(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】紫外線硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240722BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20240722BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240722BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20240722BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20240722BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240722BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240722BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240722BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/08
C08L83/05
C08K3/01
C08K3/20
C08K3/26
C09K3/10 G
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2023577459
(86)(22)【出願日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2023044740
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022199769
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大皷 弘二
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/004463(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158134(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112144287(CN,A)
【文献】特表2020-528940(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104080(WO,A1)
【文献】特開2019-014801(JP,A)
【文献】特表2017-502102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09K
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン、
(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン、
(C)紫外線拡散材、及び
(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤
を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物であって、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が0.05~15.0質量部であり、
(C)成分が、炭酸カルシウム及びアルミナからなる群より選択され、(C)成分の平均粒子径が0.01~25μmであり、
JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントが33~95%である、紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分100質量部及び(C)成分0.25質量部の混合液について、JIS K 0115に準じて、前記混合液の厚みが200μmになるようにスペーサと2枚のガラス板を使用して作製した試料をガラスセルの代わりに用いて測定した波長365nmにおける吸光度が0.005~0.5の範囲である、請求項1に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記組成物に、イエロールーム内で、径7.0mm、照度100mW/cm
2、波長365nmの紫外線を45秒間照射後、23℃で16時間保管して得られた硬化物について、深さ5.8mmにおける硬化直径が18mm以上である、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(A)成分が直鎖状ポリオルガノシロキサンを含み、かつ、(A)成分のアルケニル基含有量が平均して0.03~1.0mmol/gである、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(B-1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(D)成分が、(D-1)紫外線により活性化する白金系触媒である、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(B-1)成分が、(b1)R
c1
2HSiO
1/2単位(式中、R
c1は、独立して、C
1-C
6アルキル基又はC
6-C
20アリール基である)及びSiO
4/2単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む、請求項
5に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
(D-1)成分が、環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒であり、前記組成物中の(D-1)成分の配合量が、白金金属質量として1~50ppmである、請求項
5に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
(A)成分のアルケニル基のモル数Vi
Aに対する、(B-1)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル数H
Bの比、H
B/Vi
A比が0.3~2.0である、請求項
5に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項9】
(B)成分が、(B-2)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサンであり、(D)成分が、(D-2)光反応開始剤である、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項10】
(B-2)成分が、(b2)1分子中に少なくとも2個のR
d1SiO
3/2単位(式中、R
d1は、炭素数1~6のメルカプトアルキル基である)を含むポリオルガノシロキサンを含む、請求項
9に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物を含む、ポッティング材料。
【請求項12】
コネクタピン用である、請求項1
1に記載のポッティング材料。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を含む、封止材。
【請求項14】
電気部品又は電子部品用である、請求項1
3に記載の封止材。
【請求項15】
電気部品又は電子部品がコネクタピンを有するコネクタである、請求項1
4に記載の封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性シリコーン組成物に関し、特に、その硬化物が電気部品、電子部品等の封止材に好適に使用できる紫外線硬化性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の半導体素子、これらの半導体素子、コンデンサ、抵抗器等を実装した電気・電子部品;レンズ、ミラー、フィルター、プリズム等の光学部品等における弾性接着剤、封止材、コーティング材、電気絶縁シール材等として、耐熱性に優れ、これらの部品に対する良好な密着性及び接着性が得られることから、シリコーン組成物が使用されている。特に、ヒドロシリル化を利用した紫外線硬化性付加反応型のシリコーン組成物は、短時間の紫外線照射により硬化するため生産性に優れ、部材同士を良好に接着させることができるため、広く使用されている。
【0003】
このような紫外線硬化性シリコーン組成物として、特許文献1には、(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1個以上有するオルガノポリシロキサン;(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び(C)光活性型白金錯体硬化触媒:を所定の割合で含有する、対物レンズ駆動装置用ダンピング材用の紫外線硬化性オルガノポリシロキサンゲル組成物が開示されており、所定のポリマー設計上の利点と、紫外線照射による速硬化性とを兼ね備えた組成物とすることができることが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)25℃における粘度が50~100,000mPa・sであり、1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン;(B)ケイ素原子に直結した水素原子(Si-H基)を分子鎖の両側の末端のみに有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン等のオルガノハイドロジェンポリシロキサン;及び(C)特定の化合物群から選ばれる1種以上の光活性型ヒドロシリル化反応触媒;を所定の割合で含み、所定の粘度を有する画像表示装置用紫外線硬化型液状シリコーン組成物が開示されており、100℃以下の温和な温度条件において数分から数十分で硬化が可能であり、機械特性、光学特性が良好な硬化物を与えることが示されている。
【0005】
一方で、メルカプト官能性ポリオルガノシロキサン、光開始剤及び各種充填剤を使用した紫外線硬化性シリコーン組成物も知られている。例えば、特許文献3では、(A)単位式[(CH3)3SiO1/2]x[(CH3)2SiO]y[R(CH3)SiO]z(Rはそれぞれ独立してメルカプト(C1~30)ヒドロカルビル基である)を有するメルカプト官能性ポリオルガノシロキサン;少なくとも2個の脂肪族不飽和炭素-炭素結合を含むポリオルガノシロキサン及び有機分子のうちの少なくとも1つ;シリカ粉末、セラミックガラス粉末等の充填剤;並びに光開始剤を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物が開示されている。
特許文献4では、(A)1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子に結合したビニル基等を有するアルケニル官能性、線状トリオルガノシロキシ末端封鎖ポリジオルガノシロキサン、(B)一般式:R’’R’2SiO(R’’’R’SiO)x(R’RSiO)ySiR’2R’’(各Rは2から6の炭素原子/基を有するメルカプトアルキル基から選ばれ、各R’’はR及びR’の基から選ばれる)により表される、1分子当たり少なくとも2個のメルカプト基を有するメルカプト官能性橋かけ結合剤;(C)光増感剤;(D)貯蔵安定剤、及び任意にフュームドシリカ等の補強剤を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物が開示されている。
【0006】
このような紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線の照射により硬化が開始するため、完全に硬化するまでの間に組成物が流動したり、紫外線が当たらない部分の硬化が不十分になったりする問題がある。このような問題を解決するために、紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化方法が各種提案されている。例えば、特許文献5には、加熱初期の形状を維持したまま硬化させることを目的に、組成物に特定の発光スペクトルを有する光を照射後、加熱する工程を含む硬化方法が開示されている。また、特許文献6には、光が当たらない部分や、厚い成形物でも均一に硬化させることを目的に、組成物に紫外線を照射して光活性型白金錯体硬化触媒の触媒活性を高める第一の工程と、第一の工程で得られた組成物を所望の箇所に適用し、硬化させる第二の工程からなる、組成物の硬化方法が開示されている。
【0007】
一方、熱硬化型、湿気硬化型等のシリコーン組成物においても、光拡散剤、無機紫外線吸収剤量等を配合することが知られている。例えば、特許文献7では、(A)熱硬化性シリコーンゴム混合物、(B)所定の粒子径及び屈折率を有する炭酸カルシウムを含む無機粒子からなる拡散剤を所定の割合で含有させたシリコーンゴム組成物が開示されており、光拡散性が要求される照明器具用のカバー等の製造材料に使用できることが示されている。特許文献8及び9では、未架橋ジメチルシリコーンゴム配合物に、所定の平均粒径を有するシリコーン弾性体粒子又は微小ガラスビーズからなる光拡散剤を所定の割合で分散させた光拡散性ジメチルシリコーンゴム組成物が開示されており、LED光の散乱を目的とした部材等に使用できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-213132号公報
【文献】特開2019-210351号公報
【文献】特表2017-502102号公報
【文献】特開昭60-110752号公報
【文献】特開2012-121960号公報
【文献】特開2013-87199号公報
【文献】特開2013-185123号公報
【文献】特開2011-184625号公報
【文献】特開2012-33462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4に開示されている紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線の照射により硬化して、所定の機械特性及び光学特性を示すものの、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性が不十分であり、硬化物の品質が安定しないという問題があった。また、特許文献5及び6に開示されるような硬化方法は、追加設備が必要となったり、操作が煩雑となったりするため、これらの方法を使用せずに、品質が安定した硬化物を与える紫外線硬化性シリコーン組成物が求められている。さらに、特許文献7~9の組成物は、それを熱硬化して得られた成形品を照明器具用のカバー等の光拡散部材に用いることを目的としたものであり、紫外線照射による硬化を意図しておらず、紫外線により硬化するものではなかった。
【0010】
本発明は、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、紫外線硬化性シリコーン組成物に、紫外線拡散材を所定量配合し、組成物の透過率を所定の範囲に調整することにより、組成物の硬化性を改善できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、以下の[1]~[17]に関する。
[1](A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン;(C)紫外線拡散材;及び(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物であって、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が0.05~15.0質量部であり、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントが33~95%である、紫外線硬化性シリコーン組成物。
[2](A)成分100質量部及び(C)成分0.25質量部の混合液について、JIS K 0115に準じて、前記混合液の厚みが200μmになるようにスペーサと2枚のガラス板を使用して作製した試料をガラスセルの代わりに用いて測定した波長365nmにおける吸光度が0.005~0.5の範囲である、[1]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[3]前記組成物に、イエロールーム内で、径7.0mm、照度100mW/cm2、波長365nmの紫外線を45秒間照射後、23℃で16時間保管して得られた硬化物について、深さ5.8mmにおける硬化直径が18mm以上である、[1]又は[2]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[4](C)成分の平均粒子径が0.01~25μmである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[5](C)成分が、炭酸カルシウム、シリカ及びアルミナからなる群より選択される、[1]~[4]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[6](A)成分が直鎖状ポリオルガノシロキサンを含み、かつ、(A)成分のアルケニル基含有量が平均して0.03~1.0mmol/gである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[7](B)成分が、(B-1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(D)成分が、(D-1)紫外線により活性化する白金系触媒である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[8](B-1)成分が、(b1)Rc1
2HSiO1/2単位(式中、Rc1は、独立して、C1-C6アルキル基又はC6-C20アリール基である)及びSiO4/2単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む、[7]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[9](D-1)成分が環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒であり、前記組成物中の(D-1)成分の配合量が、白金金属質量として1~50ppmである、[7]又は[8]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[10](A)成分のアルケニル基のモル数ViAに対する、(B-1)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル数HBの比、HB/ViA比が0.3~2.0である、[7]~[9]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[11](B)成分が、(B-2)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサンであり、(D)成分が、(D-2)光反応開始剤である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[12](B-2)成分が、(b2)1分子中に少なくとも2個のRd1SiO3/2単位(式中、Rd1は、炭素数1~6のメルカプトアルキル基である)を含むポリオルガノシロキサンを含む、[11]に記載の紫外線硬化性シリコーン組成物。
[13][1]~[12]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物を含む、ポッティング材料。
[14]コネクタピン用である、[13]に記載のポッティング材料。
[15][1]~[12]のいずれか1つに記載の紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を含む、封止材。
[16]電気部品又は電子部品用である、[15]に記載の封止材。
[17]電気部品又は電子部品がコネクタピンを有するコネクタである、[16]に記載の封止材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、イエロールームにて、JIS K 0115に準じて、(A)成分100質量部及び(C)成分0.25質量部の混合液並びに紫外線硬化性シリコーン組成物の波長365nmにおける吸光度を測定するための試料を撮影した写真である。
【
図2】
図2は、イエロールームにて、硬化直径を測定する装置を上方から撮影した写真である。
【
図3】
図3は、
図2の装置を上方から見た場合の模式図である。
【
図5】
図5は、
図3及び4において、紫外線照射後の硬化領域及び硬化直径を説明する模式図である。
【
図6】
図6は、実施例1~6及び比較例1~2に基づいて、(A)成分100質量部に対する(C)成分である無処理炭酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)の質量部と、上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)における硬化直径との関係を示したグラフである。
【
図7】
図7は、実施例2及び22~30に基づいて、(A)成分100質量部に対して炭酸カルシウムを0.25質量部配合した組成物における、炭酸カルシウムの平均粒子径と、上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)における硬化直径との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン;(C)紫外線拡散材;及び(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤を含み、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が0.05~15.0質量部であり、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントが33~95%である。(C)成分を所定量配合し、かつ、組成物の硬化前の透過パーセントを33~95%とすることにより、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物とすることができる。
【0016】
組成物の硬化性の観点から、(B)成分が、(B-1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(D)成分が、(D-1)紫外線により活性化する白金系触媒である組み合わせ;又は(B)成分が、(B-2)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサンであり、(D)成分が、(D-2)光反応開始剤である組み合わせであることが好ましい。
【0017】
本明細書において用いられる場合、「有機基」とは、炭素を含有する基を意味する。有機基の価数はnを任意の自然数として「n価の」と記載することにより示される。したがって、例えば「1価の有機基」とは、結合手を1つのみ有する、炭素を含有する基を意味する。結合手は、炭素以外の元素が有していてもよい。価数を特に明示しない場合でも、当業者であれば文脈から適した価数を把握することができる。
【0018】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、分子から少なくとも1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭化水素基としては、炭素数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。なお、かかる炭化水素基は、その末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上の窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、ケイ素原子(Si)、アミド結合、スルホニル結合、シロキサン結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基等の、ヘテロ原子又はヘテロ原子を含む構造を有していてもよい。
【0019】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される基が挙げられる。
【0020】
本明細書において、アルキル基及びフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0021】
本明細書においてシロキサン化合物の構造を説明する場合、シロキサン化合物の構造単位を以下のような略号によって記載することがある。以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」、「D単位」等ということがある。
M:(CH3)3SiO1/2
MH:H(CH3)2SiO1/2
MVi:CH2=CH(CH3)2SiO1/2
D:(CH3)2SiO2/2
DH:H(CH3)SiO2/2
DVi:CH2=CH(CH3)SiO2/2
T:CH3SiO3/2
TSH:HS(CH2)3SiO3/2
Q:SiO4/2(四官能性)
シロキサン化合物は、上記の構造単位を組み合わせて構築されるものであるが、上記構造単位のメチル基がフッ素のようなハロゲン、フェニル基のような炭化水素基等、他の基に置き換わったものを少なくとも部分的に含んでいてもよい。また、例えばDH
20D20と記した場合には、DH単位が20個続いた後D単位が20個続くことを意図するものではなく、各々の単位は任意に配列していてもよいことが理解される。シロキサン化合物は、T単位又はQ単位により、3次元的に様々な構造を取ることができる。
【0022】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の物性>
[組成物の硬化前の透過パ―セント]
紫外線硬化性シリコーン組成物において、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントは、33~95%である。透過パーセントを上記範囲とすることにより、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物とすることができる。透過パーセントが33%未満であると、組成物の硬化性が著しく低下する。透過パーセントが95%を超えると、紫外線により組成物は硬化するものの、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性向上の効果が小さい。前記透過パーセントは、33~90%であることが好ましく、33~88%であることがより好ましく、34~88%であることがさらに好ましく、40~85%であることがさらに好ましく、48~77%であることがさらに好ましく、48~72%であることがさらにより好ましく、50~67%であることが特に好ましい。
(C)紫外線拡散材の種類及び配合量を適宜選択することにより、透過パーセントを上記範囲に調整することができる。
【0023】
本発明において、組成物の硬化前の透過パーセントは、JIS K 0115に準じて、以下のようにして測定する。10mm厚のセルを用い、試料セルに硬化前の組成物、対照セルにイオン交換水を入れ、該組成物の波長365nmの透過率を測定する。次いで、ランベルトベールの法則に従い、得られた測定値を10mm厚から1mm厚に変換し、該組成物の透過パーセントを得る。
【0024】
[(A)成分100質量部及び(C)成分0.25質量部の混合液の吸光度]
光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性を向上させる観点から、(A)成分100質量部及び(C)成分0.25質量部の混合液について、JIS K 0115に準じて、前記混合液の厚みが200μmになるようにスペーサと2枚のガラス板を使用して作製した試料をガラスセルの代わりに用いて測定した波長365nmにおける吸光度は、0.005~0.5の範囲であると好ましく、0.02~0.5であるとより好ましく、0.02~0.4であるとさらに好ましく、0.03~0.3であるとさらにより好ましく、0.05~0.2であると特に好ましい。
【0025】
[組成物の硬化前の吸光度]
光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性を向上させる観点から、硬化前の紫外線硬化性シリコーン組成物について、JIS K 0115に準じて、前記組成物の厚みが200μmになるようにスペーサと2枚のガラス板を使用して作製した試料をガラスセルの代わりに用いて測定した波長365nmにおける吸光度は、0.005~3.0の範囲であると好ましく、0.015~2.7であるとより好ましく、0.02~2.6であるとより好ましく、0.02~1.0であると特に好ましい。
【0026】
図1に、JIS K 0115に準じて、前記混合液及び前記組成物の波長365nmにおける吸光度を測定するための試料を撮影した写真を示す。
図1に示すとおり、前記混合液又は前記組成物の厚みが200μmになるように、スペーサと2枚のガラス板を使用して試料を作製し、これをガラスセルの代わりに試料セルとして用いる。ガラス板は、マイクロスライドガラスS9112(松波硝子工業株式会社製、76mm×52mm×1.0~1.2mm厚)を使用する。
図1において、白色の部分が2枚のガラス板を重ねた部分であり、ガラス板中の透明に切り取られた部分に、厚みが200μmの前記混合液又は前記組成物が存在する。対称セルには、前記マイクロスライドガラスS9112 1枚を使用する。
【0027】
<(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン>
(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンである。(A)成分は、紫外線硬化性シリコーン組成物のベースポリマーとして機能する。アルケニル基は、分子主鎖の分子鎖末端に結合していても、分子鎖途中の側鎖に結合していても、両方に結合していてもよい。本明細書において、分子主鎖とは、分子中で相対的に最も長い結合鎖を表す。(A)成分の分子構造は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状又は三次元網目状のいずれでもよく、シロキサン骨格が2価の有機基により中断されていてもよい。(A)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0028】
(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する。(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する複数のポリオルガノシロキサンの混合物であることができる。なかでも、硬化時に架橋反応による安定した3次元構造を形成し、硬化物に適度な硬度を与える観点から、(A)成分は、直鎖状ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましく、分子主鎖の両末端に各1つのアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンを含むことがより好ましい。この場合、(A)成分は、(A)成分100質量%に対して、直鎖状ポリオルガノシロキサンを30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことがさらに好ましい。(A)成分100質量%に対する、直鎖状ポリオルガノシロキサンの含有量の上限は100質量%である。
【0029】
アルケニル基は、炭素-炭素二重結合を有しており付加反応が可能な基であれば特に制限はされない。アルケニル基の炭素数は、2~20であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることがさらに好ましい。アルケニル基は分岐構造又は環構造を有していてもよい。アルケニル基を構成する炭化水素における炭素-炭素二重結合の位置は、任意の位置を採ることができる。反応性の点から、炭素-炭素二重結合は基の末端にあることが好ましい。アルケニル基の好ましい例としては、ポリオルガノシロキサンの合成が容易であることから、ビニル基が挙げられる。
【0030】
(A)成分のアルケニル基含有量は、特に制限されないが、平均して0.02mmol/g以上であることができる。(A)成分のアルケニル基含有量は、平均して0.02~2.0mmol/gであることが好ましく、0.03~1.0mmol/gであることがより好ましく、0.03~0.5mmol/gであることがさらに好ましく、0.04~0.5mmol/gであることがさらにより好ましく、0.10~0.50mmol/gであることが特に好ましい。アルケニル基含有量を上記範囲とすることにより、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性及び保存安定性がともに優れた紫外線硬化性シリコーン組成物とすることができる。ここで、(A)成分が複数のポリオルガノシロキサンの混合物である場合、(A)成分のアルケニル基含有量は、該混合物の平均値である。
(A)成分のアルケニル基含有量は、分光光度計により、CH2=CH-基の吸光度(2,150nm付近)から求めることができる。
【0031】
本発明の一態様において、(A)成分は、1分子中に、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有する。(A)成分は、後述する(B-1)成分のヒドロシリル基(Si-H基)又は(B-2)成分のメルカプト基との付加反応により、網状構造を形成する。(A)成分は、代表的には、一般式(1):
R1
mR2
nSiO(4-m-n)/2 (1)
(式中、
R1は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基であり;
R2は、アルケニル基であり;
mは、0~2の整数であり;
nは、1~3の整数であり、但し、m+nは1~3である。)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に少なくとも2個有する。
【0032】
R1は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基である。R1は、具体的には、アルキル基、例えばC1-C6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル等);シクロアルキル基、例えばC3~C10シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル等);アリール基、例えばC6~C20アリール基(例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アントラセニル等);アラルキル基、例えばC7~C13アラルキル基(例えば、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル等);置換炭化水素基、例えばハロゲン置換炭化水素基(例えば、クロロメチル、クロロフェニル、3,3,3-トリフルオロプロピル等)が挙げられる。合成の容易さ等の点からアルキル基が好ましく、中でもメチル、エチル及びプロピルが好ましく、より好ましくはメチルである。屈折率を調整するために、アリール基を併用することができ、中でも、合成の容易さ等の点からフェニルが好ましい。
【0033】
硬化性及び保存安定性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を得る観点から、(A)成分は、分子主鎖の両末端に各1つのアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。本発明の一態様において、直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、式(I):
【化1】
(式中、
R
a1は、独立して、C
2-C
6アルケニル基であり、
R
b1は、独立して、C
1-C
6アルキル基又はC
6-C
20アリール基であり、
n1は、直鎖状ポリオルガノシロキサンのアルケニル基含有量を平均して0.02mmol/g以上とする数である)で表すことができる。
【0034】
C2-C6アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基、及び5-ヘキセニル基等が挙げられる。C1-C6アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。C6-C20アリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントラセニル基等が挙げられる。
【0035】
Ra1は、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性及び硬化物の耐熱性を損ねないという点から、ビニル基が好ましい。Rb1は、合成が容易で、組成物の流動性、硬化物の機械的強度等のバランスが優れているという点から、C1-C6アルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。よって、(A)成分は、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンが好ましい。
(A)成分100質量%中の、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンの含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。前記含有量の上限は100質量%である。
【0036】
n1は、組成物の安定した液状性並びに光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性を確保する観点から、直鎖状ポリオルガノシロキサンのアルケニル基含有量を平均して0.02mmol/g以上とする数であることが好ましく、0.02~2.0mmol/gとする数であることがより好ましく、0.03~1.0mmol/gとする数であることがさらに好ましく、0.03~0.5mmol/gとする数であることがさらに好ましく、0.04~0.5mmol/gとする数であることがさらにより好ましく、0.10~0.50mmol/gとする数であることが特に好ましい。
【0037】
(A)成分の23℃における粘度は、10~100,000mPa・sが好ましく、100~50,000mPa・sがより好ましく、100~10,000mPa・sがさらに好ましい。
【0038】
本明細書において、各成分及び紫外線硬化性シリコーン組成物の粘度は、JIS K 6249に準拠して、回転粘度計を用いて、No.1、2、3又は4ローター、0.3~60rpm、23℃の条件で測定した値である。
【0039】
(A)成分は、両末端がジメチルビニルシロキサン単位で閉塞され、中間単位がジメチルシロキサン単位からなるポリメチルビニルシロキサンと、その他の直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとの混合物であってもよい。
【0040】
(A)成分は、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応によりアルケニル基を導入したポリオルガノシロキサンを用いてもよい。(A)成分としては、置換基の位置又は種類、重合度等により区分して、1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。(A)成分はポリオルガノシロキサンであるので、種々の重合度を有するポリオルガノシロキサンの混合物であってもよい。
【0041】
取り扱い性、硬化性及び保存安定性のバランスの観点から、(A)成分の配合量は、紫外線硬化性シリコーン組成物100質量%に対して70.0~99.8質量%であることが好ましく、80.0~99.7質量%であることがより好ましく、90.0~99.7質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
<(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン>
(B)成分は、1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサンである。(B)成分は、架橋剤として機能し、(A)成分のアルケニル基との付加反応により、網状構造を形成する。(B)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。以下、(B-1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(B-2)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサンについて、具体的に説明する。
【0043】
[(B-1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン]
(B-1)成分の水素原子は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両方に結合していてもよい。(B-1)成分の分子構造は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状又は三次元網目状のいずれでもよく、シロキサン骨格が2価の有機基により中断されていてもよい。また、(B-1)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(B-1)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0044】
(B-1)成分は、代表的には、一般式(2):
R3
pHqSiO(4-p-q)/2 (2)
(式中、
R3は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基であり;
pは、0~2の整数であり;
qは、1~3の整数であり、但し、p+qは1~3である。)
で示されるケイ素原子に結合した水素原子を含有するシロキサン単位を、分子中に少なくとも2個有する。R3としては、一般式(1)におけるR1と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。(B-1)成分において、ケイ素原子に結合した水素原子は、一分子中、3~100個であることが好ましく、より好ましくは、5~50個である。
【0045】
(B-1)成分は、(b1)Rc1
2HSiO1/2単位(式中、Rc1は、独立して、C1-C6アルキル基又はC6-C20アリール基である)及びSiO4/2単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含むことが好ましい。本発明者らは、(b1)成分は、組成物に紫外線を照射した場合に、照射された範囲だけでなく、その範囲を3次元的に拡張して組成物を硬化させる能力が高いことを見出した。(B-1)成分が(b1)成分を含むことにより、照射された部分の周囲の光が当たらない部分及び厚さ方向の硬化性がいっそう優れた組成物とすることができる。
(b1)成分は、分岐状、環状及び三次元網目構造(SiO4/2単位が密集した構造)のいずれであってもよい。Rc1は、合成の容易さ等の点から、C1-C6アルキル基が好ましく、メチルが特に好ましい。
なかでも、(b1)成分は、3~6個のSiO4/2単位及び6~12個のRc1
2HSiO1/2単位が結合しているポリオルガノハイドロジェンシロキサンであることが好ましく;[Rc1
2HSiO1/2]6[SiO4/2]3、[Rc1
2HSiO1/2]8[SiO4/2]4、[Rc1
2HSiO1/2]10[SiO4/2]5、[Rc1
2HSiO1/2]12[SiO4/2]6のように、3~6個のSiO4/2単位が環状シロキサン骨格を形成し、各SiO4/2単位に2個のRc1
2HSiO1/2単位が結合している、環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであることが特に好ましい。
【0046】
(B-1)成分の23℃における粘度は、1~100mPa・sが好ましく、1~50mPa・sがより好ましい。
【0047】
(B-1)成分は、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応により(B-1)成分を合成することもできる。(B-1)成分としては、置換基の位置又は種類、重合度等により区分して、1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。(B-1)成分はポリオルガノハイドロジェンシロキサンであるので、種々の重合度を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンの混合物であってもよい。
【0048】
取り扱い性、硬化性及び硬化範囲の拡張性の観点から、(A)成分のアルケニル基のモル数ViAに対する、(B-1)成分のケイ素原子に結合した水素原子のモル数HBの比、HB/ViA比は、0.3~2.0であることが好ましく、0.4~1.5であることがさらに好ましく、0.5~1.1であることが特に好ましい。
【0049】
[(B-2)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン]
(B-2)成分のメルカプトアルキル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両方に結合していてもよい。(B-2)成分の分子構造は、シロキサン結合が主骨格であるものであれば、特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状又は三次元網目状のいずれでもよく、シロキサン骨格が2価の有機基により中断されていてもよい。また、(B-2)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基又はメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。(B-2)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0050】
(B-2)成分は、代表的には、一般式(3):
R3
rR4
sSiO(4-r-s)/2 (3)
(式中、
R3は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基であり;
R4は、炭素数1~6のメルカプトアルキル基であり;
rは、0~2の整数であり;
sは、1~3の整数であり、但し、r+sは1~3である。)
で示されるケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を含有するシロキサン単位を、分子中に少なくとも2個有する。架橋反応による安定した構造を確保しつつ、過度な硬化収縮を抑制する点から、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基は、一分子中、2~20個であることが好ましく、より好ましくは3~10個であり、さらに好ましくは3~7個である。
【0051】
R4としては、メルカプトメチル、2-メルカプトエチル、3-メルカプトプロピル、4-メルカプトブチル、6-メルカプトヘキシル等が挙げられるが、合成の容易さ等の点から、メルカプトメチル、3-メルカプトプロピルが好ましく、より好ましくは3-メルカプトプロピルである。R3としては、一般式(1)におけるR1と同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0052】
架橋反応性の観点から、(B-2)成分は、(b2)1分子中に少なくとも2個のRd1SiO3/2単位(式中、Rd1は、炭素数1~6のメルカプトアルキル基である)を含むポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。なかでも、(b2)成分は、1分子中に少なくとも2個のRd1SiO3/2単位、並びにR3
3SiO1/2単位及びR3
2SiO2/2単位を含むことがより好ましい。
作業性及び架橋反応性の点から、Rd1SiO3/2単位とメルカプトアルキル基を含まないシロキサン単位の個数の比が、1:60~1:5のものが好ましいが、これに限定されない。
【0053】
硬化性及び硬化物の機械的特性を確保する観点から、(B-2)成分100質量%に対する(b2)成分の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。(B-2)成分100質量%に対する(b2)成分の含有量の上限は、100質量%である。
【0054】
(B-2)成分の23℃における粘度は、20~25,000mPa・sが好ましく、50~10,000mPa・sがより好ましく、100~1,000mPa・sがさらに好ましい。
【0055】
(B-2)成分の調製方法は、特に限定されず、例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン等のメルカプトアルキルアルコキシシランと、所望のアルキルクロロシラン、アルキルアルコキシシラン、シラノール含有シロキサンとを加水分解、重縮合、又は再平衡化することにより製造できる。
【0056】
(B-2)成分は、市販されているものを利用することができる。また、公知の反応により(B-2)成分を合成することもできる。(B-2)成分としては、置換基の位置又は種類、重合度等により区分して、1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。(B-2)成分はポリオルガノシロキサンであるので、種々の重合度を有するポリオルガノシロキサンの混合物であってもよい。
【0057】
(B-2)成分中のメルカプト基の個数は、ヨウ素による比色滴定により測定することができる。これは、下記式:
2RSH + I2 → RSSR + 2HI
の反応を利用した方法であり、滴定中、微量の過剰ヨウ素で滴定液が微黄色になることを利用する。
【0058】
取り扱い性、硬化性及び硬化範囲の拡張性の観点から、(A)成分のアルケニル基のモル数ViAに対する、(B-2)成分のケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基のモル数SHBの比、SHB/ViA比は、0.3~2.0であることが好ましく、0.4~1.5であることがさらに好ましく、0.5~1.1であることが特に好ましい。
【0059】
<(C)紫外線拡散材>
(C)成分は、組成物に紫外線を照射した場合に、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性を大きく向上させる成分である。(C)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0060】
紫外線硬化性シリコーン組成物において、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントは、33~95%である。(C)成分は、組成物の硬化前の透過パ-セントを上記範囲にするものであれば、特に限定されない。(C)成分は、脂肪酸等の疎水化剤により表面処理されていてもよい。
(C)成分としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラスビーズ、ガラスバルーン等を例示することができる。なかでも、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性向上の観点から、炭酸カルシウム、シリカ及びアルミナからなる群より選択されることが好ましく、炭酸カルシウムであることがさらに好ましい。
【0061】
光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性向上の観点から、(C)成分の平均粒子径は、0.01~25μmであることが好ましく、0.01~15μmであることがより好ましく、0.01~10μmであることがさらに好ましく、0.01~3.0μmであることが更により好ましく、0.01~2.0μmであることが特に好ましい。また、取扱い性の観点から、(C)成分の平均粒子径の下限は、0.1μm以上とすることが好ましい。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した1次粒子径のメジアン径d50である。(C)成分が凝集している場合は、光学顕微鏡を用いて、凝集している1次粒子50個の観察を行い、その最大径の平均値を平均粒子径とする。
【0062】
光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性向上の観点から、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量は、0.05~15.0質量部であり、0.10~10.0質量部であることが好ましく、0.10~5.0質量部であることがより好ましく、0.10~2.0質量部であることがさらに好ましく、0.10~1.0質量部であることがさらにより好ましく、0.10~0.25質量部であることが特に好ましい。(C)成分の配合量が0.05質量部未満であると、光が当たらない部分における硬化性向上の効果が得られず、15.0質量部を超えると、却って光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性が低下する。
【0063】
<(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤>
(D)成分は、紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤である。架橋反応性の観点から、(B)成分が(B-1)成分である場合、(D)成分は(D-1)紫外線により活性化する白金系触媒であることが好ましい。また、架橋反応性の観点から、(B)成分が(B-2)成分である場合、(D)成分は(D-2)光反応開始剤であることが好ましい。
【0064】
[(D-1)紫外線により活性化する白金系触媒]
(D-1)成分は、紫外線により活性化し、(A)成分のアルケニル基と、(B)成分、特に(B-1)成分のヒドロシリル基(Si-H基)との間の付加反応を促進するための触媒である。触媒活性が良好な観点から、(D-1)成分は、環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒であると好ましい。(D-1)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0065】
環状ジエン化合物を配位子に有する白金系触媒としては、(1,5-シクロオクタジエニル)ジフェニル白金錯体、(1,5-シクロオクタジエニル)ジプロピル白金錯体、(2,5-ノルボラジエン)ジメチル白金錯体、(2,5-ノルボルナジエン)ジフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)ジエチル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジフェニル白金錯体、(メチルシクロオクタ-1,5-ジエニル)ジエチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)エチルジメチル白金錯体、(シクロペンタジエニル)アセチルジメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(メチルシクロペンタジエニル)トリヘキシル白金錯体、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリフェニル白金錯体、(シクロペンタジエニル)ジメチルトリメチルシリルメチル白金錯体等を挙げることができる。
【0066】
組成物の硬化性の観点から、紫外線硬化性シリコーン組成物中の(D-1)成分の配合量は、白金金属質量として1~50ppmとなる量であることが好ましく、4~50ppmであることがより好ましく、10~50ppmであることがさらに好ましい。
同様に、(A)成分及び(B)成分の合計質量に対する(D-1)成分の配合量は、白金金属質量として1~50ppmとなる量であることが好ましく、4~50ppmであることがより好ましく、10~50ppmであることがさらに好ましい。
【0067】
[(D-2)光反応開始剤]
(D-2)成分は、(A)成分のアルケニル基と、(B)成分、特に(B-2)成分のメルカプト基とを光架橋させる際のラジカル開始剤として、又は増感剤として機能する成分である。(D-2)成分は、反応性の観点から、芳香族炭化水素、アセトフェノン及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ベンゾイン及びベンゾインエーテル並びにその誘導体、キサントン及びその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン化合物、ハロゲン化炭化水素及びアミン類、有機過酸化物等を例示することができる。(A)及び(B-2)成分との相溶性並びに安定性の観点から、置換又は非置換のベンゾイル基を含有する化合物又は有機過酸化物がより好ましい。(D-2)成分は、単独でも、二種以上を併用してもよい。
【0068】
(D-2)成分としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE(登録商標)651:IGM Resins B.V.社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(Irgacure(登録商標)1173:IGM Resins B.V.社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184:IGM Resins B.V.社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959:IGM Resins B.V.社製)、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)127:IGM Resins B.V.社製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)907:IGM Resins B.V.社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(IRGACURE(登録商標)369:IGM Resins B.V.社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(IRGACURE(登録商標)379:IGM Resins B.V.社製);2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(LUCIRIN TPO:IGM Resins B.V.社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE(登録商標)819:IGM Resins B.V.社製);1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)](IRGACURE(登録商標)OXE 01:IGM Resins B.V.社製)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(〇-アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE 02:IGM Resins B.V.社製);2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルと2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物(IRGACURE(登録商標)754:IGM Resins B.V.社製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(DAROCUR(登録商標)MBF:IGM Resins B.V.社製)、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR(登録商標)EDB:IGM Resins B.V.社製)、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート(DAROCUR(登録商標)EHA:IGM Resins B.V.社製)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI 403:IGM Resins B.V.社製)、ベンゾイルペルオキシド、クメンペルオキシド等が挙げられる。
【0069】
組成物の硬化性の観点から、紫外線硬化性シリコーン組成物中の(D-2)成分の配合量は、0.05~10質量%となる量であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。
同様に、(A)成分及び(B)成分の合計質量に対する(D-2)成分の配合量は、0.05~10質量%となる量であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0070】
<その他の成分>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、その目的及び効果を損なうものでない限り、その他の成分を配合することができる。その他の成分としては、難燃剤、接着性付与剤、耐熱付与剤、希釈剤、付加反応硬化触媒の抑制剤、ポリオルガノシロキサン以外の樹脂等を適宜配合することができる。また、紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)成分以外のポリオルガノシロキサン、例えば、1分子中に1個以下のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(B-1)成分以外のポリオルガノハイドロジェンシロキサン、例えば、1分子中に1個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;(B-2)成分以外のポリオルガノシロキサン、例えば、1分子中に1個の、ケイ素原子に結合したメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン;(C)成分以外の無機又は有機の顔料等を配合することができる。その他の成分は、それぞれ単独でも、2種以上の組合せであってもよい。
【0071】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の製造方法>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、(A)~(D)成分、さらに必要に応じてその他の成分をプラネタリー型ミキサー等の混合機で混合することにより得ることができる。混合時には、必要に応じて50~150℃の範囲で加熱しながら混合してもよい。均一仕上げのために、高剪断力下で混練操作を行うことが好ましい。混練装置としては、3本ロール、コロイドミル、サンドグラインダー等があるが、中でも3本ロールによる方法が好ましい。
【0072】
紫外線硬化性シリコーン組成物は、組成物の保存安定性を考慮して、2液型の組成物とすることもできる。2液型の組成物とする場合、第1剤が(A)、(C)及び(D)成分を含み、(B)成分を含まず;第2剤が(A)及び(B)成分並びに場合により(C)成分を含み、(D)成分を含まないことが好ましい。2液型の紫外線硬化性シリコーン組成物では、第1剤及び第2剤を別々に調製する。第1剤及び第2剤は、1液型の組成物と同様の方法により、製造することができる。
【0073】
取り扱い性並びに紫外線が照射された部分の周囲の光が当たらない部分及び厚さ方向の硬化性の観点から、紫外線硬化性シリコーン組成物の23℃における粘度は、10~100,000mPa・sであることが好ましく、100~60,000mPa・sであることがより好ましく、100~20,000mPa・sであることがさらに好ましい。
紫外線硬化性シリコーン組成物が第1剤及び第2剤からなる2液型の組成物である場合、第1剤及び第2剤の粘度は、好ましくは、10~100,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは100~60,000mPa・sであり、さらに好ましくは100~20,000mPa・sである。紫外線硬化性シリコーン組成物は、遮光下、常温以下の温度で保存されるのが好ましい。
【0074】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化方法>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線の照射により硬化させることができる。照射量は、100~10,000mJ/cm2が好ましく、より好ましくは300~6,000mJ/cm2であり、さらに好ましくは500~5,000mJ/cm2である。なお、照射量は、UVAの測定値である。ここで、UVAは、波長が315~400nmの範囲の紫外線をいう。組成物は、紫外線の波長、例えば、波長が250~450nmの範囲を有する紫外線を照射したときの硬化性が良好である。このような波長の紫外線を放出する光源として、例えば、ウシオ電機株式会社製の高圧水銀ランプ(UV-7000)、メタルハライドランプ(UVL-4001M3-N1)、韓国:JM tech社製のメタルハライドランプ(JM-MTL 2KW)、三菱電機株式会社製の紫外線照射灯(OSBL360)、株式会社GSユアサ製の紫外線照射機(UD-20-2)、株式会社東芝製の蛍光ランプ(FL-20BLB))、Heraeus社製のHバルブ、Hプラスバルブ、Vバルブ、Dバルブ、Qバルブ及びMバルブ、シーシーエス株式会社製のLEDランプ(HLDL-155UV)等が挙げられる。
【0075】
組成物の硬化時間は、紫外線の照射量にもよるが、概ね30分以下であり、好ましくは10分以下である。組成物の硬化が進行したかどうかは、目視によって判断することもできるが、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”が等しくなるまでの時間、貯蔵弾性率G’が所定の値に達するまでの時間等によって定量的に評価することもできる。例えば、紫外線照射後23℃の条件で、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”と等しくなるまでの時間が30分以内、好ましくは10分以内であると、硬化にかかる時間が短く取り扱い性に優れているといえるため、好ましい。
【0076】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化性>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れる。具体的には、紫外線硬化性シリコーン組成物に、イエロールーム内で、径7.0mm、照度100mW/cm2、波長365nmの紫外線を45秒間照射後、23℃で16時間保管して得られた硬化物について、深さ5.8mmにおける硬化直径は、18mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、23mm以上であることがさらに好ましい。
また、紫外線硬化性シリコーン組成物に、イエロールーム内で、径7.0mm、照度100mW/cm2、波長365nmの紫外線を45秒間照射後、23℃で16時間保管して得られた硬化物について、深さ2.9mmにおける硬化直径は、14mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、16mm以上であることがさらに好ましい。さらに、紫外線硬化性シリコーン組成物に、イエロールーム内で、径7.0mm、照度100mW/cm2、波長365nmの紫外線を45秒間照射後、23℃で16時間保管して得られた硬化物について、深さ0mmにおける硬化直径は、7mm以上であることが好ましく、11mm以上であることがより好ましく、12mm以上であることがさらに好ましい。
【0077】
図2~5を用いて、前記硬化直径の測定方法を説明する。
図2は、硬化直径を測定するための装置をイエロールームにて上方から撮影した写真であり、
図3は、該装置を上方から見た場合の模式図である。
図4は、
図3のA-A’線断面図である。
図5は、
図3及び4において、紫外線照射後の硬化領域及び硬化直径を説明する模式図である。
イエロールームとは、紫外線を含む500nm以下の波長の光を遮蔽した環境を指し、具体的には、蛍光灯の光から500nm以下の波長を98%以上カットした環境を意味する。イエロールームは、例えば半導体工場のクリーンルーム内で感光性物質を扱う場合に、一般に設けられる。例えば、窓のない部屋を使用し、照明として、市販のイエロー蛍光灯を用いることにより、イエロールームとすることができる。市販のイエロー蛍光灯としては、例えば、株式会社東芝製イエロー光 直管形LEDランプ等が挙げられる。
【0078】
図3及び4に示すとおり、縦60mm、横25mm、深さ6.0mmの直方体の窪み1(
図3及び
図4の破線内)を有する金属製型6を用意する。紫外線の反射を防止するために、窪み1の底面全体に底部用黒色テープ4(厚さ0.2mm)を貼付する。その後、イエロールーム内で、窪み1内に試料7(実施例及び比較例の組成物)をそれぞれ充填し、径7.0mmの穴2を有する上部用黒色テープ5(厚さ0.2mm)を組成物の上部を覆うように貼付する。さらに、上部用黒色テープ5の上に、窪み1の大きさよりも一回り大きい、厚さ1mmの透明なガラス3を置く。
【0079】
このように設置した試料7に、穴2を通して、シーシーエス株式会社製UV-LED照射器を用いて、照度100mW/cm
2、波長365nmの紫外線を45秒間照射(照射量4,500mJ/cm
2)した後、23℃で16時間保管する。試料7は、
図5に示すとおり、硬化領域8の範囲で硬化される。上部用黒色テープ5を取り外し、金属製型6を立て掛けて未硬化部分を取り除き、硬化している上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)の最大径をそれぞれノギスで測定し、上部、中部及び下部の硬化直径とする。
【0080】
<紫外線硬化性シリコーン組成物の用途>
紫外線硬化性シリコーン組成物は、作業性及び架橋硬化性に優れるため、ポッティング材料に好適に使用できる。具体的には、紫外線硬化性シリコーン組成物は、光が当たりにくい部分を有する材料、特にコネクタピン用のポッティング材料に好適に使用できる。
【0081】
本発明の別の態様では、紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物は、封止材として好適に使用することができる。紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を封止剤として用いた物品は、接着面及び封止箇所の耐水性及び耐久性能に優れているため、該硬化物は、電気部品又は電子部品の封止材として、好適に使用することができる。また、紫外線硬化性シリコーン組成物は、紫外線が照射された部分の周囲の光が当たらない部分及び厚さ方向の硬化性に優れ、硬化物の品質が安定している。そのため、例えば、液晶、プラズマ、有機EL等の画像表示装置の貼り合わせ用の接着剤として、あるいは、LED素子又はOLED素子の封止のための封止剤として用いることができる。特に、紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物を含む封止材は、電気部品又は電子部品用に好適に使用することができ、特に、コネクタピンを有するコネクタ用に、好適である。
【実施例】
【0082】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、質量部又は質量%である。
【0083】
<測定方法>
[屈折率]
(A)及び(A’)成分の屈折率は、JIS K 0062に準拠して、25℃で測定した。
【0084】
[平均粒子径]
(C)及び(C’)成分を光学顕微鏡(株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープ、VHX-500F)を用いて観察し、凝集の有無を確認した。(C)及び(C’)成分に凝集が見られない場合、その平均粒子径(メジアン径d50)は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、LS13 320)を用い、1次粒子径を測定した。(C)及び(C’)成分が凝集していた場合は、前記光学顕微鏡を用いて、凝集している1次粒子50個の観察を行い、その最大径の平均値を平均粒子径とした。
【0085】
[粘度]
(A)成分並びに実施例及び比較例の組成物について、JIS K 6249に準拠して、回転粘度計(ビスメトロン VDA2型、芝浦システム株式会社製)を使用して、No.2ローターを使用し、60rpmで、23℃における粘度を測定した。組成物の調製直後及びイエロールーム外にて23℃で24時間保管後に、それぞれ粘度を測定した。
【0086】
[透過パーセント]
実施例及び比較例の硬化前の組成物について、JIS K 0115に準じて、透過パーセントを測定した。10mm厚のセルを用い、試料セルに硬化前の組成物、対照セルにイオン交換水を入れ、該組成物の波長365nmの透過率を測定した。次いで、ランベルトベールの法則に従い、得られた測定値を10mm厚から1mm厚に変換し、該組成物の透過パーセントを得た。
【0087】
[吸光度]
(1)(A)成分100質量部及び(C)又は(C’)成分0.25質量部の混合液の調製
実施例及び比較例の組成物を構成する(A)成分及び(C)又は(C’)成分について、(A)成分100質量部及び(C)又は(C’)成分0.25質量部の混合液を調製した。(A)成分25質量部に(C)又は(C’)成分25質量部を加え、自転・公転方式ミキサー(株式会社シンキー製、ARE-501)により2分間撹拌し、その後、(A)成分50質量部を10質量部ずつダマにならないように加え、添加のたびに、前記自転・公転方式ミキサーにより各2分間撹拌しベース液を調製した。こうして得たベース液に少しずつダマにならないように(A)成分を加えて、添加のたびに、前記自転・公転方式ミキサーにより各2分間撹拌し、(A)成分100質量部及び(C)又は(C’)成分0.25質量部の混合液を得た。
【0088】
(2)吸光度の測定
上記のようにして得られた混合液並びに実施例及び比較例の組成物について、JIS K 0115に準じて、波長365nmにおける吸光度を測定した。
図1に、JIS K 0115に準じて、前記混合液及び前記組成物の波長365nmにおける吸光度を測定するための試料を撮影した写真を示す。
図1に示すとおり、前記混合液又は前記組成物の厚みが200μmになるように、スペーサと2枚のガラス板を使用して試料を作製し、これをガラスセルの代わりに試料セルとして用いた。ガラス板は、マイクロスライドガラスS9112(松波硝子工業株式会社製、76mm×52mm×1.0~1.2mm厚) を使用した。
図1において、白色の部分が2枚のガラス板を重ねた部分であり、ガラス板中の透明に切り取られた部分に、厚みが200μmの前記混合液又は前記組成物が存在する。対称セルには、前記マイクロスライドガラスS9112 1枚を使用した。
【0089】
[ショア00硬度]
実施例及び比較例の組成物を、縦60mm×横25mm×深さ6mmの型に流し込み、シーシーエス株式会社製HLDL-155UVを用いて、照度100mW/cm2の紫外線を45秒間照射して硬化させた後、さらに23℃50RH%下で16時間保管した。こうして得た硬化物について、ASTM D 2240に準拠して、ショア00硬度を測定した。なお、紫外線照射により組成物が全く硬化しなかった場合は、「未硬化」とした。また、紫外線照射面は硬化しているものの、その反対側が硬化しなかった場合は、「底面未硬化」とした。
【0090】
[針入度]
ショア00硬度が0であった実施例14の組成物について、針入度計を用いて、JIS K 6249に準拠して針入度を測定した。実施例14の針入度は、25であった。
【0091】
[ゲル化時間]
実施例及び比較例の組成物について、粘弾性測定装置MCR301(Anton Paar社製)を使用し、紫外線の照射開始からの貯蔵弾性率G’を経時的に測定した。前記粘弾性測定装置を使用し、Φ12mmパラレルプレートを用い、ギャップ0.5mm、周波数1Hz及び歪1%にて、紫外線硬化性シリコーン組成物の23℃における貯蔵弾性率G’の測定を開始した。照度100mW/cm2の紫外線を紫外線硬化性シリコーン組成物に45秒間照射(照射量4,500mJ/cm2)し、照射開始時から貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”と等しくなるまでの時間をゲル化時間とした。ゲル化時間が短いほど速硬化性であり、硬化性に優れていると判断した。なお、ゲル化時間の測定は、紫外線の照射開始60分後まで行い、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G”未満の場合は、「未硬化」とした。
【0092】
[硬化直径]
紫外線を照射した場合に、照射された範囲だけでなく、その範囲をどの程度まで拡張して組成物を硬化させることができるかの指標として、硬化直径を測定した。
図2は、上記測定をするための装置をイエロールームにて上方から撮影した写真であり、
図3は、該装置を上方から見た場合の模式図である。
図4は、
図3のA-A’線断面図である。
図5は、
図3及び4において、紫外線照射後の硬化領域及び硬化直径を説明する模式図である。
【0093】
図3及び4に示すとおり、縦60mm、横25mm、深さ6.0mmの直方体の窪み1(
図3及び
図4の破線内)を有する金属製型6を用意した。紫外線の反射を防止するために、窪み1の底面全体に底部用黒色テープ4(厚さ0.2mm)を貼付した。その後、イエロールーム内で、窪み1内に試料7(実施例及び比較例の組成物)をそれぞれ充填し、径7.0mmの穴2を有する上部用黒色テープ5(厚さ0.2mm)を組成物の上部を覆うように貼付した。さらに、上部用黒色テープ5の上に、窪み1の大きさよりも一回り大きい、厚さ1mmの透明なガラス3を置いた。
【0094】
このように設置した試料7に、穴2を通して、シーシーエス株式会社製UV-LED照射器を用いて、照度100mW/cm
2、波長365nmの紫外線を45秒間照射(照射量4,500mJ/cm
2)した後、23℃で16時間保管した。試料7は、
図5に示すとおり、硬化領域8の範囲で硬化される。上部用黒色テープ5を取り外し、金属製型6を立て掛けて未硬化部分を取り除き、硬化している上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)の最大径をそれぞれノギスで測定し、上部、中部及び下部の硬化直径とした。硬化直径は、上部については7.0mm以上、中部については14mm以上、下部については18mm以上である場合、紫外線が照射された部分の周囲の光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れていると判断した。なお、紫外線照射により組成物が硬化しなかった場合は、「未硬化」とした。
【0095】
<使用成分>
使用した各成分は、以下のとおりである。ここで、記号は以下を意味する。
M:(CH3)3SiO1/2
MH:H(CH3)2SiO1/2
MVi:CH2=CH(CH3)2SiO1/2
D:(CH3)2SiO2/2
DH:H(CH3)SiO2/2
DVi:CH2=CH(CH3)SiO2/2
TSH:HS(CH2)3SiO3/2
Q:SiO4/2(四官能性)
【0096】
(A)成分:1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン
以下に示す、両末端がMVi単位で閉塞され、中間単位がD単位からなるポリメチルビニルシロキサンを使用した。
(A-1)MViDm1MVi(1):ビニル基含有量が平均して0.180mmol/g、23℃における粘度:450mPa・s、屈折率:1.403
(A-2)MViDm2MVi(2):ビニル基含有量が平均して0.047mmol/g、23℃における粘度:12,800mPa・s、屈折率:1.403
(A-3)MViDm3MVi(3):ビニル基含有量が平均して0.029mmol/g、23℃における粘度:78,800mPa・s、屈折率:1.404
(A-4)MViDm4MVi(4):ビニル基含有量が平均して0.145mmol/g(5モル%のジフェニルシロキサンと95モル%のジメチルシロキサンからなる)、23℃における粘度:1,300mPa・s、屈折率:1.428
【0097】
(A)成分のアルケニル基含有量は、分光光度計により、CH2=CH-基の吸光度(2,150nm付近)から求めた。
【0098】
(A’)成分:両末端メタクリル官能性シロキサンオリゴマー
(A’-1)1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン(TSL9706、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、屈折率:1.450)
【0099】
(B)成分:1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン
(B-1)平均単位式がMH
8Q4で示される架橋性ポリメチルハイドロジェンシロキサン(SiH量:10.16mmol/g)
(B-2)平均単位式がMHDH
9D11 MHで示される架橋性ポリメチルハイドロジェンシロキサン(SiH量:8.27mmol/g)
(B-3)平均単位式がMDH
23D16Mで示される架橋性ポリメチルハイドロジェンシロキサン(SiH量:8.60mmol/g)
(B-4)平均単位式がM(TSH)5D60で示される、1分子中に少なくとも2個のHS(CH2)3SiO3/2単位を有するポリメチルシロキサン(SH量:0.94mmol/g)
【0100】
(B-4)の合成例
冷却用還流管、滴下ロート、及び撹拌装置としてスリーワンモーターを装備した5Lのセパラブルフラスコ中の、ジメチルジクロロシラン1549.2g(12mol)、トリメチルクロロシラン21.7g(0.2mol)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン196.4g(1.0mol)及びトルエン1500gに、水1000gとトルエン500gの混合物を、滴下ロートから約1時間かけて滴下した。70℃で2時間加熱撹拌しながら得られた混合物の加水分解を行なった。反応終了後、水相を分離除去し、油相を再度水洗し、次いで100℃~125℃にて加熱により脱水を行なった。脱水終了後、50質量%水酸化カリウム水溶液1.5gを加え、115~125℃で5時間加熱撹拌することにより縮合反応を行った。得られた縮合反応物をエチレンクロロヒドリンにて中和後、トルエンを1200~1300g脱溶し、スーパーセライトフロスを濾過助剤に用いて濾過し、その後残存するトルエンを定圧及び減圧下にて除去し、メルカプトプロピル基を含有するポリメチルシロキサン928gを得た。
平均構造式:{(CH3)3SiO1/2}{HS(CH2)3SiO3/2}5{(CH3)2SiO2/2}60
【0101】
(C)成分:紫外線拡散剤
(C-1)無処理炭酸カルシウム(CUBE18BH(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:2.0μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-2)無処理アルミナ(AKP-G15(住友化学株式会社製)、平均粒子径:0.01μm(光学顕微鏡による))
(C-3)無処理アルミナ(AKP-G07(住友化学株式会社製)、平均粒子径:0.02μm(光学顕微鏡による))
(C-4)無処理アルミナ(AA-04(住友化学株式会社製)、平均粒子径:0.4μm(光学顕微鏡による))
(C-5)無処理アルミナ(AA-3(住友化学株式会社製)、平均粒子径:3.0μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-6)無処理粉砕シリカ(CRYSTALITE(登録商標)5X(株式会社龍森製)、平均粒子径:1.0μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-7)無処理粉砕シリカ(CRYSTALITE(登録商標)VX-S(株式会社龍森製)、 平均粒子径:4.0μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-8)脂肪酸処理炭酸カルシウム(カルファイン(登録商標)N-40(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:0.04μm(光学顕微鏡による))
(C-9)脂肪酸処理炭酸カルシウム(カルファイン(登録商標)YM10(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:0.1μm(光学顕微鏡による))
(C-10)脂肪酸処理炭酸カルシウム(カルファイン(登録商標)YM23(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:0.23μm(光学顕微鏡による))
(C-11)無処理炭酸カルシウム(KRS1(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:0.4μm(光学顕微鏡による))
(C-12)無処理炭酸カルシウム(CUBE-20KA(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:2.7μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-13)無処理炭酸カルシウム(CUBE-50KA(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:5.8μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-14)無処理炭酸カルシウム(CUBE-80KA(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:8.9μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-15)無処理炭酸カルシウム(R-50A(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:14.5μm(レーザー回折・散乱法による))
(C-16)無処理炭酸カルシウム(R-70H(丸尾カルシウム株式会社製)、平均粒子径:24.7μm(レーザー回折・散乱法による))
【0102】
(C’)成分:(C)成分以外の充填剤
(C’-1)シラザン表面処理煙霧質シリカ(ROX200S(エボニック社製)、平均粒子径:0.01μm(光学顕微鏡による))
(C’-2)酸化チタン(AEROXIDE(登録商標)TiO2 P 25(エボニック社製)、平均粒子径:0.03μm(光学顕微鏡による))
(C’-3)酸化チタン(タイペーク(登録商標)A-100(石原産業株式会社製)、平均粒子径:0.15μm(光学顕微鏡による))
(C’-4)メチルレジン粒子(トスパール(登録商標)120(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、平均粒子径:2.0μm(レーザー回折・散乱法による))
【0103】
(D)成分:紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤
(D-1)(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体(Strem Chemicals, Inc.社製(ドイツ)、白金量:61.1質量%)をMViDm1MVi(1)により1.0質量%に希釈して、使用した。
(D-2)2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン(IGM Resins B.V.社製、Irgacure(登録商標)1173)を使用した。
【0104】
実施例1
(A)及び(C)成分の混合液の調製
(A-1)MViDm1MVi(1)25質量部に(C-1)25質量部を加え、自転・公転方式ミキサー(株式会社シンキー製、ARE-501)により2分間撹拌し、その後、(A-1)50質量部を10質量部ずつダマにならないように加え、添加のたびに、前記自転・公転方式ミキサーにより各2分間撹拌しベース液を調製した。
こうして得たベース液に少しずつダマにならないように(A-1)を加えて、添加のたびに、前記自転・公転方式ミキサーにより各2分間撹拌し、(A-1)100.00質量部及び(C-1)0.10質量部の混合液を得た。
【0105】
紫外線硬化性シリコーン組成物の調製
こうして得た混合液に、イエロールーム内で、(D-1)の1.0質量%希釈液0.17質量部((D-1):0.0017質量部、MViDm1MVi(1):0.1683質量部)及び(B-1)1.78質量部を添加、混合して、実施例1の紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0106】
実施例2~30
(A)~(D)成分及びその配合量を、表1及び2のように変更した以外は実施例1と同様にして、(A)及び(C)成分の混合液を調製し、実施例2~30の紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0107】
実施例31
実施例1と同様にして、(A-4)100.00質量部及び(C-1)0.25質量部の混合液を得た。こうして得た混合液に、イエロールーム内で、(D-2)0.30質量部及び(B-4)15.40質量部を添加、混合して、実施例31の紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0108】
比較例1~6
(A)~(D)成分及びその配合量を、表3のように変更した以外は実施例1と同様にして、(A)及び(C)又は(C’)成分の混合液を調製し、比較例1~6の紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0109】
比較例7
実施例1と同様にして、(A’-1)100.00質量部及び(C-1)0.25質量部の混合液を得た。こうして得た混合液に、イエロールーム内で、(D-2)1.00質量部を添加、混合して、比較例7の紫外線硬化性シリコーン組成物を得た。
【0110】
実施例の配合及び評価結果を表1及び表2に示す。比較例の配合及び評価結果を表3に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
表1及び2に示すとおり、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン;(C)紫外線拡散材、及び(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物であって、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が0.05~15.0質量部であり、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントが33~95%である、実施例の組成物は、ゲル化時間が短く、硬化性に優れ、かつ、光が当たらない部分及び厚さ方向の硬化性にも優れていた。
【0115】
図6は、実施例1~6及び比較例1~2に基づいて、(A-1)100質量部に対する(C-1)無処理炭酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)の質量部と、上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)における硬化直径との関係を示したグラフである。
図6より、(C-1)を0.10質量部配合しただけの実施例1は、(C)成分未配合の比較例1に比べ、硬化直径が1.6~2.0倍に増大し、(C)成分を少量配合するだけで、組成物の硬化直径が大きく増大することがわかる。また、(C-1)の配合部が0.25質量部付近で硬化直径が極大になり、その後、(C-1)の配合部が増えるにつれ、硬化直径が徐々に減少することがわかる。
【0116】
図7は、実施例2及び22~30に基づいて、(A-1)100質量部に対して(C)成分として炭酸カルシウムを0.25部配合した組成物における、炭酸カルシウムの平均粒子径と、上部(深さ0mm)、中部(深さ2.9mm)及び下部(深さ5.8mm)における硬化直径との関係を示したグラフである。
図7より、炭酸カルシウムの平均粒子径が2.0μm以下の場合、硬化直径の増大効果が大きく、平均粒子径が15μmを超えると、硬化直径が減少する傾向が見られる。
【0117】
実施例2、7及び8の比較より、(B)成分がMH単位及びQ単位を含むポリオルガノハイドロジェンシロキサンである実施例2は、(B)成分が直鎖状であるものに比べ、硬化直径がいっそう優れている。実施例2及び11~13の比較より、(A)成分のアルケニル基含有量が平均して0.10mmol/g以上である実施例2は、硬化直径がいっそう優れている。
【0118】
(C)成分を配合しない比較例1、及び(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が15質量部を超える比較例2は、硬化直径が劣っていた。(C)成分の代わりに表面処理煙霧質シリカ及びレジン粒子をそれぞれ配合した比較例3及び6は、波長365nmで測定される組成物の硬化前の透過パーセントが95%を上回っているが、硬化直径が劣る結果となった。(C)成分の代わりに酸化チタンを配合し、波長365nmで測定される組成物の硬化前の透過パーセントが33%を下回っている比較例4及び5は、紫外線による硬化性が著しく劣っており、硬化直径を評価できなかった。(A)及び(B)成分の代わりに、両末端メタクリル官能性シロキサンオリゴマーの硬化系を用い、(C)成分を配合した比較例7は、ゲル化時間が短く、硬化速度は速いものの、硬化直径は著しく劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
紫外線硬化性シリコーン組成物の硬化物は、電気部品、電子部品等の封止材として有用である。
【符号の説明】
【0120】
1 窪み
2 穴
3 透明なガラス
4 底部用黒色テープ
5 上部用黒色テープ
6 金属製型
7 試料(紫外線硬化性シリコーン組成物)
8 硬化領域
9 硬化直径
【要約】
光が当たらない部分及び厚さ方向における硬化性に優れた紫外線硬化性シリコーン組成物を提供する。
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン;(B)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子又はメルカプトアルキル基を有するポリオルガノシロキサン;(C)紫外線拡散材;及び(D)紫外線により活性化する白金系触媒又は光反応開始剤を含む、紫外線硬化性シリコーン組成物であって、(A)成分100質量部に対する(C)成分の配合量が0.05~15.0質量部であり、JIS K 0115に準じて、波長365nmで測定される前記組成物の硬化前の透過パーセントが33~95%である、紫外線硬化性シリコーン組成物。