図(B)は、前記(A)の信号を受信信号として与えて第2のノイズブランカ9を動作させた(尚、ノイズブランカ5は動作させない)場合のシミュレーションの結果として得られる出力信号(時間波形)を示す図である。
図7(B)に示す結果から、第2のノイズブランカ9の働きにより、実際的な音声信号の場合も、パルス性雑音が適切に除去されて、音声信号が良好に再現されていることが確認される。
【0079】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、受信信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。上記のような第2のノイズブランカ9によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0080】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、また、DDC部4とチャネルフィルタ6との間に第2のノイズブランカ9を挿入するようにしているので、AGC部7の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、強いパルス成分を抑圧し、本来受信したい目的信号(例えば、音声)のレベルが自動利得制御によって低下する事態を回避することが可能となり、また、チャネルフィルタ6の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、パルス性雑音がフィルタによって時間的に広がる前にパルス性雑音を最小限に抑圧/除去することが可能となる。
【0081】
また、上記のような第2のノイズブランカ9によれば、幅の狭いパルス性雑音があっても受信信号を劣化させずにパルス性雑音を抑圧することができるとともに、幅の広いパルス性雑音があった場合でも劣化を最小限に抑えることができ、さらに、ノイズブランカ5の第2の遅延回路57Bで第2のノイズブランカ9に必要な遅延を兼用しているため、処理遅延を最小限に抑えることができる。
【0082】
(実施の形態3)
図8は、この発明の実施の形態3に係るノイズブランカを含む受信機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0083】
この実施の形態では第2のノイズブランカ9が入力用ブランク処理部91を含まないとともに第4の遅延回路97を含む点で主に上記の実施の形態2と異なる一方で、共通する構成や処理の内容もあり、上記の実施の形態1,2と同等の構成や処理の内容については同一符号を付することでその説明を省略する。なお、上記の実施の形態2で述べた通りセレクタ10は受信機1として必須の構成ではないので、
図8に示す例では、セレクタ10を有さずに、第2のノイズブランカ9の出力用ブランク処理部96から出力される受信信号がチャネルフィルタ6へと入力されるようにしている。
【0084】
この実施の形態における第2のノイズブランカ9は、DDC部4から出力される受信信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部92と、パルスサンプルが検出された場合にDDC部4から出力される受信信号から少なくともパルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部94と、平均用ブランク処理部94から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算してピーク閾値として出力する閾値出力部95と、パルスサンプルが検出された場合にノイズブランカ5の加算器58から出力される信号からパルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部96と、を有する、ようにしている。
【0085】
第4の遅延回路97は、DDC部4から出力されて分岐される受信信号を、主にノイズブランカ5における処理時間に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0086】
パルス検出部92は、この実施の形態では、第4の遅延回路97から出力される受信信号の入力を受けるとともに、閾値出力部95から出力されるピーク閾値の入力を受け、前記受信信号のピークを検出するとともに前記ピークの瞬時電力が前記ピーク閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0087】
パルス検出部92における処理内容は上記の実施の形態2と同様である。ただし、この実施の形態では、パルス検出部92へと入力される受信信号は、上記の実施の形態2のような入力用ブランク処理部91による処理は施されていない。
【0088】
第3の遅延回路93は、この実施の形態では、第4の遅延回路97から出力されて分岐される受信信号を、主にパルス検出部92における処理時間に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0089】
平均用ブランク処理部94、閾値出力部95、および出力用ブランク処理部96における処理内容は上記の実施の形態2と同様である。
【0090】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、受信信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を良好に抑えることが可能となる。上記のような第2のノイズブランカ9によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を良好に抑えることが可能となる。
【0091】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、また、DDC部4とチャネルフィルタ6との間に第2のノイズブランカ9を挿入するようにしているので、AGC部7の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、強いパルス成分を抑圧し、本来受信したい目的信号(例えば、音声)のレベルが自動利得制御によって低下する事態を回避することが可能となり、また、チャネルフィルタ6の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、パルス性雑音がフィルタによって時間的に広がる前にパルス性雑音を良好に抑圧/除去することが可能となる。
【0092】
また、上記のような第2のノイズブランカ9によれば、上記の実施の形態2の構成と比べて遅延調整(具体的には、遅延回路)の制約が少なくなり、第2のノイズブランカ9のブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。上記のような第2のノイズブランカ9によれば、また、第4の遅延回路97でパルス検出部92のタイミングを調整し、出力用ブランク処理部96のタイミングと同期させているため、処理遅延を最小限に抑えることができ(言い換えると、第2のノイズブランカ9に必要な遅延を第1,第2の遅延回路で補償することができ)、さらに、第4の遅延回路97によりブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。
【0093】
(実施の形態4)
図9は、この発明の実施の形態4に係るノイズブランカを含む受信機1の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0094】
この実施の形態では第2のノイズブランカ9が入力用ブランク処理部91を含まないとともに第5の遅延回路98を含む点で主に上記の実施の形態2と異なる一方で、共通する構成や処理の内容もあり、上記の実施の形態1,2と同等の構成や処理の内容については同一符号を付することでその説明を省略する。なお、上記の実施の形態2で述べた通りセレクタ10は受信機1として必須の構成ではないので、
図9に示す例では、セレクタ10を有さずに、第2のノイズブランカ9の出力用ブランク処理部96から出力される受信信号がチャネルフィルタ6へと入力されるようにしている。
【0095】
この実施の形態における第2のノイズブランカ9は、ノイズブランカ5の加算器58から出力される受信信号のピークであって瞬時電力がピーク閾値よりも大きいピークを含むパルスサンプルを検出するパルス検出部92と、パルスサンプルが検出された場合にノイズブランカ5の加算器58から出力される受信信号から少なくともパルスサンプルを除去して信号をミュートする平均用ブランク処理部94と、平均用ブランク処理部94から出力される信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値を計算してピーク閾値として出力する閾値出力部95と、パルスサンプルが検出された場合にノイズブランカ5の加算器58から出力される信号からパルスサンプルを含む複数のサンプルを除去して信号をミュートする出力用ブランク処理部96と、を有する、ようにしている。
【0096】
パルス検出部92は、この実施の形態では、ノイズブランカ5の加算器58から出力されて分岐される減算処理後の受信信号の入力を受けるとともに、閾値出力部95から出力されるピーク閾値の入力を受け、前記受信信号のピークを検出するとともに前記ピークの瞬時電力が前記ピーク閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0097】
パルス検出部92における処理内容は上記の実施の形態2と同様である。ただし、この実施の形態では、パルス検出部92へと入力される受信信号は、上記の実施の形態2のような入力用ブランク処理部91による処理は施されていない。
【0098】
第3の遅延回路93は、この実施の形態では、ノイズブランカ5の加算器58から出力されて分岐される受信信号を、主にパルス検出部92における処理時間に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0099】
第5の遅延回路98は、ノイズブランカ5の加算器58から出力される減算処理後の受信信号を、主にパルス検出部92における処理時間に相当する時間だけ遅延させた信号を生成して出力する。
【0100】
出力用ブランク処理部96は、この実施の形態では、第5の遅延回路98から出力される信号(即ち、ノイズブランカ5の加算器58から出力されて遅延させられた減算処理後の受信信号)の入力を受ける。
【0101】
平均用ブランク処理部94、閾値出力部95、および出力用ブランク処理部96における処理内容は上記の実施の形態2と同様である。
【0102】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、受信信号を復調する前にパルス部分の受信信号を0とすることによって受信信号に含まれるパルス成分(特に、幅が広いパルス)を抑圧/除去するようにしているので、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。上記のような第2のノイズブランカ9によれば、特に、受信信号の瞬時電力について所定の時間長さにおける最大値の平均値をピーク閾値として用いて受信信号に含まれるパルスを検出するようにしているので、時々の受信信号の状態を的確に反映した閾値によってパルスを検出することができ、パルスを適切に検出して対処することが可能となり、延いては、復調データ(延いては、復調データに基づいて再生される音声)の劣化を最小限に抑えることが可能となる。
【0103】
上記のような第2のノイズブランカ9によれば、また、DDC部4とチャネルフィルタ6との間に第2のノイズブランカ9を挿入するようにしているので、AGC部7の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、強いパルス成分を抑圧し、本来受信したい目的信号(例えば、音声)のレベルが自動利得制御によって低下する事態を回避することが可能となり、また、チャネルフィルタ6の前段階においてノイズブランク処理を施すことにより、パルス性雑音がフィルタによって時間的に広がる前にパルス性雑音を最小限に抑圧/除去することが可能となる。
【0104】
また、上記のような第2のノイズブランカ9によれば、上記の実施の形態2の構成と比べて遅延調整(具体的には、遅延回路)の制約が少なくなり、第2のノイズブランカ9のブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。上記のような第2のノイズブランカ9によれば、また、幅の狭いパルス性雑音があっても受信信号を劣化させずにパルス性雑音を抑圧することができるとともに、幅の広いパルス性雑音があった場合でも劣化を最小限に抑えることができ、さらに、第5の遅延回路98によりブランキングのタイミングを自由に調整することが可能となる。
【0105】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では
図1、
図5、
図8、および
図9に概略構成を示す受信機1に対してこの発明に係るノイズブランカ5,9が適用される場合を例に挙げて説明しているが、この発明が適用され得る受信機の構成は
図1や
図5、
図8、および
図9に示す例には限定されない。すなわち、この発明は、上記の実施の形態におけるDDC部4に相当する構成を備えてDDC部4の後段にノイズブランカが組み込まれ得る受信機であればどのような受信機に対しても適用され得る。さらに付け加えると、この発明は、音声出力に纏わる雑音成分の除去だけでなく、種々のデータ出力に纏わる雑音成分の除去に対しても適用され得る。
【0106】
また、上記の実施の形態では微小遅延が与えられた複数のパルス性雑音のレプリカ信号が用いられるようにしているが、微小遅延が与えられた複数のパルス性雑音のレプリカ信号が用いられることはこの発明において必須の構成ではなく、微小遅延が考慮されない1つのパルス性雑音のレプリカ信号のみが用いられるようにしてもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態ではパルス検出部92において用いるピーク閾値を最大値保持部951およびLPF部952によって受信信号の瞬時電力の最大値の平均レベルとして求めるようにしている。しかしながら、パルス検出部92において用いるピーク閾値の求め方/決定の仕法は、上記の実施の形態における求め方に限定されるものではなく、パルス性雑音に該当するピークを検出し得る閾値の求め方/決定の仕法であればどのようなものであってもよい。例えば、LPF部952について、無限インパルス応答(IIR)型のフィルタの代わりに、有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response の略)型のフィルタや移動平均フィルタが用いられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 受信機
2 アンテナ部
3 A/D変換器
4 DDC部
5 ノイズブランカ
51A 第1のレプリカ保管部
51B 第2のレプリカ保管部
52 相関計算部
53 ピーク検出部
54 選択部
55 減算パルス生成部
56 乗算器
57A 第1の遅延回路
57B 第2の遅延回路
58 加算器
6 チャネルフィルタ
7 AGC部
8 復調部
9 第2のノイズブランカ(実施の形態2、実施の形態3、実施の形態4)
91 入力用ブランク処理部
92 パルス検出部
93 第3の遅延回路
94 平均用ブランク処理部
95 閾値出力部
951 最大値保持部
952 LPF部
96 出力用ブランク処理部
97 第4の遅延回路(実施の形態3)
98 第5の遅延回路(実施の形態4)
10 セレクタ