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  • 特許-ハーネス止水構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】ハーネス止水構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/02 20060101AFI20240722BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240722BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240722BHJP
   H01B 7/28 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G3/30
H01B7/00 301
H01B7/28 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020127259
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024586
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】福田 真司
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016927(JP,A)
【文献】特開2016-067069(JP,A)
【文献】特開2016-051626(JP,A)
【文献】特開平8-205357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/02
H02G 3/30
H01B 7/00
H01B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端がコネクタに接続されたワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する構造であって、
前記コネクタの手前側において、前記ワイヤハーネスに巻付部材が巻き付けられ、
前記巻付部材が前記ワイヤハーネスの前記外面に接触してロール状に1周以上巻かれるロール状部を有し、
前記ロール状部の内側の先端部が先細りに形成され
前記巻付部材が前記ロール状部の外側に延在する延在部をさらに有し、
前記延在部に形成された孔にバンドが通されて、前記バンドにより、前記ロール状部が前記ワイヤハーネスに締め付けられる、ハーネス止水構造。
【請求項2】
前記延在部の先端が外側に折り返されている、請求項に記載のハーネス止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止するハーネス止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、電装品への電力供給や信号伝達のためのワイヤハーネスが配索される。ワイヤハーネスは、複数の電線を束ねたものである。ワイヤハーネスでは、1本の幹線から複数本の支線が分岐して引き出されており、各支線の末端にコネクタが設けられている。
【0003】
ワイヤハーネスに水がかかると、ワイヤハーネスの外面に付着した水がその外面を伝ってコネクタに浸入するおそれがある。コネクタへの水の浸入を防止するため、U字形状の止水具が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この提案では、複数本の支線が上下に並べられ、その上下に並んだ支線に止水具が上方から被されて、止水具の内面が支線の外面に押し当てられる。これにより、ワイヤハーネスに水がかかったときに、支線の外面を伝う水が止水具で堰き止められ、その水が止水具を伝って流れ落ちる。その結果、コネクタに水が浸入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-67069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、支線の外面の下側部分を伝う水を切ることができないなど、止水対策が甘い。
【0006】
本発明の目的は、ワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する止水効果の向上を図ることができる、ハーネス止水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係るハーネス止水構造は、末端がコネクタに接続されたワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する構造であって、コネクタの手前側において、ワイヤハーネスに巻付部材が巻き付けられ、巻付部材がワイヤハーネスの外面に接触してロール状に1周以上巻かれるロール状部を有し、ロール状部の内側の先端部が先細りに形成されている。
【0008】
この構造によれば、巻付部材がコネクタの手前側でワイヤハーネスに巻き付けられる。巻付部材がワイヤハーネスの外面に接触してロール状に1周以上巻かれるロール状部を有し、そのロール状部の内側の先端部が先細りに形成されているので、ロール状部の内側の先端部に外側から重なる部分がワイヤハーネスの外面から浮くことを防止できる。これにより、ロール状部の内面とワイヤハーネスの外面との間に隙間が空かず、ロール状部の内面をワイヤハーネスの外面に全周にわたって接触させることができるので、ワイヤハーネスの外面をその周方向のいかなる位置でコネクタに向けて伝う水も巻付部材で切ることができる。そのため、従来の構造と比較して、ワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する止水効果が向上する。
【0009】
巻付部材がロール状部の外側に延在する延在部をさらに有し、延在部に形成された孔にバンドが通されて、バンドにより、ロール状部がワイヤハーネスに締め付けられてもよい。
【0010】
バンドが延在部の孔に通されることにより、バンドが巻付部材に対してワイヤハーネスの延在方向にずれないので、バンドによって、巻付部材のロール状部をワイヤハーネスに確実に締め付けることができる。その結果、ロール状部の内面とワイヤハーネスの外面との間に隙間が空くことを一層防止できるので、ワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する止水効果がさらに向上する。
【0011】
延在部の先端が外側に折り返されていていてもよい。
【0012】
これにより、延在部の先端部分に略コ字状、略U字状、略C字状または略V字状が形成されるので、延在部の孔から外側に突出するバンドの先端を延在部の先端部分内に入れて、その先端を延在部で覆うことができる。バンドの先端が延在部で覆われることにより、たとえば、ワイヤハーネスの配策作業時に、バンドの先端が周囲の部材や作業者の手に当たることを防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワイヤハーネスの外面を水が伝うのを阻止する止水効果の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るハーネス止水構造を示す斜視図である。
図2図1に示される切断面線A-Aにおける断面図である。
図3】ワイヤハーネスに巻かれていない状態の巻付部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
<ハーネス止水構造>
図1は、本発明の一実施形態に係るハーネス止水構造1を示す斜視図である。図2は、図1に示される切断面線A-Aにおける断面図である。
【0017】
ハーネス止水構造1は、車両に配索されるワイヤハーネス2の外面を水が伝うのを阻止する構造である。
【0018】
ワイヤハーネス2は、複数の電線3を束ねたものであり、電装品への電力供給や信号伝達に用いられる。ワイヤハーネス2では、たとえば、1本の幹線から複数本の支線が分岐して引き出されている。支線4を構成する複数本の電線3は、たとえば、チューブ5に被覆されている(チューブ5に挿通されている)。各電線3の先端部は、チューブ5の先端から延出して、コネクタ6に接続されている。
【0019】
支線4の外周には、コネクタ6の手前側の位置において、巻付部材7が巻き付けられている。具体的には、チューブ5の先端とコネクタ6との間には、所定間隔が空いており、コネクタ6から幹線側に離れたチューブ5の先端部の外周に、巻付部材7が巻き付けられている。
【0020】
<巻付部材>
図3は、ワイヤハーネス2に巻かれていない状態の巻付部材7の斜視図である。
【0021】
巻付部材7は、たとえば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)からなる一体成形品である。ただし、巻付部材7の材料は、弾性を有していれば、EPDM以外のゴムであってもよいし、また、ゴムに限らない。
【0022】
チューブ5の外周面8は、ワイヤハーネス2の外面の一部である。巻付部材7は、そのチューブ5の外周面8に巻かれるロール状部11を有している。ロール状部11は、ワイヤハーネス2の延在方向(チューブ5の中心線方向)に幅を有する板を略C字状にカールさせた形状に形成されている。ロール状部11は、チューブ5の外周面8に巻かれた状態では、チューブ5の外周を1周以上取り囲む。ロール状の内側の先端部12は、先細りに形成されている。具体的には、ロール状部11の内側の先端部12は、チューブ5の外周面8に接触する内面13と反対側の外面14が先端に近いほど内面13に近づくように傾斜する楔状に形成されている。これにより、ロール状部11では、図2に示されるように、先端部12に外側から重なる部分がチューブ5の外周面8から浮かずに、内面13が外周面8の全周にわたって接触する。
【0023】
巻付部材7は、図3に示されるように、ロール状部11の外側に延在する延在部15を有している。延在部15は、ロール状部11に連続して延びる矩形板状の先端を外側に略コ字状に折り返した形状に形成されている。具体的には、延在部15は、ロール状部11に連続する矩形板状の連続部16と、連続部16の先端から外側に90°屈曲した屈曲部17と、屈曲部17の先端から連続部16に対向する側に延び、連続部16に対して平行をなす平行部18とを一体的に有している。
【0024】
連続部16には、タイバンド(結束バンド)21を挿通可能な矩形状の孔22が厚さ方向に貫通して形成されている。タイバンド21は、四角錐台状のヘッド部23と、ヘッド部23の一側面から長く延びるバンド部24とを一体に有している。ヘッド部23には、固定孔25が高さ方向(厚さ方向)に貫通して形成されている。
【0025】
また、巻付部材7は、ロール状部11の一側面からワイヤハーネス2の延在方向に突出する四角柱状の把持部26を有している。
【0026】
<巻付部材の装着>
巻付部材7がワイヤハーネス2に巻き付けられる際には、たとえば、ワイヤハーネス2(チューブ5)と把持部26とが作業者の手で一体的に把持される。これにより、ワイヤハーネス2に対して巻付部材7が位置決めされる。その状態で、ロール状部11の先端部12と延在部15との間を通して、ワイヤハーネス2がロール状部11の内側に差し込まれる。
【0027】
次いで、延在部15がロール状部11に外側から重なるように、巻付部材7がワイヤハーネス2の外周に巻かれる。その後、延在部15の孔22に外側から挿入されたタイバンド21のバンド部24が巻付部材7の外周に巻かれて、バンド部24の先端がヘッド部23の底面側から固定孔25に挿入される。そして、延在部15の折り返し部分が展開されて、結束バンドガンを用いて、タイバンド21のバンド部24が引っ張られることにより、タイバンド21で巻付部材7が締め付けられる。
【0028】
締め付け後、バンド部24は、ヘッド部23から少し突出した部分を残して切除される。その後、延在部15の折り返し部分の展開が解除されると、巻付部材7が有する弾性により、延在部15の折り返し部分が略コ字状に復元する。この復元により、タイバンド21のヘッド部23から突出したバンド部24の先端部が延在部15の折り返し部分の内側、つまり連続部16と平行部18との間に入った状態となる。
【0029】
<作用効果>
以上のように、巻付部材7がコネクタ6の手前側でワイヤハーネス2に巻き付けられる。巻付部材7がワイヤハーネス2の外面に接触してロール状に1周以上巻かれるロール状部11を有し、そのロール状部11の内側の先端部12が先細りに形成されているので、ロール状部11の内側の先端部12に外側から重なる部分がワイヤハーネス2の外面(チューブ5の外周面8)から浮くことを防止できる。これにより、ロール状部11の内面13とワイヤハーネス2の外面との間に隙間が空かず、ロール状部11の内面13をワイヤハーネス2の外面に全周にわたって接触させることができるので、ワイヤハーネス2の外面をその周方向のいかなる位置でコネクタ6に向けて伝う水も巻付部材7で切ることができる。そのため、従来の構造と比較して、ワイヤハーネス2の外面を水が伝うのを阻止する止水効果が向上する。
【0030】
巻付部材7がロール状部11の外側に延在する延在部15をさらに有し、延在部15に形成された孔22にタイバンド21が通されて、タイバンド21により、ロール状部11がワイヤハーネス2に締め付けられる。タイバンド21が延在部15の孔22に通されることにより、タイバンド21が巻付部材7に対してワイヤハーネス2の延在方向にずれないので、タイバンド21によって、巻付部材7のロール状部11をワイヤハーネス2に確実に締め付けることができる。その結果、ロール状部11の内面13とワイヤハーネス2の外面との間に隙間が空くことを一層防止できるので、ワイヤハーネス2の外面を水が伝うのを阻止する止水効果がさらに向上する。
【0031】
そして、延在部15の先端が外側に折り返されており、延在部15の先端部分に折り返し部分による略コ字状が形成されるので、延在部15の孔22から外側に突出するタイバンド21のバンド部24の先端を略コ字状の折り返し部分内に入れて、その先端を延在部15で覆うことができる。バンド部24の先端が延在部15で覆われることにより、たとえば、ワイヤハーネス2の配策作業時に、バンド部24の先端が周囲の部材や作業者の手に当たることを防止できる。
【0032】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0033】
たとえば、延在部15は、ロール状部11に連続して延びる矩形板状の先端を外側に略コ字状に折り返した形状に限らず、矩形板状の先端を外側に略U字状、略C字状または略V字状に折り返した形状であってもよい。
【0034】
また、巻付部材7をワイヤハーネス2に締め付けるバンドは、その作用を奏することができれば、タイバンド21に限らず、ワイヤなどであってもよい。
【0035】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:ハーネス止水構造
2:ワイヤハーネス
6:コネクタ
7:巻付部材
8:外周面(ワイヤハーネスの外面)
11:ロール状部
12:先端部
15:延在部
21:タイバンド(バンド)
22:孔
図1
図2
図3