(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-19
(45)【発行日】2024-07-29
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240722BHJP
A21D 2/16 20060101ALN20240722BHJP
A21D 13/00 20170101ALN20240722BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20240722BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240722BHJP
【FI】
A23D9/00 504
A21D2/16
A21D13/00
A23L13/00 A
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2020070538
(22)【出願日】2020-04-09
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶
(72)【発明者】
【氏名】志田 政憲
(72)【発明者】
【氏名】北村 陽亜
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-099352(JP,A)
【文献】特開2018-068291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚脂、牛脂、及びこれらの加工油脂からなる群から選択される1以上の第1の油脂と、
植物性油脂であ
り、かつ、パーム極度硬化油を含む第2の油脂と、を含む油脂組成物であって、
SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が、前記油脂組成物中の油脂に対して34質量%以上41質量%以下であ
り、
前記パーム極度硬化油の含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して0.1質量%以上10質量%以下である、
油脂組成物(ただし、「S」は炭素数16以上の飽和脂肪酸を意味し、「O」はオレイン酸を意味し、「U」は炭素数16以上の不飽和脂肪酸を意味する)。
【請求項2】
前記第1の油脂の含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して5質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
SUS型トリグリセリドの含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して15質量%以上30質量%以下である、請求項1又は2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
前記SOS型トリグリセリドの含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して15質量%以上25質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の油脂組成物。
【請求項5】
前記第2の油脂が、パーム系油脂である、請求項1から4のいずれかに記載の油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
豚脂や牛脂等の動物系油脂は、各種飲食品(加熱調理食品、飲料、製菓製パン、惣菜用フィリング等)に良好な風味等を付与しやすく、調味油等の原料として広く用いられている。
【0003】
他方で、近年の原料供給事情等から、動物系油脂の使用量を低減することに対するニーズがあり、動物系油脂と植物系油脂とを組み合わせて用いる試み等がなされている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-5681号公報
【文献】特開2017-99352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、動物系油脂の使用量の割合が低減すると、得られる調味油の風味が損なわれるという問題が生じ得る。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を向上させることができる油脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、豚脂、牛脂、及びこれらの加工油脂からなる群から選択される1以上と、植物性油脂とを含む油脂組成物において、SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量を調整することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 豚脂、牛脂、及びこれらの加工油脂からなる群から選択される1以上の第1の油脂と、
植物性油脂である第2の油脂と、を含む油脂組成物であって、
SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が、前記油脂組成物中の油脂に対して34質量%以上41質量%以下である、
油脂組成物(ただし、「S」は炭素数16以上の飽和脂肪酸を意味し、「O」はオレイン酸を意味し、「U」は炭素数16以上の不飽和脂肪酸を意味する)。
【0009】
(2) 前記第1の油脂の含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して5質量%以上50質量%以下である、(1)に記載の油脂組成物。
【0010】
(3) SUS型トリグリセリドの含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して15質量%以上30質量%以下である、(1)又は(2)に記載の油脂組成物。
【0011】
(4) 前記SOS型トリグリセリドの含有量が、前記油脂組成物中の油脂に対して15質量%以上25質量%以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の油脂組成物。
【0012】
(5) 前記第2の油脂が、パーム系油脂である、(1)から(4)のいずれかに記載の油脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を向上させることができる油脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
<油脂組成物>
本発明の油脂組成物は、以下の要件を全て満たす。
(要件1)豚脂、牛脂、及びこれらの加工油脂からなる群から選択される1以上の第1の油脂を含む。
(要件2)植物性油脂である第2の油脂を含む。
(要件3)SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が、該油脂組成物中の油脂に対して34質量%以上41質量%以下である(ただし、「S」は炭素数16以上の飽和脂肪酸を意味し、「O」はオレイン酸を意味し、「U」は炭素数16以上の不飽和脂肪酸を意味する)。
【0016】
なお、本発明において「油脂組成物中の油脂に対するトリグリセリドの含量」とは、油脂組成物を構成する油脂に対するトリグリセリドの含量を意味する。
例えば、油脂組成物が油相からなる場合、油脂組成物を構成する油脂の量に対するSOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が34質量%以上41質量%以下であればよい。
油脂組成物が乳化物(すなわち、油相及び水相の混合物)である場合、油脂組成物を構成する油相中の油脂の量に対するSOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が34質量%以上41質量%以下であればよい。
【0017】
豚脂や牛脂は、従来より調味油等の原料として用いられ、飲食品に配合すると風味等を向上させる効果を有することが知られる。
しかし、本発明者らの検討の結果、これらの油脂は、配合対象である飲食品の風味を向上させる一方で、該飲食品特有の食感を損なってしまう可能性があることが見出された。また、豚脂や牛脂と、植物系油脂とを組み合わせて用いると、豚脂や牛脂によって奏され得る風味等が損なわれる場合があることも見出された。
【0018】
そこで、本発明者らがさらに検討した結果、上記(要件1)及び(要件2)に規定される油脂を含む油脂組成物において、油脂組成物全体に対するSOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量を、上記(要件3)を満たすように調整すると、豚脂や牛脂が有する風味を向上させつつ、さらには油脂組成物の配合対象である飲食品特有の食感をも向上させることができるという意外な効果が見出された。
【0019】
なお、SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリド以外のトリグリセリドの量を調整しても、SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量が上記(要件3)を満たさなければ、豚脂や牛脂が有する風味の向上効果や、油脂組成物の配合対象である飲食品特有の食感の向上効果は充分に奏されなかった。
【0020】
本発明において「飲食品の風味を向上させる」とは、本発明の油脂組成物の配合対象である飲食品の原料等に由来する風味を損なわないか、より高めることを意味する。飲食品の風味は、実施例に示した官能評価によって評価される。
【0021】
本発明において「飲食品特有の食感を向上させる」とは、本発明の油脂組成物の配合対象である飲食品が本来有する食感を損なわないか、より高めることを意味する。飲食品の食感は、実施例に示した官能評価によって評価される。
例えば、配合対象である飲食品が、スープ、揚げ物、パンである場合、「飲食品特有の食感」とは、それぞれ、のど越し、サクさ、口溶けである。
【0022】
以下、本発明の油脂組成物の構成について詳述する。
【0023】
(第1の油脂)
本発明の油脂組成物は、豚脂、牛脂、及びこれらの加工油脂からなる群から選択される1以上の動物性油脂を含む。本発明において、該動物性油脂を「第1の油脂」ともいう。第1の油脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明において「豚脂」とは、「ラード」等とも称されるものであり、豚の脂肪組織から任意の精製方法で得られる油脂を意味する。
【0025】
本発明において「牛脂」とは、「ヘット」、「タロー」等とも称されるものであり、牛の脂肪組織から任意の精製方法で得られる油脂を意味する。
【0026】
第1の油脂が加工油脂である場合、その種類は特に限定されない。
【0027】
飲食品の風味を特に向上させやすい油脂組成物が得られるという観点から、第1の油脂は、豚脂又は牛脂を含むことが好ましく、豚脂を含むことがより好ましい。
【0028】
油脂組成物における第1の油脂の含有量は特に限定されず、実現しようとする風味の程度等に応じて適宜選択できる。
第1の油脂の含有量の下限は、例えば、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。
第1の油脂の含有量の上限は、例えば、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0029】
(第2の油脂)
本発明においては、第1の油脂とともに、植物性油脂である第2の油脂が併用される。第2の油脂を用いることで、各種トリグリセリドの含有量を容易に調整でき、本発明の効果を奏しやすい油脂組成物が得られる。第2の油脂は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂は、ヨウ素価が30以上60以下である油脂を含むことが好ましく、ヨウ素価が40以上60以下である油脂を含むことがより好ましく、ヨウ素価が50以上60以下である油脂を含むことがさらに好ましい。
【0031】
植物性油脂としては、特に限定されないが、パーム系油脂、パーム核油、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、ヤシ油、カカオ脂、及び藻類油、又はこれらの加工油脂(分別、硬化及びエステル交換反応のうち1以上の処理がなされたもの)等が挙げられる。上記のうち、特にパーム系油脂及び/又はその加工油脂が好ましい。
【0032】
油脂組成物における第2の油脂の含有量は特に限定されず、調整しようとする「SOS+SOU」(後述する)等の値に応じて適宜選択できる。
第2の油脂の含有量の下限は、例えば、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
第2の油脂の含有量の上限は、例えば、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0033】
油脂組成物における、第1の油脂と第2の油脂との配合比は特に限定されないが、第1の油脂に対して第2の油脂(特に、パーム系油脂)の比率を高めると本発明の効果が奏されやすい。
例えば、第1の油脂の質量に対する第2の油脂の質量の比率(第2の油脂/第1の油脂)は、好ましくは1以上10以下、より好ましくは2以上5以下である。
【0034】
(油脂組成物のトリグリセリド組成)
本発明の油脂組成物は、SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドを少なくとも含み、その合計量が、油脂組成物中の油脂に対して34質量%以上41質量%以下に調整される。
【0035】
本明細書において「トリグリセリド」とは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの「1位」、「2位」、「3位」とは、グリセロールにおけるエステル結合の位置を意味する。
【0036】
以下、本発明において採用され得るトリグリセリド組成について詳述する。
【0037】
[SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリド]
本発明において、「SOS型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位及び3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)がエステル結合し、かつ、トリグリセリドの2位にオレイン酸(O)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
本発明において、「SOU型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)がエステル結合し、トリグリセリドの2位にオレイン酸(O)がエステル結合し、トリグリセリドの3位に炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0038】
本発明において、本発明の油脂中の構成脂肪酸である炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)としては、特に限定されないが、例えば、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)、アラキジン酸(炭素数20)、ベヘン酸(炭素数22)、リグノセリン酸(炭素数24)等が挙げられる。
上記のうち、炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)としては、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)が好ましい。
【0039】
本発明の油脂中の構成脂肪酸である飽和脂肪酸(S)としては、1種の飽和脂肪酸が含まれていてもよく、2種以上の飽和脂肪酸が含まれていてもよい。
【0040】
本発明において、本発明の油脂中の構成脂肪酸である炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)としては、特に限定されないが、例えば、パルミトレイン酸(16:1)、ヒラゴン酸(16:3)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)、エイコセン酸(20:1)、エルカ酸(22:1)、セラコレイン酸(24:1)等が挙げられる。上記括弧内の数値表記は、左側が脂肪酸の炭素数であり、右側が2重結合数を意味する。例えば、「(16:1)」とは、炭素数が「16」であり、かつ、2重結合数が「1」であることを意味する。
上記のうち、炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)としては、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノレン酸(18:3)が好ましい。
【0041】
本発明の油脂中の構成脂肪酸である不飽和脂肪酸(U)としては、1種の不飽和脂肪酸が含まれていてもよく、2種以上の不飽和脂肪酸が含まれていてもよい。
【0042】
本発明において、油脂組成物全体に対するSOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量(以下、「SOS+SOU」ともいう。)は、34質量%以上41質量%以下である。
「SOS+SOU」の下限は、好ましくは35質量%以上、より好ましくは37質量%以上である。
【0043】
本発明において、油脂組成物全体に対するSOS型トリグリセリドの含有量は、「SOS+SOU」が上記の範囲を満たせば特に限定されないが、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは15質量%以上25質量%以下、より好ましくは17質量%以上20質量%以下である。
【0044】
本発明において、油脂組成物全体に対するSOU型トリグリセリドの含有量は、「SOS+SOU」が上記の範囲を満たせば特に限定されないが、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは15質量%以上25質量%以下、より好ましくは18質量%以上23質量%以下である。
【0045】
本発明において、「SOS+SOU」の値を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、第1の油脂及び第2の油脂の比率等を調整する方法(後述する)によって所望の値に調整できる。
【0046】
「SOS+SOU」を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はパーム系油脂を含むことが好ましく、パーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、又はパーム分別硬質油を含むことがより好ましく、パーム油及びパーム分別軟質部エステル交換油脂を含むことが特に好ましい。
かかる場合、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム油の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム分別軟質部エステル交換油脂の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下、特に好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0047】
油脂組成物におけるSOS型トリグリセリドの割合を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はパーム系油脂を含むことが好ましく、パーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、又はパーム分別硬質油を含むことがより好ましく、パーム油及びパーム分別軟質部エステル交換油脂を含むことが特に好ましい。
かかる場合、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム油の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム分別軟質部エステル交換油脂の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下、特に好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0048】
油脂組成物におけるSOU型トリグリセリドの割合を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はパーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、又はパーム分別硬質油を含むことが好ましく、パーム油及びパーム分別軟質部エステル交換油脂を含むことがより好ましい。
かかる場合、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム油の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム分別軟質部エステル交換油脂の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下、特に好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0049】
[SUS型トリグリセリド]
本発明において、「SUS型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位及び3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)がエステル結合し、かつ、トリグリセリドの2位に炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0050】
本発明において、油脂組成物全体に対するSUS型トリグリセリドの含有量は、特に限定されないが、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは15質量%以上30質量%以下、より好ましくは20質量%以上24質量%以下である。
【0051】
油脂組成物におけるSUS型トリグリセリドの割合を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はパーム系油脂を含むことが好ましく、パーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、又はパーム分別硬質油を含むことがより好ましく、パーム油及びパーム分別軟質部エステル交換油脂を含むことが特に好ましい。
かかる場合、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム油の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上65質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上60質量%以下、特に好ましくは30質量%以上55質量%以下である。
本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム分別軟質部エステル交換油脂の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下、特に好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0052】
本発明において、油脂組成物中の各種トリグリセリド含有量は、実施例に示した方法で算出できる。
【0053】
[その他のトリグリセリド]
本発明の油脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記のトリグリセリド(SOS型トリグリセリド、SOU型トリグリセリド及びSUS型トリグリセリド)以外の、その他のトリグリセリドが含まれていてもよい。その他のトリグリセリドは1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0054】
その他のトリグリセリドとしては、POP型トリグリセリド、PPO型トリグリセリド、UUU型トリグリセリド、SSS型トリグリセリド等が挙げられる。
【0055】
本発明において、「POP型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位及び3位にパルミチン酸がエステル結合し、かつ、トリグリセリドの2位にオレイン酸(O)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0056】
本発明において、油脂組成物全体に対するPOP型トリグリセリドの含有量は、特に限定されないが、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは9質量%以上18質量%以下、より好ましくは13質量%以上16質量%以下である。
【0057】
本発明において、「PPO型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位及び2位にパルミチン酸がエステル結合し、かつ、トリグリセリドの3位にオレイン酸(O)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0058】
本発明において、油脂組成物全体に対するPPO型トリグリセリドの含有量は、特に限定されないが、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは2質量%以上10質量%以下、より好ましくは4質量%以上7質量%以下である。
【0059】
本発明の油脂組成物にPOP型トリグリセリド及びPPO型トリグリセリドが含まれる場合、本発明による風味向上効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中のPPO型トリグリセリドの質量に対する、油脂組成物中のPOP型トリグリセリドの質量の比率(以下、「POP/PPO」ともいう。)は、好ましくは0.5以上8以下、より好ましくは1以上5以下、さらに好ましくは2以上3以下である。
【0060】
「POP/PPO」を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はパーム系油脂を含むことが好ましく、パーム系油脂(パーム油、パーム分別軟質油、パーム分別中融点油、又はパーム分別硬質油)と、パーム分別軟質部エステル交換油脂とを組み合わせて含むことがより好ましい。
【0061】
本発明において、「UUU型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位、2位及び3位に炭素数16以上の不飽和脂肪酸(U)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0062】
本発明において、油脂組成物全体に対するUUU型トリグリセリドの含有量は、特に限定されないが、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、より少ない方が好ましい。油脂組成物全体に対するUUU型トリグリセリドの含有量は、例えば、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは8質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
【0063】
油脂組成物におけるUUU型トリグリセリドの割合を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、油脂組成物において、ヨウ素価が100以上である油脂を少量(例えば、油脂組成物中の油脂に対して30質量%以下)の配合量にとどめることが好ましく、ヨウ素価が100以上である油脂を配合しないことがより好ましい。
【0064】
本発明において、「SSS型トリグリセリド」とは、トリグリセリドの1位、2位及び3位に炭素数16以上の飽和脂肪酸(S)がエステル結合したトリグリセリドを意味する。
【0065】
本発明において、油脂組成物全体に対するSSS型トリグリセリドの含有量は、特に限定されないが、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下、より好ましくは7質量%以上15質量%以下である。
【0066】
油脂組成物におけるSSS型トリグリセリドの割合を所望の値に調整しやすく、飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を良好に向上させる油脂組成物が得られやすいという観点から、第2の油脂はヨウ素価が2以下である油脂を含むことが好ましく、パーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、パーム極度硬化油、又は菜種極度硬化油を含むことがより好ましく、パーム極度硬化油を含むことがさらに好ましく、パーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、及びパーム極度硬化油を含むことが特に好ましい。
かかる場合、本発明による食感改良効果等がより奏されやすくなるという観点から、パーム極度硬化油の含有量は、油脂組成物中の油脂に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.3質量%以上5質量%以下である。
【0067】
(その他の成分)
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、油脂以外の成分(食品添加物等)を含んでいてもよい。このような成分としては、乳化剤、糖類、増粘安定剤、タンパク質、アルコール、呈味成分(酵母エキス等)、着色料、フレーバー(香料)、酵素等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
その他の成分の種類及び量は、得ようとする効果等に応じて適宜選択できる。
【0069】
油脂組成物に油脂以外の成分が含まれる場合、その配合量は、本発明の効果を奏しやすくする観点から、油脂組成物の油脂が、油脂組成物に対して充分量配合されるように設定される。
例えば、油脂組成物が油相からなる場合、油脂組成物全体に対する油脂の含量は、好ましくは98.5質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上である。
例えば、油脂組成物が乳化物(すなわち、油相及び水相の混合物)である場合、油脂組成物全体に対する油脂の含量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0070】
本発明の効果が奏されやすいという観点から、本発明の油脂組成物は、好ましくは第1の油脂及び第2の油脂からなる。
【0071】
<油脂組成物の形態>
本発明の油脂組成物の形態は特に限定されないが、油相のみを含む組成物、油相及び水相を含む乳化物であってもよい。本発明の油脂組成物は、液体、又は固体のいずれであってもよい。油脂組成物は、用途等に応じて乾燥させてもよい。
【0072】
<油脂組成物の製造方法>
本発明の油脂組成物は、特に限定されないが、通常、上記油脂を加温下で溶解し、溶解した油脂中に必要に応じてその他の成分を添加し、公知の方法で均一に分散させることで製造することができる。本発明の油脂組成物に配合しようとする油脂が可塑性油脂である場合、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、ネクサス、ポラロン、ロノーター等によってこれらの油脂を急冷可塑化させる方法で本発明の油脂組成物を得ることができる。
【0073】
<油脂組成物の性質及び用途>
本発明の油脂組成物は、該油脂組成物の配合対象である飲食品の風味、及び、飲食品特有の食感を向上させることができる。風味や食感の有無や程度は、実施例に示した官能評価によって特定される。
【0074】
本発明の油脂組成物の配合対象としては特に限定されず、任意の飲食品に配合できる。
配合対象が飲料である場合、飲料の例としては、各種スープ(コーンスープ、コンソメスープ、野菜スープ等)等が挙げられる。
配合対象が食品である場合、食品の例としては、加熱調理食品、パン、和洋菓子、ルウ(カレールウ、シチュールウ等)、惣菜用フィリング等が挙げられる。加熱調理食品の例としては、揚げ物(トンカツ、コロッケ、フライドポテト、から揚げ、天ぷら等)、炒め物(チャーハン、野菜炒め等)等が挙げられる。これらのうち、揚げ物や炒め物は、食材に直接配合するのではなく、本発明の油脂組成物をフライ油や炒め油として使用することで、本発明の油脂組成物を食品中に容易に配合させることができる。
【0075】
例えば、本発明の油脂組成物の配合対象がスープである場合、スープの原料等に由来する風味を高めつつ、スープ特有の食感(のど越し等)の良さを高めることができる。
本発明の油脂組成物の配合対象が揚げ物である場合、揚げ物の原料等に由来する風味を高めつつ、揚げ物特有の食感(サクさ等)の良さを高めることができる。
本発明の油脂組成物の配合対象がパンである場合、パンの原料等に由来する風味を高めつつ、パン特有の食感(口溶け等)の良さを高めることができる。
【0076】
本発明の油脂組成物を、その配合対象である飲食品に配合する量は、得ようとする効果の程度等に応じて適宜選択でき、特に限定されない。
【0077】
本発明の油脂組成物の配合対象が飲料である場合、本発明の油脂組成物を、配合対象全体に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上配合してもよい。
本発明の油脂組成物の配合量の上限は、特に限定されないが、配合量は過度でなくともよく、配合対象全体に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下配合してもよい。
【0078】
本発明の油脂組成物の配合対象が食品である場合、本発明の油脂組成物を、配合対象全体に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上配合してもよい。
本発明の油脂組成物の配合量の上限は、特に限定されないが、配合量は過度でなくともよく、配合対象全体に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下配合してもよい。
【0079】
本発明の油脂組成物の配合対象が揚げ物や炒め物である場合、揚げる対象や炒める対象である食材を、本発明の油脂組成物を含む油脂を用いて揚げ物や炒め物を作製することで、本発明の油脂組成物を配合対象に容易に配合できる。
かかる場合、本発明の油脂組成物を含む油脂は、油脂全体に対して本発明の油脂組成物を30質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、本発明の油脂組成物からなることがさらに好ましい。
【0080】
本発明の油脂組成物は、調味油、シーズニング、及び香油等として用いることができる。本発明の油脂組成物は、従来知られる調味油、シーズニング、及び香油等の代替品として用いてもよく、これらの従来品と組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
<油脂組成物の作製-1>
下記の方法で、表1~3の「油脂組成」の項に示す組成を有する油脂組成物(油相からなる油脂組成物)を作製した。なお、表1~3の「油脂組成」の項中の数値の単位は「質量%」である。
【0083】
各油脂組成物は、表1~3の「油脂組成」の項に示す油脂を混合及び撹拌し、得られた混合物を70℃に調温した後、コンビネーターによって急冷捏和することで調製した。
【0084】
(原料油脂)
用いた原料油脂の詳細は下記のとおりである。
【0085】
[「第1の油脂」に相当する油脂]
豚脂:ヨウ素価60
牛脂:ヨウ素価51
【0086】
[「第2の油脂」に相当する油脂]
パーム油:ヨウ素価52
パーム分別軟質部エステル交換油脂:ヨウ素価56
パーム極度硬化油:ヨウ素価2
パーム分別軟質油:ヨウ素価56
パーム分別中融点油:ヨウ素価46
パーム分別硬質油:ヨウ素価34
菜種油:ヨウ素価115
菜種極度硬化油:ヨウ素価2
【0087】
なお、各油脂のヨウ素価は、基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.3.4.1-2013ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に基づき測定した。
【0088】
(トリグリセリド組成の分析)
各油脂組成物中のトリグリセリドの構成脂肪酸を、ガスクロマトグラフ法(基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」及び「奨2-2013 2位脂肪酸組成」)に基づき分析した。該分析結果に基づき、各トリグリセリド含有量を算出した。
その結果を表1~3の「TG組成」の項に示す。
【0089】
なお、表1~3の「TG組成」における各項目の意味は以下のとおりである(ただし、「S」は炭素数16以上の飽和脂肪酸を意味し、「O」はオレイン酸を意味し、「U」は炭素数16以上の不飽和脂肪酸を意味し、「P」はパルミチン酸を意味する)。
「SOS+SOU」:油脂組成物中の全構成脂肪酸に対する、SOS型トリグリセリド及びSOU型トリグリセリドの合計量の割合(単位:質量%)
「SUS」:油脂組成物中の全構成脂肪酸に対する、SUS型トリグリセリドの量の割合(単位:質量%)
「SOS」:油脂組成物中の全構成脂肪酸に対する、SOS型トリグリセリドの量の割合(単位:質量%)
「POP/PPO」:油脂組成物に含まれる第2の油脂の全構成脂肪酸における、PPO型トリグリセリドの量に対する、POP型トリグリセリドの量の割合
「UUU」:油脂組成物中の全構成脂肪酸に対する、UUU型トリグリセリドの合計量の割合(単位:質量%)
「SSS」:油脂組成物中の全構成脂肪酸に対する、SSS型トリグリセリドの合計量の割合(単位:質量%)
【0090】
<飲食品の作製-1>
上記で得られた各油脂組成物を用いて、下記の方法に基づき、3種の飲食品(トンカツ、パン、スープ)を作製した。
【0091】
(トンカツの作製)
上記で得られた各油脂組成物をフライヤーに7000g取り、180℃まで加熱した後、冷凍トンカツ(商品名「三元豚厚切りロースかつ200」、味の素冷凍食品株式会社製)を油脂組成物中に入れ、8分間揚げ調理した。
揚げ調理後、フライヤーから取り出し、25℃に調温した恒温器内で10分間放冷し、トンカツを得た。
【0092】
(パンの作製)
イーストを分散させた水、イーストフード、及び強力粉を、ミキサーボールに投入しフックを使用して、ミキシング、発酵を行い、中種生地を得た。
次いで、本捏配合の材料(油脂組成物以外の全材料)及び中種生地を添加し、低速3分、中低速3分でミキシングした後、油脂組成物を投入し、さらに低速3分、中低速4分でミキシングし、パン生地を得た。捏上温度は28℃に設定した。
その後、20分のフロアータイムをとった後、生地を分割し、再度20分のベンチタイムをとった。生地をモルダーで5mmに延ばし、ロール型に成型後、ワンローフ型に入れ、38℃、湿度80%で45分間のホイロをとり、その後200℃で30分焼成し、パン(食パン)を得た。
[食パンの配合]
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
油脂組成物 5質量部
水 25質量部
【0093】
(スープの作製)
市販の粉末スープ14gに対して熱湯150mlと上記で得られた各油脂組成物4.5gを添加して撹拌し、スープを得た。
【0094】
<飲食品の官能評価-1>
上記で得られた各飲食品について、下記の基準に基づき、その風味や食感を評価した。その結果を表1~3の「評価」の項に示す。
【0095】
なお、下記官能評価は、以下に示すパネルの選抜、及びパネル間の討議を経て行った。
五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準臭覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判定された12名のパネル(20~40代の男性5名及び女性7名)を選抜した。
次いで、官能評価を実施するにあたり、パネル全体で事前に討議し、各パネルに各評価項目の特性に関する共通認識を持たせた。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに提示した。
【0096】
(トンカツの官能評価)
以下の基準で、得られた各トンカツの風味及びサクさを評価した。
【0097】
[トンカツの風味]
◎+:パネル12人中、10人以上が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
【0098】
[トンカツのサクさ]
◎+:パネル12人中、10人以上が、サクさがあると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、サクさがあると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、サクさがあると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、サクさがあると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、サクさがあると評価した。
【0099】
(パンの官能評価)
以下の基準で、得られた各パンの風味及び口溶けを評価した。
【0100】
[パンの風味]
◎+:パネル12人中、10人以上が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
【0101】
[パンの口溶け]
◎+:パネル12人中、10人以上が、口溶けが良好であると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、口溶けが良好であると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、口溶けが良好であると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、口溶けが良好であると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、口溶けが良好であると評価した。
【0102】
(スープの官能評価)
以下の基準で、得られた各スープの風味及びのど越しを評価した。
【0103】
[スープの風味]
◎+:パネル12人中、10人以上が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、くどすぎず淡白すぎず、原料等に由来する風味が引き立ち非常に良好な風味であると評価した。
【0104】
[スープののど越し]
◎+:パネル12人中、10人以上が、のど越しが良好であると評価した。
◎ :パネル12人中、8人以上9人以下が、のど越しが良好であると評価した。
○ :パネル12人中、6人以上7人以下が、のど越しが良好であると評価した。
△ :パネル12人中、4人以上5人以下が、のど越しが良好であると評価した。
× :パネル12人中、3人以下が、のど越しが良好であると評価した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1~3に示されるとおり、本発明の要件を全て満たす油脂組成物によれば、飲食品の風味、及び、該飲食品特有の食感を向上させることができた。
この効果は、第2の油脂として、少なくともパーム油及びパーム分別軟質部エステル交換油脂を配合するとより良好に奏され、第2の油脂として少なくともパーム油、パーム分別軟質部エステル交換油脂、及びパーム極度硬化油を配合すると特に良好に奏された。
【0109】
比較例3に示されるとおり、豚脂、又は牛脂を配合せず、さらには本発明において規定されるトリグリセリド含有量の要件を満たしていなければ、飲食品の風味及び食感が損なわれていた。
【0110】
比較例4に示されるとおり、豚脂、又は牛脂を配合しなければ、本発明において規定されるトリグリセリド含有量の要件を満たしていても、飲食品の風味及び/又は食感が損なわれていた。
【0111】
比較例1、2、5~13に示されるとおり、豚脂、又は牛脂を配合しても、本発明において規定されるトリグリセリド含有量の要件を満たさなければ、飲食品の風味及び/又は食感が損なわれていた。
【0112】
<油脂組成物の作製-2>
下記の方法で、表4の「油脂組成」の項に示す組成を有する油脂組成物(油相及び水相からなる乳化物)を作製した。なお、表中、用いた成分や、数値の意味は上記<油脂組成物の作製-1>におけるものと同様である。
ただし、表4中、「水相組成」の項中の数値の単位は「質量%」であり、「合計」の項は、「油脂組成」及び「水相組成」の数値の合計(単位:質量%)である。
【0113】
なお、乳化物は、油相(「油脂組成」の項に示した成分の混合物)に水相(「水相組成」の項に示した成分の混合物)を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和する方法で作製した。
【0114】
<飲食品の作製-2>
上記で得られた油脂組成物を用いて、上記<飲食品の作製-1>と同様の方法で、3種の飲食品(トンカツ、パン、スープ)を作製した。
【0115】
<飲食品の官能評価-2>
上記で得られた各飲食品について、上記<飲食品の官能評価-1>と同様の方法で、その風味や食感を評価した。その結果を表4の「評価」の項に示す。
【0116】
【0117】
表4に示されるとおり、本発明の要件を全て満たす油脂組成物によれば、その形態が乳化物であっても、飲食品の風味、及び、該飲食品特有の食感を向上させることができた。