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特許7523873置換トリアリールアミン構造単位を含む高分子量化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】置換トリアリールアミン構造単位を含む高分子量化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20240722BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240722BHJP
【FI】
C08G61/12
H10K50/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021524822
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021499
(87)【国際公開番号】W WO2020246404
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019105419
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
(72)【発明者】
【氏名】篠田 美香
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀良
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊二
(72)【発明者】
【氏名】平井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】三枝 優太
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168667(WO,A1)
【文献】特表2011-506626(JP,A)
【文献】特表2018-519268(JP,A)
【文献】特表2014-519537(JP,A)
【文献】特開2003-226744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303908(US,A1)
【文献】国際公開第2018/101331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
H10K 50/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの下記一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位と、
下記一般式(2a)~(2x)のいずれか一つで表される芳香族炭化水素環を有する構造単位、及び下記一般式(3)で表される置換トリアリールアミン構造単位の少なくとも1つと、
からなり、
ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有している、高分子量化合物。
【化1】
式中、
ARとARは、それぞれ2価のアリール基もしくは2価のヘテロアリール基であり、
及びRは、それぞれ、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、または炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を示し、
Zは、置換或は無置換のアリール基、置換或は無置換のヘテロアリール基、または前記R及びRが示す基であり、X及びYが、置換或は無置換のアリール基または置換或は無置換のヘテロアリール基である。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
式中、
Rは、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、またはチオアルコキシ基を示し、互いに結合して環を形成せず、
R'は、水素原子、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数が40以下である、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、またはチオアルコキシ基を示し、
Ar~Arは、相互に同一でも異なってもよく、1価または2価のアリール基またはヘテロアリール基を示し、
~Rは、相互に同一でも異なってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、またはアルキルオキシ基を示し、互いに結合して環を形成せず、
a~dはRの数であり、以下の数を示す。
a=0,1または2
b=0,1,2または3
c=0,1,2,3または4
d=0,1,2,3,4または5
【請求項2】
前記一般式(1)において、X及びYがフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基から選ばれる基である、請求項1に記載の高分子量化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)においてR、R及びZが、水素原子、または重水素原子である、請求項2に記載の高分子量化合物。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Zが、置換或は無置換のアリール基またはヘテロアリール基である、請求項1に記載の高分子量化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、X、Y及びZの何れもが、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基から選ばれる基である、請求項4に記載の高分子量化合物。
【請求項6】
前記一般式(1)において、R及びRが、水素原子または重水素原子である、請求項5に記載の高分子量化合物。
【請求項7】
一対の電極と、該電極間に挟まれる少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該有機層が、請求項1に記載の高分子量化合物を含有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記有機層が正孔輸送層である、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記有機層が電子阻止層である、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記有機層が正孔注入層である、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記有機層が発光層である、請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に適した高分子量化合物と該素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
有機EL素子は、有機化合物の薄膜(有機層)を、陽極と陰極に挟んだ構成を有している。薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と塗布法に大別される。真空蒸着法は、主に低分子化合物を用い、真空中で基板上に薄膜を形成する手法であり、既に実用化されている技術である。一方、塗布法は、主に高分子化合物を用い、インクジェットや印刷など、溶液を用いて基板上に薄膜を形成する手法であり、材料の使用効率が高く、大面積化、高精細化に適しており、今後の大面積有機ELディスプレイには不可欠の技術である。
【0004】
低分子材料を用いた真空蒸着法は、材料の使用効率が極端に低く、大型化すればシャドーマスクのたわみが大きくなり、大型基板への均一な蒸着は困難となる。また製造コストも高くなるといった問題も抱えている。
【0005】
一方、高分子材料は、有機溶剤に溶解させたその溶液を塗布することにより、大型基板でも均一な膜を形成することが可能であり、これを利用してインクジェット法や印刷法に代表される塗布法を用いることができる。そのため、材料の使用効率を高めることが可能となり、素子作製にかかる製造コストを大幅に削減することができる。
【0006】
これまで、高分子材料を用いた有機EL素子が、種々検討されてきたが、発光効率や寿命などの素子特性は必ずしも十分でないという問題があった(例えば、特許文献1~特許文献5参照)。
【0007】
高分子有機EL素子の高性能化を図る上で最も重要なポイントは、下地の薄膜を乱さずに、上の層を塗布によって積層する技術である。高分子有機EL素子は材料を有機溶剤に溶解させたその溶液を塗布することにより作製するため、上の層の材料を溶解させた溶媒に下の層の薄膜が溶出してしまうリスクがあり、真空蒸着法と比較すると積層化が難しいというデメリットを有している。
【0008】
高分子有機EL素子の積層技術は大きく分けて2種類ある。1つは下地となる材料にクロスリンカーを付与する手法である。下地となる材料を塗布した後、熱処理により架橋を進行させ、有機溶剤に不溶化させる。もう1つは上層の材料を溶解させるために使用する溶媒の種類を選択する手法である。下地の材料が溶解しない有機溶剤を選択することで、上層を塗布する際の下地の溶出を抑制できる。
【0009】
これまで高分子有機EL素子に用いられてきた代表的な正孔輸送材料としては、TFBと呼ばれるフルオレンポリマーが知られていた(特許文献6~特許文献7参照)。しかしながら、TFBは正孔輸送性が不十分であり、かつ電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないという問題があった。また、隣接層との膜密着性が低いことから、素子の長寿命化も期待できないという問題があった。
【0010】
また、本発明者らはこれまで高分子有機EL素子に用いられるクロスリンカーを有する熱架橋型の正孔輸送材料(特許文献8~特許文献9参照)を開発してきた。しかしながら、クロスリンカーを有する熱架橋型の正孔輸送材料は高温での熱処理により、架橋が進行し、不溶化するが、ホール輸送性が低下するという問題があった。
【0011】
上述の高分子有機EL素子の積層技術のうち、上層の材料を溶解させるために使用する溶媒の種類を選択する手法を用いれば、下地となる材料にクロスリンカーを付与する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2005-272834号公報
【文献】特開2007-119763号公報
【文献】特開2007-162009号公報
【文献】特開2007-177225号公報
【文献】国際公開WO2005/049546
【文献】特許第4375820号公報
【文献】国際公開WO2005/059951
【文献】国際公開WO2018/101331
【文献】国際公開WO2018/168667
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述の溶媒選択法を用いた高分子有機EL素子用に、正孔の注入・輸送性能に優れ、電子阻止能力を有し、耐熱性が高く、薄膜状態での安定性が高い高分子材料を提供することにある。また、その高分子材料により形成された有機層(薄膜)を有しており、低駆動電圧、高発光効率、長寿命な高分子有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは置換トリアリールアミン構造が高い正孔注入・輸送能力を有していることに着目し、種々のクロスリンカーを持たない置換トリアリールアミン構造を有する高分子量化合物を合成して検討した結果、クロスリンカーを有する高分子量化合物や従来材料と比較して、優れた正孔注入・輸送能力に加え、高耐熱性と高い薄膜安定性を有する新規な構造の高分子量化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明によれば、
下記一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位を含む高分子量化合物が提供される。
【0016】
【化1】
式中、
AR及びARはそれぞれ、互いに同一であってもよく、2価のアリール基またはヘテロアリール基を示し、
、Rはそれぞれ、互いに同一であってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、または炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を示し、
X、Y及びZはそれぞれ、互いに同一であってもよく、これらの内の少なくとも1つがアリール基またはヘテロアリール基であることを条件として、1価のアリール基、1価のヘテロアリール基、または前記R及びRが示す基を示す。
【0017】
本発明の高分子量化合物においては、
(1)少なくとも1つの一般式(1)で表される、置換トリアリールアミン構造単位を含み、それとは別に、少なくとも1つの芳香族炭化水素環を有する構造単位、または一般式(1)とは異なる置換トリアリールアミン骨格を有する構造単位を有している共重合体であること、
(2)前記共重合体がポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有していること、
(3)前記一般式(1)において、X、Y及びZは、これらの内の少なくとも1つがアリール基またはヘテロアリール基であること、具体的に、
(4)前記一般式(1)において、X及びYがフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基であり、R、R及びZが水素原子または重水素原子であること、
(5)前記一般式(1)において、X及びZがフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基であり、R、R及びYが水素原子または重水素原子であること、
(6)前記一般式(1)において、X、Y及びZの何れもが、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ナフチルフェニル基、トリフェニレニル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチエニル基であり、R、Rが水素原子または重水素原子であること、
が好適である。
【0018】
本発明によれば、また、一対の電極と、該電極間に挟まれた少なくとも一つの有機層を有する有機EL素子において、該有機層が、上記の高分子量化合物を含有していることを特徴とする有機EL素子が提供される。
【0019】
本発明の有機EL素子においては、前記有機層が、正孔輸送層、電子阻止層、正孔注入層或いは発光層であることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
上述した、少なくとも1つの一般式(1)で表される、置換トリアリールアミン構造単位を含み、それとは別に、少なくとも1つの芳香族炭化水素環を有する構造単位、または一般式(1)とは異なる置換トリアリールアミン骨格を有する構造単位を有している本発明の高分子量化合物は、好適には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上1,000,000未満の範囲にある。
かかる高分子量化合物は、
(1)正孔の注入特性が良いこと、
(2)正孔の移動度が大きいこと、
(3)電子阻止能力に優れること、
(4)薄膜状態が安定であること、
(5)耐熱性に優れていること、
という特性を有している。
【0021】
このような高分子量化合物により形成された有機層、例えば、正孔輸送層、電子阻止層、正孔注入層或いは発光層が一対の電極間に形成されている有機EL素子は、
(1)発光効率および電力効率が高いこと、
(2)実用駆動電圧が低いこと、
(3)長寿命であること、
という利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位1~9の化学構造を示す図。
図2】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位10~18の化学構造を示す図。
図3】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位19~26の化学構造を示す図。
図4】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位27~32の化学構造を示す図。
図5】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位33~38の化学構造を示す図。
図6】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位39~47の化学構造を示す図。
図7】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位48~56の化学構造を示す図。
図8】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位57~68の化学構造を示す図。
図9】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位69~79の化学構造を示す図。
図10】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位80~88の化学構造を示す図。
図11】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位89~99の化学構造を示す図。
図12】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位100~108の化学構造を示す図。
図13】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位109~117の化学構造を示す図。
図14】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位118~126の化学構造を示す図。
図15】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位127~135の化学構造を示す図。
図16】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位136~144の化学構造を示す図。
図17】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位145~156の化学構造を示す図。
図18】本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位として好適な構造単位157~165の化学構造を示す図。
図19】有機溶剤に対する溶解性を向上させるために導入される構造単位(2a)~(2p)の化学構造を示す図。
図20】有機溶剤に対する溶解性を向上させるために導入される構造単位(2q)~(2x)の化学構造を示す図。
図21】本発明のホールオンリー素子が有する層構成の一例を示す図。
図22】本発明の有機EL素子が有する層構成の一例を示す図。
図23】実施例1で合成された本発明の高分子量化合物(化合物I)のH-NMRチャート図。
図24】実施例2で合成された本発明の高分子量化合物(化合物II)のH-NMRチャート図。
図25】実施例3で合成された本発明の高分子量化合物(化合物III)のH-NMRチャート図。
【発明が実施しようとする形態】
【0023】
<置換トリアリールアミン構造単位>
本発明の高分子量化合物が有する置換トリアリールアミン構造単位は、2価の基であり、下記の一般式(1)で表される。
【0024】
【化2】
【0025】
前記一般式(1)において、AR及びARは、それぞれ、2価のアリール基またはヘテロアリール基であり、ARとARとは、互いに同一の基であってもよい。
【0026】
上記の2価のアリール基が有する芳香族環は、単環であってもよいし、縮合環であってもよい。かかる芳香族環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環、ピレン環、ペリレン環、フルオラン環を挙げることができる。また、これらの芳香族環は、置換基を有していてもよい。
【0027】
また、2価のヘテロアリール基が有する複素環も、単環であってもよいし、縮合環であってもよい。このような複素環の例としては、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフチリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、カルボリン環などを挙げることができる。また、これらの芳香族複素環もまた、置換基を有していてもよい。
【0028】
上記の芳香族環及び芳香族複素環が有していてもよい置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基などに加え、以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
アルキル基、特に炭素数が1~8のもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基;
アルキルオキシ基、特に炭素数1~8のもの、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリール基、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
ヘテロアリール基、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基;
アリールビニル基、例えば、スチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えば、アセチル基、ベンゾイル基;
【0029】
また、これらの置換基は、上記で例示した置換基をさらに有していてもよい。
さらに、これらの置換基は、それぞれ独立して存在していることが好ましいが、これらの置換基同士が、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
本発明において、上記のAR及びARとしては、ナフチル基、フェナントレニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、置換基を有するフルオレニル基が好ましく、無置換のフェニル基が最も好ましい。尚、フルオレニル基が有する置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-へキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、フェニル基が好適である。
【0031】
前記一般式(1)において、R、Rは、それぞれ、互いに同一であってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、または炭素数5~10のシクロアルキルオキシ基を示す。
【0032】
かかるR、Rにおいて、上記のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基の例としては、以下の基を例示することができる。
アルキル基(C~C)、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等;
シクロアルキル基(C~C10)、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等;
アルケニル基(C~C)、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基等;
アルキルオキシ基(C~C)、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等;
シクロアルキルオキシ基(C~C10)、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基等;
【0033】
また、上記の基R、Rも、置換基を有していてもよい。これらの置換基も、2価の基であるAR及びARが有していてもよい置換基と同様の基であり、これらの置換基がさらに置換基を有していてもよい点も、AR及びARが有していてよい置換基と同様である。
【0034】
さらに、上記のR、R、及び各種の置換基は、それぞれ、独立で存在していることが望ましいが、AR及びARが有していてよい置換基と同様、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0035】
本発明の高分子量化合物においては、上記のR、Rは、水素原子及び重水素原子が好適であり、合成上、水素原子であることが最も好適である。
【0036】
前記一般式(1)において、X、Y及びZは、それぞれ、互いに同一であってもよく、これらの内の少なくとも1つがアリール基またはヘテロアリール基であることを条件として、アリール基、ヘテロアリール基、または前記R及びRが示す基と同様の基を示す。
【0037】
かかるX、Y及びZにおいて、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基の例としては、上記のR、Rについて例示したものと同様の基を挙げることができる。また、アリール基、ヘテロアリール基の例としては、以下の基を例示することができる。
アリール基;
フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基等。
ヘテロアリール基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基等。
【0038】
また、上記のアリール基やヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。これらの置換基も、2価の基であるAR及びARが有していてもよい置換基と同様の基であり、これらの置換基がさらに置換基を有していてもよい点も、AR及びARが有していてよい置換基と同様である。例えば、上記のアリール基やヘテロアリール基は、置換基としてフェニル基を有していてもよく、このフェニル基は、さらに置換基としてフェニル基を有していてもよい。即ち、アリール基としてフェニル基を例に取ると、このアリール基は、ビフェニリル基、ターフェニリル基であってもよい。
【0039】
さらに、上述したアリール基、ヘテロアリール基及び各種の置換基は、それぞれ、独立で存在していることが望ましいが、AR及びARが有していてよい置換基と同様、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
本発明において、上述した一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位の具体例を、図1図18に、構造単位1~165として示した。
尚、図1図18に示された化学式において、破線は、隣接する構造単位への結合手を示し、環から延びている先端がフリーの実線は、一般式(1)とは異なり、そのフリーの先端がメチル基であることを示している。
【0041】
<高分子量化合物>
上述した一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の高分子量化合物は、既に述べたように、正孔の注入特性、正孔の移動度、電子阻止能力、薄膜安定性、耐熱性等の特性が優れているものであるが、これらの特性をより高め且つ成膜性を確保するという観点から、上記構造単位を繰り返し単位として有するポリマーであることが好ましく、例えば、GPCで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は10,000以上1,000,000未満、より好ましくは10,000以上500,000未満、さらに好ましくは10,000以上200,000未満の範囲である。
【0042】
また、本発明の高分子量化合物は、例えばコーティングにより有機EL素子中の有機層の形成に適用した場合の塗布性や他の層との密着性、耐久性を確保するため、さらには、より高いホール輸送性を確保するため、一般式(1)で表される構造単位とは別に、少なくとも1つの芳香族炭化水素環を有する構造単位、または一般式(1)とは異なる置換トリアリールアミン骨格を有する構造単位との共重合体であることが好ましい。
【0043】
一般式(1)と共重合するのに好ましい、芳香族炭化水素環を有する構造単位としては、例えば有機溶剤に対する溶解性を高めるための構造単位がある。有機溶剤に対する溶解性を高めるための構造単位は、少なくとも一つの芳香族炭化水素環を有するものであり、その具体例としては、図19図20に式(2a)~(2x)で示した。
【0044】
尚、上記式(2a)~(2x)において、破線は、隣接する構造単位への結合手を示し、環から延びている先端がフリーの実線は、その先端がメチル基であることを示している。
【0045】
また、上記式(2a)~(2x)中、a~dはRの数であり、以下の数である。
a=0,1または2
b=0,1,2または3
c=0,1,2,3または4
d=0,1,2,3,4または5
【0046】
また、式(2a)~(2x)において、Rは、水素原子、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;それぞれ、炭素数が40以下(特に3~40)である、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ元または馳尾アルコキシ基;を示す。
【0047】
さらに、Ar~Arは、相互に同一でも異なってもよく、1価または2価のアリール基またはヘテロアリール基を示す。かかる1価または2価のアリール基またはヘテロアリール基としては、一般式(1)における基AR、ARに関して、アリール基またはヘテロアリール基として例示した基と同様の基を挙げることができる。尚、上記の1価または2価のアリール基またはヘテロアリール基もまた、基AR及びARと同様、置換基を有するものであってよい。
【0048】
一般式(1)と共重合するのに好ましい、一般式(1)とは異なる置換トリアリールアミン骨格を有する構造単位は、その具体例としては、下記に式(3)で示した。
【0049】
【化3】
式(3)において、破線、R及びcは、何れも前記式(2a)~(2x)中のものと同じ意味である。R~Rは、それぞれ、互いに同一であってもよく、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~8のアルキル基またはアルキルオキシ基を示す。
【0050】
本発明の高分子量化合物において、一般式(1)で表される構造単位を構造単位A、式(2a)~(2x)で表される有機溶媒への溶解性を向上させるための芳香族炭化水素環を有する構造単位を構造単位B、式(3)で表される一般式(1)とは異なる置換トリアリールアミン骨格を有する構造単位を構造単位Cで表したとき、構造単位Aを1モル%以上、特に5モル%以上含んでいることが好ましく、このような量で構造単位Aを含んでいることを条件として、構造単位Bを1モル%以上、特に30~90モル%の量で含み、さらには、構造単位Cを1モル%以上、特に5~90モル%の量で含んでいることが好ましく、このような条件を満足するように構造単位A、構造単位B及び構造単位Cを含む3元共重合体であることが、有機EL素子の有機層を形成する上で最も好適である。
【0051】
また、構造単位Aを1モル%以上、特に5モル%以上含み、このような量で構造単位Aを含んでいることを条件として、構造単位Bを1モル%以上、特に30~90モル%の量で含む2元共重合体も有機EL素子の有機層を形成する上で好適である。
【0052】
このような本発明の高分子量化合物は、スズキ重合反応やHARTWIG-BUCHWALD重合反応により、それぞれC-C結合或いはC-N結合を形成して各構造単位を連鎖することにより合成される。
【0053】
即ち、各構造単位を有する単位化合物を用意し、この単位化合物を適宜ホウ酸エステル化或いはハロゲン化し、適宜の触媒を使用して重縮合反応することにより、本発明の高分子量化合物を合成することができる。
【0054】
例えば、一般式(1)の構造単位Aを導入するための化合物としては、下記一般式(1a)で表されるトリアリールアミン誘導体を使用することができる。
【0055】
【化4】
上記式中、Qは、水素原子またはハロゲン原子(特にBr)であり、AR、AR、X、Y、Z、及びR、Rは、何れも一般式(1)で示したものと同じである。
【0056】
即ち、上記一般式(1a)において、Qが水素原子であるものが、一般式(1)の構造単位Aを導入するための単位化合物であり、Qがハロゲン原子であるものが、ポリマーを合成するために使用されるハロゲン化物である。
【0057】
例えば、一般式(1)で表される構造単位Aを40モル%、式(2a)で表される有機溶媒への溶解性を向上させるための構造単位Bを50モル%、式(3)で表されるトリアリールアミン骨格を有する構造単位Cを10モル%で含む3元共重合体は下記に示す一般式(4)で表される。
【0058】
【化5】
【0059】
但し、構造単位Aと構造単位Cを導入するための中間体がハロゲン化体であり、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体がホウ酸エステル化体である。または、構造単位Aと構造単位Cを導入するための中間体がホウ酸エステル化体であり、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体がハロゲン化体である。つまり、ハロゲン化体とホウ酸エステル化体のモル比率は等しくなければならない。
【0060】
一方、一般式(1)で表される構造単位Aを50モル%、式(2a)で表される有機溶媒への溶解性を向上させるための構造単位Bを50モル%で含む2元共重合体は下記に示す一般式(5)で表される。
【0061】
【化6】
【0062】
但し、構造単位Aを導入するための中間体がハロゲン化体であり、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体がホウ酸エステル化体である。または、構造単位Aを導入するための中間体がホウ酸エステル化体であり、これに対し、構造単位Bを導入するための中間体がハロゲン化体である。式(4)と同様、ハロゲン化体とホウ酸エステル化体のモル比率は等しい。
【0063】
上述した本発明の高分子量化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒に溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を所定の基材上にコーティングし、加熱乾燥することにより、正孔注入性、正孔輸送性、電子阻止性などの特性に優れた薄膜を形成することができる。かかる薄膜は耐熱性も良好であり、さらには他の層との密着性も良好である。
【0064】
例えば、上記高分子量化合物は、有機EL素子の正孔注入層および/または正孔輸送層の構成材料として使用することができる。このような高分子量化合物により形成された正孔注入層或いは正孔輸送層は、従来の材料で形成されたものに比して、正孔の注入性が高く、移動度が大きく、電子阻止性が高く、発光層内で生成した励起子を閉じ込めることができ、さらに正孔と電子が再結合する確率を向上させ、高発光効率を得ることができると共に、駆動電圧が低下して、有機EL素子の耐久性が向上するという利点を実現できる。
【0065】
また、上記のような電気特性を有する本発明の高分子量化合物は、当然、電子阻止層や発光層の形成にも好適に使用することができる。
【0066】
<有機EL素子>
上述した本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子は、例えば図22に示す構造を有している。即ち、ガラス基板1(透明樹脂基板など、透明基板であればよい)の上に、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7が設けられている。
【0067】
勿論、本発明の高分子量化合物が適用される有機EL素子は、上記の層構造に限定されるものではなく、発光層5と電子輸送層6との間に正孔阻止層を設けることができ、また、正孔輸送層4と発光層5との間に電子阻止層などを設けることができるし、さらには、陰極7と電子輸送層6との間に電子注入層を設けることもできる。さらに、いくつかの層を省略することもできる。例えば、基板1上に、陽極2、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7を設けたシンプルな層構造とすることもできる。また、同一の機能を有する層を重ねた2層構造とすることも可能である。
【0068】
本発明の高分子量化合物は、その正孔注入性や正孔輸送性などの特性を活かして、上記の陽極2と陰極7との間に設けられる有機層(例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5或いは図示されていない電子阻止層)の形成材料として好適に使用される。
【0069】
上記の有機EL素子において、透明陽極2は、それ自体公知の電極材料で形成されていてよく、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料を基板1(ガラス基板等の透明基板)上に蒸着することにより形成される。
【0070】
また、透明陽極2上に設けられている正孔注入層3は、本発明の高分子量化合物を、例えばトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒に溶解させた塗布液を用いて形成することができる。即ち、この塗布液を、スピンコート、インクジェットなどにより、透明陽極2上にコーティングすることにより、正孔注入層3を形成することができる。
【0071】
また、本発明の高分子量化合物を用いずに、従来公知の材料、例えば以下の材料を用いて形成することもできる。
銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;
スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体;
単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン(例えば、トリフェニルアミン3量体及び4量体);
ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物;
塗布型の高分子材料、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)等。
このような材料を用いての層(薄膜)の形成は、蒸着法や、スピンコート法やインクジェット法などによるコーティングにより成膜することができる。これらは、他の層についても同様であり、膜形成材料の種類に応じて、蒸着法やコーティング法により成膜が行われる。
【0072】
上記の正孔注入層3の上に設けられている正孔輸送層4も、正孔注入層3と同様、本発明の高分子量化合物を用いてのスピンコートやインクジェットなどによるコーティングによって形成することができる。
【0073】
また、従来公知の正孔輸送材料を用いて正孔輸送層4を形成することもできる。このような正孔輸送材料として代表的なものは、次のとおりである。
ベンジジン誘導体、例えば、
N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)ベンジジン
(以下、TPDと略す);
N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(α-ナフチル)ベンジジン
(以下、NPDと略す);
N,N,N',N'-テトラビフェニリルベンジジン;
アミン系誘導体、例えば、
1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン
(以下、TAPCと略す);
種々のトリフェニルアミン3量体および4量体;
正孔注入層用としても使用される塗布型高分子材料
【0074】
上述した正孔輸送層の化合物は、本発明の高分子量化合物を含め、それぞれ単独で成膜してもよいが、2種以上混合して成膜することもできる。また、上記化合物の1種または複数種を用いて複数の層を形成し、このような層が積層された多層膜を正孔輸送層とすることもできる。
【0075】
また、正孔注入層3と正孔輸送層4とを兼ねた層とすることもでき、このような正孔注入・輸送層は、PEDOTなどの高分子材料を用いてコーティングにより形成することができる。
【0076】
尚、正孔輸送層4(正孔注入層3も同様)において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンやラジアレン誘導体(例えば、WO2014/009310参照)などをPドーピングしたものを使用することができる。また、TPD基本骨格を有する高分子化合物などを用いて正孔輸送層4(或いは正孔注入層3)を形成することができる。
【0077】
さらに、図示されていない電子阻止層(正孔輸送層4と発光層5との間に設けることができる)は、電子阻止作用を有する公知の電子阻止性化合物、例えば、カルバゾール誘導体や、トリフェニルシリル基を有し且つトリアリールアミン構造を有する化合物などを用いて形成することもできる。カルバゾール誘導体及びトリアリールアミン構造を有する化合物の具体例は、以下の通りである。
カルバゾール誘導体の例
4,4',4''-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン
(以下、TCTAと略す);
9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン;
1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン
(以下、mCPと略す);
2,2-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]アダマンタン
(以下、Ad-Czと略す);
トリアリールアミン構造を有する化合物の例
9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレン;
【0078】
電子阻止層は、上記のような公知の電子阻止性材料を1種単独或いは2種以上を用いて形成されるが、これらの電子阻止性材料の1種または複数種を用いて複数の層を形成し、このような層が積層された多層膜を電子阻止層とすることもできる。
【0079】
有機EL素子の発光層5は、Alqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、亜鉛やベリリウム、アルミニウムなどの各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などの発光材料を用いて形成することができる。
【0080】
また、発光層5をホスト材料とドーパント材料とで構成することもできる。
この場合のホスト材料として、上記の発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを使用することができ、さらに、前述した本発明の高分子量化合物を使用することもできる。
ドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0081】
このような発光層5も、各発光材料の1種或いは2種以上を用いた単層構成とすることもできるし、複数の層を積層した多層構造とすることもできる。
【0082】
さらに、発光材料として燐光発光材料を使用して発光層5を形成することもできる。
燐光発光材料としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。例えば、Ir(ppy)などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、BtpIr(acac)などの赤色の燐光発光体などを用いることができ、これらの燐光発光材料は、正孔注入・輸送性のホスト材料や電子輸送性のホスト材料にドープして使用される。
【0083】
正孔注入・輸送性のホスト材料としては、4,4'-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)、TCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることができ、さらに、本発明の高分子量化合物を用いることもできる。
また、電子輸送性のホスト材料としては、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2',2''-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができる。
【0084】
尚、燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0085】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)参照)。
【0086】
本発明の高分子量化合物を、ドーパントと呼ばれている蛍光発光体や燐光発光体もしくは遅延蛍光を放射する材料を担持させて発光層5を形成することにより、駆動電圧が低下し、発光効率が改善された有機EL素子を実現できる
【0087】
発光層5と電子輸送層6との間に設ける正孔阻止層(図では示されていない)としては、それ自体公知の正孔阻止作用を有する化合物を用いて形成することができる。
このような正孔阻止作用を有する公知化合物の例としては、以下のものをあげることができる。
バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン
誘導体;
アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-
フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール
誘導体の金属錯体;
各種希土類錯体;
トリアゾール誘導体;
トリアジン誘導体;
オキサジアゾール誘導体。
これらの材料は、以下に述べる電子輸送層6の形成にも使用することができ、さらには、このような正孔阻止層と電子輸送層6として使用することもできる。
【0088】
このような正孔阻止層も、単層或いは多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した正孔阻止作用を有する化合物の1種或いは2種以上を用いて成膜される。
【0089】
電子輸送層6は、それ自体公知の電子輸送性の化合物、例えば、Alq、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体などを用いて形成される。この電子輸送層6も、単層或いは多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した電子輸送性化合物の1種或いは2種以上を用いて成膜される。
【0090】
さらに、必要に応じて設けられる電子注入層(図では示されていない)も、それ自体公知のもの、例えば、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、リチウムキノリンなどの有機金属錯体などを用いて形成することができる。
【0091】
有機EL素子の陰極7としては、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0092】
本発明においては、前述した一般式(1)で表される置換トリアリールアミン構造単位を含む高分子量化合物を用いて、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、及び図示されていない電子阻止層の少なくとも何れかの層を形成することにより、発光効率および電力効率が高く、実用駆動電圧が低く、発光開始電圧も低く、極めて優れた耐久性を有する有機EL素子が得られる。特に、この有機EL素子では、高い発光効率を有しながら、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されて、最大発光輝度が向上している。
【実施例
【0093】
以下、本発明を次の実験例により説明する。
尚、以下の説明において、本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表される構造単位を「構造単位A」、式(2)で表される有機溶媒に対する溶解性を高めるために導入される構造単位を「構造単位B」、式(3)で表されるトリアリールアミン構造単位を「構造単位C」として示した。
【0094】
また、合成された化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、溶媒による晶析法によって行った。化合物の同定は、NMR分析によって行った。
【0095】
本発明の高分子量化合物を製造するための中間体合成の詳細については、WO2018/168667を参照。
【0096】
<実施例1>
高分子量化合物Iの合成;
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン
-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン:6.5g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1':2',1''-ターフェニル]-4'-アミン:5.5g
4,4'-ジブロモトリフェニルアミン:0.8g
リン酸三カリウム:9.0g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
次いで、酢酸パラジウム(II)を2.0mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.1mgを加えて加熱し、80℃で12.5時間撹拌した。
この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.3gを加えて1時間撹拌した。
トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。
室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン200mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子化合物Iを7.8g(収率90%)得た。
【0097】
得られた高分子化合物IについてNMR測定を行った。H-NMR測定結果を図23に示した。
また、高分子量化合物のGPCで測定した平均分子量、分散度及び化学組成は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):44,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):89,000
分散度(Mw/Mn):2.0
化学組成:構造単位A:40%/構造単位B:50%/構造単位C:10%
【0098】
【化7】
【0099】
上記化学組成から理解されるようにこの高分子化合物Iは、一般式(1)で表される構造単位Aを40モル%含み、式(2)で表される有機溶媒への溶解性を向上させるための構造単位Bを50モル%含み、式(3)で表されるトリアリールアミン構造単位Cを10モル%の量で含有していた。
【0100】
<実施例2>
高分子量化合物IIの合成;
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
2,7-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン
-2-イル)-9,9-ジ-n-オクチルフルオレン:6.9g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1':2',1''-ターフェニル]-4'-アミン:6.5g
リン酸三カリウム:9.0g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
次いで、酢酸パラジウム(II)を1.9mg、及びトリ-o-トリルホスフィン15.1mgを加えて加熱し、85℃で14時間撹拌した。
この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.3gを加えて1時間撹拌した。
トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で1時間撹拌した。
【0101】
室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン200mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子化合物IIを8.7g(収率92%)得た。
【0102】
得られた高分子化合物IIについてNMR測定を行った。H NMR測定結果を図24に示した。
また、高分子量化合物のGPCで測定した平均分子量、分散度及び化学組成は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):38,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):84,000
分散度(Mw/Mn):2.2
化学組成:構造単位A:52%/構造単位B:48%
【0103】
【化8】
【0104】
<実施例3>
高分子量化合物IIIの合成;
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
N,N-ビス[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]-9,9-ジオクチル-9H-フルオレン-2-アミン:6.5g
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-4-(2-ナフタレニル)-[1,1':2',1''-ターフェニル]-4'-アミン:5.5g
リン酸三カリウム:7.2g
トルエン:16ml
水:9ml
1,4-ジオキサン:48ml
次いで、酢酸パラジウム(II)を1.5mg、及びトリ-o-トリルホスフィン11.9mgを加えて加熱し、83℃で11時間撹拌した。
この後、フェニルボロン酸を22mg加えて1時間撹拌し、次いでブロモベンゼン0.3gを加えて1時間撹拌した。
トルエン100ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液100mlを加えて加熱し、還流下で1時間撹拌した。
室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られたろ液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン200mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン400ml中に滴下し、得られた沈殿物をろ取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子化合物IIIを7.3g(収率82%)得た。
【0105】
得られた高分子化合物IIIについてNMR測定を行った。H-NMR測定結果を図25に示した。
また、高分子量化合物のGPCで測定した平均分子量、分散度及び化学組成は、以下の通りであった。
数平均分子量Mn(ポリスチレン換算):76,000
重量平均分子量Mw(ポリスチレン換算):210,000
分散度(Mw/Mn):2.8
化学組成:構造単位A:50%/構造単位B:50%
【0106】
【化9】
【0107】
<実施例4>
実施例1~3で合成された高分子量化合物I~IIIを用いて、ITO基板の上に膜厚80nmの塗布膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202型)で仕事関数を測定した。その結果は以下の通りであった。
仕事関数
高分子量化合物I(ポリマー) 5.60eV
高分子量化合物II(ポリマー) 5.61eV
高分子量化合物III(ポリマー) 5.41eV
【0108】
本発明の高分子量化合物I~IIIは、NPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.40eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かる。
【0109】
<実施例5>
ホールオンリー素子の作製と評価;
図21に示す層構造のホールオンリー素子を、以下の手法により作製した。ホールオンリー素子とは、有機EL素子とは異なり、発光層を持たず、ホールだけを流す素子である。尚、正孔輸送層4の形成に用いる塗布液の調製には、トルエンを使用した。
【0110】
具体的には、膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、UV/オゾン処理にてITO表面を洗浄した。
このガラス基板1に設けられている透明陽極2(ITO)を覆うように、大気下において、PEDOT/PSS(HERAEUS製)をスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥して正孔注入層3を形成した。
【0111】
実施例1で得られた高分子量化合物Iを、トルエンに1.2重量%溶解して塗布液を調製した。上記のようにして正孔注入層3が形成されている基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移し、ホットプレート上で230℃で10分間乾燥した後に、正孔注入層3の上に、上記の塗布液を用いてスピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、さらに、ホットプレート上で200℃で10分間加熱して正孔輸送層4を形成した。
【0112】
上記のようにして正孔輸送層4が形成されている基板を、真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。最後に、アルミニウムを膜厚100nmとなるように蒸着して陰極5を形成した。
【0113】
このように、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、陰極5が形成されているガラス基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移動し、UV硬化樹脂を用いて封止用の他のガラス基板を貼り合わせ、ホールオンリー素子とした。作製したホールオンリー素子について、大気中、常温で、直流電圧を印加したときの電流密度-電圧特性を測定した。上記の測定結果は、表1に示した。
【0114】
<実施例6>
高分子量化合物Iの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で220℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例5と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例5と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0115】
<比較例1>
高分子量化合物Iに代えて、下記のクロスリンカーを持つHTМ-1(WO2018/168667参照。)をトルエンに1.2重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例5と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。
【0116】
【化10】
このホールオンリー素子について、実施例5と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0117】
<比較例2>
高分子量化合物Iに代えて、HTМ-1の塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で220℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例5と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例5と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0118】
<比較例3>
高分子量化合物Iに代えて、下記のTFB(正孔輸送性ポリマー)をトルエンに1.2重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例5と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。
【0119】
【化11】
ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(4-sec-ブチルフェニル))ジフェニルアミン]
(American Dye Source社製、Hole Transport Polymer ADS259BE)
このホールオンリー素子について、実施例5と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0120】
<比較例4>
高分子量化合物Iに代えて、TFBの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で220℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例5と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例5と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示すように、200℃、10分の加熱条件で作製した正孔輸送層4を有するホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、比較例1、比較例3のホールオンリー素子の1.96V、3.38Vに対して、実施例5のホールオンリー素子では1.76Vで、低電圧であった。また、220℃、30分の加熱条件で作製した正孔輸送層4を有するホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、比較例2、比較例4のホールオンリー素子の2.28V、4.13Vに対して、実施例6のホールオンリー素子では1.86Vで、低電圧であった。
【0123】
また、表1に示すように、HTМ-1が正孔輸送層4である、比較例1と比較例2のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.32Vであった。また、TFBが正孔輸送層4である、比較例3と比較例4のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.75Vであった。
【0124】
これに対し、高分子量化合物Iが正孔輸送層4である、実施例5と実施例6のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.10Vであり、HTМ-1やTFBと比較し、高温・長時間の加熱条件において、駆動電圧の上昇が抑制された。
【0125】
このように、本発明の高分子量化合物を用いて形成されている有機層(トルエンに溶解させて塗布)を備えたホールオンリー素子は、従来材料を用いたホールオンリー素子と比較して、低電圧特性が得られることが分かった。つまり、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較し、高いホール輸送性を有することが分かった。また、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較し、高温・長時間の加熱条件で作製したホールオンリー素子においても駆動電圧の上昇が抑制されることが分かった。つまり、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較して高い耐熱性を有していることが分かった。
【0126】
<実施例7>
ホールオンリー素子の作製と評価;
図21に示す層構造のホールオンリー素子を、以下の手法により作製した。
尚、正孔輸送層4の形成に用いる塗布液の調製には、シクロヘキシルベンゼンを使用した。
【0127】
具体的には、膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、UV/オゾン処理にてITO表面を洗浄した。
このガラス基板1に設けられている透明陽極2(ITO)を覆うように、大気下において、PEDOT/PSS(HERAEUS製)をスピンコートにより50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥して正孔注入層3を形成した。
【0128】
実施例1で得られた高分子量化合物Iを、シクロヘキシルベンゼンに2.5重量%溶解して塗布液を調製した。上記のようにして正孔注入層3が形成されている基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移し、ホットプレート上で230℃で10分間乾燥した後に、正孔注入層3の上に、上記の塗布液を用いてスピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、さらに、ホットプレート上で200℃で10分間加熱して正孔輸送層4を形成した。
【0129】
上記のようにして正孔輸送層4が形成されている基板を、真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。最後に、アルミニウムを膜厚100nmとなるように蒸着して陰極5を形成した。
【0130】
このように、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、陰極5が形成されているガラス基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移動し、UV硬化樹脂を用いて封止用の他のガラス基板を貼り合わせ、ホールオンリー素子とした。作製したホールオンリー素子について、大気中、常温で、直流電圧を印加したときの電流密度-電圧特性を測定した。上記の測定結果は、表2に示した。
【0131】
<実施例8>
高分子量化合物Iの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で230℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0132】
<実施例9>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0133】
<実施例10>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で230℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0134】
<実施例11>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIIの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0135】
<実施例12>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIIの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で230℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0136】
<比較例5>
高分子量化合物Iに代えて、HTМ-1をシクロヘキシルベンゼンに2.5重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0137】
<比較例6>
高分子量化合物Iに代えて、HTМ-1の塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で230℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0138】
<比較例7>
高分子量化合物Iに代えて、TFBをシクロヘキシルベンゼンに2.5重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0139】
<比較例8>
高分子量化合物Iに代えて、TFBの塗布液を用いて、スピンコートにより50nmの厚みの塗布層を形成し、ホットプレート上で230℃で30分間加熱して正孔輸送層4を形成した以外は、実施例7と全く同様にしてホールオンリー素子を作製した。このホールオンリー素子について、実施例7と同様に電流密度-電圧特性を評価し、その結果を表2に示した。
【0140】
【表2】
【0141】
表2に示すように、200℃、10分の加熱条件で作製した正孔輸送層4を有するホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、比較例5、比較例7のホールオンリー素子の2.01V、3.11Vに対して、実施例7、実施例9、実施例11のホールオンリー素子では1.74V、1.84V、1.36Vで、低電圧であった。また、230℃、30分の加熱条件で作製した正孔輸送層4を有するホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧は、比較例6、比較例8のホールオンリー素子の2.39V、4.15Vに対して、実施例8、実施例10、実施例12のホールオンリー素子では1.77V、1.84V、1.47Vで、低電圧であった。
【0142】
また、表2に示すように、HTМ-1が正孔輸送層4である、比較例5と比較例6のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.38Vであった。また、TFBが正孔輸送層4である、比較例7と比較例8のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が1.04Vであった。
【0143】
これに対し、高分子量化合物Iが正孔輸送層4である、実施例7と実施例8のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.03V、高分子量化合物IIが正孔輸送層4である、実施例9と実施例10のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.00V、高分子量化合物IIIが正孔輸送層4である、実施例11と実施例12のホールオンリー素子においては、電流密度10mA/cmの電流を流したときの駆動電圧差が0.11Vであり、HTМ-1やTFBと比較し、高温・長時間の加熱条件において、駆動電圧の上昇が抑制された。
【0144】
このように、本発明の高分子量化合物を用いて形成されている有機層(シクロヘキシルベンゼンに溶解させて塗布)を備えたホールオンリー素子は、従来材料を用いたホールオンリー素子と比較して、低電圧特性が得られることが分かった。つまり、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較し、高いホール輸送性を有することが分かった。また、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較し、高温・長時間の加熱条件で作製したホールオンリー素子においても駆動電圧の上昇が抑制されることが分かった。つまり、本発明の高分子量化合物は従来材料と比較して高い耐熱性を有していることが分かった。
【0145】
<実施例13>
有機EL素子の作製と評価;
図22に示す層構造の有機EL素子を、以下の手法により作製した。
【0146】
具体的には、膜厚50nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒で洗浄した後に、UV/オゾン処理にてITO表面を洗浄した。このガラス基板1に設けられている透明陽極2(ITO)を覆うように、PEDOT/PSS(HERAEUS製)をスピンコート法により50nmの厚みで成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥して正孔注入層3を形成した。
【0147】
実施例1で得られた高分子量化合物Iを、トルエンに0.6重量%溶解して塗布液を調製した。上記のようにして正孔注入層3が形成されている基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移し、ホットプレート上で230℃で10分間乾燥した後に、正孔注入層3の上に、上記の塗布液を用いてスピンコートにより25nmの厚みの塗布層を形成し、さらに、ホットプレート上で220℃で30分間乾燥して正孔輸送層4を形成した。
【0148】
上記のようにして正孔輸送層4が形成されている基板を、真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。正孔輸送層4の上に、下記構造式の青色発光材料(EMD-1)とホスト材料(EMH-1)との二元蒸着により、膜厚34nmの発光層5を形成した。尚、二元蒸着では、蒸着速度比を、EMD-1:EMH-1=4:96とした。
【0149】
【化12】
【0150】
【化13】
【0151】
電子輸送材料として、下記構造式の化合物(ETM-1)および(ETM-2)を用意した。
【0152】
【化14】
【0153】
【化15】
【0154】
上記で形成された発光層5の上に、上記の電子輸送材料(ETM-1)および(ETM-2)を用いての二元蒸着により、膜厚20nmの電子輸送層6を形成した。
尚、二元蒸着では、蒸着速度比を、ETM-1:ETM-2=50:50とした。
【0155】
最後に、アルミニウムを膜厚100nmとなるように蒸着して陰極7を形成した。
このように、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7が形成されているガラス基板を、乾燥窒素にて置換したグローブボックス内に移動し、UV硬化樹脂を用いて封止用の他のガラス基板を貼り合わせ、有機EL素子とした。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。また、作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性を測定した。上記の測定結果は、表3に示した。
【0156】
<実施例14>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIの塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例13と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例13と同様に各種特性を評価し、その結果を表3に示した。
【0157】
<実施例15>
高分子量化合物Iに代えて、高分子量化合物IIIの塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例13と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例13と同様に各種特性を評価し、その結果を表3に示した。
【0158】
<比較例9>
高分子量化合物Iに代えて、HTМ-1をトルエンに0.6重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例13と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例13と同様に各種特性を評価し、その結果を表3に示した。
【0159】
<比較例10>
高分子量化合物Iに代えて、TFBをトルエンに0.6重量%溶解させて調製された塗布液を用いて正孔輸送層4を形成した以外は、実施例13と全く同様にして有機EL素子を作製した。この有機EL素子について、実施例13と同様に各種特性を評価し、その結果を表3に示した。
【0160】
尚、各種特性の評価において、素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を700cd/mとして定電流駆動を行った時、発光輝度が560cd/m(初期輝度を100%とした時の80%に相当:80%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0161】
【表3】
【0162】
表3に示すように、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの駆動電圧は、比較例10の有機EL素子の4.11Vに対して、実施例13、実施例14、実施例15の有機EL素子では3.83V、3.95V、3.94Vと低電圧であった。また、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの発光効率は、比較例10の有機EL素子の5.34cd/Aに対して、実施例13、実施例14、実施例15の有機EL素子では6.91cd/A、7.69cd/A、7.12cd/Aと高効率であった。また、素子寿命(80%減衰)においては、比較例9、比較例10の有機EL素子の19時間、6時間に対して、実施例13、実施例14、実施例15の有機EL素子では258時間、557時間、579時間と長寿命であった。
【0163】
このように、本発明の高分子量化合物を用いて形成されている有機層を備えた有機EL素子は、従来の有機EL素子と比較して、低電圧、長寿命を実現できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の高分子量化合物は、正孔輸送能力が高く、電子阻止能力に優れており、耐熱性が良好なので、発光ダイオード用の化合物として優れており、特に塗布型有機EL素子用の化合物として優れている。該化合物を用いて塗布型有機EL素子を作製することにより、高い発光効率および電力効率を得ることができると共に、耐久性を改善させることができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図19
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図21
図22
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