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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】漏電検出システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/16 20060101AFI20240722BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240722BHJP
   H02H 3/02 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H02H3/16
H02H3/00 N
H02H3/00 Q
H02H3/02 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020184326
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074359
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔馬
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-134295(JP,A)
【文献】特開2009-261039(JP,A)
【文献】特開2015-146690(JP,A)
【文献】特開2019-086388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/16
H02H 3/00
H02H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷へ電源を供給するための電路を開閉する開閉器を筐体に備える電源盤と、
開閉器の二次側に位置する負荷を筐体に備える負荷筐体と、
開閉器の二次側で負荷に接続される複数の電源線と、
電源盤の電位電源盤の筐体の外側に位置する負荷筐体の電位同一となように電源盤の筐体と負荷筐体とを電気的に接続するボデーアースと、
電源線とボデーア―ス間に抵抗値を形成する検出用抵抗と、
電源線とボデーア―ス間に形成された検出用抵抗の線間電圧を検出する電圧計測部と、
各線間電圧の電圧差を検出し、所定の電圧差以上の場合に、開閉器を遮断する制御部と、
を備えた漏電検出システム。
【請求項2】
制御部は、各線間電圧の電圧差を計算する演算回路を備え、
演算回路の計算値と所定の閾値との比較結果を基に、必要に応じて開閉器に遮断信号を送信する比較器を備えた請求項1に記載の漏電検出システム。
【請求項3】
比較器の閾値を可変に設定可能とする閾値設定部を備えた請求項2に記載の漏電検出システム。
【請求項4】
制御部は、各線間電圧の電圧差より、どの電源線側で漏電が生じたのかを判定可能である請求項1から3のいずれかに記載の漏電検出システム。
【請求項5】
漏電を検出したことを外部に通知する報知手段を備えた請求項1から4のいずれかに記載の漏電検出システム。
【請求項6】
検出用抵抗は可変抵抗器である請求項1に記載の漏電検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏電検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、漏電(絶縁劣化)を検出する方法として、ZCTを利用することが知られている。この方法を機能させるためには、負荷側と電源側の双方にアースを設ける。負荷側と電源側の双方にアースが設けられていることで、漏電が生じた際に生じる、各々の電源線の行き帰りの電流の差異をZCTで検出することが可能となるからである。なお、この結果に応じて、必要時には開閉器に遮断信号を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-273514号公報
【0004】
ところで、独立電源などのように移動する電源の場合には、負荷側と電源側の双方でアースを接続することが問題となり得る。というのも、可搬型の電源や負荷を利用する場合には、搬送先で都度アースを取る必要があるが、接地作業は、地面の接地抵抗の状況を見てアース棒を打ち込むなど、手間が掛かるからである。また、ZCTを使用する場合、直流電路においては使用できないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、接地作業を行うことなく漏電を検出することが可能な漏電検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、負荷へ電源を供給するための電路を開閉する開閉器を筐体に備える電源盤と、開閉器の二次側に位置する負荷を筐体に備える負荷筐体と、開閉器の二次側で負荷に接続される複数の電源線と、電源盤と負荷筐体の電位を同一にする電源盤と負荷筐体とを電気的に接続するボデーアースと、電源線とボデーア―ス間に抵抗値を形成する検出用抵抗と、電源線とボデーア―ス間に形成された検出用抵抗の線間電圧を検出する電圧計測部と、各線間電圧の電圧差を検出し、所定の電圧差以上の場合に、開閉器を遮断する制御部と、を備えた漏電検出システムとする。
【0007】
また、制御部は、各線間電圧の電圧差を計算する演算回路を備え、演算回路の計算値と所定の閾値との比較結果を基に、必要に応じて開閉器に遮断信号を送信する比較器を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、比較器の閾値を可変に設定可能とする閾値設定部を備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、制御部は、各線間電圧の電圧差より、どの電源線側で漏電が生じたのかを判定可能なように構成することが好ましい。
【0010】
また、漏電を検出したことを外部に通知する報知手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0011】
また、検出用抵抗は可変抵抗器であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、接地作業を行うことなく漏電を検出することが可能な漏電検出システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における電源盤と負荷と回路の関係の例を表す図である。
図2】太陽光パネルを備えた独立電源盤と負荷と回路の関係の例を表す図である。
図3】比較器に入力する閾値を変更可能な閾値設定部を備えた例(3-1)で表し、閾値設定部を操作するためのつまみの例を(3-2)で表す図である。
図4】検出用抵抗を可変抵抗器とした例を示す図である。
図5】接触辺の移動で抵抗値を変更可能な検出用抵抗を備えた例を(5-1)で表し、検出用抵抗の抵抗値を操作するためのつまみの例を(5-2)で表す図である。
図6】外部に情報を伝える報知手段を備えた例を示す図である。
図7】三芯ケーブル使用時の電源線とボデーアース間におけるケーブル被覆の絶縁劣化の検出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1及び図2に示されていることから理解されるように、本実施形態の漏電検出システム1は、負荷31へ電源を供給するための電路を開閉する開閉器11を筐体に備える電源盤10と、開閉器11の二次側に位置する負荷31を筐体に備える負荷筐体30と、開閉器11の二次側で負荷31に接続される複数の電源線と、電源盤10と負荷筐体30の電位を同一にする電源盤10と負荷筐体30とを電気的に接続するボデーアース51と、電源線とボデーアース51間に抵抗値を形成する検出用抵抗と、電源線とボデーアース51間に形成された検出用抵抗62、63の線間電圧Vx、Vyを検出する電圧計測部(演算回路17)と、各線間電圧Vx、Vyの電圧差を検出し、所定の電圧差以上の場合に、開閉器11を遮断する制御部12と、を備えている。このため、接地作業を行うことなく漏電を検出することが可能な漏電検出システム1を提供することが可能となる。なお、上記したように検出用抵抗62、63を備えた構成とすることにより、電源線に漏電が生じている状況で人が負荷筐体30を触ったとしても、その人に流れる電流を低減させることも出来る。
【0015】
ここで、漏電検出システム1の基本的な構成を説明する。実施形態の漏電検出システム1は、電源盤10と負荷筐体30が離間して配置されるように備えられており、電源盤10と負荷筐体30の電位を同一にするボデーアース51が電源盤10と負荷筐体30を繋ぐように接続されている。また、この漏電検出システム1は、電源盤10の内部の開閉器11から負荷筐体30の内部の負荷31に向けて電源を供給するために配策された電源線52、53を備えている。
【0016】
電源線は、開閉器11の二次側に位置している。したがって、この開閉器11がオフの状態になれば、負荷筐体30の内部に向けての電気の供給が停止される。電源線は電源盤10と負荷31を通る回路を形成するために配策するものであるため、通常、電源盤10から負荷筐体30に向けて二本の電源線が配策されることになる。
【0017】
検出用抵抗62、63はボデーアース51と各電源線を結ぶように設けられるが、各検出用抵抗62.63は基本的に同じ大きさの抵抗としている。各々の検出用抵抗62、63の線間電圧Vx、Vyは電圧計測部により計測されるが、通常は、いずれの線間電圧Vx、Vyも同様な値を示すことになる。なお、ボデーアース51は、電源盤10と負荷筐体30の電位を同一にすることができるものであり、電源盤10と負荷筐体30に電位が生じることに起因する感電が生じ難いようにしている。
【0018】
電圧計測部による計測により得られた情報は制御部12に集められる。制御部12には演算回路17が備えられており、集められた情報を基に演算回路17で演算がなされる。演算回路17でなされた演算の結果は比較器18に送られる。比較器18により、各々の線間電圧の差が所定の範囲に無いと判定された場合は、制御部12は開閉器11を遮断させるように制御する。このように、制御部12に各線間電圧の電圧差を計算する演算回路17を備え、演算回路17の計算値と所定の閾値との比較結果を基に、必要に応じて開閉器11に遮断信号を送信する比較器18を備えた構成とすることが好ましい。
【0019】
ここから、より詳しい説明を行う。実施形態の電源盤10などは図1及び2に示すような構成である。具体的には、電源盤10には太陽光パネル13を備え、太陽光パネル13で発生させた電気を第一電圧変換装置14と第二電圧変換装置15を経て負荷筐体30内に備えられた負荷31に送れるようにしている。なお、第一電圧変換装置14の二次側であって第二電圧変換装置15の一次側には蓄電池16が接続されている。また、第二電圧変換装置15の二次側には開閉器11が接続されているが、この開閉器11は制御部12により制御可能である。
【0020】
電源盤10と負荷筐体30はボデーアース51により電気的に接続されているが、このボデーアース51は、電源盤10側では電源盤アース端子19と接続しており、負荷筐体30側では負荷アース端子39と接続している。開閉器11と負荷31を接続するように二本の電源線52、53が配策されているが、ボデーアース51に対して各々の電源線52、53を個別に接続するように検出用抵抗62、63が取り付けられている。具体的には電源線52とボデーアース51を接続するように抵抗値がRxである検出用抵抗62が取り付けられ、かつ、電源線53とボデーアース51を接続するように抵抗値がRyである検出用抵抗63が取り付けられている。
【0021】
抵抗値がRxである検出用抵抗62で検出される電圧値はVxであり、抵抗値がRyである検出用抵抗63で検出される電圧値はVyである。
【0022】
なお、抵抗32は電源線52と負荷筐体30間の絶縁抵抗を、抵抗33は電源線53と負荷筐体30間の絶縁抵抗を表しており、それぞれ抵抗値はRgxとRgyとしている。
【0023】
上記したRx及びRyは、実施形態では1MΩの抵抗値としている。なお、以下の計算では簡略化のためRgx及びRgyは無限大(∞)の大きさの抵抗値として1000MΩであるとする。
【0024】
電源の電圧であるVsが100Vであり、負荷31の抵抗値が10Ωである場合、通常の状態では、電源線52及び電源線53に流れる電流値は双方とも10Aである。また、電源線52とボデーアース51を接続する検出用抵抗62で検出される電圧値であるVxと、電源線53とボデーアース51を接続する検出用抵抗63で検出される検出される電圧値であるVyは、ともに50Vである。VxとVyに差は無いのであるから、このような結果が得られても、制御部12は開閉器11を遮断するように制御しない。
【0025】
一方、絶縁劣化により電源線52と負荷筐体30を接続する抵抗32の抵抗値Rgxが100MΩになったとする。この場合、電源線52とボデーアース51を接続する検出用抵抗62で検出される電圧値Vxは約49.7V、電源線53とボデーアース51を接続する検出用抵抗63で検出される電圧値Vyは約50.3Vになる。この結果からも理解されるように、抵抗値Rgxや抵抗値Rgyの絶縁が劣化した場合、電圧値に大小の関係ができ、この値の大小関係は絶縁劣化が生じた箇所に起因するため、「電源線52と負荷筐体30を接続する抵抗32」と「電源線53と負荷筐体30を接続する抵抗33」のいずれで絶縁劣化が生じたかが分かる。このように、各線間電圧の電圧差より、どの電源線側で漏電が生じたのかを判定することができる制御部12とするのが好ましい。
【0026】
比較器18においては、VxとVyの比が許容範囲であるか否かを判定するようにしているが、この比較器18は演算回路17から入力された結果を、あらかじめ設定してある閾値VREFと比較して判定するようにしている。この判定結果を基に、開閉器11を遮断するか否かが定められる。
【0027】
例えば、更なる絶縁劣化により電源線52と負荷筐体30を接続する抵抗32の抵抗値Rgxが0.9MΩになったとする。この場合、電源線52とボデーアース51を接続する検出用抵抗62で検出される電圧値Vxは約32.0V、電源線53とボデーアース51を接続する検出用抵抗63で検出される電圧値Vyは約68.0Vになる。VyをVxで割ったVy/Vxの値で比較器18が判定を行うと、抵抗値Rgxが100MΩであった場合のVy/Vxの値は、約1.01であるが、抵抗値Rgxが0.9MΩであった場合のVy/Vxの値は、約2.12である。例えば、閾値VREFを2.00としていた場合、前者においては、開閉器11は遮断されず、後者においては開閉器11が遮断される。
【0028】
ところで、この閾値を設置現場で変更したい場合がある。このようなことを可能にするため、比較器18の閾値VREFを可変に設定可能とする閾値設定部21を備えるようにするのが好ましい。図3に示す例では、手動操作可能なつまみを操作することで、閾値VREFを変更可能としている。この例では、つまみはスライド操作することができ、1.0から1.6の範囲で設定できるものとしている。なお、実施形態においては、つまみが電源盤10の開閉器11の電源部を触れないように保護する保護板が形成され、その保護板の表面側に露出するように取り付けられているため、電源盤10の扉を開ければ、その後に保護板を開けずとも、閾値VREFを設定できる。
【0029】
上記した例で閾値VREFを変更するのは、電源線52と負荷筐体30を接続する抵抗32や電源線53と負荷筐体30を接続する抵抗33などが、問題が生じ得るほどの抵抗値に絶縁劣化しているか否かを判定するための基準を変更するためであるが、閾値VREFを変更しなくても、当該絶縁抵抗の抵抗値の基準を変更させることができる。具体的には、検出用抵抗62、63について抵抗値が可変の可変抵抗器を採用すれば、Vy/Vxの値もしくはVx/Vyの値が変動しうる「電源線52と負荷筐体30間の絶縁抵抗である抵抗32」及び、「電源線53と負荷筐体30間の絶縁抵抗である抵抗33」などの抵抗値の程度を変更できるため、当該絶縁抵抗の抵抗値の基準を変更しているのと同様の効果を期待できる。
【0030】
このようなことを可能とするには例えば図4図5に示すような構成を採用すればよい。図4に示す例では、「電源線52とボデーアース51を接続する検出用抵抗62」と「電源線53とボデーアース51を接続する検出用抵抗63」の双方が各々個別に抵抗値を設定可能なものであるが、図5に示すことから理解されるように、接触辺71を移動させることで、「電源線52とボデーアース51を接続する検出用抵抗62の抵抗値Rx」と「電源線53とボデーアース51を接続する検出用抵抗63の抵抗値Ry」の双方を一回の操作で同時に設定可能なようにしても良い。
【0031】
図5に示す例では、手動操作可能なつまみを操作することで、Rx及びRyを変更可能としている。この例では、つまみはスライド操作することができ、1.0から20.0の範囲で設定できるものとしている。なお、実施形態においては、つまみが保護板の表面側に露出するように取り付けられているため、電源盤10の扉を開ければ、その後に保護板を開けずとも、検出用抵抗の抵抗値を設定できる。
【0032】
ところで、線間電圧Vx、Vyを測定した結果などに関して、何らかの情報を外部に伝えたい場合がある。このようなことを可能とするため、漏電を検出したことを外部に通知する報知手段を備えた構成とすることが好ましい。例えば、外部に情報を送信して通知する通信装置24や、外部から伝えたい内容を視認可能なように表示する表示部25を備えるようにする。
【0033】
図6に示す例においては、通信装置24及び表示部25を備える構成としている。図6に示す例では、制御部12の演算回路17から通信装置24に情報を伝達し、その後、通信装置24から表示部25に情報を伝達するように構成しているが、そのような態様に限る必要は無い。例えば、制御部12から通信装置24と表示部25のそれぞれに個別に情報を伝達するようにしても良い。
【0034】
なお、電源線は絶縁被覆の劣化を検出可能とするために、三芯ケーブルを使用することが望ましい。図7に示す例では三芯ケーブル使用時の等価回路を表しており、電源線52、53、ボデーアースは絶縁被覆で覆われている。抵抗64、65は電源線52とボデーアース51間の絶縁抵抗及び、電源線53とボデーアース51間の絶縁抵抗つまり、絶縁被覆の絶縁抵抗を表している。図7に示すような構成とすることで、抵抗64、65の絶縁劣化つまり、絶縁被覆の劣化についても、抵抗32及び抵抗33で絶縁劣化が発生した場合と同様の原理にて検出が可能となる。
【0035】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 漏電検出システム
10 電源盤
11 開閉器
12 制御部
17 演算回路
18 比較器
21 閾値設定部
30 負荷筐体
31 負荷
51 ボデーアース
52 電源線
53 電源線
62 検出用抵抗
63 検出用抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7