(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】フレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
H05K1/02 L
H05K1/02 B
H05K1/02 J
(21)【出願番号】P 2020008179
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/058777(WO,A1)
【文献】特開2014-197181(JP,A)
【文献】特開2000-122039(JP,A)
【文献】特開2015-198103(JP,A)
【文献】特開2019-095578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する支持板と、
前記第1面上に位置する可撓性の絶縁基材と、前記絶縁基材上に配置された配線層と、を備える線部と、
前記線部を覆う保護部材と、を備え、
前記配線層は、第1金属層と、前記第1金属層に積層された第2金属層と、を備え、
前記第2金属層は、第1領域において第1膜厚と、第2領域において第2膜厚と、を有し、
前記第1領域は、凸状であり、
前記第2領域は、凹状であり、
前記第2膜厚は、前記第1膜厚より大きい、フレキシブル基板。
【請求項2】
前記第1金属層は、アルミニウムによって形成され、
前記第2金属層は、チタンによって形成される、請求項1に記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記第1領域において、前記第2金属層の第1膜厚は90nmより小さく、
前記第2領域において、前記第2金属層の第2膜厚は90nmより大きい、請求項1又は2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記絶縁基材は、平面視において、第1方向に延出し前記第1方向と交差する第2方向に並んで配置された複数の波型の第1部分と、前記第2方向に延出し前記第1方向に並んで配置された複数の波型の第2部分と、前記第1部分と前記第2部分の交差部に設けられた島状部と、を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記第1領域は、モジュールの凸部の上に貼付され、
前記第2領域は、前記モジュールの凹部の上に貼付され、
前記第1領域は引張され、前記第2領域は圧縮されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載のフレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可撓性及び伸縮性を有したフレキシブル基板の利用が種々の分野で検討されている。一例を挙げると、マトリクス状に電気的素子が配列されたフレキシブル基板を電子機器の筐体や人体等の曲面に貼り付ける利用形態が考えられる。電気的素子としては、例えばタッチセンサや温度センサ等の各種センサや表示素子が適用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-198101号公報
【文献】特開2015-198102号公報
【文献】特開2017-118109号公報
【文献】特開2017-113088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、応力を緩和することが可能なフレキシブル基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によれば、第1面を有する支持板と、前記第1面上に位置する可撓性の絶縁基材と、前記絶縁基材上に配置された配線層と、を備える線部と、前記線部を覆う保護部材と、を備え、前記配線層は、第1金属層と、前記第1金属層に積層された第2金属層と、を備え、前記第2金属層は、第1領域において第1膜厚と、第2領域において第2膜厚と、を有し、前記第2膜厚は、前記第1膜厚より大きい、フレキシブル基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るフレキシブル基板の概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板の一部を拡大した平面図である。
【
図3】
図3は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の第1の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の第2の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、チタンによって形成された層の膜厚と応力との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図2においてI-Jで示すフレキシブル基板の一部の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
図1は、本実施形態に係るフレキシブル基板100の概略的な平面図である。
本実施形態においては、図示したように第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3を定義する。第1方向D1及び第2方向D2は、フレキシブル基板100の主面と平行であり、互いに交わる方向である。第3方向D3は、第1方向D1、第2方向D2に対して垂直な方向であり、フレキシブル基板100の厚さ方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2は、本実施形態では垂直に交わるが、垂直以外の角度で交わってもよい。本明細書において、第3方向D3を示す矢印の先端に向かう方向を「上」と称し、矢印の先端から逆に向かう方向を「下」と称する。また、第3方向D3を示す矢印の先端側にフレキシブル基板100を観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向D1及び第2方向D2で規定されるD1-D2平面に向かって見ることを平面視という。
【0009】
フレキシブル基板100は、複数の走査線1、複数の信号線2、複数の電気的素子3、支持板7、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2を有している。走査線1、信号線2、電気的素子3、走査線ドライバDR1、信号線ドライバDR2は、支持板7の上に位置している。複数の走査線1は、それぞれ第1方向D1に延出し第2方向D2に並んでいる。複数の走査線1は、それぞれ走査線ドライバDR1に接続されている。複数の信号線2は、それぞれ第2方向D2に延出し第1方向D1に並んでいる。複数の信号線2は、それぞれ信号線ドライバDR2に接続されている。複数の電気的素子3は、それぞれ走査線1と信号線2との交差部に位置し、走査線1及び信号線2と電気的に接続されている。なお、電気的素子3の機能の詳細については後述する。
【0010】
図2は、
図1に示したフレキシブル基板100の一部を拡大した平面図である。
フレキシブル基板100は、上記に加えて、走査線1及び信号線2を支持する絶縁基材4を備えている。
【0011】
絶縁基材4は、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の第1部分PT1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の第2部分PT2と、第1部分PT1と第2部分PT2の交差部に設けられた島状部ILと、を含んでいる。第1部分PT1及び第2部分PT2は、それぞれ波型に形成されている。島状部ILは、第1部分PT1と第2部分PT2に接続されている。絶縁基材4は、可撓性を有し、例えばポリイミドで形成することができるが、この例に限られない。
【0012】
走査線1は、第1部分PT1上に位置し、波状に配置されている。信号線2は、第2部分PT2上に位置し、波状に配置されている。走査線1及び信号線2は、フレキシブル基板100が備える配線の一例である。走査線1及び信号線2は、金属材料によって形成され、積層構造を有している。フレキシブル基板100は、走査線1及び信号線2の他に、電気的素子3に給電する電源線などの他種の配線を備えてもよい。
【0013】
走査線1は、実線で示す第1部分11と、破線で示す第2部分12と、を有している。第2部分12は、電気的素子3と重畳している。第1部分11と第2部分12は、互いに異なる層に配置されており、コンタクトホールCH1、CH2を通じて電気的に接続されている。
【0014】
走査線1は、電気的素子3に走査信号を供給する。例えば電気的素子3がセンサのような信号の出力を伴うものである場合、信号線2には電気的素子3からの出力信号が供給される。また、例えば電気的素子3が発光素子やアクチュエータのように入力される信号に応じて作動するものである場合、信号線2には駆動信号が供給される。走査信号の供給源、駆動信号の供給源又は出力信号を処理するプロセッサなどを含むコントローラは、フレキシブル基板100に設けられてもよいし、フレキシブル基板100に接続される機器に設けられてもよい。
【0015】
電気的素子3は、島状部IL上に位置している。電気的素子3は島状部ILよりも小さく、
図2においては電気的素子3の縁から島状部ILがはみ出ている。例えば電気的素子3は、センサ、半導体素子、又はアクチュエータなどである。例えばセンサとしては、可視光や近赤外光を受光する光学センサ、温度センサ、圧力センサ、又はタッチセンサなどを適用できる。例えば半導体素子としては、発光素子、受光素子、ダイオード、又はトランジスタなどを適用できる。電気的素子3が発光素子である場合、可撓性及び伸縮性を有するフレキシブルディスプレイを実現できる。発光素子としては、例えばミニLEDやマイクロLEDといった100μm前後の大きさを有する発光ダイオードや有機エレクトロルミネッセンス素子を適用することができる。電気的素子3がアクチュエータである場合、例えば圧電素子を適用できる。なお、電気的素子3は、ここで例示したものに限られず、その他にも種々の機能を有する素子を適用し得る。電気的素子3は、コンデンサや抵抗などであってもよい。また、電気的素子3の配置位置や形状は
図2に示した例に限らない。
【0016】
本実施形態においては、絶縁基材4、走査線1、信号線2、後述する第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6を総称して線部LPとする。線部LPは、支持板7上に位置している。線部LPは、平面視において、第1方向D1に延出し第2方向D2に並んで配置された複数の波型の第1線部LP1と、第2方向D2に延出し第1方向D1に並んで配置された複数の波型の第2線部LP2と、第1線部LP1と第2線部LP2の交差部に設けられた島状部LP3と、を含んでいる。第1線部LP1は、上記した絶縁基材4の第1部分PT1と、走査線1と、を含んでいる。第2線部LP2は、絶縁基材4の第2部分PT2と、信号線2と、を含んでいる。また、線部LPは、隣り合う2つの第1線部LP1と、隣り合う2つの第2線部LP2とによって囲まれた開口OPを形成している。開口OPは、第1方向D1及び第2方向D2にマトリクス状に並んでいる。
【0017】
図3は、
図2においてA-Bで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
フレキシブル基板100は、上述の要素の他に、第1有機絶縁膜5と、第2有機絶縁膜6と、保護部材8と、をさらに備えている。
【0018】
支持板7は、第1面SF1を有している。線部LP1は、第1面SF1に位置している。線部LP1は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。線部LP1は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、走査線1によって構成されている。
【0019】
絶縁基材4の第1部分PT1は、第1面SF1上に位置している。第1有機絶縁膜5は、絶縁基材4を覆っている。走査線1は、第1有機絶縁膜5の上に位置している。走査線(配線層)1は、第1有機絶縁膜5の上に位置する第1金属層M11と、第1金属層M11に積層された第2金属層M12と、を備えている。第1金属層M11は、アルミニウムによって形成され、第2金属層M12は、チタンによって形成されている。第2有機絶縁膜6は、第1有機絶縁膜5及び走査線1を覆っている。第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6は、何れも有機材料で形成されている。
【0020】
保護部材8は、線部LP1の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、支持板7の第1面SF1に接している。すなわち、保護部材8は、走査線1、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6を覆っている。保護部材8は、線部LP1のうち、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6に接している。保護部材8は、ポリ-p-キシリレン(PPX: poly-para-xylylenes)構造体、例えばパリレン(登録商標)で形成されている。支持板7は、絶縁基材4及び保護部材8の下面に有機材料を塗布して形成されてもよいし、フィルム状あるいは板状に形成され接着層を介して貼り付けられてもよい。
【0021】
図4は、
図2においてC-Dで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
線部LP2は、第1面SF1に位置している。線部LP2は、第1側面SS1と、第1側面SS1とは反対側の第2側面SS2と、上面USと、を有している。線部LP2は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5、第2有機絶縁膜6、信号線2によって構成されている。
【0022】
絶縁基材4の第2部分PT2は、第1面SF1上に位置している。第1有機絶縁膜5は、絶縁基材4を覆っている。第2有機絶縁膜6は、第1有機絶縁膜5を覆っている。信号線2は、第2有機絶縁膜6の上に位置している。信号線(配線層)2は、第2有機絶縁膜6の上に位置する第1金属層M21と、第1金属層M21に積層された第2金属層M22と、を備えている。第1金属層M21は、アルミニウムによって形成され、第2金属層M22は、チタンによって形成されている。保護部材8は、線部LP2の第1側面SS1、第2側面SS2、上面USを覆い、支持板7の第1面SF1に接している。すなわち、保護部材8は、絶縁基材4、第1有機絶縁膜5及び第2有機絶縁膜6、信号線2を覆い、それぞれに接している。
【0023】
図5は、本実施形態の第1の具体例を示す図である。
図5(a)は、本実施形態のフレキシブル基板100の一部を拡大した平面図である。
図5(b)は、
図5(a)においてI-IIで示すフレキシブル基板100の断面図である。
図5(c)は、
図5(a)においてIII-IVで示すフレキシブル基板100の断面図である。
図5(b)及び
図5(c)においては、支持板7、配線層、保護部材8を図示し、その他の部材の図示を省略している。
【0024】
図5(a)に示すように、フレキシブル基板100は、引張された第1領域AR1と、圧縮された第2領域AR2と、を有している。第1領域AR1及び第2領域AR2は、第2方向D2に延出している。
【0025】
図5(b)に示すように、フレキシブル基板100は、モジュール200の曲面に貼付されている。モジュール200は、凸部201と、凹部202と、を有している。第1領域AR1は、凸部201上に位置しているため引張されている。第2領域AR2は、凹部202上に位置しているため圧縮されている。走査線1において、チタンによって形成された第2金属層M12の膜厚は、第1領域AR1と第2領域AR2とで異なっている。第2金属層M12は、第1領域AR1において第1膜厚T11と、第2領域AR2において第2膜厚T12と、を有している。第2膜厚T12は、第1膜厚T11より大きい。第1領域AR1において、第2金属層M12の第1膜厚T11は90nmより小さく、第2領域AR2において、第2金属層M12の第2膜厚T12は90nmより大きい。
【0026】
図5(c)に示すように、信号線2についても、チタンによって形成された第2金属層M22の膜厚は、第1領域AR1と第2領域AR2とで異なっている。第2金属層M22は、第1領域AR1において第1膜厚T21と、第2領域AR2において第2膜厚T22と、を有している。第2膜厚T22は、第1膜厚T21より大きい。第1領域AR1において、第2金属層M22の第1膜厚T21は90nmより小さく、第2領域AR2において、第2金属層M22の第2膜厚T22は90nmより大きい。
【0027】
本実施形態によれば、チタンによって形成された第2金属層M12及びM22は、引張された第1領域AR1と圧縮された第2領域AR2において異なる膜厚を有している。フレキシブル基板100に引張り応力が生じる第1領域AR1においては、チタンの膜厚は圧縮応力が生じるように薄く形成される。フレキシブル基板100に圧縮応力が生じる第2領域AR2においては、チタンの膜厚は引張り応力が生じるように厚く形成される。このように、チタンの膜厚によって、フレキシブル基板100の引張り応力及び圧縮応力を調整することができる。チタンの膜厚を領域によって最適化することで、配線に生じる応力を緩和し断線を抑制することができる。また、フレキシブル基板100の面内の応力を均一化することができる。
【0028】
なお、走査線1、信号線2がチタンで形成された第2金属層M12及びM22を含む例を示したが、フレキシブル基板100のその他の配線がチタンを含んでいる場合にも、チタンの膜厚を調整することによって上述と同様の効果を得ることができる。また、図示した例では、走査線1及び信号線2は、それぞれ2層の金属層を有しているが、3層の金属層を有していても良い。その場合、例えば、1層目の金属層はチタンによって形成され、2層目の金属層は、アルミニウムによって形成され、3層目の金属層は、チタンによって形成されている。チタンによって形成された1層目と3層目のうち、少なくとも一方の膜厚を調整することによって、上記したのと同様の効果を得ることができる。
【0029】
図6は、本実施形態の第2の具体例を示す図である。
図6(a)は、本実施形態のフレキシブル基板100の一部を拡大した平面図である。
図6(b)は、
図6(a)においてI-IIで示すフレキシブル基板100の断面図である。
図6(c)は、
図6(a)においてIII-IVで示すフレキシブル基板100の断面図である。
図6(b)及び
図6(c)においては、支持板7、配線層、保護部材8を図示し、その他の部材の図示を省略している。
図6に示す第2の具体例は、
図5に示した第1の具体例と比較して、第1領域AR1及び第2領域AR2が第1方向D1に延出している点で相異している。
【0030】
図6(a)に示すように、フレキシブル基板100は、引張された第1領域AR1と、圧縮された第2領域AR2と、を有している。第1領域AR1及び第2領域AR2は、第1方向D1に延出している。
【0031】
図6(b)に示すように、フレキシブル基板100は、モジュール200の曲面に貼付されている。モジュール200は、凸部201と、凹部202と、を有している。第1領域AR1は、凸部201上に位置しているため引張されている。第2領域AR2は、凹部202上に位置しているため圧縮されている。信号線2において、チタンによって形成された第2金属層M22の膜厚は、第1領域AR1と第2領域AR2とで異なっている。第2金属層M22は、第1領域AR1において第1膜厚T21と、第2領域AR2において第2膜厚T22と、を有している。第2膜厚T22は、第1膜厚T21より大きい。第1領域AR1において、第2金属層M22の第1膜厚T21は90nmより小さく、第2領域AR2において、第2金属層M22の第2膜厚T22は90nmより大きい。
【0032】
図6(c)に示すように、走査線1についても、チタンによって形成された第2金属層M12の膜厚は、第1領域AR1と第2領域AR2とで異なっている。第2金属層M12は、第1領域AR1において第1膜厚T11と、第2領域AR2において第2膜厚T12と、を有している。第2膜厚T12は、第1膜厚T11より大きい。第1領域AR1において、第2金属層M12の第1膜厚T11は90nmより小さく、第2領域AR2において、第2金属層M12の第2膜厚T12は90nmより大きい。
図6に示した構成においても、
図5に示した構成と同様の効果を得ることができる。
【0033】
図7は、チタンによって形成された層の膜厚と応力との関係を示すグラフである。
図7は、配線がアルミニウムによって形成された1層目とチタンによって形成された2層目とによって形成された場合のデータを示している。
グラフの縦軸は、チタンによって形成された層に生じる応力[MPa]を示している。グラフの横軸は、チタンによって形成された層の膜厚[nm]を示している。縦軸の0[MPa]より上が引張り応力であり、0[MPa]より下が圧縮応力である。チタンの膜厚が90nmより小さい場合、チタンの層には0[MPa]より下の圧縮応力が生じ易い。チタンの膜厚が90nmより大きい場合、チタンの層には0[MPa]より上の引張り応力が生じ易い。つまり、チタンの膜厚が90nmの場合を境界として引張り応力及び圧縮応力が切り替わることが読み取れる。以上の結果より、フレキシブル基板100に圧縮応力が生じる領域では、チタンの層を90nmより大きく形成し引張り応力を生じさせ、フレキシブル基板100に引張り応力が生じる領域では、チタンの層を90nmより小さく形成し圧縮応力を生じさせることが望ましい。
【0034】
図8は、
図2においてI-Jで示すフレキシブル基板100の一部の概略的な断面図である。
電気的素子3は、絶縁基材4の島状部ILの上に配置されている。電気的素子3と島状部ILとの間には、無機絶縁層19(パッシベーション層)が配置されている。無機絶縁層19は、平面視においては電気的素子3(あるいは島状部IL)と重畳する島状に形成されている。第1部分11は、第1有機絶縁膜5の上に配置され、第2有機絶縁膜6によって覆われている。第2部分12は、無機絶縁層19の上に配置され、電気的素子3と電気的に接続されている。第1部分11は、第1金属層M11と第2金属層M12とを有している。また、第2部分12も同様に第1金属層M11と第2金属層M12とを有している。
図8に示す例においては、第2部分12の両端部が第1有機絶縁膜5に覆われている。
【0035】
コンタクトホールCH1及びCH2は、第1有機絶縁膜5に設けられている。第1部分11は、コンタクトホールCH1及びCH2に配置された接続部材CM1及びCM2を介して第2部分12と電気的に接続されている。接続部材CM1及びCM2は、第1部分11の一部であってもよいし、第1部分11とは別途に設けられてもよい。
【0036】
このように、電気的素子3と絶縁基材4との間には島状の無機絶縁層19が配置されている。この無機絶縁層19は、電気的素子3や走査線1の第2部分12への水分等の侵入を抑制する保護膜として機能する。このため、フレキシブル基板100の信頼性が向上する。また、一般的に無機膜は有機膜に比べてクラックが生じやすいが、走査線1の第1部分11の下方には無機絶縁層19が設けられていないため、第1部分11での断線が抑制される。図示しない信号線についても同様である。さらに、無機絶縁層19がフレキシブル基板100の全体に設けられている場合と比較して、フレキシブル基板100の伸縮性及び可撓性が阻害されにくくなる。
【0037】
また、走査線1において、電気的素子3と重畳する第2部分12が第1部分11とは異なる層に配置されているため、電気的素子3の近傍における設計の自由度が向上する。また、コンタクトホールCH1及びCH2は、無機絶縁層19の上方に設けられているため、第1部分11と第2部分12との接続位置での接続不良が抑制される。
【0038】
電気的素子3の下方には、絶縁基材4の島状部ILが配置されている。これにより、電気的素子3を良好に支持できる。さらに、絶縁基材4は、支持板7によって支持されている。このため、フレキシブル基板100の強度が全体的に増すとともに、下方からの水分等の侵入が抑制される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、応力を緩和することが可能なフレキシブル基板を得ることができる。
【0040】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
100…フレキシブル基板、7…支持板、SF1…第1面、4…絶縁基材、
LP…線部、8…保護部材、1…走査線、2…信号線、
M11、M21…第1金属層、M12、M22…第2金属層、
AR1…第1領域、AR2…第2領域、
T11、T21…第1膜厚、T12、T22…第2膜厚。