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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20240722BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240722BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240722BHJP
   B68G 7/05 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/90
B60R21/207
B68G7/05 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017142594
(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公開番号】P2019023019
(43)【公開日】2019-02-14
【審査請求日】2019-12-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 豪也
(72)【発明者】
【氏名】山岡 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 將司
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-58883(JP,A)
【文献】特開2013-86394(JP,A)
【文献】特開平8-112161(JP,A)
【文献】特開平9-132102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの上下方向に延びるサイドフレームと、側方から前記サイドフレームに向けて凹設される凹設部を有すると共に前記サイドフレームに支持されるクッション部材と、そのクッション部材を被覆する表皮と、前記クッション部材の凹設部に嵌め込まれると共に前記表皮から露出する態様で前記サイドフレームに固定されるサイドエアバッグと、を備え、前記クッション部材が、前記サイドエアバッグの背面側に位置する背面部を備える車両用シートにおいて、
前記サイドフレームの延設方向に延びる態様で前記背面部の内部に配設されると共に前記背面部よりも硬質な材料から形成される挿入体を備え、
前記挿入体と前記表皮とが離れており、
前記挿入体は、その少なくとも一部が前記シートバックの正面視において前記サイドエアバッグと重なる位置に配設されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記表皮は、前記凹設部の上端よりも下方であって前記凹設部の下端よりも上方に位置する開口を有するポケットとして構成されると共に前記背面部の背面側を被覆する前記表皮に固定されるバックポケットを備え、
前記挿入体は、その上端が前記バックポケットの前記開口よりも上方に位置すると共に下端が前記バックポケットの前記開口よりも下方に位置することを特徴とする請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記挿入体は、その上端が前記凹設部の上端よりも上方に位置すると共に下端が前記凹設部の下端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記サイドエアバッグは、前記凹設部の縁から前記背面部の背面側へ向けて張出す張出部を備え、
前記挿入体は、その少なくとも一部が前記シートバックの側面視において前記張出部と重なる位置に配設されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用シート。
【請求項5】
前記挿入体は、その少なくとも一部が前記シートバックの正面視において前記サイドフレームの幅方向内側の端部と重なる位置に配設されると共に前記サイドフレームよりも軟質な材料から形成されることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用シート。
【請求項6】
前記サイドフレームは、前記シートバックの幅方向に延びる第1面と、その第1面の幅方向外側の端部から前記シートバックの前方側へ向けて延びる第2面と、を備え、
前記挿入体は、前記第1面に沿う形状で上下に延びる本体部と、その本体部から前記第2面に沿う形状で前方側に突出すると共に前記凹設部の上方側または下方側の少なくとも一方に形成される突出部とを備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の車両用シート。
【請求項7】
前記突出部は、前記凹設部の上方側および下方側の双方に一対が形成されることを特徴とする請求項記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、意匠性を向上させることができる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートバックの側方に設けられるサイドエアバッグをシートバックのサイドフレームに固定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、パッド(クッション部材)及び表皮が存在しない領域をシートバックに形成し、その領域に嵌め込まれたエアバッグユニットをシートバックのサイドフレームに固定する技術(表皮から露出する外付け式のサイドエアバッグ)が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-132102号公報(例えば、段落0026,0030、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、シートバックの後方側に表皮が引っ張られると、サイドエアバッグの背面側に位置するクッション部材がシートバックの後方側に向けて(表皮の変位に追従して)変形する。よって、サイドエアバッグと、そのサイドエアバッグの背面側のクッション部材を覆う表皮との間に隙間が生じやすいため、車両用シートの意匠性が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、意匠性を向上させることができる車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の車両用シートは、シートバックの上下方向に延びるサイドフレームと、側方から前記サイドフレームに向けて凹設される凹設部を有すると共に前記サイドフレームに支持されるクッション部材と、そのクッション部材を被覆する表皮と、前記クッション部材の凹設部に嵌め込まれると共に前記表皮から露出する態様で前記サイドフレームに固定されるサイドエアバッグと、を備え、前記クッション部材が、前記サイドエアバッグの背面側に位置する背面部を備えるものであり、前記サイドフレームの延設方向に延びる態様で前記背面部の内部に配設されると共に前記背面部よりも硬質な材料から形成される挿入体を備え、前記挿入体と前記表皮とが離れており、前記挿入体は、その少なくとも一部が前記シートバックの正面視において前記サイドエアバッグと重なる位置に配設される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の車両用シートによれば、背面部の内部に配設されると共に背面部よりも硬質な材料から形成される挿入体を備えるので、サイドエアバッグの背面側に位置する背面部の剛性を高めることができる。これにより、背面部を被覆する表皮がシートバックの後方側に引っ張られた場合に、シートバックの後方側への背面部の変形(表皮の変位に追従して変形すること)を抑制できる。
【0008】
また、挿入体がサイドフレームの延設方向に延びる態様で配設されるので、例えば、背面部を被覆する表皮がシートバックの後方側に引っ張られた場合に、シートバックの側面視において背面部が屈曲するように変形することを抑制できる。このように、背面部の変形を抑制することにより、背面部を覆う表皮とサイドエアバッグとの間に隙間が生じることを抑制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
また、挿入体は、その少なくとも一部がシートバックの正面視においてサイドエアバッグと重なる位置に配設されるので、サイドエアバッグに近接した位置における背面部の剛性を高めることができる。よって、背面部を被覆する表皮とサイドエアバッグとの間に隙間が生じることをより効果的に抑制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、請求項1記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。表皮は、凹設部の上端よりも下方であって凹設部の下端よりも上方に位置する開口を有するポケットとして構成されると共に背面部の背面側を被覆する表皮に固定されるバックポケットを備え、挿入体は、その上端がバックポケットの開口よりも上方に位置すると共に下端がバックポケットの開口よりも下方に位置するので、バックポケットの開口がシートバックの後方側に引っ張られた場合に、背面部がシートバックの後方側に変形することを抑制できる。即ち、背面部を被覆する表皮にバックポケットが固定される場合であっても、背面部を被覆する表皮とサイドエアバッグとの間に隙間が生じることを抑制できる。よって、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0010】
請求項3記載の車両用シートによれば、請求項1又は2に記載の車両用シートの奏する効果に加え、挿入体は、その上端が凹設部の上端よりも上方に位置すると共に下端が凹設部の下端よりも下方に位置するので、サイドエアバッグの背面側に位置する背面部全体の剛性を高めることができる。よって、サイドエアバッグの背面側の領域全体において、背面部を被覆する表皮とサイドエアバッグとの間に隙間が生じることを抑制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0011】
【0012】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項1から3のいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。サイドエアバッグは、凹設部の縁から背面部の背面側へ向けて張出す張出部を備え、挿入体は、その少なくとも一部がシートバックの側面視において張出部と重なる位置に配設される。これにより、背面部がシートバックの幅方向外側へ変位するように表皮が引っ張られた場合に、挿入体によって剛性が高められた背面部を、表皮を介して張出部に当接させることができる。よって、背面部が幅方向外側に位置ずれすることを張出部によって規制できるので、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0013】
【0014】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項1からのいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、挿入体は、その少なくとも一部がシートバックの正面視においてサイドフレームの幅方向内側の端部と重なる位置に配設されるので、サイドフレームの幅方向内側の端部(エッジ部分)を、シートバックの後方側から挿入体によって覆うことができる。この場合、挿入体がサイドフレームよりも軟質な材料から形成されるので、例えば、車両衝突時に乗員がサイドフレームのエッジ部分に向けて衝突しても、その衝撃を挿入体によって緩和することができる。よって、サイドフレームのエッジ部分を被覆する部材を別途設けることを不要にできるので、部品点数が低減し、車両用シートの製品コストを低減できるという効果がある。
【0015】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項1からのいずれかに記載の車両用シートの奏する効果に加え、次の効果を奏する。サイドフレームは、シートバックの幅方向に延びる第1面と、その第1面の幅方向外側の端部からシートバックの前方側へ向けて延びる第2面と、を備える。挿入体は、第1面に沿う形状で上下に延びる本体部と、その本体部から第2面に沿う形状で前方側に突出すると共に凹設部の上方側または下方側の少なくとも一方に形成される突出部とを備える。
【0016】
これにより、背面部がシートバックの幅方向内側に変形するように表皮が引っ張られた場合に、突出部によって剛性が高められたクッション部材をサイドフレームの第2面に当接させることができる。更に、背面部がサイドフレーム周りに回転するように表皮が引っ張られた場合に、本体部および突出部によって剛性が高められたクッション部材(背面部)と、サイドフレームの第1面および第2面との引掛りにより、サイドフレーム周りの背面部の回転を規制することができる。即ち、サイドエアバッグに対する背面部の相対変位をサイドフレームによって規制することができるので、背面部を被覆する表皮とサイドエアバッグとの間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。よって、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【0017】
請求項記載の車両用シートによれば、請求項記載の車両用シートの奏する効果に加え、突出部は、凹設部の上方側および下方側の双方に一対が形成されるので、背面部がシートバックの上下方向に変位するように表皮が引っ張られた場合に、突出部によって剛性が高められたクッション部材を、表皮を介してサイドエアバッグに当接させることができる。これにより、シートバックの上下方向における背面部のサイドエアバッグに対する相対変位を規制できるので、サイドエアバッグの上端または下端と、クッション部材を被覆する表皮との間に隙間が生じることを抑制できる。よって、車両用シートの意匠性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態における車両用シートの斜視図であり、(b)は、クッション部材の部分拡大側面図である。
図2】車両用シートの部分拡大断面図である。
図3】(a)は、第2実施形態における挿入体の斜視図であり、(b)は、クッション部材の部分拡大側面図である。
図4】車両用シートの部分拡大断面図である。
図5】車両用シートの部分拡大断面図である。
図6】第3実施形態におけるクッション部材の部分拡大側面図である。
図7】車両用シートの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態における車両用シート1の斜視図であり、図1(b)は、クッション部材31の部分拡大側面図である。なお、図1(b)では、クッション部材31の内部に配設される挿入体33を破線で図示している。
【0020】
図1に示すように、車両用シート1は、車両(例えば、自動車)に搭載されるシートであり、座面を形成するシートクッション2と、そのシートクッション2の後端に接続されると共に背もたれを形成するシートバック3と、そのシートバック3の上端に配設されるヘッドレスト4と、シートバック3の幅方向外側の側面に固定されるサイドエアバッグ5と、シートバック3の背面側に配設されるバックポケット6と、を備える。なお、シートバック3の幅方向における側方側を「幅方向外側」、中央側を「幅方向内側」と定義し、以下の説明においても同様とする。
【0021】
シートバック3は、その骨格を形成すると共にシートバック3の幅方向に所定間隔を隔てて対向配置される一対のサイドフレーム30と(図2参照)、それら一対のサイドフレーム30の上端どうしを連結するアッパーフレームと(図示せず)、それらサイドフレーム30及びアッパーフレームに支持されるクッション部材31と、そのクッション部材31を被覆する表皮32と、クッション部材31の内部に配設されると共にクッション部材31よりも硬質な材料から形成される挿入体33と、を備える。
【0022】
クッション部材31は、その幅方向外側の側面(図1(b)の紙面垂直方向手前側の面)に開口形成される開口部31aと、クッション部材31のうちの開口部31aの背面側(図1(b)の左側)に位置する部位として構成される背面部31bと、を備え、弾力性を有する発泡樹脂(例えば、軟質ポリウレタンフォーム)から形成される。
【0023】
開口部31aは、シートバック3の幅方向に貫通する貫通孔として形成され、この開口部31aによって形成される空間にサイドエアバッグ5が嵌め込まれる。よって、背面部31bは、サイドエアバッグ5の背面側(後方側)に配設される。
【0024】
サイドエアバッグ5は、車両の衝突時に展開することで乗員を保護するエアバッグ(図示せず)と、そのエアバッグを膨張させるインフレータ(図示せず)と、それらエアバッグ及びインフレータを内蔵すると共に幅方向外側が開口する箱状に形成されるケース50と、そのケース50の開口を閉塞すると共にエアバッグの膨張圧によって開放する蓋部51と、を備えるエアバッグ装置である。
【0025】
表皮32は、ファブリックや合成皮革または皮革等から構成される軟性の部材であり、この表皮32のうちのクッション部材31(背面部31b)の背面側を被覆する部位にバックポケット6が固定される。バックポケット6は、その開口60(ポケットの口)が開口部31aの上端よりも下方(図1(a)の下側)であって開口部31aの下端よりも上方(図1(a)の上側)に位置するポケットとして構成される。
【0026】
次いで、図2を参照して、車両用シート1の詳細構成について説明する。図2は、車両用シート1の部分拡大断面図である。なお、図2では、図1(b)のII-II線に対応する位置における車両用シート1の断面を図示している。また、図2では、車両用シート1の構造を模式的に図示すると共に、サイドエアバッグ5の内部構造の図示を省略している。
【0027】
図2に示すように、サイドフレーム30は、シートバック3の幅方向(図2の左右方向)に延びる第1フレーム30aと、その第1フレーム30aの幅方向外側(図2の右側)の端部から前方側(図2の上側)へ延びる第2フレーム30bと、を備え、シートバック3の上下方向(高さ方向)(図2の紙面垂直方向)に延びるフレームとして構成される。
【0028】
第1フレーム30aは、その後方側(図2の下側)の背面として構成される第1面30a1を備え、その第1面30a1の後方側に背面部31bが配設される。第1面30a1と背面部31bとの間には、板状のプレスフェルトPが配設される。プレスフェルトPは、クッション部材31よりも硬質であって、サイドフレーム30(第1フレーム30a)よりも軟質の材料(例えば、ショアA硬度が50以上のフェルト)から形成される。
【0029】
プレスフェルトPの幅方向内側の端部は、第1フレーム30aよりも幅方向内側に配設され、第1フレーム30aの幅方向内側の端部(図2の左側のエッジ部分)がプレスフェルトPによって後方側から覆われる。これにより、乗員が第1フレーム30aのエッジ部分に向けて衝突しても、乗員に加わる衝撃をプレスフェルトPによって緩和することができる。
【0030】
第2フレーム30bは、その幅方向外側の面として構成される第2面30b1を備え、その第2面30b1に向けて開口部31aが貫通して形成される。
【0031】
ここで、表皮32のうち、開口部31aの内周面と、その開口部31aに露出する第2フレーム30bの第2面30b1とを被覆する部位を内側表皮32aと定義する。開口部31aは、その内周がケース50の外形形状よりも若干大きい寸法で開口形成され、開口部31aに内側表皮32aが被覆された状態でケース50が開口部31aに嵌め込まれる。
【0032】
即ち、サイドエアバッグ5は、表皮32から露出する態様で固定される外付け式のエアバッグとして構成され、そのサイドエアバッグ5のケース50が表皮32(内側表皮32a)を介して第2フレーム30bにボルトB及びナットNによって固定される。
【0033】
ここで、例えば、内側表皮32aを省略し、表皮32の端末をサイドエアバッグ5(ケース50又は蓋部51)に直接接続する構成や、サイドエアバッグ5のケース50の外形形状に沿う形状の箱体(例えば、硬質の樹脂材料や金属材料から形成されるもの)を第2フレーム30bに固定し、その箱体に表皮32の端末を接続する構成を採用することも可能である。
【0034】
しかしながら、前者の構成では、サイドエアバッグ5を開口部31aに挿入した後に表皮32をサイドエアバッグ5に接続する(若しくは、サイドエアバッグ5に表皮32を接続した後にサイドエアバッグ5を開口部31aに挿入する)必要があるため、サイドエアバッグ5及び表皮32の組み付けに手間を要する。また、後者の構成では、箱体を用いる必要があるため、部品点数が増大する。
【0035】
これに対して、本実施形態では、開口部31aの内周面と、第2フレーム30bの第2面30b1とを被覆する内側表皮32aを備えることにより、表皮32の端末をサイドエアバッグ5に直接接続することを不要にできる。また、表皮32の端末を固定するための部材(例えば、上述した箱体)を省略できるので、部品点数を低減できる。
【0036】
この場合、例えば、背面部31bを被覆する表皮32が乗員によって後方側に引っ張られることがある。特に、本実施形態では、背面部31bを被覆する表皮32にバックポケット6が固定されるため、背面部31bを覆う表皮32がバックポケット6の開口60を起点にしてシートバック3の後方側に引っ張られる機会が増加する。表皮32が後方側に引っ張られると、表皮32(内側表皮32a)の変位に追従して背面部31bがシートバック3の後方側に変形する(例えば、クッション部材31の側面視(図1(b)参照)において、背面部31bがくの字に屈曲するように変形する)恐れがあるが、本実施形態では、かかる変形が挿入体33によって規制される。
【0037】
挿入体33は、断面円形の金属性のワイヤとして構成される。この挿入体33は、クッション部材31の金型成形時にクッション部材31と一体成形され、シートバック3の上下方向(サイドフレーム30の延設方向)に延びる態様で背面部31bの内部に配設される。
【0038】
即ち、金属製のワイヤから構成される挿入体33を背面部31bの内部に配設することにより、サイドエアバッグ5の後方側に位置する背面部31bの剛性を高めることができる。よって、背面部31bを被覆する表皮32が後方側に引っ張られた場合に、背面部31bが後方側に(表皮32の変位に追従して)変形することを抑制できる。
【0039】
また、挿入体33がシートバック3の上下方向に延びる態様で配設されるので、上下方向における背面部31bの剛性を高めることができる。よって、背面部31bを被覆する表皮32や、その表皮32に固定されるバックポケット6が後方側に引っ張られた場合に、シートバック3の側面視において背面部31bが後方側に屈曲するように変形することを抑制できる。
【0040】
このように、サイドエアバッグ5の後方側に位置する背面部31bの剛性を高め、その変形を抑制することにより、背面部31bを覆う表皮32とサイドエアバッグ5(蓋部51の縁)との間に隙間が生じることを抑制できる。よって、車両用シート1の意匠性が向上する。
【0041】
特に、本実施形態では、シートバック3の正面視において、挿入体33の全体がサイドエアバッグ5(ケース50)と重なる位置に配設されるので、蓋部51に近接した位置における背面部31bの剛性を高めることができる。即ち、クッション部材31の幅方向外側の端部の剛性を高めることにより、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0042】
更に、シートバック3の正面視において、挿入体33の全体をサイドエアバッグ5(ケース50)と重なる位置に配設し、サイドエアバッグ5の後方側に位置する背面部31bの剛性を高めることにより、サイドエアバッグ5の前方側にエアバッグが射出された際の反力の一部を背面部31b(挿入体33によって剛性が高められたもの)で支持することができる。即ち、エアバッグの射出時の反力をサイドエアバッグ5の後方側から効率よく支持することができるので、例えば、サイドフレーム30に必要以上の強度を持たせることや、ボルトB及びナットNを必要以上の個数に設定することを抑制できる。よって、シートバック3の設計の自由度を高めることができる。
【0043】
また、シートバック3の上下方向において、挿入体33の寸法が開口部31aの寸法よりも長く形成され、挿入体33の上端が開口部31aの上端よりも上方に位置すると共に下端が開口部31aの下端よりも下方に位置するので(図1(b)参照)、サイドエアバッグ5の後方側に位置する背面部31bの全体の剛性を高めることができる。よって、サイドエアバッグ5の後方側の領域全体において、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0044】
また、挿入体33の上端がバックポケット6の開口60よりも上方に位置し、挿入体33の下端がバックポケット6の開口60よりも下方に位置するので、背面部31bの背面側にバックポケット6が配設される場合であっても、背面部31bを覆う表皮32とサイドエアバッグ5(蓋部51の縁)との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0045】
ここで、例えば、背面部31bの変形を抑制するために、背面部31bの前後方向における厚みを厚く形成することで剛性(断面係数)を高めることも可能である。即ち、例えば、背面部31bの幅方向外側の端部の厚みを厚くする(前後方向における厚みを所定の厚みに設定し、背面部31bを断面矩形状に形成する)構成を採用することも可能である。しかしながら、かかる構成では、背面部31bの厚みが増加する分、シートバック3の前後方向におけるスペースを効率よく使用することができない。
【0046】
これに対して、本実施形態では、背面部31bの幅方向外側の端部に挿入体33が挿入されるので、背面部31bの幅方向外側の端部を比較的薄く形成しつつ、背面部31bの剛性を確保できる(背面部31bの変形を抑制できる)。よって、背面部31bを覆う表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることを抑制しつつ、シートバック3の前後方向におけるスペースを効率よく利用することができる。
【0047】
更に、背面部31bの幅方向外側の端部を比較的薄く形成することができるので、幅方向中央側から幅方向外側にかけて背面部31bの厚みを徐々に薄く形成することができる。よって、背面部31bの背面を湾曲面として構成することができるので、車両用シート1の意匠性を向上させることができる。
【0048】
また、例えば、サイドエアバッグ5(蓋部51)を取り囲む領域の全域において、表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることを抑制するために、サイドエアバッグ5の後方側、上方側、下方側、及び、前方側のそれぞれに位置するクッション部材31の内部に挿入体33を挿入する構成を採用することも可能である。
【0049】
しかしながら、かかる構成では、サイドエアバッグ5の前方側(座面側)に位置するクッション部材31の剛性が高まるため、座り心地が低下する恐れがある。また、この問題点を解決するために、サイドエアバッグ5の上方側、下方側、後方側のそれぞれに位置するクッション部材31の内部に挿入体33を挿入する(例えば、側面視において挿入体33がコの字状に形成される)構成を採用することも可能である。しかしながら、この構成では、挿入体33がクッション部材31の内部で3次元的に配設されるため、クッション部材31の成形時に挿入体33を金型にセットすることが困難となる。
【0050】
これに対して、本実施形態では、挿入体33が直線状のワイヤとして構成され、サイドエアバッグ5の後方側のみに配設されるので、サイドエアバッグ5の正面側(座面側)のクッション部材31の剛性が高まることを抑制し、車両用シート1の座り心地を向上させることができる。また、クッション部材31の成形時に挿入体33を金型に容易にセットすることができる。
【0051】
ここで、背面部31bは、後方側に変形するだけではなく、幅方向に変形する恐れもある。これに対し、本実施形態では、ケース50(開口部31aの開口部分)の縁から後方側に向けて蓋部51が張出して形成されるので、背面部31bの幅方向外側への変位を蓋部51によって規制することができる。
【0052】
即ち、挿入体33が蓋部51の後端よりも前方側に配設され、シートバック3の側面視において、挿入体33の全体が蓋部51と重なる位置に配設されるので、背面部31bが幅方向外側へ変位するように表皮32が引っ張られた場合に、挿入体33によって剛性が高められた背面部31bを、表皮32を介して蓋部51に当接させることができる。よって、背面部31bが幅方向外側に位置ずれすることを蓋部51によって規制できるので、車両用シート1の意匠性が向上する。
【0053】
また、ケース50の縁から後方側にかけて蓋部51が幅方向内側へ向けて湾曲する形状に形成されるので、背面部31bが表皮32を介して蓋部51に当接した場合に、背面部31bを蓋部51の湾曲面に沿ってケース50側(図2の上側)に変位させることができる。よって、背面部31bが蓋部51の後端を乗り越えるように変形することを抑制できるので、背面部31bが幅方向外側に位置ずれすることをより効果的に抑制できる。
【0054】
次いで、図3を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、挿入体33が金属製のワイヤとして構成される場合を説明したが、第2実施形態では、挿入体233が樹脂材料からなる成形体として構成される場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
図3(a)は、第2実施形態における挿入体233の斜視図であり、図3(b)は、クッション部材31の部分拡大側面図である。なお、図3(b)では、クッション部材31の内部に配設される挿入体233を破線で図示している。
【0056】
図3に示すように、挿入体233は、シートバック203の上下方向(図3(b)の上下方向)に延びる本体部233aと、その本体部233aの幅方向外側(図3(b)の紙面垂直方向手前側)の端部であって本体部233aの上下の両端から前方側(図3(b)の右側)に突出する突出部233bと、を備え、樹脂材料からなる成形体(本実施形態では、ビーズ法発泡ポリプロピレンからなる発泡材)から構成される。挿入体233は、クッション部材31の金型成形時にクッション部材31と一体成形され、背面部31bの内部に配設される。
【0057】
本体部233aは、シートバック203の上下方向における寸法が開口部31aの寸法よりも長く形成される。また、本体部233aは、その上端が開口部31aの上端よりも上方に位置すると共に下端が開口部31aの下端よりも下方に位置する(図1(b)参照)。よって、本体部233aの上端は、バックポケット6の開口60よりも上方に位置し、本体部233aの下端は、バックポケット6の開口60よりも下方に位置して配設される(バックポケット6については、図1(a)参照)。
【0058】
これにより、第1実施形態と同様に、開口部31a(サイドエアバッグ5)の後方側(図3(b)の左側)の全域において、背面部31bの上下方向における剛性を本体部233aによって高めることができる。よって、背面部31bを覆う表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0059】
次いで、図4及び図5を参照して、車両用シート201の詳細構成について説明する。図4及び図5は、車両用シート201の部分拡大断面図である。なお、図4では、図3(b)のIV-IV線に対応する位置における車両用シート201の断面を図示し、図5では、図3(b)のV-V線に対応する位置における車両用シート201の断面を図示している。また、図4及び図5では、車両用シート201の構造を模式的に図示すると共に、サイドエアバッグ5の内部構造の図示を省略している。
【0060】
図4に示すように、本体部233aは、その幅方向(図4の左右方向)内側の端部が第2フレーム30bよりも幅方向内側に配設され、第1フレーム30aの幅方向内側の端部(図4の左側のエッジ部分)が本体部233aによって後方側から覆われる。
【0061】
この場合、挿入体233(本体部233a)は、ビーズ法発泡ポリプロピレンからなる発泡材として構成され、第1フレーム30aよりも軟質な材料から形成されるので、乗員が第1フレーム30aに向けて衝突しても、乗員に加わる衝撃を挿入体233(本体部233a)によって緩和することができる。即ち、第1フレーム30aのエッジ部分を被覆する部材としての機能を挿入体233に兼用させることにより、第1実施形態で説明したプレスフェルトPを省略することができる。よって、部品点数が低減するので、車両用シート201の製品コストを低減できる。
【0062】
本体部233aの幅方向外側の端部は、サイドエアバッグ5(ケース50)の幅方向中央よりも外側に位置するので、蓋部51に近接した位置における背面部31bの剛性を高めることができる。よって、第1実施形態の挿入体33と同様に、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できると共に、サイドエアバッグ5のエアバッグが射出された際の反力の一部を背面部31bで支持することができる。
【0063】
また、本体部233aの幅方向外側の端部が背面部31bの幅方向外側の端部に位置するので、背面部31bの幅方向外側の端部を比較的薄く形成しつつ、背面部31bの剛性を確保できる(背面部31bの変形を抑制できる)。更に、背面部31bの幅方向外側の端部を比較的薄く形成することができるので、背面部31bの背面を湾曲面として構成することができる。
【0064】
また、本体部233aの前端(図4の上側の端部)が蓋部51の後端(図4の下側の端部)よりも前方側に位置し、シートバック3の側面視において本体部233aの一部が蓋部51と重なる位置に配設されるので、背面部31bが幅方向外側に位置ずれすることを蓋部51によって規制できる。
【0065】
図5に示すように、本体部233aの前面(図5の上側の面)は、第1面30a1に沿う形状に形成され、突出部233bの幅方向(図5の左右方向)内側の面は、第2面30b1に沿う形状に形成される。これにより、背面部31bが幅方向内側に変形するように表皮32が引っ張られた場合に、突出部233bによって剛性が高められたクッション部材31(開口部31aの上方および下方に位置する部位)を第2面30b1に当接させることができる。よって、背面部31bの幅方向内側への変位を規制できるので、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0066】
更に、背面部31bがサイドフレーム30周りに回転するように表皮32が引っ張られた場合に、本体部233aによって剛性が高められた背面部31bを第1面30a1に当接させると共に、突出部233bによって剛性が高められたクッション部材31(開口部31aの上方および下方に位置する部位)を第2面30b1に当接させることができる。
【0067】
これにより、挿入体233によって剛性が高められたクッション部材31(背面部31b)とサイドフレーム30との引掛りにより、サイドフレーム30周りの背面部31bの回転を規制することができる。よって、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0068】
また、第2面30b1の後端(図5の下側の端部)(第1面30a1との連設部分)には、幅方向外側に向けて凸形状に湾曲する湾曲面が形成され、突出部233bには、第2面30b1の湾曲面と対応する位置に形成されると共に幅方向外側に向けて湾曲する内面233b1を備えるので、第2面30b1の湾曲面に内面233b1を係合させることができる。
【0069】
これにより、サイドエアバッグ5に対する背面部31bの相対変位(例えば、背面部31bの後方側への変位)を、第2面30b1の湾曲面と内面233b1との係合によって規制することができる。よって、背面部31bを被覆する表皮32とサイドエアバッグ5との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0070】
また、突出部233bは、開口部31a(サイドエアバッグ5)の上方側および下方側の双方に一対が形成されるので(図3参照)、背面部31bが上下方向に変位するように表皮32が引っ張られた場合に、突出部233bによって剛性が高められたクッション部材31(開口部31aの上方および下方に位置する部位)を、内側表皮32aを介してケース50に当接させることができる。これにより、上下方向における背面部31bのサイドエアバッグ5に対する相対変位を規制できるので、サイドエアバッグ5の上端または下端と、クッション部材31(開口部31aの上方および下方に位置する部位)を被覆する表皮32との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0071】
更に、突出部233bが開口部31aの上方側および下方側の双方に一対に形成され、突出部233bの前端が第2フレーム30bの前端よりも後方側に位置するので、サイドエアバッグ5の前方側(座面側)のクッション部材31の剛性が高まることを抑制し、車両用シート201の座り心地を向上させることができる。
【0072】
次いで、図6を参照して、第3実施形態について説明する。第1実施形態では、挿入体33の全体が背面部31bの内部に配設される場合を説明したが、第2実施形態では、挿入体333の一部が背面部31bから露出され、その露出部分がサイドエアバッグ305に固定される場合について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
図6は、第3実施形態におけるクッション部材331の部分拡大側面図である。なお、図6では、クッション部材331に形成される切欠き部31cと、クッション部材331の内部に配設される挿入体333とを破線で図示している。
【0074】
図6に示すように、クッション部材331は、背面部31bの前面(図6の右側の面)の一部を切欠いて形成される切欠き部31cを備える。切欠き部31cは、開口部31aが形成される領域において、上下に所定間隔を隔てて一対が形成される。それら一対の切欠き部31cが形成されることにより、挿入体333の一部が切欠き部31cを介して開口部31a側に露出される。
【0075】
挿入体333は、断面円形の金属製のワイヤとして構成され、その上下の両端から前方側に向けて屈曲する一対の屈曲部333aを備える以外は、第1実施形態の挿入体33と同様の構成とされる。一対の屈曲部333aは、開口部31a(サイドエアバッグ305)の上方側および下方側の双方に一対が形成される。よって、背面部31bの幅方向内側(図6の紙面垂直方向奥側)への変位を第2フレーム30bによって規制できる点と、背面部31bの上下方向への変位をサイドエアバッグ5のケース50によって規制できる点とで第2実施形態の突出部233bと同様の効果を奏する。
【0076】
次いで、図7を参照して、車両用シート301の詳細構成について説明する。図7は、車両用シート301の部分拡大断面図である。なお、図7では、図6のVII-VII線に対応する位置における車両用シート301の断面を図示している。また、図7では、車両用シート301の構造を模式的に図示すると共に、サイドエアバッグ305の内部構造の図示を省略している。
【0077】
図7に示すように、表皮332は、切欠き部31cに対応する位置に形成されると共に表皮32(内側表皮32a)を貫通して形成される貫通孔32bを備え、その貫通孔32bから挿入体333が露出される。
【0078】
サイドエアバッグ305は、ケース50の背面(図7の下側の面)から後方側に向けて突出する一対の係合部352を備える。一対の係合部352は、一対の切欠き部31c(貫通孔32b)と対応する位置にそれぞれ形成されると共に切欠き部31c(貫通孔32b)の上下方向における寸法よりも若干短い寸法で形成される。よって、切欠き部31c(貫通孔32b)を通して背面部31b側に係合部352を挿入することができる。
【0079】
この場合、係合部352は、挿入体333の外径よりも若干小さい内径を有する断面C字状のフックとして構成され、その切り割り部分(断面C字状の開口部分)の対向間隔が挿入体333の直径よりも短い寸法に設定されると共に、かかる切り割り部分を後方側に向けた姿勢で配設される。よって、係合部352に向けて挿入体333を押し付けることにより、係合部352が挿入体333の外周面に沿って弾性的に変形し、挿入体333を係合部352に嵌め込むことができる。
【0080】
これにより、サイドエアバッグ305に挿入体333を固定することができるので、サイドエアバッグ305に対する挿入体333の相対変位を規制することができる。よって、背面部31bが幅方向内側や後方側に変形することをより確実に抑制できるので、背面部31bを被覆する表皮332とサイドエアバッグ305との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0081】
また、係合部352の切り割り部分が後方側に向けられるので、ケース50を第2フレーム30bに固定した後に、背面部31bをケース50に押し付けることで挿入体333を係合部352に係合させることができる。よって、サイドエアバッグ305に背面部31bが固定される構成であっても、サイドエアバッグ305を容易に組み付けることができる。
【0082】
ここで、挿入体333に対する係合部352の係合が、挿入体333を被覆する背面部31bによって妨げられる場合には、例えば、係合部352のフックの形状を、側面視において挿入体333側に尖った形状(三角形状)に形成すれば良い。これにより、背面部31bに係合部352が食い込みやすくなるので、挿入体333の外周が背面部31bに被覆される場合であっても、係合部352を挿入体333に係合させやすくできる。
【0083】
また、開口部31a(サイドエアバッグ5)の上方側および下方側の双方に屈曲部333aが形成されるので(図6参照)、係合部352に沿って挿入体333が上下に変位しようとした場合に、屈曲部333aによって剛性が高められたクッション部材331(開口部31aの上方および下方に位置する部位)と、ケース50とを表皮32(内側表皮32a)を介して当接させることができる。
【0084】
これにより、上下方向(図7の紙面垂直方向)における背面部31bのサイドエアバッグ5に対する相対変位を、剛性が高められたクッション部材31(開口部31aの上方および下方に位置する部位)とケース50との引掛りによって規制することができる。よって、背面部31bを被覆する表皮332とサイドエアバッグ305との間に隙間が生じることをより効果的に抑制できる。
【0085】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0086】
上記各実施形態では、挿入体33,333が金属製のワイヤとして構成され、挿入体233がビーズ法発泡ポリプロピレンからなる発泡材として構成される場合を説明したが、挿入体33,233,333を構成する材質は限定されない。即ち、挿入体33,233,333は、少なくともクッション部材31,331よりも硬質の材料から形成すれば良く、例えば、ショアA硬さが50以上の樹脂材料から形成すれば良い。また、挿入体33,233,333をウレタンチップからなるスポンジ状の材料から形成しても良い。
【0087】
また、第2実施形態のように、第1フレーム30aの幅方向内側の端部を挿入体233によって被覆してプレスフェルトPを省略する構成の場合には、挿入体233を少なくとも第1フレーム30aよりも軟質の樹脂材料から形成すれば良い。また、第3実施形態のように、係合部352と挿入体333とを係合させる構成の場合には、挿入体333を硬質な樹脂材料(例えば、ロックウェルR硬さが80~100の樹脂材料)から構成しても良い。
【0088】
上記各実施形態では、開口部31aがクッション部材31,331の側方から第2フレーム30bに向けて貫通する貫通孔として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、クッション部材31,331の側方から第2フレーム30bに向けて凹む凹設部を設け、その凹設部にサイドエアバッグ5,305を嵌め込む構成でも良い。
【0089】
上記各実施形態では、開口部31aの縁から後方側へ向けて張出す張出部の一例として、蓋部51を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、蓋部に加えて別途張出部に相当する部位を設ける構成でも良い。即ち、上記各実施形態のように、蓋部51が開口部31aの縁から後方側へ向けて張出す構成であれば、ケース50を閉塞する機能と、背面部31bの幅方向外側への変位を規制する機能とを蓋部51に兼用させることができるので、部品点数が低減する。
【0090】
上記第1実施形態では、シートバック3の側面視において、挿入体33の全体が蓋部51と重なる位置に配設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。少なくとも挿入体33の前後方向中央部分を蓋部51の後端よりも前方側に位置させる構成であれば、背面部31bが表皮32を介して蓋部51に当接した場合に、背面部31bが幅方向外側に位置ずれすることを蓋部51によって規制できる。
【0091】
上記第3実施形態では、挿入体333がワイヤとして構成され、その挿入体333に係合部352が係合される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、挿入体333とサイドエアバッグ305とを係合させる手段は限定されない。よって、例えば、挿入体333と係合する係合部を蓋部51に設ける構成でも良い。また、挿入体333にフックを設け、そのフックをサイドエアバッグ305(例えば、ケース50に形成される孔)に引っ掛ける構成でも良い。
【0092】
上記第3実施形態では、クッション部材331に2個の切欠き部31cが形成される(即ち、挿入体333と係合部352とが2箇所で係合される)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、クッション部材331に1個または3個以上の切欠き部31cを形成しても良い。
【0093】
また、例えば、1または複数の切欠き部31cのうち、1の切欠き部31cの上端をバックポケット6の開口60よりも上方に位置させると共に、下端をバックポケット6の開口60よりも下方に位置させる構成でも良い。これにより、バックポケット6の開口60が後方側に引っ張られた場合に、背面部31bが後方側に変形することをより効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0094】
1,201,301 車両用シート
3,203,303 シートバック
31,331 クッション部材
31a 開口部(凹設部)
31b 背面部
32,332 表皮
33,233,333 挿入体
333 被係合部
352 係合部
5,305 サイドエアバッグ
51 蓋部(張出部)
6 バックポケット
60 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7