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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】金属閉塞層付きゲルシートマスク
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240722BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20240722BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20240722BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/84
A61K8/85
A61Q19/00
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017110772
(22)【出願日】2017-06-05
(65)【公開番号】P2018203663
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゴーラヴ・アガルワル
(72)【発明者】
【氏名】大方 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柯 ▲麗▼▲シュアン▼
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281232(JP,A)
【文献】特開2009-39169(JP,A)
【文献】特開2003-313110(JP,A)
【文献】特開2000-297009(JP,A)
【文献】特開2015-143214(JP,A)
【文献】特開2013-32315(JP,A)
【文献】特開2014-205924(JP,A)
【文献】特開2016-37674(JP,A)
【文献】特開2011-125610(JP,A)
【文献】特開2014-18395(JP,A)
【文献】MINTEL GNPD,Premium Hydra Gold Foil Mask,2017年1月,[online],インターネット,URL:https://www.gnpd.com/sinatra>(Database accession no.4562773)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99, A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルシートマスク(1)であって、
シート様支持層(10)と、
ゲル組成物からなり、前記支持層(10)の一方の表面(10a)に設けられるゲル層(20)と
を備え、
前記ゲルシートマスク(1)が、前記ゲル層(20)が設けられる前記支持層(10)の前記表面(10a)とは異なる前記支持層(10)の他方の表面(10b)に、前記支持層(10)の他方の表面(10b)を覆うように設けられる金属閉塞層(30)をさらに備え、
前記支持層(10)は、親水性であり、かつ、セルロース製の不織布シートからなり、
前記ゲルシートマスク(1)が中心線(X)を有し、不使用中、前記ゲルシートマスク(1)が、前記ゲル層(20)が前記支持層(10)によってサンドイッチ状にはさまれるように、前記中心線(X)を中心に半分に折りたたまれた状態にあり、
前記金属閉塞層(30)が、前記支持層(10)の他方の表面(10b)上に直接付着される金から形成された層である、ゲルシートマスク(1)。
【請求項2】
前記支持層が、それに塗布される前記ゲル組成物の少なくとも一部分を吸収することが可能である、請求項1に記載のゲルシートマスク(1)。
【請求項3】
前記ゲル組成物が、水性ゲル、水中油型ゲル、油中水型ゲル、およびシリコーン中水型ゲルからなる群から選択される、請求項1または2に記載のゲルシートマスク(1)。
【請求項4】
前記ゲル組成物がポリマーを備え、前記ポリマーが、カルボマー、多糖、ポリアクリレート、ポリエチレン、およびポリエステルグラフトポリアクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のゲルシートマスク(1)。
【請求項5】
前記ゲル組成物の被覆量が、1平方メートル当たり50から2000グラムである、請求項1から4のいずれか一項に記載のゲルシートマスク(1)。
【請求項6】
前記ゲル組成物の粘性が、6000センチポアズ以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載のゲルシートマスク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルシートマスクに関し、詳細には、金属閉塞層付きのスキンケア用フェイシャルゲルシートマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
シートの形態をとる化粧製品であるスキンケアマスクはよく知られている。そのようなシートマスクは、シートを作製するのに使用される材料に応じて、次のように3つのカテゴリーに大きく分けられ得る。
1. 繊維シートに化粧料配合物が含侵される不織布シートマスク
2. セルロースシート材料が微生物培養によって作製されるバイオセルロースシートマスク
3. シートが架橋ポリマーの水膨潤した網目から構成されるヒドロゲルシートマスク
【0003】
不織布シートマスクは、その低いコストのため、最も一般的な製品である。一方、皮膚に対する感覚、化粧用組成物を皮膚に送達することのできる能力、および皮膚への付着性はしばしば、不織布のタイプ、およびシート材料と使用される組成物との間の適合性に応じて決まる。
【0004】
バイオセルロースシートマスクは、シート自体が多量の水を含有しているので非常に好適な感覚を提供し、また皮膚への良好な付着性を呈する。しかし、そのようなシートマスクは、歩留まりの低いその生産プロセスのため、非常に高価である。
【0005】
コストの観点から、ヒドロゲルシートマスクは、不織布シートマスクとバイオセルロースシートマスクとの間に位置付けられ得る。シート中の非常に高い水含有量のため、この類のシートマスクは、その透過性、皮膚への良好な付着性、および水和特性に関して優れていることが知られている。
【0006】
ヒドロゲルシートは、水媒質中のポリマーの3D構造から構成されるが、製造の観点から、ヒドロゲル配合物を流延するためのライナが依然として必要であり、流延されたヒドロゲルシートを覆うための別の保護ライナも必要である。したがって、このヒドロゲルシートに化粧用組成物が含侵される場合、化粧用組成物の一部分がこれらのライナに付着し、化粧用組成物の別の部分は小袋内に滴ることになる。
【0007】
第2に、ヒドロゲルシートマスクは、多量の水および他の親水性成分からなるので、良好な即時水和の恩恵が得られるが、水和の持続的な恩恵および他の化粧上の恩恵は失われる。
【0008】
ヒドロゲル生産プロセスの別の制約は、ゲルシートを形成するために、使用されるポリマーが高温でゼリー状にされる必要があり、流延後に冷却される必要がある、というものであり、この加熱-冷却プロセスが、ヒドロゲルシートを高価にしている。
【0009】
ヒドロゲルの組成に応じて、シートマスクに十分な機械的強度をもたせるために、ヒドロゲル組成物がメッシュまたは不織布の薄いシートの周りに流延されることもある。
【0010】
本発明に関連する従来技術が、以下の公報に開示されている。
【0011】
特許文献1は、組成物を枠内に充填し、次いでそれを金属塩溶液中に浸漬することによる、ヒドロゲルシートを製造するための方法を提案している。この手順は、薄いシート材料の使用を回避することができる。しかし、マスクを作製するために組成物を個別の型内に充填するプロセスは、やはり歩留まりが低い。
【0012】
より多くの恩恵を皮膚に届けるべく、ヒドロゲルマスクの効果を改善するために、特許文献2は、相変化ヒドロゲル組成物を提案している。この特許によれば、使用の間、皮膚温度のため、ヒドロゲル組成物がより液化され得、したがって、より多くの組成物が皮膚に送達され得る。
【0013】
特許文献3は、クリーム被覆されたヒドロゲルマスクを提案している。より具体的には、ヒドロゲル表面の安定した乳剤に関して、クリームゲルマスク内で多層構造が水の薄層で被覆される。
【0014】
特許文献4は、親油性フィルムで被覆され、そのフィルムを硬化するための組成物が噴霧された、ヒドロゲルマスクについて記載している。そのようなフェイスマスクの使用の間、硬化された表面が支持体として提供され、硬化されていない他方の側が、美容用に顔に付着させるために提供される。
【0015】
上述した従来技術は、より多くの化粧上の恩恵のあるヒドロゲルマスクのための解決策を提供している。しかしそれらは、ヒドロゲルを作製する従来のプロセスを使用しており、またクリーム、特殊成分、または親油性フィルムを追加するさらなるプロセスを使用し、それが製品のコストをさらに増大させている。
【0016】
特許文献5は、2層シートマスクであって、これら2層の間に配合物を有する、2層シートマスクを提案している。2層シートは、さまざまな繊維材料製の第1の層と、ポリマーベースのフィルム製の第2の層とを備える。配合物は、O/W(水中油)型乳剤であるべきである。そのような2層シートマスクは、限られた閉塞特性を有し、マスクの張り付けの間、マスクの縁部が乾燥し始めることがある。特に、水性ゲルのみが使用されている場合、縁部でのこの乾燥問題がさらに一層深刻になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2008/072817号パンフレット
【文献】韓国特許出願公開第100864541号公報
【文献】中国特許第100864541号明細書
【文献】韓国特許出願公開第101372227号公報
【文献】日本国特許第5719130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記に鑑みて、本発明の一目的は、従来技術のシートマスクの限界を克服することのできる、新規なゲルシートマスクを提供することである。特に、本発明の一目的は、従来技術のシートマスクのフィット性の問題を克服することのできる、新規なゲルシートマスクを提供することである。本発明の別の目的は、その使用から受ける経験を高めることのできる新規なゲルシートマスク、特に、使用者に加温効果をもたらすことのできる新規なゲルシートマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために、本発明は、ゲルシートマスクであって、シート様支持層と、ゲル組成物からなり、支持層の一方の表面に設けられるゲル層とを含み、ゲルシートマスクが、ゲル層が設けられる支持層の表面とは異なる支持層の他方の表面に、支持層の他方の表面を覆うように設けられる金属閉塞層をさらに含む、ゲルシートマスクを提供する。単なるポリマーベースのフィルムに比べて、金属閉塞層が使用者の顔の輪郭により完全に沿うことにより、上記した構成をもつゲルシートマスクは、皮膚への良好な付着性をもって、煩わしさのない形でユーザの顔に容易に付着され得る。加えて、本発明によるゲルシートマスクはさらに、例えば、ゲル組成物の化粧上の恩恵を、金属閉塞層が存在するため高めることができる。さらに、金属閉塞層が存在するため、本発明によるゲルシートマスクは、その使用から受ける経験を高めることができ、特に、使用者に加温感覚をもたらすことができる。これは主として、(i)皮膚温度の低下を引き起こすゲル組成物の揮発が、金属閉塞層が存在するため抑制され、(ii)金属閉塞層が、その熱放射反射効果のため、使用者の顔から放出された熱を使用者の顔に戻すためであると考えられる。
【0020】
本明細書において使用される「マスク」という用語は、使用者の顔全体を覆うマスクのみならず、例えば、使用者の顔の上半分または下半分のみを覆うハーフマスクも含むことが意図される。さらに、例えばフェイシャルパッチも、本明細書において使用される「マスク」という用語に含まれる。
【0021】
本発明の好ましい一態様によれば、ゲルシートマスクは中心線を有し、保管や移送の間など、不使用の間、ゲルシートマスクは、ゲル層が支持層によってサンドイッチ状にはさまれるように、中心線を中心に半分に折りたたまれた状態にある。半分に折りたたまれているゲルシートマスクは、使用者によって使用の直前に広げられる。
【0022】
本発明の好ましい一態様によれば、金属閉塞層は、金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択された1つの材料製の箔からなってよい。あるいは、金属閉塞層は、プラスチックフィルムであってもよく、金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択された1つの材料が、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面上に堆積される。さらに、金属閉塞層は、支持層の他方の表面上に直接堆積される金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択された1つの材料の層であってもよい。
【0023】
本発明の好ましい一態様によれば、支持層は、それに塗布されるゲル組成物の少なくとも一部分を吸収することが可能であってよい。さらに、支持層は親水性であってよい。特に、支持層は、セルロース製の不織布シートからなってよい。
【0024】
本発明の好ましい一態様によれば、ゲル組成物は、水性ゲル、水中油型ゲル、油中水型ゲル、およびシリコーン中水型ゲルからなる群から選択されてよい。さらに、ゲル組成物は、ポリマーを含んでよく、ポリマーは、カルボマー、キサンタンガム、セルロース、多糖、ポリアクリレート、ポリエチレン、およびポリエステルグラフトポリアクリレートコポリマーからなる群から選択されてよい。
【0025】
本発明の好ましい一態様によれば、ゲル組成物の被覆量は、1平方メートル当たり50から2000グラム、好ましくは1平方メートル当たり400から1000グラムであってよい。さらに、ゲル組成物の粘性は、6000センチポアズ以上であってよい。
【0026】
次に、本発明の非限定的で代表的な実施形態について、下で添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】展開状態にある、本発明の一実施形態によるゲルシートマスクの平面図である。
図2図1の線Y‐Yに沿ったゲルシートマスクの断面図である。
図3】中心線Xを中心に半分に折りたたまれた状態にある図1のシートマスクを示す斜視図である。
図4】折りたたまれたゲルシートマスクの、図3の線Z‐Zに沿った断面図である。
図5】ゲルシートマスクを、図3に示すようにゲルシートマスクが半分に折りたたまれた状態で製造するのに使用されるシステムの一例を示す図である。
図6】小袋内に収容されたマスクのサンプルから小袋内に滴ったゲル組成物の重量を示すグラフである(実施例1)。
図7】被験者の顔に付着されたマスクのサンプルから被験者の顔上に移転した、ゲル組成物の重量を示すグラフである(実施例1)。
図8】皮膚水和値の測定の結果を示すグラフである(実施例1)。
図9】皮膚TEWL(経表皮水分損失)値の測定の結果を示すグラフである(実施例1)。
図10】パッチのサンプルを付着させたときの、被験者の腕の皮膚の温度変化を示すグラフである(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の一実施形態について、図1から図4を参照して説明する。以下の実施形態は、使用者の顔全体を覆うことのできるシートマスクである。しかし、本発明は、他の形態のシートマスクにも同様に適用され得る。
【0029】
図1は、展開状態、すなわち、使用の直前の状態にある、本発明の一実施形態によるゲルシートマスク1を示す。マスク1は、中心軸線Xを有し、これは、マスク1を2つの等しい部分に分割する左右対称軸線である。マスク1内では、使用者の目および口に対応する位置に、楕円形開口2および3が形成される。マスク1の使用者の鼻に対応する位置に、U字形スリット4が設けられ、このスリット4によって、マスク1内にフラップ5が形成される。使用者が顔にマスク1を付着させると、フラップ5が存在するため、使用者の鼻がマスク1の残りの表面から突き出され得る。さらに、使用者の顔に対するフィット性を高めるために、径方向に沿ったスリット6が、例えば、マスク1の周縁部上の4箇所に形成される。
【0030】
ゲルシートマスク1の、図1の線Y‐Yに沿った断面を示す図2から理解できるように、マスク1は次の、シート様支持層10と、ゲル組成物、特に化粧用組成物からなり、支持層10の一方の表面10aに設けられるゲル層20と、支持層10の、表面10aとは相対する他方の表面10bに、他方の表面10bを覆うように設けられる金属閉塞層30とを含む。図2では、各層の厚さが誇張されていることを理解されたい。
【0031】
本実施形態では、金属閉塞層30がアルミニウム製の箔からなり、金属閉塞層30は、適切な接着剤を使用して支持層10の表面10bに接合される。しかし、金や銀など、アルミニウム以外の金属材料製の箔が、金属閉塞層30として使用され得る。金属閉塞層30は、支持層10の表面10a上に被覆されたゲル組成物が、支持層10を通過して、反対表面10bから漏れるのを防ぐ働きをする。換言すれば、支持層10の表面10bは、金属閉塞層30が存在するため閉塞されている。
【0032】
別の実施形態では、金属閉塞層30が、プラスチックフィルム製であってよく、金、銀、またはアルミニウムなどの金属材料が、プラスチックフィルムの少なくとも一方の表面上に堆積される。この場合、金属材料が上に堆積されたプラスチックフィルムは、適切な接着剤を使用して支持層10の表面10bに接合されてよい。
【0033】
さらに別の実施形態では、金属閉塞層30が、支持層10の表面10b上に直接堆積される金、銀、またはアルミニウムなどの金属材料の層であってよい。
【0034】
支持層10は、ゲル層20と金属閉塞層30の両方を支持する働きをする。本実施形態では、支持層10として、例えば、天然または人工セルロース繊維製の不織布シートから製造された層、より具体的には、ビスコーススパンレース不織布シートから製造された層が使用される。したがって、支持層10は親水性であり、表面10aに塗布されるゲル組成物の少なくとも一部分を吸収することが可能である。支持層10は、金属閉塞層30と相まって閉塞シートFを形成する。
【0035】
本実施形態では、ゲル層20を形成するゲル組成物として、水性ゲル、水中油(O/W)型ゲル、油中水(W/O)型ゲル、またはシリコーン中水(W/Si)型ゲルクリームが使用される。特に、ゲル組成物は、カルボマー、キサンタンガム、セルロース、多糖、ポリアクリレート、ポリエチレン、およびポリエステルグラフトポリアクリレートコポリマーから選択されたポリマーを含んでよい。ゲル組成物の被覆量は、50から2000グラム/m2(gsm)、好ましくは、400から1000グラム/m2(gsm)である。さらに、ゲル組成物の粘性は、10000センチポアズ以上である。
【0036】
図3は、中心線Xを中心に半分に折りたたまれた状態にある図1のゲルシートマスク1を示す。下に説明するように、ゲルシートマスク1は、その製造の完了時に、図3に示す状態にある。ゲルシートマスク1の、図3の線Z‐Zに沿った断面を示す図4から理解できるように、使用の直前まで、ゲルシートマスク1は、ゲル層20が支持層10によって、またはより正確には閉塞シートFによってサンドイッチ状にはさまれるように、中心線Xを中心に半分に折りたたまれた状態で維持される。この折りたたまれた状態において、ゲルシートマスク1は、小袋、トレイ、または他の何らかのパッケージ(図示せず)内に収容され、次いで、移送および保管される。スペースを節約するために、ゲルシートマスク1はさらに半分に折りたたまれ、すなわちその当初のサイズの1/4に折りたたまれてよい。図4では、各層の厚さが誇張されていることを理解されたい。
【0037】
次に、ゲルシートマスクを製造するための方法の一例について、下で大まかに説明する。ゲルシートマスクの製造では、図5に示すシステムが使用され得る。このシステムは、上流側から下流側に、以下のもの、(i)支持層10および金属閉塞層30によって形成される閉塞シートFの供給源(図示せず)と、(ii)被覆ユニット、特にナイフコータ100と、(iii)折りたたみユニット110と、(iv)打ち抜きユニット120とを含む。このシステムの動作の間、最初に、閉塞シートFがナイフコータ100に、支持層側が上方に面した状態で供給される。閉塞シートFの供給方向は、最終的に得られることになるマスクの中心線に平行である。ナイフコータ100では、閉塞シートFの上部表面(支持層の表面)上に、ゲル組成物が均一に被覆される。次に、ゲル組成物が上に被覆された閉塞シートFが、折りたたみユニット110に供給され、閉塞シートFはそこで、ゲル組成物が閉塞シートFによってサンドイッチ状にはさまれるように、半分に折りたたまれる。その結果、ゲル組成物が上に被覆された閉塞シートFの幅が、折りたたみユニット110に供給される前のその幅Wの半分(W/2)になる。次に、ゲル組成物が上に被覆され、半分に折りたたまれた閉塞シートFが、打ち抜きユニット120に供給され、閉塞シートFはそこで、ダイ(図示せず)を使用してほぼ半円形形状に打ち抜かれる。同時に、半円形形状に打ち抜かれた閉塞シートF内に、使用者の目および口に対応する開口、ならびに鼻フラップを画定するスリットが形成される。その結果、図3に示すように半分に折りたたまれた状態にあり、かつゲル組成物が閉塞シートFの2つの隣接する半円形領域間にサンドイッチ状にはさまれた状態にあるゲルシートマスク1が得られる。
【0038】
[実施例1:ゲルシートマスクの水和効果およびTEWL効果]
支持層として、95重量%のセルロース繊維と5重量%のポリエチレン繊維とからなる不織布材料のシートを準備した。このシートの一方の表面上に、7μmの厚さを有するアルミニウム箔を金属閉塞層として付着させ、それにより閉塞シートを形成した。さらに、表1に示す成分の割合を有する2種のゲル組成物、すなわち組成物Aおよび組成物Bを準備した。組成物Aは水性ゲルであり、一方組成物BはO/W型乳剤である。組成物AおよびBを、別々の閉塞シートの一方の表面上に被覆した。両方の組成物について、被覆量および単位面積当たりの被覆量は、16.38グラムおよび540gsm(グラム/平方メートル)であった。このようにして、上で図1から図4をそれぞれ使用して説明したゲルシートマスクの、組成物Aまたは組成物Bを含む2つのサンプルを製作した。以後、これらのサンプルを、サンプルAおよびサンプルBと呼ぶ。
【0039】
【表1】
【0040】
上記したように製作したサンプルAおよびBを次いで、アルミニウムの小袋内に収容し、この状態で7日間保持した。7日後、小袋を開け、小袋内に滴ったゲル組成物の重量を計算した。その結果を図6のグラフに示す。
【0041】
次に、サンプルAおよびBを被験者の顔に付着させた。15分後、サンプルAおよびBを被験者の顔から取り外し、顔上に残存した、すなわち皮膚に移転したゲル組成物の重量を計算した。その結果を図7のグラフに示す。
【0042】
図6のグラフから、小袋内に滴ったゲル組成物の重量が、当初被覆されていたゲル組成物の重量のわずか3から5%であったことが理解できる。一方、図7のグラフから、サンプルAでは、顔上に残存するゲル組成物の重量が、当初被覆されていたゲル組成物の重量の約20%に達し、サンプルBでは、顔上に残存するゲル組成物の重量が、当初被覆されていたゲル組成物の重量の約26%に達したことが理解できる。
【0043】
次に、サンプルAおよびBを5cm×5cmに切断して、2つのパッチを準備した。以後、これらのパッチを、パッチAおよびパッチBと呼ぶ。パッチAおよびBを次いで、被験者の前腕に15分間付着させた。パッチAおよびBを付着させて1時間後および4時間後に、皮膚の水和値およびTEWL(経表皮水分損失)値を測定した。水和値の測定には、Corneometer(登録商標)を使用した。水和値の測定結果を図8に示し、TEWL値の測定結果を図9に示す。図8および図9のグラフでは、1時間後の測定結果および4時間後の測定結果が、2本の隣接するバーを用いて示してある。左側のバーが、1時間後の測定結果であり、右側のバーが、4時間後の測定結果である。対照用に、組成物AおよびBを前腕上に単に被覆したときの、皮膚の水和値およびTEWL値も測定した。組成物Aと組成物Bの両方について、被覆量は0.16グラムであった。対照の測定結果を、図8および図9のグラフに、A'およびB'によって示す。
【0044】
図8のグラフから、パッチAが、組成物Aの単なる塗布に比べて、皮膚水和を大いに増大させていることが理解できる。同じことがパッチBについても言える。パッチAおよびパッチBによって達成される水和効果は、パッチを付着させてから4時間経過した後でさえ、高レベルに維持されていたことに留意されたい。一方、図9から、パッチAの使用が、組成物Aの単なる塗布に比べて、皮膚バリア性を大いに高め、したがって、皮膚からの水分損失が大いに低減され得ることが理解できる。同じことがパッチBについても言える。さらに、水性ゲル組成物である組成物Aが塗布されたパッチAが、O/W型乳剤である組成物Bが塗布されたパッチBのバリア性と同等のバリア性を呈することに留意されたい。
【0045】
[実施例2:ゲルシートマスクの加温効果]
本発明のゲルシートマスクによって達成される加温効果を確認するために、相互に異なる構成をもつ4つのタイプのシートマスクP、Q、R、およびSを準備した。
【0046】
シートマスクP(比較例1)は、ビスコースおよびパルプ製のセルロース不織布からなる1層シートを含む。実施例1において使用した組成物Aを、このシートの一方の表面上に被覆した。シートマスクQ(比較例2)は、セルロース不織布の第1の層とPEフィルムの第2の層とからなる2層シートを含む。PEフィルムの厚さは5μmであった。実施例1において使用した組成物Aを、第1の層の、PEフィルムを設けた表面とは反対側の表面上に被覆した。シートマスクR(本発明の実施例1)は、セルロース材料の第1の層とアルミニウム箔の第2の層とからなる2層シートを含む。アルミニウム箔の厚さは7μmであった。実施例1において使用した組成物Aを、第1の層の、アルミニウム箔を設けた表面とは反対側の表面上に被覆した。シートマスクS(本発明の実施例2)は、セルロース材料の第1の層と、アルミニウムを上に気相成長させたPEフィルムの第2の層とからなる2層シートを含む。PEフィルムの厚さは5μmであった。実施例1において使用した組成物Aを、第1の層の、PEフィルムを上に設けた表面とは反対側の表面上に被覆した。
【0047】
これら4つのシートマスクP、Q、R、およびSを、被験者の前腕に付着させた。次に、シートマスクP、Q、R、およびSの下の皮膚温度を、30分間連続して測定した。その結果を図10のグラフに示す。
【0048】
図10から明らかなように、4つのシートマスクP、Q、R、およびSのいずれの場合も、皮膚温度が試験の開始の直後に低下し始め、次いで、皮膚温度およびシートマスク温度が約5分後に平衡に達した。金属閉塞層を含んでいないシートマスクPおよびQの場合、温度平衡に達した後、皮膚温度はほぼ一定のままであった。一方、金属閉塞層を含むシートマスクRおよびSの場合、温度平衡に達した後、皮膚温度は上昇し始めた。したがって、シートマスクRおよびSが被験者(したがってマスク使用者)に、シートマスクを付着させてから約5分経過した後に加温感覚をもたらすことができる、ということが理解できる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について、上で図面を参照して説明してきた。しかし、本発明はこれらの実施形態に限定されず、さまざまな修正および変更が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、上記した実施形態に加えられてよく、そのような修正および変更は、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ゲルシートマスク
2,3 楕円形開口
4 U字形スリット
5 フラップ
6 スリット
10 シート様支持層
10a 一方の表面
10b 他方の表面、反対表面
20 ゲル層
30 金属閉塞層
100 ナイフコータ
110 折りたたみユニット
120 打ち抜きユニット
A,B サンプル、パッチ
F 閉塞シート
P,Q,R,S シートマスク
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10