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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】リードバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/16 20060101AFI20240722BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20240722BHJP
【FI】
F16K15/16 C
F16K31/06 305M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068127
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165558
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】狩野 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 俊明
(72)【発明者】
【氏名】瓦井 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 光国
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012515(JP,A)
【文献】実開平05-062774(JP,U)
【文献】特開2000-257561(JP,A)
【文献】特開2015-052305(JP,A)
【文献】特開平03-023388(JP,A)
【文献】実開昭63-147577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 15/00-17/22
F02M 39/00-71/04
F04B 23/00-23/14
53/00-53/22
F16K 1/00- 1/54
11/00-11/24
15/00-15/20
31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、
流体が流通可能な弁孔を有する弁座と、
前記弁体を収容するケーシングと、
一端部が前記ケーシングに固定されたアーム部、及び前記アーム部の他端部と接続し、前記弁孔を開閉可能に前記弁体を支持する弁体支持部、を含むリードと、を備え、
前記弁孔における前記流体の流通方向を第1方向、前記ケーシングの内面のうち前記第1方向の下流側を向く面を第1面と定義すると、前記第1面は、前記アーム部に対向する凹部を含み、
前記アーム部の幅方向における前記凹部の幅は、前記アーム部の幅よりも大きく、
前記弁体と前記弁座とが当接している閉弁状態において前記アーム部が延在している方向を延在方向、前記アーム部の両端のうち前記一端部側の端を一端、前記アーム部の両端のうち前記他端部側の端を他端と定義すると、
前記凹部は、前記延在方向において前記一端側に向かうにつれて前記凹部が深くなるように傾斜した傾斜面を含み、
前記アーム部の前記第1方向の上流側の上流側面と前記傾斜面との間の距離が、前記弁体が前記弁座に当接した状態で、前記延在方向において前記アーム部の一端側に向かうにつれて大きくなる
リードバルブ。
【請求項2】
前記弁体と前記弁座とが当接している閉弁状態において前記アーム部が延在している方向を延在方向、前記アーム部の両端のうち前記一端部側の端を一端、前記アーム部の両端のうち前記他端部側の端を他端と定義すると、
前記凹部は、前記延在方向において、前記弁孔と前記アーム部の支点との間の位置から前記支点と前記一端との間の位置まで形成されている、請求項に記載のリードバルブ。
【請求項3】
前記凹部は、前記アーム部の幅方向における前記支点の両側で、前記延在方向において、前記弁孔と前記アーム部の前記支点との間の位置から前記支点と前記一端との間の位置まで形成されている、請求項に記載のリードバルブ。
【請求項4】
前記アーム部は、前記一端部を貫通する貫通孔を有し、
前記ケーシングの前記第1面は、前記貫通孔に挿通される凸部を有し、
前記弁体と前記弁座とが当接している閉弁状態において前記アーム部が延在している方向を延在方向、前記アーム部の両端のうち前記一端部側の端を一端、前記アーム部の両端のうち前記他端部側の端を他端、前記凸部の側面のうち前記延在方向の最も前記他端側の位置を第1位置と定義すると、
前記凹部は、前記延在方向において、前記弁孔と前記第1位置との間の位置から前記第1位置と前記一端との間の位置まで形成されている、請求項1からの何れか一項に記載のリードバルブ。
【請求項5】
前記凹部は、前記アーム部の幅方向における前記貫通孔の両側で、前記延在方向において、前記弁孔と前記第1位置との間の位置から前記第1位置と前記一端との間の位置まで形成されている、請求項に記載のリードバルブ。
【請求項6】
コイルを含むソレノイドユニットを更に備える、請求項1からの何れか一項に記載のリードバルブ。
【請求項7】
前記ソレノイドユニットは、前記コイルの外周側に設けられたアウターヨークを含み、
前記凹部は、前記アウターヨークにおける前記第1方向の下流側の端面よりも前記第1方向の上流側に凹んでいる、請求項に記載のリードバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リードバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
リードバルブは、弁孔を有する弁座と、弁孔を開閉する弾性変形可能なリードを含んでいる。このようなリードバルブは、弁孔を流通する流体の流体圧がリードに作用することで、リードが弁座から離間する開弁状態を実現する。また、リードバルブは、この流体圧が低い又はゼロであるときには、リードが弁座に当接する閉弁状態を実現する。特許文献1には、リードバルブの一例として、電磁力を利用して、閉弁状態を実現することができる電磁弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-012515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリードバルブでは、リードは、一端が固定され、他端が移動可能に構成されており、リードが弁座から離間する際にケーシングとの間に形成される隙間の大きさは、一端側に向かうにつれて小さくなる。よって、流体に混入している固体状の異物がこの隙間に噛み込まれたり、堆積したりすると、閉弁状態を維持できない作動不良が生じる可能性がある。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、異物に起因する作動不良の発生を抑制することができるリードバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るリードバルブは、弁体と、流体が流通可能な弁孔を有する弁座と、弁体を収容するケーシングと、一端部がケーシングに固定されたアーム部、及びアーム部の他端部と接続し、弁孔を開閉可能に弁体を支持する弁体支持部、を含むリードと、を備え、弁孔における流体の流通方向を第1方向、ケーシングの内面のうち第1方向の下流側を向く面を第1面と定義すると、第1面は、アーム部に対向する凹部を含む。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のリードバルブにおいて、アーム部の幅方向における凹部の幅は、アーム部の幅よりも大きくてもよい。
【0008】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の構成において、弁体と弁座とが当接している閉弁状態においてアーム部が延在している方向を延在方向、アーム部の両端のうち一端部側の端を一端、アーム部の両端のうち他端部側の端を他端と定義すると、凹部は、延在方向において一端側に向かうにつれて凹部が深くなるように傾斜した傾斜面を含んでもよい。
【0009】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)から(3)の何れか1つに記載の構成において、弁体と弁座とが当接している閉弁状態においてアーム部が延在している方向を延在方向、アーム部の両端のうち一端部側の端を一端、アーム部の両端のうち他端部側の端を他端と定義すると、凹部は、延在方向において、弁孔とアーム部の支点との間の位置から支点と一端との間の位置まで形成されてもよい。
【0010】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載の構成において、凹部は、アーム部の幅方向における支点の両側で、延在方向において、弁孔とアーム部の支点との間の位置から支点と一端との間の位置まで形成されてもよい。
【0011】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)から(5)の何れか1つに記載の構成において、アーム部は、一端部を貫通する貫通孔を有し、ケーシングの第1面は、貫通孔に挿通される凸部を有し、弁体と弁座とが当接している閉弁状態においてアーム部が延在している方向を延在方向、アーム部の両端のうち一端部側の端を一端、アーム部の両端のうち他端部側の端を他端、凸部の側面のうち延在方向の最も他端側の位置を第1位置と定義すると、凹部は、延在方向において、弁孔と第1位置との間の位置から第1位置と一端との間の位置まで形成されてもよい。
【0012】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載の構成において、凹部は、アーム部の幅方向における貫通孔の両側で、延在方向において、弁孔と第1位置との間の位置から第1位置と一端との間の位置まで形成されてもよい。
【0013】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)から(7)の何れか1つに記載の構成において、コイルを含むソレノイドユニットを更に備えてもよい。
【0014】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載の構成において、ソレノイドユニットは、コイルの外周側に設けられたアウターヨークを含み、凹部は、アウターヨークにおける第1方向の下流側の端面よりも第1方向の上流側に凹んでいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、異物に起因する作動不良の発生を抑制することができるリードバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の一実施形態に係るリードバルブの構成を概略的に示す斜視図であって、説明のためリードバルブの構成の一部を分解して示している。
図2図1のリードバルブの断面図であり、リードバルブの開弁状態を示している。
図3】本開示の一実施形態に係るリードの構成を概略的に示す斜視図である。
図4図2の凹部の周辺を拡大した拡大図であって、閉弁状態のリードバルブを示している。
図5】本開示の一実施形態に係るリードバルブを第1方向の下流側から視た図であって、凹部の説明のため上流側ケーシングが取り外されている。
図6】比較例に係るリードバルブ内を流通する流体の流れを示した図である。
図7】本開示の一実施形態に係るリードバルブの作用・効果を説明するための図である。
図8】本開示の幾つかの実施形態に係る傾斜面の構成を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0018】
本開示の一実施形態に係るリードバルブ1の構成について説明する。図1に示すように、リードバルブ1は、弁体4と、弁孔3を有する弁座6と、ケーシング8と、リード10と、を備える。また、図2に示すように、このリードバルブ1はソレノイドユニット2をさらに備えている。本開示では、電磁力を利用して弁孔3を弁体4で閉塞する閉弁状態を実現可能な電磁弁を例にして、リードバルブ1の説明を行う。ただし、本開示のリードバルブ1は電磁弁に限定されない。例えば、リードバルブ1は、電磁力を利用せずに、弁孔3を流通する流体の流体圧が弁体4やリード10に作用することで、弁体4が弁座6から離間する開弁状態を実現し、流体圧が所定値以下になるとリード10の有する弾性力によって閉弁状態を実現するものであってもよい。あるいは、リードバルブ1は、流体の流体圧によって開弁状態を実現し、電磁力とリード10の有する弾性力によって閉弁状態を実現するものであってもよい。尚、本開示の電磁弁の用途は特に限定されないが、例えば、エンジンの冷却水(流体J)が流れる流路を開閉するために用いてもよい。
【0019】
ソレノイドユニット2は、筒状のコイル12と、コイル12の内周側に設けられた筒状のインナーヨーク14と、コイル12の外周側に設けられた筒状のアウターヨーク16と、を含む。インナーヨーク14及びアウターヨーク16は、コイル12に電流が印加されたときに磁路を形成する。本実施形態では、インナーヨーク14の内周面14aによって、流体Jが流通する流路の一部が形成されている。
【0020】
弁体4は、磁性体で構成されており、コイル12に電流が印加されたときに生じる電磁力によって弁座6に吸着する。このような弁体4を備えるリードバルブ1は、弁体4が弁座6に圧接されて弁孔3を閉塞すると閉弁状態となり、弁体4が弁座6から離れて弁孔3を開放すると開弁状態となる。本実施形態では、図3に示すように、弁体4は円板形状を有している。
【0021】
弁座6は流体Jが流通可能な弁孔3を有する。本実施形態では、図2に示すように、弁座6はインナーヨーク14における流体Jの流通方向の下流側の端面9(以下、インナーヨーク14の端面9とする)に形成されている。また、弁座6は、アウターヨーク16における流体Jの流通方向の下流側の端面17(以下、アウターヨーク16の端面17とする)よりも流体Jの流通方向の下流側に向かって僅かに突出している。以下では、弁孔3における流体Jの流通方向を「第1方向D1」とする。尚、幾つかの実施形態では、弁座6は、後述する上流側ケーシング11の第1面21によって形成されてもよい。
【0022】
ケーシング8は、内部に収容室5が形成されており、弁体4及びリード10を収容する。本実施形態では、図1及び図2に示すように、ケーシング8は、上流側ケーシング11と、上流側ケーシング11より第1方向D1の下流側に位置する下流側ケーシング13と、を含む。下流側ケーシング13の第1方向D1の上流側の端部は、上流側ケーシング11の第1方向D1の下流側の端部に嵌合している。収容室5は、上流側ケーシング11の内面と下流側ケーシング13の内面によって囲われることで形成されている。
【0023】
また、本実施形態では、収容室5は、弁体4が収容される弁体収容室5aと、後述するリード10のアーム部18が収容されるアーム部収容室5bを含む。アーム部収容室5bは、第1方向D1とは垂直な方向において、弁体収容室5aからずれて配置されている。以下では、上流側ケーシング11の内面のうちアーム部収容室5bを形成する面であって第1方向D1の下流側を向く面を「第1面21」とし、下流側ケーシング13の内面のうちアーム部収容室5bを形成する面であって第1面21に対向する面を「第2面29」とする。
【0024】
図2及び図3に示すように、リード10は、板バネにより構成されており、アーム部18及び弁体支持部20を含む。アーム部18は、一方向に延在する長手形状を有しており、一端部22がケーシング8に固定されている。弁体支持部20は、アーム部18の他端部24と接続している。また、弁体支持部20は、弁孔3を開閉可能に弁体4を支持する。弁体4は、例えば溶接によって弁体支持部20に固定されている。
【0025】
本実施形態では、図3に示すように、アーム部18及び弁体支持部20のそれぞれは板状形状を有している。弁体支持部20はさらに環状形状を有しており、円板形状の弁体4の外径は、環状形状の弁体支持部20の内径よりも大きい。また、弁体支持部20の内径は弁座6の外径より大きく、弁体4を弁体支持部20の内周側で弁座6と当接させることができるようになっている。また、弁体支持部20は、上述した弁座6の突出量以下の板厚を有する。以下では、弁体4と弁座6とが当接している閉弁状態においてアーム部18が延在している方向を「延在方向D2」とする。また、アーム部18の両端のうち一端部22側の端を一端23、アーム部18の両端のうち他端部24側の端を他端25とする。
【0026】
ここで、アーム部18の一端部22をケーシング8に固定する方法の一例について説明する。図3に示すように、アーム部18は、一端部22を第1方向D1に沿って貫通する貫通孔19を有している。また、図2に示すように、下流側ケーシング13は、第2面29から第1方向D1の上流側に向かって突出する筒形状の突出部26を含んでいる。突出部26の先端面28は、アーム部18の第1方向D1の下流側の下流側面30と当接している。そして、上流側ケーシング11の第1面21は、アーム部18の貫通孔19に挿通される凸部32を有する。また、この凸部32は、下流側ケーシング13の突出部26の内面に嵌合している。つまり、筒形状の突出部26の先端面28(頂面)のうち、凸部32に対して延在方向D2の他端25側の部分がアーム部18の支点50として機能する。
【0027】
また、貫通孔19及び凸部32の各々は、半円形状の断面を含む所謂Dカット形状を有しており、これにより、リード10の逆組防止の機能(上流側ケーシング11に対してリード10を取り付ける向きの間違えを防止するための機能)を有する。また、突出部26の先端面28のうち延在方向D2において凸部32よりも他端25側に位置する部分28aは、先端面28のうち延在方向D2において凸部32よりも一端23側に位置する部分28bよりも、第1方向D1の上流側に突出している。また、突出部26の先端面28のうち延在方向D2において凸部32よりも一端23側に位置する部分28bと上流側ケーシング11とは、アーム部18を挟持している。また、突出部26の先端面28のうち延在方向D2において凸部32よりも他端25側に位置する部分28aと上流側ケーシング11とは、アーム部18を挟持していない。すなわち、突出部26の先端面28のうち延在方向D2において凸部32よりも他端25側に位置する部分28aと上流側ケーシング11との間の第1方向D1に沿った隙間の大きさは、アーム部18の板厚よりも大きい。かかる構成によれば、弁体4を弁座6に付勢する付勢力を確保しつつ、アーム部18と上流側ケーシング11との間における異物の噛みこみを抑制することができる。
【0028】
図4を参照して、本開示の一実施形態に係る凹部27について説明する。図4に示すように、上流側ケーシング11の第1面21は、アーム部18に対向する凹部27を含む。本実施形態では、凹部27は、底面33及び傾斜面34を含んでいる。以下では、凸部32の側面のうち延在方向D2の最も他端25側の位置を「第1位置P1」とする。
【0029】
凹部27の底面33は、アウターヨーク16の第1方向D1の下流側の端面17よりも第1方向D1の上流側に位置する。つまり、凹部27は、アウターヨーク16における第1方向D1の下流側の端面17よりも第1方向D1の上流側に凹んでいる。また、凹部27の底面33は、延在方向D2において、凹部27の深さが一定であるように、第1方向D1に直交する平面に沿って形成されている。
【0030】
凹部27の傾斜面34は、延在方向D2においてアーム部18の一端23側に向かうにつれて、凹部27が深くなるように傾斜している。傾斜面34とアーム部18の第1方向D1の上流側の上流側面35との間の距離dは、弁体4が弁座6に当接した状態(閉弁状態)で、延在方向D2においてアーム部18の一端23側に向かうにつれて大きくなっている。また、傾斜面34は、距離dが所定の大きさになった部分で底面33と接続されている。
【0031】
また、本実施形態では、上流側ケーシング11の内面は、弁体収容室5aを形成する第1平面36及び第2平面38を含んでいる。第1平面36及び第2平面38のそれぞれは、第1方向D1の下流側を向く面である。アウターヨーク16の端面17は、第1方向D1の下流側から視ると、リング状形状を有している。第1平面36は、アウターヨーク16の端面17の外周側に位置し、アウターヨーク16の端面17と面一となっている。第2平面38は、アウターヨーク16の端面17の内周側に位置し、アウターヨーク16の端面17と面一となっている。
【0032】
第1平面36の一部は、延在方向D2において、傾斜面34とアウターヨーク16の端面17との間に配置されており、傾斜面34とアウターヨーク16の端面17とを接続する。第1平面36の一部は、例えば、弁孔3より延在方向D2においてアーム部18の一端23側に位置する部分である。第2平面38の一部は、アウターヨーク16の端面17とインナーヨーク14の端面9との間に配置されており、アウターヨーク16の端面17とインナーヨーク14の端面9とを接続する。第2平面38の一部は、例えば、弁孔3より延在方向D2においてアーム部18の一端23側に位置する部分である。延在方向D2において、凹部27の底面33、凹部27の傾斜面34、第1平面36の一部、アウターヨーク16の端面17、第2平面38の一部、インナーヨーク14の端面9(弁座6)の順に配置されている。
【0033】
図5は、リードバルブ1を第1方向D1の下流側から視た図であって、凹部27の説明のため上流側ケーシング11が取り外されている状態の図である。以下では、凹部27のうち延在方向D2の最も他端25側の位置を「第2位置P2」とする。凹部27のうち延在方向D2の最も一端23側の位置を「第3位置P3」とする。
【0034】
本実施形態では、図5に示すように、アーム部18の幅方向D3における凹部27の幅W1は、アーム部18の幅W2よりも大きい。また、凹部27は、アーム部18の幅方向D3における支点50の両側で、第2位置P2から第3位置P3まで形成されている。また、図5に示す実施形態では、凹部27は、アーム部18の幅方向D3における貫通孔19の両側で、第2位置P2から第3位置P3まで形成されている。本開示において、アーム部18の幅方向D3とは、第1方向D1及び延在方向D2の各々に直交する方向である。
【0035】
図示する例示的な形態では、凹部27は、2股形状を有しており、メイン凹部27Aと、メイン凹部27Aから延在方向D2における一端23側に延在する2つのサブ凹部27B,27Bとを含む。メイン凹部27Aは、延在方向D2において、第1位置P1と第2位置P2との間の第4位置P4から第2位置P2までの範囲に設けられており、幅が一定の第1部分31aと、延在方向D2においてアーム部18の他端25側に向かうにつれて幅が大きくなる第2部分31bとを、含んでいる。第2部分31bは、延在方向D2において、第1部分31aよりもアーム部18の他端25側に位置しており、第1部分31aに接続している。2つのサブ凹部27B,27Bの各々は、延在方向D2において、第4位置P4から第3位置P3までの範囲に設けられている。また、一方のサブ凹部27Bは、凸部32を挟んで他方のサブ凹部27Bとは反対側に位置している。また、第1方向D1の下流側から視た平面視において、凹部27の輪郭41のうち第4位置P4より延在方向D2におけるアーム部18の一端23側に位置する輪郭部分41aは、延在方向D2においてアーム部18の一端23側に凹となる2つの凹曲線部42a,42bと、延在方向D2においてアーム部18の他端25側に凸となるように2つの凹曲線部42a,42bを接続する凸曲線部43とを含む。2つの凹曲線部の一方42aは、幅方向D3において凸部32に対して一方側に位置し、2つの凹曲線部の他方42bは、幅方向D3において凸部32に対して他方側に位置する。凸曲線部43は、幅方向D3において凸部32の中心に向かうにつれてアーム部18の他端25側に向かうように凸部32に側面に沿って滑らかに湾曲している。
【0036】
また、本実施形態では、延在方向D2において、第2位置P2は、弁孔3とアーム部18の支点50との間の位置であり、第3位置P3は、アーム部18の支点50とアーム部18の一端23との間の位置である。図示した例示的な実施形態では、延在方向D2において、第2位置P2は、弁孔3と第1位置P1との間の位置であり、第3位置P3は、第1位置P1とアーム部18の一端23との間の位置である。
【0037】
本開示の一実施形態に係るリードバルブ1の作用・効果について説明する。例えば、図6に示す比較例のように、第1面21はアーム部18に対向する凹部27を含んでおらず、アウターヨーク16における第1方向D1の下流側の端面17と面一であると、延在方向においてアーム部18の一端23側に向かうにつれて、アーム部18と上流側ケーシング11の第1面21との間に形成される隙間40の大きさが小さくなる。このため、流体Jに混入している固体状の異物100がこの隙間40に噛み込まれたり、堆積したりすると、閉弁状態を維持できない作動不良が生じる可能性がある。尚、異物100は、例えば、エンジンの冷却水に混入している砂などである。
【0038】
しかしながら、本実施形態によれば、図7に示すように、上流側ケーシング11の第1面21は、アーム部18に対向する凹部27を有するので、比較例と比べて、アーム部18と上流側ケーシング11の第1面21の凹部27との間に形成される隙間40の大きさを拡げることができ、この隙間40に流入した異物100を隙間40から流出させることができる。よって、隙間40への異物100の噛み込みや堆積を抑制し、リードバルブ1が閉弁状態を維持できない作動不良の発生を抑制することができる。つまり、リードバルブ1の耐異物性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、アーム部18の幅方向D3における凹部27の幅は、アーム部18の幅よりも大きいので、隙間40に流入した異物100をスムーズに凹部27から流出させることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、傾斜面34は、延在方向D2においてアーム部18の一端23側に向かうにつれて凹部27が深くなるように傾斜しているので、隙間40に入り込んだ異物100を傾斜面34に沿ってスムーズに凹部27から流出させることができる。尚、幾つかの実施形態では、図8に示すように、傾斜面34は、幅W1の全体に亘って、延在方向D2に沿った断面における外形形状が、第1方向D1の下流側に向かって凸状に湾曲した凸状曲面部39a、平面である平面部39b、第1方向D1の上流側に向かって凹状に湾曲した凹状曲面部39cを含む。延在方向D2において、凸状曲面部39a、平面部39b、凹状曲面部39cの順に配置されており、凸状曲面部39aは延在方向D2におけるアーム部18の他端25側で第1平面36に接続し、凹状曲面部39cは延在方向D2におけるアーム部18の一端23側で底面33に接続する。
【0041】
また、本実施形態によれば、凹部27は、アウターヨーク16における第1方向D1の下流側の端面17よりも第1方向D1の上流側に凹んでいる。このような構成によれば、アウターヨーク16と弁体4との距離を小さくしつつアーム部18と凹部27との隙間40を大きくすることができる。したがって、コイル12の通電時に弁体4を弁座6に引き付ける力を高めつつ、上述した隙間40への異物100の噛みこみや堆積を抑制することができる。よって、リードバルブ1が閉弁状態を維持できない作動不良の発生を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、凹部27は、延在方向D2において、弁孔3とアーム部18の支点50との間の第2位置P2からアーム部18の支点50とアーム部18の一端23との間の第3位置P3まで形成されている。このため、アーム部18の支点50より奥まで流体Jを導き、アーム部18の支点50近傍での異物100の噛みこみや堆積を効果的に抑制することができる。さらに、リードバルブ1の姿勢が、アーム部18の一端23が他端25よりも重力方向の下方側になるような姿勢である時に、凹部27の一部をアーム部18の支点50よりも下側で異物100の貯蔵ポケットとして機能させることができるため、異物100の噛みこみを効果的に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、凹部27は、アーム部18の幅方向D3におけるアーム部18の支点50の両側で、延在方向D2において、弁孔3とアーム部18の支点50との間の第2位置P2からアーム部18の支点50とアーム部18の一端23との間の第3位置P3まで形成されている。このため、アーム部18の両側でアーム部18の支点50より奥まで流体Jを導き、アーム部18の支点50の周囲での異物100の噛みこみや、堆積を効果的に抑制することができる。さらに、リードバルブ1の姿勢が、アーム部18の一端23が他端25よりも重力方向の下方側になるような姿勢である時に、凹部27の一部をアーム部18の支点50よりも下側で異物100の貯蔵ポケットとして機能させることができるため、異物100の噛みこみを効果的に抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態に係るリードバルブについて説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 リードバルブ
2 ソレノイドユニット
3 弁孔
4 弁体
6 弁座
8 ケーシング
10 リード
16 アウターヨーク
17 アウターヨークにおける第1方向の下流側の端面
18 アーム部
19 貫通孔
20 弁体支持部
21 第1面
22 アーム部の一端部
23 アーム部の一端
24 アーム部の他端部
25 アーム部の他端
27 凹部
32 凸部
34 傾斜面
50 アーム部の支点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8