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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】植込み型医療装置用の筐体
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/375 20060101AFI20240722BHJP
【FI】
A61N1/375
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020015997
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2020142060
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10 2019 105 798.1
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】19168592.4
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ドエル
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0060980(US,A1)
【文献】特表2014-521401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0243200(US,A1)
【文献】特開2007-275451(JP,A)
【文献】特表2014-514088(JP,A)
【文献】特開2017-080505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/375
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IMD用の装置筐体(2)であって、
前面側(4)と、
前記前面側(4)に垂直に配置され、前記前面側の真っ直ぐな上端(5)に接続されている平らな末端面(6)と、
前記真っ直ぐな上端(5)に平行に測定された場合の最大幅(Bmax)および前記真っ直ぐな上端(5)に垂直に測定された場合の最大高さ(Hmax)を有する前面側(4)とを有し、
前記最大幅(Bmax)と前記最大高さ(Hmax)との比R(Bmax/Hmax)が1.2と1.27との間であり、
前記前面側(4)の表面積と、前記最大幅(Bmax)および最大高さ(Hmax)を含む長方形の表面積との比(表面積(前面側)/表面積(長方形))が、少なくとも0.6であり、
前記IMDは、植込み型の電気除細動器またはCRT装置である、
装置筐体。
【請求項2】
請求項1記載の装置筐体(2)において、前記最大幅(Bmax)は、60mmである装置筐体。
【請求項3】
請求項1または2記載の装置筐体(2)において、前記最大高さ(Hmax)は、48mmである装置筐体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項記載の装置筐体(2)において、前記装置筐体(2)は最大厚さ(Dmax)を有しており、前記最大厚さは前記前面側の面に垂直に測定され、前記最大厚さは、9mmから15mm、9mmから12mm、10mmから11mm、あるいは10mmである装置筐体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項記載の装置筐体(2)において、前記装置筐体(2)は、前記前面側(4)に適合されてその反対側に配置された裏面側(4’)を有しており、前記平らな末端面(6)が前記裏面側(4’)の真っ直ぐな上端に接続されているものである装置筐体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の装置筐体(2)において、前記前面側(4)の外側形状は少なくとも2つの異なる曲線半径(7、7’、7”)を持つ曲線を有しており、最大曲線半径は12cm、11cm、10cm、あるいは9.5cmを超えるものではない 装置筐体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の装置筐体(2)において、前記前面側(4)の表面積と、前記最大幅(Bmax)および最大高さ(Hmax)を含む楕円形の表面積との比(表面積(前面側)/表面積(楕円形))が、最大1.5、最大1.4、最大1.3、最大1.2、最大1.15、あるいは最大1.1である装置筐体。
【請求項8】
請求項記載の装置筐体(2)において、前記装置筐体(2)は2つの筐体外板を有しており、第一筐体外板は前記前面側(4)を有し、第二筐体外板は前記裏面側(4’)を有しており、前記第一および第二筐体外板は対称的に成形されているものである装置筐体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項記載の装置筐体(2)において、前記装置筐体(2)は丸味を帯びた端を有するものである装置筐体。
【請求項10】
IMD用の筐体配列(1)であって、請求項1~9のいずれか一項記載の装置筐体(2)と、ヘッダー(3)とを有し、前記ヘッダー(3)は前記末端面(6)において前記装置筐体(2)に接続されているものである
筐体配列。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載の装置筐体(2)または筐体配列(1)において、IMDは、心臓ペースメーカー、植込み型の電気除細動器、またはCRT装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植込み型医療装置(IMD)用の筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
IMD用の筐体は最も重要な装置の構成要素を収容し、植込み部位においてそれを環境から保護する。装置筐体は、例えば、(例えば心臓ペースメーカー植込み用の刺激電極のための)装置構成要素を電気的および機械的に接続する外部インターフェースを有していてもよいし、あるいは体のパラメーター測定用のセンサーインターフェースを有していてもよい。
【0003】
(例えば心臓ペースメーカー植込みや脊髄刺激装置用に)患者の皮膚や組織ポケットに装置筐体が植え込まれるIMDも存在する。装置筐体はできる限り小型であり、患者に不快感を与えないように成形されるべきである。従来技術で周知の筐体は平らで円形の形状であり、可能な限り僅かに外側に突出した小さな膨らみを皮膚に与えるものである。
【0004】
一般的に、心臓ペースメーカー、植込み型の電気除細動器(ICD)、およびCRT(心臓再同期療法)装置は、金属製の平らで円形の筐体を有している。筐体はヘッダー構成要素(以後、本明細書ではヘッダーと呼ぶ)に機械的に接続されており、当該ヘッダー構成要素は、通常、鋳型成形されたエポキシ樹脂を有し、電極リード線用のコネクタを提供するものである。電力線は装置筐体から延びてヘッダーへ、更には電極リード線用のコネクタへ導かれ、その結果、電極と筐体内部に配置された構成要素(例えば、装置プロセッサ、電池、あるいはICDの場合にはショックコンデンサ)との間に電気接続を提供する。ヘッダーを有する装置筐体は、胸郭上部であって、肋骨の上部で鎖骨の下部の皮膚または組織ポケット内に植え込まれる。ヘッダーに接続された装置筐体は、以下において筐体配列と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術における心臓ペースメーカー、ICD、およびCRTでは、装置筐体およびヘッダーから成る筐体配列は平らの形状であり円形の外部輪郭を有していることが知られている。斯かる筐体配列の1つの問題点は、それが皮膚や組織ポケット内で回転し易いことである。ヘッダーに接続された電極リード線も同時に回転し、その結果、電極遮断が生じる。
【0006】
装置筐体の幅が高さより大きい装置配列、あるいは高さが幅より大きい装置配列も知られている。斯かる筐体配列の1つの問題点は、装置筐体が患者の肋骨上で「震える」傾向にあることである。震えは患者の肋骨と装置筐体との間の空間によって引き起こされるが、装置筐体が肋骨の外形に一致しない比較的大きな平面側を有しており、従って、上記空間が斯かる筐体配列にとって比較的大きいのがその原因である。「震え」は、特に小さい(すなわち胸郭の肋骨外形が小さい円半径を有している)胸郭を有する患者において著しく、しかも不快感を与えるものである。
【0007】
斯かる筐体配列の植込み中、患者の皮膚に相対的に小さい切り込みが入れられるが、それは医者にとって、皮膚や組織ポケットに適合させるための空間が制限されるという欠点をもたらすものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主要目的は、患者にとって快適な(すなわち、痛みがなく、感知可能な張力や引張力が実質的に全くない)皮膚下に植え込まれるIMD用筐体を提供することである。更に、患者の肋骨上部に植え込まれる場合、可能な限り「震え」のないIMD用装置筐体を提供することも本発明の目的の1つである。
【0009】
本発明の更なる目的は、植え込みの際に容易に回転しないIMD用装置筐体を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、簡単で、しかも迅速かつ制御可能なやり方で植込み可能なIMD用装置筐体を提供することである。
【0011】
斯かる目的は、請求項1記載の本発明による装置筐体を使用し、請求項12記載の装置筐体を含む筐体装置並びに請求項14記載の筐体配列の植込み方法を用いて達成されるものである。
【0012】
本発明の有利な例示的実施形態は、従属請求の範囲に記載されている。
【0013】
追加の有利な実施形態が図面および図面の説明に記載されている。図面は、本発明の種々の態様を示すものであり、それにより保護対象の主題が制限的に見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の筐体配列の概略図。
図2】本発明の筐体配列の概略側面図。
図3】装置筐体の外形の曲線半径がどのように決定されるかを示す概略図。
図4】装置筐体の前面側の表面の曲線因子がどのように決定されるかを示す概略図。
図5】装置筐体の前面側の表面の曲線因子がどのように決定されるかを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の解決方法によれば、IMD用装置筐体2が提案されており、斯かる装置は、
前面側4と、前面側4に垂直に配置され、前面側4の真っ直ぐな上端に接続されている平らな末端面6と、真っ直ぐな上端に平行に測定された場合の最大幅(Bmax)および真っ直ぐな上端に垂直に測定された場合の最大高さ(Hmax)を有する前面側4とを有し、最大幅(Bmax)と最大高さ(Hmax)との比R(すなわち、Bmax/Hmax)が1.05と1.35との間であることに特徴付けられる。
【0016】
斯かる方法により、提案されている装置筐体2は使用時に患者に快適感を与える、すなわち、当該装置筐体2は長い表面を有していないので、肋骨上の「震え」が防止あるいは大幅に削減される最適な幾何学的形状を有している。同時に、筐体は円形ではないので、皮膚や組織ポケットの回転が防止される。
【0017】
1つの有利な例示的実施形態において、R(すなわちBmax/Hmax)は1.1と1.30の間、1.15と1.275の間、1.2と1.275の間、あるいは1.25である。
【0018】
更に、本発明の有利な態様において、前面側4は、40mmから70mm、50mmから65mm、55mmから65mm、あるいは60mmの最大幅(Bmax)を有する。
【0019】
本発明の更なる例示的実施形態において、前面側4は、40mmから70mm、40mmから60mm、45mmから55mm、45mmから52mm、あるいは48mmの最大高さ(Hmax)を有する。
【0020】
比R、Bmax、およびHmaxに関する上述の値は、上記目的を達成するのに特に効果的であることが判明している。
【0021】
更に、本発明の別の態様によれば、装置筐体2は最大厚さ(Dmax)を有しており、厚さは前面側4の面に垂直に測定されるものであり、最大厚さは、9mmから15mm、9mmから12mm、10mmから11mm、あるいは10mmである。
【0022】
上記厚さは、本提案による他の幾何学的形状が装置筐体2のために共に選択されるならば、人間工学的な薄い装置筐体2が装置構成要素を収容するのに十分な内部容積を有し得るような厚さである。
【0023】
本発明の他の有利な実施形態によれば、装置筐体2は、前面側4に適合されてその反対側に配置された裏面側を有しており、平らな末端面6が裏面側の真っ直ぐな上端に接続されているものである。装置筐体2は2つの筐体外板を有していてもよく、その場合、第一筐体外板は前面側4を有し、第二筐体外板は裏面側を有しており、第一および第二筐体外板は互いに対称的に成形されている。
【0024】
その結果、装置筐体2は対称構造を持つことができる。対称構造は、左側でなく右側に植え込まれたIMDを有する患者にとって有利である。すなわち、本発明の装置筐体2を有するIMDは回転させるだけで鏡像体として植込みが可能となるので、当該装置筐体2は、患者の快適さの面で、左側に植え込まれたIDを有する通常の患者同様の特性を有するようになる。
【0025】
更に、本発明の有利な態様によれば、前面側4の外側形状は少なくとも2つの異なる曲線半径を持つ曲線を有している。最大曲線半径は12cm、11cm、10cm、あるいは9.5cmを超えるものではない。
【0026】
曲線半径の選択により、インプラントが任意の長い表面を有することが確実になくなるので、肋骨上の「震え」が防止できる。
【0027】
本発明の有利な実施形態によれば、前面側4の表面積と、最大幅(Bmax)および最大高さ(Hmax)を含む長方形9の表面積との比(すなわち、表面積(前面側)/表面積(長方形))が、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、少なくとも0.9、または少なくとも0.95である。
【0028】
更に、前面側4の表面積と、最大幅(Bmax)および最大高さ(Hmax)を含む楕円形10の表面積との比(すなわち、表面積(前面側)/表面積(楕円形))は、最大1.5、最大1.4、最大1.3、最大1.2、最大1.15、あるいは最大1.1である。
【0029】
本提案による「曲線因子」を選択することにより、装置筐体2の形状は確実に「多少円形」あるいは少なくとも「多少楕円形」となるので、外形の鋭利な角および長い表面が妨げられ、従って快適さが増大し「震え」も防止できる。
【0030】
本発明の他の態様によれば、装置筐体2は丸味を帯びた端を有する。その結果、患者の快適さは増大する。
【0031】
他の実施形態によれば、加えて、本発明の装置筐体2と、ヘッダー3とを有するIMD用の筐体配列が提案されている。ヘッダー3は、装置筐体2の末端面6において装置筐体2に接続されている。
【0032】
本発明の有利な実施形態によれば、IMDは、心臓ペースメーカー、植込み型の電気除細動器、およびCRT装置である。
【0033】
加えて、本発明の筐体配列を植え込むための方法が提案されている。当該方法は、筐体配列を提供する工程と、切開により患者の鎖骨下の組織を開く工程と、筐体配列の体積に近似的に対応する組織ポケットを準備する工程と、装置筐体2を組織ポケットに挿入する工程と、組織ポケットを閉じる工程とを有する。
【0034】
本発明の方法の1つの有利な態様によれば、切開の長さは、装置筐体2の前面側4の最大幅(Bmax)以下である。あるいは、切開の長さは、装置筐体2の前面側4の最大高さ(Hmax)プラスヘッダーの高さ以下である。
【0035】
(図面の詳細な説明)
図1は、装置筐体2およびヘッダー3を有する本発明の筐体配列1の外形を示す。装置筐体2は、前面側4と、前面側4に垂直に配列され前面側の真っ直ぐな上端5に接続されている平らな末端面6とを有する。前面側4は真っ直ぐな上端5に平行に測定された場合の最大幅Bmaxを有する。更に、前面側4は真っ直ぐな上端5に垂直に測定された場合の最大高さHmaxを有する。前面側4の外側外形は、少なくとも2つの異なる曲線半径7、7’、7”を持つ曲線を有している。
【0036】
図2は、本発明の筐体配列の概略側面図である。前面側4に垂直に測定された場合の装置筐体2の最大厚さDmaxが示してある。装置筐体2は、前面側4に適合するように構成された裏面側4’も有している。
【0037】
図3は、曲線半径7’の測定を概略的に示してある。対応する円部分は破線で示してある。対応する円部分を有する円が重ね合わされており、円の半径81は曲線半径7’に対応する。
【0038】
図4は、曲線因子(前面側4の表面積と、BmaxおよびHmaxを含む長方形9との比を用いて計算される)を決定する方法を示している。斜線部は、前面側4の表面積によって占められていない長方形9の表面積部分に対応する。
【0039】
図5は、曲線因子(前面側4の表面積と、それぞれ主軸および副軸であるBmaxおよびHmaxを含む楕円形10との比を用いて計算される)を決定する方法を示している。斜線部でカバーされていない前面側4の領域は、楕円形10から突出した表面積部分に対応する。
図1
図2
図3
図4
図5