(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】情報処理装置及び故障診断システム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
G01M17/007 H
G01M17/007 T
(21)【出願番号】P 2019227181
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石塚 弘明
(72)【発明者】
【氏名】深澤 克之
(72)【発明者】
【氏名】サンダース ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公太朗
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-250190(JP,A)
【文献】特開2002-123881(JP,A)
【文献】特開2018-004437(JP,A)
【文献】特開2002-228553(JP,A)
【文献】特開2017-109650(JP,A)
【文献】特開2005-227141(JP,A)
【文献】特許第6612003(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00- 17/02
G01M 17/00- 17/10
G05B 23/00- 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて前記診断結果のデータを提供する情報処理装置(10)において、
製造メーカごと、及び、車両の種類ごとに、既定の仕様に設計された複数の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部(14)と、
診断機器(63)又は前記車両の制御システム(67)へ、診断対象の車両に適用可能ないずれかの前記診断プログラムの情報を送信し、前記診断機器(63)又は前記制御システム(67)が前記診断プログラムを実行して取得された診断結果のデータを受信し、少なくとも、診断対象の車両の型式を特定するための情報、及び、前記診断対象の車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部(15)と、
記憶された前記診断結果のデータを、前記ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部(23)と、を備える、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記診断結果出力処理部(23)は、
前記ユーザが選択した分類の情報を、前記ユーザの識別情報とともに取得し、
前記ユーザが選択した分類に、車両の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、前記ユーザの識別情報に応じて抽出結果の出力を許可又は制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記診断結果出力処理部(23)は、
前記ユーザの識別情報が、前記ユーザが選択した前記車両の製造メーカを特定可能な項目における当該車両の製造メーカと関連する識別情報である場合、前記抽出結果の出力を許可する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記診断結果出力処理部(23)は、
前記ユーザが選択した分類の情報を、前記ユーザの識別情報とともに取得し、
前記ユーザが選択した分類に、車両に搭載されている機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、前記ユーザの識別情報に応じて抽出結果の出力を許可又は制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記診断結果出力処理部(23)は、
前記ユーザの識別情報が、前記ユーザが選択した前記車両に搭載されている機器の製造メーカを特定可能な項目における当該製造メーカと関連する識別情報である場合、前記抽出結果の出力を許可する、
ことを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記診断プログラムの情報は、前記診断対象の車両に接続された診断機器(63)に記憶されて利用され、
前記診断結果記憶部(15)は、前記診断機器(63)が前記診断プログラムを実行して得られた前記診断結果のデータを記憶する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
車両の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて前記診断結果のデータを提供する情報処理装置(10)を備えた故障診断システム(100)において、
診断対象の車両(61)の制御システム(67)に接続されて診断プログラムの実行を制御する診断機器(63)を備え、
前記情報処理装置(10)は、
製造メーカごと、及び、車両の種類ごとに、既定の仕様に設計された複数の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部(14)と、
前記診断機器(63)へ、診断対象の車両に適用可能ないずれかの前記診断プログラムの情報を送信するとともに、前記診断機器(63)が前記診断プログラムを実行して取得された診断結果のデータを前記診断機器(63)を介して受信する診断結果収集処理部(21)と、
受信された前記診断結果のデータを、少なくとも、診断対象の車両の型式を特定するための情報、及び、前記診断対象の車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部(15)と、
記憶された前記診断結果のデータを、前記ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部(23)と、を備える、
ことを特徴とする故障診断システム。
【請求項8】
車両(61)の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて前記診断結果のデータを提供する情報処理装置(10)を備えた故障診断システム(100A)において、
前記情報処理装置(10)に接続されて少なくとも前記車両(61)の診断を開始する信号を前記情報処理装置(10)に送信する診断機器(63)と、
前記情報処理装置(10)と前記車両(61)の制御システム(67)との双方向通信を行うための通信部(81)と、を備え、
前記情報処理装置(10)は、
製造メーカごと、及び、車両の種類ごとに、既定の仕様に設計された複数の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部(14)と、
前記通信部(81)を介して前記制御システム(67)へ、診断対象の車両に適用可能ないずれかの前記診断プログラムの情報を送信するとともに、前記制御システム(67)が前記診断プログラムを実行して取得された診断結果のデータを前記通信部(81)を介して受信する診断結果収集処理部(21)と、
受信された前記診断結果のデータを、少なくとも、診断対象の車両の型式を特定するための情報、及び、前記診断対象の車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部(15)と、
記憶された前記診断結果のデータを、前記ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部(23)と、を備える、
ことを特徴とする故障診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の診断結果のデータの記録を記憶する情報処理装置及び故障診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の診断を行う手法として、車両の電子制御装置に診断機器を接続して種々の診断を実行する手法が知られている。例えば、特許文献1には、車両制御の状態を監視する電子制御装置であって、車両制御の状態を監視し、あらかじめ設定されている監視前提条件が成立すると、制御入力データと実行内容データの少なくともいずれかを含む監視データを蓄積し、外部装置からのデータ送信要求を受け付けたときに、監視データを外部装置に送信させる電子制御装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の電子制御装置は、複数の電子制御装置との間でデータを送受信する中継装置に接続され、当該中継装置に車両診断ツール(外部装置)が接続されて作業者が車両の診断を行い、得られた監視データを蓄積する。また、電子制御装置は、クラウド等からの送信要求を受け付けると、監視データをクラウド等に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車載の電子制御装置と外部装置とを接続して行われる従来の車両の診断システムでは、車両の製造メーカが、自社の個々の車両に適合した診断プログラムを特定の販売者あるいは修理工場に提供している。かかる診断プログラムでは、診断のための入力と、当該入力に対する出力との関係が仕様として定められている。しかしながら、車両の製造メーカが提供する診断プログラムを利用する場合、製造メーカは、自社の車両に関わる診断結果のデータしか取得することができず、診断結果の活用範囲は限定的となる。
【0006】
一方、上記の特定の販売者あるいは修理工場以外の修理工場では、車両の製造メーカではない業者が作成した、複数の製造メーカの車両を診断対象とする診断プログラムを用いて車両の診断が行われている。しかしながら、かかる診断プログラムは、車両の製造メーカが提供する診断プログラムを参考にして業者が独自に作成するものであって、製造メーカが提供する診断プログラムと同等の動作を保証できるものではない。
【0007】
これに対して、それぞれの製造メーカから診断プログラムの仕様を収集し、種々の製造メーカの車両の診断に利用可能な診断プログラムを作成することができれば、製造メーカが提供する診断プログラムと同等の動作が保証され、かつ、当該診断プログラムの情報を利用した診断結果のデータを、製造メーカに関わらず蓄積することができる。その場合、製造メーカを限定しない種々の診断結果のデータが蓄積されることから、診断結果のデータの活用範囲も幅広くなることが期待される。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、種々の製造メーカが提供する診断プログラムと同等の動作が保証された診断プログラムの情報を実行して取得された診断結果のデータを、ユーザの要求に応じて抽出して出力可能な情報処理装置及び故障診断システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、車両の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて診断結果のデータを提供する情報処理装置であって、複数の製造メーカの車両の診断に利用可能な少なくとも一つの診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部と、診断プログラムの情報を実行して取得された診断結果のデータを、少なくとも、車両の型式を特定するための情報、及び、車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部と、記憶された診断結果のデータを、ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0010】
また、本発明の別の観点によれば、車両の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて診断結果のデータを提供する情報処理装置を備えた故障診断システムであって、診断対象の車両の制御システムに接続されて診断の実行を制御する診断機器を備え、情報処理装置は、複数の製造メーカの車両の診断に利用可能な少なくとも一つ以上の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部と、診断機器を介して制御システムへ診断プログラムの情報を送信するとともに、当該診断プログラムの情報に基づいて取得された診断結果のデータを診断機器を介して受信する診断結果収集処理部と、受信された診断結果のデータを、少なくとも、診断対象の車両の型式を特定するための情報、及び、診断対象の車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部と、記憶された診断結果のデータを、ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部と、を備える故障診断システムが提供される。
【0011】
また、本発明のさらに別の観点によれば、車両の診断結果のデータを蓄積し、ユーザの要求に応じて診断結果のデータを提供する情報処理装置を備えた故障診断システムであって、情報処理装置と車両の制御システムとの双方向通信を行うための通信部を備え、情報処理装置は、複数の製造メーカの車両の診断に利用可能な少なくとも一つ以上の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部と、通信部を介して制御システムへ診断プログラムの情報を送信するとともに、当該診断プログラムの情報に基づいて取得された診断結果のデータを通信部を介して受信する診断結果収集処理部と、受信された診断結果のデータを、少なくとも、診断対象の車両の型式を特定するための情報、及び、診断対象の車両に搭載されている機器の情報に紐づけて記憶する診断結果記憶部と、記憶された診断結果のデータを、ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する診断結果出力処理部と、を備える故障診断システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明によれば、種々の製造メーカが提供する診断プログラムと同等の動作が保証された診断プログラムの情報を実行して取得された診断結果のデータを、ユーザの要求に応じて抽出して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の故障診断システムの全体構成例を示す模式図である。
【
図2】同実施形態に係る故障診断システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】診断結果記憶部に記憶される診断結果のデータの概略説明図である。
【
図4】情報処理装置による診断結果のデータの収集処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】情報処理装置による診断結果のデータの出力処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る故障診断システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<<第1の実施の形態>>
<1.故障診断システムの全体構成例>
まず、本発明の一実施形態に係る情報処理装置を適用可能な故障診断システム100の全体構成の一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る故障診断システム100の全体構成の一例を示す模式図である。
【0016】
故障診断システム100は、管理サーバ10及び診断機器63a,63b…63n(以下、特に区別を要しない場合には診断機器63と総称する)を備える。本実施形態において、管理サーバ10が本発明に係る情報処理装置としての機能を有する。診断機器63a,63b…63nは、主として車両販売会社や修理工場(以下、まとめて「修理工場60」ともいう)において、診断対象の車両61a,61b…61n(以下、特に区別を要しない場合には車両61と総称する)に接続されて用いられる。管理サーバ10及び診断機器63は、例えば移動体通信やWi-fi等の通信ネットワーク5を介して互いに通信可能に構成されている。通信ネットワーク5は、無線又は有線のいずれの通信ネットワークであってもよい。
【0017】
管理サーバ10は、故障診断に用いられる診断プログラムの情報を記憶するとともに、当該診断プログラムの情報を診断機器63に提供する。診断プログラムは、複数の製造メーカの車両の診断に利用可能な少なくとも一つ以上の診断プログラムを含む。それぞれの製造メーカの車両の診断に利用される診断プログラムは、例えばそれぞれの製造メーカから提供を受けた仕様に基づいて作成されたものであることが好ましい。このような診断プログラムであれば、製造メーカにより設定された診断時の入力信号、及び、当該入力信号に対して得られる出力信号に基づく診断結果が保証され、診断結果の信頼性を向上させることができる。
【0018】
修理工場60において用いられる診断機器63は、診断対象の車両61に適した診断プログラムの情報を管理サーバ10から取得し、当該診断プログラムに定められた動作にしたがって車両61の診断処理を実行する。また、診断機器63は、診断処理の実行により得られた診断結果のデータを管理サーバ10に提供する。管理サーバ10は、診断機器63から提供される診断結果のデータを蓄積する。
【0019】
管理サーバ10は、通信ネットワーク5を介して、診断結果のデータの提供を希望する企業や団体等51a,51b…51n(以下、これらの企業や団体等を「ユーザ51」と総称する)において用いられる端末53a,53b…53n(以下、特に区別を要しない場合にはユーザ端末53と総称する)と互いに通信可能に構成されている。ユーザ端末53と管理サーバ10とを接続する通信ネットワークは、修理工場50と管理サーバ10とを接続する通信ネットワーク5と共通のネットワークであってもよく、異なるネットワークであってもよい。管理サーバ10は、蓄積された診断結果のデータを、ユーザ端末53からのリクエストに応じた分類にしたがって抽出し、ユーザ端末53へ出力する。
【0020】
なお、本実施形態に係る故障診断システム100においては、ユーザ端末53と管理サーバ10とが通信ネットワーク5を介して、ユーザ端末53から管理サーバ10へのリクエストの送信や、管理サーバ10からユーザ端末53への診断結果のデータの送信が行われる。ただし、これらのリクエストや診断結果のデータの送信の一部又は全部が、通信ネットワーク5を介して行われなくてもよい。例えば、ユーザ51から管理サーバ10の管理者に対して、書面あるいは電子メール等の手段により、診断結果のデータの分類のリクエストを伝達してもよい。また、管理サーバ10の管理者からユーザ51に対して、抽出した診断結果のデータを記憶した記憶媒体を提供したり、抽出した診断結果のデータを電子メール等により提供したりしてもよい。
【0021】
<2.車両の診断に関わる構成例>
図2は、故障診断システム100の管理サーバ10及び診断機器63の機能構成を示すブロック図である。
図2では、管理サーバ10に接続された複数の診断機器63及びユーザ端末53のうち、それぞれ一つの診断機器63及びユーザ端末53のみを示している。
【0022】
(診断機器)
診断機器63は、第1の通信部71、第2の通信部73、診断制御部75及び記憶部77を備える。また、診断機器63は、診断作業者の入力操作を受け付ける図示しない入力部、及び、診断のガイドや操作画面、進行状況等を表示する図示しない表示部を備える。なお、
図2には、診断機器63が一つの機器として示されているが、診断機器63は、複数の機器が互いに通信可能に構成されていてもよい。
【0023】
第1の通信部71は、通信ネットワーク5を介して管理サーバ10と通信するためのインタフェースである。第1の通信部71は、通信ネットワーク5の通信方式に適合する無線通信用あるいは有線通信用のインタフェースにより構成される。通信ネットワーク5は、例えば、移動体通信であってもよく、Wi-fi等のインターネットであってもよく、あるいは、専用回線であってもよい。
【0024】
第2の通信部73は、診断対象の車両61の制御システム67と通信するためのインタフェースである。車両61の制御システム67は、例えば、CAN(Controller Area Network)及びLIN(Local Inter Net)を介して通信可能に接続された複数のECU(Electronic Control Unit)及びセンサ等の機器を備える。診断機器63は、例えば制御システム67に備えられたゲートウェイECUに接続され、第2の通信部73は、ゲートウェイECUを介して制御システム67と通信可能に構成される。第2の通信部73は、例えばCANプロトコルに適合するインタフェースにより構成される。
【0025】
記憶部77は、診断プログラムあるいは診断に用いられるパラメータ等の情報を記憶する。記憶部77は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶素子、あるいは、HDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)フラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体の少なくとも一つを含む。
【0026】
診断制御部75は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路を備えて構成される。診断制御部75の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0027】
診断制御部75は、診断対象の車両61の診断に利用可能な診断プログラムの情報を管理サーバ10から取得する。例えば、診断制御部75は、診断機器63を車両61の制御システム67に接続したときに受信する車両識別IDを管理サーバ10へ送信し、管理サーバ10から送信される診断プログラムの情報を取得する。診断制御部75は、診断作業者の入力内容に基づいて診断対象の車両61の情報を管理サーバ10へ送信し、対応する診断プログラムの情報を取得してもよい。
【0028】
診断制御部75は、取得された診断プログラムの情報に基づいて、診断の操作画面やガイドを表示部に表示させて、診断の実行を開始させてもよく、取得された診断プログラムの情報を記憶部77に一時的に記憶させてもよい。診断作業者は、診断機器63が取得した診断プログラムの情報にしたがって、車両61の診断を行う。車両61の診断は、例えば、制御システム67に設けられたそれぞれの機器の電圧値が適正範囲にあるか否か、所定の指令信号を入力したときに適正な出力がなされているか否か、及び、異常信号を示す記録があるか否か等の種々の診断を含む。これらの診断の内容は、従来公知の内容であるため詳しい説明は省略する。
【0029】
診断結果のデータは、診断作業者あるいは修理作業者が後で参照できるように記憶される。診断制御部75は、診断の実行中、診断結果のデータを記憶部77に記憶させてもよく、管理サーバ10に送信してもよい。診断結果のデータは、少なくとも、車両61の型式を特定するための情報、及び、車両61に搭載されている機器の情報を含む。車両61の型式を特定するための情報は、例えば、車両61の製造国、製造メーカ、車種、製造年、グレード、制御システムの種類、制御システムのバージョンの情報のうちのいずれかの情報を含んでいてもよい。また、車両61に搭載されている機器の情報は、例えば、車両に搭載されているセンサ等の種類、又は仕様の情報を含んでいてもよい。
【0030】
診断制御部75は、診断の実行中、あるいは、診断の終了後の適宜の時期に、少なくとも、車両61の型式を特定するための情報、及び、車両61に搭載されている機器の情報を含む診断結果のデータを管理サーバ10へ送信する。
【0031】
(管理サーバ)
管理サーバ10は、通信部11、制御部13、プログラム記憶部14及び診断結果記憶部15を備える。通信部11は、通信ネットワーク5を介して診断機器63及びユーザ端末53と通信するためのインタフェースである。通信部11は、通信ネットワーク5の通信方式に適合する無線通信用あるいは有線通信用のインタフェースにより構成される。ユーザ端末53と管理サーバ10との間の通信ネットワークが、診断機器63と管理サーバ10との間の通信ネットワーク5と異なる場合には、通信部11は、複数の通信インタフェースを含んでいてもよい。
【0032】
プログラム記憶部14及び診断結果記憶部15は、RAM又はROM等の記憶素子、あるいは、HDDやCD、DVD、SSD、USBフラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体の少なくとも一つを含む。プログラム記憶部14及び診断結果記憶部15は、一つの記憶部として構成されてもよく、別の記憶部として構成されてもよい。
【0033】
プログラム記憶部14は、複数の製造メーカの車両の診断に利用可能な少なくとも一つ以上の診断プログラムの情報を記憶する。例えば、製造メーカごとに、診断対象の車両61に応じて決められた仕様に設計された複数の診断プログラムの情報が記憶される。また、診断プログラムの情報は、例えば車両の種類あるいはシステムごとに、診断時に車両61の制御システムに入力する入力信号と、当該入力信号入力時の出力信号に基づく診断結果との関係が定義されて構築されている。
【0034】
診断結果記憶部15は、診断機器63から送信される診断結果のデータを記憶する。記憶される診断結果のデータは、少なくとも、診断対象の車両61の型式を特定するための情報、及び、診断対象の車両61に搭載されているセンサ等の機器の情報に紐づけて記憶される。
【0035】
この他、管理サーバ10は、制御部13により実行されるプログラムの情報を記憶する図示しない記憶部を備えている。
【0036】
制御部13は、例えばCPU又はMPU等のプロセッサや電気回路を備えて構成される。制御部13の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御部13は、診断結果収集処理部21及び診断結果出力処理部23を備える。例えば、診断結果収集処理部21及び診断結果出力処理部23は、CPU等のプロセッサによるプログラムの実行により実現される機能であってもよい。
【0037】
診断結果収集処理部21は、プログラム記憶部14に記憶されている診断プログラムの情報を診断機器63へ提供する処理、及び、診断機器63から送信される診断結果のデータを診断結果記憶部15に記憶させる処理を実行する機能を有する。例えば、診断結果収集処理部21は、診断機器63から送信される車両識別IDに基づいて診断対象の車両61に適用可能な診断プログラムの情報を選択して、診断機器63へ送信する。あるいは、診断結果収集処理部21は、診断作業者等により設定されて診断機器63から送信される診断対象の車両61の情報に基づいて当該車両61に適用可能な診断プログラムの情報を選択して、診断機器63へ送信する。
【0038】
また、診断結果収集処理部21は、診断機器63から送信される、診断プログラムの情報を利用して実行された診断結果のデータを診断結果記憶部15に記憶させる。上述のとおり、診断結果のデータは、少なくとも、車両61の型式を特定するための情報、及び、車両61に搭載されている機器の情報を含み、これらの車両61の型式を特定するための情報、及び、車両61に搭載されている機器の情報に紐づけて診断結果のデータが記憶される。
【0039】
図3は、診断結果記憶部15に記憶される診断結果のデータを概略的に説明するための図である。
図3に示した例では、診断機器63から送信される診断結果のデータは、製造国(con)、製造メーカ(mkr)、車種(veh)、年式(yer)、グレード(grd)、制御システム(syt)、制御システムのバージョン(ver)、車載機器の仕様(dev)…の情報に紐づけられて記憶される。
図3おいては省略されているが、診断結果のデータは、これらの情報に紐づけられて記憶される、故障の記録の情報や、診断実行時に取得される所定の検出値の情報、及び診断作業者が診断プログラムへ入力した情報等が記憶される。
【0040】
診断結果出力処理部23は、診断結果記憶部15に記憶された診断結果のデータを、ユーザが選択した分類にしたがって抽出し出力する。本実施形態において、診断結果出力処理部23は、例えばユーザ端末53から、データ出力のリクエストがあった場合に、ユーザが選択した分類を判別し、当該判別にしたがって診断結果のデータを抽出して出力する。例えば、ユーザは、特定の年に製造された特定の車種の故障データの出力をリクエストする等、車両61の型式を特定するための情報及び車両61に搭載されている機器の情報のうちの一つ又は複数の組み合わせを指定して、診断結果のデータの出力をリクエストすることができる。
【0041】
ただし、診断結果のデータには、広く一般に活用されるべきものと、特定の製造メーカ以外に開示することに適さないものが存在する。例えば、特定の製造メーカの車両61に関する診断結果のデータや、特定の製造メーカの車載機器に関する診断結果のデータが、当該製造メーカ以外の競合他社に提供されることが好ましくない場合も考えられる。このため、診断結果のデータを活用する主体に応じて、セキュリティを担保しつつ診断結果のデータを出力可能にする必要がある。
【0042】
これに対して、本実施形態に係る故障診断システム100において、ユーザ端末53から診断結果のデータの出力をリクエストする際の情報には、ユーザの識別情報が含まれている。管理サーバ10の診断結果出力処理部23は、ユーザが選択した分類に、車両61の製造メーカ又は車両61に搭載された車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、ユーザの識別情報に応じて抽出結果の出力を許可又は制限する。
【0043】
具体的に、ユーザが選択した分類に車両61又は車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、診断結果のデータの出力を要求したユーザの識別情報が、当該製造メーカと関連する識別情報である場合には、診断結果出力処理部23は、リクエストにしたがって診断結果のデータを抽出し出力する。一方、ユーザが選択した分類に車両61又は車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、診断結果のデータの出力を要求したユーザの識別情報が、当該製造メーカと関連しない識別情報である場合には、診断結果出力処理部23は、診断結果のデータを出力しない。この場合、診断結果出力処理部23は、診断結果のデータの出力が許可されないことを通知する情報をユーザ端末53に送信する。
【0044】
これにより、特定の製造メーカにとって不利益な情報が、他の製造メーカに送信されることを防止することができる。一方で、製造メーカを特定しない故障情報等の統計データが、製造メーカに限らず、種々の企業や団体に活用されることが促進され、車両や車載機器の開発等に貢献することが期待される。また、特定の車両や特定の車載機器の製造メーカにおいては、自社が診断プログラムを提供していた特定の販売者あるいは修理工場に限らず、その他の修理工場等において得られた診断結果のデータの提供を受けることができるようになる。したがって、自社の車両の開発等に対してより多くの診断結果のデータを活用することができる。
【0045】
なお、診断結果出力処理部23により出力されてユーザ端末53に送信されるデータは、例えば、診断結果のデータの一覧リストの形式であってもよく、棒グラフ又は円グラフ等により示される統計データの形式であってもよく、その両方の形式のデータを含むものであってもよい。
【0046】
<3.管理サーバの動作例>
次に、本実施形態に係る情報処理装置としての管理サーバ10の動作例を説明する。
【0047】
(診断結果のデータの収集処理)
図4は、管理サーバ10の診断結果収集処理部21により実行される診断結果のデータの収集処理の一例を示すフローチャートである。
【0048】
診断結果収集処理部21は、診断機器63から送信される車両識別IDを取得する(ステップS11)。次いで、診断結果収集処理部21は、車両識別IDに基づいて、診断対象の車両61に適用可能な診断プログラムの情報を選択して、当該情報を診断機器63へ送信する(ステップS13)。例えば、管理サーバ10のプログラム記憶部14に記憶された少なくとも一つ以上の診断プログラムの情報には、それぞれ適用可能な車両識別IDが設定されており、診断結果収集処理部21は、取得した車両識別IDに対応する診断プログラムの情報を選択して、当該情報を診断機器63へ送信する。
【0049】
次いで、診断結果収集処理部21は、診断機器63において診断プログラムの情報を利用して診断が実行された結果として得られた診断結果のデータを受信する(ステップS15)。次いで、診断結果収集処理部21は、受信した診断結果のデータを、診断対象の車両61の型式を特定するための情報、及び、診断対象の車両61に搭載されている機器の情報に紐づけて診断結果記憶部15に記憶させる(ステップS17)。
【0050】
なお、診断結果収集処理部21は、診断プログラムの情報の提供(ステップS13)、診断結果のデータの受信(ステップS15)及び診断結果のデータの記憶(ステップS17)を、順次行ってもよく、繰り返し逐次的に行ってもよい。つまり、診断結果収集処理部21は、診断機器63に対して診断プログラムの情報の提供を完了した後、診断機器63において診断の実行が完了するまで待機し、すべての診断結果のデータをまとめて受信して診断結果記憶部15に記憶させてもよい。あるいは、診断結果収集処理部21は、診断プログラムの情報を順次提供しつつ、その都度返信される診断結果のデータを診断結果記憶部15に記憶させてもよい。
【0051】
(診断結果のデータの抽出出力処理)
図5は、管理サーバ10の診断結果出力処理部23により実行される診断結果のデータの抽出出力処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
診断結果出力処理部23は、ユーザ端末53から送信される診断結果のデータの出力のリクエストを受け付ける(ステップS21)。次いで、診断結果出力処理部23は、リクエスト中の出力データの分類に、車両の製造メーカを特定可能な項目が含まれているか否かを判別する(ステップS23)。例えば、診断結果のデータの出力のリクエストの分類に、車両の製造メーカ、車種、制御システム等の車両の特定に結び付く項目が含まれる場合、診断結果出力処理部23は肯定(yes)判定をする。
【0053】
リクエスト中の出力データの分類に、車両の製造メーカを特定可能な項目が含まれている場合(S23/Yes)、診断結果出力処理部23は、診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車両の製造メーカに関連する識別情報であるか否かを判別する(ステップS25)。診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車両の製造メーカに関連する識別情報ではない場合(S25/No)、診断結果出力処理部23は、ユーザ端末53に対して診断結果のデータの出力を許可しない旨を通知する(ステップS35)。
【0054】
一方、リクエスト中の出力データの分類に、車両の製造メーカを特定可能な項目が含まれていない場合(S23/No)、診断結果出力処理部23は、リクエスト中の出力データの分類に、車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれているか否かを判別する(ステップS27)。また、診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車両の製造メーカに関連する識別情報である場合(S25/Yes)、同様に、診断結果出力処理部23は、リクエスト中の出力データの分類に、車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれているか否かを判別する(ステップS27)。例えば、診断結果のデータの出力のリクエストの分類に、車載機器の製造メーカ、品番、特定の仕様等の車載機器の特定に結び付く項目が含まれる場合、診断結果出力処理部23は肯定(yes)判定をする。
【0055】
リクエスト中の出力データの分類に、車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれている場合(S27/Yes)、診断結果出力処理部23は、診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車載機器の製造メーカに関連する識別情報であるか否かを判別する(ステップS29)。診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車載機器の製造メーカに関連する識別情報ではない場合(S29/No)、診断結果出力処理部23は、ユーザ端末53に対して診断結果のデータの出力を許可しない旨を通知する(ステップS35)。
【0056】
一方、リクエスト中の出力データの分類に、車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれていない場合(S27/No)、診断結果出力処理部23は、診断結果記憶部15に記憶されている診断結果のデータから、ユーザが選択した分類にしたがって診断結果のデータを抽出する(ステップS31)。また、診断結果のデータをリクエストしているユーザの識別情報が、指定された項目により特定される車載機器の製造メーカに関連する識別情報である場合(S29/Yes)、同様に、診断結果出力処理部23は、診断結果記憶部15に記憶されている診断結果のデータから、ユーザが選択した分類にしたがって診断結果のデータを抽出する(ステップS31)。
【0057】
次いで、診断結果出力処理部23は、抽出した診断結果のデータを、ユーザのリクエストに応じた形式にしてユーザ端末53へ送信する(ステップS33)。例えば、ユーザが選択した分類ごとに項目分けをした表形式の一覧リストの情報をユーザ端末53へ送信してもよい。また、当該一覧リストと併せて、あるいは、一覧リストとは別に、棒グラフや円グラフ等に加工した統計データの情報をユーザ端末53へ送信してもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る管理サーバ(情報処理装置)10によれば、複数の製造メーカの診断に利用可能な少なくとも一つ以上の診断プログラムの情報を記憶するプログラム記憶部14を備え、車両61の製造メーカに関わらず修理工場60の診断機器63に診断プログラムの情報を提供することができる。
【0059】
また、管理サーバ10は、提供した診断プログラムの情報を利用して実行された診断結果のデータを受信し、少なくとも、診断対象の車両61の型式を特定するための情報、及び、診断対象の車両61に搭載されている機器の情報に紐づけて診断結果記憶部15に記憶する。そして、診断結果出力処理部23は、記憶された診断結果のデータから、ユーザのリクエストに応じて診断結果のデータを抽出し、出力する。したがって、製造メーカにかかわらずあらゆる車両の診断結果のデータが収集され、任意の選択にしたがって抽出し出力することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る管理サーバ10では、プログラム記憶部14は、それぞれの製造メーカの仕様に基づいて作成された診断プログラムの情報を記憶する。このため、車両あるいは製造メーカに関わらず、製造メーカが提供する診断プログラムと同等の動作が保証され、診断結果の信頼性が保証される。
【0061】
また、本実施形態に係る管理サーバ10では、ユーザが選択した分類に、車両61又は車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、診断結果のデータの出力を要求したユーザの識別情報が、当該製造メーカと関連しない識別情報である場合には、診断結果出力処理部23は、診断結果のデータを出力しないように構成されている。このため、特定の製造メーカにとって不利益な情報が、他の製造メーカに送信されることを防止することができる。
【0062】
一方で、ユーザが選択した分類に、車両61又は車載機器の製造メーカを特定可能な項目が含まれる場合、診断結果のデータの出力を要求したユーザの識別情報が、当該製造メーカと関連する識別番号である場合には、故障情報等の診断結果のデータが、当該製造メーカに限り送信され、車両や車載機器の開発等に貢献することが期待される。また、当該製造メーカにおいては、自社が診断プログラムを提供していた特定の販売者あるいは修理工場に限らず、その他の修理工場等において得られた診断結果のデータの提供を受けることができるようになる。したがって、自社の車両の開発等に対してより多くの診断結果のデータを活用することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る管理サーバ10では、車両61又は車載機器の製造メーカではないユーザに対して、車両又は車両製造メーカ、あるいは、車載機器あるいは車載機器の製造メーカを特定不可能な診断結果のデータを提供してもよい。この場合、車両部品販売小売店や業界管理団体等の種々の企業や団体において、開発や品質管理、あるいは、マーケティング等、様々な場面で活用されることが期待される。
【0064】
<<第2の実施の形態>>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る故障診断システムを説明する。第1の実施の形態において説明した故障診断システムでは、車両61の診断結果のデータが、車両61の制御システム67から診断機器63を経由して管理サーバ10へ送信されていた。これに対して、本実施形態に係る故障診断システムでは、管理サーバ10と車両61の制御システム67との間で、診断プログラムの情報及び車両61の診断結果のデータが、診断機器を経由せずに送受信される。以下、主として、第1の実施の形態に係る故障診断システムと異なる点を説明する。
【0065】
本実施形態に係る故障診断システム100Aにおいては、診断機器63が管理サーバ10に対して所望の診断を実行する指令を送信することにより、管理サーバ10が、診断機器を経由することなく、車両61の制御システム67に対して診断プログラムの情報を送信するとともに診断結果のデータを車両61の制御システム67から受信する。
【0066】
図6は、本実施形態に係る故障診断システム100Aの機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、診断機器83は、通信部85、診断制御部87及び記憶部89を備える。診断機器83は、ルータ等の中継器91を介して通信ネットワーク5に接続されている。また、車両61の制御システム67は、通信部81及び中継器91を介して通信ネットワーク5に接続されている。中継器91と診断機器83あるいは通信部81との通信手段は、有線通信手段であってもよく、wi-fi等の無線通信手段であってもよい。
【0067】
通信部81は、診断対象の車両61の制御システム67と管理サーバ10との双方向通信を行うためのインタフェースである。通信部81は、中継器91から送信される信号を制御システム67の通信方式に適合する信号に変換し、また、制御システム67から送信される信号を中継器91の通信方式に適合する信号に変換する機能を有する。通信部81は、無線通信用あるいは有線通信用のインタフェースにより構成される。
【0068】
診断機器83の通信部85は、中継器91を介して管理サーバ10と通信するためのインタフェースである。通信部85は、無線通信用あるいは有線通信用のインタフェースにより構成される。診断制御部87は、例えばCPU又はMPU等のプロセッサや電気回路を備えて構成される。診断制御部87の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。また、記憶部89は、RAM又はROM等の記憶素子、あるいは、HDDやCD、DVD、SSD、USBフラッシュ、ストレージ装置等の記憶媒体の少なくとも一つを含む。
【0069】
本実施形態において、診断制御部87は、診断作業者の操作にしたがって、車両識別ID等の診断対象の車両61の情報とともに診断を開始する旨の指令を管理サーバ10に対して送信する。これにより、管理サーバ10の診断結果収集処理部21が、診断機器83を経由することなく、車両61の制御システム67に対して診断プログラムの情報を送信するとともに診断結果のデータを取得する。この場合、診断機器83は、診断の進行状況、あるいは、診断結果のデータを取得し、表示部に表示させてもよい。また、診断の進行状況、あるいは、診断結果のデータの少なくとも一部が記憶部89に記憶されてもよい。これにより、診断機器83を経由することなく情報の送受信を行いながら管理サーバ10により診断が行われる場合であっても、診断作業者が診断の進行状況等を監視することができる。
【0070】
本実施形態に係る故障診断システム100Aにおいて、管理サーバ10は、診断機器83を経由することなく、診断プログラムの情報の一部又は全部を車両61の制御システム67に送信し、診断結果のデータを制御システム67から取得する点以外、第1の実施の形態に係る管理サーバ10と同様に構成することができる。
【0071】
本実施形態に係る故障診断システム100Aでは、診断機器83を操作する診断作業者が修理工場その他の車両61が置かれている場所に実際にいない場合であっても、車両61の診断をリモート操作により実行させて診断結果のデータを管理サーバ10に蓄積させることができる。また、
図6においては1台の車両61が図示されているが、中継器91を介して複数の車両の制御システム67が接続されている場合には、診断作業者はリモート操作によって複数の車両の診断を実行させて、診断結果のデータを管理サーバ10に蓄積させることができる。
【0072】
なお、本実施形態に係る故障診断システム100Aにおいて、車両61に通信部81が備えられている場合には中継器91が省略されていてもよい。この場合、診断機器83が、診断の実行を管理可能な車両61と紐づけされ、診断対象となる車両61が特定されるようになっていてもよい。あるいは、診断機器83が、診断の実行を開始させる際に、診断対象の車両61を特定する情報を管理サーバ10に送信してもよい。
【0073】
また、本実施形態に係る故障診断システム100Aにおいて、診断機器83が、第1の実施の形態に係る故障診断システム100の診断機器63と同様に利用されてもよい。この場合、例えば、診断制御部87は、診断対象の車両61の情報を管理サーバ10へ送信し、あるいは、車両61の制御システム67に対して車両識別IDを管理サーバ10へ送信させる。また、診断制御部87は、管理サーバ10から送信される診断プログラムの情報を取得する。
【0074】
そして、診断作業者は、診断機器83が取得した診断プログラムの情報に基づいて車両61の診断を実行する。診断結果のデータは、診断機器83を経由することなく車両61の制御システム67から管理サーバ10に送信される。管理サーバ10に送信される診断結果のデータが、診断機器83にも送信されて、表示部に表示されてもよい。診断制御部87は、取得された診断プログラムの情報に基づいて、診断の操作画面やガイドを表示部に表示させてもよく、取得された診断プログラムの情報を記憶部89に一時的に記憶させてもよい。
【0075】
本実施形態に係る故障診断システム100Aによれば、第1の実施の形態に係る故障診断システム100により得られる効果と併せて、診断作業者が、車両61から離れた任意の場所にいる場合であっても、車両61の診断を実行させて、診断結果のデータを管理サーバ10に蓄積させることができる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0077】
10 情報処理装置(管理サーバ)、14 プログラム記憶部、15 診断結果記憶部、21 診断結果収集処理部、23 診断結果出力処理部、51 ユーザ、53 ユーザ端末、60 修理工場、61 車両、63 診断機器、81 通信部、83 診断機器、91 中継器