(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/36 20060101AFI20240722BHJP
H01J 61/86 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
H01J61/36 B
H01J61/86
(21)【出願番号】P 2023081410
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019138750の分割
【原出願日】2019-07-29
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】林 武弘
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-213271(JP,A)
【文献】特開平11-025847(JP,A)
【文献】特開2000-294195(JP,A)
【文献】特開2007-287435(JP,A)
【文献】特開2013-073697(JP,A)
【文献】特開2017-117707(JP,A)
【文献】特開2019-046562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/36
H01J 61/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と一体的に繋がる外側封止管と、
前記放電管内の電極を支持する電極支持棒と、
軸方向に沿って配設されたシール箔と前記電極支持棒とを電気的に接続する金属部材と、
前記外側封止管よりもランプ軸側に配置される内側封止管とを備え、
前記金属部材と対向する領域の前記外側封止管の外側に、ガラス部材が溶着されており、
前記ガラス部材の肉厚が長手方向の途中で変化していることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
放電管と一体的に繋がる外側封止管と、
前記放電管内の電極を支持する電極支持棒と、
前記電極支持棒を保持する円柱状ガラス部材と、
前記電極支持棒が挿通するガラス管と、
軸方向に沿って配設されたシール箔と前記電極支持棒とを電気的に接続する金属部材と、
前記外側封止管と前記円柱状ガラス部材との間に同軸的に配置され、前記円柱状ガラス部材と溶着する内側封止管とを備え、
前記金属部材と対向する領域の前記外側封止管の外側に、ガラス部材が溶着されており、
前記内側封止管と、前記外側封止管と、前記ガラス部材とを含む外径が、前記ガラス管から前記円柱状ガラス部材までの軸方向範囲の中の最大径であることを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
前記内側封止管の内面から前記ガラス部材の外表面までの径方向範囲におけるOH基濃度が、30ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置等に利用される放電ランプ及び照明装置に関し、特に、ショートアーク型放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
大型のショートアーク型放電ランプ(例えば1kW以上)では、半導体、液晶製造の生産効率を向上させるため、大電力化が進んでいる。大電力化に伴って電極構造が大型になると、過度な応力が封止部にかかり、ガラス部材が破損する恐れがある。また、ランプ点灯時に流れる電流は高電流となり、これまで以上に封止部が熱の影響を受ける。その対策として、封止部を二重にする構造が知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、マウント部品が挿入される封止部が外側封止管、内側封止管によって構成され、内側封止管と外側封止管とが溶着されるとともに、マウント部品が内側封止管に溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二重封止構造によって機械的強度、熱的強度が高まったとはいえ、大型化が進む電極構造に対しては、さらなる対策が必要となる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、機械的強度、熱的強度がより高められた封止構造を有する放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放電管と一体的に繋がる外側封止管と、
放電管内の電極を支持する電極支持棒と、
軸方向に沿って配設されたシール箔と電極支持棒とを電気的に接続する金属部材と、
外側封止管よりもランプ軸側に配置される内側封止管とを備え、
金属部材と対向する領域の外側封止管の外側に、ガラス部材が溶着されており、
ガラス部材の肉厚が長手方向の途中で変化していることを特徴とする放電ランプである。
また、本発明は、放電管と一体的に繋がる外側封止管と、
放電管内の電極を支持する電極支持棒と、
電極支持棒を保持する円柱状ガラス部材と、
電極支持棒が挿通するガラス管と、
軸方向に沿って配設されたシール箔と電極支持棒とを電気的に接続する金属部材と、
外側封止管と円柱状ガラス部材との間に同軸的に配置され、円柱状ガラス部材と溶着する内側封止管とを備え、
金属部材と対向する領域の外側封止管の外側に、ガラス部材が溶着されており、
内側封止管と、外側封止管と、ガラス部材とを含む外径が、ガラス管から円柱状ガラス部材までの軸方向範囲の中の最大径であることを特徴とする放電ランプである。
【発明の効果】
【0007】
少なくとも一つの実施形態によれば、内側封止管と外側封止管とガラス部材の三重構造を封止部が有するので、封止部の強度を高めることができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果又はそれらと異質な効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるショートアーク型放電ランプを模式的に示した図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の陰極側の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の構成を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した図である。ショートアーク型放電ランプ10は、パターン形成する露光装置の光源などに使用可能な放電ランプであり、透明な石英ガラス製の放電管(発光管)11を備える。放電管11には、陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置される。
【0010】
管球状の放電管11の両側には、互いに対向するように石英ガラス製の封止部12a、12bが放電管11と一体的に形成されており、封止部12a、12bの両端は、口金13a及び13bが固定されている。放電ランプ10は、陽極30が上側、陰極20が下側となるように鉛直方向に沿って配置されている。
【0011】
封止部12a、12bの内部には、金属製の陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒14a、14bが配設されている。後述するように、電極支持棒14a、14bが金属部材、モリブデンなどのシール箔を介して導電性のリード棒15a、15bにそれぞれ電気的に接続される。封止部12a、12bは、内部に設けられるガラス管、円柱状ガラス部材などを溶着した構成とされ、これによって、水銀、および希ガスが封入された放電空間が封止される。
【0012】
リード棒15a、15bは外部の電源部に接続され、金属部材、シール箔及び電極支持棒14a、14bを介して陰極20、陽極30の間に電圧が印加される。放電ランプ10に電力が供給されると、電極間でアーク放電が発生し、水銀による輝線(紫外光)が放射される。
【0013】
なお、放電ランプ10の周囲には、回転楕円体である反射ミラー(集光ミラー)(図示せず)が配置されて照明装置が構成される。ランプ点灯時、放電ランプ10から放射された光は、反射ミラーで反射する。反射光は二次焦点に集光し、図示しない照明光学系などを介して照射対象物へ導かれる。例えば、照明装置が露光装置内に設けられている場合、基板の感光面に光が照射される。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態の断面図であり、
図3は、一部の拡大断面図である。なお、
図2及び
図3は、陰極側の封止部内部の構造を示すが、陽極側の封止部内部も同様の構造である。封止部12aは、内側封止管40と、外側封止管50と、ガラス部材60による三重のガラス管構造を有している。外側封止管50は、放電管11と一体的に繋がっており、ガラス管31、内側封止管40と溶着している。
【0015】
外側封止管50の外側には、該外側封止管50と同軸的に配置されたガラス部材60が溶着されている。すなわち、外側封止管50の外表面に管状のガラス部材(石英ガラス)を被せて溶着することによって、ガラス部材60を設けている。このような三重のガラス管構造(内側封止管40、外側封止管50、ガラス部材60)により、従来の二重封止構造よりも機械的強度と熱的強度を高め、封止部12aのクラックを防止することができる。
【0016】
放電管11内の陰極20を支持する電極支持棒14aは、環状部材である内側金属部材33に挿通されており、さらに、円柱状ガラス部材32にまで延在している。電極支持棒14aは、ランプ軸上に沿ってガラス管31、内側金属部材33、円柱状ガラス部材32によって保持されている。
【0017】
内側封止管40は、外側封止管50と円柱状ガラス部材32との間に同軸的に配置され、外側封止管50、円柱状ガラス部材32、ガラス管31に対して溶着される。また、環状の内側金属部材33は、ガラス管31と円柱状ガラス部材32との間に設けられており、円柱状ガラス部材32と外側ガラス管37との間には、環状の外側金属部材36が設けられている。なお、ガラス管31と内側金属部材33との間など各部材間には、ディスク状の円板箔を設けてもよい。内側金属部材33と外側金属部材36の間を電気的に接続するシール箔34が円柱状ガラス部材32の外表面に沿って設けられている。シール箔34は、周方向に沿って互いに離間して設けられたモリブデンなどから成る複数の帯状の金属箔である。
【0018】
さらに、内側金属部材33とその近傍のシール箔34の外周面上に、筒状の金属箔35が設けられている。図示しないが、外側金属部材36に対しても内側金属部材33と同様に金属箔が設けられている。なお、金属箔35は、少なくとも内側金属部材33の外周面を覆うことができれば、キャップのように被せる構成の箔でもよい。また、金属箔35にはエンボス加工を施してもよい。
【0019】
リード棒15aは、外側ガラス管37及び外側金属部材36に挿通され、円柱状ガラス部材32の封止端部側に挿入されている。
【0020】
また、本発明では、外側封止管50におけるガラス管31の径方向外側の少なくとも一部の領域から円柱状ガラス部材32の径方向外側の少なくとも一部の領域にかけて、ガラス部材60が溶着されている。すなわち、内側金属部材33と対向する領域の外側封止管50の外表面に、ガラス部材60が溶着されている。金属とガラスとでは熱膨張率が異なるため、内側金属部材33付近の封止管(内側封止管40)にクラックが生じる可能性がある。そのため、少なくともこの領域にガラス部材60を溶着させて機械的強度及び熱的強度の高い三重構造とすることで、クラックを防止することができる。
【0021】
さらに、本発明の一実施形態では、外側封止管50における内側金属部材33を覆う金属箔35の軸方向にわたる領域に、ガラス部材60が溶着されている。すなわち、金属箔35と対向する領域の外側封止管50の外表面に、ガラス部材60が溶着されている。ランプ点灯中、内側金属部材33が熱膨張して金属箔35に大きな熱応力がかかり、それが封止管(内側封止管40)に向けても作用することになる。そこで、この領域にガラス部材60を溶着させることで、大きな熱応力のかかる付近の封止部12aの機械的強度と熱的強度を高めることができる。
【0022】
図2に示す構成では、ガラス部材60が外側ガラス管37の位置まで設けられている。これと異なり、ガラス部材60の軸方向の溶着範囲は、外側金属部材36の径方向外側に位置しないように短くしてもよい。すなわち、外側金属部材36と対向する領域の外側封止管50の外表面にガラス部材60を位置させない。このようにガラス部材60の軸方向の長さを短くすることによって、溶着範囲が短くて済むため、溶着作業時間を短縮できる。また、ガラス部材60の厚みを考慮した専用口金を用意する必要がなく、従来の二重封止構造で使用されていた口金をそのまま使用することが可能となる。
【0023】
図3に示すように、ガラス管31は、放電管11の側から後述する大径部を境に径が徐々に小さくなる断面形状を有している。すなわち、
図3に示すように、大径部(矢印41の部分)と、円柱状ガラス部材32側の小径部(矢印43の部分)と、大径部と小径部を繋ぐ縮径部(矢印42の部分)とを有し、ガラス部材60の端部は、大径部と対向する領域の外側封止管50の外表面には位置していない。小径部43及び縮径部42のどちらか一方の径方向外側に位置すればよい。
【0024】
このような構成とするので、内側金属部材33の付近の封止部12aの強度は高めつつ、封止部12aの外径が必要以上に部分的に大きくなりすぎない。本発明の一実施形態と異なり、封止部の外径が大きいと、そのぶん熱容量も大きくなり、封止部が蓄熱して温度が上がってしまう。したがって、ガラス管31の大径部に対向する部分にはガラス部材60を溶着させないことで、封止部12aの過剰な温度上昇を防ぐことができる。ただし、機械的強度、熱的強度を高めるため、三重構造の外径がガラス管31から円柱状ガラス部材32の外側端部までの軸方向範囲における最大径となっていてもよい。
【0025】
この発明の一実施形態では、内側封止管40、外側封止管50及びガラス部材60からなる三重構造の封止部12aの外径が口金13aの放電管側端部の外径よりも小さいものとされている。したがって、放電ランプ10を照明装置に配置したとき、反射ミラーで反射した反射光が二次焦点に進行する時に、三重構造の部分で当たることを防止でき、光を最大限利用することができる。
【0026】
さらに、本発明の一実施形態では、内側封止管40の内面からガラス部材60の外表面までの径方向範囲におけるOH基濃度を、30ppm以下とした。OH基濃度を30ppmのような低い数値とすることで、OH基起因のガラス強度低下による封止部12aのクラック発生を抑制する。
【0027】
三重構造は、使用するガラス量が増えることから、封止部12aにおけるトータルのOH基含有量はどうしても多くなる。また、上述したように、内側金属部材33の熱膨張により、内側封止管40の内面からクラックが生じやすい。そこで、クラックの開始点となりやすい内側封止管40の内面からガラス部材60の外表面までの径方向範囲のOH基濃度を規定することで、より効果的にクラックを抑制できることを経験的に見出した。なお、このOH基の含有量は、ガラスを熱処理(脱水処理、高温真空処理など)することにより制御でき、例えばFTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)で測定する。
【0028】
以上、本技術の一実施の形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、ガラス部材60の肉厚や径は長手方向に沿って一定である必要はない。ランプ形状に応じて、長手方向の途中で徐々にガラス部材60の径を変えてもよく、厚くしたいあるいは厚くしたくない領域に合わせて長手方向の途中で肉厚を変化させてもよい。また、ガラス管31の形状は上述の実施形態に限らず、大径部が軸方向に長い形状や、段差のない一定径の形状にすることも可能である。また、本発明は、陰極側あるいは陽極側どちらか一方の封止構造に適用してもよい。また、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10・・・放電ランプ、11・・・放電管、12a,12b・・・封止部、
13a,13b・・・口金、14a,14b・・・電極支持棒、20・・・陰極、
30・・・陽極、31・・・ガラス管、32・・・円柱状ガラス部材、
33・・・内側金属部材、34・・・シール箔、35・・・金属箔、
36・・・外側金属部材、37・・・外側ガラス管、40・・・内側封止管、
50・・・外側封止管、60・・・ガラス部材